例えば自動車等の車両においては、その乗降部位やトランクルーム等の車両ボティの開口部に、当該開口部を開閉自在に閉鎖するドア、リッド等が設けられている。なお、車両ボティの開口部周縁には、フランジが設けられている。そのうえで、この開口部とドア、リッド等との隙間をシールするために、ウエザーストリップが開口部周縁のフランジに装着されている。
ウエザーストリップは、押出成形により製造されるポリマー材料製の長尺部材であって、挟持部と中空筒状のシール部とを備える。挟持部は、底壁と、底壁の両側縁から立設する第1の側壁及び第2の側壁で構成され、断面は略U字状となっている。シール部は、ウエザーストリップをフランジへ装着した状態において車外側となる第1の側壁の外面に設けられている。第1の側壁及び第2の側壁の内面には、開口部周縁のフランジを挟持する挟持リップが突設されている。また、ウエザーストリップには、これをフランジへ装着した状態において、車内の内装部材の端末を覆って(隠して)意匠性を向上するための装飾リップが、車内側へ向けて突設されることが多い。一般的にこの装飾リップは、ウエザーストリップをフランジへ装着した状態において車内側となる第2の側壁と底壁との境界付近から延在するようにして設けられる。
ウエザーストリップは、挟持部の挟持リップがフランジを挟持することにより装着される。この状態においてシール部がドア、リッド等と当接して、車両ボティの開口部とドア、リッド等との隙間をシールする。ここで、フランジの厚さは開口部の部位により異なっている。具体的には、薄いところではフランジが1枚の金属板からなる。一方、厚いところでは、フランジが3枚以上の金属板を重ね合わせてスポット溶接した構成になっている部位もある。従来、ウエザーストリップの挟持部は、フランジにおける最も薄い部位の厚さに合わせて開口幅(第1の側壁の先端と第2の側壁の先端との幅方向距離)が一定に形成されていた。すなわち、挟持部における底壁と第1の側壁及び第2の側壁とがなす角度が長手方向全体に亘って一定であり、且つ底壁の幅寸法も長手方向全体に亘って一定であった。
これでは、フランジの厚さが大きい部位では、挟持部にフランジを挿入する荷重が大きくなる。これにより、ウエザーストリップをフランジに装着することが困難であった。そこで、フランジに装着される挟持部の開口幅を、フランジの厚さに応じて長手方向において部分的に異ならせた発明が、例えば下記特許文献1〜特許文献3に開示されている。具体的には、これら特許文献1〜特許文献3では、第1の側壁と底壁とがなす角度は長手方向全体に亘って一定としながら、第2の側壁と底壁とがなす角度を長手方向において部分的に異ならせている。なお、底壁の幅寸法は、従来と同様に長手方向全体に亘って一定である。また、特許文献1〜特許文献3では、ウエザーストリップをそれぞれ次のように製造(折り曲げ加工)している。
特許文献1では、中央に収容溝を有する成形装置と、楔状の治具を用いて折り曲げ加工している。具体的には、先ず、フランジにおける最も薄い部位の厚さに合わせて挟持部の開口幅が一定に形成されたウエザーストリップの一部を、成形装置の収容溝にセットする。そして、第1の側壁及び第2の側壁の間に楔状の治具を打ち込むことで、第2の側壁を外方へ拡開させている。これにより、挟持部の一部に幅広部を有するウエザーストリップを得ている。
特許文献2では、先ず、底壁に対する第1の側壁及び第2の側壁の角度が、最終的な完成品の最大角度よりも大きい角度で押出成形機から押し出された(予備成形された)ウエザーストリップの予備成形体を、間隔が一定の一対のローラの間に通している。これにより、第1の側壁及び第2の側壁がそれぞれ外方からローラで一定の所定角度に押圧されることで、挟持部の開口幅がフランジにおける最も厚い部位に対応したウエザーストリップとなる。続いて、回転軸が幅方向内外に変位可能な可動ローラと、回転軸は所定位置で変位しない固定ローラとからなる一対のローラの間にウエザーストリップをさらに通すことで、挟持部の開口幅をフランジの厚さに対応させて長手方向において部分的に異ならせている。具体的には、フランジの厚さが小さい部位に対応する部位では、可動ローラをさらに内方へ変位させて第2の側壁をさらに内方へ押圧することで、底壁に対する第2の側壁の角度を鋭角にしている。
特許文献3でも、回転軸が幅方向内外に変位可能な可動ローラと、回転軸は所定位置で変位しない固定ローラとからなる一対のローラの間にウエザーストリップの予備成形体を通し、特許文献2と同様にフランジの厚さに対応させて可動ローラを内外に変位させることで、第2の側壁と底壁とがなす角度を、長手方向において部分的に異ならせている。
特許文献1では、フランジの厚さの異なる部位の数に応じて専用の成形装置及び楔状の治具が必要となる。これでは、収容溝の幅が異なる成形装置及び治具が複数必要となるので、これらの製作費用が嵩むばかりか、各部位毎に第2の側壁の角度を変更する必要があるため、製造工程も煩雑となる。このため、車両ボディの開口部周縁においてフランジの厚さの異なる部位が多い場合、特許文献1の技術は使用が困難になる。
一方、特許文献2及び特許文献3では、ウエザーストリップの押出成形工程内において、ウエザーストリップの幅方向内外に変位可能な可動ローラによって第2の側壁を外方から押圧し、底壁と第2の側壁とがなす角度を長手方向において部分的に変化させている。
また、特許文献1〜特許文献3では、そもそも底壁と側壁とがなす角度を部分的に異ならせることで、幅狭部と幅広部とを形成している。これでは、フランジに対する側壁の距離が部分的に異なるため、フランジに対する長尺部材の保持力も部分的に異なり、装着安定性が低下するおそれがある。
そこで、このような問題に鑑みて本発明者らが鋭意検討の結果、側壁の角度によって挟持部の開口幅を調整していた従来技術とは根本的に異なる着想に至り、本願発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の目的は、部位によって厚さが異なるフランジに装着した場合であってもフランジに対する装着安定性の低下を防止できる長尺部材と、その製造方法を提供することにある。
そのための手段として、本発明は長尺部材の製造方法として提供される。この長尺部材は、車両ボディの開口部周縁へシールするために配される長尺部材であって、底壁と、該底壁の両側縁から立設する第1の側壁及び第2の側壁と、前記底壁から前記第1の側壁及び第2の側壁にかけてこれらの内部に埋設される金属製の芯材とを有する断面U字状の挟持部を備える。また、前記第1の側壁の外面には、中空筒状のシール部が設けられている。また、第2の側壁の内面には、少なくとも1つの挟持リップが突出形成されている。前記挟持部のうち、長手方向と直交する幅方向において、前記第1の側壁の先端から前記底壁を介して前記第2の側壁の先端に至る寸法は、長手方向全体に亘って一定である。そのうえで、前記底壁の幅寸法が長手方向において部分的に異なっている。これにより、前記挟持部には開口幅が異なる幅狭部と幅広部とが長手方向に連続して混在している。なお、第1の側壁及び第2の側壁の「先端」とは断面視における先端を意味し、挟持部全体を基準とすれば開口縁に相当する。
本発明にかかる長尺部材の製造方法によって製造される長尺部材では、底壁の幅寸法が部分的に異なっていることで、挟持部の開口幅が部分的に異なっている。これにより、挟持部の開口幅をフランジの厚みに合わせて設計通り形成でき、挟持部の長手方向において、フランジから第2の側壁までの距離が一定になる。このため、フランジに対する挟持部の保持力が部分的に低下することを防止でき、フランジへの装着安定性が悪化することを避けることができる。さらに、フランジに挟持部を挿入するときの挿入力を長手方向において一定にすることができ、フランジへの挟持部の取付作業性の悪化を避けることもできる。
なお、本発明にかかる長尺部材の製造方法によって製造される長尺部材では必ずしも側壁の角度を部分的に異ならせる必要は無い。したがって、前記第1の側壁と前記底壁とがなす角度、及び前記第2の側壁と前記底壁とがなす角度は部分的に異なっていても良いが、それぞれ長手方向全体に亘って一定にしても良い。これにより、フランジに対する第1の側壁及び第2の側壁の各角度も長手方向全体に亘って一定となることで、フランジに対する挟持リップの当たり方を挟持部の長手方向全体において一定にすることができ、フランジに対する長尺部材の保持力、すなわち装着安定性が向上する。
本発明にかかる長尺部材の製造方法によって製造される長尺部材へ装飾リップを設ける場合、当該装飾リップは前記底壁の外面から第2の側壁に向けて突設することが好ましい。本発明にかかる長尺部材の製造方法によって製造される長尺部材では、第1の側壁の先端から底壁を経て第2の先端に至る寸法は一定であることを前提として、底壁の幅寸法が部分的に異なっている。これにより、挟持部の開口幅が狭い幅狭部では第2の側壁の長さ(立設寸法)は相対的に長く、開口幅が広い幅広部では第2の側壁の長さ(立設寸法)は相対的に短くなっている。したがって、装飾リップを従来と同様に第2の側壁の外面へ設けると、装飾リップの突設位置が部分的に異なってしまう。そこで、装飾リップを底壁の外面へ設けておけば、底壁の幅寸法の変動に伴う影響を抑えて装飾リップの突設位置を比較的安定させることができる。
本発明は、上記長尺部材を押出成形を経て長手方向に連続して順次加工する、長尺部材の製造方法として提案される。当該長尺部材の製造方法は、前記底壁に対する前記第1の側壁及び第2の側壁の角度が、それぞれ完成品における最終的な角度以上の角度で長手方向全体に亘って一定な予備成形体に予備成形する予備成形工程と、前記底壁に対する前記第1の側壁の角度を保持したまま、前記底壁と前記第2の側壁との間の折曲点を幅方向に変動させながら前記折曲点で折り曲げることで、長手方向において部分的に前記底壁の幅寸法を異ならせる幅変動工程、とを有する。
本発明の長尺部材の製造方法において、予備成形工程を経ていれば、これに続く加工工程を容易に行うことができる。ここで、幅変動工程では、第1の側壁の角度を保持しているので、底壁の幅を変動させる際に第1の側壁の角度が不用意に変動することを避けることができる。そのうえで、第1の側壁の先端から底壁を経て第2の先端に至る寸法は一定であることを前提として、第2の側壁の折曲点を幅方向に変動させることで、円滑に底壁の幅寸法、延いては挟持部の開口幅を長手方向において部分的に異ならせることができる。
予備成形工程における底壁に対する第1の側壁の角度や、幅変動工程において折曲点で折り曲げたときの底壁に対する第2の側壁の角度を、完成品における最終的な角度より大きい角度に設定した場合は、前記第1の側壁及び前記第2の側壁の少なくともいずれか一方の前記底壁に対する角度を、最終的な角度に折り曲げ加工する最終折曲工程を設けておく。
前記幅変動工程において、前記第2の側壁の角度は、少なくとも前記第2の側壁の外面を支持する支持部材と、前記第2の側壁の内面側から該第2の側壁の折曲点に臨む押さえ部材とを有する角度保持機構によって一定に保持することが好ましい。これにより、長手方向に連続して供給されてくる予備成形体における第2の側壁の角度を、底壁の幅寸法を変動させながら安定して保持することができる。
そのうえで、前記角度保持機構に対して前記予備成形体全体が幅方向へ相対的に変位するように、前記角度保持機構と前記予備成形体全体の少なくともいずれか一方を移動させることで、前記折曲点を幅方向に変動させればよい。このように、予備成形体全体を幅方向に相対移動させることで、容易且つ円滑に底壁の幅寸法を変動させることができる。
前記幅変動工程では、前記シール部を把持部材によって把持し、前記角度保持機構の位置を固定した状態で、前記把持部材を前記角度保持機構に対して幅方向に進退させることで、前記予備成形体全体を幅方向へ相対的に移動させることができる。これによれば、長尺部材のシール部を有効利用して容易且つ確実に底壁の幅寸法を変動させることができる。
前記支持部材は、前記底壁の外面も支持していることが好ましい。これにより、予備成形体を角度保持機構に対してより安定させた状態で移動させられる。
本発明の製造方法により製造される長尺部材は、底壁の幅寸法を部分的に異ならせることで幅狭部と幅広部とを形成しているので、挟持部の開口幅を設計通り安定して形成することができる。これにより、長尺部材の取り付け作業性や、装着安定性が向上する。
また、本発明の長尺部材の製造方法によれば、底壁と側壁とがなす角度が不用意に所定角度以外の角度に形成されることなく、長手方向に連続して供給されてくる長尺部材の挟持部の開口幅を、フランジの厚さに応じて部分的に異ならせることができる。
(長尺部材)
本発明の長尺部材は、自動車等の車両において、車両ボディの開口部周縁へ、当該開口部をシールするために配される部材である。例えば図1に示すように、自動車1のボディは、ルーフパネル2やサイドパネル3など、複数枚のパネルが繋ぎ合わされて形成されている。そして、サイドパネル3には、乗員が自動車1へ乗降するための乗降開口部が開口しており、この乗降開口部にはフロントドア4やリアドア5が開閉自在に設けられている。一方、乗降開口部の周縁にはフランジ(図示せず)が形成されており、当該フランジに沿って長尺部材であるウエザーストリップ10(トリム材)が装着されている。そのため、フロントドア4やリアドア5を閉めたとき、これらのドアがウエザーストリップ10と当接することで、サイドパネル3とフロントドア4やリアドア5との間がシールされる。
また、図示していないが、車両ボディの後部にはトランクルームも存在し、そのトランク開口部は、開閉自在に設けられたドアやリッド(バックドア、テールゲート、ハッチゲートともいう)によって閉鎖される。そして、トランク開口部にもフランジが形成されており、当該フランジに沿ってウエザーストリップが装着される。
一方、本発明の長尺部材は、底壁と第1の側壁及び第2の側壁とによって構成される挟持部、及び中空筒状のシール部を少なくとも備え、車両ボディの開口部をシールするために使用されるものであれば特に限定されないが、以下には、長尺部材としてウエザーストリップを例に挙げて説明する。
図2に示すように、ウエザーストリップ10は長手方向全体に亘ってほぼ一様な構成であり、底壁11と、該底壁11の両側縁から立設する第1の側壁12及び第2の側壁13とによって構成される挟持部10aを備える。図3,図4に示すように、挟持部10aの断面形状は、U字状を呈する。挟持部10aの内部には、底壁11から第1の側壁12及び第2の側壁13にかけて芯材14が埋設されている。この芯材14によって、底壁11と第1の側壁12及び第2の側壁13とがなす角度、すなわち挟持部10aの開口幅が保形される。芯材14は、金属製の一枚板からなり、加工前は平板状である。
挟持部10aのうち、長手方向と直交する幅方向において、第1の側壁12の先端から底壁11を介して第2の側壁13の先端に至る寸法は、長手方向全体に亘って一定である。すなわち、底壁11の幅寸法と、第1の側壁12及び第2の側壁13の高さ寸法(立設寸法)との合計寸法は、長手方向全体に亘って一定である。そのうえで、底壁11の幅寸法は、長手方向において部分的に異なっている。これにより、挟持部10aには、開口幅Hsが相対的に狭い幅狭部10as(図3)と、開口幅Hwが相対的に広い幅広部10aw(図4)とが、長手方向に連続して混在している。第1の側壁12の高さ寸法は、長手方向全体に亘って一定である。これに対し、幅狭部10asでは、第2の側壁13の高さ寸法は幅広部10awに比べて相対的に大きい。一方、幅広部10awでは、第2の側壁13の高さ寸法は幅狭部10asに比べて相対的に小さい。なお、第1の側壁12と底壁11とがなす角度θ1、及び第2の側壁13と底壁とがなす角度θ2も、それぞれ長手方向全体に亘って一定である。
第1の側壁12の内面には、短寸な挟持リップ15が一体的に突出形成されている。挟持リップ15は、車両ボディの開口部周縁のフランジに弾接して、ウエザーストリップ10の装着状態を保持するための部材である。したがって、挟持リップ15は少なくとも1つ設けられていれば良いが、複数設けることが好ましい。挟持リップ15が複数設けられていれば、ウエザーストリップ10の保持力が高まる。一方、第2の側壁13の内面にも、挟持リップ15と対向するように挟持リップ16が一体的に突出形成されている。第2の側壁13の挟持リップ16は第1の側壁12の挟持リップ15よりも長寸であり、第2の側壁13の先端部に1つ設けられている。挟持リップ16も、車両ボディの開口部周縁のフランジに弾接して、ウエザーストリップ10の装着状態を保持するための部材である。つまり、ウエザーストリップ10をフランジへ装着した状態では、一対の挟持リップ15,16が協働してフランジを弾接挟持することで、ウエザーストリップ10の装着状態が保持される。
ウエザーストリップ10は、第1の側壁12が車外側、第2の側壁13が車内側となるようにフランジへ装着される。すなわち、第1の側壁12は車外側側壁であり、第2の側壁13は車内側側壁である。第1の側壁12の外面には、中空筒状のシール部17が設けられている。底壁11の外面には、舌状の装飾リップ18が一体的に突出して形成されている。詳しくは、挟持部の幅方向において、底壁11の外面における第1の側壁12側に装飾リップ18が設けられている。これにより、ウエザーストリップ10の長手方向において第2の側壁13の折曲点の位置が変わっても、装飾リップ18の突設位置が変動することを避けられている。したがって、装飾リップ18は、ウエザーストリップ10を車両開口部周縁のフランジへ装着した状態のとき、ウエザーストリップ10の長手方向において、一定の位置で車内の内装部材の端末を覆う(隠す)ことができる。そのため、装飾リップ18は第2の側壁13(車内側)へ向けて突設されており、第2の側壁13よりも長寸である。
ウエザーストリップ10は、芯材14を除いて、ゴム、熱可塑性樹脂、又は熱可塑性エラストマー等の弾性変形可能なポリマー材料からなり、押出成形により製造される。なお、ウエザーストリップ10は、芯材14を除いて全体が同じ材料で形成されていてもよいし、部分的に異なるポリマー材料によって形成することもできる。例えば、挟持部10aをソリッドゴム製とし、シール部17を挟持部10aよりも柔軟な発泡ゴム製とすることもできる。ウエザーストリップ10の材料が部分的に異なる場合は、複数種の材料によって同時に押出成形する共押出成形により製造する。また、部分的に被覆層を設けることもできる。
ウエザーストリップ10は、車両ボディの開口部周縁にボティパネルによって形成されたフランジを挟持部10aの間へ差し込むように取り付ける。このとき、第1の側壁12の挟持リップ15と第2の側壁13の挟持リップ16が共にフランジに弾接して挟持することで、ウエザーストリップ10はフランジから脱落せず装着状態が保持される。そして、開口部を閉鎖する車両ドアやリッド等が閉められれば、シール部17がドアやリッド等によって潰され、車両ボティの開口部がシールされる。
ここで、車両ボティ開口部のフランジは、1枚のボディパネルからなる部分や、複数枚のボディパネルを重ねて溶接した構成の部分があり、フランジの厚さは部分的に異なっている。そこで、挟持部10aの開口幅も、フランジの厚さに応じて長手方向において部分的に異ならせており、挟持部10aは開口幅Hsが相対的に小さい幅狭部10asと、開口幅Hwが相対的に大きい幅広部10awが混在している。具体的には、フランジにおける厚さの大きい部位に対応して幅広部10awが形成されており、フランジにおける厚さの小さい部位に対応して幅狭部10asが形成されている。
このように、フランジの厚みに応じてウエザーストリップ10の開口幅も異ならせてあることで、フランジを挟持部10aに挿入するときの挿入力を、ウエザーストリップ10の長手方向全体に亘って均一化することができ、取り付け作業性が向上する。また、第1の側壁12及び第2の側壁13のフランジに対する距離や角度も、長手方向全体に亘って一定なので、フランジに対する挟持リップ15,16の当たり方をウエザーストリップ10の長手方向全体に亘って一定にすることができ、装着安定性(保持力)も向上する。さらに、シール部17の位置や車両ドア等との当接角度も一定なので、シール性も安定する。
(製造方法)
次に、ウエザーストリップ10の製造方法について説明する。ウエザーストリップ10は、一般的には押出成形を経て種々の装置へ長手方向に順次供給し、長手方向に連続して加工される。先ずは、その一連の加工工程について説明する。
図5に示すように、先ず、ロール巻きされた芯材4を、アンコイラ20によって平板状に引き出しながらロール成形装置21へ供給する。ロール成形装置21では、平板状の芯材4を所定角度に折り曲げて、予備成形体10’(図6参照)の底壁11に対する第1の側壁12及び第2の側壁13の角度θ1,θ2を形成する。次いで、折り曲げられた芯材4を押出成形装置22へ供給してポリマー材料と共に押出成形し、加熱装置23及び冷却装置24をこの順で経て、図6に示す所定形状の予備成形体10’が得られる(予備成形工程)。
この予備成形工程では、底壁11に対する第1の側壁12及び第2の側壁13の角度θ1及びθ2が、それぞれ完成品としての最終的な角度以上の角度に形成されていればよい。予備成形体10’における底壁11に対する第1の側壁12及び第2の側壁13の角度θ1及びθ2は、それぞれ長手方向全体に亘って一定である。図6に示す実施形態では、予備成形体10’における第1の側壁12及び第2の側壁13の角度θ1及びθ2は、共に完成品における最終的な角度よりも大きく(幅方向外方へ開いた状態)形成されている。
続いて、予備成形体10’を引取機30によって引き取りながら、可変ベンダー装置40へ供給する。可変ベンダー装置40内では、底壁11の幅方向を長手方向において部分的に異ならせる幅変動工程と、底壁11と第1の側壁12及び第2の側壁13とがなす角度θ1及びθ2を、完成品として最終的な角度へ折り曲げ加工する最終折曲工程とが連続して行われる。なお、予備成形体10’における第1の側壁12の角度θ1や、幅変動工程における第2の側壁13の角度θ2が、既に最終的な角度に形成されている場合は、最終折曲工程は不要である。最後に、切断機31によって所定長さ毎に切断することで、完成品としてのウエザーストリップ10が得られる。以下に、幅変動工程と最終折曲工程について説明する。
幅変動工程では、予備成形体10’が図7〜図9に示す幅変動機構を通して加工される。この幅変動機構は、少なくとも第2の側壁13の外面を支持する支持部材41と、挟持部10aの内面側を支持する押さえ部材42とによって構成される角度保持機構、及びシール部17を把持する把持部材43を有する。なお、図7における符号44は、引取機30から供給されてくる予備成形体10’を、幅変動機構へ安定して供給案内するための台座である。
支持部材41は、円板状の固定ローラからなる。支持部材41は、垂直に配されて縦方向に周回転し、その回転軸45の位置は不動である。また、支持部材41の内面(把持部材43との対向面)の外周縁部には、段部41aが全周に亘って形成されている。この段部41aは、底壁11の外面を支持する。したがって、本実施形態では、支持部材41によって予備成形体10’の側面及び下面が支持される。すなわち、第2の側壁13及び底壁11の外面が支持される。なお、本実施形態の予備成形体10’には、底壁11から第2の側壁13に向けて装飾リップ18が設けられている。この装飾リップ18は、図8,図9に示すように第2の側壁13と共に支持部材41に支持される。したがって、第2の側壁13及び底壁11は、装飾リップ18を介して支持部材41の縦壁部41bと段部41aに間接的に支持される。
押さえ部材42も、円板状の固定ローラからなる。押さえ部材42は、支持部材41の上方において垂直に配されている。押さえ部材42も縦方向に周回転し、その回転軸46の位置は不動である。押さえ部材42は、第2の側壁13の内面側から該第2の側壁13の折曲点に臨む。なお、押さえ部材42の外周縁は、他の部分(径方向中央部)よりも肉厚となっている。押さえ部材42の外周縁の厚みは、ウエザーストリップ10における底壁11の内面の最小幅寸法とほぼ同じに設計されている。また、押さえ部材42の外周面は平坦面であり、この外周面によって底壁11の内面も支持される。
把持部材43は、予備成形体10’の供給径路に沿って配され、その内部には、シール部17を受け入れ把持する把持空間43aが形成されている。把持空間43aは把持部材43の長手方向両端に亘って形成されており、予備成形体10’の供給方向上流側の側面からシール部17を把持空間43a内へ受け入れる。また、把持部材43における角度保持機構との対向面において、把持空間43aは長手方向両端に亘って外部と連通開口している。すなわち、把持部材43における角度保持機構との対向面には、開口下縁部43bと開口上縁部43cとによって外部連通開口が形成されている。この外部連通開口を介して、予備成形体10’の第1の側壁12が、シール部17と共に把持部材43の外方から把持空間43a内に入り込んだ状態となる。
開口下縁部43bは、予備成形体10’における底壁11とシール部17との間に入り込んで、シール部17を下方から把持する。そのため、開口下縁部43bは、予備成形体10’における底壁11とシール部17との間の空間の形状に対応した形状に形成されている。一方、開口上縁部43cは、予備成形体10’の第1の側壁12の内面に当接し、シール部17を上方から間接的に把持する。したがって、開口上縁部43cも、第1の側壁12の内面に対応した形状に形成されている。
把持部材43は、シール部17を把持した状態のままで、予備成形体10’の幅方向にスライド可能となっている。把持部材43のスライド操作は、油圧シリンダ等によって行われる。
そして、支持部材41と押さえ部材42とによって第2の側壁12及び底壁11が装飾リップ18と共に挟持されることで、底壁11と第2の側壁13とがなす角度θ2が常時一定に保持される。つまり、幅変動工程においては、底壁11と第2の側壁13とがなす角度θ2が一定に保持されている。一方、シール部17が第1の側壁12と共に把持部材43によって把持されていることで、底壁11と第1の側壁12とがなす角度θ1も常時一定に保持される。つまり、幅変動工程においては、底壁11と第1の側壁12とがなす角度θ1も一定に保持されている。この状態において、長手方向に連続供給されてくる予備成形体10’に対して、把持部材43を適宜幅方向にスライドさせることで、底壁11の幅寸法を長手方向において部分的に異ならせることができる。
具体的には、フランジの厚みが小さい部分に対応する部位に対しては、図8に示すように把持部材43を角度保持機構に近接する方向へスライドさせる。これにより、予備成形体10’全体も幅方向にスライドする。しかし、第1の側壁12及びシール部17は把持部材43によって把持固定されているので、底壁11部分が支持部材41と押さえ部材42との間に滑り込むことになる。このとき、支持部材41と押さえ部材42との位置関係は変わらないので、第2の側壁13が支持部材41に沿って上方へせり上がることになる。つまり、角度保持機構に対して予備成形体10’全体が相対的に変位する。そして、押さえ部材42が第2の側壁13の折曲点に臨んだ位置で固定されていることで、幅広部10awでは底壁11となる部分が折り曲げられて、第2の側壁13の一部となる。つまり、底壁11と第2の側壁12との折曲点が芯材14の幅方向中心側へ変動する。これにより底壁11の幅寸法が小さくなり、図3に示す開口幅の小さな幅狭部10asが形成される。
一方、フランジの厚みが大きい部分に対しては、図9に示すように把持部材43を角度保持機構から離間する方向へスライドさせる。これにより、予備成形体10’全体も幅方向にスライドする。この場合も、第1の側壁12及びシール部17は把持部材43によって把持固定されているので、第2の側壁13部分が支持部材41と押さえ部材42との間から引き抜かれるように移動する。このとき、支持部材41と押さえ部材42との位置関係は変わらないので、第2の側壁13が支持部材41に沿って下方へずり下がることになる。つまり、角度保持機構に対して予備成形体10’全体が相対的に変位する。そして、押さえ部材42が第2の側壁13の折曲点に臨んだ位置で固定されていることで、幅狭部10asでは第2の側壁13となる部分が折り曲げられて、底壁11の一部となる。つまり、底壁11と第2の側壁12との折曲点が第2の側壁13の先端側へ変動する。これにより、底壁11の幅寸法が大きくなり、図4に示す開口幅の大きな幅広部10awが形成される。
幅変動工程に続いて行われる最終折曲工程では、図10に示すように、水平方向に対向配置された一対の可動ローラ48,48によって、予備成形体10’における第1の側壁12及び第2の側壁13と底壁11とがなす角度を、完成品における最終的な角度に折り曲げ加工する。可動ローラ48は円板状部材であって、横向きに周回転する。可動ローラ48は、その回転軸(図示せず)が幅方向にスライド可能となっており、第1の側壁12及び第2の側壁13をそれぞれ挟持部10aの内側に向けて押圧する。そのうえで、幅狭部10asと幅広部10awを含めてウエザーストリップ10の長手方向全体に亘って第1の側壁12及び第2の側壁13と底壁11とがなす角度を一定にするために、幅狭部10as部分を折り曲げ加工するときは両可動ローラ48,48間の距離が小さくなり、幅広部10awを折り曲げ加工するときは両可動ローラ48,48間の距離が大きくなる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、これに限られることは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では可動ローラ48で第1の側壁12と第2の側壁13を同時に押圧したが、両側壁12,13のうちいずれか片方ずつ可動ローラ48で押圧して折り曲げ加工を行っても良い。また、両側壁12,13のうちいずれか一方が、最終折曲工程に至る前に既に底壁11に対して最終的な角度に形成されていれば、最終折曲工程では、両側壁12,13のうちいずれか他方のみの底壁11に対する角度を最終的な角度へ折り曲げ加工すれば良い。つまり、予備成形工程において、底壁11に対する第1の側壁12の角度を最終的な角度に設定した場合は、最終折曲工程における底壁11と第1の側壁12との間の折り曲げ加工は不要である。また、幅変動工程において、折曲点で底壁11に対する第2の側壁13の角度を最終的な角度に折り曲げた場合は、最終折曲工程における底壁11と第2の側壁13との間の折り曲げ加工は不要である。
幅変動工程では、把持部材43の位置を固定しながら、角度保持機構を幅方向にスライドさせることで、角度保持機構に対して予備成形体10’全体を相対的に幅方向に変位させることもできる。また、幅変動工程において、底壁11の外面は、必ずしも支持部材41の段部41aによって支持されていなくてもよい。
また、ウエザーストリップ10の装着安定性が悪化しない範囲であれば、第1の側壁12と底壁11とがなす角度θ1、及び第2の側壁13と底壁11とがなす角度θ2は、それぞれ必ずしも長手方向全体に亘って一定である必要はない。つまり、本発明では、底壁11と第1の側壁12や第2の側壁13とがなす角度が部分的に異なっていることを完全否定するものではなく、幅狭部及び幅広部が形成してあれば、必要に応じて第1の側壁12及び第2の側壁13の少なくともいずれか一方の角度が長手方向において部分的に異なっていても良い。また、装飾リップ18は、必ずしも設ける必要は無い。
最終折曲工程では、可動ローラ48が側壁12,13を押圧するとき、挟持部10aが幅方向に移動することを規制するため、底壁11と第2の側壁13との折曲点の内面や、底壁11と第1の側壁12との境界部分の内面に、規制部材を当接させることもできる。