JP6592765B2 - 粒子計数装置 - Google Patents

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Description

本発明は、粒子計数装置に関し、詳しくは、少量の液体を用いてその液体中の粒子の性状及び数の測定が可能である粒子計数装置に関する。
近年、機械システム等の状態診断において、粒子計数装置(「パーティクルカウンター」とも称される。)を用いて潤滑油中の磨耗粒子の粒度分布を監視することが行われている。この粒子計数装置としては、潤滑油に光を照射したときの潤滑油中の粒子による遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて粒子の大きさ毎に個数を計数するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1の粒子計数装置では、遮断光及び散乱光を用いているため、フェログラフィ法やSOAP法のように粒子の性状を詳細に識別することができない。その結果、上記粒子計数装置を用いても、機械システム等の状態診断の精度を飛躍的に高めることができていなかった。また、発電機等の潤滑対象部で使用中の潤滑油をポンプの利用により採油して粒子計数装置に供給するので、採油のためのポンプやそれに伴う配管が必要になり、これら粒子計数装置、ポンプ、配管等を含んだ潤滑対象部診断システムが全体として大型化してしまい、且つ全体に計測対象の潤滑油を満たす必要があるため、計測に必要な量が多くなる。しかも、起泡しないように予め脱泡操作が必要となる。また、ポンプの内部で発生した粒子等の妨害物質が計測対象である潤滑油に混入してしまう可能性があるので、そのような可能性を排除して状態診断の精度を向上することが望まれる。
本発明者らは、既に上記問題の解決を図る粒子計数装置を提案している(特許文献2参照)。
特開2007−225335号公報 特開2015−31665号公報
前記特許文献2に記載されている粒子計数装置は、液体中の粒子に光を照射したときの遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて、粒子の大きさ毎に個数を計数している。この粒子計数装置は、例えば、機械システム(発電機、原動機、航空機、船舶、車両等)の潤滑対象部(軸受部、ギヤー部、摺動部等)の状態診断を行うために、潤滑油が流れる測定部、測定部を流れる潤滑油に光を照射する発光体、測定部を介して発光体と反対側に配設される複数の受光体等が備えられており(図2)、測定部の上流端側及び下流端側のそれぞれに機械システムの潤滑対象部に連なる配管が連絡され、上流側の配管には、潤滑油を測定部に圧送するポンプが設けられている(図1)。このような構成によれば、機械システムの潤滑対象部と接続した状態で潤滑油中の粒子を計数し、潤滑対象部の状態診断を行うのに好適である。
しかしながら、上記のような粒子計数装置は、潤滑対象部と測定部との間に配管を設け、ポンプを用いて一定の流量の液体を測定部に流すため、少量の液体を試料として測定を行うには向いていなかった。また、計測後には配管や測定部等の液体流路に液体が残留するので、別の液体試料を測定するときには、液体の流路を洗浄するために洗浄液や余分な液体試料が必要となる。
このため、少量の液体であっても液体中の粒子の性状及び数の測定可能であり、小型で簡単な構成により、広範に適用可能な粒子計数装置とすることが強く求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、少量の液体を用いてその液体中の粒子の性状及び数の測定が可能である、小型で簡単な構成の粒子計数装置を提供することを目的とする。
1.機械システムに用いられている潤滑油に光を照射したときの前記潤滑油中の粒子による遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の大きさ毎に個数を計数する粒子計数装置であって、前記潤滑油の流路に光を照射し前記遮断光及び前記複数の散乱光を測定するセンサ部と、脱着可能に設けられる貯留部を具備し、前記機械システムから採取され前記貯留部に貯留された前記潤滑油を前記流路5〜20ml/分の流量で供給する液体供給部と、前記センサ部から前記潤滑油を排出する排出部と、前記センサ部により測定される前記遮断光及び前記複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の大きさの識別及び計数を行う識別計数部と、を備え、前記液体供給部、前記センサ部及び前記排出部は、この順に直接接続されており、前記液体供給部と前記センサ部とを貫通する前記潤滑油前記流路が直線状に配置されていることを特徴とする粒子計数装置。
2.前記液体供給部、前記センサ部及び前記排出部は、上からこの順に直接接続されており、前記貯留部は、先端が下方となるように立設される注射器であり、前記液体供給部は、前記注射器のプランジャを等速で移動可能な等速移動機構を有する前記1.記載の粒子計数装置。
3.前記識別計数部は、前記遮断光及び前記複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の形状を識別する形状識別手段を備える前記1.又は2.に記載の粒子計数装置。
4.前記識別計数部は、前記遮断光及び前記複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の材質を識別する材質識別手段を備える前記1.又は2.に記載の粒子計数装置。
本発明の粒子計数装置によれば、センサ部による遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて粒子の大きさが識別される。これにより、潤滑油中の粒子の性状を詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。また、液体供給部により、潤滑油は貯留部からポンプ等を経由することなく、直接センサ部に一定流量で供給されるため、起泡することがなく、脱泡操作、及び潤滑油の粘度補正が不要である。また、採液するポンプを備える必要がないため、粒子計数装置の大型化やポンプの粒子の混入による測定精度の低下を抑制することができる。更に、液体供給部、センサ部及び排出部は、この順に直接接続され、且つ、液体供給部とセンサ部とを貫通する潤滑油の流路が直線状に配置されているため、配管を短くし又はなくすことができる。これにより流路を満たす潤滑油が少量で済むため、計測に必要な潤滑油の量を少量とすることができる。また、計数する潤滑油を用いて共洗いすることによって十分に流路全体の洗浄を行うことができるため、別途洗浄液等による洗浄が不要となる。
前記液体供給部、前記センサ部及び前記排出部は、上からこの順に直接接続されており、前記貯留部は、先端が下方となるように立設される注射器であり、前記液体供給部は、前記注射器のプランジャを等速で移動可能な等速移動機構を有する場合は、粒子計数装置を簡易且つ小型に構成することができ、一定流量の潤滑油を高精度にセンサ部に供給することができる。
前記識別計数部は、前記遮断光及び前記複数の散乱光の値に基づいて前記粒子の形状を識別する形状識別手段を備える場合は、潤滑油中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
前記識別計数部は、前記遮断光及び前記複数の散乱光の値に基づいて前記粒子の材質を識別する材質識別手段を備える場合は、潤滑油中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
実施例に係る粒子計数装置を備える診断システムの模式図である。 センサ部の模式図である。 流量と粒子径別の検出値の相関を示すグラフである。 粒子計数装置による計数処理を説明するためのフローチャート図である。 粒子計数装置の作用説明図であり、(a)は気泡を計数する状態を示し、(b)は金属粉を計数する状態を示す。 粒子計数装置の作用説明図であり、(a)は粒子がケイ砂である場合を示し、(b)は粒子が水である場合を示す。 粒子計数装置の作用説明図であり、(a)は粒子が金属粉である場合を示し、(b)は粒子が気泡である場合を示す。 他のセンサ部の模式図である。 他のセンサ部の散乱パターンを説明するための模式図である。
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
本実施形態に係る粒子計数装置は、液体に光を照射したときの液体中の粒子による遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて粒子の大きさ毎に個数を計数する粒子計数装置(1)であって、液体の流路に光を照射し遮断光及び複数の散乱光を測定するセンサ部(10)と、脱着可能に設けられる貯留部(21)を具備し、貯留部(21)に貯留された液体をセンサ部(10)に一定流量で供給する液体供給部(20)と、センサ部(10)から液体を排出する排出部(40)と、センサ部(10)により測定される遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて粒子の大きさの識別及び計数を行う識別計数部(50)と、を備える(例えば、図1を参照)。
また、液体供給部(20)、センサ部(10)及び排出部(40)は、この順に直接接続されており、液体供給部(20)とセンサ部(10)とを貫通する液体の流路が直線状に配置されている。「直接接続」とは、貯留部(21)とセンサ部(10)との間、及びセンサ部(10)と排出部(40)との間に配管を設けることなく接続することをいう。また、液体供給部(20)、センサ部(10)及び排出部(40)は、上からこの順に直接接続するとより好ましい。液体供給部(20)、センサ部(10)及び排出部(40)を鉛直に並べることにより装置の設置面積をより小さくすることができる。また、流路が上下方向となるため、流路内の液体が重力によって排出部(40)に下降して流路内に残留し難くなり、センサ部(10)の洗浄がより容易になる。尚、液体供給部(20)、センサ部(10)及び排出部(40)の配列は鉛直方向に限られない。
なお、上記実施形態で記載した各構成の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
上記「液体」の種類は特に問わず、例えば、潤滑油、洗浄液、水、薬液等を挙げることができる。例えば、潤滑油は、機械システム(例えば、発電機、原動機、航空機、船舶、車両等)の潤滑対象部(例えば、軸受部、ギヤー部、摺動部等の使用対象部)等で使用される。
上記「粒子」の種類は特に問わず、例えば、金属粉、ガラス、砂、その他の固形物、水、気泡等を挙げることができる。なお、上記粒子の性状としては、例えば、材質、形状、サイズ等を挙げることができる。また、上記「遮断光」とは、液体中の粒子により遮断される光を意味する。さらに、上記「散乱光」とは、液体中の粒子により散乱された光を意味する。
センサ部(10)は、流路中の液体に光を照射したときの液体中の粒子による遮断光及び複数の散乱光を測定する手段である。このような手段として、流路に光を照射するための発光体と、遮断光及び散乱光が到達する位置に設けられる受光体とを組み合わせたものを挙げることができる。
液体供給部(20)は、脱着可能に設けられる貯留部(21)を具備し、貯留部(21)に貯留された液体をセンサ部(10)に一定流量で供給する手段である。
貯留部(21)は、液体を貯留する容器である。このような容器の例として、シリンジ(22)及びプランジャ(23)からなる注射器を例示することができる。シリンジ(22)の容量は適宜設定することができ、例えば、5〜10ml程度とすることができる。また、シリンジ(22)に貯留する液体の量は3〜8mlとすることができる。尚、貯留する液体の一部は、流路の共洗いに用いられる。
また、液体供給部(20)は、貯留部(21)に貯留されている液体を一定流量でセンサ部(10)供給するために、貯留部(21)を押圧等して液体を押し出す手段を備えることができる。例えば、貯留部(21)が注射器である場合は、プランジャ(23)を等速で移動可能な等速移動機構(30)を有する形態(例えば、図1等参照)を挙げることができる。また、既知のシリンジポンプを用いてもよい。
液体供給部(20)により供給する液体の流量は任意に選択することができ、例えば、5〜20ml/分とすることができる。このような流量とするのは、図3に例示するように、流量を下げると小さい粒子ほど受光体の計測値が上昇して実際の粒子数との誤差が拡大するためである。また、5ml/分以上としたのは、流量を下げ過ぎると、必要油量を計測する時間が長くなり、粒子の沈降が測定結果に及ぼす影響を無視できなくなるため、計測に適さないからである。
排出部(40)は、センサ部(10)から排出される液体を任意の廃液容器(7)等に排出するための手段であり、その構成は特に問わない。
識別計数部(50)は、センサ部(10)の流路中の液体に光を照射したときの液体中の粒子による遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて、粒子の大きさ毎(大きさの区分毎)に個数を計数する手段である。また、遮断光及び複数の散乱光の測定値を各軸の座標とする点を求め、その点が、既知材質の粒子の座標領域内に含まれるか判断することにより前記粒子の材質を識別し、前記遮断光及び前記複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の大きさ及び材質毎に個数を計数することができる(例えば、図4参照)。なお、上記「形状」とは、2次元形状又は3次元形状を意図する。
上述の形態の場合、例えば、上記粒子の形状から磨耗形態を識別する磨耗形態識別手段を備えることができる。磨耗形態識別手段は、粒子の形状が既知の磨耗粒子の形状と一致するかを判断することにより磨耗形態を識別する。これにより、液体中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)診断システムの構成
本実施例に係る粒子計数装置1は、図1に示すように、センサ部10、液体供給部20、排出部40、識別計数部50を備える。また、センサ部10及び液体供給部20は、台座60に固定されている。
本実施例では、機械システム(例えば、発電機、原動機、航空機、船舶、車両等)の潤滑対象部(例えば、軸受部、ギヤー部、摺動部等の使用対象部)の状態診断を行うために、潤滑対象部から採取された潤滑油(液体)中の粒子を計数することができる。
センサ部10は、図2に示すように、潤滑油が流れる流路11(「測定部」「セル」とも称される。)と、半導体レーザ等からなる発光体12と、フォトダイオード等からなる遮断光受光体13と、フォトダイオード等からなる例えば第1散乱光受光体14及び第2散乱光受光体15と、を備え、識別計数部50により発光体12の制御、及び各受光体13、14、15の計測が行われる。
測定部11は、透光性を有する管状に形成されている。この測定部11の上流端側には、図1に示すように、貯留部20が直接接続されている。なお、測定部11には、図2の紙面と略直交する方向に向かって潤滑油が流れるものとする。測定部11の長さは、25mmとした。
発光体12は、測定部11を流れる潤滑油に光(例えば、レーザ光)を照射する光源である。また、遮断光受光体13は、発光体12からの照射光の光軸上で測定部11を介して発光体12と反対側に配設されている。この遮断光受光体13は、潤滑油中の粒子pにより遮断された遮断光を受光して、所定の遮断光パルス信号(測定値)に変換する。この遮断光パルス信号のパルス高さは、粒子pの大きさ(例えば、粒径等)に比例した値を示す。
第1及び第2散乱光受光体14、15は、各々の受光面を発光体12からの照射光の光軸から所定の角度に配設されている。これら第1及び第2散乱光受光体14、15は、潤滑油中の粒子pにより散乱された散乱光を受光して、所定の散乱光パルス信号(すなわち、測定値)に変換する。
排出部40は、直下の台座60に載置される廃液容器7にセンサ部10の測定部11を通過した液体を滴下させるための管である。排出部の先端は廃液容器7の開口部に差し込まれている。
識別計数部50は、後述する液体供給部20と、センサ部10の発光体12及び各受光体13、14、15等と、にそれぞれ電気的に接続されている。なお、識別計数部50の制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。
貯留部21は、シリンジ22とプランジャ23とを有する注射器である。本実施例においては10mlのシリンジ22に8mlの潤滑油を貯留した。貯留部21は、市販の注射器等の汎用品を適用することができるので、安価に入手できる。このため、測定の度に新しい貯留部21を使用することができるので、前回計測時の残留物による汚染をなくして測定精度を向上することができる。
シリンジ22は、プランジャ23の移動方向が鉛直になるように設置されている。
液体供給部20は、貯留部21に貯留された潤滑油をセンサ部10に一定流量で供給可能になっており、プランジャ23を等速で移動可能な等速移動機構30を備えている。等速移動機構30は、モータ31と、ロッド32と、連結部33とを有している。ロッド32は、鉛直方向を長手方向として軸方向に移動可能に設けられ、外周にはねじ溝が形成されており、モータ31の回転によりロッド32が鉛直方向に移動するようになっている。即ち、モータ31及びロッド32によりリニアアクチュエータが構成されている。ロッド32の先端には連結部33が固定され、連結部33はロッドの鉛直方向移動によりプランジャ23を下方に押圧し、シリンジ22内の液体をセンサ部10に吐出させることができる。
識別計数部50は、図4に示すように、以下に述べる粒子計数処理を実行する。まず、使用者が、計測対象である潤滑油を貯留した貯留部21を、粒子計数装置1に設置する(ステップS1)。識別計数部50は、潤滑油に関する情報(例えば、測定流量等)や、構成部品に関する情報(例えば、発光体の駆動時間等)等の設定値を取得する(ステップS2)。そして、識別計数部50は、等速移動機構30を作動させ、貯留部21に貯留された潤滑油の一部を吐出させてセンサ部10を共洗い(フラッシング)する(ステップS3)。ここでの共洗いのために排出する液量は、例えば、シリンジ22に貯留している8mlに対し3mlとすることができる。
次いで、識別計数部50は、等速移動機構30を作動させて潤滑油をセンサ部10に更に供給し、各受光体13、14、15からの測定値を取得する(ステップS4)。ここでの測定のために供給する液量は、例えば、シリンジ22に貯留している容量8mlに対し5mlとすることができる。また、流量は5ml/分とした。識別計数部50は、測定値に基づいて粒子の材質を識別する(ステップS5)。ここでは、遮断光受光体13の測定値、第1散乱光受光体14の測定値、及び第2散乱光受光体15の測定値を3次元座標の各軸(XYZ)に対応させ、既知材質の粒子によって設定された当該座標上の所定領域内に含まれるか判断することで、粒子の材質を識別する。具体的には、例えば、図6及び図7の多次元グラフに示すように、遮断光受光体13の測定値をX、第1散乱光受光体14の測定値をY、第2散乱光受光体15の測定値をZとし、その測定値が各材質の座標領域内に含まれているかを判断することで粒子の材質を識別する。
例えば、粒子pがガラス(ケイ砂)である場合には、図6(a)に示すように、散乱光が殆ど無いためX軸の近傍に測定値が集中する。また、粒子pが水である場合には、図6(b)に示すように、第1及び第2散乱光受光体14、15に対する散乱光が略均等で比較的小さいため、X軸からY軸方向及びZ軸方向に僅かに離間した箇所に測定値が集中する。また、粒子pが金属粉である場合には、金属粉が異形状であるため乱反射が生じる(図5(b)参照)。そして、図7(a)に示すように、第1及び第2散乱光受光体14、15に対する散乱光が異なり、その強度差が比較的大きいためX軸からY軸方向及びZ軸方向のうちの一方の軸方向に大きく離間した箇所に測定値が集中する。さらに、粒子pが気泡である場合、気泡が略球形であるため第1及び第2散乱光受光体14、15に対する散乱光が略均等となる(図5(a)参照)。そして、図7(b)に示すようにXYZ軸の交点を頂点とする円錐領域S内に測定値が集中する。したがって、粒子の材質に応じた多次元座標領域を予め複数設定しておけば、測定値の座標位置に基づいて粒子の材質を識別することができる。
次いで、識別計数部50は、粒子の大きさ及び材質毎に個数をカウントする(ステップS6)。その後、所定の測定時間が経過して測定終了となったか否かが判定される(ステップS7)。その結果、測定終了でない場合(ステップS7でNO判定)には、上述のステップS4〜S6が繰り返される。一方、測定終了である場合(ステップS7でYES判定)には、処理が終了する。
識別計数部50は、識別計数部50の測定結果(すなわち、粒子の大きさ及び材質毎の個数情報)に基づいて粒径分布Aを算出する。次に、算出された粒径分布Aと記憶された過去の粒径分布Aとに基づいて粒径分布比B等を算出する。この粒径分布比Bは、注目している所定サイズの粒径の時間経過に伴う変化の比率を示している。次に、例えば、粒径分布比B等と予め設定されたしきい値とを比較すること等で異常であるか否かを判定する。その結果、異常であると判定された場合には、アラーム等により異常を報知する。一方、異常でないと判定された場合には、診断処理を終了する。
(2)粒子計数装置の作用
次に、構成の粒子計数装置1の作用について説明する。粒子計数装置1では、図4に示すように、使用者が、潤滑油を貯留した貯留部21を粒子計数装置1に設置する(ステップS1)。そして、潤滑油情報及び構成部品情報が取得され(ステップS2)、フラッシングが行われる(ステップS3)。その後、測定が開始されて各受光体からの各測定値が取得される(ステップS4)。
次いで、各測定値を各軸の座標とした点の位置から粒子の材質が識別され(ステップS5)、粒子の大きさ及び材質毎に個数がカウントされる(ステップS6)。以後、所定の測定時間の間でステップS4〜S6を繰り返して、測定が終了すると(ステップS7でYES判定)処理が終了される。
(3)実施例の効果
本実施例の粒子計数装置1によると、材質識別手段(図4のステップS5)により遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて粒子の材質が識別される。これにより、潤滑油中の粒子の性状を詳細に識別しつつ粒子の大きさ毎の個数を計数することができる。
また、本実施例では、遮断光及び複数の散乱光の測定値を各軸の座標とした点の位置から粒子の材質を識別する。これにより、潤滑油中の粒子の性状を更に詳細に識別しつつ粒子の個数を計数することができる。
さらに、本実施例では、貯留部21に貯留した潤滑油を、ポンプ等を経由することなく、センサ部10に一定流量で供給する。これにより、センサ部10に供給される液体がポンプ等により起泡することがなく、脱泡操作、及び液体の粘度補正が不要である。また、大型のポンプを使用する必要が無いため、採油するポンプによる粒子計数装置1の大型化やポンプの粒子の混入による測定精度の低下を抑制することができる。
更に、本実施例では、貯留部21がシリンジ22及びプランジャ23からなり、液体供給部20がプランジャ23を等速で移動可能な等速移動機構30を有する。これにより、簡易な構成で潤滑油の供給を実現できるので、粒子計数装置1の更なる小型化を図ることができる。
また、液体供給部20(貯留部21)、センサ部10及び排出部40は、上からこの順に直接接続され、且つ、図1に示すように、それぞれを貫通する液体の流路が直線状に配置されているため、流路を短くすることができる。これにより流路を満たす液体が少量で済むため、計測に必要な液体の量を8mlと少量とすることができる。また、計数する液体を用いて共洗いすることによって十分に流路全体の洗浄を行うことができるため、別途洗浄液による洗浄が不要となる。更に、流路が直線状且つ鉛直に配置されて排出部40の先端が廃液容器7に差し込まれ、排出部40から排出される液体を廃液容器7内に滴下させることができるため、排出のための構成を容易な構造とすることができる。
(4)他の実施の形態
本粒子計数装置は、図8に例示する異なるセンサ部及び対応する識別計数部により、粒子の形状や磨耗形態の識別を行うようにすることができる。
図8に示すセンサ部は、半導体レーザ等からなる発光体12と、フォトダイオード等からなる遮断光受光体13と、フォトダイオード等からなる例えば複数の第1散乱光受光体14a〜14g及び第2散乱光受光体15a〜15gと、を備えている。
第1及び第2散乱光受光体14a〜14g、15a〜15gのそれぞれは、発光体12からの照射光の光軸に対して略平行な軸線上に並ぶように配設されている。これら第1及び第2散乱光受光体14a〜14g、15a〜15gは、潤滑油中の粒子pにより散乱された散乱光を受光して、所定の散乱光パルス信号(すなわち、測定値)に変換する。
そして、識別計数部50は、測定値に基づいて粒子の形状を識別することができる。ここでは、遮断光受光体13の測定値と、複数の第1散乱光受光体14a〜14gの各測定値より得られる第1散乱パターンP1a〜P4aの座標領域と、複数の第2散乱光受光体15a〜15gの各測定値より得られる第2散乱パターンP1b〜P4bの座標領域と、に基づいて粒子の形状を識別する。なお、上記散乱パターンP1a〜P4a、P1b〜P4bは図9に示すように、横軸に、照射光の光軸方向に対する各散乱光受光体14a〜14g(15a〜15g)の配設位置をとり、縦軸に、各散乱光受光体の散乱光パルス信号のパルス高さの値(すなわち、測定値)をとり、さらに各パルス高さの値を補間してなる線状のパターン(すなわち、複数の散乱光の座標領域)である。
例えば、遮断光受光体13の測定値が比較的小さな値であり、且つ第1及び第2散乱パターンP1a、P1bが異なる場合には、薄片状金属粉M1であると識別される。また、遮断光受光体13の測定値が比較的大きな値であり、且つ第1及び第2散乱パターンP2a、P2bが異なる場合には、カール状金属粉M2であると識別される。さらに、遮断光受光体13の測定値が比較的小さな値であり、且つ第1及び第2散乱パターンP3a、P3bが略均等である場合には、ボール状金属粉M3であると識別される。
また、識別計数部50は、粒子の形状識別処理で識別された粒子の形状に応じて磨耗形態を識別することができる。ここで、上記薄片状金属粉M1は、機械の正常なすべり磨耗により発生する正常磨耗粒子であることが知られている。また、上記カール状金属粉M2は、砂等の混入により金属表面が削られて発生する切削磨耗粒子であることが知られている。さらに、上記ボール状金属粉M3は、軸受疲労により発生する疲労磨耗粒子であることが知られている。したがって、粒子の形状が薄片状金属粉M1である場合には、正常磨耗であると識別される。また、粒子の形状がカール状金属粉M2である場合には、切削磨耗であると識別される。さらに、粒子の形状がボール状金属粉M3である場合には、疲労磨耗であると識別される。
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、複数の散乱光受光体を立体的に並設するようにしてもよい。
また、上記実施例では、各測定値を各軸の座標とした点の位置から粒子の材質や形状を識別する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、各測定値と所定の相関関係となるパラメータに基づいて粒子の材質や形状を識別するようにしてもよい。
また、上記実施例において、構成部品に関する情報(例えば、発光体の駆動時間等)に応じて構成部品の交換期限等を報知するようにしてもよい。
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
機械システム等の潤滑油、洗浄液、冷却水、排水等の液体中に含まれる粒子の個数を計数する技術として広く利用される。
1;粒子計数装置、10;センサ部、11;測定部、12;発光体、13;遮断光受光体、14、14a〜14g;第1散乱光受光体、15、15a〜15g;第2散乱光受光体、20;液体供給部、21;貯留部、22;シリンジ、23;プランジャ、30;等速移動機構、31;モータ、32;ロッド、33;連結部、40;排出部、50;識別計数部、60;台座、7;廃液容器。

Claims (4)

  1. 機械システムに用いられている潤滑油に光を照射したときの前記潤滑油中の粒子による遮断光及び複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の大きさ毎に個数を計数する粒子計数装置であって、
    前記潤滑油の流路に光を照射し前記遮断光及び前記複数の散乱光を測定するセンサ部と、
    脱着可能に設けられる貯留部を具備し、前記機械システムから採取され前記貯留部に貯留された前記潤滑油を前記流路5〜20ml/分の流量で供給する液体供給部と、
    前記センサ部から前記潤滑油を排出する排出部と、
    前記センサ部により測定される前記遮断光及び前記複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の大きさの識別及び計数を行う識別計数部と、を備え、
    前記液体供給部、前記センサ部及び前記排出部は、この順に直接接続されており、
    前記液体供給部と前記センサ部とを貫通する前記潤滑油前記流路が直線状に配置されていることを特徴とする粒子計数装置。
  2. 前記液体供給部、前記センサ部及び前記排出部は、上からこの順に直接接続されており、
    前記貯留部は、先端が下方となるように立設される注射器であり、
    前記液体供給部は、前記注射器のプランジャを等速で移動可能な等速移動機構を有する請求項1記載の粒子計数装置。
  3. 前記識別計数部は、前記遮断光及び前記複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の形状を識別する形状識別手段を備える請求項1又は2に記載の粒子計数装置。
  4. 前記識別計数部は、前記遮断光及び前記複数の散乱光の測定値に基づいて前記粒子の材質を識別する材質識別手段を備える請求項1又は2に記載の粒子計数装置。
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