JP6589159B2 - 新規ネコモルビリウイルス株、不活化ワクチン製剤、並びにネコモルビリウイルス感染症予防方法 - Google Patents

新規ネコモルビリウイルス株、不活化ワクチン製剤、並びにネコモルビリウイルス感染症予防方法 Download PDF

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本発明は、新規のネコモルビリウイルス株、不活化処理された該ウイルス株を含有する不活化ワクチン製剤及び不活化混合ワクチン製剤、並びに前記製剤をネコに投与する手順を含むネコモルビリウイルス感染症予防方法などに関連する。
パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のウイルスは、非分節でマイナス一本鎖RNAをゲノムに持ち、球形又は多形性でエンベロープを有するウイルスである。ヒトの呼吸器感染症など、ヒトを含む動物の多くの疾患の原因ウイルスがこの科に属する。
パラミクソウイルス科は、パラミクソウイルス亜科とニューモウイルス亜科に大きく分類される。パラミクソウイルス亜科は、レスピロウイルス属、モルビリウイルス属、ヘニパウイルス属、ルブラウイルス属、アブラウイルス属を含む。
このうち、モルビリウイルス属は、麻疹ウイルス(ヒト)、牛疫ウイルス、小反芻獣疫ウイルス、イヌジステンパーウイルスなどの医学・獣医学的に重要なウイルスを含む。
モルビリウイルス属のウイルス粒子は、エンベロープ上にHタンパク質(Hemagglutinin protein)及びFタンパク質(Fusion protein)を有し、粒子の内側にNタンパク質(Nucleocapsid protein)、Pタンパク質(Phosphoprotein)、Lタンパク質(Large protein)、及び、Mタンパク質(Matrix protein)などを有する。ゲノムは、マイナス一本鎖RNAで、5’末端から3’末端に向けてN、P、M、F、H、L遺伝子の順に並んでおり、両端にタンパク質をコードしないleader配列とtrailer配列を有する。また、P遺伝子のコード領域は、同じくウイルスタンパク質であるVタンパク質及びCタンパク質のコード領域と重複している。Vタンパク質は、P遺伝子翻訳の際、P遺伝子から転写されたmRNA上の特定の塩基配列部位で、鋳型にはコードされていないグアニンが1〜数個挿入され、翻訳されることで発現する。Cタンパク質は、P遺伝子の翻訳で利用される開始コドンとは異なる開始コドンを使って翻訳され、発現する。
従来、ネコを主な感染主とするモルビリウイルスの存在は知られていなかったが、近年、香港の家庭で飼育されたネコ(学名「Felis catus」)よりネコモルビリウイルス(Feline morbillivirus(FmoPV))が新規に分離されたことが報告され、ネコの尿細管間質性腎炎とそのウイルスとの関連が指摘された(特許文献1、非特許文献1)。また、日本国内の家庭で飼育されたネコからも、ネコモルビリウイルスが検出されたことが報告されている(非特許文献2)。
国際公開WO2013/107290 Woo, P.C.Y., Lau, S.K.P., Wong, B.H.L., Fan, R.Y.Y., Wong, A.Y.P., Zhang, A.J.X., Wu, Y., Choi, G.K.Y., Li, K.S.M. & other authors, "Feline morbillivirus, a previously undescribed paramyxovirus associated with tubulointerstitial nephritis in domestic cats."; Proc Natl Acad Sci USA 109, 5435-5440 (2012). Furuya, T., Sassa, Y., Omatsu, T., Nagai, M., Fukushima, R., Shibutani, M., Yamaguchi, T., Uematsu, Y., Shirota, K. & Mizutani, T., "Existence of feline morbillivirus infection in Japanese cat populations."; Arch Virol 159, 371-373(2013).
本発明は、ネコモルビリウイルスの新規株を分離・同定するとともに、ネコモルビリウイルス感染症に対する有効な予防手段を提供することなどを主な目的とする。
本発明者らは、日本国内の家庭で飼育されたネコの尿サンプルより、従来報告されたものとは異なる新規のネコモルビリウイルス株を分離・同定することに成功した。また、そのウイルスタンパク質6種のコード遺伝子及びアミノ酸配列を決定し、従来株との相同性解析を行った結果、同定株と従来株とのH遺伝子における相同性が90.7%、Hタンパク質における相同性が94.1%であることを明らかにした。
そこで、本発明では、Hタンパク質、Fタンパク質、Nタンパク質、Pタンパク質、Lタンパク質、Mタンパク質を有し、前記Hタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1の配列、又は該配列と95%以上の相同性を持つ配列である新規ネコモルビリウイルス株、若しくはH遺伝子、F遺伝子、N遺伝子、P遺伝子、L遺伝子、M遺伝子を有し、前記H遺伝子の塩基配列が、配列番号7の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列である新規ネコモルビリウイルス株を提供する。
上記の通り、本発明で分離・同定されたネコモルビリウイルス株と従来株とは、エンベロープ上に存在するHタンパク質におけるアミノ酸配列の相同性が95%未満、そのコード遺伝子の相同性が92%未満である。従って、例えば、従来株を不活化してワクチネーションを行っても、本発明に係る株又はその類似株による感染症を充分に予防できない可能性が高い。
従って、本発明に係るネコモルビリウイルス株は、従来株とは構造・免疫原性が異なる新規かつ有用な株であり、不活化された本発明に係るネコモルビリウイルス株を含有する不活化ワクチン製剤は、本株又はその近似株による感染を原因として発症するネコモルビリウイルス感染症の予防に有効である。
また、例えば、不活化された本発明に係るネコモルビリウイルス株、及び、一又は二以上の不活化された前記株以外のネコモルビリウイルス株(従来株を含む。)を含有する不活化混合ワクチン製剤は、より広い範囲のネコモルビリウイルス感染症を網羅的に予防することが可能になるため、ワクチンの有効性・利便性を高めることができる。
本発明により、新規なネコモルビリウイルス株又はその近似株による感染を原因として発症するネコモルビリウイルス感染症を有効に予防できる。
<本発明に係るネコモルビリウイルス株について>
上述の通り、ネコモルビリウイルスは、Hタンパク質、Fタンパク質、Nタンパク質、Pタンパク質、Lタンパク質、Mタンパク質の6種のタンパク質を少なくとも有し、それらのタンパク質をコードするH遺伝子、F遺伝子、N遺伝子、P遺伝子(P/V/C遺伝子)、L遺伝子、M遺伝子の6種の遺伝子を有する。本発明は、これらの6種類のタンパク質を有し、少なくとも前記Hタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1の配列、又は該配列と95%以上の相同性を持つ配列である、若しくはこれらの6種の遺伝子を有し、少なくとも前記H遺伝子の塩基配列が、配列番号7の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列である、単離された又は人工合成されたネコモルビリウイルス株を全て包含する。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、Hタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1の配列、又は該配列と95%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号1の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号1の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、Fタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号2の配列、又は該配列と94%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号2の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号2の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、Nタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号3の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号3の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号3の配列、又は該配列と99.5%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、Pタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号4の配列、又は該配列と87%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号4の配列、又は該配列と95%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号4の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、Lタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号5の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号5の配列、又は該配列と98%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号5の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、Mタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号6の配列、又は該配列と96%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号6の配列、又は該配列と98%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号6の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、H遺伝子の塩基配列が、配列番号7の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号7の配列、又は該配列と95%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号7の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。なお、同遺伝子はDNA・RNAのどちらの場合も包含されるものとし、RNAの場合は、塩基配列中のT(チミン)がU(ウラシル)に置換された配列である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、F遺伝子の塩基配列が、配列番号8の配列、又は該配列と90%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号8の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号8の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。なお、同遺伝子はDNA・RNAのどちらの場合も包含されるものとし、RNAの場合は、塩基配列中のT(チミン)がU(ウラシル)に置換された配列である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、N遺伝子の塩基配列が、配列番号9の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号9の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号9の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。なお、同遺伝子はDNA・RNAの両方のどちらの場合も包含されるものとし、RNAの場合は、塩基配列中のT(チミン)がU(ウラシル)に置換された配列である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、P遺伝子(P/V/C遺伝子)の塩基配列が、配列番号10の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号10の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号10の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。なお、同遺伝子はDNA・RNAのどちらの場合も包含されるを含むものとし、RNAの場合は、塩基配列中のT(チミン)がU(ウラシル)に置換された配列である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、L遺伝子の塩基配列が、配列番号11の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号11の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号11の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。なお、同遺伝子はDNA・RNAの両方のどちらの場合も包含されるものとし、RNAの場合は、塩基配列中のT(チミン)がU(ウラシル)に置換された配列である。
本発明に係るネコモルビリウイルス株では、M遺伝子の塩基配列が、配列番号12の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であることが好適であり、配列番号12の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であることがより好適であり、配列番号12の配列、又は該配列と99%以上の相同性を持つ配列であることが最も好適である。なお、同遺伝子はDNA・RNAのどちらの場合も包含されるものとし、RNAの場合は、塩基配列中のT(チミン)がU(ウラシル)に置換された配列である。
<上記ネコモルビリウイルス株の不活化処理について>
上記ネコモルビリウイルス株を不活化処理することにより、ネコモルビリウイルス感染症の不活化ワクチン製剤として適用することができる。
不活化処理は、公知の方法、例えば、培養液に対し、物理的処理(紫外線照射、X線照射、熱処理、超音波処理など)、化学的処理(ホルマリン・クロロホルムなどによる有機溶媒処理、酢酸などの弱酸による酸処理、アルコール・塩素・水銀などによる処理)などにより行うことができる。
例えば、ウイルス液にホルマリンを0.001〜2.0%、より好適には0.01〜1.0%の容量濃度で添加し、同液を4〜30℃で、1〜3日間感作することにより、ホルマリンによる不活化を行うことができる。例えば、緩衝液などで不活化処理ウイルスを洗浄してホルマリンなどの不活化剤を除去したり、不活化処理ウイルスに中和剤を添加して中和したりしてもよい。また、膜ろ過や遠心分離などにより不活化処理ウイルスを回収してもよい。
<本発明に係る不活化ワクチン製剤について>
本発明は、不活化処理された上記のいずれかのネコモルビリウイルス株を含有する、ネコモルビリウイルス感染症の不活化ワクチン製剤を全て包含する。
本製剤に含まれる不活化ウイルスの量は、特に制限はないが、例えば、不活化処理前のウイルスの量が103〜1011FFUの範囲が好適で、104〜1011FFUの範囲がより好適である。
本製剤には、公知のアジュバントを添加してもよい。アジュバントを添加することにより、ワクチン接種する個体の免疫誘導を増大させ、ワクチン効果を高めることができる。
公知のアジュバントとして、例えば、動物油(スクアレンなど)又はそれらの硬化油、植物油(パーム油、ヒマシ油など)又はそれらの硬化油、無水マンニトール・オレイン酸エステル、流動パラフィン、ポリブテン、カプリル酸、オレイン酸、高級脂肪酸エステルなどを含む油性アジュバント、PCPP、サポニン、グルコン酸マンガン、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸マンガン、可溶性酢酸アルミウム、サリチル酸アルミニウム、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、無水マレイン酸コポリマー、アルケニル誘導体ポリマー、水中油型エマルジョン、第四級アンモニウム塩を含有するカチオン脂質などの水溶性アジュバント、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、水酸化ナトリウムなどの沈降性アジュバント、コレラ毒素、大腸菌易熱性毒素などの微生物由来毒素成分、その他、ベントナイト、ムラミルジペプチド誘導体、インターロイキンなどが挙げられる。また、これらを混合したものでもよい。
例えば、この製剤には、目的・用途などに応じて、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜含有させてもよい。
緩衝剤の好適な例として、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液などを用いることができる。
等張化剤の好適な例として、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどを用いることができる。
無痛化剤の好適な例として、例えば、ベンジルアルコールなどを用いることができる。
防腐を目的とした薬剤の好適な例として、例えば、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、その他、各種防腐剤、抗生物質、合成抗菌剤などを用いることができる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などを用いることができる。
その他、この薬剤には、補助成分、例えば、保存・効能の助剤となる光吸収色素(リボフラビン、アデニン、アデノシンなど)、安定化のためのキレート剤・還元剤(ビタミンC、クエン酸など)、炭水化物(ソルビトール、ラクトース、マンニトール、デンプン、シュークロース、グルコース、デキストランなど)、カゼイン消化物、各種ビタミンなどを含有させてもよい。
ワクチン製剤の剤型などについては、公知のものを採用でき、特に限定されない。例えば、液体製剤として用いてもよいし、経口投与用に、凍結乾燥などの処置の後、餌などに混入させてもよい。
その他、このワクチン製剤は、他の疾患に対する一又は複数のワクチンとの混合ワクチン製剤であってもよい。
<本発明に係る不活化混合ワクチン製剤について>
本発明は、不活化処理された上記のいずれかのネコモルビリウイルス株、及び、一又は二以上の不活化処理された前記株以外のネコモルビリウイルス株を含有する、ネコモルビリウイルス感染症の不活化混合ワクチン製剤を全て包含する。
例えば、不活化された上記のいずれかのネコモルビリウイルス株に、一又は二以上の不活化された前記株以外のネコモルビリウイルス株(従来株を含む。)を含有させることにより、より広い範囲のネコモルビリウイルス感染症を網羅的に予防することが可能になるため、ワクチンの有効性・利便性を高めることができる。
本製剤に含まれる不活化ウイルスの量は、特に制限はないが、例えば、不活化処理前のそれぞれのウイルスの量が、103〜1011FFUの範囲が好適で、104〜1011FFUの範囲がより好適である。
本製剤には、公知のアジュバントを添加してもよい。アジュバントには上記と同様のものを広く採用できる。
また、目的・用途などに応じて、上記と同様の緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜含有させてもよい。
ワクチン製剤の剤型なども上記と同様である。その他、この混合ワクチン製剤は、他の疾患に対する一又は複数のワクチンとの混合ワクチン製剤であってもよい。
<本発明に係るワクチン製剤製造方法について>
本発明は、培養細胞を用いて、上述のネコモルビリウイルス株を人工合成する工程を少なくとも含むワクチン製剤製造方法をすべて包含する。
本発明に係るネコモルビリウイルス株は、公知の方法、例えば、リバース・ジェネティクス法により、培養細胞を用いて人工合成することができる。ウイルス株を人工合成することにより、比較的安価に、かつロット差の少ないワクチン製剤を製造できる。
リバース・ジェネティクス法によるネコモルビリウイルス株の人工合成は、例えば、同ウイルスのアンチゲノムと、ベクター内のT7プロモーター又は細胞質内で同等に作用するプロモーターの支配下にP遺伝子、N遺伝子並びにL遺伝子(更に、必要があれば補助的なタンパク質をコードする遺伝子)を組み込んだプラスミドとをコトランスフェクションすることで行うことができる。
ここで、例えば、ベクターのT7プロモーター支配下にP、N及びLタンパク質をコードする遺伝子を組み込んだプラスミドを用いる場合は、T7ポリメラーゼを有する培養細胞又はそのポリメラーゼを発現するように改変した培養細胞に、上記ウイルスのアンチゲノムと上記プラスミドとをコトランスフェクションすることで、培養細胞内及び培養上清にウイルスを発現させることができる。
人工合成するネコモルビリウイルス株のアンチゲノムには、例えば、5’末端から3’末端に向けて、N遺伝子(配列番号9)、P遺伝子(配列番号10)、M(配列番号12)、F(配列番号8)、H(配列番号7)、L(配列番号11)の順で配置された塩基配列の逆鎖配列を用いてもよいし、配列番号13のN、P、M、F、H、L遺伝子及びその周辺の配列の逆鎖配列を用いてもよい。プラスミドに組み込むP、N、Lの各遺伝子には、例えば、それぞれ、配列番号10、9、11の配列を用いる。プラスミドベクターには、公知のものを用いることができ、特に限定されない。
コトランスフェクションの方法には、公知のものを広く用いることができ、特に限定されない。また、培養細胞には、CRFK細胞、Vero細胞など、公知のものを広く採用できる。
ネコモルビリウイルス株を人工合成した後、培養細胞内又は培養上清に発現したウイルスを、別の未感染の培養細胞に添加し、ネコモルビリウイルス株を大量発現させる。その際の培養細胞には、上記と同様、例えば、CRFK細胞、Vero細胞などなどを広く採用できる。
ウイルスの回収は、遠心分離・膜ろ過など、公知の方法により行うことができる。また、回収したウイルスをさらに培養細胞に添加することにより、スケールアップ、大量生産が可能になる。
続いて、回収したウイルスを不活化処理する。不活化処理の方法については、上述の通りである。
例えば、不活化処理されたウイルスに、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜添加し、製品化する。
<本発明に係るワクチン製剤製造のためのウイルスの使用について>
本発明は、上述のネコモルビリウイルス株の、ネコモルビリウイルス感染症の不活化ワクチン製剤又は不活化混合ワクチン製剤製造のための使用をすべて包含する。
この不活化ワクチン製剤製造のために、上述のネコモルビリウイルス株を使用することにより、新規なネコモルビリウイルス株又はその近似株による感染を原因として発症するネコモルビリウイルス感染症を有効に予防できる。
また、この不活化混合ワクチン製剤製造のために、上述のネコモルビリウイルス株を使用することにより、より広い範囲のネコモルビリウイルス感染症を網羅的に予防することが可能になり、ワクチンの有効性・利便性をより高めることができる。
<本発明に係るネコモルビリウイルス感染症予防方法について>
本発明は、上述の不活化ワクチン製剤、又は、上述の不活化混合ワクチン製剤をネコに投与する手順を少なくとも含む、ネコモルビリウイルス感染症予防方法をすべて包含する。
例えば、健常ネコに、この不活化ワクチン製剤を接種・投与して免疫することにより、本株又はその近似株による感染を原因として発症するネコモルビリウイルス感染症を有効に予防できる。
また、健常ネコに、この不活化混合ワクチン製剤を接種・投与して免疫することにより、より広い範囲のネコモルビリウイルス感染症を網羅的に予防することが可能になり、ワクチンの有効性・利便性をより高めることができる。
この不活化ワクチン製剤又は不活化混合ワクチン製剤は、液剤を皮下・皮内・筋肉注射などにより投与してもよいし、野生動物などの場合では、餌などに混入させて経口投与してもよい。皮下・皮内・筋肉注射などでは、例えば、一回当たり、ウイルス数で103〜1011個、経口投与では、例えば、一回当たり、ウイルス数で104〜1011個投与する。投与回数は、特に限定されないが、1回又は1週間〜3カ月間隔で数回が好適である。また、1年に1回以上の投与が好適である。
<本発明に係るタンパク質について>
本発明は、本発明者らが独自に分離・同定したネコモルビリウイルス株の6種類の各ウイルスタンパク質を全て包含する。
本発明に係るHタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のものを全て包含する。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と95%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るFタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のものを全て包含する。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と94%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るNタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のものを全て包含する。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と97%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には99%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99.5%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るPタンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のものを全て包含する。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と87%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には95%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るLタンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のものを全て包含する。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と97%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には98%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るMタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のものを全て包含する。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と96%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には98%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
これらのタンパク質は、単独で又は混合して、抗体作成やワクチン等における抗原として適用できる可能性がある。
<本発明に係る核酸について>
本発明は、本発明者らが独自に分離・同定したネコモルビリウイルス株の6種類の各遺伝子、若しくはネコモルビリウイルス株のN、P、M、F、H、L遺伝子及びその周辺の配列を有する核酸、並びにそれらと相補的な塩基配列(逆鎖配列)を有する核酸、それらの一又は複数の核酸を挿入した組換えベクターなどを全て包含する。また、核酸はDNA・RNAの両方を含むものとし、RNAの場合は、塩基配列中のT(チミン)がU(ウラシル)に置換された配列である。
本発明に係るH遺伝子(Hタンパク質をコードする核酸)には、配列番号7の塩基配列と同一又は実質的に同一のものが全て包含される。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には95%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るF遺伝子(Fタンパク質をコードする核酸)には、配列番号8の塩基配列と同一又は実質的に同一のものが全て包含される。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と90%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るN遺伝子(Nタンパク質をコードする核酸)には、配列番号9の塩基配列と同一又は実質的に同一のものが全て包含される。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るP/V/C遺伝子(P、V、及び、Cタンパク質をコードする核酸)には、配列番号10の塩基配列と同一又は実質的に同一のものが全て包含される。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るL遺伝子(Lタンパク質をコードする核酸)には、配列番号11の塩基配列と同一又は実質的に同一のものが全て包含される。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明に係るM遺伝子(Mタンパク質をコードする核酸)には、配列番号12の塩基配列と同一又は実質的に同一のものが全て包含される。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
本発明者らが独自に分離・同定したネコモルビリウイルス株のN、P、M、F、H、L遺伝子及びその周辺の配列を有する核酸には、配列番号13の塩基配列と同一又は実質的に同一のものが全て包含される。ここで、「実質的に同一」とは、好適にはそのアミノ酸配列と95%以上の相同性を持つ配列であり、より好適には97%以上の相同性を持つ配列であり、最も好適には99%以上の相同性を持つ配列である。
これらの核酸は、各タンパク質の発現、ウイルスの人工合成・検出などに使用できる。
実施例1では、尿サンプルより、新規なネコモルビリウイルスの検出及び分離を試みた。
日本国・京都府又は茨城県の動物病院に来院した患猫より無作為に採取した尿サンプルから、トータルRNA抽出キット(Qiagen製)でウイルスRNAを抽出した。SuperScriptIII(Invitrogen製)を用いて、抽出したウイルスRNAよりcDNAを合成し、非特許文献2記載の手順に準じて、PCR(Polymerase Chain Reaction)法により、ネコモルビリウイルスのL遺伝子の部分長を増幅し、最終的に、487bpの増幅物を得た。増幅物を「Gel Extraction Kit(Qiangen製)」で精製し、株式会社ファスマック(日本国・神奈川県)にDNAシークエンス解析を依頼し、ダイレクトシークエンス法により、その配列を決定した。
その結果、尿サンプルを採取した13匹のネコのうちの3匹で、モルビリウイルスの遺伝情報を検出した。それらのL遺伝子の部分長の増幅配列を配列番号14〜16に示した。配列解析の結果、その増幅部分の配列における、非特許文献1において分離されたウイルスの該当部分の配列との相同性は90〜99%であった。
続いて、陽性であった各尿サンプル500μLを遠心分離処理(3,000rpm、5分間)して沈殿物を除去し、上清を450nmフィルターに透過させ、L-1-tosylamide-2-phenylethyl chloromethyl ketone処理したトリプシン(Sigma-Aldrich製)を0.1μg/mL加え、37℃条件に15分間置いた。
培養面積25cm2の細胞培養用フラスコに、無血清DMEM培地(Sigma-Aldrich製)で、CRFK(Crandell-Rees' feline kidney)細胞を培養し、そこに尿サンプルの上清とトリプシンの混合物を接種した。37℃、5%CO2条件下で16時間培養した後、加熱不活性化FCS(fetal calf serum)を添加したDMEM培地(Sigma-Aldrich製)に培地交換して培養を続けるとともに、毎日、倒立顕微鏡でCPE(cytopathic effect)を観察した。
その結果、陽性の尿サンプルの調製物を接種した細胞では、いずれも、合胞体形成によるCPEが観察された。CPEの観察された細胞の培養上清及び細胞融解物よりRNAを抽出し、上記と同様の手順でRT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)法を行った結果、いずれにおいても、同様の長さのDNAの増幅を確認できた。
続いて、間接蛍光抗体法により、CPEの観察されたCRFK細胞を蛍光顕微鏡で観察した。細胞の固定には4%パラホルムアルデヒドを、一次抗体にはネコモルビリウイルスのNタンパク質のアミノ酸配列の一部の配列を有する3種類のペプチドの混合物でウサギを免疫することにより得られた抗ネコモルビリウイルスウサギポリクローナル抗体を、二次抗体にはAlexa Fluor 488標識抗ウサギIgG抗体(Life Technologies製)を、それぞれ用いた。
その結果、CPEの観察されたCRFK細胞で緑色の蛍光を観察し、それらの細胞中におけるネコモルビリウイルス抗原の存在が実証された。
検出・分離された3つのネコモルビリウイルスを、それぞれ、ネコモルビリウイルス(Feline Morbillivirus)SS1株、同SS2株、同SS3株と命名した。
実施例2では、電子顕微鏡によるネコモルビリウイルスSS1株の撮像を試みた。
ネコモルビリウイルスSS1株接種後72時間のCRFK細胞を集め、1.5%グルタルアルデヒドの0.1Mリン酸溶液で固定し、1%四酸化オスミウム水溶液で後固定し、エポキシ樹脂に包埋し、超薄切片を作成した。切片を酢酸ウランとクエン酸鉛で二重染色し、透過電子顕微鏡(「H-7500」、日立製作所製)で観察した。
結果を図1に示す。図1はネコモルビリウイルスSS1株に感染したCRFK細胞の電子顕微鏡写真である。図1に示す通り、糖タンパク質のスパイクを含むエンベロープを有した多形性のウイルス粒子が観察され(図中の矢頭参照)、このウイルスの存在を形態的にも確認することができた。また、細胞表面上には、スパイク様構造を含むウイルス出芽過程の像も観察された(図中の矢印参照)。ウイルス粒子の大きさは直径100〜500nmの範囲で大きい変動があった。これらの超微形態的知見は、麻疹ウイルスのような他のモルビリウイルスでの報告と一致している。なお、図中の符号「N」はCRFK細胞の核を表す。
実施例3では、ネコ体内で産生されたSS2株又はSS3株に対する抗血漿がSS1株を認識できるかどうかを、免疫ブロットにより検討した。
抗原として、CRFK細胞で増殖したSS1株を含む細胞溶解物をアプライし、一次抗体として、実施例1において陽性であったネコ個体から採取した血漿を1/1,000に希釈したものを、二次抗体として、HRP標識ヤギ抗ネコIgG抗体(Bethyl社製)を、それぞれ用いて、免疫染色を行った。
結果を図2に示す。図2は、SS1株ウイルス抗原に対する抗血漿の反応性を示す免疫ブロット写真である。図2中、縦軸は原子質量単位(単位:kDa)を、レーン1は、一次抗体の代わりに滅菌水を用いた場合(陰性対照)の結果を、レーン2は、一次抗体としてSS1株感染ネコから採取した血漿を用いた場合の結果を、レーン3は、一次抗体としてSS2株感染ネコから採取した血漿を用いた場合の結果を、レーン4は、一次抗体としてSS3株感染ネコから採取した血漿を用いた場合の結果を、それぞれ表わす。また、同図中、「L」はLタンパク質のバンドの位置を、「H」はHタンパク質のバンドの位置を、「N」はNタンパク質のバンドの位置を、「M」はMタンパク質のバンドの位置を、それぞれ表わす。
図2に示す通り、レーン2では、Hタンパク質及びNタンパク質の位置のバンドが明瞭に検出され、SS1株ウイルス抗原に対するSS1株感染ネコ由来の血漿の反応性が確認された。それに対し、レーン3では、Hタンパク質及びNタンパク質の位置のバンドはほとんど検出されず、レーン4でも、Hタンパク質の位置のバンドが弱く検出されたのみであり、SS1株ウイルス抗原に対するSS2株又はSS3株感染ネコ由来の抗血漿の反応性は低かった。
この結果は、SS2株又はSS3株による免疫誘導で産生された抗血漿(抗体)がSS1株を充分に認識できない可能性があることを示す。従って、この結果は、例えば、SS2株又はSS3株を不活化してワクチネーションを行っても、SS1株又はその類似株の感染を充分に予防できない可能性があることを示唆する。
実施例4では、ネコモルビリウイルスSS1株〜SS3株の配列決定及びその解析を行った。
実施例1において使用した尿サンプルをCRFK細胞に接種し、細胞内で増殖したウイルスよりRNAを抽出した。非特許文献1記載の手順に準じて、そのRNAを鋳型とし、既に配列の決定された部位における配列及び公知の情報に基づいてプライマー対を設計して、RT-PCR法によりその部位を増幅し、ダイレクトシークエンス法により、その配列を決定した。その新たに解析された配列情報及び公知の情報に基づいてプライマー対を設計し、同様の手順で約600bpごとにダイレクトシークエンス法による解析を繰り返し、配列の重複部分を重ね合わせていくことで、SS1株〜SS3株の配列の決定部位を拡張していった。
この配列解析により取得したSS1株の塩基配列(N、P、M、F、H、L遺伝子のコード領域及びその周辺配列)を配列番号13に、同SS2株のH遺伝子の塩基配列を配列番号17に、同SS3株のH遺伝子の塩基配列を配列番号18に、それぞれ示す。なお、これらの配列は、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)に、それぞれ、アクセッション番号AB910309、AB910310、AB910311として、本出願前は非公開での取扱いで、登録した。
続いて、SS1株〜SS3株と非特許文献1において開示されたM252A HK株、761U HK株、H776U HK株との塩基配列及びアミノ酸配列の相同性を検討した。
その結果、SS1株は、塩基配列では、H遺伝子において、SS2株とは90.6%、SS3株とは90.7%、M252A HK株とは90.7%、761U HK株とは90.3%、H776U HK株とは89.8%の相同性を有していた。また、SS1株は、アミノ酸配列では、Hタンパク質において、SS2株とは93.6%、SS3株とは94.1%、M252A HK株とは94.1%、761U HK株とは94.3%、H776U HK株とは93.3%の相同性を有していた。
SS1株は、塩基配列では、F遺伝子において、M252A HK株とは89.0%、761U HK株とは89.2%、H776U HK株とは88.8%の相同性を有していた。また、SS1株は、アミノ酸配列では、Fタンパク質において、M252A HK株とは92.5%、761U HK株とは93.2%、H776U HK株とは92.8%の相同性を有していた。
SS1株は、塩基配列では、N遺伝子において、M252A HK株とは89.6%、761U HK株とは90.2%、H776U HK株とは90.0%の相同性を有していた。また、SS1株は、アミノ酸配列では、Nタンパク質において、M252A HK株とは95.4%、761U HK株とは96.5%、H776U HK株とは96.5%の相同性を有していた。
SS1株は、塩基配列では、P遺伝子において、M252A HK株とは90.1%、761U HK株とは88.9%、H776U HK株とは88.6%の相同性を有していた。また、SS1株は、アミノ酸配列では、Pタンパク質において、M252A HK株とは86.4%、761U HK株とは86.6%、H776U HK株とは86.2%の相同性を有していた。
SS1株は、塩基配列では、L遺伝子において、M252A HK株とは90.3%、761U HK株とは89.7%、H776U HK株とは89.7%の相同性を有していた。また、SS1株は、アミノ酸配列では、Lタンパク質において、M252A HK株とは96.4%、761U HK株とは95.9%、H776U HK株とは96.2%の相同性を有していた。
SS1株は、塩基配列では、M遺伝子において、M252A HK株とは89.7%、761U HK株とは89.4%、H776U HK株とは90.2%の相同性を有していた。また、SS1株は、アミノ酸配列では、Mタンパク質において、M252A HK株とは93.8%、761U HK株とは95.0%、H776U HK株とは95.9%の相同性を有していた。
SS2株は、塩基配列では、H遺伝子において、SS3株とは96.8%、M252A HK株とは96.8%、761U HK株とは96.0%、H776U HK株とは95.0%の相同性を有していた。また、SS2株は、アミノ酸配列では、Hタンパク質において、SS3株とは95.5%、M252A HK株とは95.2%、761U HK株とは92.8%、H776U HK株とは92.6%の相同性を有していた。
SS3株は、塩基配列では、H遺伝子において、M252A HK株とは99.0%、761U HK株とは96.3%、H776U HK株とは95.3%の相同性を有していた。また、SS3株は、アミノ酸配列では、Hタンパク質において、M252A HK株とは98.8%、761U HK株とは93.3%、H776U HK株とは92.8%の相同性を有していた。
続いて、各株の系統解析を行った。結果を図3に示す。図3は、各ウイルス株のH遺伝子の配列に基づいて、最尤法によって構築された系統樹である。同図中の数値はブートストラップ値(検証回数1,000)を、スケールバーは枝長(Substitutions per site)表す。図3に示す通り、各株間の距離は、上記の塩基配列又はアミノ酸配列の相同性の値と概ね一致していた。
以上の通り、本実施例では、SS3株は非特許文献1に記載されたM252A HK株の近似種であるのに対し、SS1株は他のネコモルビリウイルス株とは遺伝子上比較的離れた種であることが示唆された。
実施例5では、ネコモルビリウイルスに対する不活化ワクチンを作製するとともに、ワクチンの有効性を検証するために、その不活化ワクチンの接種試験を実施した。
不活化ワクチンの作製を以下の手順で行った。まず、実施例1〜4で分離・同定されたネコモルビリウイルスSS1株をCRFK細胞に接種し、細胞及びその上清を超音波破砕し、得られたウイルス浮遊液を精製・濃縮した。次に、得られたウイルス液にバイナリーエチレンイミンを添加し、ウイルスを不活化した。次に、その不活化ウイルス液に、アジュバントとして「IMS 251C(SEPPIC社製)」を15%w/vになるように混合した。
続いて、供試ネコにその不活化ワクチンを接種した。供試ネコ6匹を3匹ずつ二群に分け、一群には、初回及びその3週間後の二回、各個体に不活化ワクチンを106.4FFUずつ接種し、他の一群には、同じく二回、各個体に105.4FFU接種した。
そして、初回接種時(免疫前)、追加接種時(初回接種の3週後)、初回接種時から5週後、同7週後に、各個体から血液を採取し、その血清の中和抗体価を測定した。
中和抗体価の測定は以下の手順で行った。まず、各個体の血清を56℃、30分間非働化した後、10%FCS添加DMEMで4倍階段希釈し、4倍、16倍、64倍、256倍の血清希釈液を各75μL調製した。次に、ネコモルビリウイルス抗原液(SS1株)を2,000 TCID50/mLに調製し、各血清希釈液にそのウイルス抗原液を75μL添加し、混合した後、37℃で1時間静置した。次に、96穴平底プレートに、各血清-抗原混合液を25μLずつ、それぞれ4穴に分注し、各穴に、CRFK細胞を、10%FCS添加DMEMで懸濁してから75μL(5×103個)ずつ加え、37℃、5%CO2下で4〜5日間培養した。そして、間接蛍光抗体法により、一次抗体にネコモルビリウイルスペプチドに対する抗血清を用いて、ウイルス感染をフォーカス形成で観察し、4穴中2穴以上で完全にフォーカス形成が抑制された血清の最高希釈倍率を中和抗体価として算定した。
結果を表1に示す。
表1に示す通り、いずれの個体においても、初回接種時、即ち免疫前と比較して、初回接種時から5週後及び7週後(二回の不活化ワクチン接種後)では、ウイルスに対する中和抗体価の上昇が認められた。本結果より、本発明に係る不活化ワクチンが、ネコ個体に、ネコモルビリウイルスに対する中和抗体価の上昇を誘導できることが示された。
実施例2において、ネコモルビリウイルスSS1株に感染したCRFK細胞の電子顕微鏡写真。 実施例3において、SS1株ウイルス抗原に対する抗血漿の反応性を示す免疫ブロット写真。 実施例4において、ネコモルビリウイルスの各株のH遺伝子の配列に基づく系統樹。

Claims (8)

  1. Hタンパク質、Fタンパク質、Nタンパク質、Pタンパク質、Lタンパク質、Mタンパク質を有し、
    前記Hタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1の配列、又は該配列と95%以上の相同性を持つ配列であり、
    ネコモルビリウイルスM252A HK株とは免疫原性が異なる新規ネコモルビリウイルス株。
  2. 前記Fタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号2の配列、又は該配列と94%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記Nタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号3の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記Pタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号4の配列、又は該配列と87%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記Lタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号5の配列、又は該配列と97%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記Mタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号6の配列、又は該配列と96%以上の相同性を持つ配列である請求項1記載の新規ネコモルビリウイルス株。
  3. H遺伝子、F遺伝子、N遺伝子、P遺伝子、L遺伝子、M遺伝子を有し、
    前記H遺伝子の塩基配列が、配列番号7の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、
    ネコモルビリウイルスM252A HK株とは免疫原性が異なる新規ネコモルビリウイルス株。
  4. 前記F遺伝子の塩基配列が、配列番号8の配列、又は該配列と90%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記N遺伝子の塩基配列が、配列番号9の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記P遺伝子の塩基配列が、配列番号10の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記L遺伝子の塩基配列が、配列番号11の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列であり、
    前記M遺伝子の塩基配列が、配列番号12の配列、又は該配列と91%以上の相同性を持つ配列である請求項3記載の新規ネコモルビリウイルス株。
  5. 不活化処理された請求項1〜4のいずれか一項記載のネコモルビリウイルス株を含有する、ネコモルビリウイルス感染症の不活化ワクチン製剤。
  6. 不活化処理された請求項1〜4のいずれか一項記載のネコモルビリウイルス株、及び、一又は二以上の不活化処理された前記株以外のネコモルビリウイルス株を含有する、ネコモルビリウイルス感染症の不活化混合ワクチン製剤。
  7. アジュバントが添加された請求項6記載の不活化混合ワクチン製剤。
  8. 請求項5記載の不活化ワクチン製剤、又は、請求項6又は請求項7記載の不活化混合ワクチン製剤をネコに投与する手順を含むネコモルビリウイルス感染症予防方法。
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