以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。本実施形態は、ガス通路を有する排熱回収ボイラと、排熱回収ボイラに排ガスを供給するガスタービンと、排熱回収ボイラで生成された蒸気で発電を行う蒸気タービンと、を有するコンバインドサイクルプラントとして説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、本実施形態のコンバインドサイクルプラントを表す概略構成図である。本実施形態において、図1に示すように、コンバインドサイクルプラント10は、ガスタービン11と、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)12と、蒸気タービン13とを備えている。
ガスタービン11は、圧縮機21と、燃焼器22と、タービン23とを有する。圧縮機21とタービン23は、回転軸(ロータ)24により一体回転可能に連結されている。圧縮機21は、空気取り込みライン25から取り込んだ空気を圧縮する。燃焼器22は、圧縮機21から圧縮空気供給ライン26を通して供給された圧縮空気と、燃料ガス供給ライン27から供給された燃料ガスとを混合して燃焼する。タービン23は、エキスパンダーであり燃焼器22から燃焼ガス供給ライン28を通して供給された高温高圧の燃焼ガスを膨張させることにより回転駆動する。発電機29は、圧縮機21及びタービン23と同軸上に設けられており、タービン23が回転することで発電することができる。
排熱回収ボイラ12は、ガスタービン11(タービン23)から排ガス排出ライン31を介して排出された高温の排気ガス(排ガス)が保有する顕熱と熱交換することによって蒸気を発生させるものである。排ガスの温度はコンバインドサイクルプラント10の構成により異なり、500℃から600℃程度のものが多いが、約800℃に至るものもある。排熱回収ボイラ12は、複数の熱交換器(本実施形態では、過熱器32、蒸発器33及び節炭器34)と、ガス通路35と、を有している。過熱器32と、蒸発器33と、節炭器34とは、ガス通路35内に配置されている。ガス通路35は、排ガス供給ライン31と接続している。ガス通路35については後述する。排熱回収ボイラ12は、ガス通路35から導入されたガスタービン11からの排ガスが内部を通過することで、過熱器32、蒸発器33、節炭器34の順に排ガスから熱回収を行うことで蒸気を生成する。
節炭器34は、蒸気タービン13から給水(水)が供給され、供給された水を加熱する。節炭器34で加熱された水は、蒸発器33に供給され、蒸発器33で加熱する。蒸発器33で加熱されて生成された蒸気は、過熱器32に供給され、過熱器32で加熱する。過熱器32で加熱された蒸気は、蒸気タービン13に供給される。また、排熱回収ボイラ12は、蒸気ドラムを配置し、蒸気ドラムと蒸発器3との間でドラム中の水を循環させ、蒸気を生成してもよい。また、過熱器32は、蒸気ドラムと接続し、蒸気ドラムで生成された蒸気が供給されてもよい。また、排熱回収ボイラ12の熱交換器の数は、特に限定されず、さらに再熱器を備えていてもよいし、低圧タービン、中圧タービン、高圧タービンのそれぞれに蒸気を供給する熱交換器を備えていてもよい。
蒸気タービン13は、排熱回収ボイラ12により生成された蒸気により回転駆動するものであり、タービン42を有し、このタービン42と同軸上に発電機43が連結されている。過熱器32で生成された蒸気は、蒸気供給ライン44を介してタービン42に供給され、発電機43は、このタービン42が回転することで発電することができる。
タービン42から排出された蒸気は、蒸気排出ライン46を介して復水器47に供給される。復水器47は、回収された蒸気を冷却水(海水)により冷却して復水とするものである。この復水器47は、生成した復水を復水供給ライン48を介して節炭器34に送る。そして、復水供給ライン48には、排熱回収ボイラ12へ復水の供給を促すための復水ポンプ49が設けられている。
以下、本実施形態のガス通路35について詳細に説明する。図2は、排熱回収ボイラのガス通路の一部を示す斜視図である。図3は、ガス通路の断面図である。図3は、図2の断面Aの断面図である。図4は、ガス通路の角部を拡大して示す拡大断面図である。図5は、第1保温層と第2保温層の周辺構造を示す拡大断面図である。図6は、ガス通路の角部周辺の構造を示す上面図である。図7は、L字金物の配置を示す斜視図である。図6は、第1保温層と第2保温層との間の面を基本的に示し、一部第2保温層と第3保温層との間の面を示している。
ガス通路35は、図1及び図2に示すように、排ガス排出ライン31と接続する入口ダクト102と入口ダクト102よりも下流側のガス通路であるダクト本体104と、を有する。ガス通路35は、ダクト本体104の断面積が入口ダクト102の断面積よりも大きい、つまり、排ガスが流れる通路の面積が大きくなる。入口ダクト102からダクト本体104への接続形態は図1のように限定されるものではなく、入口ダクト102からダクト本体104に向けて断面積が徐々に拡大するようにしてもよい。ガス通路35は、ダクト本体104に過熱器32、蒸発器33及び節炭器34が配置されている。ガス通路35は、入口ダクト102に最も高温の排ガスが流れ、本体ダクト104の下流側に向かうにしたがって複数の熱交換器と熱交換が行われて、排ガスの温度が低下する。
入口ダクト102は、図3に示すように、断面が四角形となる形状であり、内壁面側に4つの角部120を有する。入口ダクト102の内壁面の角部120は、2つの辺が直角に交わる形状に限定されず、面取りが形成されていても、R形状となっていてもよい。入口ダクト102は、本実施形態では断面の四角形の鉛直上下にある水平方向に延びる2辺(天井面と底面)と、鉛直方向に延びる2辺(側面)とで構成され、入口ダクト102は入口から後流に行くに従い断面積が大きくなるよう天井と底面と側面が長手軸方向と傾斜している。その後、入口ダクト102の後流部分で、天井と底面が水平面となり側面が鉛直面となりダクト本体104に接続している。本実施形態の入口ダクト102は、一例として四角形とし角部120は2つの辺が直角に交わる形状として説明を行うが、これに限定されるものでなく角部120を備えていればよく、形状は限定されない。入口ダクト102は、例えば角部の内面角度が90°よりも大きくなるようにさらに折り曲げ部を設けた多角形(例えば、六角形、八角形)でもよい。
入口ダクト102は、ケーシング110と、内面保温構造112と、インナーライナー114と、を有する。ケーシング110は、入口ダクト102の外壁であり、筒形状であり、外側空間116が外気と接している。入口ダクト102は、ケーシング110で囲われた空間が内部空間118となる。ケーシング110は、SS400等の一般構造用鋼板で形成されている。内面保温構造112は、ケーシング110の内壁面側、つまり内部空間118側の面に設けられている。インナーライナー114は、内面保温構造112の内壁面側、つまり内部空間118側の面に設けられている。インナーライナー114は、筒形状であり、筒で囲まれた空間が排ガスの流れる通路となる。インナーライナー114は、高温排ガスと接触するので、SUH409等の耐高温用鋼板で形成される。つまり、入口ダクト102は、ケーシング110と、インナーライナー114とがともに筒形状となる二重管構造であり、ケーシング110と、インナーライナー114との間に内面保温構造112が設けられている。
ここで、発明者は、鋭意な研究により、角部内面と保温層との間に隙間が生じることにより、高温の排ガスが減温されないままガス通路内面と接する空間に進入することでガス通路の角部の局所的な温度上昇が生じるという知見を得た。すなわち、ガス通路内面の角部に対応する保温層が排熱回収ボイラの起動停止により、ガス通路から離れる場合があることが判明した。従い、ガス通路の温度上昇を抑制するには、ガス通路内面の角部に対応する保温層がガス通路から離れないように保持することが重要であることを見出した。この点に関して、発明者は、本実施形態の内面保温構造112とすることで、ガス通路内面の角部に対応する保温層がガス通路から離れないように保持する構造とできることを見出した。以下、内面保温構造112について説明する。
次に、図4から図7を用いて、入口ダクト102、特に内面保温構造112と、インナーライナー114の構造について説明する。入口ダクト102は、インナーライナー114が支持構造119、119aで支持されている。支持構造119は、角部120の近傍に設けられている。支持構造119aは、角部120以外の部分の内壁面側に設けられている。支持構造119aは、図6に示すように、ある角部120とその鉛直又は水平方向に設けられた他の角部120との間に互いに間隔を開けて複数配置されている。また、支持構造119、119aは、図6に示すように、入口ダクト102の延在方向(排ガスの流れ方向)に間隔を開けて、複数配置されている。
支持構造119は、スタッドボルト(インナーライナー固定軸)142と、ワッシャー144、147と、ナット146と、溶接部148、149と、を有する。スタッドボルト142は、ケーシング110の内面壁(内部空間118側の壁面)に溶接などで固定されている。スタッドボルト142は、ケーシング110に形成されたタップとしてのねじ穴に螺合され、さらに溶接で固定されていてもよい。スタッドボルト142は、たとえばSUS304等のステンレス鋼で作製され、M10からM20程度の丈夫なボルトを選定している。スタッドボルト142には、インナーライナー114が挿入されている。ワッシャー144と、ナット146とは、インナーライナー114よりも内部空間118側に配置され、スタッドボルト142に挿入されている。ワッシャー144は、スタットボルト142が挿入できる穴が形成された板状の部材である。溶接部148は、ワッシャー144とナット146とを固定している。溶接部148は、スタッドボルト142とナット146とを固定して、振動などでも脱落しないようにしている。支持構造119は、ワッシャー144とナット146でインナーライナー114を支持し、インナーライナー114とケーシング110との距離を一定以下として、その間に内面保温構造112を支持している。ワッシャー147は、内面保温構造112の後述するL字金物130を支持する。溶接部149は、ワッシャー147をスタッドボルト142に固定する。ワッシャー147については後述する。
支持構造119aは、スタッドボルト182と、ワッシャー144と、ナット146と、溶接部148と、中間ライナー184と、ナット186と、溶接部188と、を有する。スタッドボルト182と、ワッシャー144と、ナット146と、溶接部148とは、支持構造119と同様である。中間ライナー184、ナット186については後述する。
次に、内面保温構造112は、複数の保温層(第1保温層122、第2保温層124、第3保温層126及び第4保温層128)と、L字金物130と、固定部132と、保温層支持構造134と、金網136と、を有する。
第1保温層122は、ケーシング110の内壁面(内部空間118側の壁面)と接していて特定保温層となる。第2保温層124は、第1保温層122の内部空間118側の面に配置されている。第3保温層126は、第2保温層124の内部空間118側の面に配置されている。第4保温層128は、第3保温層126の内部空間118側の面に配置されている。つまり、複数の保温層は、ケーシング110からケーシング110の軸方向中心(インナーライナー114)に向って、第1保温層122、第2保温層124、第3保温層126、第4保温層128の順で積層されている。内面保温構造112は、ケーシング110内壁面とインナーライナー114との空間を、第1保温層122、第2保温層124、第3保温層126、第4保温層128で埋めている。内面保温構造112は、複数の保温層に種々の保温材を用いることができる。保温材としては、例えば、ロックウールフェルトまたはセラミックファイバーブランケットなどを用いることができる。ロックウールフェルトは、玄武岩、鉄炉スラグなどに石灰などを混合し、高温で溶解し生成される人造鉱物繊維の不織布または板である。セラミックファイバーブランケットとは、アルミナ(AL2O3)とシリカ(SiO2)を主成分とした人造鉱物繊維の不織布である。
L字金物130は、図4から図7に示すように、本実施形態ではケーシング110の内壁面側の角部120では、頂角にR部分があるものの2つの辺が直角に交わる形状としている。ケーシング110の内壁面側の角部120に配置されており、L字の2つの面150(断面において辺)がケーシング110の角部120で連結し2つの面に沿って配置されるよう直交している。L字金物130は、L字の屈曲部151が角部120と対面する位置に配置されている。本実施形態の屈曲部151は、多段で折れ曲がり、面150と面150の間に1つの面を有することで固定を容易にしている。なお、本実施形態のL字金物130は、面150が直交しているが、ケーシング110の2つの面に沿った角度であればよい。つまり、L字金物130は、角部120に対応する屈曲部151と、屈曲部151で向きが変わる2つの面150を有する構造であればよい。L字金物130は、第1保温層122と第2保温層124との間に配置されている。L字金物130は、屈曲部151に丸穴(貫通孔)152が形成されている。また、L字の2つの辺のそれぞれの面150に長穴154が形成されている。長穴154は、丸孔152と長穴154を結んだ線と平行な方向が長軸方向となる穴である。長穴154には、支持構造119のスタッドボルト142が挿入されている。
固定部132は、L字金物130をケーシング110に固定する。固定部132は、スタッドボルト(固定軸)162と、ナット164と、溶接部166、168とを有する。スタッドボルト162は、一端をケーシング110の内壁面に形成されたねじ穴に螺合され、さらに溶接部166で固定されている。スタッドボルト162は、一端をケーシング110の内壁面にねじ穴を形成せずに溶接で接合させてもよい。スタッドボルト162は、ケーシング110に固定されていない側の端部が、第2保温層124が配置されている領域に配置される。つまり、スタッドボルト162のケーシング110に固定されていない側の端部は、第2保温層124を貫通していない。スタッドボルト162のケーシング110に固定されていない側の端部が、第4保温層128と通過するまで延長させてインナーライナー114と固定する必要は無い。スタッドボルト162は、例えばSUS304等のステンレス鋼で作製され、M10からM20程度の丈夫なボルトを選定している。スタッドボルト162は、L字金物130の丸穴152に挿入されている。ナット164は、L字金物130よりも内部空間118側に配置され、スタッドボルト162に挿入されている。溶接部167は、L字金物130とナット164とを固定している。溶接部168は、スタッドボルト162とナット164とを固定して、振動などによる脱落を防止している。
保温層支持構造134は、支持構造119、119aの間に配置されている。保温層支持構造134は、図6に示すように、ある角部120とその鉛直又は水平方向に設けられた他の角部120との間に互いに間隔を開けて複数配置されている。また、保温層支持構造134は、図6に示すように、入口ダクト102の延在方向(排ガスの流れ方向)に間隔を開けて、複数配置されている。保温層支持構造134は、図4に示すように、保温ピン192と、複数のワッシャー194とを有する。保温ピン192は、ケーシング110の内壁面に固定されている。保温ピン192は、スタッドボルト142よりも細い断面積であり、例えばφ2mm〜φ5mmである。保温ピン192は、ケーシング110に固定されていない側の端部が、第4保温層128とインナーライナー114との間に配置される。ワッシャー194は、保温ピン192が挿入できる穴が形成された板状の部材である。ワッシャー194は、保温層と保温層の間及び第4保温層128とインナーライナー114との間に配置されている。ワッシャー194の貫通穴は、保温ピン192を通すことで挟み込んで位置がずれないように固定されるものであり、ケーシング110側に設けられている保温層を支持する。保温ピン192を用いることで、スタッドボルト142よりも細い断面積なので、高温の排ガスから保温層支持構造134を熱伝導してケーシング110へと伝熱される熱を抑制することが出来る。
金網136は、第1保温層122と第2保温層124との間に配置されている。金網136は、ケーシング110の角部120を含む、角部120の周辺の一部に少なくとも設けられている。具体的には、金網136は、入口ダクト102の断面において、L字金物130が設けられている領域、つまり、同じ角部120に設けられている複数のL字金物130の端面を直線で繋いだ領域に配置されている。金網136は、入口ダクト102の延在方向(排ガスの流れ方向)に延在して配置されている。金網136は、入口ダクト102の延在方向(排ガスの流れ方向)に複数に分割していてもよい。また、金網136は、L字金物130が配置されている領域よりも広い領域に配置してもよい。金網136は、L字金物130とL字金物130との間の第1保温層122を支持する。
ここで、支持構造119のワッシャー147は、L字金物130の内部空間118(第2保温層124)側の面に配置され、L字金物130の第2保温層124側の移動を規制する板状の支持部材となる。ワッシャー147は、溶接部149でスタッドボルト142に固定されている。
また、支持構造119aの中間ライナー184は、ワッシャー147よりも大きい板状部材であり、スタッドボルト182に挿入されている。中間ライナー184は、U字状の溝の形成されており、U字状の溝の底に相当する部分がスタッドボルト182と接している。ナット186は、中間ライナー184の第2保温層124側の面に配置され、スタッドボルト182に支持されている。中間ライナー184は、溶接部188でナット186に固定されている。ナット186は、溶接部188でスタッドボルト182に固定されている。また、中間ライナー184は、溝が鉛直方向下側、または、排ガスの流れ方向下流側となる向きで配置することが好ましい。これにより、中間ライナー184の溶接部188がはずれた場合もスタッドボルト182から外れにくくすることができる。
以上のように、ガス通路35の入口ダクト102の内壁面は、内面保温構造112の第1保温層122の角部120に対応する部分を支持するL字金物130及びL字金物130を固定する固定部132を備えている。内面保温構造112は、L字金物130と固定部132を設けることで、ケーシング110と接する第1保温層122をL字金物130でケーシング110から離れないように保持することができる。また、入口ダクト102は、L字金物130を第1保温層122と第2保温層124の間に設け、ケーシング110側の第1保温層をL字金物で支持することで、ケーシング110とインナーライナー114との間にある第1保温層122以外の保温層が変形した場合でも第1保温層122をL字金物130で支持することができる。例えば、ケーシング110の軸方向中心側(ケーシング110の排ガスが流れる領域の中心側)から複数の保温層の全体を支持する構造、具体的には、インナーライナー114で複数の保温層を支持する構造とすると、第1保温層122を除く他の保温層に変形が生じた場合、その変形が第1保温層122の変形を助長させる恐れがある。つまり、L字金物130がない場合、第4保温層128が変形して薄くなると、その分第1保温層122もケーシング110から離れる方向に移動する恐れがある。このため、ケーシング110側の第1保温層122とケーシング110の内壁面との間に隙間が生じやすくなる。これに対して、入口ダクト102は、L字金物130を特定保温層としての第1保温層122と他の保温層の間に設けることで、特定保温層より内部空間118側の保温層の変形が特定保温層を含むケーシング110側の保温層に影響を与えないため、ケーシングと保温層との間の隙間を生じにくくすることができる。これにより、ケーシング110と第1保温層122との間に隙間が生じることを抑制でき、排ガスが減温されないままケーシング110と接することを抑制できる。以上より、ケーシング110の局部的な温度上昇を抑制でき、ケーシング110の損傷発生が抑制されるため、ガス通路35の耐久性を高くすることができる。
また、排熱回収ボイラ12は、ガス通路35に内面保温構造112を設けることで、ガス通路35の耐久性を高くすることができる。これにより、排熱回収ボイラ12は、ガス通路35のメンテナンスの回数や必要な工事を減らすことができ、耐久性を高くすることができる。
内面保温構造112は、固定部132で、L字金物130の屈曲部151と、ケーシング110の内壁面の角部120と固定することで、L字金物130とケーシング110に熱伸びが生じた場合でも、互いに固定されている角部120でのケーシング110とL字金物130の相対位置に変化が生じることを抑制できる。つまり、L字金物130の面150と、ケーシング110の壁面が熱により変形しても、ケーシング110とL字金物130との相対位置の変化は、固定点である屈曲部151と角部120が基点となる。このため、角部120と屈曲部151の相対位置の変化を抑制できる。例えば、L字金物130の2つの面150と対面するケーシング110の内壁面のそれぞれを固定した場合、ケーシング110とL字金物130の熱伸びの差で、角部120と屈曲部151との相対位置がずれる恐れがある。また、熱伸びの差で固定部132、ケーシング110及びL字金物130のいずれかに負荷がかかり、L字金物130に変形が生じる恐れがある。これに対して、角部120と屈曲部151とを固定することで、上述したように相対位置を維持することができる。これにより、角部120と屈曲部151の間隔が変化することを抑制でき、角部120と屈曲部151の間に配置された第1保温層122が保持されている状態が変化することを抑制できる。以上より、角部120において、L字金物130で第1保温層122をケーシング110に対する位置ずれの発生を抑制しつつ支持することができ、ケーシング110の局部的な温度上昇を抑制でき、ケーシング110の損傷発生が抑制されるため、耐久性を高くすることができる。
内面保温構造112は、支持構造119のスタッドボルト(インナーライナー固定軸)142が挿入されるL字金物130の面150に形成される穴を長穴154とし、さらにスタッドボルト142に固定され、L字金物130の第2保温層124側の面と接しているだけのワッシャー147を設けることで、L字金物130が加熱により伸びる方向への変形を可能にしつつ、ワッシャー147で特定保温層としての第1保温層122がケーシングから離れにくい状態にすることができる。具体的には、スタッドボルト142が挿入されるL字金具130の穴を長穴154にすることで、L字金具130を面150の延在方向、つまり面150が温度上昇による熱伸びで伸びる方向に移動可能な状態とすることができる。また、ワッシャー147で、L字金具130がケーシング110の内面壁から離れる方向に移動することを規制できる。これにより、L字金物130で特定保温層をより確実に支持することができる。
内面保温構造112は、第1保温層122と第2保温層124との間にL字金物130を設けることで、1層からなる特定保温層である第1保温層122をL字金物130で支持することができる。これにより、ケーシング110とL字金物130の距離を短くすることができ、ケーシング110とL字金物130との間に配置される保温層(第1保温層122)をより移動、変形しにくい状態にすることができる。これにより、L字金物130で1層からなる特定保温層である第1保温層122をケーシング110に向けて押し付けることができるため、保温層をより確実にケーシング110と密着させることができ、隙間が生じることを抑制できる。これにより、ケーシング110と保温層が離れることを抑制できることで、ケーシング110の局部的な温度上昇を抑制でき、ケーシング110の損傷発生が抑制されるため、耐久性を高くすることができる。また、上記効果を得ることができるため、内面保温構造112は、L字金物130で支持する特定保温層を第1保温層122のみとすることが好ましいが、第1保温層122と第2保温層124からなる2層の保温層をL字金物130で支持してもよい。つまり、第2保温層124と第3保温層126との間にL字金物を設け、第1保温層122及び第2保温層124を特定保温層としてもよい。なお、1層からなる特定保温層である第1保温層122は、複数の薄い保温層を重ね合わせたものであっても、外観と機能から1層とみなすものである。
また、内面保温構造112は、保温層支持構造134を設けることで、L字金物130が配置されている領域以外の複数の保温層を支持することができ、複数の保温層がケーシング110の内壁面から離れることを抑制できる。これにより、ケーシング110の局所的な温度上昇を抑制でき、ケーシングの損傷発生が抑制されるため、耐久性を高くすることができる。また、保温層支持構造134は、保温ピン192を用いることで、ボルトよりも細い断面積の保温層支持構造134を構成するので、高温の排ガスから保温層支持構造134を熱伝導してケーシング100へと伝熱される熱を抑制することができる。また、本実施形態の保温層支持構造134は、複数の保温層のそれぞれにインナーライナー114側の面を支持するワッシャー194を設けたがこれに限定されない。保温層支持構造134は、第1保温層122のインナーライナー114側の面を支持するワッシャー194のみを設けてもよいし、複数の保温層から選択した保温層のインナーライナー114側の面を支持するワッシャー194のみを設けてもよい。
また、内面保温構造112は、L字金物130が挿入されていない支持構造119aに第1保温層122と第2保温層124との間に配置され、板状部材である中間ライナー184を設けることで、L字金物130が配置されている領域以外の第1保温層122を支持することができ、第1保温層122がケーシング110の内壁面から離れることを抑制できる。中間ライナー184は、角部120以外の部分で、第1保温層122をケーシング110の中心側から支持する。これにより、中間ライナー184が配置されている位置で第1保温層122がケーシング110の内壁面から離れることを抑制することができる。これにより、L字金具130が設けられていない部分においても中間ライナー184で第1保温層122をケーシング110から離れないように支持することで、L字金具130が設けられていいない部分において、第1保温層122とケーシング110との間に隙間が生じることを抑制することができ、ケーシング110の内壁面近傍に温度が減温されないままの排ガスが浸入することを抑制できる。これにより、ケーシング110の局所的な温度上昇を抑制でき、ケーシング110の損傷発生が抑制されるため、耐久性を高くすることができる。また、支持構造119aは、中間ライナー184をさらに設け、別の保温層を支持してもよい。例えば、中間ライナー184を第2保温層124と第3保温層126との間に設け、第2保温層124をケーシング110の内壁面から離れないように支持してもよい。
また、入口ダクト102は、インナーライナー114を設けることで、インナーライナー114で排ガスの流れる空間を塞ぐ筒を形成することができ、インナーライナー1114の筒の周方向外側である内面保温構造112に排ガスが流入することを抑制できる。これにより、複数の保温層に排ガスが流入しにくい構造とすることができ、排ガスがケーシング110に到達しにくくすることができる。これにより、ケーシング110の局所的な温度上昇を抑制でき、ケーシング110の損傷発生が抑制されるため、耐久性を高くすることができる。
本実施形態の内面保温構造112は、金網136を設けることで、L字金物130とL字金物130との間も、金網136で第1保温層122をケーシング110の内面壁から離れないように支持することができる。このように、金網136で角部120に対応する第1保温層122の、ケーシング110と第1保温層122との間に隙間が生じることを抑制できる。金網136は、必ずしも設けなくてもよい。
本実施形態の内面保温構造112は、複数のスタッドボルト142にかけ、複数のスタッドボルト142の間に張られた針金を第2保温層124と第3保温層126との間に設けてもよい。針金を設けることで、第2保温層124がケーシング110から離れない方向に移動しないように、第2保温層124を支持することができる。これにより、第2保温層124で第1保温層122をケーシング110の内壁面側に向けて押すことができ、ケーシング110の内壁面と保温層との間の隙間が発生することを抑制できる。
また、内面保温構造112は、第1保温層122のL字金物130と接する領域の保温材をセラミックファイバーブランケットで形成することが好ましい。第1保温層122のL字金物130と接する部分をセラミックファイバーブランケットとすることで、ケーシング110の内壁面の角部120に第1保温層が密着した状態を維持しやすくすることができる。具体的には、第1保温層122の設置時に第1保温層122をケーシング110の内壁面の角部120に沿って配置しやすく施工することができる。具体的には、第1保温層122を剛性が高いロックウールフェルトとした場合よりも、セラミックファイバーブランケットを用いた方が、第1保温層122をケーシング110の角部に沿って配置しやすく施工することができる。これにより、角部120において、ケーシング110の内壁面と第1保温層122との間に隙間が生じることを抑制できる。隙間が生じることを抑制できることで、ケーシング110の温度上昇を抑制でき、耐久性を高くすることができる。また、内面保温構造112は、第1保温層122の角部120を含む部分、つまり角部120を含み角部120に近い部分の保温材を、セラミックスファイバーブランケットとすることがさらに好ましい。第1保温層122の角部120を含む部分を、セラミックスファイバーブランケットで形成することで、ケーシング110の内壁面に第1保温層122を密着させやすくすることができる。これにより、ケーシング110の内壁面と第1保温層122との間に隙間が生じることをより抑制できる。
本実施形態の内面保温構造112は、上述したL字金物130をケーシング110の全ての角部120に設けることが好ましいが、少なくとも天井面と側面とを接続する角部に設ければよい。つまり、底面と側面とを接続する角部120には設けなくてもよい。天井面と側面とを接続する角部120にL字金物130を設けることで、天井面のケーシング110と接している第1保温層122が重力の影響で鉛直方向下側に変形し、ケーシング110の内壁面と第1保温層122との間に隙間が生じることを抑制することができる。逆に、底面と側面とを接続する角部120では、第1保温層122が重力の影響で鉛直方向下側に変形しても、ケーシング110の内壁面と第1保温層122との間が密着することになり、ケーシング110の内壁面と第1保温層122との間に隙間が生じることは、重力の影響以外の要因による場合となるためである。
本実施形態では、ガス通路35の入口ダクト102に内面保温構造112を設けた場合で説明したが、これに限定されない。本実施形態の内面保温構造112は、高温のガスが流れる各種ガス通路に設けることができ、本実施形態のダクト本体104に設けてもよいし、排ガス排出ライン31に設けてもよい。
次に、図8を用いて、ガス通路の製造方法の一例を説明する。図8は、ガス通路の製造方法の一例を示すフローチャートである。図8に示すガス通路の製造方法は、作業員が工作機械を用いて作業を行い、実行することができる。まず、作業員は、ケーシング110を作成する(ステップS12)。次に、作業員は、ケーシング110の内壁面に支持構造119、119aのスタッドボルト142、182と、固定部132のスタッドボルト162と、保温層支持構造134の保温ピン192とを設置する(ステップS14)。スタッドボルト142、162、182、保温ピン192の各一端は、溶接でケーシング110の内壁面に固定する。次に、作業員は、1層目の保温層(第1保温層)122を設置する(ステップS16)。第1保温層122は、設置されたスタッドボルト142、162、182と、保温ピン192に差し込み、ケーシング110の内壁面に密着させる。
次に、作業員は、第1保温層122の角部120を含む位置に金網136を設置する(ステップS18)。作業員は、金網136を設置した後、L字金物130と中間ライナー184とワッシャー194を設置する(ステップS20)。具体的には、スタッドボルト162にL字金物130の丸穴152を挿入し、スタッドボルト142にL字金物130の長穴154を挿入する。その後、スタッドボルト162にナット164を挿入し、ナット164でL字金物130を支持する。さらに、ナット164とL字金物130、ナット164とスタッドボルト162を溶接し、緩まないよう固定する。次に、スタッドボルト142にワッシャー147を設置し、ワッシャー147を溶接でスタッドボルト142に固定する。これにより、L字金物130をスタッドボルト142に対してケーシング110の内壁面に平行に移動可能な状態を維持しつつ、L字金物130をワッシャー147で支持する。L字金物130をスタッドボルト142、162で支持することで、L字金物130で第1保温層122を支持する。次に、スタッドボルト182に中間ライナー184を挿入する。その後、スタッドボルト182にナット186を挿入し、ナット186で中間ライナー184を支持する。さらに、ナット186と中間ライナー184、ナット186とスタッドボルト182を溶接し、固定する。これにより、スタッドボルト182で第1保温層122を支持する。次に、保温ピン192にワッシャー147を設置し、ワッシャー147を溶接で保温ピン192に固定する。これにより、保温ピン192で第1保温層122を支持する。
次に、作業員は、次の層の保温層を設置する(ステップS22)。保温層は、設置されている保温層に密着させる。作業員は、次の層の保温層を設置した後、保温ピン192にワッシャー194に設置し、ワッシャー194を保温ピン192に溶接で固定する(ステップS24)。次に、保温層の設置が完了したかを判定する(ステップS26)。作業員は、全ての保温層を設置していない(ステップS26でNo)と判定した場合、ステップS22に戻り、次の層の保温層を設定する。作業員は、ステップS22からステップS26の処理を繰り返し、必要な層数の保温層を設置する。
作業員は、全ての保温層を設置した(ステップS26でYes)と判定した場合、インナーライナー114を設置する(ステップS28)。具体的には、スタッドボルト142、182にインナーライナー114を挿入し、その後、ワッシャー144、ナット146でインナーライナー114をスタッドボルト142に固定する。また、緩まないよう溶接を行い、ワッシャー144をインナーライナー114に固定し、ナット146をスタッドボルト142に固定する。
図8に示すようにガス通路を製造することで、ガス通路35のケーシング110の内壁面の角部120にL字金物130を設け、L字金物130で、ケーシング110の角部120の第1保温層122を支持する構造となる。より詳しくは、L字金物130及びワッシャー147で、角部120において、第1保温層122をケーシング110の内壁面に対して押し付ける構造とすることができる。これにより、角部120の第1保温層122とケーシング110の内壁面との間に隙間が生じることを抑制でき、高温の排ガスが減温されないままケーシングと接することを抑制でき、ケーシングが局所的に加熱されにくくなるガス通路を製造することができる。これにより、耐久性を高くすることができる。
また、ガス通路の製造方法は、保温ピン192とワッシャー194を設けることで、保温層をケーシング110の内壁面から離れないように支持することができ、保温層とケーシング110の内壁面との間により隙間が生じにくくする構造を製造することができる。
図8に示すガス通路の製造方法は、ガス通路の一部を製造する場合、例えば、補修でガス通路の角部のみを製造する場合に適用してもよい。この場合、作成されたケーシング110の補修部分に対応する壁面部分にステップS14からステップS24を実行してユニットを作成し、作成したユニットを補修対象のケーシング110に設置する。