LPS O25bを有する菌株によって引き起こされる大腸菌感染症の防止または治療のために使用されるための改善された特異性を有する、大腸菌(特にMDR菌株)に対する抗体を提供することが、本発明の目的である。さらには、大腸菌細菌(例えば、MDR菌株など)を迅速かつ確実な様式で診断することができる手段および方法を提供することが、本発明の目的である。
上記目的が本発明の主題によって解決される。
本発明によれば、図1において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列またはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体重鎖可変領域(VH)を少なくとも含む、大腸菌菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離された抗体が提供される。
本発明によれば、表1において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体重鎖可変領域(VH)を少なくとも含む、大腸菌菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離された抗体が提供される。
具体的には、上記大腸菌菌株はMDR菌株である。
下記では、別途示される場合を除き、参照は、Kabatに従って番号表記されるようなCDR配列に対して、すなわち、Kabat命名法に従って決定されるようなCDR配列に対してなされ(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健福祉省公衆衛生局(1991年)を参照のこと)、具体的には、表1において列挙されるようなそれらのCDR配列(配列番号1〜97)に対してなされる。本発明、および、請求項の範囲はまた、同じ抗体およびCDRではあるが、異なる番号表記の示されたCDR領域を有するもの、例えば、表2において列挙されるようなもの(配列番号98〜183および配列番号39)(ただし、この場合、CDR領域はIMGTシステムに従って定義される;The international ImMunoGeneTics、Lefranc他、1999、Nucleic Acids Res.、27:209〜212)も包含することになることが十分に理解される。
具体的には、上記抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素xiv)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号7のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号8のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号17のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号18のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号19のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号23のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号24のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号25のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号29のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号30のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号31のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号34のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号35のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号36のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
viii)
a)配列番号29のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号40のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号41のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ix)
a)配列番号44のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号45のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号46のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
x)
a)配列番号50のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号51のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号52のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xi)
a)配列番号50のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号55のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号56のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xii)
a)配列番号57のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号58のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号59のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xiii)
a)配列番号61のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号62のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号63のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xiv)
a)配列番号66のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号67のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号68のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR1、CDR2またはCDR3のいずれかの少なくとも1つの機能的に活性なCDR変化体を含む抗体
である。
具体的には、機能的に活性な変化体は、少なくとも1つの点変異を元のCDR配列において含み、かつ、元のCDR配列との少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または、そのようなアミノ酸配列からなる機能的に活性なCDR変化体である。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、
a)図2に示されるようなVH配列のいずれかから選択されるVHアミノ酸配列、好ましくは、配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列のVHアミノ酸配列;
b)配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列;あるいは
c)配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかであり、かつ、C末端アミノ酸の欠失および/またはQ1E点変異(ただし、VH配列の最初のアミノ酸がQである場合)をさらに含む抗体重鎖(HC)アミノ酸配列
を含む。
例えば、親抗体のそのような機能的に活性な変化体は、O25b抗原のみと特異的に結合するO25b特異的抗体である。例示的な親抗体が図1において列挙されており(群1の抗体)、例えば、8A1、3E9または2A7である親抗体のヒト化変化体(例えば、図2において列挙される抗体など)である。具体的には、そのような変化体のVH配列またはHC配列は別の変化体のVH配列およびHC配列によってそれぞれ置換されてもよく、特にこの場合、他の変化体は、同じ親抗体のどのような他の抗体であってもよい。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は場合により、表1において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体軽鎖可変領域(VL)をさらに含む。
具体的には、上記抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素xiv)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号4のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号6のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号6のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号14のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号15のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号16のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号21のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号22のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号26のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号28のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号33のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号37のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号38のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
viii)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号43のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ix)
a)配列番号47のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号48のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号49のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
x)
a)配列番号53のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号54のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xi)
a)配列番号57のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号54のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xii)
a)配列番号26のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号60のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xiii)
a)配列番号64のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号65のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号38のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xiv)
a)配列番号69のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号70のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号71のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR4、CDR5またはCDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体
である。
具体的には、上記抗体は、図2に示されるようなVL配列のいずれかから選択されるVLアミノ酸配列、好ましくは、配列番号248〜配列番号295のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列のVLアミノ酸配列を含み、あるいは、配列番号248〜配列番号295のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、例えば、同等な親和性、同等を超える親和性、類似する親和性または異なる親和性を伴って、O25a抗原およびO25b抗原によって共有されるエピトープに対して交差特異的である。
具体的には、本発明の抗体は、O25b抗原およびO25a抗原と結合するために交差特異的であり、かつ/または、大腸菌のO25a抗原と比較してO25b抗原に優先的に結合する。ただし、これには、O25a菌株に対して惹起されるポリクローナルなタイプ決定用血清と比較して、好ましくは、免疫アッセイによって明らかにされるような、O25(このO25は現在、O25aとして知られており、本明細書中ではO25aとして示される)大腸菌菌株に対して惹起されるポリクローナル血清によってO25b抗原と結合することと比較してより大きい親和性が伴っており、この場合、好ましくは、抗体は、免疫アッセイ(好ましくは、免疫ブロッティング、ELISAまたは他の免疫学的方法)によって明らかにされるように、両者に対する、すなわち、O25b抗原およびO25a抗原に対する少なくとも同等の親和性を有する。
「交差特異的」として示される場合を除き、本発明の抗体は、O25b特異的であるとして、すなわち、O25b抗原のみを特異的に認識する抗体、例えば、表1の群1の抗体のいずれかであるとして、または、交差特異的抗体として、すなわち、O25b抗原およびO25a抗原の間において共有されるエピトープを特異的に認識する抗体、例えば、表1の群2の抗体のいずれかであるとしてそのどちらでも本明細書中では理解される。したがって、用語「本発明の抗体」は、O25b特異的抗体およびO25b/O25a交差特異的抗体の両方を包含する。本発明の抗体は具体的にはさらに、どのような他の大腸菌抗原とも交差反応しないことにおいて特徴づけられ、かつ/または、本発明の抗体は、どのような他の大腸菌抗原に対してもより低い親和性で結合すること、この場合、例えば、(O25b抗原またはO25a抗原とは異なる)他の大腸菌抗原よりもO25b抗原と優先的に結合するためのKd差が対数で少なくとも2の差であり、好ましくは対数で少なくとも3の差である。
具体的には、上記の交差特異的抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素vii)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号72のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号73のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号74のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号77のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号78のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号79のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号81のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号82のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号83のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号84のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号85のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号86のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号77のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号89のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号90のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号92のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号93のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号94のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号95のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号96のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号97のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR1、CDR2またはCDR3のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体
である。
具体的には、上記抗体は、
a)図2に示されるようなVH配列のいずれかから選択されるVHアミノ酸配列、好ましくは、配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列のVHアミノ酸配列;
b)配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列;あるいは
c)配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかであり、かつ、C末端アミノ酸の欠失および/またはQ1E点変異(ただし、VH配列の最初のアミノ酸がQである場合)をさらに含む抗体重鎖(HC)アミノ酸配列
を含む。
例えば、親抗体のそのような機能的に活性な変化体は交差特異的抗体である。例示的な親抗体が図1において列挙されており(群2の抗体)、例えば、4D5である親抗体のヒト化変化体(例えば、図2において列挙される抗体など)である。具体的には、そのような変化体のVH配列またはHC配列は別の変化体のVH配列およびHC配列によってそれぞれ置換されてもよく、特にこの場合、他の変化体は、同じ親抗体のどのような他の抗体であってもよい。
具体的な局面によれば、本発明の交差特異的抗体は場合によりさらに、表1において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体(具体的には、どのような交差特異的抗体であれ、そのCDR配列が含まれる)のいずれかを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む。
具体的には、上記の交差特異的抗体は、
A)
下記の群要素i)〜群要素vi)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号75のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号76のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号75のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号80のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号69のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号70のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号71のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号87のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号88のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号37のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号91のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号88のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR4、CDR5またはCDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体
である。
具体的には、機能的に活性な変化体は、少なくとも1つの点変異を元のCDR配列において含み、かつ、元のCDR配列との少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列、好ましくは少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または、そのようなアミノ酸配列からなる機能的に活性なCDR変化体である。
具体的な局面によれば、本発明の交差特異的抗体は、図2に示されるようなVL配列のいずれかから選択されるVLアミノ酸配列、好ましくは、配列番号296〜配列番号311のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列のVLアミノ酸配列を含み、あるいは、配列番号296〜配列番号311のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
具体的な実施形態によれば、本発明の抗体は具体的には、
a)表1において列挙されるような抗体のいずれかのCDR1配列〜CDR6配列、または、
b)図2に示されるような抗体のいずれかのVH配列およびVL配列、または、
c)図2において列挙されるような抗体のいずれかのHC配列およびLC配列
を含み、あるいは
d)a)〜c)の配列によって特徴づけられる親抗体の機能的に活性な変化体であり、
好ましくは、
i.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体のCDR1〜CDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的に活性なCDR変化体を含み、かつ/または
ii.前記機能的に活性な変化体は少なくとも1つの点変異を前記親抗体のVH配列およびVL配列ならびに/あるいはHC配列およびLC配列のいずれかのフレームワーク領域において含み、場合により、Q1E点変異(VHフレームワーク領域(VH FR1)の最初のアミノ酸がQである場合)を含み、
さらには
iii.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有し、かつ/または
iv.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体のヒト変化体、ヒト化変化体、キメラ変化体またはマウス変化体および/または親和性成熟化変化体である。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、当該抗体が依然として機能的に活性であるならば、表1において列挙されるようなCDR組合せを含む。
具体的には、本発明の抗体は、表1において列挙されるような抗体のいずれかのCDR1〜CDR6を含む。しかしながら、代替となる実施形態によれば、抗体は、異なるCDR組合せを含む場合があり、例えば、この場合、表1において列挙されるような抗体は、表1において列挙されるような抗体のいずれかの1つの抗体の少なくとも1つのCDR配列(例えば、1つのCDR配列、2つのCDR配列、3つのCDR配列、4つのCDR配列、5つのCDR配列または6つのCDR配列など)と、異なる抗体の少なくとも1つのさらなるCDR配列とを含む。具体的な一例によれば、抗体は、1つのCDR配列、2つのCDR配列、3つのCDR配列、4つのCDR配列、5つのCDR配列または6つのCDR配列を含み、ただし、これらのCDR配列は、2つ以上の抗体(例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの異なる抗体)のCDR組合せである。例えば、これらのCDR配列は、表1において列挙されるような抗体のいずれかのCDR1〜CDR3のうちの1つ、2つ、または3つすべてと、表1において列挙される同じ抗体またはいずれか他の抗体のCDR4〜CDR6のうちの1つ、2つ、または3つすべてとを好ましくは含むために組み合わされる場合がある。
CDR1、CDR2およびCDR3と番号がつけられるCDRはVHドメインの結合領域を表し、CDR4、CDR5およびCDR6はVLドメインの結合領域を表すことが、本明細書中では特に理解される。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、図2に示されるようなHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列の組合せのいずれかを含み、または、HCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列のそのような組合せによって形成される結合部位を含む。代替において、抗体が依然として機能的に活性であるならば、2つの異なる抗体の免疫グロブリン鎖の組合せが使用される場合がある。例えば、1つの抗体のHC配列が別の抗体のLC配列と組み合わされる場合がある。さらなる具体的な実施形態によれば、図2において提供されるようなフレームワーク領域のいずれもが、本明細書中に記載されるようなCDR配列および/またはVH/VL組合せのいずれかに対するフレームワークとして用いられる場合がある。
本発明の抗体は必要に応じて、図2のそのようなアミノ酸配列をそれぞれのシグナル配列を伴って、または伴うことなく、あるいは、代替となるシグナル配列またはリーダー配列を伴って含むことが理解される。
具体的な局面によれば、図2の配列のそれぞれが定常領域において末端で伸張または欠失される場合がある(例えば、C末端アミノ酸の1つまたは複数の欠失)。
具体的には、C末端のリシン残基を含む図2のHC配列のそれぞれが好ましくは、そのようなC末端リシン残基の欠失とともに用いられる。
図2は種々のHC配列および種々のLC配列を示し、どのようなHC/LC組合せをも裏づけており、したがって、親抗体のそれぞれについての一連の異なるHC/LC組合せを裏づけている。したがって、それぞれの親抗体の具体的な変化体は、どのようなHC/LC組合せであっても、同じ親抗体から派生する図2に示される変化体抗体のそれぞれのHC/LC組合せを含む場合がある。
具体的には、図2は、O25b抗原のみを特異的に認識する群1の抗体の親抗体(8A1、3E9(1G8)または2A7)のそれぞれの変化体、ならびに、O25b抗原およびO25a抗原と交差特異的に結合する群2の抗体の親抗体4D5の変化体である4つの異なるHC配列および4つの異なるLC配列を示す。16の異なるHC/LC組合せがこれらの親抗体のそれぞれについて示される。
加えて、図2は、O25b抗原のみを特異的に認識する群1の抗体の親抗体3E9(1G8)の変化体である2つのさらなる異なるHC配列および2つのさらなる異なるLC配列を示す。
加えて、図2は、O25b抗原およびO25a抗原と交差特異的に結合する群2の抗体の親抗体4D5の変化体である2つのさらなる異なるHC配列および2つのさらなる異なるLC配列を示す。
CDR配列は、図1において列挙されるようなそれぞれのCDR配列と同一である:親の8A1抗体、1G8抗体、2A7抗体または4D5抗体のCDR配列は、図1の8A1−1G8抗体、3E9−G11抗体、2A7−F1抗体および4D5−D4抗体のCDR配列とそれぞれ同一である。
具体的には、配列番号184〜配列番号247および配列番号312〜配列番号315は、図2に示されるVHアミノ酸配列を含むHC配列を示し、ただし、この場合、それぞれのHC配列がおそらくはシグナル配列によってN端側で伸張している。特異的抗体は、そのようなVHアミノ酸配列またはHCアミノ酸配列をそれぞれのシグナル配列を伴って、または伴うことなく、あるいは、代替となるシグナル配列またはリーダー配列を伴って含むことが理解される。
具体的には、配列番号248〜配列番号311および配列番号316〜配列番号319は、図2に示されるVLアミノ酸配列を含むLC配列を示し、ただし、この場合、それぞれのLC配列がおそらくはシグナル配列によってN端側で伸張している。特異的抗体は、そのようなVLアミノ酸配列またはLCアミノ酸配列をそれぞれのシグナル配列を伴って、または伴うことなく、あるいは、代替となるシグナル配列またはリーダー配列を伴って含むことが理解される。
本発明はさらに、本発明の抗体のいずれかである親抗体(例えば、表1において列挙されるような抗体)の機能的に活性な抗体変化体、または、図2に示されるようなHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列の組合せのいずれかを含む機能的に活性な抗体変化体、または、HCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列のそのような組合せによって形成される結合部位を含む機能的に活性な抗体変化体を製造する方法であって、少なくとも1つの点変異をフレームワーク領域(FR)または定常ドメインあるいは相補性決定領域(CDR1〜CDR6)のいずれかにおいて設計して、変化体抗体を得ること、および、前記変化体抗体の機能的活性を明らかにすること、具体的にはO25b抗原と10−6M未満のKdにより結合するための親和性によって、好ましくは10−7M未満のKdまたは10−8M未満のKdまたは10−9M未満のKd、それどころか、10−10M未満のKdまたは10−11M未満のKdにより結合するための親和性によって、例えば、ピコモル濃度範囲での親和性により結合するための親和性によって明らかにすることを含む方法を提供する。機能的活性が明らかにされると、機能的に活性な変化体は、さらなる使用のために、また、場合により、組換え製造方法による製造のために選択される。
好ましいCDR変化体は、グリコシル化または脱アミド化を受けやすいモチーフの変異を含む。例えば、CDR配列のいずれかにおけるN結合型グリコシル化モチーフNXS/T(ただし、Xは任意のアミノ酸である)において、このモチーフにおける「N」は、グリコシル化のための潜在的可能性を除くために、どのようなアミノ酸であれ、他の異なるアミノ酸に変異させられる場合があり、好ましくは、「Q」、「S」または「D」に変異させられる場合がある。さらなる例では、CDR配列のいずれにおいても、アスパラギンまたはアスパラギン酸の脱アミド化を受けやすいかもしれないアミノ酸モチーフのNGまたはNNが示される。他のモチーフに含まれるアスパラギンは脱アミド化をそれほど受けやすくない。
例えば、4D5のVL CDR1(CDR4)に見出されるアミノ酸モチーフSNGは、アスパラギンのアスパラギン酸への脱アミド化を受けやすい可能性がある。したがって、mAb 4D5のVL CDR1でのSNGモチーフにおける「N」の「磨きをかける」変異が、潜在的な脱アミド化部位を除くために、どのようなアミノ酸であれ、他の異なるアミノ酸に変異させられる場合があり、好ましくは、「Q」、「S」または「D」に変異させられる場合がある。
具体的な局面によれば、変化体抗体は、親抗体と同じエピトープと結合する。
さらなる具体的な局面によれば、変化体抗体は、親抗体と同じ結合部位を含む。
機能的に活性な変化体抗体はVH配列またはVL配列のいずれかにおいて異なる場合があり、あるいは、共通のVH配列およびVL配列を共有する場合があり、また、修飾をそれぞれのFRにおいて含む場合がある。変異誘発によって親抗体に由来する変化体抗体が、この技術分野では広く知られている方法によって製造される場合がある。
例示的な親抗体が、下記の実施例の節において、また、図1(表1)および図2に記載される。具体的には、抗体は、表1において列挙されるような親抗体の機能的に活性な誘導体である。1つまたは複数の改変されたCDR配列を有する、かつ/または、1つまたは複数の改変されたFR配列(例えば、FR1、FR2、FR3またはFR4の配列など)、あるいは改変された定常ドメイン配列を有する変化体が設計される場合がある。
例えば、表1において列挙される親抗体に由来し、かつ、変異誘発によって、具体的には親和性成熟および/またはヒト化によって得られている機能的に活性な変化体抗体が本発明に従って提供され、図2において列挙される。図2の変化体抗体は依然として、それぞれの親抗体の共通したVH配列およびVL配列を共有するにもかかわらず、機能的に活性である変化したVH鎖およびVL鎖がまた、例えば、それぞれのFR配列またはCDR配列における改変を有する変化したVH鎖およびVL鎖が製造され得ることは実現可能である。
親抗体の例示的な変化体抗体はCDR1〜CDR6のいずれかにおける少なくとも1つの点変異および/またはFR領域における少なくとも1つの点変異を含み、好ましくは、この場合、抗体は、親抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有する。
ある特定の局面において、本発明は、重鎖および軽鎖を含み、軽鎖可変領域またはVL可変領域またはそれぞれのCDRのいずれもが、少なくとも1つのFR配列またはCDR配列の改変によって、8D5−1G10または4D5−D4と称される抗体あるいは表1または図2において列挙されるようないずれかの他の抗体である親抗体に由来するようなアミノ酸配列を含むそのような機能的に活性な変化体抗体、好ましくはモノクローナル抗体、最も好ましくはヒト抗体を提供する。
4D5−D4と称され、かつ、表1において列挙される抗体は、抗体8D10−C8(これは、下記で示されるような寄託物によって特徴づけられる)と同じCDR配列を含むことが判明した。しかしながら、同じVH/VL配列でさえ、定常ドメインまたは定常領域において異なり、すなわち、少なくとも1つの改変を定常ドメインのいずれかにおいて含む。
具体的な実施形態によれば、本発明の抗体は、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体を除くどのような他の抗体でもある。そのような抗体は具体的には、可変ドメイン(VH/VL)の1つまたは2つのみから構成されることが理解され、また、さらには本明細書中に記載されるような寄託されたVH/VL物によって定義される。しかしながら、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体の具体的な変化体が本願請求項の主題に特に含まれ、それらには、様々なタイプの全長抗体、Fab、scFvなどを含めて、CDR変化体、FR変化体、マウス変化体、キメラ変化体、ヒト化変化体またはヒト変化体、あるいは、どのような抗体ドメイン組合せであれ、VH/VL組合せの1つまたは2つから構成される組合せではない抗体ドメイン組合せが含まれるが、それらに限定されない。
具体的な実施形態では、図1に示され、さらには図2において指定されるそれぞれの抗体のCDR配列および可変ドメインによって特徴づけられる4D5−D4(4D5)抗体または8A1−1G8(8A1)抗体が示され、この場合、そのような抗体は可変ドメインおよび定常ドメインを含み、例えば、全長抗体であり、また、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
しかしながら、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体は、その機能的に活性な変化体を設計するための親抗体として使用される場合がある。具体的には、8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体、あるいは、どのようなその機能的に活性な変化体もが、本明細書中に提供されるような配列を用いて組換え手段によって、必要な場合には、さらなる免疫グロブリン配列を、例えば、IgG抗体を製造するために用いて製造される場合がある。具体的には、8D5−1G10または8D10−C8と称されるそのような抗体の機能的に活性な変化体が、少なくとも1つのFR配列またはCDR配列の改変によって製造される場合がある。
具体的な局面によれば、本発明は、多剤耐性(MDR)大腸菌菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体のなかで、抗体8D5−1G10の抗原結合部位を含む、あるいは、抗体8D5−1G10に由来する、または、抗体8D5−1G10の機能的に活性な変化体である単離されたモノクローナル抗体を提供し、ただし、好ましくは、この場合、抗体8D5−1G10は、
a)DSM26763で寄託される宿主細胞によって産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM26762で寄託される宿主細胞によって産生される抗体重鎖の可変領域;
c)あるいは、(a)および/または(b)の機能的に活性な変化体が用いられること
によって特徴づけられる。
具体的には、8D5−1G10と称される抗体は、DSM26763で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体軽鎖と、DSM26762で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体重鎖とから構成される。
別の具体的な局面によれば、本発明は、O25a抗原およびO25b抗原によって共有されるエピトープと結合するために交差特異的であり、かつ、抗体8D10−C8の抗原結合部位を含む、あるいは、抗体8D10−C8に由来する、または、抗体8D10−C8の機能的に活性な変化体である単離されたモノクローナル抗体を提供し、ただし、好ましくは、この場合、抗体8D10−C8は、
a)DSM28171で寄託される宿主細胞によって産生される抗体軽鎖の可変領域;および/または
b)DSM28172で寄託される宿主細胞によって産生される抗体重鎖の可変領域;
c)あるいは、(a)および/または(b)の機能的に活性な変化体が用いられること
によって特徴づけられる。
具体的には、8D10−C8と称される抗体は、DSM28171で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体軽鎖と、DSM28172で寄託される大腸菌宿主細胞に含まれるプラスミドのコード配列によってコードされる可変領域を含む抗体重鎖とから構成される。
具体的には、抗体は、表1において列挙されるようなCDR配列のいずれかの機能的に活性なCDR変化体を含み、ただし、この場合、機能的に活性なCDR変化体は、
a)元のCDR配列における1つ、2つまたは3つの点変異;ならびに/あるいは
b)元のCDR配列の4つのC末端アミノ酸位置もしくは4つのN末端アミノ酸位置または4つの中心アミノ酸位置のいずれかにおける1つまたは2つの点変異;ならびに/あるいは
c)元のCDR配列との少なくとも60%の配列同一性
のうちの少なくとも1つを含む。
具体的には、機能的に活性な変化体抗体は本発明の機能的に活性なCDR変化体の少なくとも1つを含む。具体的には、機能的に活性なCDR変化体の1つまたは複数を含む機能的に活性な変化体抗体は、親抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有する。
具体的には、機能的に活性な変化体はCDR変化体であり、例えば、少なくとも60%の配列同一性、好ましくは少なくとも70%、80%または90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCDR(より具体的にはCDRループ配列)を含むCDR変化体である。
具体的な局面によれば、上記少なくとも1つの点変異は、1つまたは複数のアミノ酸のアミノ酸置換、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸挿入のいずれかである。
具体的には、機能的に活性な変化体は、アミノ酸配列における、好ましくはCDRにおける少なくとも1つの点変異において親抗体とは異なり、ただし、この場合、CDRアミノ酸配列のそれぞれにおける点変異の数は、0、1、2または3のいずれかである。
具体的には、抗体は、それぞれのCDR配列またはCDR変異体(機能的に活性なCDR変化体、例えば、1つ、2つまたは3つの点変異を1つのCDRループの中に、例えば、5アミノ酸〜18アミノ酸のCDR長さの中に、例えば、5アミノ酸〜15アミノ酸または5アミノ酸〜10アミノ酸のCDR領域の中に有する機能的に活性なCDR変化体を含む)を用いて、そのような抗体に由来する。代替において、機能的に活性なCDR変化体を含む抗体を提供するために、1つ〜2つの点変異が1つのCDRループの中に、例えば、5アミノ酸未満のCDR長さの中に存在する場合がある。具体的なCDR配列は短いかもしれず、例えば、CDR2配列またはCDR5配列であるかもしれない。具体的な実施形態によれば、機能的に活性なCDR変化体は、1つまたは2つの点変異を、4個未満または5個未満のアミノ酸からなるいずれかのCDR配列において含む。
具体的な局面によれば、本発明の抗体はCDR配列およびフレームワーク配列を含み、ただし、この場合、CDR配列およびフレームワーク配列の少なくとも1つが、ヒト配列、ヒト化配列、キメラ配列、マウス配列または親和性成熟化配列を含み、好ましくは、フレームワーク配列はIgG抗体のものであり、例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプまたはIgG4サブタイプのものであり、あるいは、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体またはIgM抗体のものである。
具体的な抗体が、例えば、親抗体の製造性または耐容性を改善するために、例えば、親抗体と比較して、低い免疫原能を有する改善された(変異させられた)抗体(例えば、変異をCDR配列および/またはフレームワーク配列のいずれかに有するヒト化抗体など)を提供するために、フレームワーク変異抗体として提供される。
さらなる具体的な抗体が、例えば、抗体の親和性を改善するために、および/または、親抗体によって標的化されるエピトープに近い同じエピトープ(1つまたは複数)を標的化するために(エピトープシフトするために)、CDR変異抗体として提供される。
したがって、表1または図2において列挙されるような抗体のどれもが、改良型を設計するための親抗体として使用される場合がある。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、O25b抗原と10−6M未満のKdにより、好ましくは10−7M未満または10−8M未満のKdにより結合するための親和性を有する。親和性成熟を受けた変化体は典型的には、O25b抗原と10−8M未満のKdにより結合するための親和性を有する。
具体的には、本発明の抗体は大腸菌のO25a抗原と比較してO25b抗原に優先的に結合し、または、少なくとも両方の抗原に対する同等の親和性により結合する。
具体的な実施形態によれば、抗体は、O25b抗原と結合することについてはO25a抗原と比較して少なくとも2倍大きい親和性を有しており、具体的には、O25b抗原またはO25a抗原のいずれかと結合することにおける、例えば、親和性および/またはアビディティーでの差における少なくとも2倍の差、あるいは、少なくとも3倍の差、少なくとも4倍の差、少なくとも5倍の差、または、それどころか少なくとも10倍の差を有する。
具体的な局面によれば、O25bに対する特異的な結合が、O25b抗原と結合することについては免疫アッセイ(好ましくは、免疫ブロッティング、ELISAまたは他の免疫学的方法)によって明らかにされるように、O25またはO25aの大腸菌菌株に対して惹起されるポリクローナル血清によってO25b抗原と結合することと比較してより大きい親和性によって特徴づけられる。このより大きい結合親和性は具体的には、少なくとも2倍の差、あるいは、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または、それどころか少なくとも10倍の差を伴うものである。
具体的には、本発明の抗体によって標的化されるようなO25b抗原は、ST131菌株の1つまたは複数において、より具体的にはST131菌株の大多数において広く認められている。
具体的には、抗体によって認識されるエピトープが、被包性および非被包性のST131−O25b:H4菌株(例えば、変異菌株)の表面に存在する。
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、インビトロ殺菌能を、野生型MDR大腸菌の生菌株を含む血清サンプルにおいて示す。
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、食作用細胞による野生型MDR大腸菌の生菌株の取り込みをインビトロにおいて刺激する。
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、特異的なLPS分子の内毒素影響をインビトロにおいて中和する。
具体的には、抗体は、全長モノクローナル抗体、抗原結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメント、または、抗原結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含む融合タンパク質である。好ましくは、抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体、重鎖抗体、Fab抗体、Fd抗体、scFv抗体、および、VH、VHHまたはVLのような単一ドメイン抗体からなる群から選択され、好ましくはヒトIgG1抗体である。
さらなる具体的な局面によれば、抗体は、全長モノクローナル抗体の結合部位、または、結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメントの結合部位を有しており、この場合、そのような抗体は好ましくは、マウス抗体、ラマ抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウシ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体、重鎖抗体、Fab抗体、Fd抗体、scFv抗体、および、VH、VHHまたはVLのような単一ドメイン抗体からなる群から選択される抗体であり、好ましくはヒトIgG抗体またはマウスIgG抗体である。
本発明によれば、本発明の抗体は具体的には、医療、診断または分析での使用のために提供される。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、大腸菌感染症(具体的にはMDR大腸菌菌株による感染症)の危険性がある対象、または、大腸菌感染症(具体的にはMDR大腸菌菌株による感染症)に罹患している対象を処置することにおける使用のために提供され、ただし、この場合、そのような使用は、対象における感染症を制限するために、または、前記感染症から生じる疾患状態を改善するために、好ましくは、腎盂腎炎、二次的菌血症、敗血症、腹膜炎、髄膜炎および人工呼吸器関連肺炎の処置または予防のために、効果的な量の抗体を対象に投与することを含む。
したがって、本発明は具体的には、大腸菌感染症の危険性がある対象、または、大腸菌感染症に罹患している対象が、効果的な量の抗体を対象に投与することによって処置される処置方法を提供する。
具体的には、抗体が、MDR大腸菌(好ましくはST131−O25b:H4菌株)の殺菌的死滅を、当該菌株によって発現される莢膜多糖に関係なく行うために提供される。
具体的な局面によれば、本発明の抗体を使用する免疫療法は、例えば、様々な動物モデルにおいて明らかにされるように、生細菌攻撃からの効果的な保護をもたらす場合がある。
抗体により、具体的には、致死的な内毒素血症が中和される場合がある。そのような機能的活性が、適切なインビボモデル(精製LPSによる免疫原投与)において明らかにされる場合がある。
抗体は具体的には、例えば、インビトロでの血清殺菌アッセイ(SBA)によって明らかにされるように、例えば、(抗体が加えられないか、または、無関係なコントロールmAbが加えられる)コントロールサンプルよりも少なくとも20%大きい細菌殺傷を伴って、補体媒介殺傷によってMDR大腸菌に対して効果的である。
抗体は具体的には、例えば、インビトロでのオプソニン作用殺傷アッセイ(OPK)によって明らかにされるように、例えば、(抗体が加えられないか、または、無関係なコントロールmAbが加えられる)コントロールサンプルよりも少なくとも20%大きい投入細菌の取り込みまたは20%小さい最終のCFUカウント数を伴って、抗体媒食作用によってMDR大腸菌に対して効果的である。
抗体は具体的には、例えば、インビトロでのLALアッセイまたはtoll様受容体4(TLR4)レポーターアッセイによって明らかにされるように、例えば、(抗体が加えられないか、または、無関係なコントロールmAbが加えられる)コントロールサンプルとの比較でのエンドトキシン活性における少なくとも20%の低下を伴って、エンドトキシン機能を中和することによってMDR大腸菌に対して効果的である。
本発明はさらに、本発明の抗体を含み、好ましくは非経口用配合物または粘膜用配合物を含み、場合により医薬的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含有する医薬調製物を提供する。
そのような医薬組成物は抗体を唯一の活性物質として、あるいは、他の活性物質との組合せで、または、活性物質のカクテル、例えば、少なくとも2つもしくは3つの異なる抗体の組合せもしくはカクテルなどとの組み合わせで含有する場合がある。
具体的な局面によれば、本発明の抗体は、大腸菌菌株によって引き起こされる対象における大腸菌感染症または大腸菌菌血症を、具体的には、LPS O25bを発現するMDR菌株によって引き起こされる感染症を、例えば、上部尿路感染症および下部尿路感染症(膀胱炎または尿道炎、上行性または血行性の腎盂腎炎を含む)などをとりわけ糖尿病患者において、同様にまた、菌血症、敗血症、腹膜炎または腸管コロニー形成とともに明らかにするための診断使用のために提供される。
具体的には、抗体が、対象におけるMDR大腸菌による全身的感染症が、前記対象の体液のサンプルを抗体と接触させることによってエクスビボで明らかにされる本発明による使用のために提供され、ただし、この場合、抗体の特異的な免疫反応により、感染症が明らかにされる。
具体的には、体液のサンプルが、特異的な免疫反応について試験され、ただし、そのようなサンプルは、尿、血液、血液単離物または血液培養物、吸引物、痰、挿管された対象の洗浄液、および便からなる群から選択される。
具体的には、本発明による診断使用は、大腸菌の血清型を臨床検体から回収される純粋な大腸菌培養物からインビトロにおいて決定することを示す。
さらなる局面によれば、本発明は、本発明の抗体の診断用調製物であって、標識を伴う抗体および/または標識を伴うさらなる診断試薬(例えば、抗体、または、それぞれの標的抗原との抗体の免疫複合体を特異的に認識する試薬など)、ならびに/あるいは、抗体および診断試薬の少なくとも1つを固定化するための固相を必要に応じて含有する診断用調製物を提供する。
本発明はさらに、本発明の抗体を含む診断用調製物であって、前記抗体およびさらなる診断試薬を組成物または部分品のキットにおいて含み、下記の成分:
a)前記抗体;および
b)前記さらなる診断試薬;
c)ならびに、必要な場合には、前記抗体および前記診断試薬の少なくとも1つを固定化するための固相
を含む診断用調製物を提供する。
本発明はさらに、大腸菌菌株によって引き起こされる対象における大腸菌感染症または大腸菌菌血症を診断する方法であって、
a)本発明の抗体を提供すること、および
b)抗体がO25b抗原と特異的に免疫反応するかを、例えば、O25b抗原のみとの免疫反応によって、または、O25aおよびO25bと反応するための交差反応性免疫反応によって、試験される対象の生物学的サンプル(例えば、血液または血清)において、好ましくは凝集試験によって検出し、それにより、MDR大腸菌の感染症または菌血症を診断すること
を含む方法を提供する。
対象の好適な生物学的サンプルが具体的には、血液、血清、血液単離物または血液培養物、尿、吸引物、痰、挿管された対象の洗浄液、および便からなる群から選択される場合がある。
本発明の好ましい診断アッセイは、例えば、O25b抗原を発現する細菌の抗体による凝集、または、試験されるサンプルから得られる遊離状態の(または単離された)O25b抗原による凝集を試験するために固相(例えば、ラテックスビーズ、金粒子など)に固定化された本発明の抗体を含む。
いくつかの診断アッセイでは、O25bおよび/またはO25aと結合するための異なる特異性および/または親和性を有し、したがって、O25b抗原とO25a抗原とを識別するかもしれない2つの異なる抗体が伴う場合がある。
具体的な局面によれば、本発明は、大腸菌(具体的にはMDR大腸菌)による対象の感染症を本発明の診断剤または本発明の診断方法によって明らかにして、そのような感染症に対する治療剤による処置、例えば、免疫療法(例えば、本発明の抗体により処置することなど)を用いる処置の基礎を提供するためのコンパニオン診断剤を提供する。
具体的な局面によれば、本発明は、遊離状態のLPSを、例えば、生細菌の量が限定される臨床検体から明らかにすることによって、MDR大腸菌(具体的にはMDR大腸菌)による対象の感染症を診断するための高感度なベッドサイド診断剤を提供する。そのようなアッセイの感度は具体的には、100ng未満のLPSであり、好ましくは10ng未満のLPSである。
本発明はさらに、本発明の抗体をコードする単離された核酸を提供する。
本発明はさらに、
a)本発明の抗体のVHおよび/またはVL;あるいは
b)あるいは本発明の抗体のHCおよび/またはLC
を発現させるためのコード配列を含む発現カセットまたはプラスミドを提供する。
本発明はさらに、本発明の発現カセットまたはプラスミドを含む宿主細胞を提供する。
具体的には、DSM26763またはDSM26762で寄託されるプラスミドおよび宿主細胞は除外される。そのような寄託物は、プラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞であり、この場合、DSM26763で寄託された宿主細胞は、8D5−1G10−LCと称される抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換され、一方、DSM26762で寄託された宿主細胞は、8D5−1G10−HCと称される抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換される。
具体的には、さらに除外されるものが、DSM28171またはDSM28172で寄託されるプラスミドおよび宿主細胞である。そのような寄託物は、プラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞であり、この場合、DSM28171で寄託された宿主細胞は、8D10−C8−LCと称される抗体軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換され、一方、DSM28172で寄託された宿主細胞は、8D10−C8−HCと称される抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列を含むプラスミドにより形質転換される。
本発明はさらに、発明の抗体を製造する方法であって、本発明の宿主細胞が、前記抗体を産生させるための条件のもとで培養または維持される方法を提供する。
さらなる局面によれば、本発明は、本発明の抗体を製造する方法であって、
a)ヒト以外の動物を大腸菌のO25b抗原により免疫化し、抗体を産生するB細胞を単離すること;
b)不死化された細胞株を単離されたB細胞から形成すること;
c)細胞株をスクリーニングして、O25b抗原および場合によりO25a抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する細胞株を特定すること(例えば、O25aと比較して、O25bに対する優先的な結合が明らかにされる);および
d)前記モノクローナル抗体または該抗体のヒト化形態もしくはヒト形態、あるいは、前記モノクローナル抗体と同じエピトープ結合特異性を有するそれらの誘導体を製造すること
を含む方法を提供する。
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、リンカー配列の有無にかかわらず、抗体ドメインからなる、または抗体ドメインを含むポリペプチドまたはタンパク質を示すものとする(ただし、抗体ドメインは免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の定常ドメインおよび/または可変ドメインとして理解される)。ポリペプチドは、ループ配列によってつながれる抗体ドメイン構造の少なくとも2つのベータ鎖からなるベータ−バレル構造を含むならば、抗体ドメインとして理解される。抗体ドメインは生来型構造である場合があり、あるいは、例えば、抗原結合特性またはいずれかの他の特性(例えば、安定性または機能的特性(例えば、Fc受容体FcRnおよび/またはFcγ受容体に対する結合など)など)を改変するために変異誘発または誘導体化によって改変される場合がある。
本明細書中で使用されるような抗体は、1つまたは複数の抗原あるいはそのような抗原の1つまたは複数のエピトープと結合するための特異的な結合部位を有しており、具体的には、単一の可変抗体ドメイン(例えば、VH、VLまたはVHHなど)のCDR結合部位または複数対の可変抗体ドメイン(例えば、VL/VH対など)の結合部位を含み、ただし、抗体はVL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含む(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab)2、scFv、Fvまたは全長抗体など)。
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合、単一の可変抗体ドメイン(例えば、VH、VLまたはVHHなど)、あるいは、連結配列またはヒンジ領域の有無にかかわらず、可変抗体ドメインおよび/または定常抗体ドメインの組合せ(可変抗体ドメインの対(例えば、VL/VH対など)を含む)を含む、あるいはそのようなものからなる抗体形式を特に示すものとし、ただし、抗体はVL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含み、または、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメインからなる(例えば、重鎖抗体、Fab、F(ab’)、F(ab)2、scFv、Fd、Fv、あるいは、全長抗体(例えば、IgGタイプ、例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプまたはIgG4サブタイプ)の全長抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体またはIgM抗体など)。用語「全長抗体」は、天然に存在する抗体モノマーにおいて一般に見出されるFcドメインおよび他のドメインの少なくともほとんどを含むどのような抗体分子をも示すために使用することができる。この表現は、特定の抗体分子が抗体フラグメントでないことを強調するために本明細書中では使用される。
用語「抗体」は具体的には、単離された形態での抗体を包含するものとし、この場合、そのような抗体は、異なる標的抗原に対する他の抗体、または、抗体ドメインの異なる構造的配置を含む他の抗体を実質的に含まない。それでも、単離された抗体が、例えば、異なる特異性を有する少なくとも1つの他の抗体(例えば、モノクローナル抗体または抗体フラグメントなど)との当該単離された抗体の組合せを含有する組合せ調製物に含まれる場合がある。
用語「抗体」は、ヒト種を含めて、動物起源の抗体に対して、例えば、哺乳類(ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ、ラマ、ウシおよびウマを含む)または鳥類(例えば、ニワトリなど)などの起源の抗体に対して適用されるものとし、この場合、そのような用語は特に、動物起源の配列(例えば、ヒト配列)に基づく組換え抗体を包含するものとする。
用語「抗体」はさらに、異なる種の起源の配列(例えば、マウス起源およびヒト起源の配列など)を有するキメラ抗体に対して適用される。
用語「キメラ」は、抗体に関して使用される場合、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれの1つの部分が、特定の種に由来する抗体または特定のクラスに属する抗体における対応する配列に対して相同的であり、その一方で、その鎖の残るセグメントが別の種またはクラスにおける対応する配列に対して相同的であるそのような抗体を示す。典型的には、軽鎖および重鎖の両方の鎖の可変領域が、哺乳動物の1つの種に由来する抗体の可変領域に似ており、その一方で、定常部分が、別の種に由来する抗体の配列に対して相同的である。例えば、可変領域は、例えば、ヒト細胞調節物に由来する定常領域との組合せで、ヒト以外の宿主生物からの容易に入手可能なB細胞またはハイブリドーマを使用して、現在知られている供給源に由来することができる。
用語「抗体」はさらに、ヒト化抗体に対して適用される場合がある。
用語「ヒト化」は、抗体に関して使用される場合、ヒト以外の種からの免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子であって、当該分子の残る免疫グロブリン構造がヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子を示す。抗原結合部位は、定常ドメインに融合される完全な可変ドメイン、または、可変ドメインにおいて適切なフレームワーク領域にグラフト化される相補性決定領域(CDR)のみのどちらかを含む場合がある。抗原結合部位は野生型である場合があり、あるいは、例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換によって改変される場合があり、好ましくは、ヒト免疫グロブリンに一層よく似ているように改変される場合がある。いくつかの形態のヒト化抗体はすべてのCDR配列を保っている(例えば、マウス抗体からの6つすべてのCDRを含有するヒト化されたマウス抗体)。他の形態は、元の抗体に関して変化させられる1つまたは複数のCDRを有する。
用語「抗体」はさらに、ヒト抗体に対して適用される。
用語「ヒト」は、抗体に関して本明細書中で使用される場合、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を包含することが理解される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発または部位特異的変異誘発によって、あるいは、インビボでの体細胞変異によって導入される変異)を、例えば、CDRにおいて含む場合がある。ヒト抗体には、ヒト免疫グロブリンのライブラリーから単離される抗体、あるいは、1つまたは複数のヒト免疫グロブリンについて遺伝子組換えである動物から単離される抗体が含まれる。
用語「抗体」は具体的には、どのようなクラスまたはサブクラスの抗体に対しても適用される。それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体は抗体の主要なクラス(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)に割り当てることができ、また、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられる場合がある(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)。
この用語はさらに、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(具体的には組換え抗体)に対して適用され、この場合、そのような用語には、組換え手段によって調製される、発現させられる、作製される、または単離されるすべての抗体および抗体構造が含まれ、例えば、異なる起源からの遺伝子または配列を含む、動物(例えば、ヒトを含む哺乳動物)に起源を有する抗体(例えば、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはハイブリドーマ由来抗体など)などが含まれる。さらなる例には、抗体を発現するように形質転換される宿主細胞から単離される抗体、あるいは、抗体または抗体ドメインの組換えコンビナトリアルライブラリーから単離される抗体、あるいは、他のDNA配列への抗体遺伝子配列のスプライシングを伴ういずれかの他の手段によって調製される、発現させられる、作製される、または単離される抗体が示される。
用語「抗体」はまた、抗体の誘導体、具体的には機能的に活性な誘導体を示すことが理解される。抗体誘導体は、1つまたは複数の抗体ドメインまたは抗体のどのような組合せとしてでも、ならびに/あるいは、抗体のいずれかのドメインが1つまたは複数の他のタンパク質(例えば、他の抗体(例えば、CDRループを含む結合性構造体)、受容体ポリペプチド、しかし、同様に、リガンド、足場タンパク質、酵素、毒素およびその他など)のどのような位置においてでも融合され得る融合タンパク質として理解される。抗体の誘導体が、様々な化学的技術(例えば、共有結合カップリング、静電的相互作用、ジスルフィド結合など)による他の物質に対する会合または結合によって得られる場合がある。抗体に結合させられる他の物質は、脂質、炭水化物、核酸、有機分子および無機分子、または、どのような組合せであれ、それらの組合せである場合がある(例えば、PEG、プロドラッグまたは薬物)。具体的な実施形態において、抗体は、生物学的に許容され得る化合物との特異的な相互作用を可能にするさらなるタグを含む誘導体である。本発明において使用可能であるタグに関しては、抗体がその標的に結合したときに負の影響を有しない、または許容可能な負の影響を有する限り、特に限定されない。好適なタグの例には、Hisタグ、Mycタグ、FLAGタグ、Strepタグ、カルモジュリンタグ、GSTタグ、MBPタグおよびSタグが含まれる。別の具体的な実施形態において、抗体は、標識を含む誘導体である。用語「標識」は、本明細書中で使用される場合、「標識された」抗体を生成するように抗体に直接的または間接的にコンジュゲート化される検出可能な化合物または組成物を示す。標識は、それ自体が検出可能であってもよく(例えば、放射性同位体標識または蛍光性標識)、または、酵素標識の場合には、検出可能である基質化合物または組成物の化学的変化を触媒する場合がある。
本明細書中に記載されるような好ましい誘導体は、抗原結合に関して機能的に活性であり、好ましくは、例えば、SBAアッセイ、OPKアッセイまたはLALアッセイにおいて明らかにされるように、MDR大腸菌およびそのエンドトキシンと戦う効力、あるいは、細菌攻撃から保護する効力、あるいは、致死的な内毒素血症を中和する効力を有する。
具体的には、本発明の抗体に由来する抗体は、O25b抗原に示差的に結合することにおいて、例えば、O25b抗原と特異的かつ選択的に結合することにおいて機能的に活性であるCDR領域またはそのCDR変化体の少なくとも1つまたは複数を含む場合がある。
親抗体または親抗体配列(例えば、親となるCDR配列またはFR配列など)に由来する抗体は本明細書中では特に、例えば、インシリコ工学または組換え工学によって、あるいは、そうでなければ、化学的な誘導体化または合成によって得られる変異体または変化体として理解される。
用語「抗体」はまた、親CDR配列の機能的に活性なCDR変化体を含む抗体、および、親抗体の機能的に活性な変化体抗体を含めて、抗体の変化体を示すことが理解される。
具体的には、本発明の抗体に由来する抗体は、CDR領域またはそのCDR変化体の少なくとも1つまたは複数を、例えば、重鎖可変領域の少なくとも3つのCDRおよび/または軽鎖可変領域の少なくとも3つのCDRを、CDR領域またはFR領域の少なくとも1つにおける、あるいは、HCまたはLCの定常領域における少なくとも1つの点変異を伴って含む場合があり、この場合、抗体は機能的に活性であり、例えば、O25b抗原と特異的に結合し、かつ、場合により、O25a抗原と交差特異的に結合する。
用語「変化体」は、例えば、変異誘発法によって得られる抗体(例えば、変異抗体または抗体のフラグメントなど)、具体的には、特異的な抗体アミノ酸配列または抗体領域の欠失、交換、導入、特異的な抗体アミノ酸配列または抗体領域への挿入を行うための、あるいは、アミノ酸配列を、例えば、抗体安定性、エフェクター機能または半減期を操作するために定常ドメインにおいて、または、抗原結合特性を、例えば、この技術分野で利用可能な親和性成熟技術によって改善するために可変ドメインにおいて化学的に誘導体化するための様々な変異誘発法によって得られる抗体(例えば、変異抗体または抗体のフラグメントなど)を特に示すものとする。知られている変異誘発方法のどれもが用いられる場合があり、これには、例えば、ランダム化技術によって得られる所望の位置における点変異が含まれる。場合により、様々な位置が、ランダムに、例えば、抗体配列をランダム化するための可能なアミノ酸のいずれかまたは好ましいアミノ酸の選択のどちらかにより選定される。用語「変異誘発」は、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を変更するためのこの技術分野で認識されているどのような技術をも示す。好ましいタイプの変異誘発には、誤りを生じさせやすいPCR変異誘発、飽和変異誘発または他の部位特異的変異誘発が含まれる。
用語「変化体」は具体的には、機能的に活性な変化体を包含するものとする。
CDR配列の用語「機能的に活性な変化体」は、本明細書中で使用される場合、「機能的に活性なCDR変化体」として理解され、また、抗体の「機能的に活性な変化体」は、本明細書中で使用される場合、「機能的に活性な抗体変化体」として理解される。機能的に活性な変化体は、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失または置換、あるいは、アミノ酸配列における1つまたは複数のアミノ酸残基の化学的誘導体化、あるいは、ヌクレオチド配列内の1つまたは複数のヌクレオチドの化学的誘導体化、あるいは、配列の遠位末端のどちらかまたは両方での化学的誘導体化、例えば、CDR配列では、N端側および/またはC端側の1個、2個、3個または4個のアミノ酸、ならびに/あるいは、中心の1個、2個、3個または4個のアミノ酸(すなわち、CDR配列の中央における)化学的誘導体化によるこの配列(親抗体または親配列)の改変から生じる配列を意味し、かつ、そのような変異はこの配列の活性に影響を及ぼさず、具体的にはこの配列の活性を損なわない。選択された標的抗原に対する特異性を有する結合部位の場合には、抗体の機能的に活性な変化体は依然として、所定の結合特異性を有するであろう。だが、これは、例えば、特異的なエピトープに対する微細な特異性、親和性、アビディティー、Kon速度またはKoff速度などを変化させるために変化させることができるであろう。例えば、親和性成熟を受けた抗体が具体的には、機能的に活性な変化体抗体として理解される。したがって、親和性成熟を受けた抗体における改変されたCDR配列が、機能的に活性なCDR変化体として理解される。
具体的には、本発明の抗体の機能的に活性な変化体は、O25b抗原と結合する潜在的能力、および、大腸菌の他の抗原と比較してO25b抗原に優先的に結合するための特異性または選択性(例えば、大腸菌のO25b抗原に結合し、O25a抗原には結合しないこと、または、O25a抗原と有意に結合しないこと、または、O25b抗原およびO25a抗原の両方と交差特異的に結合するが、大腸菌の他の抗原には結合しないこと)を有する。
機能的に活性な変化体が、例えば、親抗体の配列を変化させることによって得られる場合がある(例えば、表1および図2において列挙されるような抗体のいずれかと同じ結合部位を含み、しかし、結合部位のほかに抗体領域内の改変を伴う抗体、あるいは、結合部位内の改変によってそのような親抗体に由来するが、抗原結合を損なわず、好ましくは、O25b抗原と特異的または選択的に結合することができること、例えば、大腸菌のO25b抗原に結合し、O25a抗原には結合しないこと、または、O25a抗原と有意に結合しないこと、または、O25b抗原およびO25a抗原の両方と交差特異的に結合するが、大腸菌の他の抗原には結合しないことを含めて、親抗体と実質的に同じ生物学的活性、または、改善された活性さえも有するであろう抗体)。必要な場合には、機能的に活性な変化体はさらに、SBAアッセイにおける補体媒介殺傷の潜在的能力を含む場合があり、かつ/または、場合によりさらに、OPKアッセイにおける抗体媒介食作用の潜在的能力を含む場合があり、かつ/または、場合によりさらに、LALアッセイにおけるエンドトキシン中和機能を、例えば、標的(MDR)大腸菌に対しての特異的な結合アッセイまたは機能的試験によって明らかにされるように、実質的に同じ生物学的活性を伴って含む場合がある。
用語「実質的に同じ生物学的活性」は、本明細書中で使用される場合、比較可能な抗体または親抗体について求められるような活性の少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、例えば、少なくとも100%、または少なくとも125%、または少なくとも150%、または少なくとも175%である、あるいは、例えば、200%にまで達する実質的に同じ活性によって示されるような活性を示す。
本明細書中に記載されるような好ましい変化体または誘導体は、抗原結合に関して機能的に活性であり、好ましくは、O25b抗原と特異的に結合する潜在的能力、および、大腸菌の他の抗原には結合しないこと、例えば、大腸菌のO25b抗原に結合し、O25a抗原には結合しないこと、または、O25a抗原と有意に結合しないこと、または、O25b抗原およびO25a抗原の両方と交差特異的に結合すること、例えば、O25aと比較してO25b抗原と優先的に結合すること、または、O25(O25a)菌株に対して惹起される現在のポリクローナルなタイプ決定血清と比較して、より大きい親和性によりO25bと結合することを有する。好ましい変化体は、大腸菌の他の抗原には結合せず、少なくとも対数で2のKd値差、好ましくは少なくとも対数で3のKd値差を伴い、また、場合によりさらに、SBAアッセイにおける補体媒介殺傷の潜在的能力、例えば、抗体を含有しないコントロールサンプルに対する細菌カウント数における有意な低下を達成するための潜在的能力を含み、かつ/または、場合によりさらに、OPKアッセイにおける抗体媒介食作用の潜在的能力、例えば、抗体を含有しないコントロールサンプルに対する細菌カウント数における有意な低下を達成するなどのための潜在的能力を含み、かつ/または、場合によりさらに、LALアッセイまたはTLR4シグナル伝達アッセイにおけるエンドトキシン中和機能、例えば、抗体を含有しないコントロールサンプルに対する遊離LPSにおける有意な低下を達成するなどのためのエンドトキシン中和機能を、例えば、標的MDR大腸菌に対しての特異的な結合アッセイまたは機能的試験によって明らかにされるように、実質的に同じ生物学的活性を伴って含む。様々なアッセイにおける分析物の有意な低下は典型的には、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%から、約100%(+/−1%)の完全な低下に至るまでの低下を意味する。
好ましい実施形態において、親抗体の機能的に活性な変化体は、
a)前記抗体の生物学的に活性なフラグメントである(ただし、この場合、このフラグメントは、当該分子の配列の少なくとも50%を構成し、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%を構成し、最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%を構成する);
b)少なくとも1つのアミノ酸置換、アミノ酸付加および/またはアミノ酸欠失によって前記抗体に由来する(ただし、この場合、機能的に活性な変化体は、当該分子またはその一部分に対する所与の配列同一性を有する;例えば、配列同一性が少なくとも50%である抗体、好ましくは少なくとも60%である抗体、より好ましくは少なくとも70%である抗体、より好ましくは少なくとも80%である抗体、さらにより好ましくは少なくとも90%である抗体、一層より好ましくは少なくとも95%である抗体、最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%である抗体など);および/または
c)抗体またはその機能的に活性な変化体と、さらには、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列に対して異種である少なくとも1つのアミノ酸またはヌクレオチドとからなる。
本発明の1つの好ましい実施形態において、本発明による抗体の機能的に活性な変化体は、上記で記載される変化体と本質的に同一であり、しかし、異なる種の相同的配列に由来するという点でそのポリペプチド配列またはヌクレオチド配列からそれぞれ異なる。これらは、天然に存在する変化体またはアナログと呼ばれる。
用語「機能的に活性な変化体」にはまた、天然に存在する対立遺伝子変化体、同様にまた、変異体、または、どのような変化体であれ、天然に存在しない他の変化体が含まれる。この技術分野では知られているように、対立遺伝子変化体は、ポリペプチドの生物学的機能を本質的には変化させない、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または付加を有するとして特徴づけられる(ポリ)ペプチドの代替形態である。
機能的に活性な変化体が、例えば、1つまたは複数の点変異によるポリペプチド配列またはヌクレオチド配列における配列変化によって得られる場合があり、しかし、この場合、配列変化は、本発明の組合せで使用されるとき、変化を受けていないポリペプチド配列またはヌクレオチド配列の機能を保持し、または改善する。そのような配列変化には、(保存的)置換、付加、欠失、変異および挿入が含まれ得るが、これらに限定されない。
具体的な機能的に活性な変化体がCDR変化体である。CDR変化体は、CDR領域における少なくとも1つのアミノ酸によって改変されるアミノ酸配列を含み、ただし、この場合、前記改変はアミノ酸配列の化学的または部分的な変化であり得るが、そのような改変は、変化体が非改変配列の生物学的特徴を保持することを可能にする。CDRアミノ酸配列の部分的変化は、1個〜数個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸配列)の欠失または置換によるもの、あるいは、1個〜数個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸配列)の付加または挿入によるもの、あるいは、1個〜数個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸配列)の化学的誘導体化によるもの、あるいは、それらの組合せによるものである場合がある。アミノ酸残基における置換は、例えば、1つの疎水性アミノ酸を代わりの疎水性アミノ酸に置換する保存的置換である場合がある。
保存的置換は、それらの側鎖および化学的性質において関連づけられるアミノ酸の集団の中で行われる置換である。そのような集団の例が、塩基性側鎖を有するアミノ酸、酸性側鎖を有するアミノ酸、非極性の脂肪族側鎖を有するアミノ酸、非極性の芳香族側鎖を有するアミノ酸、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸、小さい側鎖を有するアミノ酸、大きい側鎖を有するアミノ酸などである。
点変異は特に、種々のアミノ酸についての1つまたは複数の単一(非連続)または二重のアミノ酸の置換もしくは交換、欠失または挿入において非操作のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列の発現をもたらすポリヌクレオチドを設計することとして理解される。
好ましい点変異は、同じ極性および/または電荷のアミノ酸の交換を示す。この点に関して、アミノ酸は、64個のトリプレットコドンによってコードされる20個の天然に存在するアミノ酸を示す。これら20個のアミノ酸は、中性電荷、正電荷および負電荷を有するアミノ酸に分けることができる。
「中性」アミノ酸が、それらのそれぞれの三文字コードおよび一文字コードならびに極性と一緒に下記に示される:
アラニン:(Ala、A)非極性、中性;
アスパラギン:(Asn、N)極性、中性;
システイン:(Cys、C)非極性、中性;
グルタミン:(Gln、Q)極性、中性;
グリシン:(Gly、G)非極性、中性;
イソロイシン:(Ile、I)無極性、中性;
ロイシン:(Leu、L)非極性、中性;
メチオニン:(Met、M)非極性、中性;
フェニルアラニン:(Phe、F)非極性、中性;
プロリン:(Pro、P)非極性、中性;
セリン:(Ser、S)極性、中性;
トレオニン:(Thr、T)極性、中性;
トリプトファン:(Trp、W)非極性、中性;
チロシン:(Tyr、Y)極性、中性;
バリン:(Val、V)非極性、中性;および
ヒスチジン:(His、H)極性、正荷電(10%)、中性(90%)。
「正」荷電アミノ酸が下記の通りである:
アルギニン:(Arg、R)極性、正荷電;および
リシン:(Lys、K)極性、正荷電。
「負」荷電アミノ酸が下記の通りである:
アスパラギン酸:(Asp、D)極性、負荷電;および
グルタミン酸:(Glu、E)極性、負荷電。
本明細書中に記載される抗体配列およびホモログに関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、必要ならば、ギャップを導入した後で、かつ、どのような保存的置換も配列同一性の一部として考慮することなく、具体的なポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の百分率として定義される。当業者は、比較されている配列の全長にわたる最大のアラインメントを達成するために必要とされるどのようなアルゴリズムも含めて、アラインメントを見積もるための適切なパラメーターを決定することができる。
抗体変化体は具体的には、機能的であり、かつ、機能的等価体として役立ち得る、例えば、特異的標的に結合し、また、機能的特性を有する、例えば、糖鎖工学によって製造される、特定のグリコシル化パターンを伴うホモログ、アナログ、フラグメント、改変体または変化体を含むことが理解される。
本発明の抗体はFcエフェクター機能を示す場合があり、または示さない場合がある。作用様式が、Fcエフェクター機能を有しない中和抗体によって主に媒介されるにもかかわらず、Fcは補体を補充し、標的抗原(例えば、毒素など)が免疫複合体の形成を介して循環から除かれることを助けることができる。
具体的な抗体は、活性なFc部分を欠いている場合がある。したがって、抗体のFc部分を含有しない抗体ドメイン、または、Fcγ受容体結合部位を含有しない抗体ドメインから構成されるか、あるいは、例えば、Fcエフェクター機能を低下させるための改変によって、具体的にはADCC活性および/またはCDC活性を消す、または低下させるための改変によって、Fcエフェクター機能を欠く抗体ドメインを含むかのどちらかである。代わりの抗体が、Fcエフェクターを増大させるために、具体的にはADCC活性および/またはCDC活性を高めるために改変を取り込むように設計される場合がある。
そのような改変が、変異誘発(例えば、Fcγ受容体結合部位における変異)によって、あるいは、抗体形式のADCC活性および/またはCDC活性を妨害し、その結果、Fcエフェクター機能の低下または増大を達成するようにするための誘導体または薬剤によって達成される場合がある。
Fcエフェクター機能の有意な低下は典型的には、ADCC活性および/またはCDC活性によって測定されるような非改変(野生型)形式の10%未満(好ましくは5%未満)のFcエフェクター機能を示すことが理解される。Fcエフェクター機能の有意な増大は典型的には、ADCC活性および/またはCDC活性によって測定されるような非改変(野生型)形式の少なくとも10%(好ましくは少なくとも20%、30%、40%または50%)のFcエフェクター機能における増大を示すことが理解される。
抗体配列に関しての用語「糖鎖工学(された)」変化体は、改変された免疫原性特性または免疫調節(例えば、抗炎症性)特性(ADCCおよび/またはCDC)を糖鎖工学の結果として有するグリコシル化変化体を示すものとする。すべての抗体が炭水化物構造を重鎖定常領域における保存された位置に含有しており、それぞれのアイソタイプが、様々なN結合型炭水化物構造の異なった配列を有し、これらのN結合型炭水化物構造により、タンパク質の組み立て、分泌および機能的活性が可変的影響を受ける。IgG1タイプの抗体は、保存されたN結合型糖鎖付加部位をそれぞれのCH2ドメインにおいてAsn297に有する糖タンパク質である。Asn297に結合する2つの複雑な二分岐したオリゴ糖がCH2ドメインの間に埋もれ、これにより、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成し、また、それらの存在が、抗体がエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)など)を媒介するために不可欠である。N297におけるN−グリカンを、例えば、N297を、例えば、Aに変異することにより除くこと、または、T299は典型的には、低下したADCCを有する脱糖鎖された(aglycosylated)抗体形式をもたらす。具体的には、本発明の抗体はグリコシル化抗体または糖鎖工学抗体あるいは脱糖鎖抗体である場合がある。
抗体のグリコシル化における大きな違いが細胞株の間には存在し、また、小さい違いさえもが、異なる培養条件のもとで成長させられた所与の細胞株について認められる。細菌細胞における発現は典型的には、脱糖鎖抗体をもたらす。β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)、すなわち、二分性GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼのテトラサイクリン調節発現を伴うCHO細胞は、改善されたADCC活性を有することが報告された(Umana他、1999、Nature Biotech.、17:176〜180)。宿主細胞の選定に加えて、抗体の組換え産生の期間中におけるグリコシル化に影響を及ぼす要因には、生育様式、培地処方、培養密度、酸素化、pHおよび精製スキームなどが含まれる。
用語「抗原結合部位」または用語「結合部位」は、抗原結合に関与する抗体の一部分を示す。抗原結合部位が、重(「H」)鎖および/または軽(「L」)鎖のN端側可変「V」領域あるいはそれらの可変ドメインのアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域の内部における3つの非常に異なった区域(これは「超可変領域」と呼ばれる)が、フレームワーク領域として知られているより保存された隣接区域の間に置かれる。抗原結合部位は、結合したエピトープまたは抗原の三次元表面に対して相補的である表面を与え、超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。CDRに組み込まれる結合部位は本明細書中ではまた、「CDR結合部位」とも呼ばれる。
用語「抗原」は、用語「標的」または用語「標的抗原」と交換可能に本明細書中で使用されるように、抗体結合部位によって認識される標的分子全体またはそのような分子のフラグメントを示すものとする。具体的には、抗原の部分構造で、免疫学的に関連している部分構造、例えば、ポリペプチドまたは炭水化物構造(これらは一般には「エピトープ」と呼ばれ、例えば、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープと呼ばれる)が、そのような結合部位によって認識される場合がある。O25b抗原またはO25a抗原のような特異的な抗原が、単離された抗原として提供され、あるいは、それどころか、大腸菌細胞または大腸菌細胞分画物の形態で提供される。
用語「エピトープ」は、本明細書中で使用される場合、特異的な結合パートナーを完全に構成することがある、または、抗体の結合部位に対しての特異的な結合パートナーの一部であることがある分子構造を特に示すものとする。エピトープが、炭水化物、ペプチド性構造、脂肪酸、有機物質、生化学物質もしくは無機物質またはその誘導体、および、どのような組合せであれ、それらの組合せから構成される場合がある。エピトープがペプチド性構造(例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質など)に含まれるならば、エピトープは通常、少なくとも3個のアミノ酸、好ましくは5個〜40個のアミノ酸、より好ましくは約10個〜20個の間のアミノ酸を含むことになる。エピトープは線状エピトープまたは立体配座エピトープのどちらもが可能である。線状エピトープが、ポリペプチド鎖または炭水化物鎖の一次配列のただ1つだけのセグメントから構成される。線状エピトープは連続または重複していることが可能である。
立体配座エピトープが、三次構造を形成するためにポリペプチドを折りたたむことによってまとまるアミノ酸または炭水化物から構成され、これらのアミノ酸は必ずしも線状配列において相互に隣接していない。具体的には、また、ポリペプチド抗原に関して、立体配座エピトープまたは不連続エピトープが、一次配列においては隔てられるが、ポリペプチドが生来型タンパク質/抗原に折り重なるときには分子の表面における一貫した構造に集まる2つ以上の異なったアミノ酸残基の存在によって特徴づけられる。
本明細書中では、用語「エピトープ」は、抗体によって認識される1つだけのエピトープ、または、様々なエピトープ変化体を含むエピトープの混合物(ただし、それぞれが交差反応性抗体によって認識される)を特に示すものとする。
用語「発現」は下記のように理解される。発現産物(例えば、本明細書中に記載されるような抗体など)の所望されるコード配列と、制御配列(例えば、動作可能な連結でのプロモーターなど)とを含有する核酸分子が、発現目的のために使用される場合がある。これらの配列による形質転換またはトランスフェクションを受けた宿主は、コードされたタンパク質を産生させることができる。形質転換を達成するために、発現システムがベクターに含まれる場合がある;しかしながら、関連したDNAはまた、宿主染色体に組み込まれる場合がある。具体的には、この用語は、例えば、ベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入される外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のための好適な条件のもとにある宿主細胞および適合し得るベクターを示す。
コードDNAは、特定のポリペプチドまたはタンパク質(例えば、抗体など)のための特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始させる、調節する、あるいは、そうでない場合には媒介する、または制御するDNA配列である。プロモーターDNAおよびコードDNAは、同じ遺伝子から、または異なる遺伝子から得られる場合があり、また、同じ生物または異なる生物から得られる場合がある。組換えクローニングベクターは多くの場合、クローニングまたは発現のための1つまたは複数の複製系、宿主における選択のための1つまたは複数のマーカー(例えば、抗生物質抵抗性)、および、1つまたは複数の発現カセットを含むであろう。
本明細書中で使用される「ベクター」は、好適な宿主生物におけるクローン化された組換えヌクレオチド配列の転写、すなわち、組換え遺伝子の転写およびそのmRNAの翻訳のために要求されるDNA配列として定義される。
「発現カセット」は、発現産物をコードするDNAコード配列またはDNAのセグメントで、規定された制限部位においてベクターに挿入され得るDNAコード配列またはDNAのセグメントを示す。カセットの制限部位が、適正な読み枠でのカセットの挿入を保証するように設計される。一般には、外来DNAがベクターDNAの1つまたは複数の制限部位において挿入され、その後、伝達性ベクターDNAと一緒に宿主細胞にベクターによって運ばれる。挿入されたDNAまたは付加されたDNAを有するDNAのセグメントまたは配列(例えば、発現ベクターなど)はまた、「DNA構築物」と呼ぶことができる。
発現ベクターは発現カセットを含み、さらには通常の場合、宿主細胞における自律的複製のための起点、あるいは、ゲノム組み込み部位、1つまたは複数の選択マーカー(例えば、アミノ酸合成遺伝子、または、抗生物質(例えば、ゼオシン、カナマイシン、G418またはヒグロマイシンなど)に対する抵抗性を付与する遺伝子)、多数の制限酵素切断部位、好適なプロモーター配列および転写ターミネーター(そのような成分は一緒に動作可能に連結される)を含む。用語「ベクター」は、本明細書中で使用される場合、自律的に複製するヌクレオチド配列、同様にまた、ヌクレオチド配列を組み込むゲノムを包含する。一般的なタイプのベクターが「プラスミド」であり、これは一般に、さらなる(外来)DNAを容易に受け入れることができ、かつ、好適な宿主細胞に容易に導入することができる二本鎖DNAの自己完結型分子である。プラスミドベクターは多くの場合、コードDNAおよびプロモーターDNAを含有し、また、外来DNAを挿入するために好適である1つまたは複数の制限部位を有する。具体的には、用語「ベクター」または用語「プラスミド」は、DNA配列またはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞に挿入することができ、その結果、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進させるビヒクルを示す。
用語「宿主細胞」は、本明細書中で使用される場合、特定の組換えタンパク質(例えば、本明細書中に記載されるような抗体など)を産生するように形質転換される一次の対象細胞、および、どのような子孫であれ、その子孫を示すものとする。必ずしもすべての子孫が、(意図的な変異または故意でない変異あるいは環境における違いに起因して)親細胞とまさに同一であるわけではないことを理解しなければならない。しかしながら、子孫が、最初に形質転換された細胞の機能性と同じ機能性を保持する限り、そのような変化した子孫はこれらの用語に含まれる。用語「宿主細胞株」は、組換えポリペプチド(例えば、組換え抗体など)を産生させるための組換え遺伝子を発現させるために使用されるような宿主細胞の細胞株を示す。用語「細胞株」は、本明細書中で使用される場合、長期間にわたって増殖する能力を獲得した特定の細胞タイプの樹立されたクローンを示す。そのような宿主細胞または宿主細胞株は細胞培養で維持される場合があり、かつ/または、組換えポリペプチドを産生させるために培養される場合がある。
用語「単離された」または用語「単離」は、核酸、抗体または他の化合物に関して本明細書中で使用される場合、自然界では伴うと思われる環境から十分に単離されており、その結果、「実質的に純粋な」形態で存在するようにされるそのような化合物を示すものとする。「単離された」は、他の化合物または材料との人為的混合物または合成混合物、あるいは、基本的活性を妨害しない不純物の存在、および、例えば、不完全な精製に起因して存在することがある不純物の存在を除外することを必ずしも意味しない。特に、本発明の単離された核酸分子はまた、天然には存在しない核酸分子(例えば、コドン最適化核酸またはcDNA)または化学合成される核酸分子を包含することが意味される。
同様に、本発明の単離された抗体は具体的には、天然には存在しておらず、例えば、別の抗体または活性な作用因との組合せ調製物において提供されるようなものであり(ただし、この場合、そのような組合せは自然界に存在しない)、あるいは、天然に存在する抗体の最適化された変化体または親和性成熟化された変化体、あるいは、抗体の製造性を改善するために設計されるフレームワーク領域を有する抗体である。
本発明の核酸に関しては、用語「単離された核酸」が使用されることがある。この用語は、DNAに対して適用されるときには、DNAの起源となる生物の天然に存在するゲノムにおいて当該DNAが直に隣接している配列から分離されるDNA分子を示す。例えば、「単離された核酸」は、ベクター(例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクターなど)に挿入されるDNA分子、あるいは、原核生物細胞もしくは真核生物細胞または宿主生物のゲノムDNAに組み込まれるDNA分子を含む場合がある。RNAに対して適用されるときには、用語「単離された核酸」は主に、上記で定義されるような単離されたDNA分子によってコードされるRNA分子を示す。代替において、この用語は、その天然の状態において(すなわち、細胞または組織において)伴うと思われる他の核酸から十分に単離されているRNA分子を示す場合がある。「単離された核酸」(DNAまたはRNAのどちらも)はさらに、生物学的手段または合成的手段によって直接に製造され、その製造の期間中に存在する他の成分から分離される分子を表す場合がある。
ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、本発明の単離された抗体またはエピトープなど)に関しては、用語「単離された」は具体的には、ポリペプチドまたはタンパク質に天然では伴う物質、例えば、それらの自然の環境において、あるいは、調製が、インビトロまたはインビボで実施される組換えDNA技術によるものであるときには、ポリペプチドまたはタンパク質が調製される環境(例えば、細胞培養)においてポリペプチドまたはタンパク質と一緒に見出される他の化合物などを含まない、または実質的に含まない化合物を示すものとする。単離された化合物は希釈剤または補助剤とともに配合することができ、また、依然として実用的目的のために単離することができる。例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、診断または治療において使用されるとき、医薬的に許容されるキャリアまたは賦形剤と混合することができる。特に、本発明の単離された抗体は、単離および精製された形態で提供されるので、好ましくは、単離された抗体を唯一の活性な物質として含む調製物で提供されるので、O25(a)菌株に対して惹起されるポリクローナル血清調製物とは異なる。しかしながら、このことは、単離された抗体が、限られた数のさらなる十分に定義された(単離された)抗体を含む組合せ製造物で提供されることを排除するものではない。単離された抗体は、固体キャリア、半液体キャリアまたは液体キャリア(例えば、ビーズなど)において提供されてもよい。
用語「中和する」または用語「中和」は、最も広い意味で本明細書中では使用され、どのような分子であれ、中和が達成される機構にかかわらず、病原体(例えば、MDR大腸菌など)が対象に感染することを妨げる分子、または、病原体が、強力なタンパク質毒素を産生することにより感染を促進させることを妨げるための分子、または、毒素が対象における標的細胞を損傷することを妨げるための分子を示す。中和を、例えば、MDR大腸菌エンドトキシンが結合すること、および/または、標的細胞表面のその同族受容体と相互作用すること(例えば、TLR4受容体に結合すること)を阻害する抗体によって達成することができる。中和はさらに、エンドトキシン分子をFc媒介機能によって循環から除くことによって生じさせることができる。
中和効力が典型的には、標準的なアッセイにおいて、例えば、エンドトキシンの生物学的活性の阻害が、例えば、比色分析によって測定されるLAL試験で求められる。
用語「MDR大腸菌」は下記のように理解される:ほんのこの10年で出現し、世界的に拡大した優勢な耐性クローンになったST131−O25b:H4クローン系譜にかなりの部分が起因する多剤耐性大腸菌による感染症。多耐性大腸菌は、3つ以上のクラスの抗生物質に対する抵抗性、例えば、下記の薬剤/群に対する抵抗性を明らかにするそのような菌株として特に理解される:ペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、フルオロキノロン系、ニトロフラントイン系、トリメトプリム(およびその組合せ)、ホスホマイシン、ポリミキシン系、クロラムフェニコール、アズトレオナム、チゲサイクリン。
酸性の莢膜多糖(CPS)は、ほとんどの病原体大腸菌を取り囲む多糖の厚い粘膜様の層である。したがって、本発明の抗体によって認識される特異的エピトープが特異的に、被包性MDR大腸菌菌株および非被包性MDR大腸菌菌株の両方に対して接近可能であると思われることは驚くべきことである。
MDR大腸菌と戦う抗体またはMDR大腸菌を中和する抗体は病原体および病原性反応を妨げており、したがって、感染を制限または防止することができ、かつ/または、そのような感染から生じる疾患状態を改善することができ、あるいは、MDR大腸菌の病理発生を阻害することができ、具体的には、宿主の無菌の身体区画/部位への、または、宿主の無菌の身体区画/部位における播種および複製を阻害することができる。この点に関して、「保護抗体」は、能動免疫または受動免疫において認められる、感染性作用因に対する免疫性を担う抗体として本明細書中では理解される。特に、本明細書中に記載されるような保護抗体はおそらくは、治療目的のために、例えば、予防または治療のために、すなわち、病原体によって誘発される疾患の疾患症状、副作用または進行を防止するために、改善するために、処置するために、または少なくとも部分的には停止させるために使用される。具体的には、保護抗体は、生きた大腸菌細胞を殺すこと、またはその複製を妨げることを、例えば、血清の殺菌活性またはオプソニン作用活性を誘導することによって行うことができ、あるいは、全細菌細胞またはそのLPS分子を治療的投与(すなわち、確立された感染に対して与えられる治療的投与)の後で無菌の身体部位から除くことができる。代替において、予防的に施された保護抗体は感染の確立(すなわち、非無菌部位からの無菌の身体区域への大腸菌の拡大)を上記機構または他の機構の1つによって阻害する。
用語「O25b抗原」は、図8(a)において説明される構造を有するLPS O抗原として本明細書中では理解される。この構造は類似するが、O25a抗原の構造とは異なっている。O25bは、類似するが、O25aとは異なっている血清型として本明細書中では理解される。
用語「O25a抗原」は、Kenne他によって記載される五糖の繰り返しユニットから構成される抗原として本明細書中では理解される。O25b抗原を特定する前は、O25の用語が、本明細書中に記載されるようなO25aを表している(図8(b)を参照のこと)。
用語「組換え」は、本明細書中で使用される場合、「遺伝子工学によって調製される、または遺伝子工学の結果である」ことを意味するものとする。組換え宿主は具体的には発現ベクターまたはクローニングベクターを含み、あるいは、組換え宿主は、組換え核酸配列を含有するために、具体的には、宿主にとって外来であるヌクレオチド配列を用いて遺伝子操作されている。組換えタンパク質が、それぞれの組換え核酸を宿主において発現させることによって産生させられる。用語「組換え抗体」は、本明細書中で使用される場合、組換え手段によって調製される、発現させられる、作製される、または単離される抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子組換えまたは染色体組換え(transchromosomal)である動物(例えば、マウス)、または、そのような動物から調製されるハイブリドーマから単離される抗体、(b)抗体を発現させるために形質転換される宿主細胞から単離される抗体、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、(c)組換えコンビナトリアル・ヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、および、(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを伴ういずれかの他の手段によって調製される、発現させられる、作製される、または単離される抗体などを包含する。そのような組換え抗体は、例えば、抗体成熟時に生じる様々な再配列および変異を含むように設計される抗体を含む。
本明細書中で使用される場合、用語「特異性」または用語「特異的結合」は、分子の不均一な集団における目的とする同族リガンドの決定をもたらす結合反応を示す。したがって、指定された条件(例えば、免疫アッセイ条件)のもとで、抗体は、サンプルに存在するその特定の標的に特異的に結合し、サンプルに存在する他の分子に対しては有意な量で結合しない。特異的結合は、結合が、選択されるように、標的同一性、大きい、中程度の、もしくは低い結合親和性またはアビディティーの面で選択的であることを意味する。選択的結合が通常、結合定数または結合動力学が(対数で少なくとも1の差として理解される)少なくとも10倍異なるならば達成され、好ましくは、差は、別の抗原と比較される場合、(対数で少なくとも2の差として理解される)少なくとも100倍であり、より好ましくは(対数で少なくとも3の差として理解される)少なくとも1000倍である。
本明細書中で使用される場合、用語「特異性」または用語「特異的結合」は、分子の不均一な集団における目的とする同族リガンドの決定をもたらす結合反応を示す。したがって、指定された条件(例えば、免疫アッセイ条件)のもとで、抗体は、サンプルに存在するその特定の標的に特異的に結合し、サンプルに存在する他の分子に対しては有意な量で結合しない。特異的結合は、結合が、選択されるように、標的同一性、大きい、中程度の、もしくは低い結合親和性またはアビディティーの面で選択的であることを意味する。選択的結合が通常、結合定数または結合動力学が(対数で少なくとも1の差として理解される)少なくとも10倍異なるならば達成され、好ましくは、差は、(対数で少なくとも2の差として理解される)少なくとも100倍であり、より好ましくは(対数で少なくとも3の差として理解される)少なくとも1000倍である。用語「特異性」または用語「特異的結合」はまた、1つまたは複数の分子に結合する結合体(例えば、交差特異的な結合体)に対して適用されることが理解される。
本発明の抗体は具体的には、O25b抗原と結合するだけであること、または、O25a抗原と比較してO25b抗原と優先的に結合すること、または、O25a菌株に対して惹起されるポリクローナルな血清と比較して(この場合、そのような血清は低い親和性によりO25b抗原に結合する)、より大きい親和性によりO25bと結合することにおいて選択的である。したがって、本発明の抗体は、示差的にそのような抗原と結合すること、例えば、少なくとも同等の親和性により、または同等以上の親和性により、例えば、少なくとも対数で1のKd差、好ましくは少なくとも対数で2のKd差、より好ましくは少なくとも対数で3のKd差による異なる親和性により結合することが理解される場合がある。O25a抗原と比較してO25b抗原に選択的に結合するそのような抗体は好ましくは、診断目的または治療目的のために使用される。いくつかの診断目的のために、O25b抗原と検出可能な様式で結合するだけである抗体が具体的には使用される。
他の大腸菌抗原(例えば、O25抗原以外のいずれかの炭水化物抗原、または、いずれかのコア抗原)と比較してO25b抗原と好ましくは結合するための示差的な結合親和性は、好ましくは少なくとも10倍大きく、すなわち、少なくとも10倍大きいKd差、好ましくは少なくとも100倍大きいKd差、より好ましくは少なくとも1000倍大きいKd差を伴うものである。
O25b抗原と優先的に結合するための示差的な結合親和性は、市販のタイプ決定用血清(例えば、Statens Serum Institutから得られる高力価の大腸菌O25抗血清(#81369)など)との比較において具体的には少なくとも5倍または少なくとも6倍または少なくとも7倍または少なくとも8倍または少なくとも9倍または少なくとも10倍大きい。
O25a抗原と比較してO25b抗原と優先的に結合するための示差的な結合親和性は具体的には少なくとも同等または同等を超え、例えば、少なくとも1.5倍または少なくとも2倍または少なくとも3倍または少なくとも4倍または少なくとも5倍または少なくとも6倍または少なくとも7倍または少なくとも8倍または少なくとも9倍または少なくとも10倍大きい。
本発明の好ましい抗体は、前記個々の抗原のいずれとも、特にO25b抗原と大きい親和性により、具体的には、大きいオン(on)速度および/または低いオフ(off)速度あるいは大きい結合アビディティーにより結合する。抗体の結合親和性は通常、抗原結合部位の半数が占有される抗体の濃度に換算して特徴づけられ、これは解離定数(KdまたはKD)として知られている。通常、結合体は、10−7M未満のKdを有する高親和性の結合体であると見なされ、いくつかの場合において、例えば、治療目的のためには、より大きい親和性の結合体であると見なされ、例えば、10−8M未満のKd、好ましくは10−9M未満のKdを有する結合体であると見なされ、一層好ましいものは、Kdが10−10M未満である。
それにもかかわらず、特に好ましい実施形態において、個々の抗原結合親和性は、例えば、少なくとも2つの抗原に結合するときには中程度の親和性であり、例えば、Kdが10−6未満で、かつ、10−8Mまでである。
中程度の親和性の結合体が、必要に応じて、本発明に従って、好ましくは親和性成熟プロセスとの関連で提供される場合がある。
親和性成熟は、標的抗原についての増大した親和性を有する抗体が産生されるプロセスである。この技術分野において利用可能である親和性成熟ライブラリーを調製および/または使用するいずれか1つまたは複数の方法が、親和性成熟化抗体を本明細書中に開示される本発明の様々な実施形態に従って生じさせるために用いられる場合がある。例示的なそのような親和性成熟方法および使用、例えば、ランダム変異誘発、細菌ミューテーター菌株の継代培養、部位特異的変異誘発、変異ホットスポット標的化、倹約的(parsimonious)変異誘発、抗体シャフリング、軽鎖シャフリング、重鎖シャフリング、CDR1および/またはCDR1変異誘発、ならびに、様々な方法および使用を本明細書中に開示される本発明の様々な実施形態に従って実行することを受け入れやすい親和性成熟ライブラリーを製造および使用する方法などには、例えば、下記において開示されるものが含まれる:Prassler他(2009)、Immunotherapy、第1巻(4)、571頁〜583頁;Sheedy他(2007)、Biotechnol.Adv.、第25巻(4)、333頁〜352頁;国際公開WO2012/009568;国際公開WO2009/036379;国際公開WO2010/105256;米国特許出願公開第2002/0177170号;国際公開WO2003/074679。
抗体の構造変化(アミノ酸変異誘発を含む)により、または、免疫グロブリン遺伝子セグメントにおける体細胞変異の結果として、抗原に対する結合部位の変化体が製造され、より大きい親和性について選択される。親和性成熟を受けた抗体は、親抗体よりも対数で数倍大きい親和性を示す場合がある。ただ1つの親抗体が親和性成熟を受ける場合がある。代替において、標的抗原に対しての類似する結合親和性を有する抗体のプールが、親和性成熟を受けたただ1つの抗体またはそのような抗体の親和性成熟化プールを得るために変化させられる元の構造であると見なされる場合がある。
本発明による抗体の好ましい親和性成熟化変化体は結合の親和性における少なくとも2倍の増大を示し、好ましくは少なくとも5倍の増大、好ましくは少なくとも10倍の増大、好ましくは少なくとも50倍の増大、または、好ましくは少なくとも100倍の増大を示す。親和性成熟が、結合親和性Kdが10−8M未満である特異的標的結合特性を有する本発明の抗体を得るために、中程度の結合親和性を有する抗体とともに、親分子のそれぞれのライブラリーを用いる選択活動の過程で用いられる場合がある。代替において、親和性が、10−9M未満のKd、好ましくは10−10M未満のKd、または、それどころか10−11M未満のKd、最も好ましくはピコモル濃度範囲でのKdに対応する大きい値を得るために、本発明による抗体の親和性成熟によって一層さらに増大させられる場合がある。
ある特定の実施形態において、結合親和性が親和性ELISAアッセイによって決定される。ある特定の実施形態において、結合親和性が、BIAcoreアッセイ、ForteBioアッセイまたはMSDアッセイによって決定される。ある特定の実施形態において、結合親和性が速度論的方法によって決定される。ある特定の実施形態において、結合親和性が平衡/溶液法によって決定される。
用語「同じ特異性を有する」、用語「同じ結合部位を有する」、または用語「同じエピトープと結合する」の使用は、同等のモノクローナル抗体が、同じまたは本質的に同じである、すなわち、類似する免疫反応(結合)特徴を示し、事前に選択された標的結合配列に結合することについて競合することを示す。特定の標的についての抗体分子の相対的特異性を、競合アッセイによって、例えば、Harlow他、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1988)に記載されるような競合アッセイによって相対的に求めることができる。
用語「対象」は、本明細書中で使用される場合、温血哺乳類(具体的にはヒト)を示すものとする。特に、本発明の医学的使用、または、処置のそれぞれの方法は、MDR大腸菌感染症に伴う疾患状態の予防または処置を必要としている対象に対して、あるいは、早期段階または後期段階の疾患を含めて、疾患に罹患している対象に対して適用される。用語「患者」には、予防的処置または治療的処置のどちらかを受けるヒト対象および他の哺乳動物対象が含まれる。したがって、用語「処置」は、予防的処置および治療的処置の両方を包含することが意味される。
対象は、例えば、MDR大腸菌疾患状態の予防または治療のために処置される。具体的には、感染の危険性があるか、または、そのような疾患もしくは疾患再発を発症する危険性があるかのどちらかである対象、あるいは、そのような感染および/またはそのような感染に伴う疾患に罹患している対象が処置される。
具体的には、本明細書中に記載されるような対象における疾患状態を処置するための、防止するための、または遅らせるための方法は、当該状態の原因作用因としてのMDR大腸菌の病理発生を妨げることによるものである。
具体的には、用語「予防」は、病理発生の開始を妨げることを包含することが意図される防止的措置、または、病理発生の危険性を低下させるための予防的措置を示す。
例えば、本発明の抗体は、MDR大腸菌感染症の発症を阻害するために予防的に使用される場合があり、あるいは、MDR大腸菌感染症を処置するために、具体的には、難治性であることが知られているMDR大腸菌感染症、または、具体的な対象の場合には、他の従来的な抗生物質治療による処置に対して難治性であることが判明しているMDR大腸菌感染症を処置するために治療的に使用される場合がある。
用語「実質的に純粋な」または用語「精製された」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも50%(v/v)の、好ましくは少なくとも60%(v/v)、70%(v/v)、80%(v/v)、90%(v/v)または95%(v/v)の化合物(例えば、核酸分子または抗体など)を含む調製物を示すものとする。純度が、当該化合物について適切な方法(例えば、クロマトグラフィー方法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびHPLC分析など)によって測定される。
用語「治療効果的な量」は、化合物(例えば、本発明の抗体)の用語「効果的な量」または用語「十分な量」のいずれかと交換可能に本明細書中では使用されるが、対象に投与されたとき、臨床結果を含めて、有益な結果または所望される結果を達成するために十分である量または活性であり、そのようなものとして、効果的な量またはその同義語は、その都度適用される文脈に依存する。
効果的な量は、そのような疾患または障害を処置するために、防止するために、または阻害するために十分である化合物のそのような量を意味することが意図される。疾患の文脈において、本明細書中に記載されるような抗体の治療効果的な量は具体的には、(MDR)大腸菌病理発生(例えば、粘膜表面の接着およびコロニー形成、無菌の身体部位の内部における制御されない複製、ならびに、細菌産物による宿主細胞の毒性)の阻害から利益を受ける疾患もしくは状態を処置するために、調節するために、弱めるために、取り消すために、または、そのような疾患もしくは状態に影響を及ぼすために使用される。
そのような効果的な量に対応することになる化合物の量は、様々な要因に依存して、例えば、与えられた薬物または化合物、医薬配合物、投与経路、疾患または障害のタイプ、処置されている対象または宿主の正体などに依存して変化することになり、しかし、それにもかかわらず、当業者によって日常的に決定されることが可能である。
本明細書中に記載されるような抗体の治療効果的な量、例えば、その必要性のあるヒト患者に与えられる量などは具体的には、0.5mg/kg〜50mg/kgの範囲である場合があり、好ましくは5mg/kg〜40mg/kgの範囲、一層より好ましくは20mg/kgまでの範囲、10mg/kgまでの範囲、5mg/kgまでの範囲である場合があり、だが、より大きい用量が、例えば、急性の疾患状態を処置するために示される場合がある。
そのうえ、本発明の抗体の治療効果的な量による対象の処置療法または防止療法は単回投与からなる場合があり、または代替において、一連の複数回の適用を含む場合がある。例えば、抗体が、少なくとも年に1回、少なくとも半年に1回、または少なくとも月に1回で投与される場合がある。しかしながら、別の実施形態において、抗体が、所与の処置のために1週間あたりおよそ1回から、およそ毎日の投与まで対象に投与される場合がある。処置期間の長さは様々な要因に依存しており、例えば、疾患の重篤度、急性疾患または慢性疾患のどちらか、患者の年齢、抗体形式の濃度および活性などに依存する。処置または予防のために使用される効果的な投薬量が、特定の処置療法または予防療法の経過にわたって増減することがあることもまた理解されるであろう。投薬量における変化が、この技術分野で知られている標準的な診断アッセイによって生じ、また、明らかになる場合がある。いくつかの症例では、長期間の投与が要求される場合がある。
具体的な局面によれば、本発明は、本明細書中に提供される図において詳述されるような例示的抗体、ならびに、さらなる抗体変化体、具体的には、VHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列によって、または、そうでなければ、図2のHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列によって形成される特異的結合部位、あるいは、そのようなVH/VLドメインによって形成される結合部位によって特徴づけられる親抗体と本質的に同じエピトープに結合する変化体を含むさらなる抗体変化体を提供する。そのような抗体は、例えば、親抗体のそれぞれのCDR配列または抗体配列を改変することによって得られる機能的に活性な変化体抗体である場合がある。本明細書中に記載されるような抗体配列はどれもが、例えば、点変異による変化を受ける「親」配列であると見なされることが十分に理解される。
例示的な親抗体が下記の実施例の節において、また、図1および図2において記載される。図2の抗体は、表1の親抗体に由来する変化体抗体、すなわち、2A7、8A1、4D5および3E9と称される抗体および異なるHC/LC組合せを有するそれぞれの変化体に由来する変化体抗体であり、これらはヒト化および必要な場合には親和性成熟によって得られる。これらの変化体抗体は標的抗原に結合し、したがって、機能的に活性であると見なされる。機能的に活性である(例えば、親抗体と同じエピトープに結合する、または、親抗体と同じ結合部位を含む、または、親抗体と同じ結合特徴を有する)変化したVHドメインまたはVLドメインあるいは変化したHC鎖またはLC鎖(例えば、改変をそれぞれのFR配列またはCDR配列において有するもの)もまた使用され得ることが実行可能である。本明細書中に記載される抗体のFR配列またはCDR配列のいくつかが、他の抗体(図1または図2において列挙されるような抗体)のFR配列またはCDR配列によって交換され得ることもまた実行可能である。
抗体は、これらの抗体が交差競合し、その結果、1つの抗体のみが所与の時点でエピトープに結合することができるならば、すなわち、一方の結合が他方の抗体の結合効果または調節効果を妨げるならば、「同じエピトープに結合する」、または、「同じ結合部位を含む」、または、「本質的に同じ結合」特徴を有すると言われる。
用語「競合する」または用語「交差競合する」は、抗体に関して本明細書中で使用される場合、第1の抗体またはその抗原結合部分が、第2の抗体またはその抗原結合部分が結合するのと十分に類似する様式でエピトープに結合し、その結果、第1の抗体がその同族エピトープと結合することの結果が、第1の抗体が第2の抗体の非存在下において結合することと比較して、第2の抗体の存在下において検出可能に低下させられるようになることを意味する。第2の抗体がそのエピトープに結合することもまた、第1の抗体の存在下において検出可能に低下させられる代わりの選択肢が当てはまることが可能であり、しかし、このことは必ずしも当てはまる必要はない。すなわち、第1の抗体は、第2の抗体がそのエピトープに結合することを阻害することができ、第2の抗体が、第1の抗体がそのそれぞれのエピトープに結合することを阻害することは伴わない。しかしながら、それぞれの抗体が、同じ程度に、より大きい程度に、または、より小さい程度にではあるかどうかにかかわりなく、他方の抗体がその同族エピトープと結合することを検出可能に阻害する場合、これらの抗体は、それらのそれぞれのエピトープの結合について互いに「交差競合する」と言われる。競合する抗体および交差競合する抗体の両方が本発明によって包含される。
本明細書中における競合は、競合ELISA分析によって、または、ForteBio分析によって明らかにされるように、約30%を超える大きい相対的阻害を意味する。相対的阻害のより大きい閾値を、何が特定の状況(例えば、競合分析が、抗原の結合の意図された機能とともに設計される新しい抗体について選択し、またはスクリーニングするために使用される場合)における競合の好適なレベルであるかの判定基準として設定することが望ましい場合がある。したがって、例えば、競合的結合についての様々な判定基準(少なくとも40%の相対的阻害が検出される、あるいは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または、それどころか少なくとも100%の相対的阻害が検出される)を、抗体が十分に競合的であると見なされる前に設定することが可能である。
本明細書中に記載されるように、1つの局面において、本発明は、例えば、O25b抗原と結合することについて、図1または図2において列挙される抗体のいずれかと競合することができることによって特徴づけられる抗体分子を提供する。
O25bに対して非常に特異的である様々なモノクローナル抗体(mAb)が、ST131系譜に属するMDR菌株を特定するための診断試薬としての大きい潜在的能力を有する。さらに、ヒト化の後では特に、これらのmAbは、ST131−O25b:H4菌株によって引き起こされる大腸菌感染症の予防(例えば、高リスク群について)および処置のために使用されるために好適である。
O25bおよびO25aの炭水化物抗原は、O25に対する免疫血清が、O25b抗原を発現する大腸菌菌株の診断的特定において日常的に使用されるという事実に基づいて同一である、または非常に類似していると考えられていた。ST131菌株におけるO抗原合成の遺伝的背景は完全には解明されなかった。しかしながら、(O抗原合成をコードする)rfbクラスターの内部における具体的な遺伝子が、PCRに基づくO25b抗原の特定の基礎となっている。さらに、構造データは今までのところ、O25a抗原とO25b抗原との間における違いを何ら裏づけなかった。
したがって、本発明の抗体がO25b抗原と特異的に結合し得るかもしれないことは驚くべきことであった。
O25b抗原発現大腸菌菌株とO25a抗原発現大腸菌菌株との間における遺伝的差異を確認するために、O抗原合成をコードするrfbクラスターが、保存された隣接遺伝子のgndおよびgalFに対して特異的であるオリゴヌクレオチドを用いて開始するプライマーウォーク法を使用してST131−O25b:H4菌株81009の臨床単離体から配列決定された(Szijarto他、FEMS Microbiol Lett、2012、332:131〜6)。rfbオペロンの得られたコンティグは11,300bpの長さであり、O25抗原合成酵素をコードするコンティグ(NCBIアクセション番号GU014554)に対してほんの一部が相同的であるにすぎない。O25b rfbオペロンの3’末端における2043bpの長さのセグメントが、O25 rfbオペロンの対応する領域に対して非相同的であり、このセグメントが、フコースの合成および輸送をコードする6267bpの長さの配列によって置き換わっていることが判明した。
大腸菌ST131から単離されるLPSに存在するO特異的なPS生物学的繰り返しユニット(RU)の構造が、1つの繰り返しユニット(RU)により置き換わるコアOSによって組み立てられる精製分画物において詳しく分析された。LPS ST131のRUは、図8(a)に示される構造を有するO−アセチル化五糖である。
実際、ST131 O−PSのRU構造は、Kenne他によって報告されるLPS O25 RU(図8(b))とは異なり、また、本発明者らが知っている限りでは、この構造は大腸菌リポ多糖の中の新しいO−血清型である(Stenutz他、FEMS Microbiol Rev、2006(May)、30(3):382〜403、総説)。加えて、LPS ST131から単離されるコアオリゴ糖のMALDI−TOF質量分析法および組成分析(糖分析およびメチル化分析)の予備的結果はK−12タイプを裏づけた。これは、遺伝子分析に基づいて、Szijarto V.他によって以前に報告されたことであった(Szijarto他、FEMS Microbiol Lett、2012、332:131〜6)。LPS ST131が2つの主要なコアオリゴ糖(OS)グリコフォームからなることが示された。グリコフォームのタイプはO特異的多糖(PS)の有無に依存している。置換されていないコアOSの支配的なグリコフォームがK−12のコアオリゴ糖の短縮型であり、これは、→7)−α−Hepp−(1→6)−α−Glcp二糖を欠いている。そのような二糖の存在が、O−PS置換されたコアOSと、非置換のコアOSとの間における違いである。
具体的な局面により、特異的な抗菌機能活性(例えば、補体媒介の細菌殺傷ならびにオプソニン作用による取り込みおよび殺傷など)によって特徴づけられる本発明の抗体が示される。
1つの具体的な実施形態によれば、本発明の抗体は、標準的なSBAアッセイまたはOPKアッセイで測定されるような免疫エフェクター細胞の存在下における細胞毒性活性を有する。細菌殺傷の百分率における有意な増大がコントロールと比較した場合に認められるならば、SBAアッセイまたはOPKアッセイのどちらかによって求められるような細胞毒性活性が本発明の抗体について示される場合がある。SBAまたはOPKに関連づけられる殺菌活性が好ましくは、絶対値での百分率の増大として測定され、この場合、絶対値での百分率の増大は好ましくは5%超であり、より好ましくは10%超であり、一層より好ましくは20%超、30%超、40%超または50%超である。
食作用エフェクター細胞が、補体の活性化を用いる別の経路を介して活性化される場合がある。微生物の表面抗原に結合する抗体はそれらのFc領域により補体カスケードの最初の成分を引き寄せ、「古典的」補体系の活性化を開始させる。これらは、最終的には標的を補体依存性細胞傷害(CDC)によって殺す食作用エフェクター細胞の刺激をもたらす。
1つの具体的な実施形態によれば、本発明の抗体は、標準的なADCCアッセイまたはCDCアッセイで測定されるような免疫エフェクター細胞の存在下における細胞毒性活性を有する。細菌溶解の百分率における有意な増大がコントロールと比較した場合に認められるならば、ADCCアッセイまたはCDCアッセイのどちらかによって求められるような細胞毒性活性が本発明の抗体について示される場合がある。ADCCまたはCDCに関連づけられる細胞毒性活性が好ましくは、絶対値での百分率の増大として測定され、この場合、絶対値での百分率の増大は好ましくは5%超であり、より好ましくは10%超であり、一層より好ましくは20%超である。補体結合が特異的に関連するかもしれず、この機構により、毒素が、形成された免疫複合体の除去によって感染部位または血液から排出され得る。
1つの具体的な実施形態によれば、本発明の抗体は、様々なIgGのFc部分によって発揮される免疫調節機能を有する。シアリル化含有量を、例えば、末端ガラクトース残基において増大させる変化したグリコシル化はおそらくは、DC−SIGNシグナル伝達を介する抗炎症効果を有するかもしれない。Ia型、IIa型およびIII型のFcγ受容体を上回るFcγ受容体IIb(阻害性)に対する優先的結合により、抗炎症効果がおそらくはもたらされるかもしれない。
本発明の抗体が、ハイブリドーマ法を用いて特定され、または得られる場合がある。そのような方法において、マウスまたは他の適切な宿主動物(例えば、ハムスターなど)が、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するリンパ球、または産生することができるリンパ球を誘発するために免疫化される。代替において、リンパ球がインビトロで免疫化される場合がある。その後、リンパ球が、好適な融合剤(例えば、ポリエチレングリコールなど)を使用して、ハイブリドーマ細胞を形成するために骨髄腫細胞と融合される。
ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地が、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈殿によって、あるいは、インビトロ結合アッセイによって、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などによって求められる。
例えば、本発明の抗体が、例えば、(莢膜合成をコードする)kpsクラスターを、カナマイシン抵抗性をコードするカセットにより置換することによる代表的なST131−O25b:H4菌株81009の非被包性変異体(例えば、81009Δkps::kan)によりマウスを免疫化することによって得られる起源(親)抗体から得られる場合がある。このマウスから得られる血清サンプルがその後、分析される場合があり、O25b抗原に対する最大のIgG力価を(ELISAおよびウエスタンブロットにおいて)示すマウスの脾臓がハイブリドーマ作製のために使用される場合がある。サブクローニングの後、O25b抗原に対して特異的である抗体を分泌し、同様にまた、O25b抗原を発現する生きた野生型大腸菌菌株の表面に結合したハイブリドーマクローンが選択される場合がある。これらのmAbがその後、O25b抗原のその特異的結合について、また、おそらくは、O25a抗原と比較してO25b抗原と優先的に結合するためのその示差的結合親和性についてさらに試験するために、そして、抗体を、例えば、種々の診断目的または治療目的のために設計するためにハイブリドーマ上清から精製される場合がある。
示差的に結合する抗体(本明細書中では選択的抗体とも呼ばれる)がいくつかの場合には、ただ1つの抗原に対するスクリーニングにより現れる。示差的に結合するクローンを単離する可能性を増大させるために、多数の選択圧が、異なる抗原に対して順次スクリーニングすることによって加えられるであろう。特別なmAb選択戦略では、O25b成分およびO25a成分または他の大腸菌抗原が交互様式で用いられる。
所望の選択的結合特性を有する抗体を特定するための様々なスクリーニング方法が、(ファージ、細菌細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞を使用する)ディスプレイ技術によって行われる場合がある。反応性を、ELISA、ウエスタンブロッティング、または、フローサイトメトリーを用いた表面染色に基づいて、例えば、標準的なアッセイを使用して評価することができる。
組換え抗原が、例えば、抗体を抗体ライブラリー(例えば、酵母ディスプレイされた抗体ライブラリー)から選択するために使用される場合がある。
例えば、本発明は具体的には、O25b抗原と結合するための様々な特異性を有する抗体を特定するためのプロセスによって、例えば、特異的な発見選択スキームによって得られるO25b特異的抗体を提供する。したがって、O25b標的との反応性を示す抗体を含む抗体ライブラリーが、標的との反応性について選択される場合がある。
本発明はさらに具体的には、2つの標的(例えば、O25b抗原およびO25a抗原)と結合するための様々な特異性を有する抗体を特定するためのプロセスによって、例えば、交差反応性の発見選択スキームなどによって得られる交差特異的抗体を提供する。したがって、2つの標的(標的Aおよび標的B)との反応性を示す抗体を含む抗体ライブラリーが最初、これらの標的の一方(例えば、標的A)との反応性について選択され、その後、他方の標的(例えば、標的B)との反応性について選択される場合がある。それぞれの連続する選択処理により、両方の標的に対する得られたプールの反応強度が強化される。したがって、この方法は、2つの異なる標的に対する交差反応性と、病原体を交差中和する潜在的能力とを有する抗体を特定するために特に有用である。この方法は、さらなる標的(1つまたは複数)に対するさらなる回数の濃縮を含むことによって、さらなる標的に対する反応性を示す抗体を特定することに拡張することができる。
いずれの場合においても、選択的結合を、この技術分野で知られている抗体最適化方法によってさらに改善することができる。例えば、本明細書中に記載される免疫グロブリン鎖の可変領域の特定の領域が、軽鎖シャフリング、目的的変異誘発、CDR融合、ならびに、選択されたCDR領域および/またはフレームワーク領域の定方向突然変異誘発を含めて、1つまたは複数の最適化戦略に供される場合がある。
所望の特性を有する示差的に結合する抗体が特定されると、抗体によって認識される最も有力なエピトープ(1つまたは複数)が決定される場合がある。エピトープマッピングのための様々な方法がこの技術分野では広く知られており、例えば、Epitope Mapping:A Practical Approach(WestwoodおよびHay編、Oxford University Press、2001)において開示される。
エピトープマッピングは、抗体が結合するエピトープを特定することに関する。多くの方法が、抗体−抗原複合体の結晶学分析、競合アッセイ、遺伝子フラグメント発現アッセイ、および、合成ペプチドに基づくアッセイを含めて、タンパク質表面のエピトープまたは炭水化物によって形成されるエピトープの位置を決定するために当業者には知られている。参照抗体と「同じエピトープと結合する」抗体は本明細書中では下記のように理解される。2つの抗体が、同一のエピトープまたは立体的に重なり合うエピトープであるエピトープを認識するとき、これら抗体は、同じエピトープまたは本質的に同じエピトープまたは実質的に同じエピトープと結合するとして示される。2つの抗体が同一のエピトープまたは立体的に重なり合うエピトープに結合するかどうかを明らかにするための一般に使用されている方法が競争アッセイであり、この場合、この競合アッセイは、標識された抗原または標識された抗体のどちらかを使用して、異なる形式のすべてで構成され得る。通常、抗原が96ウエルプレートに固定化され、非標識の抗体が標識抗体の結合を阻止することができるかが、放射性標識または酵素標識を使用して測定される。
所望の結合特性を有する抗体が特定されると、そのような抗体(抗体フラグメントを含む)は、例えば、ハイブリドーマ技術または組換えDNA技術を含めて、この技術分野では広く知られている様々な方法によって製造することができる。
組換えモノクローナル抗体を、例えば、要求される抗体鎖をコードするDNAを単離し、組換え宿主細胞を、広く知られている組換え発現ベクター(例えば、抗体配列をコードするヌクレオチド配列を含む本発明のプラスミドまたは発現カセット)を使用して発現のためのコード配列によりトランスフェクションすることによって製造することができる。組換え宿主細胞は原核生物細胞および真核生物細胞(例えば、上記で記載される細胞など)が可能である。
具体的な局面によれば、ヌクレオチド配列が、抗体をヒト化するために、あるいは、抗体の親和性または他の特徴を改善するために遺伝子操作のために使用される場合がある。例えば、抗体がヒトでの臨床試験および処置において使用されるならば、免疫応答を回避するために、定常領域が、ヒトの定常領域と一層ほとんど似ているように設計される場合がある。標的O25bに対するより大きい親和性、および、MDR大腸菌に対するより大きい効力を得るために、抗体配列を遺伝子操作することが望ましい場合がある。1つまたは複数のポリヌクレオチド変化が抗体に対して行われ、標的O25bに対するその結合能を依然として維持し得ることが当業者には明らかであろう。
様々な手段によって行われるが、抗体分子の製造が一般に広く理解されている。例えば、米国特許第6331415号(Cabilly他)は、抗体を組換え製造するための方法であって、重鎖および軽鎖が、ただ1つのベクターから、または、2つの別個のベクターから1つの細胞において同時に発現させられる方法を記載する。Wibbenmeyer他(1999、Biochim Biophys Acta、1430(2):191〜202)、ならびに、LeeおよびKwak(2003、J.Biotechnology、101:189〜198)は、大腸菌の別個の培養において発現させられるプラスミドを使用する、別々に製造された重鎖および軽鎖からのモノクローナル抗体の製造を記載する。抗体の製造に関連した様々な他の技術が、例えば、Harlow他、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1988))において提供される。
所望されるならば、本発明の抗体(例えば、図1または図2の抗体のいずれも)が配列決定される場合があり、その後、ポリヌクレオチド配列が発現または伝播のためのベクターにクローン化される場合がある。抗体をコードする配列が宿主細胞においてベクターに維持される場合があり、その後、宿主細胞は拡大培養し、将来の使用のために凍結することができる。組換えモノクローナル抗体を細胞培養で製造することが、抗体遺伝子をこの技術分野で知られている手段によってB細胞からクローニングすることにより行うことができる。
別の局面において、本発明は、本発明の組換え抗体の製造のためにコードする配列を含む単離された核酸を提供する。
抗体をコードする核酸は、どのような特性であれ、好適な特性を有することができ、また、どのような特徴であれ、好適な特徴またはその組合せを含むことができる。したがって、例えば、抗体をコードする核酸は、DNA、RNAまたはそれらのハイブリッドの形態であってもよく、天然に存在しない塩基、改変された骨格(例えば、核酸の安定性を増進させるホスホロチオアート骨格)または両方を含む場合がある。核酸は好都合には、標的宿主細胞における所望される発現、複製および/または選択を増進させる特徴を含む本発明の発現カセット、ベクターまたはプラスミドに組み込まれる場合がある。そのような特徴の例には、複製起点成分、選択遺伝子成分、プロモーター成分、エンハンサーエレメント成分、ポリアデニル化配列成分および終結成分などが含まれ、それらの数多くの好適な例が知られている。
本開示はさらに、本明細書中に記載されるヌクレオチド配列の1つまたは複数を含む組換えDNA構築物を提供する。これらの組換え構築物は、いずれかの開示された抗体をコードするDNA分子が挿入されるベクター(例えば、プラスミドベクター、ファージミドベクター、ファージベクターまたはウイルスベクターなど)に関連して使用される。
様々なモノクローナル抗体が、どのような方法であれ、抗体分子を培養における継続的な細胞株によって産生させる方法を使用して製造される。モノクローナル抗体を調製するための好適な方法の例には、Kohler他(1975、Nature、256:495〜497)のハイブリドーマ法、および、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor、1984、J.Immunol.、133:3001;および、Brodeur他、1987、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(Marcel Dekker,Inc.、New York)、51頁〜63頁)が含まれる。
本発明はさらには、本明細書中に記載されるような抗体と、医薬的に許容されるキャリアまたは賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物は、本発明に従って、ボーラス注射またはボーラス注入として、あるいは、連続注入によって投与することができる。投与のそのような手段を容易にするために好適である様々な医薬用キャリアがこの技術分野では広く知られている。
医薬的に許容されるキャリアには一般に、本発明によって提供される抗体あるいは関連した組成物または組合せと生理学的に適合し得るありとあらゆる好適な溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に許容されるキャリアのさらなる例には、滅菌水、生理食塩水、リン酸塩緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなど、同様にまた、それらのいずれかの組合せが含まれる。
1つのそのような局面において、抗体は、所望の投与経路に適切である1つまたは複数のキャリアと組み合わせることができ、様々な抗体が、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、ポリビニルアルコールのいずれかと混合される場合があり、また、必要な場合にはさらに、従来的な投与のために錠剤化またはカプセル化される場合がある。代替において、抗体は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴムおよび/または様々な緩衝剤に溶解される場合がある。他のキャリア、補助剤および投与様式が製薬分野では広く知られている。キャリアには、制御放出材料または時間遅延材料(例えば、単独での、またはワックスと一緒でのグリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートなど)、あるいは、この技術分野では広く知られている他の材料が含まれる場合がある。
さらなる医薬的に許容されるキャリアがこの技術分野では知られており、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESに記載される。液体配合物は、溶液、乳濁液または懸濁物であることが可能であり、様々な賦形剤(例えば、懸濁化剤、可溶化剤、界面活性剤、保存剤およびキレート化剤など)を含むことができる。
本発明の抗体と、1つまたは複数の治療活性な薬剤とが配合される医薬組成物が意図される。本発明の抗体の安定な配合物が、所望される程度の純度を有する前記免疫グロブリンを必要に応じて使用される医薬的に許容されるキャリア、賦形剤または安定剤と混合することによって貯蔵のために、凍結乾燥された配合物または水溶液の形態で調製される。インビボ投与のために使用されるための配合物は具体的には無菌であり、好ましくは、無菌の水溶液の形態である。このことが、無菌ろ過膜によるろ過または他の方法によって容易に達成される。本明細書中に開示される抗体および他の治療活性な薬剤はまた、免疫リポソームとして配合される場合があり、かつ/または、マイクロカプセルに封入される場合がある。
本発明の抗体を含む医薬組成物の投与が、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、耳内、経皮、粘膜、局所的(例えば、ゲル、軟膏、ローション、クリームなど)、腹腔内、筋肉内、肺内(例えば、吸入可能技術または肺送達システムを用いて)、膣的、非経口、直腸または眼内を含めて、様々な方法で行われる場合がある。
非経口投与のために使用されるような例示的配合物には、例えば、無菌の溶液、乳濁液または懸濁物として、皮下注射、筋肉内注射または静脈内注射のために好適である配合物が含まれる。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、例えば、疾患緩和または疾患防止の単独療法として対象に投与される唯一の治療活性薬剤である。
別の実施形態において、本発明の抗体は、大腸菌を標的とするために、カクテルにおいてさらなる抗体と組み合わされ、例えば、混合物において、または部分品からなるキットにおいて組み合わされ、その結果、カクテルが、例えば、疾患緩和または疾患防止の併用療法として対象に投与される2つ以上の治療活性薬剤を含有するようにされる。
さらに、本発明の抗体は、1つまたは複数の他の治療剤または予防剤との組合せで投与される場合があり、これには、標準的処置(例えば、抗生物質、炎症のステロイド系阻害剤および非ステロイド系阻害剤)、および/または、抗体に基づく他の治療、例えば、抗菌剤または抗炎症剤を用いる処置が含まれるが、それらに限定されない。
併用療法は、例えば、MDR大腸菌感染を処置するために使用されるような標準療法を特に用いることである。これには、抗生物質(例えば、チゲサイクリン(tygecycline)、リネゾリド、メチシリンおよび/またはバンコマイシン)が含まれる場合がある。
併用療法において、抗体は混合物として、あるいは、1つまたは複数の他の治療療法に関して付随して、例えば、併用治療の前に、併用治療と同時に、または併用治療の後でのいずれかで投与される場合がある。
本発明の抗体またはそれぞれの医薬調製物の生物学的特性が、細胞、組織および生物体での実験においてエクスビボで特徴づけられる場合がある。この技術分野では知られているように、薬物は多くの場合、薬物の効力を疾患または疾患モデルに対する処置について評価するために、あるいは、薬物の薬物動態学、薬力学、毒性および他の性質を評価するために、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタおよびサル(これらに限定されない)を含めて、様々な動物においてインビボで試験される。動物は疾患モデルとして示される場合がある。治療剤は多くの場合、ヌードマウス、SCIDマウス、異種移植マウスおよび遺伝子組換えマウス(ノックイン体およびノックアウト体を含む)(これらに限定されない)を含めて、マウスにおいて試験される。そのような実験は、適切な半減期、エフェクター機能、(交差)中和活性および/または免疫応答を能動免疫療法または受動免疫療法のときに伴う治療剤として、または予防剤として使用されるための抗体の潜在的能力を決定するための意味のあるデータを提供する場合がある。どのような生物も、好ましくは哺乳動物が試験のために使用される場合がある。例えば、ヒトに対するそれらの遺伝的類似性のために、霊長類、サルが、好適な治療モデルであることが可能であり、したがって、対象とする薬剤または組成物の効力、毒性、薬物動態学、薬力学、半減期または他の性質を試験するために使用される場合がある。ヒトにおける試験が最終的には、薬物としての承認のために要求され、したがって、当然のことながら、これらの実験が意図される。したがって、本発明の抗体およびそれぞれの医薬組成物が、それらの治療効力もしくは予防効力、毒性、免疫原性、薬物動態学および/または他の臨床特性を明らかにするためにヒトにおいて試験される場合がある。
本発明はまた、本発明の主題抗体を診断目的のために、例えば、生物学的流体サンプルにおける免疫試薬または標的としての細菌負荷または抗体を検出し、その濃度を定量的に決定する方法における使用のために提供する。
本発明はまた、生物学的サンプルにおける敗血症またはMDR大腸菌感染の程度、例えば、MDR大腸菌によるサンプル(例えば、体液など)への負荷を検出するための方法であって、サンプルを本発明の抗体と接触させることを含む方法を提供する。本発明の抗体は、どのようなアッセイ方法であれ、知られているアッセイ方法(例えば、競合的結合アッセイ、直接的および間接的なサンドイッチアッセイ、免疫沈殿アッセイならびに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)など)において用いられる場合がある。
好ましい診断アッセイが下記のように行われる。標的抗原特異的な抗体が、体液に存在する細菌または体液から単離される細菌とインキュベーションされるラテックスビーズに固定化される。陽性の反応を、細菌の表面に発現される対応する同族抗原の存在下における(おそらくは着色された)ラテックスビーズの凝集に起因して肉眼によって検出することができる。
本発明に従って使用されるような体液には、対象の生物学的サンプル、例えば、組織抽出物、尿、血液、血清、便および痰などが含まれる。
1つの実施形態において、方法は、固体支持体を、抗体が固体支持体の表面に結合することを可能にする条件のもと、標的との複合体を特異的に形成する過剰なある種のタイプの抗体フラグメントと接触させることを含む。抗体が結合させられる生じた固体支持体がその後、生物学的流体サンプルと接触させられ、その結果、生物学的流体中の標的が抗体に結合し、標的−抗体複合体を形成する。複合体は検出可能なマーカーにより標識されることが可能である。代替において、標的または抗体のどちらかが複合体形成の前に標識されることが可能である。例えば、検出可能なマーカー(標識)を抗体にコンジュゲート化することができる。複合体はその後、検出され、定量的に決定され、それにより、生物学的流体サンプルにおける標的を検出し、その濃度を定量的に決定することができる。
特定の適用のために、本発明の抗体は、有機分子、酵素標識、放射性標識、有色標識、蛍光性標識、発色標識、発光性標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、コロイド状金およびこれらの混合物からなる群から選択される標識またはレポーター分子にコンジュゲート化される。標識またはレポーター分子にコンジュゲート化された抗体は、例えば、アッセイシステムまたは診断方法において、例えば、大腸菌感染またはそれに伴う疾患状態を診断するために使用される場合がある。
本発明の抗体は、例えば、結合アッセイ(例えば、ELISA)および結合研究における前記コンジュゲートの簡便な検出を可能にする他の分子にコンジュゲート化される場合がある。
本発明の別の局面は、抗体を含むキットで、1つまたは複数の抗体に加えて、様々な診断剤または治療剤を含むことがあるキットを提供する。キットはまた、診断方法または治療方法における使用のための説明書を含む場合がある。そのような説明書は、例えば、キットに含まれるデバイスについて提供されることが可能であり、例えば、生物学的サンプルを診断目的のために調製するためのツールまたはデバイス(例えば、疾患を診断するためのMDR大腸菌負荷量を明らかにする前に細胞および/またはタンパク質含有画分を分離することなどのために調製するためのツールまたはデバイス)について提供されることが可能である。代替において、そのようなキットは、本明細書中に記載される様々な診断方法の1つまたは複数において使用することができる抗体および診断剤または診断試薬を含む。別の好ましい実施形態において、キットは、抗体、例えば、凍結乾燥形態での抗体を、必要な場合には凍結乾燥物を再構成するための説明書および媒体を含んで、ならびに/あるいは、間近の投与のための注射可能な組成物を形成するために使用前に混合することができる医薬的に許容されるキャリアとの組合せで含む。
8D5−1G10および8D10−C8と称される抗体、具体的にはこれらの抗体軽鎖および/または抗体重鎖のいずれもが、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、Mascheroder Weg 1b/Inhoffenstraβe 7B、38124 Braunschweig(DE))に寄託された生物学材料によってさらに特徴づけられる。
寄託物は、形質転換された大腸菌培養物を示し、この場合、それぞれが、目的とする遺伝子の挿入物がクローン化されたプラスミドを含有する。目的とする遺伝子は、マウスモノクローナル抗体8D5−1G10(IgG3)の重鎖および軽鎖の可変ドメイン、ならびに、マウスモノクローナル抗体8D10−C8(IgG2b)の重鎖および軽鎖の可変ドメインである。
DSM26763は、8D5−1G10の軽鎖(8D5−1G10−LC)の可変ドメインをコードする配列を含むプラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D5−1G10−VL=DSM26763、寄託日:2013年1月15日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH(ウィーン、オーストリア)。
DSM26762は、8D5−1G10の重鎖(8D5−1G10−HC)の可変ドメインをコードする配列を含むプラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D5−1G10−VH=DSM26762、寄託日:2013年1月15日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH(ウィーン、オーストリア)。
DSM28171は、8D10−C8の軽鎖(8D10−C8−LC)の可変ドメインをコードする配列を含むプラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D10−C8−VL=DSM28171、寄託日:2013年12月11日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH(ウィーン、オーストリア)。
DSM28172は、8D10−C8の重鎖(8D10−C8−HC)の可変ドメインをコードする配列を含むプラスミドにより形質転換された大腸菌宿主細胞である。大腸菌8D10−C8−VH=DSM28172、寄託日:2013年12月11日;寄託者:Arsanis Biosciences GmbH(ウィーン、オーストリア)。
下記定義の主題は、本発明の実施形態であると見なされる。
1.表1において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR1配列〜CDR3配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体重鎖可変領域(VH)を少なくとも含む、大腸菌菌株のO25b抗原に特異的に結合する単離された抗体。
2.定義1の抗体であって、
A)
下記の群要素i)〜群要素xiv)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号1のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号2のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号3のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号7のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号8のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号17のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号18のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号19のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号23のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号24のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号25のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号29のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号30のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号31のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号34のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号35のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号36のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
viii)
a)配列番号29のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号40のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号41のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ix)
a)配列番号44のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号45のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号46のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
x)
a)配列番号50のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号51のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号52のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xi)
a)配列番号50のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号55のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号56のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xii)
a)配列番号57のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号58のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号59のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xiii)
a)配列番号61のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号62のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号63のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
xiv)
a)配列番号66のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号67のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号68のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR1、CDR2またはCDR3のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体。
3.定義1または定義2の抗体であって、
a)図2に示されるようなVH配列のいずれかから選択されるVHアミノ酸配列、好ましくは、配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列のVHアミノ酸配列;
b)配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列;あるいは
c)配列番号184〜配列番号231のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかであり、かつ、C末端アミノ酸の欠失および/またはQ1E点変異(ただし、VH配列の最初のアミノ酸がQである場合)をさらに含む抗体重鎖(HC)アミノ酸配列
を含む、抗体。
4.定義1〜3のいずれかに記載の抗体であって、表1において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体軽鎖可変領域(VL)をさらに含む抗体。
5.定義4記載の抗体であって、
A)
下記の群要素i)〜群要素xiv)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号4のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号6のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号5のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号6のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号14のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号15のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号16のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号21のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号22のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号26のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号28のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号33のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号37のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号38のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
viii)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号43のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ix)
a)配列番号47のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号48のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号49のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
x)
a)配列番号53のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号54のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xi)
a)配列番号57のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号54のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xii)
a)配列番号26のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号60のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xiii)
a)配列番号64のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号65のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号38のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
xiv)
a)配列番号69のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号70のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号71のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR4、CDR5またはCDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体。
6.定義4または5記載の抗体であって、
図2に示されるようなVL配列のいずれかから選択されるVLアミノ酸配列、好ましくは、配列番号248〜配列番号295のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列のVLアミノ酸配列を含み、あるいは、配列番号248〜配列番号295のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む抗体。
7.定義1の抗体であって、O25aおよびO25b抗原に共通するエピトープに交差特異的に結合する抗体。
8.定義7記載の抗体であって、
A)
下記の群要素i)〜群要素vii)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号72のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号73のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号74のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号77のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号78のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号79のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号81のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号82のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号83のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号84のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号85のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号86のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号77のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号89のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号90のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号92のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号93のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号94のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
vii)
a)配列番号95のアミノ酸配列からなるCDR1と、
b)配列番号96のアミノ酸配列からなるCDR2と、
c)配列番号97のアミノ酸配列からなるCDR3と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR1、CDR2またはCDR3のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体。
9.定義7または8記載の抗体であって、
a)図2に示されるようなVH配列のいずれかから選択されるVHアミノ酸配列、好ましくは、配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列のVHアミノ酸配列;
b)配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかである抗体重鎖(HC)アミノ酸配列;あるいは
c)配列番号232〜配列番号247のいずれかまたは配列番号312〜配列番号315のいずれかであり、かつ、C末端アミノ酸の欠失および/またはQ1E点変異(ただし、VH配列の最初のアミノ酸がQである場合)をさらに含む抗体重鎖(HC)アミノ酸配列
を含む抗体。
10.定義7〜9のいずれかに記載の抗体であって、さらに、表1において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはKabatの番号表記システムに従って示される)または表2において列挙されるようなCDR4配列〜CDR6配列(これらはIMGT番号表記システムに従って示される)あるいはそれらの機能的に活性なCDR変化体のいずれかを含む抗体軽鎖可変領域(VL)を含む抗体。
11.定義10記載の抗体であって、
A)
下記の群要素i)〜群要素vi)からなる群から選択される:
i)
a)配列番号75のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号76のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
ii)
a)配列番号75のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号80のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iii)
a)配列番号69のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号70のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号71のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
iv)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号87のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号88のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
v)
a)配列番号37のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号27のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号91のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
vi)
a)配列番号42のアミノ酸配列からなるCDR4と、
b)配列番号32のアミノ酸配列からなるCDR5と、
c)配列番号88のアミノ酸配列からなるCDR6と
を含む抗体である;
あるいは
B)Aの前記群要素のいずれかである親抗体の機能的に活性な変化体である抗体で、前記親抗体のCDR4、CDR5またはCDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的な活性なCDR変化体を含む抗体。
12.定義1〜12のいずれかに記載の抗体であって、
図2に示されるようなVL配列のいずれかから選択されるVLアミノ酸配列、好ましくは、配列番号296〜配列番号311のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列のVLアミノ酸配列を含み、あるいは、配列番号296〜配列番号311のいずれかまたは配列番号316〜配列番号319のいずれかである抗体軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む、定義10または定義11に記載の抗体。
13.下記の配列:
a)表1において列挙されるような抗体のいずれかのCDR1配列〜CDR6配列、または、
b)図2に示されるような抗体のいずれかのVH配列およびVL配列、または、
c)図2において列挙されるような抗体のいずれかのHC配列およびLC配列
を含み、あるいは
d)a)〜c)の配列によって特徴づけられる親抗体の機能的に活性な変化体であり、
好ましくは、
i.前記機能的に活性な変化体は前記親抗体のCDR1〜CDR6のいずれかの少なくとも1つの機能的に活性なCDR変化体を含み、かつ/または
ii.前記機能的に活性な変化体は少なくとも1つの点変異を前記親抗体のVH配列およびVL配列ならびに/あるいはHC配列およびLC配列のいずれかのフレームワーク領域において含み、場合により、Q1E点変異(VHフレームワーク領域(VH FR1)の最初のアミノ酸がQである場合)を含み、
さらには
iii.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有し、かつ/あるいは
iv.前記機能的に活性な変化体は、前記親抗体のヒト変化体、ヒト化変化体、キメラ変化体またはマウス変化体および/または親和性成熟化変化体である、抗体。
14.8D5−1G10または8D10−C8と称される抗体の機能的に活性な誘導体であり、少なくとも1つの点変異をCDR1〜CDR6のいずれかにおいて含み、好ましくは、8D5−1G10および8D10−C8とそれぞれ称される抗体と同じエピトープと結合するための特異性を有する、定義13に記載の抗体。
15.表1において列挙されるようなCDR配列のいずれかの機能的に活性なCDR変化体を含み、前記機能的に活性なCDR変化体が、
a)元のCDR配列における1つ、2つまたは3つの点変異;ならびに/あるいは
b)元のCDR配列の4つのC末端アミノ酸位置もしくは4つのN末端アミノ酸位置または4つの中心アミノ酸位置のいずれかにおける1つまたは2つの点変異;ならびに/あるいは
c)元のCDR配列との少なくとも60%の配列同一性
のうちの少なくとも1つを含む、定義1〜14のいずれかに記載の抗体。
16.前記機能的に活性なCDR変化体が、1つまたは2つの点変異を、4個未満または5個未満のアミノ酸からなるいずれかのCDR配列において含む、定義15に記載の抗体。
17.CDR配列およびフレームワーク配列を含み、前記CDR配列およびフレームワーク配列の少なくとも1つが、ヒト配列、ヒト化配列、キメラ配列、マウス配列または親和性成熟化配列を含み、好ましくは、前記フレームワーク配列がIgG抗体のものである、定義1〜16のいずれかに記載の抗体。
18.O25b抗原と10−6M未満のKdにより、好ましくは10−7M未満または10−8M未満のKdにより結合するための親和性を有する、定義1〜17のいずれかに記載の抗体。
19.大腸菌のO25a抗原と比較してO25b抗原に優先的に結合し、または、少なくとも両方の抗原に対する同等の親和性により結合する、定義1〜18のいずれかに記載の抗体。
20.全長のモノクローナル抗体、抗原結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含むその抗体フラグメント、または、抗原結合部位を取り込む少なくとも1つの抗体ドメインを含む融合タンパク質である、定義1〜19のいずれかに記載の抗体。
21.大腸菌感染症の危険性がある対象、または、大腸菌感染症に罹患している対象を処置することにおける使用で、前記対象における前記感染症を制限するために、または、前記感染症から生じる疾患状態を改善するために、好ましくは、腎盂腎炎、二次的菌血症、敗血症、腹膜炎、髄膜炎および人工呼吸器関連肺炎の処置または予防のために、効果的な量の前記抗体を前記対象に投与することを含む使用のための、定義1〜19のいずれかに記載の抗体。
22.定義1〜20のいずれかに記載の抗体を含み、好ましくは非経口用配合物または粘膜用配合物を含み、場合により医薬的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含有する医薬調製物。
23.大腸菌菌株によって引き起こされる対象における大腸菌感染症または大腸菌菌血症を、例えば、上部尿路感染症および下部尿路感染症(膀胱炎、尿道炎、上行性または血行性の腎盂腎炎を含む)などをとりわけ糖尿病患者において、同様にまた、菌血症、敗血症、腹膜炎または腸管コロニー形成とともに明らかにするための診断使用のための、定義1〜20のいずれかに記載の抗体。
24.定義1〜20のいずれかに記載の抗体の診断用調製物であって、前記抗体およびさらなる診断試薬を組成物または部分品のキットにおいて含み、下記の成分:
a)前記抗体;および
b)前記さらなる診断試薬;
c)ならびに、必要な場合には、前記抗体および前記診断試薬の少なくとも1つを固定化するための固相
を含む診断用調製物。
25.大腸菌菌株によって引き起こされる対象における大腸菌感染症または大腸菌菌血症を診断する方法であって、
a)定義1〜20のいずれかに記載の抗体を提供すること、および
b)前記抗体が、試験される前記対象の生物学的サンプルにおけるO25b抗原と特異的に免疫反応するかを、好ましくは凝集試験によって検出し、それにより、MDR大腸菌の感染症または菌血症を診断すること
を含む方法。
26.定義1〜20のいずれかに記載の抗体をコードする単離された核酸。
27.a)定義1〜20のいずれかに記載の抗体のVHおよび/またはVL;あるいは
b)あるいは、定義1〜20のいずれかに記載の抗体のHCおよび/またはLC
を発現させるためのコード配列を含む発現カセットまたはプラスミド。
28.定義27に記載の発現カセットまたはプラスミドを含む宿主細胞。
29.定義1〜20のいずれかに記載の抗体を製造する方法であって、定義28に記載の宿主細胞が、前記抗体を産生させるための条件のもとで培養または維持される、方法。
前記記載は、下記の実施例を参照してより十分に理解されるであろう。しかしながら、そのような実施例は、本発明の1つまたは複数の実施形態を実施する様々な方法を単に表しているだけであり、発明の範囲を限定するものとして理解してはならない。
実施例1:O25b特異的抗体の作製
代表的なST131−O25b:H4菌株81009の非被包性変異体(81009Δkps::kan[Szijarto他、FEMS Microbiol Lett、2012])を、(莢膜合成をコードする)kpsクラスターを、カナマイシン抵抗性をコードするカセットにより置換することによって作製した。亜致死用量のこの変異体の生細胞またはホルムアルデヒド不活化細胞、同様にまた、亜致死用量の親野生型菌株を使用して、マウスを2週間間隔で4回免疫化した。続いて、これらのマウスから得られる血清サンプルを分析し、O25b抗原に対する最大のIgG力価を(ELISA、免疫ブロッティングおよび表面染色において)示すマウスの脾臓をハイブリドーマ作製のために使用した。サブクローニングの後、精製されたO25b抗原に対して特異的である抗体を分泌し、同様にまた、O25b抗原を発現する生きた野生型大腸菌菌株の表面に結合したいくつかのハイブリドーマクローンを選択した。作製されたマウス抗体はすべての可能なマウスアイソタイプ(すなわち、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3)に及んだ。O25b特異的mAbの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変ドメインを、縮重した重鎖プライマーおよび軽鎖プライマーを用いたRT−PCRを使用することによってハイブリドーマクローンから増幅し、配列決定した。配列をIgデータベースについてはBLASTにより分析し、同様にまた、IMGT/V−QUESTにより分析し、CDR領域をKabat命名法に従って定義した(図1、表1)。
選択したハイブリドーマクローンをキメラmAbとして発現させた(すなわち、マウス可変領域をヒトIgG1定常ドメインに融合し、同様にまた、カッパ軽鎖に融合した)。そのうえ、ヒト化mAbを、超可変(CDR)マウス配列を、元のマウス・フレームワークに対して最も適合し得ることがインシリコ予測されたヒト・フレームワーク配列にグラフト化することによって作製した。これらのキメラmAbおよびヒト化mAbを哺乳動物細胞によって発現させ、プロテインAカラムに通して精製し、その後の実施例(下記参照)において示されるアッセイにおいて使用した。
実施例2:結合特性
キメラmAbおよびヒト化mAbの特異性を、精製されたLPSを使用する免疫ブロット分析によって確認した(図3)。すべてのmAbが、O25b抗原を含有するST131菌株から得られるLPS分子を認識し、しかしながら、O25a LPS抗原に対するそれらの交差反応能において異なっていた。いくつかのmAbがもっぱらO25b抗原に対して反応した一方で、(系譜4D5から得られる)いくつか(図4ii、中段パネル)がO25aに対して交差反応性であった。これらのmAbのどれもが、無関係のO抗原(例えば、O55)を有するLPS分子には反応しなかった。抗体結合特性をさらに、バイオレイヤー・インフェロメトリー(BLI)によって調べた。O25b mAb(キメラ体およびヒト化体)のビオチン化O25b多糖に対する結合を、ビオチン化抗原をストレプトアビジンセンサー(FoeteBio、Pall Life Sciences)に固定化し、事前に負荷されたセンサーに対するmAb(8〜10μg/ml)の会合を、1%BSAを含有するPBSにおいて10分間、その後、同じ緩衝液における解離を(5分間)モニターすることによって行った。Kd値、kon値およびkoff値を、Data Analysis7ソフトウエア(ForteBio、Pall Life Sciences)を使用して求めた。調べたすべてのmAbがこの設定では9.5nM〜211nMの間での強い結合親和性を示した(図4)。
細菌表面の生来型抗原に対するmAbの結合をフローサイトメトリーによって調べた。すべての抗体が、ST131−O25b:H4菌株であることが決定されたいくつかの異なる臨床分離体に結合した。O25a抗原を発現する菌株に対する結合に関して、2つのタイプのmAbが特定された。1つの群はO25a菌株の表面に結合せず、一方で、他方の群のmAbは、関連したO25a菌株を発現する菌株に対して交差反応性であった。しかしながら、これらのmAbのどれもが、無関係の抗原(Oタイプ)を発現するどの大腸菌菌株には結合することができなかった(図5i)。フローサイトメトリー測定(図5i)および免疫ブロッティング(図3)によって示される交差反応性の間における良好な相間が認められた。
表面結合をより詳しく調べるために、ST131菌株3O(Novais A.他、Antimicrob Agents Chemother、2012、56(5):2763〜6)を成長の中期対数期までLB(すなわち、一般的な研究室用成長培地)または(インビボ様の生育条件を模擬するための)不活化ヒト血清のどちらかで培養し、洗浄後、0.025μg/ml〜40μg/mlの希釈範囲での精製されたO25b反応性mAbにより染色した。洗浄後、Alexa488標識された抗ヒトIgGを4μg/mLの濃度で加え、蛍光強度をフローサイトメトリー(BD Accuri C6 Flow Cytometer)によって測定した。図5ii)Aに示される代表的な実験により、試験されたすべてのmAbが、調べられた菌株の表面に用量依存的様式で結合することができることが確認された。結合強度が、細菌を(LBに対して)血清中で成長させたときには幾分か低下し、しかしながら、試験されたすべてのmAbについては非常に著しいままであった(図5ii)B)。表面結合がST131−O25b菌株内の遺伝的差異に関係ないことを証明するために、異なるパルソタイプを含むST131菌株の十分に特徴づけられたパネルを調べた(Peirano他、Antimicrob.Agents Chemother.、2014、58(7):3762)。図5ii)Cにまとめられるデータにより、調べられた3つすべてのmAbが、パルソタイプ「O」(これは、ST131:O16系譜に属することが実際に報告されていた)についての菌株を除くすべての代表的な菌株の表面を強く染色することが証明された。したがって、フローサイトメトリー実験は、ST131:O25b系譜全般にわたる幅広い結合スペクトルを証明することができ、また、細菌がヒト血清中で(すなわち、インビボ様条件のもとで)成長させられたときには、この結合が保持された。
実施例3:O25b特異的mAbの抗菌効果
選択されたO25b特異的なキメラmAbおよびヒト化mAb(O25aに対する交差反応性の有無にかかわらず)の潜在的な保護効果を致死的なマウス菌血症モデルにおいて調べた。5匹のマウスの群に、100μgの精製mAbをPBSにおいて腹腔内に与えた。24時間後、マウスを、O25b抗原を発現する大腸菌菌株ST131 81009([Szijarto他(FEMS Microbiol Lett、2012、332:131〜6))の(先行実験で事前に決定される)致死用量によって静脈内投与により抗原攻撃した。24時間後、マウスを、O25b抗原を発現することが証明される大腸菌ST131の菌株81009(Szijarto他、FEMS Microbiol Lett、2012、332:131〜6)の致死用量(先行実験で事前に決定されるような108CFU)によって静脈内投与により抗原攻撃した。マウスの致死率を毎日モニターした。図6i)は、無関係な特異性を有するコントロールmAbの100μgにより免疫化されたマウスの100%が感染により死亡した一方で、試験されたすべてのO25b特異的mAbは、モニターされる感染後14日の期間にわたる生存における統計学(ログランク検定)的に有意な増大を証明したことを示す。
このインビボデータを裏づけるために、精製mAbの抗菌効果もまたインビトロで調べた。細菌を、Luria Bertani(LB)ブロスまたは熱不活化された正常なヒト血清において成長の中期対数期にまで成長させた。2mlの細菌培養液をPBSで2回洗浄した。血清殺菌アッセイ(SBA)を、カルシウムおよびマグネシウムが補充されるDPBSにより希釈される50%枯渇化ヒト血清プールにおいて行った。反応混合物は、LBまたは血清で成長させた中期対数期の細菌懸濁物からの約5×103CFUと、2.5μg/mlまたは10μg/mlのmAbとをそれぞれ含有した。抗体を何ら伴わない混合物、および、アイソタイプ一致の無関係なmAbを伴う混合物をコントロールとして含めた。細菌を、410RPMで振とうすることを伴う37℃での3時間のインキュベーション(LB成長細菌の場合)または5時間のインキュベーション(血清成長細菌の場合)の後での適切な希釈物を平板培養することによって計数した。特異的mAbによって媒介される殺傷を、接種物(開始CFU)に対するパーセントとして(図7i)、または、
殺傷(%)=100−([CFU(mAb)/CFU(抗体非存在)]*100) (図7ii)
として表した。
図7i)に示されるように、試験されたすべてのmAbが、3時間の試験期間にわたるCFUを有意に低下させることができた。対照的に、無関係なmAbと混合された、または抗体と混合されなかった細菌は成長をこの培地において示した。補体が(30分間の56℃でのインキュベーションによって)血清サンプルにおいて不活化された場合には、細菌殺傷がどのmAbによっても認められなかった(データは示されず)。これらの結果により、O25b特異的mAb(O25aに対する交差反応性の有無にかかわらず)は補体媒介の殺菌作用を引き起こすことができることが証明される。
さらなる実験により、この活性が確認された(図7ii)。アイソタイプ一致の無関係なmAbは殺菌活性を誘発することができなかった一方で、すべての抗O25b mAbは、CFUを試験された両方のST131−O25b菌株に対する3時間の試験期間にわたって有意に低下させることができた(図7iiのA、BおよびD)。細菌殺傷が、補体が(30分間の56℃でのインキュベーションによって)血清サンプルにおいて熱不活化された場合にはどのmAbによっても認められなかった(データは示されず)。これらの結果により、O25b特異的mAb(O25aに対する交差反応性の有無にかかわらず)は補体媒介の殺菌作用を引き起こすことができることが証明される。この作用様式が、認められたインビボ保護(上記参照)において関連性があるかもしれないことを確認するために、本発明者らは、(細菌培養培地、すなわち、LBとは対照的に)ヒト血清で成長させた細菌を使用する同じアッセイを行った。細菌を「インビボ様」条件のもとで成長させることの重要性が、細菌の表面、および、したがって、抗原の接触可能性が、表面の細菌成分の発現時の再編成のために、異なる条件で成長させられたときには非常に異なることがあるということである(Miajlovic H他、Infect.Immun.、82:298〜305、2014)。図7iiCに示されるように、O25b特異的なヒト化mAbは、細菌をヒト血清において前処理した後(すなわち、成長させた後)でさえ有意な細菌殺傷を引き起こすことができた。しかしながら、最大の殺菌効果のためには、より大きいmAb用量(10μg/ml)、同様にまた、より長いインキュベーション期間(5時間)が必要であった。
実施例4.O25b特異的mAbのエンドトキシン中和能
LPSはエンドトキシンとしての潜在的可能性を有するので、本発明者らは、LPS分子内のO25b抗原に結合するmAbの潜在的な中和能力を試験することが重要であると考えた。
マウスはヒトよりもエンドトキシンに対して固有的に耐性であり、しかしながら、マウスを、肝毒性炭水化物D−GalNの投与によって微量の精製PLSに対して感受性にすることができる(Galanos C他、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A、76:5939〜5943、1979)。マウスを、同時に施される20mg/マウスのD−GalNによるi.p.感作および致死用量(1ng)の精製O25b LPSによるi.v.抗原攻撃の24時間前に予防的に100μgまたは25μgのmAbにより免疫化した。図8は、致死的な内毒素血症からの有意かつ用量依存的な保護を示すヒト化mAbについての代表的な実験を示す。
この作用様式についてさらに解明するために、ヒト化されたO25b特異的mAbをインビトロ中和アッセイにおいて調べた。LPSは、敗血症性ショックをインビボにおいて誘発することに関わるtoll様受容体−4(TLR−4)/MD2受容体複合体を介してシグナル伝達する。TLR−4複合体を介するLPSシグナル伝達の中和を評価するために、本発明者らは市販のHEK−Blueシステム(InvivoGen)を使用した。このアッセイでは、ヒトTLR−4複合体を発現させるために形質転換されるHEK細胞が利用される。この受容体を介したシグナル伝達は、発色性基質により定量化される酵素の分泌を誘導する。図9Aは、精製されたO25b LPSが用量依存的活性をこのアッセイにおいて有することを示す。中和mAbは、エンドトキシンの標準的濃度によって誘発されるシグナルを用量依存的様式で阻害することができる(図9B)。IC50値(最大効果の50%を中和するmAbの濃度)により、様々なmAbの中和能を比較することが可能になる。図9Cには、代表的なヒト化O25b反応性mAbの中和効力がまとめられる。