図1に示すフィルム積層体10は、結露による曇りを防ぐウィンドウフィルム、すなわち防曇フィルムであり、窓ガラスに貼り付けて使用することができる他、冷凍ショーケースのガラス、または、浴室あるいは洗面化粧台の鏡などに貼り付けて使用することができる。なお、この例のフィルム積層体10は、ガラスまたは鏡などに衝撃が与えられた際の割れ抑制機能及び飛散防止機能と、例えば夏場の日照による室内の温度の上昇を抑える遮熱機能と、例えば冬場の室外への放熱を抑制する断熱機能も有する。フィルム積層体10は、図1に示すように、セパレータ11、粘着層12、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称する)フィルム13、接着層14、トリアセチルセルロース(セルローストリアセテート、以下TACと称する)フィルム15、保護材16が、この順で重なった複層構造のフィルムである。この例では、フィルム積層体10は長尺であり、後述のようにロール状に巻かれた状態とされるが、目的とする形状及び大きさのシート状であってもよい。
フィルム積層体10は、貼り付けの際にセパレータ11及び保護材16が除去され、粘着層12とPETフィルム13と接着層14とTACフィルム15とからなるフィルム部分がガラスまたは鏡に貼られた状態になる。セパレータ11は、使用前のフィルム積層体10の粘着層12が貼り付け対象物(以下、被着物と称する)以外のものに触れた際に貼り付いてしまうことを防止するためのものであり、貼り付け前に剥離され、フィルム積層体10から除去される。このセパレータ11により、例えば、ロール状に巻かれている場合に重なったフィルム積層体10同士の貼り付き、及び/または、シート状にされたフィルム積層体10の被着物以外のものへの貼り付きが防止される。セパレータ11の素材は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETのうちいずれかひとつが好ましく、本実施形態ではPETを用いている。
保護材16は、使用前のフィルム積層体10を保護するためのものであり、使用中、すなわち被着物に貼り付けられた状態で用いられている間において外表面として露出するTACフィルム15の一方のフィルム面(以下、第1TAC面と称する)15aを、フィルム積層体10の保管及び/または輸送と、貼り付けとの際の汚染及び/または損傷から保護する。この例のフィルム積層体10は、貼り付けの際に被着物に当てられ、一般にスキージと呼ばれるプレート状(板状)の押し当て部材を、保護材16側から押圧した状態で移動させることで、被着物に貼り付けられる。このような貼り付け時におけるスキージの接触による損傷からも、第1TAC面15aは保護材16によって保護される。保護材16は、貼り付け後に剥離され、フィルム積層体10から除去される。保護材16の素材は、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETのうちいずれかひとつが好ましく、本実施形態ではポリエチレンを用いている。保護材16は、第1TAC面15aの耐傷性及び/または防汚性などに応じて適宜設けられるものである。したがって、フィルム積層体10は保護材16を備えない場合もある。
粘着層12は、被着物に対する粘着機能を担うものである。本実施形態の粘着層12は、水で濡らして粘着するものであるが、水は必ずしも付与しなくてもよく、粘着層12は水が無くても一定の粘着力を発現するものとしてある。水は粘着層12と、被着物の表面とのいずれに付与してもよく、両方に付与することがより好ましい。水は界面活性剤(例えば、市販の中性洗剤)を含んでいることがより好ましい。なお、本明細書中において「粘着」とは、接着の一種であり、被着物に貼り付けた後一定時間経過しても貼り付いている力(粘着力)の変化が小さく、必要に応じて剥離することが可能であることを意味する。粘着層12は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれかひとつで形成されていることが好ましく、本実施形態ではアクリル系粘着剤を用いている。なお、粘着層12の厚みは、特に限定されず、本実施形態では25μmとしている。
TACフィルム15は、虹むらを抑制し、かつ、結露による曇りを防止するためのものである。虹むらは、光が照射された際に、フィルム面における光の反射と、入射光の各フィルム面における屈折とにより起こる光干渉現象であり、虹のような複数色の色むらとして認められるものである。TACフィルム15は、PETフィルム13の一方のフィルム面(以下、第1PET面と称する)13aに設けられ、この例では、接着層14を介して設けられている。TACフィルム15は、ベース21とけん化層22とを有する2層構造となっており、ベース21がPETフィルム13側となるように配されている。前述のように保護材16は貼り付け後の剥離により除去されるので、けん化層22は、使用中のフィルム積層体10において露出する外表面を成す。
TACフィルム15は、セルロースアシレートにより形成されているセルロースアシレートフィルムの一例であり、セルロースアシレートとしてのTACにより形成されている。より具体的には、ベース21がTACにより形成されており、けん化層22がけん化されたTACにより形成されている。セルロースアシレートフィルムは、この例のような2層構造に限定されず、ベース21のみの単層構造であってもよいし、または、3層以上の複層構造であってもよい。例えば、本実施形態ではけん化層22がベース21の一方のベース面にのみ設けられているが、これに限られず、他方のベース面にも設けられていてよい。また、けん化層22を設けてあるベース21の他方のベース面には、接着層14との剥がれにくさを向上させる目的でコロナ放電処理などの処理がされてあっても良い。TACフィルム15が無い場合には虹むらが認められるが、フィルム積層体10はPETフィルム13の外側にTACフィルム15が設けられているから虹むらが抑制され、かつ、TACフィルム15はけん化層22を有するから、結露による曇りが防止される。
ベース21はTACフィルム15のフィルム本体であり、虹むらを抑制するためのものである。ベース21は、けん化層22を支持する支持体としても機能する。ベース21は、けん化されたセルロースアシレート(この例ではTAC)を非含有としている。
用いることができるセルロースアシレートについて、詳細を以下に説明する。セルロースアシレートは、セルロースのヒドロキシ基をカルボン酸でエステル化している割合、つまりアシル基の置換度(以下、アシル基置換度と称する)が下記式(1)〜(3)の全てを満足するものが特に好ましい。なお、(1)〜(3)において、A及びBはともにアシル基置換度であり、Aにおけるアシル基はアセチル基であり、Bにおけるアシル基は炭素原子数が3〜22のものである。
2.4≦A+B≦3.0・・・(1)
0≦A≦3.0・・・(2)
0≦B≦2.9・・・(3)
セルロースを構成し、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位にヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、このようなセルロースのヒドロキシ基の一部または全部がエステル化されて、ヒドロキシ基の水素が炭素数2以上のアシル基に置換されたポリマーである。なお、グルコース単位中のひとつのヒドロキシ基のエステル化が100%されていると置換度は1であるので、セルロースアシレートの場合には、2位、3位及び6位のヒドロキシ基がそれぞれ100%エステル化されていると置換度は3となる。
ここで、グルコース単位で2位のアシル基置換度をDS2、3位のアシル基置換度をDS3、6位のアシル基置換度をDS6として「DS2+DS3+DS6」で求められる全アシル基置換度は2.00〜3.00であることが好ましく、本実施形態では2.86である。
アシル基は1種類だけでもよいし、2種類以上であってもよい。アシル基が2種類以上であるときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位、及び6位のヒドロキシ基の水素のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位、及び6位におけるアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとするとき、「DSA+DSB」の値は、2.2〜2.86であることが好ましく、2.40〜2.80であることが特に好ましい。DSBは1.50以上であることが好ましく、1.7以上であることが特に好ましい。そして、DSBは、その28%以上が6位ヒドロキシ基の置換であることが好ましいが、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは31%以上、特に好ましくは32%以上が6位ヒドロキシ基の置換であることが好ましい。また、セルロースアシレートの6位の「DSA+DSB」の値が0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが特に好ましい。
炭素数が2以上であるアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどがあり、これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、プロピオニル基、ブタノイル基が特に好ましい。
ベース21には、TACの他に、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
ベース21は、分子量が500未満の可塑剤の質量が、ベース21のセルロースアシレートの質量に対して、多くても4%、すなわち4%以下に抑えられていることが好ましい。すなわち、ベース21におけるセルロースアシレートの質量をMAとし、ベース21における分子量が500未満の可塑剤の質量をMBとするときに、ベース21は、(MB/MA)×100で求める質量割合(単位;%)が4%以下であることが好ましい。この質量割合が4%以下であることにより、4%よりも大きい場合に比べて、分子量が500未満である可塑剤が第1TAC面15aに析出することが抑えられ、かつ、結露による曇りを長期間防止する性能(以下、長期防曇性と称する)がより確実に発現する。このベース21は、後述のようにけん化処理によってけん化されなかった残部であるのでTACフィルム15の材料となる後述のTAC材と同じ組成とされている。分子量が500未満の可塑剤は、けん化処理における後述のアシル基割合の低減を妨げる、第1TAC面15aにおける15秒後接触角が高くなる等の原因になる。しかし、TACフィルム15において(MB/MA)×100で求める質量割合(単位;%)が4%以下に小さく抑えられていることにより、4%よりも大きい場合に比べて、けん化処理によるアシル基割合の低減と15秒後接触角の低下との少なくともいずれか一方がより確実になる。なお、15秒後接触角は、純水を滴下してから15秒後における接触角である。接触角は、液滴法により求めることができる。なお、上記分子量は、元素分析、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、NMR(nuclear magnetic resonance、核磁気共鳴)、IR(Infrared Spectroscopy、赤外分光分析)などの一般的な化学物質の分子量決定手法にて決めることができる分子量であり、本実施形態では、ガスクロマトグラフィによる標準物質との比較で求めている。分子量が500未満の可塑剤としては、トリフェニルフォスフェート(TPP)と、ビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP)などが挙げられる。
ベース21には、ジカルボン酸とジオールとのエステル結合が含まれる繰り返し単位をもち、分子量が500以上10000以下の範囲内であるエステルオリゴマーを可塑剤として含むことが好ましく、本実施形態のベース21もこれを含んでいる。この分子量は、エステルオリゴマーが前述の500未満の分子量の可塑剤と異なり分子量の分布をもつため、GPC(Gel Permeation Chromatography、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による重量平均分子量と数平均分子量、末端官能基量測定、浸透圧測定による数平均分子量測定法、粘度測定による粘度平均分子量などのいずれかにより求めることができる。本実施形態では、末端官能基測定による数平均分子量測定法により求めている。分子量が500以上10000以下の範囲内であるエステルオリゴマーを可塑剤として用いることにより、フィルム積層体10は、被着物へ貼り付ける際の、貼り付けやすさと貼り直しやすさなどといったいわゆる取り扱い性が確実に向上する。また、可塑剤として上記のエステルオリゴマーを用いることにより、分子量が500未満である一般的な可塑剤モノマーを用いた場合に比べて、第1TAC面15aにおける析出がより確実に抑えられ、第1TAC面15aにおける15秒後接触角が低下しやすくなり長期防曇性がより確実に発現する。エスエルオリゴマーの分子量が大きいほど長期防曇性が良く分子量が小さいほどセルロースアシレートとの相溶性がよいため、エステルオリゴマーの分子量は、分子量700以上5000以下の範囲内がより好ましく、900以上3000以下の範囲内がさらに好ましい。
上記のジカルボン酸は、炭素数が2以上10以下の範囲内である脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましい。上記のジオールは、炭素数が2以上10以下の範囲内である脂肪族ジオールであることがより好ましい。これは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを用いることにより、フィルム積層体10に柔軟性を付与することができ、後述の15秒後接触角の低減を阻害する分解物が生成しにくいからである。脂肪族カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。本実施形態ではエステルとしてアジピン酸とエタンジオールによるエステルオリゴマー(末端水酸基定量法による数平均分子量が約1000である)を用いている。
ところで、特許文献1に記載される防曇フィルムは、結露が常時生じる窓あるいは浴室の鏡などに用いた場合には、白く濁る場合がある。これは高湿で水の多い環境に防曇フィルムがさらされた場合に、セルロースアシレートフィルムとPETフィルムとの間の接着層が白く濁ることによるものであり、セルロースアシレートフィルムが水を多く含む場合に顕在化することがわかった。白濁によって窓あるいは鏡の視認性が悪化する、白濁部分がむらとなり外観が悪くなるといった問題が生じる。そこで、フィルム積層体10においては、上記の白濁を抑制するために、ベース21が含水率を低く抑える添加剤を含むことが好ましい。ベース21の含水率を低く抑える添加剤としては、トリフェニルフォスフェート(TPP)と、ビフェニルジフェニルフォスフェート(BDP)と、分子量が500以上10000以下の範囲内であり、末端ヒドロキシ基と酸基との少なくともいずれか一方がモノカルボン酸またはモノアルコールなどにより封止されたエステルオリゴマーと、ジカルボン酸としてフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を含むエステルオリゴマー等などがあげられる。これらの添加剤を、添加量を調整したうえでベース21に含ませることにより、ベース21の含水率が低く抑えられ、その結果、フィルム積層体10の白濁が抑制される。この際の後述する初期防曇性と前述の長期防曇性とはけん化処理の条件を調整すること等により付与することができる。
けん化層22は、初期防曇性と長期防曇性との機能を担うものである。初期防曇性は、瞬間的な結露を防止する性能である。けん化層22は、第1TAC面15aをなす。けん化層22は、前述の通り、けん化されたセルロースアシレート、この例ではけん化されたTACを含む。
第1TAC面15aのアシル基量をXとし、TACフィルム15の他方のフィルム面(以下、第2TAC面と称する)15bのアシル基量をYとするときに、X/Yにより求めるアシル基割合は0.7以下であり、本実施形態では例えば0.3としている。アシル基割合が小さいほど、第2TAC面15bに対して第1TAC面15aはアシル基が少なく、セルロースアシレートフィルムのけん化処理において、より多くのアシル基がけん化されて親水基になったことを意味する。
アシル基割合は、初期防曇性と関係がある。具体的には、アシル基割合が小さいほど、初期防曇性が良い。例えば、縦軸を初期防曇性とし、横軸をアシル基割合としたグラフにおいて、初期防曇性とアシル基との関係は概ね直線になる。アシル基割合が0.7以下、すなわち0以上0.7以下の範囲内であることにより、0.7よりも大きい場合に比べて、優れた初期防曇性を発現する。アシル基割合は、0.01以上0.6以下の範囲内であることがより好ましく、0.05以上0.5以下の範囲内であることがさらに好ましい。
アシル基量Xとアシル基量Yとは、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR,Fourier Transform Infrared Spectroscopy、以下FT−IRと称する)の全反射測定(ATR,Attenuated Total Reflection)法(以下、ATR法と称する)によって求められるアシル基のスペクトル強度として求める。具体的には、セルロースアシレートのアシル基のシグナルのスペクトル強度を、セルロース系ポリマーの共通シグナルのスペクトル強度により補正(規格化)する。本実施形態ではセルロースアシレートとしてTACを用いているのでアシル基はアセチル基であり、アセチル基のシグナルは1210cm-1である。セルロース系ポリマーの共通シグナルは1030cm-1とすることが好ましい。そして、補正して得られたセルロースアシレートのアシル基のシグナルのスペクトル強度を、アシル基量X、アシル基量Yとして求める。このように、アシル基量Xとアシル基量Yとは、アシル基の数に置き換えられる指標である。
FT−IRのATR法は、周知のように測定試料に対して光を侵入させてスペクトル強度を求める方法であり、得られるスペクトル強度は、測定試料の厳格な意味での表面のものではない。一般的なFT−IRのATR法での一手法である、ダイアモンドプリズムを用い、測定角度を45度にして実施した場合には、測定試料の表面からの光の侵入深さは約2〜3μmである。本実施形態のけん化層22は後述のように非常に薄いため、光の侵入深さが2μmよりも深くなるほど、けん化層22について求めるアシル基量としての信頼性が薄れる。そこで、第1TAC面15aから深さ2μmの範囲のスペクトル強度を、アシル基量Xとして求めることが好ましく、本実施形態でも光の侵入深さを2μmに設定して、第1TAC面15aから2μm以下の範囲のスペクトル強度をアシル基量Xとしている。
同様に、第2TAC面15bから深さ2μmの範囲のスペクトル強度を、アシル基量Yとして求めることが好ましく、本実施形態でもそのようにしている。第2TAC面15bにもけん化層を設けている場合には、ベース21の厚み方向の中央においてアシル基量を求め、これをアシル基量Yとして用いることが、簡易性の観点と、ベース21について求めるアシル基量としての信頼性の観点とから好ましい。第2TAC面15bにおけるアシル基量Yを上記の方法により求めることが困難な場合には、ベース21をメチレンクロライド及び/またはクロロホルム等に溶解し、この溶液からフィルムを形成してこのフィルムのフィルム面におけるアシル基量をIRにより求める等、他の手法により求めてもよい。
15秒後接触角は長期防曇性と関係がある。具体的には、接触角が20度を下回ると特に長期防曇性が良い傾向を示す。より具体的には、長期防曇性は、15秒後接触角が20度以下になるところで急激に良化し、20度以下では良好な長期防曇性を示す傾向がある。15秒後接触角は、第1TAC面15aに親水性成分が十分存在することを示す特性であり、このように第1TAC面15aに親水性成分が多い場合には、第1TAC面15aに結露した水滴が十分濡れ広がった状態を維持できるため、長期防曇性に効果を示すものと考えられる。第1TAC面15aは、15秒後接触角が20°以下とされており、本実施形態では例えば13°である。15秒後接触角は、長期防曇性と関係するが、15秒後接触角を20°以下とするためには上記アシル基割合が0.7以下となるように第1TAC面15aのアシル基量Xを制御する。15秒後接触角は5°以上20°以下の範囲内であることが好ましく、8°以上20°以下の範囲内であることがより好ましく、10°以上18°以下の範囲内であることがさらに好ましい。なお、純水を滴下してからの時間を考慮して接触角を求め、この時間が15秒後である15秒後接触角にすることで、長期防曇性に優れたTACフィルム15が得られる。15秒後接触角はフィルム面の水との親和性を示す特性である。水に対する接触角の測定においては、けん化層22の表面に極わずかな厚みをもって膜状に形成された親水性部分(以下、親水性膜と称する)の内部へ純水がしみこんだり、親水性膜内部からフィルム成分が出てくるなどの現象が純水の滴下後の時間経過とともに生じるが、測定を滴下後15秒にすることによりフィルム面の長期防曇性と対応する親水性を測定できることを見出した。
15秒後接触角は、調湿(湿度調整)した後のフィルム積層体10について測定することが好ましく、調湿の処理条件は、温度が23℃以上28℃以下の範囲内であり、相対湿度が55%以上65%以下の範囲内である雰囲気下とすることが好ましく、調湿の時間を1時間以上とすることがより好ましい。本実施形態では温度が25℃、相対湿度が60%の雰囲気下で1時間調湿している。この調湿処理は、フィルム積層体10全体を調湿してもよいが、少なくともけん化層22を調湿すれば足りる。なお、本明細書中において、相対湿度について「%RH」の単位で記載する場合もあるが、上記の「%」と同じ意味である。
また、けん化層22の厚みを所定の範囲内にすることにより、初期防曇性と長期防曇性とをより確実に両立することができる。具体的には以下の通りである。アシル基割合と厚みけん化層22の厚みとには相関性があり、けん化層22の厚みは、アシル基割合が小さくなるほど大きくなる。初期防曇性は、前述のようにアシル基割合が小さいほど良いから、けん化層22の厚みが大きいほど良くなる。
また、けん化層22の厚みが0(ゼロ)から大きくなるに従い、15秒後接触角は漸減するが、ある程度以上にけん化層22の厚みが大きくなると漸増するようになる。この漸増は、けん化層22の厚みを大きくするために後述のけん化の条件を強くすると、15秒後接触角を低減している前述の親水性膜が減少すること、もしくはけん化層22の厚みが大きすぎることにより水を保持することができる保持領域が大きくなりすぎて、水が第1TAC面15aよりも内部に入り込んでいくことが理由として考えられる。長期防曇性は前述のように15秒後接触角が20°以下であることで発現するから、15秒後接触角の漸増領域において20°と対応する厚みを上限値として、けん化層22の厚みを設定することが好ましい。これにより、初期防曇性に加えて、長期防曇性がより確実に確保される。
以上のことから、けん化層22の厚みは、初期防曇性と長期防曇性とをより確実に発現するために、1μm以上6μm以下の範囲内であることが好ましく、本実施形態では2μm以上5μmの範囲内としている。すなわち、けん化層22の厚みが1μm以上であることにより、1μm未満である場合に比べて初期防曇性がより確実になり、6μm以下であることにより、6μmより大きい場合に比べて長期防曇性がより確実になる。
なお、けん化層22の厚みは、本実施形態では以下の方法で求めている。フィルム積層体10からサンプリングした試料を、ジクロロメタンに24時間浸漬する。この浸漬において溶け残った試料を乾燥し、乾燥した試料の厚みを3回測定する。3つの測定値の平均を、けん化層22の厚みとする。
接着層14は、TACフィルム15とPETフィルム13とを接着させるためのものである。接着層14は、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれかひとつにより形成されていることが好ましく、本実施形態ではアクリル系粘着剤を用いている。アクリル系粘着剤は、接着層14の強度及び高温高湿の環境下における耐久性と、フィルム積層体10の透明性及びコストとの観点において好ましい。アクリル系粘着剤は、温度が25℃、相対湿度が85%の空気中における平衡含水率が0.1%以上1.0%以下の範囲内であることが特に好ましい。平衡含水率とは、周知のように、一定の温度及び湿度の空気中において材料中の水分量がその雰囲気中で平衡に達した状態における含水率である。本実施形態において平衡含水率は、以下の方法で求めている。すなわち、測定対象のサンプル(接着層14を形成するための上記の各樹脂及び/または各粘着剤)を、測定用基材(例えばPETから形成されたフィルム状の基材)上に塗布し、接着層14を形成する場合と同様の条件下で乾燥及び/または加熱することにより塗膜を形成する。形成した塗膜を、25℃、相対湿度80%の環境下で24時間以上調湿した後に、カールフィッシャー水分計(AQ−2200、平沼産業社製)を用いて測定し、塗膜中の水分の質量を、形成した塗膜の質量で除することにより、平衡含水率を求める。なお、接着層14の厚みは、特に限定されず、本実施形態では10μmとしている。本明細書において「接着」とは、前述の「粘着」を含み、単純に、貼り付ける対象物同士(本実施形態においてはTACフィルム15とPETフィルム13)が一体の状態に貼り付くことを意味する。
接着層14にアクリル系粘着剤を用いる場合には、フィルム積層体10が防曇フィルムとして使用される高温高湿環境下において、水分がTACフィルム15を透過し接着層14が含水することによる白濁と粘着力の低下とを抑制できるアクリル系粘着剤が好ましい。その手法としては、アクリル系粘着剤に用いるアクリルポリマーの重合成分において親水性成分として水酸基を含有するモノマーを一定比率含有しポリマー自体の親水性を向上させること、及び/または、架橋剤を添加し親水性を高めつつ架橋させることなどが好ましい。そして本実施形態では、接着層14のTACフィルム15と反対側の面にPETフィルム13を有するから、接着層14の白濁がより確実に抑えられる。このようなアクリル系粘着剤に用いるアクリルポリマーとしては、炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸エステルと、親水性成分として水酸基を有するビニルモノマーまたは(メタ)アクリル酸誘導体とからなる共重合体等が上げられる。炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシルなどがあげられる。水酸基を有するビニルモノマーや(メタ)アクリル酸誘導体としては(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有モノマーなどがあげられる。これらのアクリルポリマーにおける親水性成分の割合は、炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。ヒドロキシル基を有する親水性成分の量が一定以上であることにより、高湿環境下でのフィルム積層体10の白濁がより確実に抑制される。また、粘着力及び凝集力等の点より、ヒドロキシル基を有する親水性成分は、炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して50質量部以下であること好ましい。なおこれらのアクリルポリマー中に、他のビニルモノマー及び/または極性基含有モノマーを共重合することもできる。なお、本明細書において、「〜」を用いて表記する数値の範囲は、「〜」の前後の数値を含む。
また、アクリルポリマーに対して、架橋剤を配合させて架橋することにより、TACフィルム15及びPETフィルム13との粘着力及び高温高湿下での白濁がより確実に抑制される。このような架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート架橋剤、アジリジン架橋剤などが挙げられ、特に分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系架橋剤が好ましい。イソシアネート化合物系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート(TDIと表記する場合がある)、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられ、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。架橋剤は、アクリルポリマー100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、2〜10質量部が特に好ましい。また、接着層14は、目的とする用途に応じた透明性などの所期の性能を損なわない範囲で、各種添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、油溶性フェノール樹脂などの粘着付与剤と、可塑剤と、充填剤と、酸化防止剤と、界面活性剤と、着色剤と、シランカップリング剤と、無機系硬化助触媒と、紫外線吸収剤などが挙げられる。
PETフィルム13は、貼り付けの際及び使用中におけるTACフィルム15の吸水を抑制するためのものである。前述の粘着層12は、このPETフィルム13の他方のフィルム面(以下、第2PET面と称する)13bに設けられている。なお、この吸水は、液体の水を吸収することと、気体の水(すなわち水蒸気)を吸収することとの両方を意味する。PETフィルム13は、ポリエステルにより形成されているポリエステルフィルムの一例であり、ポリエステルとしてのPETにより形成されている。ポリエステルは、PETに限定されない。ポリエステルとしては、PET、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと称する)、ポリブチレンテレフタレート(略称は「PBT」)等が好ましく、PET、PENがより好ましく、PETが特に好ましい。PETフィルム13が無い場合には、TACフィルム15は貼り付けの際と使用中とにおいて吸水し、これにより膨張してしまう。しかし、フィルム積層体10はPETフィルム13を備えるから、TACフィルム15の吸水が抑えられ、これによって膨張が抑制される。なお、本実施形態においては第1PET面13aと第2PET面13bとのいずれにも特別な処理を施していない。しかし、接着層14との剥がれにくさを向上させる目的で第1PET面13aに、及び/または、粘着層12との剥がれにくさを向上させる目的で第2PET面13bに、コロナ放電処理などの処理がされてあってもよい。
ここで、TACフィルム15の厚みをTA(単位はμm)とし、PETフィルム13の厚みをTB(単位はμm)とし、使用に供されるフィルム部分、すなわちこの例では粘着層12とPETフィルム13と接着層14とTACフィルム15とからなるフィルム部分の厚みをTT(単位はμm)とする。フィルム積層体10は、例えば、厚みTAと厚みTBとの和(以下厚み和と称する)であるTA+TBが56μmであり、厚みTAが40μmであり、厚みTBが16μmであり、厚みTBを厚みTAで除した比(以下、厚み比と称する)TB/TAが0.4とされている。
ただし、厚み和TA+TB、厚みTA、厚みTB、厚み比TB/TAとは上記に限られず、フィルム積層体10は、厚み和TA+TBが20μm以上100μm以下の範囲内である条件下で、厚みTAが10μm以上60μm以下の範囲内、厚みTBが10μm以上80μm以下の範囲内、厚み比TB/TAが0.1以上3.0以下の範囲内であればよい。すなわち、フィルム積層体10は、以下の条件1と条件2と条件3と条件4とをすべて満たせばよい。
20μm≦TA+TB≦100μm・・・条件1
10μm≦TA≦60μm ・・・条件2
10μm≦TB≦80μm ・・・条件3
0.1≦TB/TA≦3.0 ・・・条件4
フィルム積層体10は、条件1を満たすので厚みが小さく抑えられている。これによって、窓に張り付ける場合のカッタなどによる余分な縁部の切除も迅速かつ的確に行われる。また、貼り付けの際には、保護材16の重量が加わっていても重量が小さいので作業者の人数が少なく抑えられる。このようにフィルム積層体10は作業性に優れる。厚み和TA+TBは、30μm以上100μm以下の範囲内であることがより好ましく、50μm以上80μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。すなわち、条件1は、30μm≦TA+TB≦100μmであることがより好ましく、50μm≦TA+TB≦80μmであることがさらに好ましい。
厚みTAが10μm以上であるからフィルム積層体10は虹むらが確実に抑制され、60μm以下であるからTACフィルム15が吸水した場合でもその吸水量は制限される。厚みTAは20μm以上60μm以下の範囲内であることがより好ましく、25μm以上50μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。すなわち、条件2は、20μm≦TA≦60μmであることがより好ましく、25μm≦TA≦50μmであることがさらに好ましい。なお、厚みTAが10μm未満であるTACフィルム15を製造することは、現在の技術では難易度が高く現実的に困難であるから、厚みTAの下限は10μmである。フィルム積層体10の白濁を抑制する観点では、厚みTAは、上記範囲内において小さいほど好ましい。これは、TACフィルム15、特にベース21の吸水量が低く抑えられるからである。
厚みTBが80μm以下であるからフィルム積層体10の厚みが過度に大きくならず、10μm以上であるから、貼り付けの際に水が使用される場合でも、PETフィルム13が防水層として十分に機能し、TACフィルム15への吸水が抑えられる。これにより、フィルム積層体10は膨張が小さく抑えられる。厚みTBは10μm以上60μm以下の範囲内であることがより好ましく、15μm以上50μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。すなわち、条件3は、10μm≦TB≦60μmであることがより好ましく、15μm≦TB≦50μmであることがさらに好ましい。なお、厚みTBが10μm未満のPETフィルム13を用いてフィルム積層体10を製造することは、後述の製造方法において、安定した搬送性確保の観点で技術的難易度が高く、現在の技術では現実的に困難であるから、厚みTBの下限は10μmである。
厚みTAと厚みTBとは、互いに貼り合わせる前のTACフィルム15とPETフィルム13とのそれぞれに、触針を接触させて直接的に厚みを測定する方法と、非接触のレーザーにより厚みを測定する機器を用いて測定する方法とのいずれかにより求めることができる。本実施形態では、互いに貼り合わせる前のTACフィルム15とPETフィルム13とのそれぞれについて、市販の厚み測定機器(Film Thickness Tester,アンリツ株式会社製 型式:KG−601B)、及び/または、F20 膜厚測定システム,フィルメトリクス株式会社)などを用いて測定している。ただし、厚みTAと厚みTBの測定方法は上記の測定機器のみに限定されない。フィルム積層体10からTACフィルム15の厚みTAとPETフィルム13の厚みTBとを求める方法としては、例えば、ガラスナイフなどを用いてフィルム積層体10を切断し、切断により露出した切断面を光学顕微鏡により観察し、観察画像において厚みTAと厚みTBを測定するなどの方法がある。
厚み比TB/TAが0.1以上3.0以下の範囲内であるから、厚みTBが80μm以下であっても、TACフィルム15が吸水した場合にTACフィルム15とPETフィルム13との変形しようとする力のバランスがとられる。この結果、フィルム積層体10は、カールすることが抑制され、被着物からの部分的な浮き上がりも抑えられる。この部分的な浮き上がりは、ウィンドウフィルムなどの各種フィルムにおいて、そのフィルムの周縁の粘着層12と被着物との間に、空気が入り込み、トンネル状に空洞部分が発生する現象である。厚み比TB/TAは0.2以上3.0以下の範囲内であることがより好ましく、0.2以上2.5以下の範囲内であることがさらに好ましい。すなわち、条件4は、0.2≦TB/TA≦3.0であることがより好ましく、0.2≦TB/TA≦2.5であることがさらに好ましい。
フィルム積層体10のセパレータ11と保護材16とを除いた、使用に供されるフィルム部分、すなわち、この例では粘着層12とPETフィルム13と接着層14とTACフィルム15とから構成されるフィルム部分は、湿度変化に対する膨張率が大きくても7.0×10-4である、すなわち7.0×10-4以下であることが好ましく、本実施形態では6.3×10-4である。湿度変化に対する膨張率が7.0×10-4以下である場合には、7.0×10-4より大きい場合に比べて、フィルム積層体10のカール、及び/または被着物からの部分的なはがれが、より確実に生じにくい。湿度変化に対する膨張率は、大きくても6.5×10-4、すなわち6.5×10-4以下であることがより好ましく、大きくても6.0×10-4、すなわち6.0×10-4以下であることがさらに好ましい。
湿度変化に対する膨張率は、以下の方法により求めることができる。まず、フィルム積層体10から3mm×20mmの長方形のサンプルを切り出す。このサンプルを温度が25℃、相対湿度が50%RHの雰囲気中に晒した後に、長辺方向の寸法L0(単位はmm)を測定する。その後、雰囲気の条件を温度25℃、相対湿度80%RHに急激に変化させ、変化開始から2分経過した時点のサンプルについて、長辺方向の寸法L1(単位はmm)を測定する。(L1−L0)/L0の式により求める値を、湿度変化に対する膨張率とする。湿度変化に対する膨張率は、厚みTAと、厚みTBと、厚み比TB/TAとの少なくともいずれかひとつを調節することにより調整することができる。
フィルム積層体10のセパレータ11と保護材16とを除いた、使用に供されるフィルム部分、すなわち、この例では粘着層12とPETフィルム13と接着層14とTACフィルム15とから構成されるフィルム部分は、粘着力が少なくとも10N/25mmであること、すなわち10N/25mm以上であることが好ましく、15N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることがさらに好ましく、本実施形態では26N/25mmである。粘着力が10N/25mm以上であることで、10N/25mmより小さい場合と比べて、フィルム積層体10は使用中に被着物から剥がれることがより確実に防止される。粘着力が15N/25mm以上であることにより、15N/25mmより小さい場合に比べて、貼り付けの際のカール、及び/または被着物からの部分的な剥がより生じにくい。粘着力が20N/25mm以上であることにより、20N/25mmより小さい場合と比べて、フィルム積層体10のカール及び/または被着物からの部分的なはがれがより確実に生じにくい。
粘着力は、日本工業規格JIS Z0237により求めることができる。具体的には以下である。まず、フィルム積層体10から幅が25mm、長さが150mmの長方形のサンプルを切り出す。上記の粘着力の単位における分母の「25mm」は、このサンプルの幅に対応したものである。このサンプルの長手方向における一方の端縁から100mmの長さの範囲をガラス板に貼り付ける。なお、この貼り付け範囲の粘着層12とガラス板との両方に、界面活性剤を微量含む水を付与して、貼り付けた。このようにガラス板に貼り付けた状態のサンプルを、温度25℃、相対湿度50%RHの環境下に3日以上置くことにより乾燥する。乾燥後、サンプルの長手方向における他方の端縁側を、サンプルが長手方向に伸びる方向に速度300mm/分の速度で引っ張り、サンプルがガラス板から剥がれるときの力を測定し、これを粘着力とする。粘着力は、粘着層12の素材、粘着層の厚み、厚み比TB/TAとの少なくともいずれかひとつを調節することにより調整することができる。
フィルム積層体10は、本実施形態では長尺に製造されているから、所望の大きさのシート状にカットされて使用に供される。
フィルム積層体10は、予めセパレータ11とPETフィルム13とTACフィルム15と保護材16とをそれぞれつくり、これらを積層させて製造することができる。以下、製造方法について説明するが、この製造方法は一例であり、これに限定されない。
TACフィルム15は、セルロースアシレートとしてのTACから形成されている単層構造のフィルム材(以下、TAC材と称する)をけん化することによりつくられる。TAC材は、この例では、TACを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体へ流延して流延膜を形成し、支持体から流延膜を剥がして乾燥することにより長尺につくっている。長尺のTAC材の一方の材料面にけん化液としてのアルカリ溶液を塗布し、塗布されたTAC材を加熱し、水で洗浄することによりTACフィルム15が得られる。けん化液にはイソプロピルアルコールを含有させている。けん化液の塗布によるけん化処理によると、けん化液中への浸漬によるけん化処理に比べて、厚みがより小さく、かつ、アシル基割合がより確実に0.7以下になる。したがって、厚みTAが条件2のように小さくても、確実に防曇性が発現する。けん化層22は、塗布と加熱とによるけん化処理によってTACがけん化され、層状に形成された領域である。ベース21は、TAC材のうち、けん化されなかった非けん化部分、すなわちけん化層22を除く残部である。したがって、前述のアシル基量Yは、けん化前のTAC材の厚み方向における任意の2μmの範囲のアシル基量に等しい。
15秒後接触角と、アシル基割合と、けん化層22の厚みとはけん化液におけるイソプロピルアルコール量及び/またはアルカリ量を増減することにより調節することができる。ベース21の可塑剤の種類と量とは、TAC材をつくるための上記ドープの処方により調整することができる。
周知の溶融押し出し法によりつくられた長尺のPETフィルム13を長手方向に搬送し、搬送中のPETフィルム13の第1PET面13aに、接着層14を形成する塗布液(以下、接着用塗布液と称する)を塗布し、その後、この塗膜を乾燥する。この乾燥処理は、例えば、乾燥した気体(例えば空気)が内部へ供給されるチャンバを乾燥装置として用い、このチャンバ内を通過させることにより行う。乾燥した気体は、例えば40℃などに加熱してもよい。塗膜の乾燥処理を経て形成された接着層14に対し、上記のTACフィルム15を長手方向に搬送しながら重ね合わせる。重ね合わせは、TACフィルム15と接着層14が形成されているPETフィルム13とを、互いに対向した状態に配されている一対のニップローラの間に案内し、この一対のニップローラの周面による押圧により行う。本実施形態では、この重ね合わせ後、PETフィルム13と接着層14とTACフィルム15とを備える積層部材をロール状に巻き取っているが、巻き取ることなく、次工程であるセパレータ11との重ね合わせの工程に供してもよい。なお、接着用塗布液に使用する溶媒は、酢酸エチル、トルエン、アルコール、水等の少なくともひとつを含むことが好ましく、本実施形態では酢酸エチルを溶媒の成分として用いている。
長尺のセパレータ11を長手方向に搬送し、搬送中のセパレータ11の一方の表面に、粘着層12を形成する塗布液(以下、粘着用塗布液と称する)を塗布し、その後、この塗膜を乾燥する。この乾燥処理は、例えば、乾燥した気体(例えば空気)が内部へ供給されるチャンバを乾燥装置として用い、このチャンバ内を通過させることにより行う。ここで用いる乾燥した気体も、前述の乾燥した気体と同様に、加熱してもよい。塗膜の乾燥処理を経て形成された粘着層12に対し、PETフィルム13と接着層14とTACフィルム15とを備える積層部材を、長手方向に搬送しながら重ね合わせる。重ね合わせは、第2PET面13bが粘着層12に接する状態に、TACフィルム15と接着層14とPETフィルム13との積層部材と、粘着層12とセパレータ11との積層部材とを、互いに対向して配されている一対のニップローラの間に案内し、この一対のニップローラの周面による押圧により行う。この重ね合わせ後、セパレータ11と粘着層12とPETフィルム13と接着層14とTACフィルム15とを備える積層部材をロール状に巻き取ってロールにする。なお、粘着用塗布液に使用する溶媒は、酢酸エチル、トルエン等の少なくともひとつを含むことが好ましく、本実施形態では酢酸エチルを溶媒の成分として用いている。
上記のようにして得られたロールを、エイジング工程に供する。エイジング工程は、粘着層12の粘着力を安定的に発現させる工程であり、ロールを、例えば温度25℃、相対湿度50%RHの雰囲気下に静置する。エイジング工程を経たロールから積層部材を引き出す。引き出した積層部材を一対のニップローラの間に、別途送られてくる長尺の保護材16とともに案内することにより保護材16と重ね合わせ、これにより、フィルム積層体10が得られる。保護材16と重ね合わせた後などに、所定の幅となるように各側部を切除する切除工程があってもよい。得られたフィルム積層体10は、ロール状に巻き取ってもよいし、所定の大きさ、形にカットしてもよい。本実施形態では長尺に得られたフィルム積層体10をロール状に巻き取っている。
[実施例1]〜[実施例4]
溶液製膜方法により、ドープから厚みが異なる2種のTAC材をつくった。下記の処方Aからなる組成物を密閉容器に投入し、常圧下で40℃に保温しながら攪拌することにより完全に溶解させ、これにより、ドープをつくった。TACの原料はリンターである。TACは、アシル基置換度が2.86、粘度平均重合度が320である。微粒子は、R972(日本アエロジル(株)製)である。この微粒子は、ジクロロメタンとメタノールとの混合物である溶剤にTACを溶解した溶液に、予め混合して分散した。そして、この分散液を、上記の密閉容器に投入して、下記処方の組成物とした。静置後、ろ紙(No.63、アドバンテック東洋(株)製)を使用してこの液を30℃に保持した状態で濾過し、脱泡操作を施した後、ドープを得た。
<処方A>
TAC 100質量部
ジクロロメタン 635質量部
メタノール 125質量部
可塑剤 15質量部
微粒子 1.3質量部
可塑剤としてはエステルとしてアジピン酸とエタンジオールによるエステルオリゴマーを用いた。このエステルオリゴマーの分子量は末端水酸基定量法による数平均分子量で約1000であった。
30℃に温度調整された処方Aのドープを、支持体上に流延した。支持体は、ステンレス製の無端のベルトである。流延膜に対して、形成直後から100℃の温風をあてて乾燥し、形成してから120秒後に、150N/mの剥離張力で流延膜を支持体から剥離し、TAC材を長尺に形成した。剥離位置における支持体の温度は10℃とした。剥離時おける流延膜の残留溶媒量は100質量%であった。
剥離したTAC材を、搬送路に配した多数のロールにより長手方向における張力を100N/mにした状態で搬送しながら、乾燥した。乾燥は、80℃に設定された第1乾燥ゾーンを5分間搬送させた後、さらに120℃に設定された第2乾燥ゾーンにおいて10分間搬送させることにより、行った。乾燥後、TAC材をロール状に巻き取ることにより、TAC材ロールを得た。TAC材の幅は1.5m、TAC材ロールにおける巻長は2000mであった。巻き取り時のTAC材の残留溶媒量は0.3%であった。
得られたTAC材をけん化することにより、TACフィルム15を製造した。TACフィルム15は、具体的には以下の方法で製造した。TAC材をTAC材ロールから巻き出して搬送し、搬送路に設けた塗布装置によりけん化液をTAC材の一方の表面に塗布した。けん化液の処方は以下である。なお、下記の処方において、%は質量での百分率である。
水酸化カリウム(KOH) 3.3%
イソプロピルアルコール 88%
水 3%
プロピレングリコール 5%
界面活性剤 0.04%
けん化液が塗布されたTAC材を、搬送路に設けてある加熱室に案内して、搬送しながら加熱し、その後、水が収容されている水槽に送って水で洗浄した。けん化は、TAC材の表面の温度を約55℃に約1分間保持することにより行った。このようにして得られた長尺のTACフィルム15は、アシル基割合が0.7であり、15秒後接触角が20°であった。15秒後接触角と、アシル基割合との各求め方は前述の通りである。厚みTAは、接触式厚み計を用いて幅方向0.5mm間隔で測定した値の平均値であり、表1に示す。
得られたTACフィルム15を、前述の方法でセパレータ11、PETフィルム13、保護材16と重ねて4種のフィルム積層体10を製造し、実施例1〜4とした。なお、用いたPETフィルム13は、厚みTBが異なる2種であり、各実施例での厚みTBは表1に示す。各フィルム積層体10について、厚み比TB/TAなどは、表1に示す。接着層14は市販のアクリル系粘着剤(綜研化学製SK1478)を用いることにより形成した。
得られたフィルム積層体10について、虹むらと、縁部の切除し易さと、カールによる剥がれと、部分的な浮き上がりとを下記の評価方法及び基準で評価した。
(1)虹むら
フィルム積層体10をガラス板に貼り付けた。貼り付けた状態でガラス板側から蛍光灯を用いて光を照射し、目視により観察し、以下の基準で評価した。
合格;色むらが確認されなかった。
不合格;色むらが確認された。
(2)縁部の切除し易さ
窓枠にはめ込まれたガラス板を被着物として用いた。このガラス板よりも大きなフィルム積層体10を準備した。ガラス板と、セパレータ11を剥離したフィルム積層体10の粘着層12とを、界面活性剤を微量に溶かした水で十分に濡らし、フィルム積層体10をガラス板に対してガラス版の周縁からはみ出すように位置合わせした。その後、窓枠の内縁に沿ってフィルム積層体10の余分な縁部を、カッタを用いて切除した。切除のし易さについて、以下の基準で評価した。なお、下記の「1度の切除作業」とは、複層フィルム10に差し込んだカッタを所定方向に1度移動させることにより切断する作業である。AとBとは合格、CとDとは不合格である。
A;1度の切除作業でスムーズに切除できた
B;カッタに抵抗を感じるものの1度の切除作業で切除できた
C;カッタを強めに押付けなければ1度の切除作業では切除できなかった
D;1度の切除作業では切除できず、切除には複数回の切除作業を要した
(3)カールによる剥がれ
被着物としてのガラス板と、セパレータ11を剥離したフィルム積層体10の粘着層12とを、界面活性剤を微量に溶かした水で十分に濡らし、フィルム積層体10をガラス板にスキージを用いて貼り付け、以下の基準で評価した。なお、水に溶かした界面活性剤は、中性洗剤である。AとBとは合格、CとDとは不合格である。
A;カールの発生なく、問題なく貼り付けられた。
B:四辺の一部がわずかにカールしたが、カールした部分はスキージによる貼り付け作業にて貼り付いた
C;四辺の一部がカールし、カールした部分はスキージによる貼り付け作業を繰り返さなければ貼りつかなかった。
D;四辺の一部がカールし、カールした部分はスキージによる繰り返しの貼り付け作業をしても剥がれてきた。
(4)部分的な浮き上がり
被着物としてのガラス板と、セパレータ11を剥離したフィルム積層体10の粘着層12とを、界面活性剤を微量に溶かした水で十分に濡らし、フィルム積層体10をガラス板にスキージを用いて貼り付けた。貼り付け後、保護材16を剥離し、以下の基準で評価した。AとBとは合格、CとDとは不合格である。
A;いずれの箇所からも浮き上がりが発生しなかった。
B:ごく小さな浮き上がりが発生したものの、浮き上がりは経時で消失した。
C;周縁の一部に小さな浮き上がりが発生し、貼り付けた中央部まで広がることはなかったものの、浮き上がり部分はフィルム積層体を押さえつけなければ貼りつかなかった。
D;周縁の一部で浮き上がりが発生し、この浮き上がりがトンネル状の空洞部としてフィルム積層体の中央部まで広がった。
[比較例1]〜[比較例6]
上記の各実施例と異なる層構造を有する6種類のフィルム積層体を製造し、比較例1〜6とした。各フィルム積層体については表1に示す。なお、TACフィルム15が設けられていない場合とPETフィルム13が設けられていない場合とには、表1においてはそれぞれ「TACフィルムの厚み」欄と「PETフィルムの厚み」欄とに「−」と記載し、「厚み比」欄にも「−」と記載する。
得られたフィルム積層体につき、虹むらと、縁部の切除し易さと、カールによる剥がれと、部分的な浮き上がりとを、それぞれ実施例と同じ方法及び基準で評価した。これらの結果は表1に示す。
[実施例5]〜[実施例8]
下記の処方Bからなる組成物を密閉容器に投入し、実施例1〜4と同様の方法によりドープをつくった。用いたTAC及び微粒子は実施例1〜4で用いたものとそれぞれ同じである。処方BのドープからTAC材をつくった。
<処方B>
TAC 100質量部
ジクロロメタン 635質量部
メタノール 125質量部
可塑剤 12質量部
微粒子 1.3質量部
可塑剤としてはエステルとしてフタル酸とエタンジオールによるエステルオリゴマーであり、かつ、末端ヒドロキシ基を酢酸封止したものを用いた。このエステルオリゴマーの分子量は末端封止する前の末端水酸基定量法による数平均分子量で約750であった。
接着層14を形成するための接着用塗布液を2種類つくった。そのうち一方を接着用塗布液Aとし、他方を接着用塗布液Bとする。接着用塗布液Aは以下の方法でつくった。冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備えた反応容器に、アクリル酸イソオクチル100質量部と、アクリル酸10質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル0.085質量部と、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部とを、酢酸エチルと共に加えることにより溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、60℃で4時間反応させることにより、重量平均分子量175万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。さらに、このアクリル系ポリマーを含有する溶液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整したアクリル系ポリマー溶液を得た。上記の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により求めた。
上記のアクリル系ポリマー溶液の固形分100質量部に対して、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(日本ポリウレタン(株)製,商品名「コロネート(登録商標)L」)2.0重量部と、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製,商品名「KMB−403」)0.02重量部とをこの順に配合して、接着用塗布液Aを調製した。この接着用塗布液AをPETフィルム13の第2PET面13bに均一に塗布してから乾燥することにより、アクリル系粘着剤を含む接着層14を形成した。形成した接着層14について温度25℃、相対湿度80%RHの空気中で24時間調湿した後の含水率を平衡含水率として測定したところ0.1%であった。
接着用塗布液Bは以下の方法でつくった。冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル100質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル20質量部と、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部とを、酢酸エチルと共に加えることにより溶液を調製した。次いで、この溶液に窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、60℃で4時間反応させることにより、重量平均分子量80万のアクリル系ポリマーa1を含有する溶液を得た。同様の方法でアクリル酸t−ブチル100重量部とアクリル酸2−ヒドロキシエチル10質量部からなる重量平均分子量1万のポリマーa2を得た。アクリル系ポリマーa1を100質量部、上記ポリマーa2を20質量部となるよう混合し、さらに架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートを10質量部添加し、トルエン、酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整した接着用塗布液Bを得た。この接着用塗布液BをPETフィルム13の第2PET面13bに均一に塗布してから乾燥することにより、アクリル系粘着剤を含む接着層14を形成した。形成した接着層14について温度25℃、相対湿度80%RHの空気中で24時間調湿した後の含水率を平衡含水率として測定したところ0.3%であった。
接着層14の形成には上記の接着用塗布液Aまたは接着用塗布液Bを用い、かつ、処方Aまたは処方Bのドープから得られたTAC材を用いて、実施例1〜4と同様の方法によりフィルム積層体を製造し、実施例5〜8とした。表2の「TAC材の種類」欄には、処方Aのドープを用いた場合にはAと記載し、処方Bのドープを用いた場合にはBと記載する。表2の「接着層」欄には、接着用塗布液Aを用いて接着層14を形成した場合にはAと記載し、接着用塗布液Bを用いて接着層14を形成した場合にはBと記載する。
実施例5〜8で得られたフィルム積層体10について、実施例1〜4と同様の方法及び基準により、虹むらと、縁部の切除し易さと、カールによる剥がれと、部分的な浮き上がりと、白濁との評価を実施した。評価結果は表2に示す。白濁は、以下の方法及び基準で評価した。
(5)白濁
フィルム積層体10をガラス板に貼り付けた。貼り付けた状態で、45℃に温度を保持した湯浴の液面上に8時間静置後、温度が25℃、相対湿度が60%RHの室内環境に取り出し、白濁を目視で観察することにより、以下の基準で評価した。下記の「クリア」とは白い濁りが確認されず透明であることを意味する。なお、斜めから見る場合の方が、正面から見る場合に比べて白く濁って見えるから、以下の基準のC及びDにおいては、正面から見る場合のみを評価基準としており、斜めから見る観察は行わなかった。
A;正面と斜めとから見た場合に、いずれの場合もクリアに見える。
B;正面から見た場合にはクリアだが、斜めから見ると白く濁って見える。
C;正面から見て白く濁って見える。
D;正面から見て強く白く濁って見える。
[比較例7]〜[比較例8]
実施例5〜8と異なる層構造を有するフィルム積層体を製造し、比較例7及び比較例8とした。これらのフィルム積層体については表2に示す。
得られたフィルム積層体につき、虹むらと、縁部の切除し易さと、カールによる剥がれと、部分的な浮き上がりと、白濁とを、実施例5〜8と同じ方法及び基準で評価した。これらの結果は表2に示す。