本発明の態様に係る描画装置および描画方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の基板(被露光体)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、電子デバイスを製造する製造ラインが構築された製造システムである。電子デバイスとしては、例えば、フレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、フレキシブル・センサー等が挙げられる。本実施の形態では、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、フレキシブルのシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。そのため、各種処理後の基板Pは、複数の電子デバイスが連なった状態となっており、多面取り用の基板となっている。前記供給ロールから送られた基板Pは、順次、プロセス装置PR1、露光装置(描画装置)EX、およびプロセス装置PR2で各種処理が施され、前記回収ロールで巻き取られる。この基板Pは、基板Pの移動方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。
なお、X方向は、水平面内において、プロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)である。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、露光装置EXの搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板Pは、プロセス装置PR1、露光装置EX、およびプロセス装置PR2で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲と言える。
プロセス装置PR1は、露光装置EXで露光処理される基板Pに対して前工程の処理を行う。プロセス装置PR1は、前記供給ロールから送られてきた基板Pを露光装置EXに向けて所定の速度で搬送しつつ、基板Pに対して前工程の処理を行う。プロセス装置PR1は、前工程の処理を行った基板Pを露光装置EXへ向けて所定の速度で送る。この前工程の処理により、露光装置EXへ送られる基板Pは、その表面に感光性機能層(光感応層)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
この感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、パターン層を形成することができる。感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。
本実施の形態においては、描画装置としての露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置であり、プロセス装置PR1から供給された基板Pに対して、ディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンを照射する。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板Pを+X方向(副走査方向)に搬送しながら、露光用のレーザ光(露光ビーム)LBのスポット光SPを基板P上で所定の走査方向(主走査方向、Y方向)に1次元の方向に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(on/off)することによって、基板Pの表面(感光面)にディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンを描画露光している。つまり、基板Pの+X方向への搬送(副走査)と、スポット光SPの主走査方向(Y方向)への走査とで、スポット光SPが基板P上で相対的に2次元走査されて、基板Pに光パターンが描画露光される。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、露光装置EXによって各層に対応したパターンが露光される。
プロセス装置PR2は、露光装置EXで露光処理された基板Pに対しての後工程の処理(例えばメッキ処理や現像・エッチング処理等)を行う。プロセス装置PR2は、露光装置EXから送られてきた基板Pを前記回収ロールに向けて所定の速度で搬送しつつ、基板Pに対して後工程の処理を行う。この後工程の処理により、基板P上に電子デバイスのパターン層が形成される。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、デバイス製造システム10の各処理によって第1層にパターンが形成された後、再度、デバイス製造システム10の各処理を経ることで、第2層にパターンが形成される。
次に、露光装置EXについて詳しく説明する。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制する。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、設置土台上の面であってもよく、床であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構(搬送装置)12と、光源装置(パルス光源装置)14と、光導入光学系16、露光ヘッド18と、制御装置20、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)、エンコーダヘッドEN(EN1〜EN3)とを備えている。
基板搬送機構12は、プロセス装置PR1から搬送される基板Pを、プロセス装置PR2に所定の速度で搬送する。この基板搬送機構12によって、露光装置EX内で搬送される基板Pの搬送路が規定される。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)22、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置PR1から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションが掛けられた状態で搬送されている基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、基板Pの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)を有する。駆動ローラR1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを回転ドラム22へ向けて搬送する。エッジポジションコントローラEPCは、基板Pの長尺方向が回転ドラム22の中心軸AXに対して直交するように、基板Pの幅方向における位置を調整する。
回転ドラム22は、Y方向に延びる中心軸AXと、中心軸AXから一定半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AXを中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラム22は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)によって撮像される基板P上の領域(部分)、および、基板P上で光パターンが露光される領域(部分)をその円周面で支持する。この中心軸AXは、制御装置20によって制御される回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで回転する。なお、便宜的に、中心軸AXを通り、Y平面と平行な平面を中心面Cと呼ぶ。
駆動ローラR2、R3は、基板Pの搬送方向(+X方向)に沿って所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pをプロセス装置PR2へ向けて搬送する。駆動ローラR2、R3は、回転ドラム22に対して搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、この駆動ローラR2は、駆動ローラR3に対して、搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。テンション調整ローラRT1、RT2は、−Z方向に付勢されており、回転ドラム22に巻き付けられて支持されている基板Pに長尺方向の所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラム22に掛かる前の基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。なお、制御装置20は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)を制御することで、駆動ローラR1〜R3を回転させる。
光源装置14は、光源(パルス光源)14aを有し、パルス状のレーザ光(パルス光)LBを射出するものである。このレーザ光LBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、レーザ光LBの発光周波数をFeとする。光源装置14が射出したレーザ光LBは、光導入光学系16に導かれて露光ヘッド18に入射する。
露光ヘッド18は、レーザ光LBがそれぞれ入射する複数の描画ユニットU(U1〜U6)を備えている。光源装置14からのレーザ光LBは、反射ミラーやビームスプリッタ等を有する光導入光学系16に導かれて露光ヘッド18の複数の描画ユニットU(U1〜U6)に入射する。露光ヘッド18は、回転ドラム22の円周面で支持されている基板Pの一部分に、複数の描画ユニットU1〜U6によって、所定のパターンを描画する。露光ヘッド18は、構成が同一の複数の描画ユニットU1〜U6を有することで、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。描画ユニットU1、U3、U5は、中心面Cに対して基板Pの順搬送方向の上流側(−X方向側)で、Y方向に沿って一列に配置されている。描画ユニットU2、U4、U6は、中心面Cに対して基板Pの順搬送方向の下流側(+X方向側)で、Y方向に沿って一列に配置されている。
描画ユニットUは、入射したレーザ光LBを基板P上で収斂させてスポット光SPにし、且つ、そのスポット光SPを主走査方向(Y方向)に沿って主走査させる。このスポット光SPの主走査方向の走査によって、スポット光SPの走査軌跡を示す描画ラインLが基板P上に規定される。各描画ユニットUの描画ライン(走査線)Lは、図2に示すように、Y方向(基板Pの幅方向、走査方向)に関して互いに分離することなく、継ぎ合わされるように設定されている。図2では、描画ユニットU1の描画ラインLをL1、描画ユニットU2の描画ラインLをL2で表している。同様に、描画ユニットU3、U4、U5、U6の描画ラインLをL3、L4、L5、L6で表している。このように、描画ユニットU1〜U6全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各描画ユニットUは走査領域を分担している。これにより、各描画ユニットU1〜U6は、基板Pの幅方向に分割された複数の領域毎にパターンを描画することができる。なお、例えば、1つの描画ユニットUによるY方向の走査幅(描画ラインLの長さ)を20〜50mm程度とすると、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の3個との計6個の描画ユニットUをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を120〜300mm程度に広げている。なお、各描画ラインL1〜L6の長さは、原則として同一とする。つまり、描画ラインL1〜L6の各々に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査距離は同一とする。
具体的に説明すると、描画ラインL1〜L6は、中心面Cを挟んで、回転ドラム22の周方向に2列に配置される。描画ラインL1、L3、L5は、中心面Cに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板P上に位置し、描画ラインL2、L4、L6は、中心面Cに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板P上に位置する。描画ラインL1〜L6は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラム22の中心軸AXに沿って略平行となっている。
描画ラインL1、L3、L5は、基板Pの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔を空けて直線上に配置され、描画ラインL2、L4、L6も同様に、基板Pの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔を空けて直線上に配置されている。このとき、描画ラインL2は、基板Pの幅方向において、描画ラインL1と描画ラインL3との間に配置される。同様に、描画ラインL3は、基板Pの幅方向において、描画ラインL2と描画ラインL4との間に配置される。描画ラインL4は、基板Pの幅方向において、描画ラインL3と描画ラインL5との間に配置され、描画ラインL5は、基板Pの幅方向において、描画ラインL4と描画ラインL6との間に配置される。
奇数番の描画ラインL1、L3、L5の各々に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査方向は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。偶数番の描画ラインL2、L4、L6の各々に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査方向は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。この描画ラインL1、L3、L5に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査方向と、描画ラインL2、L4、L6に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査方向とは互いに逆方向となっている。詳しくは、この描画ラインL1、L3、L5に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査方向は+Y方向であり、描画ラインL2、L4、L6に沿って走査されるレーザ光LBのスポット光SPの走査方向は−Y方向である。これにより、描画ラインL3、L5の描画開始位置と、描画ラインL2、L4の描画開始位置とはY方向に関して隣接する。また、描画ラインL1、L3、L5の描画終了位置と、描画ラインL2、L4、L6の描画終了位置とはY方向に関して隣接する。
なお、この描画ラインLの副走査方向の幅(X方向の寸法)は、スポット光SPのサイズに応じた太さである。例えば、スポット光SPのサイズ(直径)が3μmの場合は、描画ラインLの副走査方向の幅も3μmとなる。また、スポット光SPは、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズの半分)だけオーバーラップするように、描画ラインLに沿って照射される。
次に、図3を参照して描画ユニットUの構成について説明する。なお、各描画ユニットU(U1〜U6)は、同一の構成を有することから、描画ユニットU2についてのみ説明し、他の描画ユニットUについては説明を省略する。
図3に示すように、描画ユニットU2は、例えば、集光レンズ30、描画用光学素子(光変調素子)32、吸収体34、コリメートレンズ36、反射ミラー38、シリンドリカルレンズ40、フォーカスレンズ42、ビームスプリッタ44、ポリゴンミラー(光走査部材)46、反射ミラー48、f−θレンズ50、および、シリンドリカルレンズ52を有する。
描画ユニットU2に入射するレーザ光LBは、鉛直方向の上方から下方(−Z方向)に向けて進み、集光レンズ30を介して描画用光学素子32に入射する。集光レンズ30は、描画用光学素子32に入射するレーザ光LBを描画用光学素子32内でビームウエストとなるように集光(収斂)させる。描画用光学素子(変調器)32は、レーザ光LBに対して透過性を有するものであり、例えば、音響光学変調器(AOM:Acousto-Optic Modulator)が用いられる。
描画用光学素子(AOM)32は、後述するAOM駆動部96(図6参照)からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したレーザ光LBを吸収体34側に透過し、AOM駆動部96からの駆動信号(高周波信号)がオンの状態のときは、入射したレーザ光LBを回折させて反射ミラー38に向かわせる。吸収体34は、レーザ光LBの外部への漏れを抑制するためにレーザ光LBを吸収する光トラップである。AOM駆動部96は、描画用光学素子32に印加すべき描画用の駆動信号(超音波の周波数)をパターンデータ(描画データ)に応じて高速にオン/オフすることによって、レーザ光LBが反射ミラー38に向かうか(描画用光学素子32をオン)、吸収体34に向かうか(描画用光学素子32をオフ)がスイッチングされる。つまり、描画用光学素子32をオン/オフにスイッチングすることができる。このことは、基板P上で見ると、感光面に達するレーザ光LB(スポット光SP)の強度が、パターンデータに応じて高レベルと低レベル(例えば、ゼロレベル)のいずれかに高速に変調されることを意味する。
コリメートレンズ36は、描画用光学素子32から反射ミラー38に向かうレーザ光LBを平行光にする。反射ミラー38は、入射したレーザ光LBを−X方向に反射させて、シリンドリカルレンズ40およびフォーカスレンズ42を介してビームスプリッタ44に照射する。ビームスプリッタ44は、入射したレーザ光LBをポリゴンミラー46に照射する。ポリゴンミラー(回転多面鏡)46は、Z方向に延びる回転軸46aと、回転軸46aの周りに形成された複数の反射面46b(本実施の形態では8つの反射面46b)とを有する。回転軸46aを中心にこのポリゴンミラー46を所定の回転方向に回転させることで、反射面46bに照射されるパルス状のレーザ光LBの反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面46bによって、基板P上に照射されるレーザ光LBのスポット光SPを走査方向(基板Pの幅方向、Y方向)に走査することができる。つまり、1つの反射面46bによって、レーザ光LBのスポット光SPを描画ラインL2に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラー46の1回転で、基板P上にスポット光SPが走査される描画ラインL2の数は最大8本となる。ポリゴンミラー46は、モータ等を含むポリゴン駆動部92(図6参照)によって一定の速度で回転する。このポリゴンミラー46によってスポット光SPを走査することができる最大走査長よりも描画ラインL2の長さは短く設定されており、この最大走査長の略中央付近に、描画ラインL2を設定することが好ましい。
描画ラインL2の長さを30mmとし、3μmのスポット光SPを1.5μmずつオーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインL2に沿って基板P上に照射する場合は、1回の走査で照射されるスポット光SPの数は、20000(30mm/1.5μm)となる。また、描画ラインL2に沿ったスポット光SPの走査時間を200μsecとすると、この間に、パルス状のスポット光SPを20000回照射しなければならないので、発光周波数Feは、Fe≧20000/200μsec=10MHzとなる。
反射ミラー38とビームスプリッタ44との間に設けられたY方向に母線を有するシリンドリカルレンズ40は、フォーカスレンズ42と協働して、前記走査方向と直交する非走査方向(Z方向)に関してレーザ光LBをポリゴンミラー46の反射面46b上に集光(収斂)する。このシリンドリカルレンズ40によって、ポリゴンミラー46の反射面46bがZ方向に対して傾いている場合(XY面の法線と前記反射面46bとの平行状態からの傾き)があっても、その影響を抑制することができ、基板P上に照射されるレーザ光LBの照射位置がX方向にずれることを抑制する。
ポリゴンミラー46で反射したレーザ光LBは、反射ミラー48によって−Z方向に反射され、Z軸方向に延びる光軸AXuを有するf−θレンズ50に入射する。f−θレンズ50は、基板Pに投射されるレーザ光LBの主光線が走査中は常に基板Pの表面の法線となるようなテレセントリック系の光学系である。f−θレンズ50への入射角θ1は、ポリゴンミラー46の回転角(θ1/2)に応じて変わる。f−θレンズ50は、その入射角θ1に比例した像高位置にレーザ光LBのスポット光SPを集光する。焦点距離をfとし、像高位置をyとすると、f−θレンズ50は、y=f×θ1、の関係を有する。したがって、このf−θレンズ50によって、レーザ光LBをY方向に正確に等速度で走査することが可能になる。f−θレンズ50から照射されたレーザ光LBは、シリンドリカルレンズ52を介して、基板P上に直径数μm程度の略円形の微小なスポット光SPとなって照射される。シリンドリカルレンズ52は、基板P上に集光されるレーザ光LBのスポット光SPを直径数μm程度の微小な円形にするものであり、その母線はY方向と平行となっている。これにより、基板P上にスポット光SPが形成され、このスポット光(走査スポット光)SPは、ポリゴンミラー46によって、Y方向に延びる描画ラインL2に沿って一方向に1次元走査される。
このように、基板PがX方向に搬送されている状態で、各描画ユニットU1〜U6によって、レーザ光LBのスポット光SPを走査方向(Y方向)に1次元に走査することで、スポット光SPが基板P上に相対的に2次元走査されて、基板Pの露光領域Wに所定のパターンを描画露光することができる。なお、図3に示す参照符号54は、原点センサ54を示す。原点センサ54は、ポリゴンミラー46の反射面46bに光を照射する照射部54aと、その反射光を受光する光電検出器(開始信号出力部)54bとを有する。光電検出器54bは、照射部54aからの反射光を受光すると、スポット光SPの走査方向への走査開始を示すパルス状の開始信号st2を出力する。
ポリゴンミラー46の回転位置が、描画ラインL2の描画開始位置にスポット光SPが照射される直前の所定位置に来る度に照射部54aからの光が光電検出器54bに向けて出力されるように、原点センサ54が設けられている。これにより、光電検出器54bは、ポリゴンミラー46の回転位置が所定位置に来る度に、パルス状の開始信号st2を出力する。つまり、ポリゴンミラー46の各反射面46bが所定の位置に来ると、光電検出器54bは、反射光を受光して開始信号st2を出力する。したがって、ポリゴンミラー46が1回転する期間で、スポット光SPの走査が8回行われるので、光電検出器54bもこの1回転する期間で8回開始信号st2を出力することになる。この原点センサ54(光電検出器54b)が検出した開始信号st2は制御装置20に送られる。光電検出器54bが開始信号st2を出力してから所定時間後に、スポット光SPの描画ラインL2に沿った走査が開始する。この原点センサ54は、言うまでもないが、各描画ユニットUに設けられており、描画ユニットU1の原点センサ54から出力される開始信号stをst1とし、同様に、描画ユニットU3、U4、U5、U6の原点センサ54から出力される開始信号stをst3、st4、st5、st6とする。
アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、図2に示すように、基板P上に形成されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出するためのものであり、Y方向に沿って3つ設けられている。このアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)で検出される基板P上の領域は、回転ドラム22の円周面で支持されている。このアライメントマークKsは、基板P上の露光領域Wに描画されるパターンと基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。つまり、アライメントマークKsを検出することで基板Pの位置を検出することができる。このアライメントマークKsは、図2に示すように、基板Pの幅方向の両端側に、基板Pの長尺方向に沿って一定間隔で形成されているとともに、基板Pの長尺方向に沿って並んだ露光領域Wと露光領域Wとの間で、且つ、基板Pの幅方向中央にも形成されている。なお、露光ヘッド18は、基板Pに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行うことから、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて露光領域Wが複数設けられている。このアライメントマークKsは、基板Pの第1層にパターンを形成する際に一緒に形成されるので、第1層にパターンを露光するときには、アライメントマークKsは形成されていない。なお、基板Pの第1層にパターンを形成する前に予め基板PにアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を形成していてもよい。
アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、アライメント用の照明光を基板Pに投影して、CCD、CMOS等の撮像素子でその反射光を撮像する。アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、露光ヘッド18から照射されるスポット光SPよりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。アライメント顕微鏡AM1は、観察領域(検出視野)Vw1内に存在する基板Pの+Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs1を撮像し、アライメント顕微鏡AM2は、観察領域Vw2内に存在する基板Pの−Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs2を撮像する。アライメント顕微鏡AM3は、観察領域Vw3内に存在する基板Pの幅方向中央に形成されたアライメントマークKs3を撮像する。アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が撮像した撮像信号(画像データ)は制御装置20に送られる。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。また、観察領域Vw(Vw1〜Vw3)の基板P上の大きさは、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
エンコーダヘッドEN(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)は、回転ドラム22の回転位置を光学的に検出するものである。エンコーダヘッドEN(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)は、図4に示すように、回転ドラム22の両端部に設けられるスケール部GPa、GPbの各々と対向する。エンコーダヘッドEN1a〜EN3aは、回転ドラム22の+Y方向の端部側に設けられたスケール部GPaに対向し、エンコーダヘッドEN1b〜EN3bは、回転ドラム22の−Y方向の端部側に設けられたスケール部GPbに対向する。スケール部GPa、GPbの目盛は、回転ドラム22の外周面の周方向の全体に亘って環状にそれぞれ形成されている。スケール部GPa、GPbは、回転ドラム22の外周面の周方向に一定のピッチ(例えば、20μm)で凹状または凸状の格子線を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型スケールとして構成される。このスケール部GPa、GPbは、中心軸AX周りに回転ドラム22と一体に回転する。
基板Pは、回転ドラム22の両端のスケール部GPa、GPbより内側に巻き付けられるように構成される。スケール部GPa、GPbの外周面と、回転ドラム22に巻き付けられた基板Pの外周面とが同一面(中心軸AXから同一半径)となるように設定されている。これにより、エンコーダヘッドEN(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)は、回転ドラム22に巻き付いた基板P上の描画面と同じ径方向位置でスケール部GPa、GPbを検出することができ、計測位置と処理位置(スポット光SPの走査位置、アライメントマークKsの検出位置)とが回転ドラム22の径方向に異なることで生じるアッベ誤差を小さくすることができる。
エンコーダヘッドEN(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)は、スケール部GPa、GPbに向けて計測用の光ビームを照射し、その反射光速(回折光)を光電検出することにより、スケール部GPa、GPbの周方向の位置に応じた検出信号を制御装置20に出力する。これにより、回転ドラム22の回転角度(回転位置)を検出することができる。エンコーダヘッドEN(EN1a〜EN3a、EN1b〜EN3b)が検出した検出信号Sdは、制御装置20に送られる。なお、エンコーダヘッドEN1a、EN1bが検出した検出信号SdをSd1a、Sd1bとし、エンコーダヘッドEN2a、EN2bが検出した検出信号SdをSd2a、Sd2bとし、EN3a、EN3bが検出した検出信号SdをSd3a、Sd3bとする。これらの検出信号Sd1a、Sd1b、Sd2a、Sd2b、Sd3a、Sd3bは、いずれも位相差が90度の2相信号であり、検出信号Sd1a、Sd1b、Sd2a、Sd2b、Sd3a、Sd3bの各々を内挿補間回路とデジタルカウンタ回路によって処理することによって、スケール部GPa、GPbの周方向の移動量がサブミクロンの分解能で計測される。
エンコーダヘッドEN1a、EN1bは、設置方位線Le1上に配置されている。設置方位線Le1は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN1a、EN1bの計測用の光ビームのスケール部GPa、GPb上への投射領域(読取位置)と、中心軸AXとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Le1は、XZ平面において、アライメント顕微鏡AM1〜AM3の観察領域Vw1〜Vw3と中心軸AXとを結ぶ線となっている。つまり、XZ平面において、エンコーダヘッドEN1a、EN1bの読取位置と中心軸AXとを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM1〜AM3の観察領域Vw1〜Vw3と中心軸AXとを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。
エンコーダヘッドEN2a、EN2bは、設置方位線Le2上に配置されている。設置方位線Le2は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN2a、EN2bの計測用の光ビームのスケール部GPa、GPb上への投射領域(読取位置)と、中心軸AXとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Le2は、XZ平面において、描画ラインL1、L3、L5と中心軸AXとを結ぶ線となっている。つまり、XZ平面において、エンコーダヘッドEN2a、EN2bの読取位置と中心軸AXとを結ぶ線と、描画ラインL1、L3、L5と中心軸AXとを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。
エンコーダヘッドEN3a、EN3bは、設置方位線Le3上に配置されている。設置方位線Le3は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN3a、EN3bの計測用の光ビームのスケール部GPa、GPb上への投射領域(読取位置)と、中心軸AXとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Le3は、XZ平面において、描画ラインL2、L4、L6と中心軸AXとを結ぶ線となっている。つまり、XZ平面において、エンコーダヘッドEN3a、EN3bの読取位置と中心軸AXとを結ぶ線と、描画ラインL2、L4、L6と中心軸AXとを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。設置方位線Le2、Le3が中心面Cに対して角度±θ(図1参照)となるように、複数の描画ユニットU1〜U6およびエンコーダヘッドEN2、EN3が配置されている。
次に、図5を参照して、露光ヘッド18および回転ドラム22を支持する支持フレーム60について説明する。図5は、支持フレーム60の構成を示す図である。支持フレーム60は、本体フレーム62と、3点支持部64と、第1光学定盤66と、移動機構68と、第2光学定盤70とを有する。支持フレーム60は、温調チャンバーECV内に格納されている。本体フレーム62は、回転ドラム22と、テンション調整ローラRT1(不図示)、RT2を回転可能に支持している。回転ドラム22の中心軸AXは、ベアリング(軸受け)62a等を介して本体フレーム62に回転可能に支持され、テンション調整ローラRT1、RT2の中心軸も同様に、図示しないベアリング(軸受け)を介して本体フレーム62に回転可能に支持されている。3点支持部64は、本体フレーム62の上端に設けられ、回転ドラム22の上方(+Z方向)に設けられた第1光学定盤66を3点で支持する。
第2光学定盤70は、第1光学定盤66の上方側(+Z方向側)に設けられ、移動機構68を介して第1光学定盤66に設置されている。第2光学定盤70は、その盤面が第1光学定盤66の盤面と平行になっている。第2光学定盤70は、露光ヘッド18を支持するものである。第2光学定盤70は、露光ヘッド18の描画ユニットU1、U3、U5を回転ドラム22の中心軸AXに対して搬送方向の上流側(−X方向側)で、且つ、基板Pの幅方向(Y方向)に沿って並列に支持する。また、第2光学定盤70は、露光ヘッド18の描画ユニットU2、U4、U6を中心軸AXに対して搬送方向の下流側(+X方向側)で、且つ、基板Pの幅方向(Y方向)に沿って並列に支持する。
移動機構68は、第1光学定盤66および第2光学定盤70のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、鉛直方向(Z方向)に延びる回転軸Iを中心に、第1光学定盤66に対して第2光学定盤70をXY平面上で回転させることができる。また、移動機構68は、第1光学定盤66および第2光学定盤70のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、回転軸Iを中心に、第1光学定盤66に対して第2光学定盤70をY方向にシフト移動させることができる。この回転軸Iは、中心面Cにおいて鉛直方向(Z方向)に延在するとともに、複数の描画ラインL1〜L6の幾何学的な位置の重心位置(例えば、露光領域Wの幅方向における中心位置)を通っている(図2参照)。そして、移動機構68は、第1光学定盤66に対して第2光学定盤70を回転またはシフト移動させることで、回転ドラム22に巻きつけられた基板Pに対する複数の描画ユニットU1〜U6の位置を調整することができる。なお、描画ラインL1、L3、L5と、描画ラインL2、L4、L6とを含む平面と、XY平面とは平行である。
図6は、制御装置20の電気的な構成を示す図である。制御装置20は、コンピュータとプログラムが記憶された記憶媒体とを有し、コンピュータがプログラムを実行することで、本実施の形態の制御装置20として機能する。制御装置20は、クロック発生部80、カウンタ回路CT1a〜CT3a、CT1b〜CT3b、制御部82、および、描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6を備える。なお、図6においては、偶数番の描画ユニット駆動制御部CU2、CU4、CU6の図示を省略しているが、その動作は、奇数番の描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5と同様である。
クロック発生部80は、クロック信号CLKを発生し、発生したクロック信号CLKを制御部82および描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6に出力する。なお、光源装置14の発光周波数Feは、クロック信号CLKの周波数と同期している。制御部82および描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6は、クロック信号CLKに基づいて動作する。カウンタ回路CT1a〜CT3a、CT1b〜CT3bは、エンコーダヘッドEN1a〜EN3a、EN1b〜EN3bが検出した検出信号Sdをカウントすることで、回転ドラム22の回転位置情報をデジタル信号に変換する。カウンタ回路CT1aは、エンコーダヘッドEN1aからの検出信号Sd1aをカウントし、カウンタ回路CT1bは、エンコーダヘッドEN1bからの検出信号Sd1bをカウントする。カウンタ回路CT2aは、エンコーダヘッドEN2aからの検出信号Sd2aをカウントし、カウンタ回路CT2bは、エンコーダヘッドEN2bからの検出信号Sd2bをカウントする。カウンタ回路CT3aは、エンコーダヘッドEN3aからの検出信号Sd3aをカウントし、カウンタ回路CT3bは、エンコーダヘッドEN3bからの検出信号Sd3bをカウントする。カウンタ回路CT1a〜CT3a、CT1b〜CT3bは、スケール部GPa、GPbの原点位置ZP(図4参照)がエンコーダヘッドEN1a〜EN3a、EN1b〜EN3bによって検出されると、そのカウント値を0にリセットする。つまり、カウンタ回路CT1a〜CT3a、CT1b〜CT3bは、原点位置ZPを基準とし、原点位置ZPからの回転ドラム22の回転位置をカウントする。
制御部82の回転位置算出部84は、カウンタ回路CT1a、CT1bのカウント値の平均値をとることで設置方位線Le1における回転ドラム22の回転位置Ac1を算出する。回転位置算出部84は、同様に、カウンタ回路CT2a、CT2bのカウント値の平均値、カウンタ回路CT3a、CT3bの平均値をとることで設置方位線Le2、Le3における回転ドラム22の回転位置Ac2、Ac3を算出する。なお、回転ドラム22の回転が偏心していない場合は、カウンタ回路CT1aとカウンタ回路CT1bとのカウント値は同一となる。同様に、カウンタ回路CT2a、CT3aとカウンタ回路CT2b、CT3bのカウント値も同一となる。
制御部82のアライメント位置情報生成部86は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)を用いて検出したアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の基板P上の位置に基づいて、パターンが露光される露光領域Wの基板P上の位置を示すアライメント位置情報を生成する。このパターンが露光される露光領域Wの基板P上の位置は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)と同じ設置方位線Le1に設けられたエンコーダヘッドEN1a、EN1bを用いて回転位置算出部84が算出した設置方位線Le1における回転ドラム22の回転位置Ac1によって表されている。アライメント位置情報生成部86は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が撮像した画像データを解析することで、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の基板P上の位置を検出する。
描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6は、回転位置算出部84が算出した回転位置Ac2、Ac3と、アライメント位置情報生成部86が生成したアライメント位置情報とに基づいて、描画ユニットU1〜U6を駆動制御する。原則として、描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5についてのみ説明し、描画ユニット駆動制御部CU2、CU4、CU6については、描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5と異なる部分のみ説明する。なお、描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6は特に説明しない限り同一の構成を有する。
描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5は、制御部90、ポリゴン駆動部92、メモリ部94、および、AOM駆動部96を有する。描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5の制御部90は、描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5の各部を制御する。描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5のポリゴン駆動部92は、モータ等の回転駆動源を含み、制御部90の制御にしたがって描画ユニットU1、U3、U5のポリゴンミラー46を回転させる。制御部90は、ポリゴンミラー46の回転数が回転指令値となるようにポリゴン駆動部92をフィードバック制御する。ポリゴン駆動部92は、ポリゴンミラー46の回転数に応じた回転数信号を検出するエンコーダを有し、回転数信号を制御部90に出力する。したがって、制御部90は、回転指令値とポリゴンミラー46の回転数に応じた回転数信号とに基づいて、ポリゴン駆動部92をフィードバック制御する。この描画ユニットU1、U3、U5のポリゴンミラー46が回転することで、ポリゴンミラー46によるスポット光SPの描画ラインL1、L3、L5に沿った走査の開始を示す開始信号st1、st3、st5が描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5に出力される。なお、描画ユニットU1〜U6のポリゴンミラー46の回転数(回転速度)は、同一とする。
このポリゴンミラー46の回転数と発光周波数Fe(クロック信号CLKの周波数)とに応じて、走査方向に沿って基板P上に照射されるスポット光SPの位置間隔が定まるので、描画ラインL1、L3、L5に沿って走査されるスポット光SPが、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズの1/2)だけオーバーラップしながら照射されるように、このポリゴンミラー46の回転数(回転指令値)と、発光周波数Fe(クロック信号CLKの周波数)とが定められている。また、基板Pの搬送速度とポリゴンミラー46の回転数とに応じて、基板Pの長尺方向に沿って照射されるスポット光SPの位置間隔(副走査方向に関する走査の間隔)が定まるので、基板Pの長尺方向に沿って照射されるスポット光SPが、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズの1/2)だけオーバーラップするように、回転ドラム22の回転速度と、ポリゴンミラー46の回転数(回転指令値)とが定められている。
描画ユニット駆動制御部CU1のメモリ部94には、描画ユニットU1が描画するパターンに応じたパターンデータBM1が記憶されている。同様に、描画ユニット駆動制御部CU3、CU5のメモリ部94には、描画ユニットU3、U5が描画するパターンに応じたパターンデータBM3、BM5が記憶されている。なお、図示していない描画ユニット駆動制御部CU2、CU4、CU6のメモリ部94には、描画ユニットU2、U4、U6が描画するパターンに応じたパターンデータBM2、BM4、BM6が記憶されている。
メモリ部94は、スポット光SPの主走査方向(Y方向)に沿った方向を行とし、基板Pの搬送方向(+X方向)に沿った方向を列とするように2次元に分解された複数の画素データで構成されるビットマップデータとしてパターンデータBM1、BM3、BM5を記憶している。この画素データは、「0」または「1」の1ビットのデータである。つまり、このパターンデータBM1〜BM6は、描画ユニットU1〜U6によって描画するパターンをマトリックス状に配置された複数の画素で分解し、各画素を「0」または「1」の論理情報(画素データ)で表したビットマップデータである。「0」の画素データは、基板P上に照射するスポット光SPの強度を低レベル(例えば、0レベル)にすることを意味し、「1」の画素データは、基板P上に照射するスポット光SPの強度を高レベルにすることを意味している。なお、本実施の形態では、1画素に対して1つのスポット光SPが照射されるものとして説明する。したがって、行方向(垂直方向)の画素データの数は、描画ラインLに沿って照射されるスポット光SPのパルス数と同じとなる。なお、スポット光SPのサイズを3μmとし、画素の寸法も3μmとした場合であって、スポット光SPを1.5μmオーバーラップさせながら基板P上に投射する場合は、2つのスポット光SPが1画素に対応してもよい。この場合は、行方向(垂直方向)の画素データの数は、描画ラインLに沿って照射されるスポット光SPのパルス数の1/2となる。
描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5の制御部90は、メモリ部94に記憶されたパターンデータBM1、BM3、BM5の画素データを列毎に読み出し、読み出した1列分の画素データ(画素データ列)をAOM駆動部96に出力する。この画素データ列は、1描画ラインL分のパターンデータを表している。AOM駆動部96は、この画素データ列に応じて、制御対象となる描画ユニットUの描画用光学素子32に、1描画ラインL分のオン/オフの駆動信号(高周波信号)を出力する。例えば、AOM駆動部96は、画素データが「1」の場合は、AOM駆動部96がオンの駆動信号(高周波信号)を出力するように制御し、画素データが「0」の場合は、AOM駆動部96がオフの駆動信号(高周波信号)を出力するように制御する。描画用光学素子32は、上述したように、オンの駆動信号が送られてくると、入射したレーザ光LBを回折させて反射ミラー38に向かわせることで基板P上に照射するスポット光SPの強度を高レベルにし、オフの駆動信号が送られてくると入射したレーザ光LBを吸収体34側に透過することで基板P上に照射するスポット光SPの強度を低レベル(例えば、ゼロレベル)にする。
詳しく説明すると、まず、制御部90は、アライメント位置情報に基づいて、回転ドラム22の回転による基板Pの搬送によって、設置方位線Le2(描画ラインL1、L3、L5)上にパターン露光を開始する基板P上の位置が到来したか否かを判断する。ここで、アライメント位置情報に基づいて、設置方位線Le1上にパターンの露光を開始する基板P上の位置が搬送されたときの設置方位線Le1における回転ドラム22の回転位置(CT1a、CT1bの平均値)Ac1を把握することができる。このときの回転ドラム22の回転位置Ac1を露光開始位置SAc1と呼ぶ。したがって、制御部90は、回転位置算出部84が算出した設置方位線Le2における回転ドラム22の回転位置(CT2a、CT2bの平均値)Ac2が、露光開始位置SAc1となった場合は、設置方位線Le2上にパターン露光を開始する基板P上の位置が到来したと判断する。なお、描画ユニット駆動制御部CU2、CU4、CU6の制御部90は、回転位置算出部84が算出した設置方位線Le3における回転ドラム22の回転位置(CT3a、CT3bの平均値)Ac3が、露光開始位置SAc1となった場合は、設置方位線Le3(描画ラインL2、L4、L6)上にパターン露光を開始する基板P上の位置が到来したと判断する。
そして、描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5の制御部90は、描画ラインL1、L3、L5上に、パターン露光を開始する基板P上の位置が搬送されたと判断した後、制御対象となる描画ユニットU1、U3、U5から開始信号st1、st3、st5が送られてくると、パターンデータBM1、BM3、BM5の0列目の画素データ列の画素データをクロック信号CLKに同期して0行目から順にAOM駆動部96に出力する。これにより、描画ラインL1、L3、L5に沿って走査されるスポット光SPの強度を0列目の画素データ列に応じて変調することができる。
そして、再び、描画ユニットU1、U3、U5から開始信号st1、st3、st5が送られてくると、描画ユニット駆動制御部CU1、CU3、CU5の制御部90は、パターンデータBM1、BM3、BM5の次の列の画素データ列の画素データをクロック信号CLKに同期して0行目から順にAOM駆動部96に出力する。これにより、描画ラインL1、L3、L5に沿って走査されるスポット光SPの強度を1列目の画素データ列に応じて変調することができる。このように、描画ユニットU1、U3、U5の描画ラインL1、L3、L5上に、パターン露光を開始する基板P上の位置が到来すると、パターンデータBM1、BM3、BM5に応じてスポット光SPの強度が変調されながら、スポット光SPが描画ラインL1、L3、L5に沿って走査されるので、パターンデータBM1、BM3、BM5に応じた光パターンを基板Pに照射することができる。
ここで、ベアリング62aの製造誤差等によって、回転ドラム22が微小に偏心して回転する場合(回転誤差が発生する場合)には、回転ドラム22の回転位置に応じて中心軸AXがY方向に対してΔθ分だけ傾く。基板Pは、回転ドラム22に巻き付いた状態で搬送されるため、中心軸AXがY方向に対して傾くと(回転誤差が発生すると)、基板Pの幅方向に対して描画ラインL1〜L6が傾いてしまう。したがって、この回転誤差により描画ラインL1、L3、L5と描画ラインL2、L4、L6とは、図7に示すように分離してしまう。図7は、基板Pの幅方向に対して描画ラインL1〜L6が傾いた状態を誇張して示したものであるが、実際の傾きは大きくても±2°程度であり、実用上は±1°以内である。図7に示す例では、描画ラインL3、L5と描画ラインL2、L4とは、基板Pの幅方向に関して描画開始位置付近で重複する。逆に、描画ラインL1、L3、L5と描画ラインL2、L4、L6とは、基板Pの幅方向に関して描画終了位置が互いに離間する。このように、回転ドラム22が偏心して回転すると、基板Pの露光領域Wを全描画ラインL1〜L6でカバーすることができない。また、描画ラインL1〜L6が基板Pの幅方向に対して斜めになるので、露光領域Wも回転誤差に応じて歪んだ形状(平行四辺形)になる。回転ドラム22の偏心回転に応じて中心軸AXのY方向に対する傾き、つまり、Δθが変化するので、中心軸AX(Δθ)は周期的な変化特性を有する。なお、図7では、説明をわかり易くするために、回転ドラム22の中心軸AXをY方向に対して誇張して傾けている。
したがって、本第1の実施の形態では、この回転ドラム22の回転によって変化する中心軸AXの周期的な変化特性に応じて露光ヘッド18をXY平面上で回転させることで、回転ドラム22の偏心回転による中心軸AXに対する描画ラインL1〜L6の傾きを補正する。具体的には、制御部82の第2傾き計測部100は、カウンタ回路CT2a、CT2bのカウント値の差分値(CT2aのカウント値−CT2bのカウント値)Dc2、および、カウンタ回路CT3a、CT3bのカウント値の差分値(CT3aのカウント値−CT3bのカウント値)Dc3を算出する。この差分値Dc2は、設置方位線Le2における回転ドラム22の両端部における回転誤差(回転位置の差分値)を示し、差分値Dc3は、設置方位線Le3における回転ドラム22の両端部における回転誤差(回転位置の差分値)を示している。回転ドラム22の偏心回転によって差分値Dc2、Dc3が変動する場合は、図8に示すように、この差分値Dc2、Dc3は周期的に変動する。なお、回転ドラム22が偏心回転しない場合は、差分値Dc2、Dc3はゼロとなる。
第2傾き計測部100は、回転ドラム22を一回転させて算出した差分値Dc2、Dc3の変動から、回転ドラム22の偏心回転によって生じるXY平面における回転ドラム22の中心軸AXの周期的な変化特性に関する第2情報を計測する。この中心軸AXの周期的な変化特性は、具体的には、中心軸AXのY方向に対する傾きの変化特性である。なお、回転ドラム22を複数回回転させて、設置方位線Le2、Le3における回転ドラム22の各回転位置における差分値Dc2、Dc3の平均値を求めることで第2情報を計測するようにしてもよい。この第2情報を予め計測しておき、第2傾き計測部100の図示しない記録媒体に記録させておく。
制御部82の移動制御部102は、第2傾き計測部100が計測した第2情報に基づいて移動機構68を制御することで、移動機構68は、露光ヘッド18をXY平面上で回転させる。これにより、回転ドラム22が偏心回転した場合であっても、偏心回転による影響を排除することができ、描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域の歪みを抑制することができる。つまり、回転ドラム22の中心軸AX(基板Pの幅方向)と、描画ラインL1〜L6の走査方向とを平行にすることができる。第2情報は、回転ドラム22の回転によって周期的に変化する情報なので、露光ヘッド18の回転位置もそれに応じて周期的に変化するように、移動制御部102は、露光ヘッド18を回転させる。
また、ポリゴンミラー46の設置誤差や製造誤差等によって、スポット光SPが走査される描画ラインL1〜L6の各々が、回転ドラム22の中心軸AXに対して独立して傾いている場合がある。したがって、回転ドラム22の偏心回転に応じて露光ヘッド18を回転させたとしても、各描画ユニットU1〜U6の描画ラインL(L1〜L6)の個々の傾きまでは補正することはできない。そのため、各描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域の各々は、長方形とはならずに歪んでしまい(平行四辺形となってしまい)、結果的に露光領域W全体が歪んでしまう。したがって、本第1の実施の形態では、パターンデータを補正することで、描画ユニットU1〜U6の個々の描画ラインL(L1〜L6)の中心軸AXに対する傾きによって生じるパターンが描画される領域の歪みを補正する。
まず、個々の描画ラインL1〜L6の傾きを測定するために、回転ドラム22の表面に、図9に示すようなラインパターンLPを形成しておく。このラインパターンLPは、回転ドラム22の他の表面より反射率が高くなるように形成されている。ラインパターンLPは、中心軸AXに対して所定の傾斜角度αで傾斜し、各描画ユニットU1〜U6によってスポット光SPが走査される基板Pの幅方向に分割された領域毎に形成された第1ラインLP1と、基板Pの長尺方向に沿って延び、基板Pの幅方向に分割された領域毎に形成された第2ラインLP2とを有する。この第2ラインLP2は、基板Pの幅方向に分割された各領域の幅方向における所定位置(例えば、中心位置)を通るように形成されている。なお、この各描画ユニットU1〜U6によってスポット光SPが走査される基板Pの幅方向に分割された領域は、各描画ラインL1〜L6によってパターンが描画される領域である。なお、この第1ラインLP1は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインL1〜L6によってパターンが描画される領域より長いことが好ましい。
そして、回転ドラム22にテスト用の基板Pを巻き付け、各描画ユニットU1〜U6が描画ラインL1〜L6に沿ってスポット光SPを少なくとも2回走査する。テスト用の基板Pは、テンションによる変形が少ない透明の材質で形成され、各描画ユニットU1〜U6が描画ラインL1〜L6に沿ってスポット光SPを走査すると、描画ラインL1〜L6とラインパターンLP(ここでは、例えば反射率の高いアルミ、クロム、銅等の金属膜で形成されている)とが交差する点においては、照射されたスポット光SPが反射する。この反射したスポット光SPは、シリンドリカルレンズ52、f−θレンズ50、反射ミラー48、ポリゴンミラー46を介して、ビームスプリッタ44に入射する。ビームスプリッタ44に入射したスポット光SPは、ビームスプリッタ44を透過して各描画ユニットU1〜U6に設けられた光検出器104(図3、図6参照)に入射する。光検出器104は、入射した光の輝度値を検出する。各描画ユニットU1〜U6の光検出器104が検出した輝度値sr1〜sr6は、各描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6に送られ、各描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6の制御部90は、送られてきた輝度値sr1〜sr6を制御部82に出力する。
制御部82の第1傾き計測部106は、各描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6から送られてきた輝度値sr1〜sr6に基づいて、描画ラインL1〜L6の回転ドラム22の中心軸AXに対する傾きに関する第1情報(描画ラインLの傾斜角度β)を計測する。以下、図10、図11を用いて、描画ラインL1〜L6の回転ドラム22の中心軸AXに対する傾斜角度βの計測について説明する。なお、描画ラインL1〜L6の中心軸AXに対する傾斜角度βの計測の方法は同一なので、描画ラインL1の中心軸AXに対する傾斜角度βの計測について説明する。なお、この傾斜角度βの計測の際には、AOM駆動部96は、テスト用のパターンデータBMに基づいて、描画用光学素子32にオンの駆動信号を出力し続け、移動制御部102は、第2傾き計測部100によって計測された第2情報に基づいて、移動機構68を制御しているものとする。これにより、第1情報の計測時に、回転ドラム22の偏心回転による影響を排除することができる。
図10に示すように、描画ユニットU1から照射されたスポット光SPが描画ラインL1に沿って走査される場合において、その描画ラインL1がラインパターンLPと交差する場合は、その交差点において光検出器104が検出する輝度値sr1は高くなる。具体的には、スポット光SPが描画ラインL1に沿って走査すると、第2ラインLP2と描画ラインL1との交点aと、第1ラインLP1と描画ラインL1との交点bとで、光検出器104が検出した輝度値が高くなる。スポット光SPは、−Y方向側から+Y方向側に向かって描画ラインL1に沿って走査するので、図10に示す例では、光検出器104は、最初に交点aで反射したスポット光SPの輝度値を検出し、その後、交点bで反射したスポット光SPの輝度値を検出する。
その後、一定時間経過後に再びスポット光SPの走査が開始されると、スポット光SPが描画ラインL1によって走査される。次のスポット光SPの走査が開始されるまでに、基板Pは、ΔXuだけ搬送されているので、図11に示すように、新たにスポット光SPが走査される基板P上の描画ラインL1の位置は、スポット光SPが前回走査された基板P上の描画ラインL1の位置からΔXuだけ−X方向にシフトした位置となる。なお、図11においては、前回の描画ラインL1を破線で示すとともに、前回のスポット光SPの走査によって光検出器104が検出した交点bの輝度値を破線で示している。
図11に示すように、新たにスポット光SPが描画ラインL1に沿って走査すると、第1ラインLP1と描画ラインL1との交点cと、第2ラインLP2と描画ラインL1との交点a´とで、光検出器104が検出した輝度値が高くなる。スポット光SPは、−Y方向側から+Y方向側に向かって描画ラインL1に沿って走査するので、図11に示す例では、光検出器104は、最初に交点cで反射したスポット光SPの輝度値を検出し、その後、交点a´で反射したスポット光SPの輝度値を検出する。ここで、第2ラインLP2は、基板Pの長尺方向に沿って延びているので、交点aと交点a´とは基板Pの幅方向(中心軸AXの軸方向)において同じ位置となる。描画ラインL1の傾斜角度βを、図11から数式(1)で表すことができる。
β=arctan(ΔX2/ΔYu) …(1)
このΔYuは、スポット光SPを2回走査したときに、スポット光SPが第1ラインLP1に当って反射するタイミングの差に応じた距離を示している。つまり、1回目の走査開始から、第1ラインLP1に当って反射したスポット光SPを光検出器104が検出したタイミングと、2回目の走査開始から、第1ラインLP1に当って反射したスポット光SPを光検出器104が検出したタイミングとの差に応じた距離を示している。詳しくは、ΔYuは、交点bと交点cとの中心軸AX方向における距離を示す。このΔYuは、ポリゴンミラー46の回転数(スポット光SPの走査速度)と、交点cから交点bまでスポット光SPが走査されるまでに照射されたスポット光SPの数(クロック信号CLKのカウント値)とによって求めることができる。図11に示す例では、ΔYuは、交点aと交点bとの中心軸AX方向における距離と、交点cと交点a´との中心軸AX方向における距離との和となる。したがって、交点cから交点bまでスポット光SPが走査されるまでに照射されたスポット光SPの数は、交点a〜交点bまでスポット光SPが走査されるまでに照射されたスポット光SPの数と、交点c〜交点a´までスポット光SPが走査されるまでに照射されたスポット光SPの数との和となる。
また、ΔX2を、数式(2)で表すことができる。
ΔX2=ΔXu−ΔX1
⇔ΔX2=ΔXu−ΔYu×tanα …(2)
したがって、数式(2)を数式(1)に代入することで、傾斜角度βは、数式(3)で表すことができる。
β=arctan(ΔXu/ΔYu−tanα) …(3)
このように、第1傾き計測部106は、ΔYu、ΔXu、および、既知の傾斜角度αとから数式(3)を用いて描画ラインL1の傾斜角度βを求めることができる。なお、ΔXuは、回転ドラム22の回転速度と、1回目の走査開始から2回目の走査開始までの時間とによって求めることができる。
制御部82のパターンデータ補正部108は、パターンデータ記憶部110に記憶されている各描画ユニットU1〜U6の基準となるパターンデータ(基準パターンデータ)BMs1〜BMs6を第1傾き計測部106が計測した描画ラインL1〜L6の傾斜角度βに基づいて補正する。この補正後のパターンデータが基準パターンデータBMs1〜BMs6となる。そして、パターンデータ補正部108は、補正したパターンデータBMs1〜BMs6を、パターンデータBM1〜BM6として描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6のメモリ部94に記憶させる。なお、傾斜角度βが0度の場合は、パターンデータ補正部108は、パターンデータBMs1〜BMs6を補正せずにそのままパターンデータBMs1〜BMs6をパターンデータBM1〜BM6としてメモリ部94に記憶する。
描画ラインL1〜L6が中心軸AXに対して傾斜角度βで傾斜すると、つまり、描画ラインL1〜L6が中心軸AXに対して平行になっていないと、各描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域は、平行四辺形となってしまう。図12Aは、パターンデータ記憶部110に記憶されているパターンデータBMs1の概念図を示している。図12Aに示すように、パターンデータBMs1は、スポット光SPの走査方向(垂直方向)に沿った方向を行とし、基板Pの搬送方向(水平方向)に沿った方向を列とするように2次元に分解された複数の画素データで構成されるマトリクス状のデータである。描画ラインL1が中心軸AXに対して傾斜角度βで傾いている場合は、このパターンデータBMs1に基づいてパターンを描画しても、描画されるパターンの領域(露光領域W)は、図12Bに示すように平行四辺形の形状となってしまう。
したがって、描画ラインL1〜L6の中心軸AXに対して傾いている場合であっても、各描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域を四角形にするために、各描画ラインL1〜L6の傾斜角度βに応じてパターンデータBMs1〜BMs6を補正する。図13Aは、補正後のパターンデータBMs1の概念図を示している。描画ラインL1の傾斜角度βに応じて、パターンデータBMs1の画素データを行単位で列方向(水平方向)にシフトさせることで、図12Aに示すようにパターンデータBMs1の行方向に配置された画素データの方向を、図13Aに示すように、行方向(垂直方向)に対して−βの角度で傾斜させる。これにより、図13Bに示すように、描画ラインL1が中心軸AXに対して傾斜角度βで傾斜している場合であっても、描画されるパターンの領域(露光領域W)を略長方形にすることができる。なお、各描画ユニットU1〜U6の描画用光学素子32は、パターンデータBMs1〜BMs6(BM1〜BM6)に応じてオン/オフの駆動信号が入力されるが、パターンデータBMs1の画素データを行単位で列方向にシフトすることで、行方向(垂直方向)の一部に画素データがない部分が存在する。この画素データが存在しない部分については、オフの駆動信号が描画用光学素子32に入力される。つまり、描画用光学素子32には、パターンデータBMs1の画素データが「1」の場合にオンの駆動信号が入力されるが、それ以外はオフの駆動信号が入力される。
このように、第1傾き計測部106が、ポリゴンミラー46等の設置誤差、製造誤差等によって生じる各描画ラインL1〜L6の個々の傾きに関する第1情報(傾斜角度β)に応じて、パターンデータBMs1〜BMs6を補正し、補正後のパターンデータBMs1〜BMs6をパターンデータBM1〜BM6としてメモリ部94に記憶するので、各描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域の歪みを抑制することができる。
以上のように、本第1の実施の形態においては、まず、回転ドラム22の偏心回転によって生じる中心軸AXの周期的な変化特性に関する第2情報に基づいて、露光ヘッド18を回転させることで、回転ドラム22の偏心回転による影響を排除することができ、描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域の歪みを抑制することができる。また、露光ヘッド18を第2情報に基づいて回転させた状態で、各描画ラインL1〜L6の傾きに関する第1情報を計測し、該計測した第1情報に基づいてパターンデータBMs1〜BMs6を補正してパターンデータBM1〜BM6を生成する。これにより、生成されたパターンデータBM1〜BM6を用いて、描画ラインL1〜L6に沿って走査されるスポット光SPの強度を変調することで、描画ラインL1〜L6の各々が中心軸AXに対して独立して傾いている場合であっても、描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域の歪みを抑制することができ、露光精度の低下を抑えることができる。
なお、描画ラインL1〜L6の各々が基板Pの幅方向に対して傾いている場合は、図7に示すように、描画ラインL1〜L6の継ぎ部分が重複したり、離れたりするので、各描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6は、描画ラインL1〜L6がY方向において継ぎ合わされるように、描画ラインL1〜L6の相対的な傾きに応じて、描画ラインL1〜L6の位置を走査方向にシフトする。つまり、描画データ列に応じたスポット光SPの描画開始タイミングを変更する。この描画ラインL1〜L6の相対的な傾きは、第1傾き計測部106が計測した各描画ラインL1の傾斜角度βに基づいて求めることができる。
描画ラインLを走査方向にシフトする方法の例としては、例えば、各描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6の制御部90が、開始信号st1〜st6を受信してから、描画データ列の画素データをAOM駆動部96に出力するタイミングを変える。つまり、描画データ列の画素データをAOM駆動部96に出力するタイミングを遅くする、または、早くすることで、描画ラインL1〜L6の位置を走査方向にシフトする。開始信号st1〜st6を受信してから描画データ列の画素データをAOM駆動部96に出力するタイミング(描画開始タイミング)を遅くすることで、描画ラインL1を+Y方向側にシフトすることができ、逆に描画開始タイミングを早めることで、描画ラインL1を−Y方向側にシフトすることができる。
また、描画ラインLを走査方向にシフトする方法の別の例としては、描画ラインLを走査方向にシフトしたのと同様の結果を得ることができるように、パターンデータBMs1〜BMs6を補正する手法がある。つまり、パターンデータ補正部108が、第1傾き計測部106が計測した描画ラインL1〜L6の傾きに応じてパターンデータBMs1〜BMs6を補正する。この補正後のパターンデータBM1〜BM6は、メモリ部94に記憶される。この補正されたパターンデータBMs1〜BMs6によって、各描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域を略長方形にするとともに、各描画ラインL1〜L6を基板Pの幅方向において継ぎ合わせることができる(各描画ユニットU1〜U6によってパターンが描画される領域を継ぎ合わせることができる)。図13Aに示す例では、パターンデータBMsの画素データを行単位で列方向(水平方向)にシフトさせるようにしたが、この描画ラインL1〜L6が基板Pの幅方向において継ぎ合わせるようにするパターンデータBMsの補正は、図示しないが、パターンデータBMsの画素データを列単位で行方向(垂直方向)にシフトさせる。これにより、描画ラインL1〜L6を基板Pの幅方向において継ぎ合わせることができる。
[変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)上記第1の実施の形態では、第2傾き計測部100が計測した第2情報に基づいて、露光ヘッド18を回転させながら、つまり、回転ドラム22の偏心回転による影響を排除しながら、描画ラインL1〜L6の中心軸AXに対する傾斜角度β(第1情報)を計測したが、変形例1では、回転ドラム22の偏心回転による影響を排除せずに、第1情報を直接計測してもよい。この場合は、第2傾き計測部100は、エンコーダヘッドEN2a、EN2b、EN3a、EN3bを用いずに、第1傾き計測部106が計測した第1情報を用いて、第2情報を計測する。
そのため本変形例1では、回転ドラム22が偏心回転している場合は、第1傾き計測部106によって計測される描画ラインL1〜L6の中心軸AXに対する傾斜角度βは、回転ドラム22の回転位置に応じて周期的に変動することになる。したがって、第2傾き計測部100は、回転ドラム22の各回転位置における描画ラインL1〜L6の傾斜角度β(第1情報)に基づいて、各描画ラインL1〜L6の周期的に変化する傾斜角度βの変化特性を算出することで、回転ドラム22の回転によって変化する中心軸AXの周期的な変化特性に関する第2情報を計測する。本変形例1においては、各描画ラインL1〜L6の周期的に変化する傾斜角度βの変化特性から、回転ドラム22の回転によって変化する中心軸AXの周期的な変化特性に関する第2情報を計測するので、回転ドラム22の両端側の回転位置から第2情報を計測する上記第1の実施の形態に比べ、より精度よく第2情報を計測することができる。
そして、移動制御部102は、第2傾き計測部100が計測した第2情報に基づいて移動機構68を制御することで、露光ヘッド18の回転位置が周期的に変化するように、露光ヘッド18を回転させる。また、パターンデータ補正部108は、第1傾き計測部106が計測した回転ドラム22の各回転位置における描画ラインL1〜L6の中心軸AXに対する傾斜角度βから、周期的に変化する傾斜角度βの変化特性を除去した傾斜角度β´を算出し、該傾斜角度β´に基づいて、パターンデータBMs1〜BMs6を補正する。この傾斜角度β´は、回転ドラム22の偏心回転によって影響されない、ポリゴンミラー46等の設置誤差、製造誤差等によって生じる個々の描画ユニットU1〜U6の描画ラインL1〜L6の傾斜角度である。
なお、第1情報から第2情報を求め、該第2情報に基づいて露光ヘッド18の回転位置が周期的に変化するように露光ヘッド18を回転させたが、露光ヘッド18を回転させなくてもよい。この場合は、パターンデータBMs1〜BMs6を傾斜角度βに基づいて補正することで、回転ドラム22の偏心回転、および、描画ラインL1〜L6の個々の傾斜角度β´の影響を排除してもよい。この場合は、回転ドラム22の各回転位置におけるパターンデータBMs1〜BMs6が生成されることになり、回転ドラム22の各回転位置におけるパターンデータBMs1〜BMs6が、回転ドラム22の各回転位置におけるパターンデータBM1〜BM6としてメモリ部94に記憶される。
(変形例2)上記第1の実施の形態においては、回転ドラム22の偏心回転によって生じるXY平面における回転ドラム22の中心軸AXの周期的な変化特性に関する第2情報に基づいて露光ヘッド18(第2光学定盤70)を回転させ、各描画ラインL1〜L6の個々の傾斜角度βに基づいてパターンデータBMs1〜BMs6を補正してパターンデータBM1〜BM6を生成するようにしたが、第1情報を考慮して、回転ドラム22を回転させるようにしてもよい。例えば、各描画ラインL1〜L6の傾斜角度βの平均値と第2情報とに基づいて、露光ヘッド18を回転させるようにしてもよい。これにより、各描画ラインL1〜L6の傾斜角度βに基づいてパターンデータBMs1〜BMs6を補正する場合に比べ、パターンデータBMs1〜BMs6の補正量を低減することが可能となる。また、複数の描画ラインL1〜L6のうち、例えば、傾斜角度βが一致する幾つかの描画ラインLの傾きが補正されるように、傾きが一致する傾斜角度βと第2情報とに基づいて露光ヘッド18を回転させてもよい。これにより、傾斜角度βが一致した幾つかの描画ラインLは、中心軸AXと平行となるので、それに対応した描画ユニットUのパターンデータBMsの補正を不要とすることができる。
(変形例3)上記第1の実施の形態では、回転ドラム22の表面にラインパターンLPを形成したが、図14に示すように、テスト用の基板Pの表面にラインパターンLPを形成してもよい。この場合は、第1ラインLP1は、基板Pの幅方向に対して傾斜角度αで傾斜している。この場合は、テスト用の基板Pの幅方向が回転ドラム22の中心軸AXに対して傾きをもって、テスト用の基板Pが回転ドラム22に巻き付けられる虞があり、テスト用の基板Pの幅方向が回転ドラム22の中心軸AXに対して傾いている場合は、各描画ラインL1〜L6の中心軸AXに対する傾斜角度αを求めることはできない。しかしながら、このような場合であっても、各描画ラインL1〜L6の相対的な傾きを求めることができる。したがって、この相対的な傾きに基づいてパターンデータBMs1〜BMs6を補正することで、各描画ユニットU1〜U6によってパターンが露光される領域の形状を揃えることができる。
(変形例4)上記第1の実施の形態では、ラインパターンLPを用いて各描画ラインL1〜L6の傾斜角度βを算出するようにしたが、プロセス装置PR2によるメッキ処理、または、現像・エッチング処理によって形成されたパターンに基づいて、描画ラインL1〜L6の相互の相対的な傾きに関する第1情報を計測してもよい。
具体的には、図15に示すように、デバイス製造システム10は、描画ラインL1〜L6の継ぎ部分(端部分)の位置を撮像するアライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa7)を有する。このアライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa7)は、プロセス装置PR2によってメッキ処理、または、現像・エッチング処理が行われたテスト用の基板Pを撮像することができる位置に設けられている。なお、描画ラインL1〜L6の継ぎ部分をわかり易くするため、図15においては、描画ラインL1〜L6を便宜的に破線で図示している。
各描画ユニットU1〜U6は、テストパターンに応じたパターンデータBMt1〜BMt6に基づいて強度変調されるスポット光SPを描画ラインL1〜L6に沿って走査することで、テスト用の基板Pの表面にテストパターンを描画する。その後、プロセス装置PR2によるメッキ処理、または、現像・エッチング処理によってテストパターンを形成する。このテストパターンに応じたパターンデータBMt1〜BMt6は、少なくとも描画ラインL1〜L6の継ぎ付近において、描画されるパターンが十字の形状を有するように設定され、且つ、各描画ユニットU1〜U6によってパターンの描画が行われる基板P上の位置が同じ位置となるように設定されている。
図15の参照符号250は、アライメント顕微鏡AMa7の観察領域を拡大したものであり、参照符号252は、アライメント顕微鏡AMa6の観察領域を拡大したものであり、参照符号254は、アライメント顕微鏡AMa5の観察領域を拡大したものである。また、観察領域250内のパターン256は、描画ラインL6の+Y方向側の端部において形成されたパターンを示している。観察領域252内のパターン258は、描画ラインL6の−Y方向側の端部(継ぎ部分)において形成されたパターンを示し、パターン260は、描画ラインL5の+Y方向側の端部(継ぎ部分)において形成されたパターンを示している。観察領域254内のパターン262は、描画ラインL5の−Y方向側の端部(継ぎ部分)において形成されたパターンを示しており、パターン264は、描画ラインL4の+Y方向側の端部(継ぎ部分)において形成されたパターンを示している。このパターン256〜264は、いずれも十字状の形状を有する。
そして、第1傾き計測部106は、アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa7)が撮像した観察領域の画像データに基づいて、各描画ラインL1〜L6の継ぎ部分のテストパターンの形状を認識することで、描画ラインL1〜L6の相対的な傾きに関する第1情報を計測する。具体的には、描画ラインL6の+Y方向側の端部で認識したパターン256の十字部分の交点と、描画ラインL6の−Y方向側の端部で認識したパターン258の十字部分の交点とに基づいて、描画ラインL6の傾きを求めることができる。また、描画ラインL5の+Y方向側の端部で認識したパターン260の十字部分の交点と、描画ラインL5の−Y方向側の端部で認識したパターン262の十字部分の交点とに基づいて、描画ラインL5の傾きを求めることができる。他の描画ラインLの傾きについても同様に求めることができる。この求めた各描画ラインL1〜L6の傾きは、絶対的な傾き(例えば、中心軸AXに対する傾き)ではないため、求めた各描画ラインL1〜L6の傾きに基づいて、描画ラインL1〜L6の相互の相対的な傾きを求める。この相対的な傾きに基づいてパターンデータBMs1〜BMs6を補正することで、各描画ユニットU1〜U6によってパターンが露光される領域の形状を揃えることができる。
なお、テスト用の基板Pの表面に、フォトクロミック層が塗布されている場合は、アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa7)を、露光ヘッド18に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)であって、露光ヘッド18の近くに配置してもよい。フォトクロミック層は、レーザ光LB(スポット光SP)が照射されると、そのコントラストが変化する。したがって、露光ヘッド18の各描画ユニットU1〜U6によって描画されたパターンをアライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa7)で撮像することで、描画されたパターンを画像認識によって認識することができるからである。
(変形例5)上記第1の実施の形態では、ラインパターンLPは、複数の第1ラインLP1および第2ラインLP2とで構成されていたが、ラインパターンLPは、複数の第1ラインLP1によって構成してもよい。つまり、第2ラインLP2を設けなくてもよい。第2ラインLP2がなくても、ΔYuは求めることができるが、ΔYuを求める際の基準となる位置がないため、ΔYuがテスト用の基板Pの搬送状態(テスト用の基板PのX方向に対して傾きをもって搬送されている等)によって、ΔYuが変化してしまうが、各描画ラインL1〜L6の相互の相対的な傾きは求めることができる。
(変形例6)上記第1の実施の形態では、1画素に対して1つのスポット光SPが照射されるものとして説明したが、主走査方向および副走査方向に沿って2つのスポット光SPが1画素に対して照射されるように設定してもよい。この場合は、行方向の画素データの数は、描画ラインLに沿って照射されるスポット光SPの数の1/2となる。したがって、描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6の制御部90は、1列分の画素データ(画素データ列)を、クロック信号CLKを1/2に分周したクロック信号CPに同期して0行目から順にAOM駆動部96に出力する。また、列方向の画素データの数は、副走査方向に沿って照射されるスポット光SPの数の1/2となるため、描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6の制御部90は、開始信号(原点信号)st1〜st6が2回発生する度に、出力するパターンデータBM1〜BM6の画素データ列を列方向にシフトする。
具体的には、描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6の制御部90は、開始信号st1〜st6が描画ユニットU1〜U6から送られてくると、例えば、0列目の画素データ列の画素データをクロック信号CPに同期して0行目から順にAOM駆動部96に出力する。そして、再び開始信号st1〜st6が描画ユニットU1〜U6から送られてくると、再び、0列目の画素データ列の画素データをクロック信号CPに同期して0行目から順にAOM駆動部96に出力する。その後、開始信号st1〜st6が描画ユニットU1〜U6から送られてくると、出力する列をシフトして1列目の画素データ列の画素データをクロック信号CPに同期して0行目から順にAOM駆動部96に出力する。このようにして、開始信号st1〜st6の発生に応じて出力される画素データ列の列は、0列目→0列目→1列目→1列目→2列目→2列目→3列目→・・・・、というように、同じ列の画素データ列が2回出力される度に、出力する画素データ列を列方向にシフトする。
(変形例7)上記変形例1〜6を、矛盾が生じない範囲で相互に組み合わせる態様も可能である。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。図16は、第2の実施の形態の露光装置EXを示す図である。なお、上記第1の実施の形態(変形例も含む)と同一の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。また、本第2の実施の形態を説明するのに必要のない構成についてはその図示を省略している。
供給ロールFRから供給された基板Pは、ローラR11、R12、R13、R14の順に長尺方向に沿って架け渡されて搬送された後、回転ドラム22の外周面の約半周面に亘って巻き付けられ、ローラR15を介して、プロセス装置PR2に送られる。供給ロールFRの回転軸は、Y方向と平行であり、Y方向に移動可能な駆動部200に設けられている。駆動部200は、サーボモータ等を含む駆動制御部202によってY方向にミリオーダー以下の精度、例えば、±0.5mm程度の精度で位置決めされる。
駆動制御部202は、ローラR11、R12の間に設けられた基板Pの幅方向の端部(エッジ)のY方向の位置を計測するエッジセンサ(端部検出部)204からの信号に基づいて、駆動部200を制御することで、基板Pが回転ドラム22に支持される直前に、基板Pを幅方向に位置決めする。この供給ロールFR、駆動部200、駆動制御部202、エッジセンサ204、および、ローラR11、R12は、供給ロールFRと一体型のEPC(エッジポジションコントローラ)機構を構成する。なお、本第2の実施の形態では、供給ロールFRと一体型のEPC機構としたが、上記第1の実施の形態のように、供給ロールFRとEPC機構とを別体にしたものであってもよい。この場合には、駆動部200には、供給ロールFRの代わりに調整ローラが設けられる。該調整ローラには、所定のテンションが付与された状態で供給ロールFRから供給された基板Pが掛けられ、駆動部200によって調整ローラがY方向に移動する。EPC機構による位置決め精度(±0.5mm)は、ミクロンオーダーのパターニングを行う露光装置(描画装置)EXにおいては、それほど高くはなく、供給ロールFRにおける基板Pの巻きムラが大きい場合には、回転ドラム22に巻き掛けられる基板PがY方向に最大で±500μm程度シフトすることを意味する。なお、ローラR13は、テンション調整用のローラであり、基板Pが回転ドラム22に掛かる前に基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させる。このローラR13は、+Z方向に付勢されている。
回転ドラム22の上方には、図示しない本体フレームによって支持される第1光学定盤206が設けられており、第2光学定盤208は、ベアリング構造210を介して第1光学定盤206上に設けられている。この第1光学定盤206および第2光学定盤208の盤面は互いに平行となっている。この第2光学定盤208は、XY平面において、第1光学定盤206に対して微小移動が可能である。第2光学定盤208は、描画ユニットU1、U3、U5を回転ドラム22の中心軸AXに対して搬送方向の上流側(−X方向側)で、且つ、基板PのY方向に沿って並列に支持する。第2光学定盤208は、描画ユニットU2、U4、U6を回転ドラム22の中心軸AXに対して搬送方向の下流側(+X方向側)で、且つ、基板PのY方向に沿って並列に支持する。第2光学定盤208の中央部には、矩形状の開口部208aが設けられ、この開口部208aを貫通して、複数の描画ユニットU1〜U6のビーム射出部分Uaが回転ドラム22に支持された基板Pに向けられる。なお、開口部208aの下方の第1光学定盤206には、回転ドラム22と干渉を避けるために設けられた開口部206aが設けられている。
第2光学定盤208のX方向の両端部には、回転軸Iを中心に第2光学定盤208を回転させたり、回転軸Iを中心に、第1光学定盤206に対して第2光学定盤208をY方向に微動させたりする微動用駆動部212A、212Bが設けられる。
図17は、第2光学定盤208と、微動用駆動部212A、212BとのXY平面での配置構成を示す図である。第2光学定盤208の中央の開口部208aの直下には、回転ドラム22が位置する。開口部208aに、複数の描画ユニットU1〜U6のビーム射出部分Uaが千鳥状に配置されるように、複数の描画ユニットU1〜U6が第2光学定盤208に設けられている。これにより、複数の描画ラインL1〜L6が回転ドラム22の外周面上に形成される。回転軸Iは、中心軸AXと交差するように設定されるとともに、複数の描画ラインL1〜L6の幾何学的な位置の重心位置に設定されている。
第2光学定盤208の−X方向側の端部側と+X方向側の端部側には、X方向に突出したアーム部214A、214Bが固設される。アーム部214A、214BのY方向の中心位置を結ぶ線は、回転軸Iを通る(回転軸Iと交差する)ように設定されている。アーム部214A、214Bを、それぞれ微動用駆動部212A、212BによってY方向に微動することで、第2光学定盤208をY方向に並進微動させたり、回転軸Iの回りに微小回転させたりすることができる。
微動用駆動部212Aは、第2光学定盤208の−X方向の端部近傍で、Y方向の端部の両側部と、第1光学定盤206に結合した固定部216a、216bとの間に設けられるL字型のフレクチャー(弾性部材)218a、218bを有する。微動用駆動部212Bも、同様に、第2光学定盤208の+X方向の端部近傍で、Y方向の端部の両側部と、第1光学定盤206に結合した固定部216a、216bとの間に設けられるL字型のフレクチャー218a、218bを有する。L字型のフレクチャー218a、218bは、剛性の高い金属で作られ、X方向とY方向の各々に延びた部分の少なくとも一部は、XY面内での厚みが、Z方向の厚みに比べ薄い。そのため、L字型のフレクチャー218a、218bは、Z方向の剛性が一番高く、XY面内での剛性は相対的に低くなっている。さらに、L字型のフレクチャー218a、218bのY方向に延びた腕部の方が、X方向に延びた腕部よりも短く設定されているので、X方向の剛性の方がY方向の剛性よりも高くなっている。
このようなL字型のフレクチャー218a、218bの2対を介して、第2光学定盤208の四隅を第1光学定盤206に結合した固定部216a、216bによって支持すると、第2光学定盤208のX方向の両側は、Y方向にベンディング可能な平行板バネによるリンク機構で支持されたことになり、Y方向への精密な並進運動、および、回転軸Iの回りの精密な微小回転が可能となる。なお、L字型のフレクチャー218a、218bは、腕部の厚みを部分的に薄くする以外に、厚みは変えずに複数の切り込みを設けた構造であってもよい。
また、微動用駆動部212Aは、第2光学定盤208のアーム部214Aの先端部分をY方向に直進微動させるアクチュエータ220Aと、アーム部214Aの先端部分をアクチュエータ220A側に付勢するバネ222Aとを有する。このアクチュエータ220Aの固定子部分とバネ222Aの他端側とは、第1光学定盤206側に固定される。アクチュエータ220Aは、電磁駆動方式のボイスコイルモータやリニアモータ、または、通常の回転モータの回転力をウォームギアやラック&ピニオンギア等を介して直線駆動力に変換するタイプ、若しくは、ピエゾ素子の伸縮を利用したピエゾモータ等で構成される。
微動用駆動部212Bも、アクチュエータ220Aおよびバネ222Aと同じ構成のアクチュエータ220Bおよびバネ222Bを有し、アクチュエータ220Bは、第2光学定盤208のアーム部214Bの先端部分をY方向に直進微動させる。但し、アクチュエータ220Bおよびバネ222Bは、回転軸Iの位置に関してアクチュエータ220Aおよびバネ222Aと点対称に配置されている。
アクチュエータ220A、220Bの駆動によって、アーム部214A、214Bの両方をともに+Y方向(または−Y方向)に同量だけ移動させると、第2光学定盤208は、+Y方向(または−Y方向)に平行移動する。また、アクチュエータ220A、220Bの駆動によって、アーム部214A、214Bの各々のY方向の移動量を異ならせて、アーム部214A、214Bを移動させると、回転軸Iを中心として第2光学定盤208を回転移動させることができる。
例えば、描画ユニットU1〜U6の各々による描画ラインL1〜L6のXY面内(回転ドラム22の外周面内)での平均的な傾きが補正されるように、第2光学定盤208を回転補正しておくことができる。この場合、描画ラインL1〜L6の各々の中心軸AXに対する傾き誤差が総じて低減される可能性もあり、個々の描画ユニットU1〜U6が扱うパターンデータBMs1〜BMs6に対する傾き補正量を小さくすることができる。或いは、描画ラインL1〜L6のうちで、傾きの傾向が揃っている幾つかの描画ラインLの傾きが補正されるように、第2光学定盤208を回転して補正してもよい。この場合、描画ラインL1〜L6の幾つかは、第2光学定盤208の微小回転による補正によって中心軸AXと平行になるように補正されるため、それに対応した描画ユニットUのパターンデータBMsの描画ラインLの傾きに対する補正を不要とすることができる。
また、後述するように、前記EPC機構によって基板PのY方向位置を補正する際の応答遅れに起因して発生する露光位置(描画ラインL1〜L6の位置)での基板Pの蛇行(±500μm以下)に対して、第2光学定盤208を所定の回転角度位置に維持したまま、第2光学定盤208をY方向に微小シフトすることができるため、基板Pの蛇行に追従したパターン描画が可能となる。なお、上記第1の実施の形態の移動機構68を、ベアリング構造210、および、微動用駆動部212A、212Bによって構成してもよい。
図18は、基板Pに対する最初のパターン描画工程において、蛇行して搬送される基板Pを誇張して表した図である。図16で示したように、エッジセンサ204の検出結果に基づいて駆動部200によって基板PのY方向の位置決めが行われる。そのため、例えば、供給ロールFRに巻かれた基板Pに大きなムラが無ければ、駆動部200は殆ど動かず、基板Pは回転ドラム22の外周面上でY方向に関して常に同じ位置で巻き付けていく。
しかしながら、供給ロールFR中で大きなムラが発生している基板Pの部分がエッジセンサ204の位置まで搬送されると、エッジセンサ204から基板PのY方向の大きな変位に対応した大きな誤差信号が出力される。その誤差信号に応答して、駆動部200は、エッジセンサ204からの誤差信号が小さくなるように、供給ロールFRをY方向に移動させる。その際、駆動部200を急峻に移動させると、基板Pと摩擦接触しているローラR11と供給ロールFRとの間に基板Pの幅方向の応力が生じ、基板Pにシワが発生したりする。そのため、駆動部200のY方向の移動は、エッジセンサ204からの誤差信号の変化に対応する応答性を制限し、緩やかなものとしている。したがって、エッジセンサ204の位置で、基板PのY方向の大きな変位が検出されても、駆動部200は、それを直ちには補正せずに、基板Pの長尺方向の所定の搬送量に亘って徐々に補正する。つまり、応答遅れを持って基板PのY方向の位置を補正している。
図18において、基板Pは、矢印で示した送り方向に沿って一定の速度で移動し、その間に、露光ヘッド18(描画ユニットU1〜U6の各々)によって、長尺方向に沿って矩形状の露光領域W(W1、W2、W3、W4、W5、・・・)が順次基板P上に描画される。その間、基板Pの位置Haから、両端のエッジEa、EbのY方向の位置変化を検出するエッジセンサ204が大きな誤差信号を発生し始めたとする。その場合、それを補正すべく駆動部200が働くが、応答遅れのために位置Haの後ろの露光領域W2と露光領域W3との間付近で、基板Pは回転ドラム22上で+Y方向に最大ΔYssだけ変位(蛇行)して巻き付き、さらにその後も、緩やかに蛇行が補正されて、位置Hbで基板Pは回転ドラム22上でY方向の初期位置となるように巻き付く。このように、供給ロールFRの巻きムラ等によって、大きな蛇行が発生する場合でも、前記EPC機構によって最大の変位ΔYssは、0.5mm以下に抑えられる。
そして、基板Pに対する最初のパターン描画工程(1st露光工程)では、基板P上の各露光領域Wに第1層用のパターン(電極、配線等)が描画される。また、1st露光工程では、各露光領域Wの幅方向の両側にアライメントマークKs1、Ks2が、基板Pの長尺方向に沿って並んだ露光領域Wと露光領域Wとの間で、且つ、基板Pの幅方向中央にアライメントマークKs3が描画される。
1st露光工程では、回転ドラム22の回転精度(偏心、軸方向のブレ)と描画ユニットU1〜U6の各々の描画精度(継ぎ精度、傾斜補正精度等)を頼りに、パターン露光とアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の露光とが行われる。そのため、パターンが露光される露光領域WとアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、X方向に直線的に整列するように基板P上に露光される。この1st露光工程においては、上記第1の実施の形態(変形例も含む)で説明した方法によって、回転ドラム22の偏心回転、および、各描画ラインL1〜L6の個々の傾きによる影響は排除されている。なお、回転ドラム22が偏心して回転しておらず、描画ラインL1〜L6の中心軸AXに対する傾きまたは相対的な傾きが発生していない場合は、露光ヘッド18の回転、パターンデータBMs1〜BMs6の補正は行われていない。
図18に示すように基板Pが蛇行しながら搬送された場合は、露光領域WとアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、基板Pの幅方向の中心線CAに対して、Y方向にずれたものとなる。特に、基板Pの蛇行が大きかった部分に位置する露光領域W2、W3、W4では、露光領域Wの中心点Sc2、Sc3、Sc4のY方向の位置が中心線CAに対してばらつくとともに、露光領域W2、W3、W4の外形が中心線CAに対して僅かに傾いた状態で露光される。
図19は、基板Pに対する2回目のパターン描画工程において、図18に示す基板Pの蛇行搬送の下でパターンが露光された基板Pを真っ直ぐに(蛇行しないで)搬送したときに、1st露光工程において、パターンが露光された露光領域Wの配置や変形の誤差を示す図である。基板Pに対する2回目のパターン描画工程(2nd露光工程)では、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)によって、基板P上のアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を逐次検出して、描画位置(描画ラインL1〜L6)におけるシート基板PのX方向(長尺方向)とY方向との各位置誤差ΔXp、ΔYpと残留回転誤差Δθp(基板Pの幅方向の中心線CAと直交するY方向の線分に対する描画ラインL1〜L6の各々の傾き誤差)とをミクロンオーダーで計測してアライメント位置情報として生成される。そのため、図19に示すように、露光領域W2〜W4の位置や形状が蛇行の影響で比較的大きく変形した場合でも、それらの誤差ΔXp、ΔYp、Δθpに基づいて、描画ユニットU1〜U6の各々の描画ラインL1〜L6によって描画されるパターンのパターンデータや描画開始タイミングを補正することで、基板P上に既に形成された第1層用のパターンの上に新たな第2層用のパターンを高い重ね合わせ精度で露光することができる。
しかしながら、露光領域W2〜W4の位置や形状の変形が大きいと、その補正のための処理、特にパターンデータのソフトウェアによる修正処理に時間がかかることがあり、基板Pの搬送速度(送り速度)が制限され、低速にする必要が生じる。また、露光領域W2〜W4の形状の変形が大きいと、1つの露光領域W内の全範囲で一様な重ね合わせ精度を確保することができず、重ね合わせ精度が部分的に許容範囲から外れたり、或いは、パターンデータや描画開始タイミングの補正可能範囲を超えてしまう場合もある。
そこで、本第2の実施の形態においては、エッジセンサ204等からの誤差信号の変化を、クロック信号CLK、或いは回転ドラム22の回転位置を高精度に計測するエンコーダシステムからの計測信号(基板Pの搬送速度を示す信号)に応答して逐次サンプリングし、1st露光工程の際にEPC機構による補正によって生じる蛇行走行の状態(図18参照)をモニターする。そして、基板Pがエッジセンサ204の位置から回転ドラム22上の描画ラインL1〜L6の位置(描画位置)、または、回転ドラム22上のアライメント顕微鏡AMによる観察領域Vwの位置までに送られる基板Pの長さ(搬送長)と、基板Pの送り速度とによって決まる所定の遅れ時間を設定する。そして、その遅れ時間の後でモニターされた蛇行状態に応じて、微動用駆動部212A、212Bの各アクチュエータ220A、220Bを制御して、第2光学定盤208をY方向に変位させるとともに、回転軸Iを中心に微小回転させる。この搬送長は、既知であり、基板Pの送り速度は、回転位置算出部84が算出した各設置方位線Le1〜Le3における回転ドラム22の回転位置によって求めることができる。
図20は、基板Pに対する最初のパターン描画工程において、図18で示した蛇行状態と同じ蛇行状態で基板Pが搬送された場合に、第2光学定盤208のY方向への微動と微小回転とによって、基板P上に露光されたパターンの露光領域W´(W´1〜W´5)を示す図である。図20に示すように、基板Pの蛇行に応じて第2光学定盤208を微動させて、露光領域W´1〜W´5の位置や回転の状態を補正すると、蛇行部分に位置する露光領域W´2、W´3、W´4の中心点Sc2、Sc3、Sc4を、基板Pの中心線CAから大きくずれないように補正することができる。さらに、蛇行走行による基板Pの部分的なX方向に対する傾き誤差に対応して、露光領域W´2、W´3、W´4を微小回転した状態で配置できる。エッジセンサ204が検出した誤差信号の変化に応じて、移動制御部102は、微動用駆動部212A、212Bを制御し、パターンデータ補正部108は、各描画ユニット駆動制御部CU1〜CU6のメモリ部94に記憶されているパターンデータBM1〜BM6を生成する。
なお、1st露光工程時に描画されるアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)のパターンデータは、各露光領域W´1〜W´5の第1層用のパターンのパターンデータの一部として組み込まれている。そのため、長尺方向に所定間隔で配列されるアライメントマークKsの並びは、基板Pの蛇行に合わせて蛇行したものとなる。
以上のように、1st露光工程時に発生する基板Pの蛇行に応じて、露光ヘッド18を搭載した第2光学定盤208をY方向に微動または微小回転させることによって、基板P上に露光された露光領域W´1〜W´5は、基板Pの中心線CAに対してY方向(基板Pの幅方向)に大きくばらつくことなく配置される。さらに、蛇行が生じた部分に配置される露光領域W´(W´2〜W´4)と、蛇行が無かった部分に配置される露光領域W´(W´1、W´5)との間で、基板Pの中心線CAに対する相対的な回転誤差も小さく抑えられる。そのため、2nd露光工程時のパターンデータや描画開始タイミングの補正量や補正範囲が少なくなり、基板Pの搬送速度の低下、重ね合わせ精度の劣化を抑制することができる。さらに、長尺方向に沿って並ぶアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)も、基板Pの中心線CAからY方向に一定の距離だけ離れた位置に正確に配置されるので、2nd露光工程時のアライメント顕微鏡AM1〜AM3によるアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の検出時に、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を観察領域Vw1〜Vw3内から外れるということを避けることができる。その結果、露光精度の低下を抑えることができる。
なお、2nd露光工程時においても同様に、微動用駆動部212A、212Bの各アクチュエータ220A、220Bを制御して、第2光学定盤208をY方向に変位させるとともに、回転軸Iを中心に微小回転させてもよい。2nd露光工程時には、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)が形成されているので、エッジセンサ204が検出した誤差信号ではなく、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出することで生成されたアライメント位置情報に基づいて、微動用駆動部212A、212Bの各アクチュエータ220A、220Bを制御してもよい。