JP6588691B2 - C/cコンポジット製成形体、その製造方法、及びc/cコンポジット製成形体を用いた熱処理用冶具 - Google Patents
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Description
底壁部の周縁に全周にわたって側壁部が設けられていれば、側壁部に分散される荷重が多くなるので、底壁部が破損して物が落下するのを一層抑制できる。
側壁部の少なくとも一部に切り欠きが形成されていれば、C/Cコンポジット製成形体の軽量化を図ることができる。尚、側壁部の少なくとも一部に切り欠きが形成されていても、残余の側壁部に荷重が分散されるので、底壁部が破損して物が落下するのを抑制できる。
炭素繊維が相対向する側壁部間に連続して延設されていれば、底部に荷重がかかった場合であっても、下方への荷重が炭素繊維の引っ張り荷重として作用する。この場合、炭素繊維は引っ張り強さが極めて高いので、荷重によって成形体が変形したり破損(特に、底壁部が破損)したりするのを一層抑制できる。
上記構成であれば、側壁部の強度がより向上する。したがって、荷重によって成形体が変形したり破損したりするのを一層抑制できる。
炭素繊維に1Dクロスや2Dクロスを用いることで、緻密に炭素繊維を配置したC/Cコンポジット製成形体を簡便に得ることが出来る。
ストランド間に空隙部が設けられ網状体であれば、空隙部をガスや液体が通過することができる。したがって、ガスや液体に接触させる熱処理用途に、より好適に用いることが可能となる。
底壁部への耐荷重に優れた上述の成形体を用いることで、安全且つ確実に対象物の熱処理を行うことが出来る。またC/Cコンポジットは耐熱性が高く、且つ3000℃以下では、高温になる程、機械的強度が高くなる特性を有する。したがって、通常の熱処理時であれば変形が生じる恐れが小さく、安定した熱処理を図ることが出来ると共に、多数回の繰り返し使用が可能となる。
このような製造方法により、上述のC/Cコンポジット製成形体を製造できる。
(実施例1)
PAN系炭素繊維(トレカT−300、6K 東レ(株)製)の2D平織クロスを用い、この炭素繊維織布を液状フェノール樹脂に浸漬して、当該樹脂を含浸させた。次に、絞りローラーを用いて、炭素繊維織布に含浸された樹脂量を調整した後、100℃に加熱したオーブン中で乾燥させ、これにより、プリプレグシートを得た。
しかる後、図2(c)に示す成形型20に2つの成形体用シート10、11を重ね合わせた状態で、約200℃で真空バッグ成形して、2D炭素繊維クロスを使った箱状の成形体を作製した。得られた成形体は内寸150mm×100mm×30mm、辺部付近の肉厚は2mmであった。
このようにして作製したC/Cコンポジット製成形体を、以下、成形体A1と称する。
上記実施例1と同様にプリプレグシートを得た後、このプリプレグシートを図4(a)〜(c)に示すような形状に裁断して、成形体用シート12〜14を作製した。尚、当該成形体用シート12〜14における炭素繊維の延設方向は、共に、A方向とB方向である。次に、上記成形体用シート12、14を、図4(a)(c)の曲げ部2で折り曲げ、図5(a)(c)に示すような形状とした。この際、成形体用シート12には、立ち上がり部12aが形成された。次いで、図5(d)に示す成形型20に3つの成形体用シート12〜14を重ね合わせた状態で、約200℃で真空バッグ成形して、2D炭素繊維クロスを使った箱状の成形体を作製した。しかる後、上記実施例1と同様な処理を行い、一体型のC/Cコンポジット製成形体を得た。尚、C/Cコンポジット製成形体は、上記図3で示した形状と同様の形状である。
このようにして作製したC/Cコンポジット製成形体を、以下、成形体A2と称する。
縦糸に上記実施例1と同一の炭素繊維を用いる一方、横糸にはガラス繊維を使用したUDクロスを用いた他は、上記実施例1と同様にしてプリプレグシートを作製し、このプリプレグシートを図6(a)〜(c)に示すような形状に裁断して、成形体用シート15〜17を作製した。その際、成形体用シート15の炭素繊維の延設方向はA方向、成形体用シート16の炭素繊維の延設方向はB方向とすることにより、成形体用シート15の炭素繊維の延設方向と成形体用シート16の炭素繊維の延設方向とが直角となるようにした。尚、成形体用シート17の炭素繊維の延設方向はB方向である。
このようにして作製したC/Cコンポジット製成形体を、以下、成形体A3と称する。
先ず、2D平織クロスに代えて3軸炭素繊維織物の網を用いて、実施例1同様にしてプリプレグシートを得た。次いで、得られたプリプレグシートを方形状に裁断し、図1(a)(b)に示す切り込み1を入れることにより、成形体用シート10、11を作製した。次に、上記成形体用シート10、11を、図1(a)(b)の曲げ部2で折り曲げ、図2(a)(b)に示すような形状として、立ち上がり部10a、11aを形成した。その後、図2(c)に示す成形型20に2つの成形体用シート10、11を重ね合わせた状態で、約200℃で真空バッグ成形して、3軸炭素繊維織物の網を使った箱状の成形体を作製した。
このようにして作製したC/Cコンポジット製成形体を、以下、成形体A4と称する。
先ず、T300炭素繊維を長さ約12mmにカットし、金属バット内に敷き詰め、上記実施例1に用いたフェノール樹脂と同じフェノール樹脂を金属バット内に注ぎ、炭素繊維に含浸させた後、100℃に加熱したオーブン中で乾燥させて、シートモールディングコンパウンドプリプレグを得た。次に、得られたプリプレグを外型と内型からなる金型にセットし、面圧約30Kg/cm2、温度200℃で金型成形を行い、内寸150mm×100mm×30mm、肉厚が2mmの箱型成形体を得た。その後、実施例1同様の処理を行い、チョップドタイプの一体型のC/Cコンポジット製成形体を得た。
このようにして作製したC/Cコンポジット製成形体を、以下、成形体Zと称する。
上記成形体A1〜A4、Zの表面状態を目視により観察したので、その結果を表1に示す。
上記成形体A1、Zの辺部(底壁部と側壁部との境界部分や、その近傍)を切断し、L型の強度試験用サンプルを得た。そして、図8に示すように、当該強度試験用サンプル22の垂直部中央付近にΦ5の貫通穴を設け固定台23にボルトにより固定し、一端25から荷重を加える点24までの距離L1を20mmとして破壊荷重を測定した。尚、荷重はD方向に加えた。その後、曲げモーメントから辺部曲げ強さを計算した。尚、強度試験用サンプルの厚みL2は2mm、強度試験用サンプルの幅L3は20mmとした。
上記成形体A4、Zを用い、クロムモリブテン鋼(SCM435)からなる直径20mm、高さ80mmの円柱状金属部品を約1100℃に加熱した後、20barの加圧N2ガスを吹き付けて急冷を行った。そして、得られた金属部品の焼き入れ特性として部品中央部のビッカース硬さを調べたので、その結果を表3に示す。
(実施例1)
第1実施例の実施例1と同様に、方形状に裁断したプリプレグシートを、図9(a)(b)に示す切り込み1を入れることにより、成形体用シート40、41を作製した。尚、当該成形体用シート40、41における炭素繊維の延設方向は、共に、A方向とB方向である。その後、上記成形体用シート40、41を、図9(a)(b)の曲げ部2で折り曲げ、図10(a)(b)に示すような形状として、立ち上がり部40a、41aを形成した。しかる後、図10(c)に示す成形型20に2つの成形体用シート40、41を重ね合わせた状態で、約200℃で真空バッグ成形して、2D炭素繊維クロスを使った箱状の成形体を作製した。
第1実施例の実施例1と同様に、方形状に裁断したプリプレグシートを、図12(a)(b)に示す切り込み1を入れることにより、成形体用シート50、51を作製した。尚、当該成形体用シート50、51における炭素繊維の延設方向は、共に、A方向とB方向である。その後、上記成形体用シート50、51を、図12(a)(b)の曲げ部2で折り曲げ、図13(a)(b)に示すような形状として、立ち上がり部50a、51aを形成した。しかる後、図13(c)に示す成形型20に2つの成形体用シート50、51を重ね合わせた状態で、約200℃で真空バッグ成形して、2D炭素繊維クロスを使った箱状の成形体を作製した。
第1実施例の実施例1と同様に、方形状に裁断したプリプレグシートを、図15(a)(b)に示す切り込み1を入れた。この際、後に側壁部となる部位に切り欠き67を形成した。これにより、成形体用シート60、61を作製した。尚、当該成形体用シート60、61における炭素繊維の延設方向は、共に、A方向とB方向である。その後、上記成形体用シート60、61を、図15(a)(b)の曲げ部2で折り曲げ、図16(a)(b)に示すような形状として、立ち上がり部60a、61aを形成した。しかる後、図16(c)に示す成形型20に2つの成形体用シート60、61を重ね合わせた状態で、約200℃で真空バッグ成形して、2D炭素繊維クロスを使った箱状の成形体を作製した。
第1実施例の実施例1と同様にしてプリプレグシートを作製し、このプリプレグシートを図18(a)〜(c)に示すような形状に裁断して、成形体用シート70〜72を作製した。その際、成形体用シート70の炭素繊維の延設方向はA方向、成形体用シート71の炭素繊維の延設方向はB方向とすることにより、成形体用シート70の炭素繊維の延設方向と成形体用シート71の炭素繊維の延設方向とが直角となるようにした。尚、成形体用シート72の炭素繊維の延設方向はB方向である。また、成形体用シート70は、後に側壁部構成部材となる凸片70a、70b、70cを有している。上記凸片70aは、図20の平板状の側壁部構成部材74aとなり、上記凸片70bは、図20の平板状の側壁部構成部材74bとなり、上記凸片70cは、図20の曲板状の側壁部構成部材74cとなる。
(1)底壁部の形状としては、上記四角形状や一部円弧状に限定するものではなく、三角形状、六角形状等であっても良い。
図22に示すように、複数のストランド141、142、143を3方向から織り合わせた三軸織物から成る炭素繊維140であり、六角形の網目が形成されている。各ストランド141、142、143では、複数の炭素繊維が撚らずに並べられている。
図29に示す炭素繊維180は、ストランド181、182の交差部分(網の節部分)に結び目が形成された有結節網となっている。
(3)上記実施例では、2以上のプリプレグシートを用いてC/Cコンポジット製成形体を作製したが、1つのプリプレグシートを用いてC/Cコンポジット製成形体を作製しても良い。但し、この場合は、UDクロス以外のもの、例えば、2D平織クロス、3軸炭素繊維織物等を用いる必要がある。
2:曲げ部
10:成形体用シート
11:成形体用シート
20:成形型
30:C/Cコンポジット製成形体
31:側壁部
32:底壁部
33:屈曲部
Claims (11)
- 底壁部と、この底壁部の周縁に立設された側壁部とを備え、炭素繊維及びマトリックスを含んで構成されるC/Cコンポジット製成形体であって、
上記側壁部は、平面視において少なくとも1箇所の屈曲部及び/又は湾曲部を有し、且つ上記炭素繊維のうち少なくとも一部の炭素繊維は連続繊維であり、該連続繊維が上記底壁部から上記側壁部にかけて連続して設けられており、
折り曲げにより少なくとも1枚に立ち上がり部が形成された複数の成形体用シートよりなる積層構造を有し、
上記複数の成形体用シートの間に、上記立ち上がり部で複数枚が重なることによる密度の差異が実質的になく、
上記複数の成形体用シートが、輪郭および/または切り込みの入れ方の異なる成形体用シートを少なくとも1枚含むことを特徴とするC/Cコンポジット製成形体。 - 上記側壁部は、上記底壁部の周縁に全周にわたって設けられている、請求項1記載のC/Cコンポジット製成形体。
- 上記側壁部の少なくとも一部に切り欠きが形成されている、請求項1又は2に記載のC/Cコンポジット製成形体。
- 上記側壁部は平板状であり、上記屈曲部が成す角度は150°以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載のC/Cコンポジット製成形体。
- 上記炭素繊維は、一方の側壁部から、底部を挟んで相対向する他方の側壁部まで連続して延設されている、請求項1〜4の何れか1項に記載のC/Cコンポジット製成形体。
- 上記側壁部には、上記屈曲部を挟んで連続して設けられた炭素繊維を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載のC/Cコンポジット製成形体。
- 上記炭素繊維には、1Dクロス及び/又は2Dクロスが用いられている、請求項1〜6の何れか1項に記載のC/Cコンポジット製成形体。
- 上記炭素繊維は、複数束ねられたストランド間に空隙部が設けられた網状体となっている、請求項1〜7の何れか1項に記載のC/Cコンポジット製成形体。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のC/Cコンポジット製成形体を用いたことを特徴とする熱処理用治具。
- 底壁部と側壁部とを備え、炭素繊維及びマトリックスを含んで構成されるC/Cコンポジット製成形体の製造方法であって、
炭素繊維に樹脂を含浸させた後、加熱することにより、プリプレグシートを作製する工程と、
上記プリプレグシートを、炭素繊維が延設されている箇所の一部で折り曲げて立ち上がり部を形成する工程と、
上記立ち上がり部を接合して側壁部を形成する工程と、
上記立ち上がり部が形成されたプリプレグシートを少なくとも1枚含んで構成される複数の成形体用シートを重ね合わせる工程と、
を含み、
上記複数の成形体用シートを、輪郭および/または切り込みの入れ方の異なる成形体用シートを少なくとも1枚含むように用意することを特徴とするC/Cコンポジット製成形体の製造方法。 - 上記樹脂を含浸させた後の成形は、真空バッグ成形又はオートクレーブ成形により行われる、請求項10に記載のC/Cコンポジット製成形体の製造方法。
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