JP6585976B2 - 電気防食システム及びそれを備えた海水淡水化プラント - Google Patents
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Description
また、海水等の電解液を通流する金属配管を電気防食するシステムとして、特許文献2に記載される技術が提案されている。特許文献2では、防食対象である金属配管の内面の汚れ、金属配管の内面近傍を通流する電解液の流速、及び電解液の温度等を計測するセンサを備え、上記センサによる計測値と予め記憶される設計時の仕様に基づき防食電流を制御する構成が記載されている。
特許文献2に記載される技術は、防食対象表面の流速に応じて必要な防食電流を制御する構成である。しかしながら、特許文献2には、電気防食システムを構成する電極自体の構造については何ら考慮されていない。
そこで本発明は、海水淡水化プラント等のプラントの金属配管や構造部材内に配される電気防食用の電極を長寿命化することで、電気防食システムの長寿命化を可能とし得る電気防食システム及びそれを備える海水淡水化プラントを提供することにある。
また、本発明の電気防食システムを備えた海水淡水化プラントは、前処理部により処理された海水を加圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプにより加圧された海水を導入し、高濃度の塩水である濃縮水と透過水とに分離する逆浸透膜モジュールと、前記逆浸透膜モジュールより排出される濃縮水を導入し、前記高圧ポンプを駆動する動力の一部としてエネルギーを回収するエネルギー回収装置と、前記高圧ポンプと前記逆浸透膜モジュールとを接続する金属配管である供給水配管と、前記逆浸透膜モジュールと前記エネルギー回収装置とを接続する金属配管である濃縮水供給配管と、前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管の内周面に絶縁材料を介して支持されると共に、前記海水又は濃縮水の通流方向に対して傾斜する傾斜面を有する電極と、前記電極と前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管との間にケーブルを介して電圧を印加する電源を有する電気防食システムと、を備え、前記電極が配される電極領域内を通流する前記海水又は濃縮水の流速が、前記電極領域外における前記海水又は濃縮水の流速よりも大きいことを特徴とする。
例えば、電極領域を通流する電解液の流速を増加させることで、電気防食用の電極寿命を低下させる要因となる、電気化学反応が発生する閾値まで電位を上昇させることを不要とし、電極の長寿命化が可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
電気防食法は、腐食作用における電子移動を制御する防食方法である。外部電源方式の電気防食法では、防食の対象となる機器の構造部材として用いられる金属材料に、電源を介して、電流を発生するための電極を接続する。このとき、電極は金属材料と共通の電解液に接触させ、電解液を介して回路が形成されるようにする。
電極は、電源によって防食対象の金属材料との間に電圧が印加される。この時、電極を貴な電位にしてアノード(陽極)とし、金属材料を卑な電位にしてカソード(陰極)とする場合をカソード防食法と称される。逆に、電極を卑な電位にしてカソードとし、金属材料を貴な電位にしてアノードとする場合をアノード防食法と称される。本発明では、カソード防食法とアノード防食法のどちらにも適用可能だが、海水淡水化プラントに多く適用されるカソード防食法を用い、電解液として海水を、一例に以下説明する。
防食対象の金属材料は、例えば、炭素鋼、ダイス鋼、ニッケル鋳鉄、低合金鋼等の鉄鋼材料が挙げられる。また、オーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼、二相系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼等のステンレス鋼が挙げられる。さらに、青銅や黄銅等の銅合金、キュプロニッケルやモネル等のニッケル基合金が挙げられる。製法として、鋳造、圧延、鍛造、めっき、溶接肉盛、いわゆる3Dプリンタ技術が挙げられる。また、溶接部も防食対象となる。一方、電極の材料としては、例えば、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化ロジウム等の貴金属酸化物やそれらを複合したMMO(Mixed Metal Oxide)、酸化鉄や酸化チタン等の酸化物、白金やイリジウム等の貴金属、白金−チタン等の合金、高珪素鉄、タンタル、炭素などが挙げられる。
図1に示すように、海水淡水化プラント1は、被処理水である海水(原水)5の取水から下流に向かい順に、海岸40近くに設けられ導水路41を通じて海水5を導入する吸込み槽42、吸込み槽42内に吸込み部を含む主要部が浸漬するよう設置される海水取水ポンプ(ポンプ装置)30、ポンプ装置30により吸い込まれた海水中の砂等の異物をろ過する二層ろ過器44、二層ろ過器44でろ過された海水5を貯留するろ過海水槽45、ろ過海水槽45に設置されたポンプ46、保安フィルタ47、高圧ポンプ49、RO膜モジュール52、エネルギー回収装置(Energy Recovery Device:ERD)50、生産水槽54及び図示しない濃縮水貯留槽から構成されている。
ポンプ装置30により吸い込まれた海水を貯留する原水貯留槽、高分子凝集剤又は無機系凝集剤を貯留する凝集剤槽、凝集剤槽より適宜凝集剤を原水貯留槽へ注入するための凝集剤注入ポンプ、及び精密ろ過膜(Microfiltration Membrane:MF膜)又は限外ろ過膜(Ultrafiltration Membrane:UF膜)より前処理部を構成する。この場合、前処理部にて、凝集剤注入ポンプを介して適宜凝集剤が原水貯留槽に注入される。そして、原水貯留槽内において海水中に含まれる有機物等の不純物は注入された凝集剤に捕捉されフロックを形成する。フロックを含む原水は、精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)にてフロック及び海水中に含まれる不純物をその孔径サイズに応じて膜分離し、膜分離された後の海水は保安フィルタ47へ供給される。高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド系凝集剤が用いられ、無機系凝集剤としては、例えば塩化第二鉄が用いられる。
図3では、4本の絶縁性ボルト13にて、電極11と絶縁性台座12を供給水配管48に締結する構成を示したが、使用する絶縁性ボルト13の本数は4本に限らず、所望の本数とすれば良い。
以下では、電位の基準として飽和カロメル基準電位(V vs. SCE)を使用するが、標準水素電位とは、25℃において以下の式(1)の関係が成り立つ。
V=V0−0.244 ・・・(1)
但し、V:電位 vs. SCE
V0:電位 vs. SHE
図4から、pH=8.2において、炭素の熱力学的に主要な状態を読み取ることができる。つまり、固体の炭素Cを貴な電位に分極すると、約−0.33V(vs.SHE)すなわち−0.57V(vs.SCE)に図示した実線より貴な電位ではCO2、約−0.27V(vs.SHE)すなわち−0.51V(vs.SCE)に図示した点線より貴な電位では水中に存在するHCO3 −が熱力学的に主要な化学種となることがわかる。
一般に、電気化学反応による電流は過電圧に対して指数関数的に増加する。図5では横軸に電流密度の対数をとっているため、見かけ上は直線的に増加する。上述した通り、HCO3 −が発生する電気化学反応は−0.57V、CO2が発生する反応は−0.51Vよりそれぞれ貴な電位で生じうる。しかし、−0.51V〜−0.57V付近では電位と電流の直線関係は変わらず、反応の変化は生じていない。これは、熱力学的に反応が起こりうる状況でも、反応速度が非常に遅いため、さらに電圧を大きくしないと充分な反応速度が得られないことが原因と考えられる。一方、1.4Vより貴な電位にて、電位と電流の直線の傾きが変化すると共に、電極からのガス発生が観察された。また、ガス分析によりCO2が検出された。これより、CO2が発生する反応は海水環境では1.4Vであることがわかる。以上より、CO2のガス発生を抑制するためには炭素の電位を1.4V以下にすることが重要である。
なお、外部電源方式の電気防食システムでは、防食対象の材料と電極の電解液中での電位を駆動力として電流が発生する。電解液としては、上述の通り、海水以外に淡水、汽水、食塩水、塩水等でも良い。一般に、塩化ナトリウム濃度で区分すると0.05%未満が淡水、0.05%以上0.35%未満が汽水、0.35%以上0.5%未満が食塩水、0.5%以上が塩水と呼称される。海水の塩化ナトリウム濃度は0.24%から2.96%程度であり、海域により濃度差がある。一方、電解液として、任意のイオン種を含む水溶液を適用可能である。
金属配管である、供給水配管48a及び供給水配管48bの材料を、汎用二相ステンレス鋼であるS31803とし、電極11zの材料を炭素とした。また、供給水配管48a及び電極11zの内径を40mmとした。供給水配管48a内を通流する人工海水6の流速が1.5m/sとなるよう高圧ポンプ49の吐出圧力を調整した。このとき、電極11zを通流する人工海水6の流速は1.5m/sであった。すなわち、電極領域内を通流する人工海水6の流速は、電極領域外である供給水配管48a内を通流する人工海水6の流速と同一であった。また、電源14からの印加電圧を1.5Vとし、無抵抗電流計16により計測された電流値は559μAであった。
なお、本実施例では、電極11c及び絶縁性台座12を4組、供給水配管48b内に配する構成としたが、供給水配管48b内に配される電極11c及び絶縁性台座12の組数はこれに限られるものではない。
また、本実施例の電極11c及び絶縁性台座12を、横断面形状が実施例1及び実施例2と同様に円環状に形成しても良い。
5…海水
6…人工海水
10,10a,10b,10c,10z…電気防食システム
11,11a,11b,11c,11z…電極
12…絶縁性台座
13…絶縁性ボルト
14…電源
15a,15b…ケーブル
16…無抵抗電流計
17…絶縁性シール
30…海水取水ポンプ(ポンプ装置)
31…据え付け部
40…海岸
41…導水路
42…吸込み槽
42a…ベース板
43…吐出配管
44…二層ろ過器
45…ろ過海水槽
46…ポンプ
47…保安フィルタ
48,48a,48b…供給水配管
49…高圧ポンプ
50…エネルギー回収装置
51…濃縮水供給配管
52…RO膜モジュール
53…透過水配管
54…生産水槽
55…濃縮水排出配管
100…カソード分極曲線
101…アノード分極曲線
Claims (18)
- 少なくとも電解液の通流方向に対して傾斜する傾斜面を有すると共に、前記電解液を通流する金属配管の内周面に絶縁材料を介して支持される電極と、
前記電極及び前記金属配管との間にケーブルを介して電圧を印加する電源を備え、
前記電極が配される電極領域内を通流する前記電解液の流速が、前記電極領域外における前記電解液の流速よりも大きいことを特徴とする電気防食システム。 - 請求項1に記載の電気防食システムにおいて、
前記金属配管の内周面に絶縁材料を介して支持される電極は、横断面形状が円環状をなし、前記傾斜面は円錐の一部として近似される形状を有することを特徴とする電気防食システム。 - 請求項1に記載の電気防食システムにおいて、
前記金属配管の内周面に絶縁材料を介して支持される電極は、前記電解液の通流方向に沿った縦断面形状が流線型であることを特徴とする電気防食システム。 - 請求項2に記載の電気防食システムにおいて、
前記金属配管の内周面に絶縁材料を介して支持される電極は、横断面中央部に前記電解液を通流する開口を有すると共に、前記電解液が流入する側であって前記電解液の通流方向に沿って上流側に向かうに従い内径が拡大する流入側内径拡大部と、前記電解液が流出する側であって前記電解液の通流方向に沿って下流側に向かうに従い内径が拡大する流出側内径拡大部と、を備えることを特徴とする電気防食システム。 - 請求項4に記載の電気防食システムにおいて、
前記電解液の通流方向に沿った前記流出側内径拡大部の長さは、前記電解液の通流方向に沿った前記流入側内径拡大部の長さより長いことを特徴とする電気防食システム。 - 請求項3に記載の電気防食システムにおいて、
前記電解液の通流方向に沿った縦断面形状が流線型である電極は、前記金属配管の内周面側から中央側へと突出するよう複数配されることを特徴とする電気防食システム。 - 請求項6に記載の電気防食システムにおいて、
前記金属配管の内周面側から中央側へと突出するよう複数配される電極のうち、対向配置される2つの電極間の間隙は、前記電解液の通流方向に沿って徐々に縮小し、前記間隙が最小となる位置から下流側へと向い前記間隙が拡大することを特徴とする電気防食システム。 - 請求項4に記載の電気防食システムにおいて、
前記電解液は海水であり、前記金属配管はステンレス鋼製であり、前記電極の材質は炭素であって、前記開口を通流する海水の流速が2.0m/s以上であることを特徴とする電気防食システム。 - 請求項7に記載の電気防食システムにおいて、
前記電解液は海水であり、前記金属配管はステンレス鋼製であり、前記電極の材質は炭素であって、前記電極領域を通流する海水の流速が2.0m/s以上であることを特徴とする電気防食システム。 - 前処理部により処理された海水を加圧する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプにより加圧された海水を導入し、高濃度の塩水である濃縮水と透過水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
前記逆浸透膜モジュールより排出される濃縮水を導入し、前記高圧ポンプを駆動する動力の一部としてエネルギーを回収するエネルギー回収装置と、
前記高圧ポンプと前記逆浸透膜モジュールとを接続する金属配管である供給水配管と、
前記逆浸透膜モジュールと前記エネルギー回収装置とを接続する金属配管である濃縮水供給配管と、
前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管の内周面に絶縁材料を介して支持されると共に、前記海水又は濃縮水の通流方向に対して傾斜する傾斜面を有する電極と、前記電極と前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管との間にケーブルを介して電圧を印加する電源を有する電気防食システムと、を備え、
前記電極が配される電極領域内を通流する前記海水又は濃縮水の流速が、前記電極領域外における前記海水又は濃縮水の流速よりも大きいことを特徴とする海水淡水化プラント。 - 請求項10に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管の内周面に絶縁材料を介して支持される電極は、横断面形状が円環状をなし、前記傾斜面は円錐の一部として近似される形状を有することを特徴とする海水淡水化プラント。 - 請求項10に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管の内周面に絶縁材料を介して支持される電極は、前記海水又は濃縮水の通流方向に沿った縦断面形状が流線型であることを特徴とする海水淡水化プラント。 - 請求項11に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管の内周面に絶縁材料を介して支持される電極は、横断面中央部に前記海水又は濃縮水を通流する開口を有すると共に、前記海水又は濃縮水が流入する側であって前記海水又は濃縮水の通流方向に沿って上流側に向かうに従い内径が拡大する流入側内径拡大部と、前記海水又は濃縮水が流出する側であって前記海水又は濃縮水の通流方向に沿って下流側に向かうに従い内径が拡大する流出側内径拡大部と、を備えることを特徴とする海水淡水化プラント。 - 請求項13に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記海水又は濃縮水の通流方向に沿った前記流出側内径拡大部の長さは、前記海水又は
濃縮水の通流方向に沿った前記流入側内径拡大部の長さより長いことを特徴とする海水淡
水化プラント。 - 請求項12に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記海水又は濃縮水の通流方向に沿った縦断面形状が流線型である電極は、前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管の内周面側から中央側へと突出するよう複数配されることを特徴とする海水淡水化プラント。 - 請求項15に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管の内周面側から中央側へと突出するよう複数配される電極のうち、対向配置される2つの電極間の間隙は、前記海水又は濃縮水の通流方向に沿って徐々に縮小し、前記間隙が最小となる位置から下流側へと向い前記間隙が拡大することを特徴とする海水淡水化プラント。 - 請求項13に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管はステンレス鋼製であり、前記電極の材質は炭素であって、前記開口を通流する海水又は濃縮水の流速が2.0m/s以上であることを特徴とする海水淡水化プラント。 - 請求項16に記載の海水淡水化プラントにおいて、
前記供給水配管及び/又は前記濃縮水供給配管はステンレス鋼製であり、前記電極の材質は炭素であって、前記電極領域を通流する海水又は濃縮水の流速が2.0m/s以上であることを特徴とする海水淡水化プラント。
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