JP6592100B2 - 高感染価かつ高純度のパルボウイルスの生産方法 - Google Patents

高感染価かつ高純度のパルボウイルスの生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、培養上清中に高感染価かつ高純度のパルボウイルスを生産する方法及び当該方法によって得られる高感染価かつ高純度のパルボウイルスに関する。
ウイルスはヒトを含め多くの動植物や微生物に感染し増幅する。あるものはDNAをゲノムとして有するDNAウイルスであり、またあるものはRNAをゲノムとして有するRNAウイルスであり、各ウイルスは、それぞれに異なる増殖機構を有する。ヒトなどの動物に感染した場合に、ウイルス感染症を引き起こすウイルスも多い。ウイルスは単独では増えることができず、他の動物・植物・微生物の細胞に感染して、その細胞の能力を利用して増えることができる。ウイルスが感染して増殖しうる細胞を、そのウイルスの「宿主細胞」と呼ぶ。ウイルスが感染・増殖し得る宿主細胞の種類はウイルスの種類ごとに決まっている。
パルボウイルスは小型の一本鎖DNAウイルスであり、直径約20nmと小さな正20面体ウイルスでエンベロープを持たない(非特許文献1)。パルボウイルスは、動物に感染することにより疾患を引き起こす。当該疾患としては、B19パルボウイルスがヒトに引き起こす伝染性紅斑や貧血、関節炎のほか、サルパルボウイルス(SPV)による貧血、ネコパルボウイルス(FPV)による猫の腸炎・白血球減少・失調症、イヌパルボウイルス(CPV)による犬の腸炎・心筋炎、ブタパルボウイルス(PPV)による豚の死産、ウシパルボウイルス(BPV)による牛の腸炎、ガチョウパルボウイルス(GPV)によるガチョウの腸炎・心筋炎、マウス微小ウイルス(MVM)によるマウスの腸炎・肝炎などが知られている(非特許文献2、非特許文献3)。パルボウイルスは、犬や猫といった人間が飼う動物の病気の原因を引き起こす病原体として重要である。犬にイヌパルボウイルスが感染すると、前述のように腸炎を起こし、激しい下痢や嘔吐を生じ、死亡することが知られている(非特許文献3)。猫がパルボウイルスに感染すると、急性腸炎や白血球減少を起こすことがあり、二次感染で死亡する可能性もあり、また胎子や新生子に感染すると、中枢神経や胸腺が障害を受け、運動失調を起こすこともあれば、死亡してしまうこともある。
パルボウイルス感染症を防ぐためにパルボウイルスのワクチンに関する研究が行なわれている(特許文献1、特許文献2)。これらの研究には、ウイルスを生産して使用する必要がある。多くのウイルスは、宿主細胞を培養し、これにウイルスを感染させることで、増殖させ、生産することができる。ウイルスを弱毒化あるいは不活化したワクチン生産も、ウイルス生産と同様の手順によって達成される。
製薬業界においては、遺伝子組み換え医薬品(バイオ医薬品)や抗体医薬品など生物由来の医薬品がウイルスに汚染していないこと(ウイルス安全性)を保証するために、製造工程のウイルスクリアランス(除去性能)を評価する必要がある。そのために各工程の前の医薬品中間製品にウイルスを添加して工程前後のウイルス量を定量することにより、個々の工程が有するウイルスクリアランスの測定が行なわれている。特に、生物製剤の製造工程のウイルスクリアランス評価に使用されるウイルス種類の選択方法について定めたICH(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use:日米EU医薬品規制調和国際会議)ガイドラインに記載された方法で実施される血漿分画製剤のウイルスクリアランス評価では、パルボウイルスの一種ブタパルボウイルス(PPV:Porcine Parvovirus)が高頻度で使用され、バイオ医薬品のウイルスクリアランス評価では、パルボウイルスの一種マウス微小ウイルス(MVM:Minute virus of mice)が高頻度で使用されている。このように、生物製剤の製造工程のウイルスクリアランス評価には高頻度でパルボウイルスが使用されている。
ウイルスを生産するには、実験動物を用いる方法、鶏卵を用いる方法、組織培養・培養細胞を用いる方法がある(非特許文献4)。実験動物や鶏卵を用いる方法は高コストであるという欠点がある。それに代わる方法が培養細胞を用いる方法である。パルボウイルスの生産も、培養細胞を用いる方法で行なわれる(特許文献1)。
パルボウイルスなどのウイルスを生産するためには、宿主細胞の培養系にシードウイルスを感染させて、ウイルスを増殖させて回収する方法が一般に行なわれる。ここで言うシードウイルスとは、ウイルス増殖の初期に用いる少量のウイルスを「種」にみたてた呼称である。従来のウイルス生産において、宿主細胞にシードウイルスを感染させるタイミングは、通常、宿主細胞がコンフルエントに到達し、単層状態を形成した段階である(非特許文献4、特許文献3〜6)。すなわち、宿主細胞を培養容器に接種し、増殖させ、培養容器底面の全面に宿主細胞が増殖し広がった状態で、シードウイルスを接種するのが通常であるが、それは、感染しうる細胞が高密度に存在する状況が、より多くのウイルスを生産する場を提供する系だからである。宿主細胞を培養容器に接種してからこのコンフルエントの状態になるまでには、通常2〜3日要する(非特許文献4)。このコンフルエント状態では、宿主細胞は定常期であり、それ以上増殖しない。したがって、従来技術は、宿主細胞の増殖培養工程を完了した後に、それ以上細胞増殖が起こらない培養環境下でウイルス感染を開始し、ウイルス感染により宿主細胞が死滅するのと同時進行でウイルスを培養上清中に生産するというものであった。このような方法は、パルボウイルスにおいても例外ではなく、コンフルエント状態の細胞に感染させる方法でウイルス生産が行なわれ(非特許文献5,非特許文献6)、得られるパルボウイルスの感染価は105〜107TCID50/mLであった。従来の培養系においては、最も細胞数が多い状態であるコンフルエントの状態で宿主細胞にパルボウイルスが添加され、添加されたパルボウイルスは宿主細胞内で増殖し、宿主細胞の死滅を伴って増加する。最もパルボウイルス感染価が高くなる時期に培養上清を回収することで、最も高感染価のパルボウイルス溶液を回収することができる。この方法で培養上清中に得られたパルボウイルスは、当然ながら細胞培養に供された培地中に懸濁した状態で回収される。
また、上記のようにして得られたパルボウイルス溶液について、不純物を除去することも行われる。除去方法として、低速遠心分離によって細胞の破片などの不純物を除去することが行なわれる(非特許文献7)。
WO2007/125605号公報 特表平10−508485号公報 特開2009−297036号公報 特許第2655876号公報 特公昭58−22008号公報 特開昭61−24370号公報
ウイルス・細菌感染newファイル 1997 永井美之・渡邊治雄編、羊土社:p.68 ウイルス学 1997 畑中正一編、朝倉書店:222−223 M.Azetaka et.al 1980 Jpn.J.Vet.Sci.43:243-255 ウイルス実験学総論 国立予防衛生研究所学友会編 1973:61、113、131及び166−176 P.A.Bachmann 1972 Proc.Soc.Exp.Biol.Med.(140)4:1369-1374 P.A.Bachmann et al. 1976 Zbl.Vet.Med.B. No.23:355-363 ウイルス実験学各論 1973 国立予防衛生研究所学友会・編 22−23
上記のとおり、生物由来の医薬品のウイルス安全性評価やワクチン生産に使用するために、高い感染価のパルボウイルスを生産することが望まれている。
また、上記で述べた生物製剤の製造工程のウイルスクリアランス評価でも、高い感染価のウイルスを生産することが望まれている。当該評価のためのウイルス除去フィルターのウイルスクリアランス試験は、実生産工程をスケールダウンしたモデル工程にて実施されるが、このウイルスクリアランス試験に要求される点は、第一に、フィルターの目詰まりが生じない程度のウイルス懸濁液添加量であることと、第二に、評価する工程のウイルスクリアランス数値である対数除去率(LRV)が4以上であることを示せる添加量であることである。前者については、工程の流速を含めた諸パラメーターが実生産工程と同じでなければならない(WHO Technical Report, Series No.924, 2004 162-165)ため、ウイルス添加による目詰まりが生じない添加量にする必要がある。そのためには、体積比で1%以下、好ましくは0.1%以下の添加が望ましい。後者のLRVについては、4以上ある工程が、ウイルス除去に関して堅牢性を持ち効果的で信頼性のある工程(A Robust, effective and reliable process step)であると見なされることから(WHO Technical Report, Series No.924, 2004 163-164)、4以上を結果として出すことができるウイルス添加量にする必要がある。このように、ウイルス除去性能としてLRVが4以上であることを示す必要があり、また中間製品に添加するウイルス懸濁液の量は体積比で1%以下、好ましくは0.1%が望ましい。しかしながら、従来の培養法で得られる低い感染価のパルボウイルス(感染価は105〜107TCID50/mL、パルボウイルスの感染価(TCID50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比が10未満:1)を1%又は0.1%添加した場合には、プレフィルターでのロスや、定量誤差の問題からLRVが4以上であることを示すことが困難となってくる。このときLRVが4以上であることを確実に示すためには、ウイルス添加体積を増やさねばならず、そうするとフィルターの目詰まりなどの弊害が起こりやすくなる問題がある。
また、ウイルス除去膜の新しい評価基準として、単位膜面積あたりのウイルス負荷量を従来よりも増加させた際のウイルス除去性が近年注目されている。この評価では、従来の測定よりも多くのウイルス溶液を濾過するため、添加するウイルス懸濁液が増えるに従って、ウイルス懸濁液に含まれる不純物蛋白質も一緒により多く濾過されてしまい、フィルターの目詰まりなどの弊害が起こる可能性が従来の測定よりも高くなる。そのため、ウイルス溶液に含まれる不純物蛋白質濃度が更に低いものであることが望まれる。
従来、このような問題を解決するために、超遠心分離によってウイルスを沈殿させる等の操作で濃縮する手法が可能であった。しかしながら、これらの手法では、不純物も同時に濃縮されるため、実験の結果や、ウイルス除去フィルター濾過時に不純物の悪影響が生じてしまう問題がある。
さらに、ウイルスをセシウム密度勾配超遠心方法やスクロース密度勾配超遠心等の密度勾配超遠心分離により濃縮する技術は、操作が極めて煩雑で難しい熟練技術が要求される。加えて、汎用的な超遠心分離機の遠心管の体積が律速となり、スケールアップが困難なため、一般には小規模の実験でしか行なえず、産業上これらの濃縮工程を取り入れることは現実的ではない。
また、高感染価のウイルス懸濁液を得るために、感染細胞を回収して凍結融解を繰り返して細胞を強制的・物理的に破壊して、細胞内部に蓄積したウイルスを回収する方法も知られている。マウス微小ウイルスなどで通常行なわれているウイルス生産方法であるが、この方法では大量の宿主細胞内部の不純物が混入してしまう。
このように、従来のウイルス生産技術を採用することは極めて困難であり、複雑な操作である超遠心分離などの濃縮操作を用いずに、より簡便で効率的に、高純度の高感染価のパルボウイルスを得る方法が望まれている。
本発明者は、まず、従来採用されていなかった極めて低い特定範囲の細胞密度の宿主細胞に、特定範囲の低い感染多重性(MOI)でパルボウイルスのシードウイルスを感染させ、さらに、特定の期間宿主細胞を培養して培養上清を回収することで、パルボウイルス特有の増殖機構を利用して、従来法よりも高い感染価のパルボウイルスが得られることを発見した(WO2014/080676)。
本発明者らは、さらに上記の課題を解決すべく、宿主細胞にパルボウイルスのシードウイルスを接種し、パルボウイルスを増殖させる培養系における諸条件(初期宿主細胞密度や培地交換時期を含めた培養時間)と得られるウイルス感染価及び純度との関係について鋭意検討した結果、驚くべきことに、従来採用されていなかった算出法を用いて宿主細胞の感染時細胞数を決定し、さらに、特定の期間宿主細胞を培養後、培養上清を一度無血清培地に交換し、特定の期間追加培養後に培養上清を回収するという従来行われていなかった方法を採用することで、従来法では得られなかった非常に高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られることを発見するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
高感染価かつ高純度のパルボウイルスの生産方法であって、
(a)宿主細胞がパルボウイルスに感染した際の培養基材の細胞密度の24時間毎の経時変化を、感染時細胞密度(A)毎に事前に別途算出しておく工程と、
(b)工程(a)において事前に算出した細胞密度の経時変化から、
(b1)感染から、細胞密度の経時変化のピーク時までの時間(Tmax)と、
(b2)Tmaxにおける細胞密度(Bmax)とAが以下の式(1)を満たすA1と、
(b3)そのようなA1のうち最大の感染時細胞密度(Amax)と、
(b4)以下の式(2)を満たすA2と、
を決定する工程と、
max/A1 >1.2 式(1)
max ≧ A2 ≧ Amax/10 式(2)
(c)工程(b)の(b4)で決定したA2の感染時細胞密度の宿主細胞と血清培地とを含む前記培養基材に、パルボウイルスのシードウイルスを感染多重性(MOI)が0.001〜0.1となるように接種する工程と、
(d)工程(c)で得られた宿主細胞とパルボウイルスとを含む培養物を、工程(b)の(b1)で決定したTmax以上Tmax+48時間未満の時間培養する工程と、
(e)工程(d)の培養上清を無血清培地に交換し、12時間以上培養する工程と、
(f)工程(e)の培養により得られるパルボウイルスを含む培養上清を回収する工程と、
を含み、前記工程(b)において、式(1)を満たすAが存在しない場合、別の感染時細胞密度Aを採用して工程(a)及び工程(b)を再度実施する、方法。
[2]
前記宿主細胞が、接着依存性細胞である、[1]に記載の方法。
[3]
前記パルボウイルスが、ブタパルボウイルス(PPV)、イヌパルボウイルス(CPV)、マウス微小ウイルス(MVM)、ラットウイルス(RV)、H−1ウイルス(H−1)、ネコパルボウイルス(FPV)、ガチョウパルボウイルス(GPV)、又はウシパルボウイルス(BPV)である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記工程(e)が、培養上清を無血清培地に交換し、24時間以上培養する工程である、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記工程(b)が、BmaxとAが以下の式(1’):
max/A1' ≧ 2.0 式(1’)
を満たすようなA1'を算出する工程を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記工程(d)及び(e)における培養が、33℃以上39℃以下の温度で実施される、[1]〜[5]のいずれかに記載のパルボウイルスの生産方法。
[7]
前記工程(d)及び(e)において、前記宿主細胞と前記パルボウイルスが同時進行で増殖する、[1]〜[6]のいずれかに記載のパルボウイルスの生産方法。
[8]
前記工程(f)が、前記培養上清に含まれる遊離の宿主細胞と宿主細胞の破片とを除去する工程を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
前記除去工程が、孔径0.2μm〜0.45μmの膜濾過を用いて行われる、[8]に記載の方法。
[10]
[1]〜[9]のいずれかに記載の方法によって得られる、109TCID50/mL以上の感染価のパルボウイルス。
[11]
パルボウイルスの感染価が109TCID50/mL以上であり、かつ、前記パルボウイルスの感染価(TCID50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比が5000:1超である、非濃縮の細胞培養上清由来のパルボウイルス。
本発明により、細胞培養で簡便で効率的に、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られる。これにより、パルボウイルス使用時の感染価不足及び不純物蛋白質に起因する弊害を解消することが可能になる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態は、109TCID50/mL以上の高感染価かつ、不純物蛋白質濃度に対するウイルス感染価が5000(TCID50/mL)/(ng/mL)以上の高純度のパルボウイルスを生産する方法であって、
(a)宿主細胞がパルボウイルスに感染した際の培養基材の細胞密度の24時間毎の経時変化を、感染時細胞密度(A)毎に事前に別途算出しておく工程と、
(b)工程(a)において事前に算出した細胞密度の経時変化から、
(b1)感染から、細胞密度の経時変化のピーク時までの時間(Tmax)と、
(b2)Tmaxにおける細胞密度(Bmax)とAが以下の式(1)を満たすA1と、
(b3)そのようなA1のうち最大の感染時細胞密度(Amax)と、
(b4)以下の式(2)を満たすA2と、
を決定する工程と、
max/A1 >1.2 式(1)
max ≧ A2 ≧ Amax/10 式(2)
(c)工程(b)の(b4)で決定したA2の感染時細胞密度の宿主細胞と血清培地とを含む前記培養基材に、パルボウイルスのシードウイルスを感染多重性(MOI)が0.001〜0.1となるように接種する工程と、
(d)工程(c)で得られた宿主細胞とパルボウイルスとを含む培養物を、工程(b)の(b1)で決定したTmax以上Tmax+48時間未満の時間培養する工程と、
(e)工程(d)の培養上清を無血清培地に交換し、12時間以上培養する工程と、
(f)工程(e)の培養により得られるパルボウイルスを含む培養上清を回収する工程と、
を含み、前記工程(b)において、式(1)を満たすAが存在しない場合、別の感染時細胞密度Aを採用して工程(a)及び工程(b)を再度実施する、方法に関する。
工程(a):まず、パルボウイルス宿主細胞がパルボウイルスに感染した際の培養基材の細胞密度の24時間毎の経時変化を、感染時細胞密度(A)毎に事前に別途算出する。
なお、宿主細胞は、継代培養によって増殖させることができる。
パルボウイルスは小型の線状1本鎖DNAウイルスである。DNAウイルスは、ゲノムとしてDNAを有するウイルスであり、宿主細胞のRNAポリメラーゼを利用してゲノムDNAからmRNAを合成し、該mRNAをもとに蛋白質を合成して増殖する。DNAウイルスのほとんどは、2本鎖DNAウイルスであるが、パルボウイルスは線状1本鎖DNAをゲノムとして有する。1本鎖DNAの状態ではウイルス増殖はできないため、パルボウイルスは、宿主細胞のRNAポリメラーゼに加えて、DNAポリメラーゼを用いて二本鎖DNAの状態を経て増殖するという特有の増殖機構を有する。
パルボウイルス科(Parvoviridae)ウイルスは、パルボウイルス亜科に属する3つの属、すなわち、ウイルス複製にヘルパーウイルスを必要とせず宿主細胞内で自律的に増殖するパルボウイルス属(Parvorivirus)、ヘルパーウイルスを必要とするディペンドウイルス属(Dependovirus)、及び赤血球特異的に感染するエリスロウイルス属(Erythrovirus)と、デンソウイルス亜科に属する3つの属、昆虫に感染するデンソウイルス属(Densovirus)、イテラウイルス属(Iteravirus)、及びブレビデンソウイルス属(Aedes aegypti densovirus)が知られている。本実施形態における「パルボウイルス」とは、パルボウイルス属のウイルスをいう。パルボウイルス属のウイルスは全て類似の増殖機構を有するため、本実施形態の方法が共通して利用できる。
より具体的には、パルボウイルス属のウイルスは、増殖を停止している細胞(休止細胞)のDNA代謝を誘導するための補助タンパク質を有さず、また、二本鎖の転写鋳型も有さないため、宿主細胞のDNA合成機構がS期の開始と共に活性化し、宿主細胞からのDNA相補鎖の提供があるまで、自己の遺伝子を発現することができない。このような構造のパルボウイルス属のウイルスは、増殖を停止している細胞のDNA代謝を誘導してその合成系を利用することができないため、分裂増殖しているS期の細胞に感染し、細胞の増殖に伴って増殖する増殖機構を有する。
本実施形態におけるパルボウイルス(パルボウイルス属ウイルス)には、限定するものではないが、ブタパルボウイルス(Porcine Parvovirus PPV)、イヌパルボウイルス(Canine Parvovirus CPV)、マウス微小ウイルス(Minute Virus of Mice MVM)、ラットウイルス(Rat Virus RV)、H−1ウイルス(H-1 Virus H-1)、ネコパルボウイルス(Feline Parvovirus FPV)、ガチョウパルボウイルス(Goose Parvovirus GPV)、ウシパルボウイルス(Bovine Parvovirus BPV)が含まれる。これらのウイルスは、類似した大きさ、ゲノム構造、ウイルス粒子構造、増殖機構を有しており、すべて本実施形態の方法において好適に使用可能である。
本実施の形態において、「パルボウイルス」とは、特段の言及のない限り、パルボウイルス及びこれを含むパルボウイルス溶液のいずれをも指す。パルボウイルス溶液は、パルボウイルスを含む限り特に限定されず、例えばパルボウイルスを感染させた宿主細胞を培養後の培養上清及びこの培養上清から不純物除去後のウイルス懸濁液を含む。
本実施形態における「宿主細胞」は、上記のパルボウイルスに感受性がある(パルボウイルスに感染できる)細胞であればその種類は限定されない。パルボウイルスに感受性がある細胞としては、例えば、ブタパルボウイルスに感受性があるPK-13細胞、PK-15細胞、LCC-PK1細胞、ESK(embryonic swine kidney)細胞、SK細胞、ST(swine testes)細胞及びMPK(Minipig kidney)細胞、イヌパルボウイルスに感受性があるMDCK(Mardin-Darby canine kidney)細胞、FEA(feline embryonic fibroblasts)細胞、CRFK(Crandell feline kidney)細胞及びFK-81細胞(embryonic feline kidney)、マウス微小ウイルスに感受性があるA9(mouse fibroblast)細胞及びC6(rat glial)細胞、ラットウイルスに感受性があるNRK(normal rat kidney)細胞、H-1ウイルスに感受性があるMolt-4(human T-cell)細胞、AV-1(human B-cell)細胞及びNC-37(human B-cell)細胞、ネコパルボウイルスに感受性があるCRFK細胞、Mya 1細胞、NLFK(Norden Laboratories Feline Kidney)細胞及びA72細胞、ガチョウパルボウイルスに感受性があるGEF(goose embryo fibroblast)細胞、ウシパルボウイルスに感受性があるBEK(bovine embryonic kidney)細胞、バッファロー肺腺維芽細胞及びEBTr(bovine embryonic trachea)細胞等が挙げられる。宿主細胞は、好ましくは、感染により細胞変性を起こす細胞が利用できる。例えば、ブタパルボウイルスの場合はブタの腎臓細胞、イヌパルボウイルスの場合はイヌ腎臓細胞を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、上記のとおり、パルボウイルスに対して感受性があり、好適には細胞変性を起こす細胞であれば広く適用可能である。また、本実施形態において、「宿主細胞」としては、無限増殖能を持った動物細胞を用いることができ、一般に「細胞株(Cell line)」と呼ばれるものを用いることができる。
本実施形態において、宿主細胞は、培地交換が容易であるという観点から、接着依存性細胞であることが好ましい。「接着依存性細胞」とは、筋細胞や臓器細胞のように培養基質に接着した状態でないと生存・増殖できない細胞である。接着依存性細胞は、培養フラスコなどの培養基材の底面・壁面や、マイクロキャリアと呼ばれる担体に付着させて培養される。フラスコやシャーレは一般に小スケール培養に用いられる。マイクロキャリアを用いた培養は、逐次スケールアップが容易である利点がある(特許第3982843号 多孔質担体を用いた動物細胞の逐次培養方法)。また、本実施形態において、浮遊性細胞を用いることもできる。「浮遊性細胞」は、浮遊状態で増殖し、培地中に懸濁させた状態で静置又は攪拌して培養される。浮遊性細胞では、培養上清を回収する前に培地交換を行なうことが困難となるため、例えばマイクロキャリアに付着させて培養することが望ましい。
本実施形態において「培養基材」は、その種類が限定されるものではなく、培養容器、培養フラスコ、シャーレ、ローラーボトル、培養プレートなど、細胞培養で通常用いられる任意の培養基材が含まれる。
培養は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)、イーグル培地(MEM培地)、F−12培地等技術分野において通常用いられる培地、好適にはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)を用い、5%程度の二酸化炭素ガス環境下で行うことができるが、宿主細胞の増殖に適した環境培養条件であれば、これに限定されるものではない。培養温度は、宿主細胞の増殖に適した温度とすることができる。パルボウイルスの宿主細胞は33℃〜39℃の範囲で増殖することが知られているため(「動物細胞培養法入門(生物化学実験法29)松谷 豊著/学会出版センター」p.14-15)、好ましくは、培養温度は33℃以上39℃以下、例えば約37℃とすることができる。なお、細胞増殖因子を含む動物血清(牛胎児血清や子牛血清、馬血清など)を10%以下の割合で含む培地を使用することが望ましく、後述の工程(c)及び(d)における培地と同様の培地を使用することが好ましい。
本実施形態において、「感染価」とは、ウイルス感染力価を示す単位であり、ウイルス業界でしばしば使用される「タイター(Titer)」と同義である。ウイルスは光学顕微鏡を用いても見ることができないため、生物細胞のように顕微鏡で密度(個数/体積)を計測することができない。従って、ウイルスの場合は宿主細胞への感染能を利用した感染力価を単位として、その量や濃度の代替とする。例えば、宿主細胞の単層に対し適当な倍率で希釈したウイルス懸濁液を添加すると、ウイルスの個数がプラークとして検出され、プラーク形成単位(plaque forming unit=pfu)/mLとして感染力価を測定できる。あるいは、ウイルスが含まれている液体の希釈を進めていき、宿主細胞への感染陽性を生じる割合が50%になる濃度を50%感染量(tissue culture infectious dose=TCID50)/mLとして感染力価を測定できる。本実施形態において、使用するパルボウイルスはいずれもTCID50/mLとして感染力価を測定でき、TCID50/mLとして感染力価を表記することができる。なお、pfu/mLなどの他の単位によってパルボウイルスの感染力価を表してもよい。他の単位で感染力価を測定できるパルボウイルスにおいては、同一のパルボウイルス懸濁液を同時に双方の単位で感染力価測定することによって、異なる単位間の換算を容易に実施しうる。
本実施形態において、「宿主細胞がパルボウイルスに感染した際の培養基材の細胞密度の24時間毎の経時変化」の算出は、培養容器中において特定の多重感染性(MOI)でパルボウイルスに感染させた宿主細胞を接種した後、24時間毎に細胞を回収して培養基材中の細胞数を計測することにより行うことができる。ここで、「感染多重性」とは、宿主細胞数に対するウイルスの添加量の比率であり、ウイルス感染価/宿主細胞数で表される。宿主細胞にパルボウイルスが感染後、細胞はまず増殖し培養基材中の細胞密度は増加する。一定期間後、細胞はウイルスによる感作により死滅を始めるため、細胞密度はピークを迎えその後減少する。このような経時変化を、宿主細胞がパルボウイルスに感染した際の感染時細胞数毎に算出する。
細胞数の算出は当業者に公知の手法を用いて行うことができ、例えば、以下のようにして行うことができる。まず細胞基材に接着した細胞に、少量のトリプシンなどの蛋白質分解酵素やEDTAなどのキレート剤又はそれらの混合液を加えて宿主細胞を培養容器から剥がす。剥がれた細胞溶液を血清を含む培地で希釈し、細胞剥離作用を抑えた後、血球計算盤などに希釈後の溶液を注入し、顕微鏡下で細胞数を計測する。セルソーター又はセルカウンターで細胞数を計測することもできる。
本実施形態の工程(a)において、複数の異なる感染時細胞密度(A)のそれぞれについて、感染後の細胞密度の24時間毎の経時変化を算出する。工程(a)における感染時細胞数の選定方法は、後述の工程(b)において、式(1)を満たすAが選定できる限り特に限定されない。工程(b)において式(1)を満たすAが存在しない場合、異なるAを採用して工程(a)及び(b)を再度実施することができる。
一態様において、例えば、宿主細胞のコンフルエント状態の細胞密度(以下Cとする)を基準として、C〜C/100程度、例えば、C、C/3、C/10、C/30及びC/100程度をAとして選定することができる。
工程(b):工程(a)において事前に算出した細胞密度の経時変化から、適切な感染時細胞密度を決定する。
(b1)パルボウイルスに感染した宿主細胞は、感染後一定期間中は増殖するが、ピークに達した後はウイルスによる感作により死滅していくため、まず、感染から細胞密度の経時変化のピーク時までの時間(Tmax)を決定する。
(b2)次に、Tmaxにおける細胞密度(Bmax)とAが以下の式(1)を満たすA1を決定する。
max/A1 > 1.2 式(1)
パルボウイルス特有の増殖機構では、ウイルスと宿主細胞とが同時増殖するため、感染時細胞数(A)からピーク時のTmaxまでに細胞が1.2超、例えば1.5倍以上、好ましくは1.75以上、より好ましくは2.0倍以上に増殖するような感染時細胞数A1が適切であると考えられる。これは理論に束縛されるものではないが、Aが大きすぎる場合、コンフルエント状態の細胞数に近くなるため宿主細胞自体が増殖することができずBmax/Aが小さくなる傾向にあり、一細胞あたりのウイルス生産量が下がるためであると考えられる。
(b3)次に、そのようなA1のうち最大の感染時細胞密度(Amax)を決定し、
(b4)このAmaxから、以下の式(2)を満たすA2を決定する。
max ≧ A2 ≧ Amax/10 式(2)
Aが小さすぎる場合、ピーク時の細胞密度(Bmax)は培養基材の制限を受けることがないためBmax/Aは高い値で一定となり一細胞あたりのウイルス生産量は頭打ちとなる。一方でウイルス濃度は宿主細胞の数に依存するため、Aが小さくなるほどウイルス濃度は低くなる傾向にあると考えられる。
そのため適切な感染時の細胞数Aは、工程(a)において選定したいくつかのAのうち、Bmax/Aが式(1)を満たすA1中で最大のA(Amax)であると考えられる。さらに、このAmaxから感染時細胞密度を1/10程度下げても高感染価かつ高純度のパルボウイルスを回収することができると考えられる。これは、理論に束縛されるものではないが、AがAmaxから多少減少してもAの減少に対応して一細胞あたりのウイルス生産量が上がるため、最終的に得られるパルボウイルス濃度が変わらないからであると考えられる。
工程(c):次いで、工程(b)において決定したA2の適切な細胞密度の宿主細胞と血清培地とを含む培養基材に、パルボウイルスのシードウイルスをMOIが0.001〜0.1となるように接種する。
工程(c)においては、まず、A2より少ない細胞密度で宿主細胞を予め培養基材へ接種させておき一定時間培養後にA2の細胞密度とするか、あるいはA2の細胞密度となるような量の宿主細胞含有血清培地を培養基材へ接種することにより適切な細胞密度の宿主細胞を含む培養基材を調製することができる。血清培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)、イーグル培地(MEM培地)、F−12培地等に、牛胎児血清、子牛血清、馬血清等の動物血清を例えば0.5%〜15%、好ましくは1%〜10%含む培地を用いることができる。
本実施形態では、非ウイルス感染の宿主細胞の倍加時間やコンフルエント状態のパラメーターではなく、上記のように、パルボウイルスに感染した宿主細胞の細胞密度の経時変化から感染時細胞数を決定することが重要な特徴である。パルボウイルスの場合、従来のウイルス生産方法の常識であるコンフルエント状態の宿主細胞にウイルスを感染させる方法では、宿主細胞の増殖は見られず、宿主細胞は感染による細胞変性を経て死滅への一途をたどるだけであったのに対し、本実施形態では、パルボウイルス感染後も宿主細胞が一定倍率以上増殖する余裕を残した宿主細胞密度でウイルス感染させることよって、高感染価かつ高純度のパルボウイルスを得ることに成功した。過去の知見として極めて低い細胞密度で感染を開始して宿主細胞増殖とパルボウイルス増殖とを同時進行させる技術が存在するが(WO2014/080676)、本実施の形態によれば、かかる技術よりもさらに高感染価かつ高濃度のパルボウイルスを得ることができる。
次に、工程(c)において、上記のとおり調製したA2の細胞密度の宿主細胞を含む培養基材に、パルボウイルスのシードウイルスを感染多重性(MOI)が0.001〜0.1となるように接種する。パルボウイルスのシードウイルスの接種は、上記の宿主細胞を培養基材に接種するのと同時にMOIが0.001〜0.1となるようにシードウイルスを接種してもよいし、より低い細胞密度で宿主細胞培養を開始し、上記のA2の細胞密度になった時点でMOIが0.001〜0.1となるようにシードウイルスを接種してもよい。上記所定のMOIの範囲は一般的にパルボウイルスを増殖させる際に使用される値の範囲であり、この範囲内であれば高濃度高純度のウイルスを回収するという目的に影響しない。
工程(d):パルボウイルスのシードウイルスの接種後、上記パルボウイルスと宿主細胞とを含む培養物を所定の時間培養する。工程(d)において、宿主細胞とパルボウイルスが、同時進行で増殖する。培養時間は、上記工程(b)の(b1)で決定した、ウイルス感染から細胞密度の経時変化のピーク時までの時間(Tmax)以上Tmax+48時間未満の時間であり、例えばTmax以上Tmax+36時間以下の時間であり、好ましくはTmax以上Tmax+30時間以下の時間であり、より好ましくはTmax以上Tmax+24時間以下の時間である。上記所定時間の培養中、宿主細胞に感染したシードウイルスの大半は、宿主細胞の中で宿主細胞の機能を借りて自らを複製し、細胞内に留まっている。
工程(e):工程(d)において所定時間培養した培養上清には、血清由来の不純物蛋白質が多く含まれるが、ウイルスに感染した宿主細胞の多くは培養基材に接着したままである。本実施形態では、培養に用いた血清培地を無血清培地に交換することで、不純物蛋白質を除去し、高純度のパルボウイルスを回収することができる。無血清培地としては、上記工程()について記載した培地に血清を添加しないものを用いることができる。
培地交換後、12時間以上、好ましくは18時間以上、より好ましくは24時間以上培養することで、ウイルスに感染していた宿主細胞からウイルスが放出され、ウイルスを含んだ培養上清が得られる。また、培地交換後36時間以上培養しても得られるパルボウイルスの感染価に影響は無いと考えられる。よって、培養コストの面から培地交換後の培養時間は36時間以下とすることが好ましい。
工程(d)及び(e)における培養時の培養温度は、宿主細胞の増殖に適した温度とすることができ、好ましくは33℃以上39℃以下、例えば約37℃とすることができる。また、工程(a)における培養条件と同じ条件で培養することが望ましいことから、工程(a)においてパルボウイルスに感染した宿主細胞の細胞密度を事前に算出した際の培養温度と同程度の培養温度とすることが望ましい。
工程(f):上記所定の時間培養した後、パルボウイルスを含む培養上清を回収する。なお、従来法として、感染宿主細胞を凍結融解の繰り返しなどで感染宿主細胞を破壊し、ウイルスを回収する方法があるが、この方法では破壊に際して宿主細胞内部の不純物が大量に放出されてしまう。一方、本実施形態のように、培養上清を回収する方法でもウイルス感染によって崩壊した宿主細胞由来の不純物が混入するものの、不純物量は宿主細胞の凍結融解破壊を行った場合よりも顕著に少ない。また、パルボウイルス及び宿主細胞の培養上清を無血清培地に交換することにより、血清培地のみで培養した場合よりも血清由来の不純物量も顕著に少なくなる。したがって、本実施形態では、高感染価かつ高純度のパルボウイルスを培養上清から簡便に回収することができる。
上記の本実施形態の方法により、109TCID50/mL以上の高感染価パルボウイルスを得ることができる。
工程(f)の回収は、遊離の宿主細胞や宿主細胞の破片などの不純物などを除去する工程を含むことができ、この除去工程は、既知の条件での低速遠心分離にかけることにより実施することができる。あるいは/さらに、孔径0.1〜0.5μm、好ましくは、0.2〜0.45μmの膜濾過により、不純物を除去することができる。
工程(f)の回収は、好ましくは、培養上清を濃縮せずに行うことができる。これにより、後述する濃縮に伴う不純物の濃縮が起こらず、高純度のパルボウイルスを容易に得ることができる。
上記のとおり、パルボウイルスの培養・回収を行うことにより、パルボウイルスの感染価(TCID50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比が5000:1超、好ましくは9000:1超である高純度のパルボウイルスを得ることができる。「不純物」としては、遊離の宿主細胞や宿主細胞の破片、宿主細胞や血清成分に由来する蛋白質などが挙げられるが、遊離の宿主細胞や宿主細胞の破片はサイズが大きく、上記の遠心分離や濾過等の既知の方法で容易に除去できるため、本実施の形態の一態様においては、蛋白質濃度を不純物の存在割合を示す指標として用いる。
不純物蛋白質濃度の測定は、当業者に公知の手法を用いて行うことができ、例えば、後述の実施例に示す通り、市販のプロテインアッセイ試薬等を用いてBCA法により行うことができる。
本実施形態はまた、高純度かつ高感染価の、非濃縮の細胞培養上清由来のパルボウイルスに関する。
本実施形態において、濃縮とは、濃縮前と比較して濃縮後のウイルス濃度が増加すること、すなわち感染価が増加することを指す。一態様において、本実施形態のパルボウイルスは、このような濃縮を経ずに培養上清から得られた、濃縮に伴う不純物の濃縮のない高純度のパルボウイルスである。
具体的には、濃縮操作としては、セシウム密度勾配超遠心、スクロース密度勾配遠心等の密度勾配遠心;超遠心分離;陽イオン交換カラムクロマトグラフィ;限外ろ過;タンジェンシャルフローろ過;化学誘導性沈殿;ウイルス吸着型クロマトグラフィ;ポリマー誘導性凝集;膜吸着等が挙げられる。
濃縮以外の操作としては、超遠心分離ではない遠心分離(10,000xg以下かつ100,000xg・h以下の遠心分離)、除菌膜濾過等が挙げられ、より具体的には後述の実施例における精製操作が挙げられる。
上記のとおり、本実施形態により不純物蛋白質濃度の低い高純度かつ109TCID50/mL以上の高感染価のパルボウイルスが得られ、パルボウイルス使用時の様々な感染価不足に起因する弊害を解消することが可能になる。以下、代表的な3つの用途に関連して述べる。
1つ目の用途、すなわちウイルスを抗ウイルス薬探索等の研究用途に使用する場合、不純物の存在は、目的の反応を阻害する等の悪影響を及ぼす恐れがある。したがって、実際に試験に供するウイルス感染価よりも高い感染価のウイルスを生産しておき、不純物が影響しない程度にまで希釈して研究に使用することになる。高いウイルス阻害活性を測定できるようにするためには、高いウイルス感染価で試験に供さねばならないため、それよりも高い感染価のウイルスを生産しておく必要がある。つまり、細胞培養で得られるウイルスの感染価は高い方が望ましい。本実施形態により、109TCID50/mL以上の高感染価のパルボウイルスが得られることにより、パルボウイルスを用いた抗ウイルス薬研究において、希釈してから研究材料として供することが可能になり、不純物による予期せぬ反応や干渉を軽減することが可能になる。
2つ目の用途、すなわち生物製剤の製造工程のウイルスクリアランスを評価するためにウイルスを生産する場合もウイルスが高純度かつ高感染価であることが望ましい。上記のとおり、このウイルスクリアランス試験に要求される点は、第一に、フィルターの目詰まりが生じない程度のウイルス懸濁液添加量であることと、第二に、評価する工程のウイルスクリアランス数値である対数除去率(LRV)が4以上であることを示せる添加量であることである。LRV4以上であるためには、ウイルス除去フィルター工程に供する中間製品にウイルス感染化が104TCID50/mLとなるようにウイルスを添加しなければならないが、実際には、ウイルス感染価の定量誤差や、ウイルス粒子の会合体を除去するプレフィルターでのロス及び、ウイルス検出下限が上昇する可能性(濾過溶液が細胞毒性を持つ場合、濾過溶液を希釈してウイルス感染価を測定しなければならずウイルス検出下限が上昇する)を考慮して、106TCID50/mL以上となるようにウイルスを添加する必要がある。体積比で0.1%添加して、106TCID50/mL以上とするには、元のウイルス懸濁液は109TCID50/mL以上であることが必要である。本実施形態により、高純度の109TCID50/mL以上の高感染価のパルボウイルスが得られることにより、各工程のパルボウイルスクリアランスを評価する際に、パルボウイルスの添加を顕著に減らすことが可能になり、パルボウイルス由来の不純物によるフィルターの目詰まりの問題を解消することができる。なお、上記のとおり、近年ウイルス除去フィルターの新しい評価基準として、単位膜面積当たりのウイルス負荷量を従来よりも増加させた際のウイルス除去性、例えば1013TCID50/m2以上のウイルスを負荷した際のウイルス除去性が注目されている。従来の方法で回収可能な108TCID50/mLのウイルスでは、体積比1%で添加した溶液1Lを0.001m2のフィルターで濾過することでしかウイルスを負荷することができなかった(WO2014/080676)。本実施形態により、高純度の109TCID50/mL以上の高感染価のパルボウイルスが得られることにより、上記と同じ濾過条件で1013TCID50/m2以上のウイルス負荷量が可能になる。
また、3つ目の用途、ワクチン生産でも、細胞培養で生産されるウイルスが高純度かつ高感染価であることで、その後のウイルスワクチン精製工程への負荷が軽減し、製造にとって有利である。純度が低いと精製工程への負荷がかかり、また、ウイルス感染価が低いと、相対的に不純物濃度が高くなるため精製工程への負荷がかかり、製造にとって不利になる。本実施形態により、高純度の109TCID50/mL以上の高感染価のパルボウイルスが得られることにより、パルボウイルスのワクチン生産においても、精製原料中のワクチン量が飛躍的に多くなるため、ワクチン精製工程をより効率的で低コストで実施することが可能になる。
以下実施例及び比較例に基づき、本発明をより詳細に説明する。なお、ここに示す実施例は代表例であり、本発明がこの実施例に限定されるものではない。
[実施例1 パルボウイルス感染後の細胞密度の経時変化1]
ブタパルボウイルス(PPV)の宿主細胞としてPK−15細胞(ATCCから購入、カタログ番号CCL−33、パルボウイルス感受性の接着依存性細胞)を用い、これをダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地、ライフテクノロジー社製、製造番号11965−092)に10%牛胎児血清を添加した培地(以下、「血清培地」と呼ぶ。後述の実施例でも同様。)で、37℃、5%CO2環境下にて、75cm2底面積、容量15mLの組織培養用フラスコ(以下、「フラスコ」と呼ぶ。後述の実施例でも同様。)を用いて継代培養した。
次いで、上記フラスコからPK−15細胞を剥がし、新しいフラスコに、1.8×107細胞/フラスコ(試料1a)、6.0×106細胞/フラスコ(試料1b)、3.0×106細胞/フラスコ(試料1c)、1.2×106細胞/フラスコ(試料1d)、6.0×105細胞/フラスコ(試料1e)、及び1.0×105細胞/フラスコ(試料1f)の細胞密度(A)の宿主細胞を、10mLの血清培地とともに分注した。なお、これらの感染時細胞密度Aは、PK−15細胞のコンフルエント増殖時の細胞密度(C)を3.0×107細胞/フラスコとした場合、それぞれ、C/1.67、C/5、C/10、C/25、C/50及びC/300であると考えられた。
各細胞密度の条件につき3フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO2環境下にて培養した。感染開始後24時間、48時間及び72時間培養した時点でフラスコ底面にある細胞を回収し、細胞密度(B)を算出した。
細胞数の算出は以下のようにして行った。まず細胞基材に接着した細胞に、少量のトリプシンなどの蛋白質分解酵素やEDTAなどのキレート剤又はその混合液を加えて宿主細胞を培養容器から剥がした。剥がれた細胞溶液を血清を含む培地で希釈し細胞剥離作用を抑えた後、血球計算盤などに希釈後の溶液を注入し、顕微鏡下、で細胞数を計測した。
ウイルス感染時の細胞密度(A=細胞数/フラスコ)及びこのAと培養24時間毎の細胞密度(B=細胞数/フラスコ)とから算出した比(B/A)を、表1に示す。すると、通常、細胞はウイルスに感染すると時間の経過と共に死滅していくものだが、パルボウイルスに感染した細胞は細胞増殖が継続し、いずれの感染時細胞密度Aの場合にも、48時間経過時点まで全体の細胞数は増加していった。しかしながら、その後、72時間経過時点では細胞がウイルス感作により死滅し、全体の細胞数は顕著に減少した。
また、試験したAの範囲では、感染時細胞密度が高いほど感染後の細胞増殖速度が低くなる傾向がみられたが、一方で、感染時細胞密度が低ければ低いほど感染後の細胞増殖速度が高くなるわけではなかった。
Figure 0006592100
[実施例2 パルボウイルス感染細胞培養後の培地交換1]
実施例1と同様にしてPK−15細胞を継代培養し、新しいフラスコに、試料1a〜1fと同様の細胞密度の宿主細胞を、10mLの血清培地とともに、各細胞密度の条件につき6フラスコずつ分注した(試料2a〜2f)。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO2環境下にて培養した。感染開始後、48時間、及び72時間培養した時点で1フラスコずつ培養上清を除去し、フラスコ底面の細胞を、血清を加えていないDMEM培地(以下、「無血清培地」という。)で洗浄したのち、10mLの無血清培地を添加し、さらに培養を行い、24時間後、48時間後、及び72時間後に1フラスコずつ上記無血清培地の培養上清を回収した。回収した無血清培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ミリポア社製Millex−HV)で濾過した。
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、ウイルスによる細胞変性を利用したCPE法でTCID50法で測定した。50%感染価の計算は、Reed−Muench法(医科ウイルス学、2000.南江堂.171−172)で行った。その結果を表2に示す。表2の数値は、感染価を対数値で表示している。例えば、9.1とは、109.1TCID50/mLであることを示す。表2に示すように、得られたウイルスの感染価は、試料2b〜2eでは109TCID50/mL以上の高い感染価であったが、試料2a及び2fでは、いずれの条件下でも109TCID50/mL未満であった。
Figure 0006592100
さらに、不純物蛋白質濃度をThermo Scientific社のプロテインアッセイ試薬(BCA法)で測定し、PPV感染価(TCID50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。結果を表3に示す。表3に示すように、試料2b〜2eでは不純物蛋白質の割合が非常に低い、高純度のパルボウイルスが得られた。一方、試料2a及び2fでは、試料2b〜2eと比較して、得られたパルボウイルス中の不純物蛋白質の割合が高かった。
Figure 0006592100
上記の実施例1及び2の結果から、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られる培養条件を決定した。
まず、実施例1から、感染時細胞密度(A)ごとに感染後の細胞密度の24時間毎の経時変化を記録し、それぞれの密度に対応するピーク時(Tmax=本実施例では48時間)の細胞密度(Bmax)を記録し、感染後の細胞増殖速度の目安となるBmax/Aの比を算出したところ、Bmax/Aが少なくとも1.2より大きくなる感染時細胞密度(例えば、1.5以上、好ましくは1.75以上、より好ましくは2.0以上)を採用すると、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られると考えられた。すなわち、高感染価かつ高純度のパルボウイルスを得るためには、A1とBmaxが以下の式(1)を満たすことが重要であると考えられた。
max/A1 > 1.2 式(1)
また、Bmax/Aが少なくとも1.2より大きくなる感染時細胞密度のうち最大の密度(Amax)の感染時細胞密度であれば、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られると考えられた。さらに、この密度を1/10程度下げても、Aの減少に対応して一細胞あたりのウイルス生産量が上がるため、最終的に得られるパルボウイルス濃度が変わらず高感染価かつ高純度のパルボウイルスを回収することができると考えられた。すなわち、高感染価かつ高純度のパルボウイルスを得るためには、宿主細胞の感染時細胞密度が、以下の式(2)を満たすことが重要であると考えられた。
max ≧ A2 ≧ Amax/10 式(2)
実施例2から、上記範囲の感染時細胞密度を採用し、細胞密度の経時変化がピークとなる時点又はピーク時から一定時間経過後に、培養上清を無血清培地に交換し、一定時間、例えば、12時間以上、好ましくは18時間以上、より好ましくは24時間以上、培養すると、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られると考えられた。
[比較例1]
実施例1と同様にしてPK−15細胞を継代培養し、新しいフラスコに、試料1b〜1eと同様の細胞密度の宿主細胞を、10mLの血清培地とともに、各細胞密度の条件につきフラスコずつ分注した(試料3b〜3e)。次いで、当該各フラスコにPPVをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO2環境下にて培養した。感染開始後、96時間培養した時点で1フラスコずつ培養上清を除去し、フラスコ底面の細胞を、血清を加えていないDMEM培地(以下、「無血清培地」という。)で洗浄したのち、10mLの無血清培地を添加し、さらに培養を行い、24時間後、48時間後、及び72時間後に1フラスコずつ上記無血清培地の培養上清を回収した。回収した無血清培養上清を、3000rpm、20分間遠心(1710×g、20分=570×g・h)し、上清画分を0.45μmフィルター(ミリポア製)で濾過した。
PPV感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例2と同様の方法で測定した。その結果を表4に示す。表4に示すように、感染時細胞密度が同一である試料2b〜2eと比較すると、試料3b〜3eで得られたウイルスの感染価は、いずれの条件下でも低く、109TCID50/mL以上にはならなかった。培地交換前の培養時間が、得られるウイルスの感染価に影響することが明らかになった。
Figure 0006592100
さらに、実施例2と同様にしてPPV感染価(TCID50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表5に示した。感染時細胞密度が同一である試料2b〜2eと比較すると、試料3b〜3eでは得られたパルボウイルス中の不純物蛋白質の割合が高かった。培地交換前の培養時間が、得られるウイルスの純度にも影響することが明らかになった。
実施例2と比較例1の結果から、細胞密度の経時変化がピークとなる時点から48時間未満、例えば36時間以内、好ましくは30時間以内、より好ましくは24時間以内の時間培養後、無血清培地交換すると、高純度及び高感染価のパルボウイルスが得られると考えられた。
Figure 0006592100
[実施例3 パルボウイルス感染後の細胞密度の経時変化2]
マウス微小ウイルス(MVM)の宿主細胞としてA9細胞(ATCCから購入、カタログ番号CCL−1.4、パルボウイルス感受性の接着依存性細胞)を用い、これを血清培地で、37℃、5%CO2環境下にて、フラスコを用いて継代培養した。
次いで、上記フラスコからA9細胞を剥がし、新しいフラスコに、6.0×10細胞/フラスコ(試料4a)、3.0×106細胞/フラスコ(試料4b)、1.5×106細胞/フラスコ(試料4c)、6.0×105細胞/フラスコ(試料4d)、3.0×105細胞/フラスコ(試料4e)、及び1.0×105細胞/フラスコ(試料4f)の細胞密度(A)の宿主細胞を、10mLの血清培地とともに分注した。なお、これらの感染時細胞密度Aは、A9細胞のコンフルエント増殖時の細胞密度(C)を3.0×10細胞/フラスコとした場合、それぞれ、C/5、C/10、C/20、C/50、C/100及びC/300であると考えられた。
各細胞密度の条件につき3フラスコずつ分注した。次いで、当該各フラスコにMVMをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO2環境下にて培養した。感染開始後72時間、96時間及び120時間培養した時点でフラスコ底面にある細胞を回収し、細胞密度(B)を算出した。
細胞数の算出は以下のようにして行った。まず細胞基材に接着した細胞に、少量のトリプシンなどの蛋白質分解酵素やEDTAなどのキレート剤またはその混合液を加えて宿主細胞を培養容器から剥がした。剥がれた細胞溶液を血清を含む培地で希釈し細胞剥離作用を抑えた後、血球計算盤などに希釈後の溶液を注入し、顕微鏡下、で細胞数を計測した。
ウイルス感染時の細胞密度(A=細胞数/フラスコ)及びこのAと培養24時間毎の細胞密度(B=細胞数/フラスコ)とから算出した比(B/A)を、表6に示す。すると、通常、細胞はウイルスに感染すると時間の経過と共に死滅していくものだが、パルボウイルスに感染した細胞は細胞増殖が継続し、いずれの感染時細胞密度Aの場合にも、72時間経過時点まで全体の細胞数は増加していった。しかしながら、その後、96時間経過時点では細胞がウイルス感作により死滅し、全体の細胞数は減少した。
また、試験したAの範囲では、感染時細胞密度が高いほど感染後の細胞増殖速度が低くなる傾向がみられたが、一方で、感染時細胞密度が低ければ低いほど感染後の細胞増殖速度が高くなるわけではなかった。
Figure 0006592100
[実施例4 パルボウイルス感染細胞培養後の培地交換2]
実施例3と同様にしてA9細胞を継代培養し、新しいフラスコに、試料4a〜4fと同様の細胞密度の宿主細胞を、10mLの血清培地とともに、各細胞密度の条件につき6フラスコずつ分注した(試料5a〜5f)。次いで、当該各フラスコにMVMをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO2環境下にて培養した。感染開始後、96時間、及び120時間培養した時点で1フラスコずつ培養上清を除去し、フラスコ底面の細胞を、無血清培地で洗浄したのち、10mLの無血清培地を添加し、さらに培養を行い、24時間後、48時間後、及び72時間後に1フラスコずつ上記無血清培地の培養上清を回収した。回収した無血清培養上清を、3000rpm、20分間遠心し、上清画分を0.45μmフィルター(ミリポア社製Millex−HV)で濾過した。
MVM感染価を、実施例2と同様の手法により測定したその結果を表7に示す。表7の数値は、感染価を対数値で表示している。例えば、9.1とは、109.1TCID50/mLであることを示す。表7に示すように、得られたウイルスの感染価は、試料5b〜5eでは109TCID50/mL以上の高い感染価であったが、試料5a及び5fでは、いずれの条件下でも109TCID50/mL未満であった。
Figure 0006592100
さらに、不純物蛋白質濃度をThermo Scientific社のプロテインアッセイ試薬(BCA法)で測定し、MVM感染価(TCID50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。結果を表8に示す。表8に示すように、試料5b〜5eでは不純物蛋白質の割合が非常に低い、高純度のパルボウイルスが得られた。一方、試料5a及び5fでは、試料5b〜5eと比較して、得られたパルボウイルス中の不純物蛋白質の割合が高かった。
Figure 0006592100
上記の実施例3及び4の結果から、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られる培養条件を決定した。
まず、実施例3から、感染時細胞密度(A)ごとに感染後の細胞密度の24時間毎の経時変化を記録し、それぞれの密度に対応するピーク時(Tmax=本実施例では96時間)の細胞密度(Bmax)を記録し、感染後の細胞増殖速度の目安となるBmax/Aの比を算出したところ、Bmax/Aが少なくとも1.2より大きくなる感染時細胞密度(例えば、1.5以上、好ましくは1.75以上、より好ましくは2.0以上)を採用すると、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られると考えられた。すなわち、高感染価かつ高純度のパルボウイルスを得るためには、AとBmaxが以下の式(1)を満たすことが重要であると考えられた。
max/A > 1.2 式(1)
また、Bmax/Aが少なくとも1.2より大きくなる感染時細胞密度のうち最大の密度(Amax)の感染時細胞密度であれば、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られると考えられた。さらに、この密度を1/10程度下げても、Aの減少に対応して一細胞あたりのウイルス生産量が上がるため、最終的に得られるパルボウイルス濃度が変わらず高感染価かつ高純度のパルボウイルスを回収することができると考えられた。すなわち、高感染価かつ高純度のパルボウイルスを得るためには、宿主細胞の感染時細胞密度が、以下の式(2)を満たすことが重要であると考えられた。
max ≧ A ≧ Amax/10 式(2)
実施例4から、上記範囲の感染時細胞密度を採用し、細胞密度の経時変化がピークとなる時点又はピーク時から一定時間経過後に、培養上清を無血清培地に交換し、一定時間、例えば、12時間以上、好ましくは18時間以上、より好ましくは24時間以上、培養すると、高感染価かつ高純度のパルボウイルスが得られると考えられた。
[比較例2]
実施例3と同様にしてA9細胞を継代培養し、新しいフラスコに、試料4b〜4eと同様の細胞密度の宿主細胞を、10mLの血清培地とともに、各細胞密度の条件につきフラスコずつ分注した(試料6b〜6e)。次いで、当該各フラスコにMVMをMOI=0.01となるよう接種し、37℃、5%CO2環境下にて培養した。感染開始後、144時間培養した時点で1フラスコずつ培養上清を除去し、フラスコ底面の細胞を、無血清培地で洗浄したのち、10mLの無血清培地を添加し、さらに培養を行い、24時間後、48時間後、及び72時間後に1フラスコずつ上記無血清培地の培養上清を回収した。回収した無血清培養上清を、3000rpm、20分間遠心(1710×g、20分=570×g・h)し、上清画分を0.45μmフィルター(ミリポア製)で濾過した。

MVM感染価を、96ウエルプレートを用いて、実施例2と同様の方法で測定した。その結果を表9に示す。表9に示すように、感染時細胞密度が同一である試料5b〜5eと比較すると、試料6b〜6eで得られたウイルスの感染価は、いずれの条件下でも低く、109TCID50/mL以上にはならなかった。培地交換前の培養時間が、得られるウイルスの感染価に影響することが明らかになった。
Figure 0006592100
さらに、実施例2と同様にしてMVM感染価(TCID50/mL)と不純物蛋白質濃度(ng/mL)との比を求めた。その結果を表10に示した。感染時細胞密度が同一である試料5b〜5eと比較すると、試料6b〜6eでは得られたパルボウイルス中の不純物蛋白質の割合が高かった。培地交換前の培養時間が、得られるウイルスの純度にも影響することが明らかになった。
実施例4と比較例2の結果から、細胞密度の経時変化がピークとなる時点から48時間未満、例えば36時間以内、好ましくは30時間以内、より好ましくは24時間以内の時間培養後、無血清培地交換すると、高純度及び高感染価のパルボウイルスが得られると考えられた。
Figure 0006592100
本発明の方法により、高純度かつ高感染価のパルボウイルスが得られる。このパルボウイルスは、抗ウイルス薬探索などのウイルス研究材料の調製や、生物製剤(医薬品)製造工程におけるウイルスクリアランス安全性評価に使用するウイルスの調製、またワクチン生産などに利用することができ、本発明はこれらの分野における産業上の利用可能性を有する。
本出願は、2015年11月6日に出願された日本国特許出願第2015−218775号に基づく優先権を主張するものであり、この内容はここに参照として組み込まれる。

Claims (9)

  1. 高感染価かつ高純度のパルボウイルスの生産方法であって、
    (a)宿主細胞がパルボウイルスに感染した際の培養基材の細胞密度の24時間毎の経時変化を、感染時細胞密度(A)毎に事前に別途算出しておく工程と、
    (b)工程(a)において事前に算出した細胞密度の経時変化から、
    (b1)感染から、細胞密度の経時変化のピーク時までの時間(Tmax)と、
    (b2)Tmaxにおける細胞密度(Bmax)とAが以下の式(1)を満たすA1と、
    (b3)そのようなA1のうち最大の感染時細胞密度(Amax)と、
    (b4)以下の式(2)を満たすA2と、
    を決定する工程と、
    max/A1 >1.2 式(1)
    max ≧ A2 ≧ Amax/10 式(2)
    (c)工程(b)の(b4)で決定したA2の感染時細胞密度の宿主細胞と血清培地とを含む前記培養基材に、パルボウイルスのシードウイルスを感染多重性(MOI)が0.001〜0.1となるように接種する工程と、
    (d)工程(c)で得られた宿主細胞とパルボウイルスとを含む培養物を、工程(b)の(b1)で決定したTmax以上Tmax+48時間未満の時間培養する工程と、
    (e)工程(d)の培養上清を無血清培地に交換し、12時間以上培養する工程と、
    (f)工程(e)の培養により得られるパルボウイルスを含む培養上清を回収する工程と、
    を含み、前記工程(b)において、式(1)を満たすAが存在しない場合、別の感染時細胞密度Aを採用して工程(a)及び工程(b)を再度実施する、方法。
  2. 前記宿主細胞が、接着依存性細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記パルボウイルスが、ブタパルボウイルス(PPV)、イヌパルボウイルス(CPV)、マウス微小ウイルス(MVM)、ラットウイルス(RV)、H−1ウイルス(H−1)、ネコパルボウイルス(FPV)、ガチョウパルボウイルス(GPV)、又はウシパルボウイルス(BPV)である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記工程(e)が、培養上清を無血清培地に交換し、24時間以上培養する工程である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記工程(b)が、BmaxとAが以下の式(1’):
    max/A1' ≧ 2.0 式(1’)
    を満たすようなA1'を算出する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法
  6. 前記工程(d)及び(e)における培養が、33℃以上39℃以下の温度で実施される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記工程(d)及び(e)において、前記宿主細胞と前記パルボウイルスが同時進行で増殖する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記工程(f)が、前記培養上清に含まれる遊離の宿主細胞と宿主細胞の破片とを除去する工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記除去工程が、孔径0.2μm〜0.45μmの膜濾過を用いて行われる、請求項8に記載の方法。
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