<前提技術>
本発明に先駆け、例えば、未公開先願事件(PCT/JP2015/084361:2015年12月8日出願)に開示した技術において、我々は、誘電体バリア放電(無声放電)における両方の放電界面に金属化合物質層(特定半導体物質)を固着させると、放電面の特定半導体物質が、放電光の300nm〜600nmの紫外から可視光を吸収して、活性状態になることが分かり、さらに、活性状態になった金属化合物質層と酸素分子とを有効的に接触させると、酸素分子が活性状態になった金属化合物質層と反応して、酸素原子に解離させる効果があることが分かり、解離した酸素原子と酸素分子との三体衝突で、オゾンが生成されることがわかった。
以上の放電光エネルギーから金属化合物質層の活性化を経て酸素原子に解離反応の一連の化学反応を連続的に行うには、誘電体バリア放電は有効な手段であり、この誘電体バリア放電を継続させることで、触媒的に酸素原子が生産され、かつ、誘電体バリア放電は、連続プラズマではなく、無数の放電柱を有する間欠放電であるため、オゾン発生器内で生成された酸素原子は、プラズマの休止期間中に酸素原子と酸素分子との三体衝突が、有効的に作用し、高濃度のオゾンを生成できることを突き止めた。
本発明の課題は、先行技術である特許文献1〜特許文献8の技術のさまざまな問題点と上記未公開先願事件で明らかにされた技術を鑑みて、放電界面を形成する金属化合物質層の特定とその金属化合物質層の放電界面の形状を特定することにより、より高濃度のオゾンを取り出せることを目的にしたものである。
より詳細な発明の課題としては、窒素を添加しない原料ガス(硝酸蒸気(HNO3)ガスを生成しない原料ガス)または、99.99[%]以上の高純度酸素ガスの原料ガスであっても、オゾン発生器内で高効率、高濃度のオゾンガスを効率良く生成できる放電面材料の選定であり、かつ、この放電面材料を用いた放電界面の形状を特定にすることで、より高濃度のオゾン生成量が確保できるようにしている。
<発明の原理>
まず、本願発明のオゾン発生器の概要について説明する。本願発明のオゾン発生器は、供給する原料ガスとして窒素添加量が数千ppm未満の高純度酸素ガスであっても、例えば、オゾン発生器に供給するガス流量が3[L/min]以上で、200[g/m3]以上の高濃度オゾンを取り出せるようにしている。
特に、放電としては、従来と同様の電源を用いて、ほぼ同様の周波数である高電圧・交流電圧をオゾン発生器内の電極間に印加し、誘電体バリア放電(無声放電)を発生させ、オゾン発生器の放電領域の電極または誘電体の放電面に特定材料(金属化合物質層;特定半導体物質層)を固着し、固着させている金属化合物質層と注入した放電エネルギーによって、金属化合物質層を活性化している。
その結果、本願発明のオゾン発生器は、両放電面に固着させた金属化合物質層の界面である放電界面において、原料ガスと活性化させた金属化合物質層との界面解離反応で、酸素原子を多量に生成させ、生成させた酸素原子と酸素ガス中の酸素分子との三体衝突反応で高濃度オゾンを生成させ、かつ、オゾン発生器で生成したオゾンのオゾン発生器内での分解量を抑制させるオゾン発生器構造を採用することにより、この高濃度オゾンガスを外部に取り出せるようにしている。
本願発明のオゾン発生器は、特に上記放電界面の形状を最適化することにより、上記放電界面と放電光および供給原料ガスとの化学反応が有効的に促進され、結果として、生成するオゾン量を高め、かつ、生成したオゾンの分解量を抑制させるようにしている。
本願発明であるオゾン発生器は、3L/min以上の大流量で、かつ99.99[%]以上の高濃度・高純度のオゾンガスを得るためには、原料ガスである酸素のみで、外部から単位ガス流量当たりに注入する酸素にエネルギーW/Qを与え、酸素ガスを酸素原子に効率良く解離させ、解離した酸素原子からオゾンガスを発生させることのできる、放電面に固着した金属化合物質層の界面形状を特定したものである。
つまり、本願発明のオゾン発生器は、固着した金属化合物質層の放電界面の形状を特定範囲の凹凸形状にすることにより、単位ガス量当たりに注入する放電光エネルギーを閉じ込める作用を持たせることで、放電面に固着した上記放電界面を効率良く活性化させ、活性化した上記放電界面と接触する酸素ガスとの効率を良い化学触媒反応を促進させることにより、生成するオゾン量(オゾン生成効率(mg/J))を高めている。さらに、本願発明のオゾン発生器は、生成したオゾンの消滅量を少なくした状態で、高濃度で高純度のオゾンを外部に取り出せるようにできる方法と装置構成を実現している。
なお、我々は、本発明に先駆け、上記未公開先願事件において、誘電体バリア放電(無声放電)における両方の放電界面に金属化合物質層(特定半導体物質)を固着させることによりで、高濃度オゾンガスが生成できる方法を見出している。
この発明に係るオゾン発生器は、互いに対向した第1及び第2の電極と、上記第1の電極上に形成された誘電体とを有し、上記誘電体と上記第2の電極との間に形成される放電空間にオゾンを発生させている。
本願発明のオゾン発生器は、上記第2の電極及び前記誘電体の少なくとも一つの表面に設けられる金属化合物質層をさらに有しおり、この金属化合物質層は、以下の条件(1)〜(4)を満足している。
(1) オゾン分解を促進させる物質ではない
(2) 導電体ではない
(3) 前記金属化合物質層のバンドギャップが2.0〜4.0[eV]の範囲である
(4) 前記金属化合物質層の励起状態において形成される価電子帯部のホール電位が酸素分子の結合電位より大きい
さらに、上記金属化合物質層において上記放電空間を形成する面である放電界面の形状を凹凸形状にしたことを特徴としている。
上記放電界面の形状について、放電部で形成された誘電体バリア放電から発光する放電光が放電界面に照射され、反射や散乱されずに有効に光エネルギーが吸収されるための最適な界面形成と励起状態となった金属化合物質層の上記放電界面と原料酸素ガスとの接触により酸素原子に解離促進できるための最適な放電界面の形状が存在すると言う観点から、金属化合物質層の放電界面の形状を上記のように特定化している。その結果、本願発明のオゾン発生器は、オゾン生成能力を高め、取出せるオゾン濃度が高い状態となる最適な放電界面の形状について、実験的に最適な界面形状を求めた。
図7は、放電界面の形状をフラット形状にした場合の放電光の散乱光と放電界面に吸収する吸収光とを模式的に示した説明図である。
図7で示すように、誘電体バリアによる放電光5aに関し、金属(元素)化合物質層1dの放電界面DSに照射した光の一部は、金属化合物質層1d内に吸収される吸収光5yとなり、残りの光は、反射される散乱光5xとなり、散乱して逃げることになる。
例えば、金属化合物質層1dの放電界面DSの形状をフラットとなる鏡面仕上げ面にした場合、図7に示すように、放電光5aは有効に吸収光5yにならず、散乱光5xとして外部に逃げる光エネルギーが多くなる。そうすると、吸収光5yを受ける金属化合物質層1dの放電界面DSの活性状態が弱くなり、結果として、活性化した放電界面DSと接触している酸素ガスとの化学触媒反応が弱くなり、有効的に酸素原子を解離して、オゾンを生成する能力が弱くなり、最終的に取出せるオゾン濃度が低くなることが分かった。
図8は、放電界面の形状を凹凸形状にした場合の放電光に関する散乱光の閉じ込め効果と界面に吸収する吸収光の増大効果を模式的に示した説明図である。
一方、放電界面DSの形状を図7で示すフラット面に対し、図8に示すように、2つの金属化合物質層1dそれぞれの放電界面DSに凹凸形状を設け、かつこの凹凸形状が規則正しい凹凸ピッチを確保するようにすれば、誘電体バリアによる放電光5aから、放電界面DSで反射する散乱光5xが発生するが、2つの放電界面DSに形成された凹凸形状において凹状態の放電空間VVで、何回かの光反射を繰り返すことになり、結果として、反射した散乱光5xも有効的に吸収光5yに変換されることになる。したがって、吸収光5yを受けて金属化合物質層1dの放電界面DSにおける活性状態を高め、結果として、活性化した放電界面DSと接触している酸素ガスとの化学触媒反応が高まり、有効的に酸素原子を解離して、オゾンを生成する能力が高くなり、高濃度のオゾンガスを生成する能力が高まった結果、高濃度オゾンが取出せることになる。
つまり、金属化合物質層1dの放電界面DSの形状を所定の凹凸形状にすることにより、誘電体バリア放電によって発光した放電光5aにおける散乱光5xに対し所定放電空間VV内に閉じ込める作用が働き、その結果として、放電界面DSの物質を効率良く光励起状態である活性化を促進させることができ、酸素解離反応を促進させ、オゾン生成能力を高める作用をしていることが分かった。
そして、上述したオゾン生成作用の向上解明を元にして、放電界面DSの最適な形状を実験的に求めた。
高濃度オゾンが取出せる放電界面DSの最適界面形状は、「条件(5):Sm値(凹凸の山と山(凸部ピーク間)、谷と谷(凹部ピーク間)の平均間隔ピッチ)を50〜700[μm]の範囲内」及び「条件(6):十点平均粗さ:Rz値(凹凸の高低差(うねり高さ))を20〜120[μm]以内とする」を満足させることが、多数の実験を重ねることで明確になった。
なお、十点平均粗さによる高低差Rzとは、最も高い凸部ピーク値(山頂)から5番目までの凸部ピーク値(山頂)の絶対値(基準長からの長さ)の平均値と、最も低い凹部ピーク値(谷底)ら5番目までの凹部ピーク値(谷底)の絶対値(基準長からの長さ)の平均値との和を意味する。
なお、図8において、平均間隔ピッチSm及び高低差Rzに相当する寸法として、「Sm」及び「Rz」の符号を付している。平均間隔ピッチSmが必ずしも図8の「Sm」で示す長さに合致せず、十点平均粗さである高低差Rzが必ずしも図8の「Rz」で示す高低差に合致しないことは勿論である。
また、オゾン発生器の放電ギャップ長dg値は、0.02mm〜0.12mm範囲内に設定することが望ましいことが分かった。放電界面DSの界面形状が上述した条件(5)あるいは条件(6)を満足しない場合、放電光5aにおける散乱光5xの閉じ込め効果が薄らぎ、生成したオゾンが取出す方向に流れることで、凹凸形状で、生成したオゾンが衝突することにより、オゾンを分解させる効果が大きくなり、結果として高濃度オゾンが取出せなくなるため、望ましくないことが分かった。
また、誘電体バリア放電をさせると、ガス温度が約40℃以上になり、高温度の放電プラズマ状態になると、放電プラズマの電子と衝突し、生成したオゾンが、高温ガス雰囲気となった発生器内でオゾン分解を促進してしまい高濃度のオゾンガスが取り出せないことが、分かった。そこで、高濃度オゾンガスを取り出すためには、冷却水等を流すことで、放電界面の温度を20℃(293K)以下にすることが望ましいことが分かった。すなわち、電子との衝突でオゾンの分解抑制の観点からすると、0℃(273K)〜−40℃(233K)程度にすることが望ましい。
また、ガス供給量Qを少なくすると、オゾン発生器内を通過する時間が極端に長くなることやガス温度アップになることで、放電プラズマの電子との衝突回数が増えることで、生成したオゾン量をほとんど分解して取り出すオゾン濃度が低下することが分かった。そこで、高濃度のオゾンガスを取り出すには、ガス温度を高めることなく、放電空間でのガスとの衝突回数を抑制した最適なガス供給量Qo範囲があり、また、誘電体バリア放電の電力Wをアップすると放電界面の単位面積当たりの電力密度がアップし、間欠放電が連続放電に近づくことで、放電プラズマの電子と生成したオゾンガスとの衝突回数が増えることで、オゾンの分解が加速されることが分かり、放電電力Wの値に対しても、ガス比熱を考慮した最適な放電電力Wo範囲があることが判明した。
すなわち、放電電力密度W/Sの範囲は、1〜5(W/cm2)の範囲内であることが実験から分かった。
これらの最適なガス供給量Qo範囲と最適な放電電力Wo範囲を総合して解析すると、誘電体バリア放電の最適比電力Wo/Qo値は、実験的に、300[W・min/L]〜500[W・min/L] の範囲であることが突き止められた。
<実施の形態>
上述した発明の原理に沿って、オゾン発生器及びオゾン発生方法を具体的に実現したのが以下で述べる実施の形態である。
(オゾン発生器)
図1はこの発明の実施の形態であるオゾン発生器1を含むオゾンガス発生装置の構成を示すブロック図である。すなわち、図1はオゾン発生器を1中心としたガス系統の構成を示すブロック図である。
図1を参照して、(窒素添加レス・)オゾン発生器1の作用、動作、放電のエネルギー注入の説明し、オゾン発生器1内におけるオゾン生成効率とオゾン分解率の説明をし、オゾン発生器1から取り出せるオゾン濃度について理論的に説明する。
図2は図1で示したオゾン発生器1の放電部分を拡大して示す説明図である。図3は本実施の形態における金属化合物質層1dの放電界面の形状と取出せるオゾン濃度との関係を示す説明図である。図4は本実施の形態における酸素分子と半導体物質の励起状態(光触媒状態)による酸素分子の酸素原子への解離メカニズムを模式的に示す説明図である。図5は本実施の形態における酸素分子と生成した酸素原子との三体衝突反応によるオゾン生成のメカニズムを模式的に示す説明図である。図6は、本実施の形態におけるオゾン発生器に注入する電力Wとガス供給量Qとの比で求まる比電力値(W/Q値)に対する取出せる高濃度オゾン特性を示す特性図である。
図2(a) 及び(b) は、誘電体放電部の放電面に金属化合物質層1d(特定の半導体物質)を設け、その放電界面の形状を規則的な凹凸形状とし、凹凸形状を規定する平均間隔ピッチSmの値、凹凸形状を規定する高低差Rzの値の違いによるオゾン発生器1内でのオゾン生成量が最も高い凹凸形状を実験的に求めたことを模式的に示している。同図に示すように、上方の金属化合物質層1dは誘電体1cの表面(下面)上に、下方の金属化合物質層1dは接地電極1bの表面(上面)上に設けられることにより、誘電体1cと接地電極1bとの間に形成される放電空間を直接形成する面となる放電界面を各々が有する態様で一対の金属化合物質層1dが設けられる。
図2(a) では、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の形状を凹凸形状にし、この凹凸形状に関し、その最適な平均間隔ピッチSm(凹凸の山と山、谷と谷の平均間隔ピッチ)が50〜700[μm]の範囲内であることを条件(5)とし、凸部ピークと凹部ピークとの高低差Rz(うねり高さ)が20〜120[μm]の範囲内であることを条件(6)として課した構造を示している。なお、高低差Rzは前述したように正確には十点平均粗さで求められる。
なお、図2(a) において、平均間隔ピッチSm及び高低差Rzに相当する寸法として、「Sm」及び「Rz」の符号を付している。平均間隔ピッチSmが必ずしも図2(a) の「Sm」で示す長さに合致せず、十点平均粗さである高低差Rzが必ずしも図2(a) の「Rz」で示す高低差に合致しないことは勿論である。
一方、図2(b) は、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の形状として、凹凸形状を採用せず、できるだけ凹凸を無くし、フラット面(鏡面)にした構造を示している。
図2(a) 及び(b) に示した放電界面の形状において、オゾン生成量を確認すると、誘電体放電部の放電空間に同等の金属化合物質層1dを塗布しても、金属化合物質層1dの放電界面の形状を図2(b) で示す鏡面形状にすると、オゾン生成量が少なくなり、取出せるオゾン濃度が低くなる傾向を示した。
なお、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の凹凸形状は、例えば、金属化合物質層1dの誘電体1c及び接地電極1bへの固着前あるいは固着後に、機械加工により得る等の方法が考えられる。
また、一対の金属化合物質層1dを誘電体1cあるいは接地電極1bに固着させる方法として、塗布、吹付、焼き付け、面接合で行う等の方法が考えられる。
図3において、本実施の形態における金属化合物質層1dの放電界面の形状と取出せるオゾン濃度との関係を示すオゾン濃度特性を示している。図3で示す濃度特性2001は、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の形状として凹凸形状を採用せず、図2(b) で示すフラット面(鏡面)にした場合のオゾン濃度特性を示す。一方、濃度特性2002〜2004は、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の形状として凹凸形状を採用している。
濃度特性2002は、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の凹凸形状として平均間隔ピッチSmを200μm、高低差Rzを50μmに設定した場合のオゾン濃度の特性を示している。濃度特性2003は、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の凹凸形状として平均間隔ピッチSmを350μm、高低差Rzを70μmとした場合のオゾン濃度の特性を示している。濃度特性2004は、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の凹凸形状として平平均間隔ピッチSmを500μm、高低差Rzを90μmにした場合のオゾン濃度特性を示している。
また、放電界面の形状として採用した凹凸形状として、平均間隔ピッチSmを700μm以上に設定したり、凹凸の高低差Rz(うねり高さ)を20μm以下に設定したりすると、放電空間に金属化合物質層1dを設けているにも係らず、オゾン生成量が下がり、高濃度のオゾン濃度が取り出せないことが明らかになった。
さらに、放電界面の形状として採用した凹凸形状として、平均間隔ピッチSmを50μm以下に設定したり、凹凸の高低差Rzを120μm以上に設定したりすると、放電空間に金属化合物質層1dを設けているにも係らず、生成したオゾンが、オゾン発生器1内でのオゾン分解量が大きくなるような特性を示し、高濃度のオゾン濃度が取り出せなくなることが明らかになった。
さらに、誘電体放電部の放電空間に金属化合物質層1dに該当しない、導電性金属化合物質や絶縁体となる金属化合物質を金属化合物質層1dの代わりに設け、その放電界面の形状を図2(a) 及び(b) の構造にしてオゾン濃度特性の違いを見たが、いずれも、高濃度のオゾンガスが取り出せず、放電界面の形状として採用した凹凸形状の差異による違いはほとんど見られなかった。
さらに、特許文献1で開示された技術の主原料ガスである酸素ガスと微量の窒素酸化物ガスとの誘電体バリア放電中のガス化学触媒反応によって、高濃度のオゾンガスを生成するものに対しても、放電界面の形状を図2(a) 及び(b) のようにして、オゾン濃度特性の違いを見たが、放電界面の形状として採用した凹凸形状の差異に依らず、いずれにおいても、高濃度のオゾンガスが取り出せることが分かり、上記凹凸形状の差異による違いはほとんど見られないことが分かった。ただ、凹凸形状の高低差Rz(うねり高さ)を120μm以上にすると、生成したオゾンが、オゾン発生器1内でのオゾン分解量が大きくなるような特性を示し、高濃度のオゾン濃度が取り出せなくなることはある。
図4及び図5は、本発明に先立って、窒素ガスを含まない酸素ガスを主体とした原料ガスにおいて、高濃度のオゾンガスが得られるメカニズムを示したもの(特許文献2〜特許文献8及び上記未公開先願事件)である。すなわち、図4及び図5は、本実施の形態のオゾン発生器1内の放電空間における供給した原料ガスと励起状態となった金属化合物質層1d(特定の半導体物質)との化学反応で、酸素原子へ解離を促進させる化学反応と酸素原子と酸素とによるオゾン生成反応を模式的に示している。特に、図4は本実施の形態における酸素ガス(酸素分子)と励起状態(光触媒状態)の半導体物質とによる酸素分子の酸素原子への解離反応メカニズムを示した酸素原子生成化学反応を示している。図5は本実施の形態における酸素分子と生成した酸素原子との三体衝突反応によるオゾン発生のメカニズムを示したオゾン生成化学反応を示す。
オゾン発生器1内で生成したオゾン量を取り出すまでにオゾン分解させる要素としては、放電によって加熱されたガス温度以外に放電空間に注入する比電力量W/Q値、放電ガス空間のガス圧力Pおよび放電空間の放電ギャップ長dgがある。つまり、オゾン発生器1に注入する比電力量W/Q値(W・min/L)、ガス圧力P値(MPa)および放電ギャップ長dg値(mm)の発生器構造もしくは設定手段によってオゾン分解量が多くなり、高濃度オゾンが取り出せなくなる。
注入する比電力量W/Q値は、オゾン生成能力を高めるのにも依存するが、W/Q値が大きくなり過ぎると、ガス温度を高める要因にもなることから、金属化合物質層1dの放電界面の形状を凹凸形状にするとともに、高濃度オゾンを取り出すにはW/Q値を最適範囲(Wm/Qm)内に設定する必要がある。最適範囲(Wm/Qm)としては、実測値から300(W・min/L)〜500(W・min/L)に設定することで、高濃度のオゾンガスが取出せることが分かった。
ガス圧力P値(MPa)および放電ギャップ長dg値(mm)は、放電空間体積Vに依存しており、この放電空間体積Vが大き過ぎると、放電空間を通過する時間t(sec)(t∝V/Q)が長くなることで、生成したオゾン量のオゾン分解量も多くなり、高濃度オゾンが取り出せなくなる。そのため、高濃度オゾンを取り出すには最適ガス圧力範囲Pm値(MPa)と最適ギャップ長範囲dm値(mm)内に設定する必要がある。
この最適ガス圧力範囲Pm値(MPa)は、0.2MPa〜0.4MPaの範囲内であり、最適ギャップ長範囲dm値(mm)は、0.02mm〜0.12mm範囲内に設定すれば、生成したオゾン量に対し、オゾン発生器内でオゾン分解率が抑制され、その結果として、高濃度のオゾンガスが取出せることが分かった。
なお、金属化合物質層1dの放電界面は凹凸形状であるため、放電ギャップ長dgは凸部間、凹部間等で変化するが、変化する全ての放電ギャップ長dgが上述した最適ギャップ長範囲dm値を満足することが望ましい。
図6は、図1で示したオゾン発生器1における取り出せるオゾン濃度特性を示している。
図6において、一点鎖線で示す特性である接線Laは、オゾン濃度特性線Lbの比電力量W/Q値が小さい値の時における接線を示す。この接線Laは、比電力量W/Q値に比例して生成するオゾン量がアップすることを示しており、オゾン濃度特性線Lbを有する金属化合物質層1d自身のオゾン生成特性を示し、この接線Laの傾きがオゾン生成効率ηの値を示す。
また、一点鎖線で示す特性である接線Lcは、オゾン濃度特性線Lbの比電力量W/Q値に対するオゾン濃度の減衰の漸近線(オゾン分解特性)を示しており、比電力量W/Q値に対するオゾン分解率σ(%)は、下記の式(1)で示される。なお、式(1)において、取出オゾン量TWQは比電力W/Qでの取り出しオゾン量、生成オゾン量GWQは比電力W/Qでの生成オゾン量を示している。
この漸近線である接線Lcの傾きがオゾン発生器1自身の生成したオゾンのオゾン分解率σの増加で、取出せるオゾン濃度の低下度合を示している。金属化合物質層1dの放電界面の凹凸形状を所定以上大きくし過ぎると、生成したオゾンが放電界面との衝突による消滅が多くなり、取出せるオゾン濃度が低くなることが実験から求められた。
取り出せるオゾン濃度特性線Lbは、一点鎖線のオゾン生成度合を示す接線Laと取出せるオゾン濃度の低下度合を示す接線Lcの合成で決定される。つまり、取り出せる最大オゾン濃度Cmaxの値は、接線Laの傾き(オゾン生成効率η)が大きい程、高濃度オゾンが取り出せ、逆に、接線Lcの値が大きい程、高濃度オゾンが取り出せる。つまり、この特性図から高濃度のオゾンガスをオゾン発生器から取り出すためには、オゾン生成効率の高いことが必要であり、さらに、オゾン発生器1内で生成したオゾンガスのオゾン分解率を出来るだけ抑制できるように、金属化合物質層1dの放電界面における凹凸形状を上述した条件(5)及び(6)を満足する所定範囲内にし、かつオゾン発生器1の構造もしくは設定手段を設けることが必要になる。
以下、図1及び図2を参照して、オゾン発生器1の作用、動作、放電のエネルギー注入の説明し、オゾン発生器1内での放電界面の凹凸形状に依存するオゾン生成効率とオゾン分解率の説明をし、オゾン発生器1から取り出せるオゾン濃度について説明する。
(オゾン発生器)
以下、図1を参照して、(窒素添加レス・)オゾン発生器1の作用、動作、放電のエネルギー注入の説明し、オゾン発生器1内におけるオゾン生成効率とオゾン分解率の説明をし、オゾン発生器1から取り出せるオゾン濃度について理論的に説明する。
図1において、純度99.99(%)以上の酸素(原料ガス)を供給する原料供給系99は、高純度酸素ボンベ991、減圧弁992、及び開閉弁993で構成され、酸素ガス994を外部に供給する。そして、酸素ガス994は、MFC3を介して原料ガス995としてオゾン発生器1に供給される。
オゾン発生器1は内部に高圧電極1a(第1の電極),接地電極1b(第2の電極)、誘電体1c及び金属化合物質層1dを有している。一対の電極1a、1bは互いに対向し、高圧電極1aの対向面(放電面)上に誘電体1cが設けられる。そして、誘電体1c及び接地電極1b間で互いに対向する対向面(放電面)にそれぞれ金属(元素)化合物質層1dを塗布した構成になっている。すなわち、誘電体1cの下面上及び接地電極1bの上面上に金属化合物質層1dが設けられる。
したがって、金属化合物質層1dを介して誘電体1c,接地電極1b間に形成される空間が放電空間となり、対向する金属化合物質層1d,1d間の距離が放電ギャップ長dgとなる。この放電空間で、誘電体バリア放電を誘起することで、放電空間を通過する酸素ガスの1部をオゾンガスに変換して、外部にオゾン化酸素ガスとして取り出せる構成になっている。
図1は、オゾン発生器1の構成を示した模式的に示しており、実際のオゾン発生器では、オゾン発生器に供給するガスの流れは、オゾン発生器1の容器空間とは密閉された構成をしている。そして、前述したように、誘電体1c及び接地電極1b間の対向面(放電面)にそれぞれ金属化合物質層1dを固着した構成となっており、原料ガス995は、図上の左から誘電体1c及び接地電極1b間の対向面(放電面)に沿って流れ込み、右側の出口からオゾン化した酸素ガス996としてAPC(自動圧力調整器)4を介して取り出せ、オゾンガス(オゾン化した酸素ガス996)は、被オゾン処理チャンバー12へ供給される構成になっている。
また、交流高電圧電源であるオゾン電源2は、主に整流回路2a、インバータ回路2b、高圧トランス2cで構成される。このオゾン電源2の出力電圧は、図1のオゾン発生器1の高圧電極1aと接地電極1b間に交流高電圧が印加される。
高圧電極1aと接地電極1bとの間に交流高電圧を印加すると、誘電体1c面の全面に電荷がチャージされ、一定以上の電荷がチャージされると、放電空間が部分絶縁破壊してチャージした電荷を放出する誘電体バリア放電を引き起こす。この誘電体バリア放電は、寿命が非常に短くナノ秒程度で、高電界な放電で、誘電体1c面の全面に、均一で無数のナノ秒程度の間欠した放電となる。そのため、この誘電体バリア放電は、酸素ガスに均一に高エネルギーを与える放電となり、放電電子エネルギーとしては、2eV〜4eV程度を有する放電となり、この高エネルギーの電子とガスとの衝突で、発光する放電光としては、紫外光(300nm)〜可視光(600nm)程度を有する放電となる。
この放電面に均一に広がった誘電体バリア放電のエネルギーを受け、オゾン発生器1内でオゾンガスが発生し、生成したオゾン量から放電ガス温度に起因したオゾン分解率σを掛けたオゾン分解量を差し引いたオゾン量がオゾンガス取出し濃度として、オゾン発生器1からオゾン化した酸素ガス996として取り出せる。
オゾン発生器1から取り出せるオゾン濃度として、200(g/m3(93333ppm))以上の高濃度オゾンについて考察すると、200(g/m3)以上の高濃度オゾンとしては、1モル(22.4L)当たりのオゾン分子の個数は0.562×1023個/mol(2.51×1018個/cm3)以上に相当し、これだけの量のオゾン分子を生成するには、酸素原子の寿命が短いことでオゾン発生器1内での酸素原子の消滅量が大きいことを考慮して、酸素原子の個数も0.562×1023個/mol(2.51×1018個/cm3)以上(少なくともオゾン分子の個数の数十倍程度)の酸素原子の個数を生成する必要がある。
通常放電プラズマでは、電離した高速電子の衝突によって酸素が原子に解離することでオゾンが生成されるが、通常放電プラズマの電子密度は1010個/cm3程度であるため、プラズマ中の電子衝突のみで生成される酸素原子の個数を概算すると、プラズマ中の電子密度を持った電子自身が、プラズマ中でなだれ的に電子が加速しながら衝突を数百万から数千万回繰り返しても、1015〜1016個/cm3程度となる。
オゾン発生器1内での放電プラズマは、地球上のオゾン層の電子密度やガス密度に比べ非常に大きく、ガスの平均自由工程距離が非常に短く、オゾンと他の電子やガス粒子と衝突しやすく、これらの衝突で、オゾン層よりも格段に生成したオゾンを電子との衝突で分解させる状態でもある。なお、オゾン層では、オゾン発生器1のように、放電面と言う壁も存在せず、生成したオゾンが壁との衝突による分解要素は全く考慮することが必要ないが、オゾン発生器1では、放電空間は短ギャップの放電壁であるため、この壁部分との衝突でのオゾン分解量も非常に大きくなる。
したがって、得られた酸素原子から生成されるオゾン分子の個数も1015〜1016個/cm3程度であり、そのオゾン濃度は、1(g/m3)〜10(g/m3(数百ppm〜数千ppm))程度である。よって、放電プラズマ中の電子密度によってのみ生成されるオゾン濃度は、200(g/m3(93333ppm))以上の高濃度オゾンを得るのには到底及ばない濃度であることが分かる。
実際の実験で、放電面に金属化合物質層1dを付着させてないオゾン発生器で、高純度酸素をオゾン発生器に供給して、誘電体バリア放電を誘起させて、オゾンを発生させると、ほとんどオゾンが発生せず、せいぜい数十g/m3(数千ppm)程度である。上述した放電プラズマの電子密度の電子衝突で生成できるオゾン濃度の考察については、実際の実験結果で得られたオゾン濃度と上記電子衝突によるオゾン生成メカニズムによって放電プラズマ中の電子自身のみで生成されるオゾン量の考察とは、一致している。
図2は、図1の放電部分を拡大した図であり、放電界面形成用に一対の金属化合物質層1dを設け、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の形状を凹凸形状にしたものを図2(a) で示し、金属化合物質層1dの放電界面をフラット形状の鏡面仕上げをしたものを図2(b) で示している。
図2の(a) 及び(b) で示す放電界面の形状において、オゾン発生器1に注入するプラズマエネルギーに対する取り出せるオゾン濃度特性について考察する。
この高濃度のオゾン濃度特性は、図3のような特性を示す。この図3は、図1のオゾン発生器1における取り出せるオゾン濃度特性を示したオゾン濃度特性2001、2002、2003及び2004を示す。オゾン濃度に関する濃度特性2001は、放電界面の形状をフラット(鏡面)形状にした場合の特性を示す。また、濃度特性2002、2003、及び2004は、前述したように、放電界面の形状を凹凸形状にした場合の特性を示す。
図3において、一点破線の特性Coは、本実施の形態においてオゾン濃度の高濃度を定義する一例として、200g/m3(93333ppm)の臨界濃度値を示す。
濃度特性2001と濃度特性2002〜2004との比較結果から明らかなように、放電界面の形状をフラット(鏡面)形状にすると、放電界面の形状を凹凸形状にした場合の濃度特性に比べ、オゾン濃度特性は低くなることが分かった。
勾配特性3001〜3004は濃度特性2001〜2004に対応すオゾン生成効率特性(接線特性)である。勾配特性3001〜3004を比較すると、放電界面の形状を凹凸形状にした場合(勾配特性3002〜3004)に比べ、フラット(鏡面)形状にする(勾配特性3001)と、オゾン生成効率ηが低くなっていることから、オゾン生成効率ηに起因する酸素解離能力が、放電界面の形状によって、高まりオゾン濃度特性が高まったものと判断される。
(放電界面の形状についての考察)
以下、放電界面の形状の違いによる放電光エネルギー(放電光波長)と放電面材料との光化学反応(励起現象)について説明する。
誘電体バリア放電は、放電電極間に誘電体を介し放電空間に交流高電圧を印加させる放電であるため、放電は、誘電体面に均一に帯電した電荷を放電空間に放電させる火花放電である。そのため、この火花放電は、誘電体面の微小部に帯電電荷した空間に限定的を放出させる放電であるため、放電自身は、微小放電径で微小時間の継続放電の間欠放電である。そのため、1つの放電は数十ナノ径の放電柱でナノ秒の短寿命放電が印加した放電面全面に均一に無数発生する間欠放電になっているのが特徴で、非常に高電界な放電光を放電界面の全面に照射できる特殊な放電形態を有する放電となっている。その誘電体バリア放電は、放電面を低温や放電ギャップ長dgを短くするほど高電界放電が実現でき、高エネルギーの放電光を発するようになり、より紫外光側へシフトした放電光となる。この誘電体バリア放電の光エネルギーとしては、他の放電形態よりも高エネルギーを有するものとなるが、約4eV以上の光エネルギーは有せず、発光する光波長幅としては、可視光の600nm〜紫外光の300nmとなる。
この放電光を放電面に固着させた金属化合物質層1dに照射することで、金属化合物質層1dは、放電光エネルギーを吸収して図4に示したように、励起状態になる。
さらに、図7及び図8で示すように、放電光(エネルギー)5aは金属化合物質層1dの放電界面DS,DS間に照射するため、金属化合物質層1dが有効にエネルギーを吸収する条件は、放電界面DSの形状に依存する。具体的には、金属化合物質層1dの放電界面の形状がフラット(鏡面)形状になると、照射した光で反射光(散乱光5x)が界面から分散して増え、散乱光5xを有効に吸収光5yに変換されない。その結果、励起状態になった金属化合物質層1dの密度が弱くなって、酸素分子を解離させる能力も弱まり、結果として高濃度オゾンが取出せなくなったものと判断される。
以上のことから、金属化合物質層1dの放電界面DSの形状を、上述した条件(5)及び条件(6)を満足する最適な凹凸形状に設定すれば、放電界面DSの近傍において、放電空間VV内で散乱光5xの光閉じ込め作用効果が働き、散乱光5xが反射した光を放電界面DSに当てることで、効率良く放電光5aを吸収光5yに変換することができ、この吸収光5yによって、金属化合物質層1dの励起促進が図れ、励起した金属化合物質層1dの放電界面DSと酸素ガスとの化学触媒反応で、酸素原子の解離反応が高められ、解離した酸素原子と酸素との三体衝突反応で、オゾン濃度が高められることになる。
(励起した放電面材料と酸素ガス解離メカニズム)
次に、放電プラズマによって光触媒状態に励起した金属化合物質層1d(特定の半導体物質)と酸素ガス解離メカニズムについて説明する。図4では、励起状態(光触媒状態)になった放電面とオゾン発生器1に供給した酸素ガスとの接触による化学反応を模式的に示している。
図4は、誘電体バリア放電中での半導体物質の励起状態(光触媒状態)の固体電子論(バンドギャップ理論)の固体中の電子配位構造および励起状態を示している。図4において、伝導帯にポンピングした電子(価電子)の価電子電位と価電子帯に誘起された(+ホール)のホール電位の模式図を示している。この価電子と+ホールのそれぞれの電位および価電子と+ホール間の電位差(バンドギャップ値)は、半導体物質によって決まる特有値である。この特有値によって、励起状態になった半導体物質と通過する酸素ガスとの化学反応で酸素原子への解離反応を示す。特にこの解離反応は価電子帯における誘起した+ホールの電位と酸素分子との化学反応が密接に関連している。その酸素ガスを酸素原子に解離させる解離メカニズムを図4は、模式的に示している。
この特定の半導体物質のバンドギャップを有した電子配位構造を放電面にすると、図4に示すように、金属化合物質層1d(特定の半導体物質)は、誘電体バリア放電光(放電光エネルギー)を有効に光吸収して、励起状態(光触媒状態)となり価電子帯から電子が飛び出し伝導帯へ移動(ポンピング)する。また、同時に電子が移動した価電子帯では正孔(ホール)が誘起しホール電位が形成される。伝導帯に移動した電子は周囲に移動するか、放電領域に電子放出をするかで寿命が終わる。つまり、伝導帯に移動した電子は非常に寿命が短く数十[psec]である。価電子帯の正孔は伝導帯に移動した電子が再結合で戻ってこない限り、所定電位を有した位置に存在し続けるため、正孔の寿命は200〜300[nsec]と長い。この所定電位以上の正孔が存在する励起状態(光触媒状態)の放電面と酸素分子が量子的に接触すると、酸素分子の最外郭の共有電子を奪いとり、酸素分子を物理的に酸素原子に解離させ、励起状態の特定の半導体物質は基底状態に戻る反応が促進される(光触媒による酸素の吸着解離現象[酸化反応])。この光触媒による酸素の吸着解離現象[酸化反応]が促進には、酸素分子の最外郭の共有電子の結合電位と放電面の光触媒状態に励起して誘起したホール電位との関係が大きく寄与している。つまり、酸素分子の最外郭の共有電子の結合電位は、約1.25eV程度と言われており、光触媒状態のホール電位が1.25eVを超える状態の物質であれば、励起した金属化合物質のホールが酸素分子の最外郭の共有電子を奪いとる能力を有して、容易に酸素ガスを解離させる作用をしている。
励起状態の特定の半導体物質と供給した酸素ガスとの接触においても、放電界面の形状がフラット面(鏡面)形状よりも、多少の凹凸形状の方が有効に励起状態となった半導体物質界面と接触して、酸素解離促進が行える。
この金属化合物質層1d(特定の半導体物質)の放電光による励起状態にする反応と酸素分子を物理的に酸素原子に解離し、励起状態の半導体物質は基底状態に戻る解離反応を連続的に繰り返せば、結果として触媒的に高濃度の酸素原子が生成できる。上記特定の半導体物質の励起(活性化)状態と酸素の解離反応を連続的に得るためには、バンドギャップ範囲だけでなく、励起状態となった特定の半導体物質のホール電位が酸素解離電位以上なければ、酸素原子への解離反応ができない。
つまり、可視光の600nm〜紫外光の300nmの放電光を有効に吸収して励起状態になり得る金属化合物質層1d(特定の半導体物質)であって、かつ、放電界面に接触している酸素ガスを酸素原子に解離させる解離触媒機能を有した金属化合物質層1dとして、光触媒状態のホール電位が1.25eVを超える半導体物質であることが必修であり、この特定半導体物質の放電界面形状を特定範囲内で凹凸形状にすることが高濃度オゾンガスを生成するオゾン発生器として有効に作用することになる。
このように、金属化合物質層1dは、以下の条件(1)〜(4)を満足する物質で形成される必要が有る。
(1) オゾン分解を促進させる物質ではない、具体的には、Mn、Co、Ni、Cu、及びAgの金属化合物材でなく、
(2) 導電体ではなく、
(3) 金属化合物質層1dのバンドギャップが2.0〜4.0[eV]の範囲であり、
(4) 金属化合物質層1dの励起状態において形成される価電子帯部のホール電位が酸素分子の結合電位(1.25(eV))より大きい。
具体的には、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びビスマス(Bi)を含む金属化合物質は上述した4つの条件を満足する。また、金属化合物質層1dとしては、金属酸化層(CrO3、WO3、V2 O 5 、MoO3、NbO5、Ta2O5)を含んでいる。
酸素ガスを容易に酸素原子に解離できる光触媒状態には、このオゾン発生器1の放電面に直接、条件(1)〜(4)を満足する金属化合物質層1dの放電界面を条件(5)及び(6)を満足する凹凸形状に設定することにより、ナノ秒で微細な放電柱を有する無数個の誘電体バリア放電の光を有効に金属化合物質層1dに照射でき、有効に金属化合物質層1d(特定半導体物質)を光触媒状態に励起できる。そうすると、放電空間に供給された酸素ガスと、光触媒状態に励起した金属化合物質層1dとの接触が効率良くなされ、酸素ガスとで解離反応が効率よくなされ、多くの酸素原子が生成され、放電光を金属化合物質層1dの放電界面間で連続的に照射することで、金属化合物質層1dの放電界面は常に励起状態になり、触媒的に高濃度の酸素原子が生産され、高効率で酸素原子が生成されている状態になる。このように、高濃度の酸素原子を生成するため、オゾン発生器1内では、オゾン生成効率ηも高められ、結果として、オゾン発生器1のオゾン生成効率ηが高くなり、高濃度のオゾンガスが取り出せる能力を有するように作用する。
(解離した酸素原子と酸素との結合でオゾンガス生成のメカニズム)
次に生成した高濃度の酸素原子からオゾン発生器1内で、オゾンガスの生成までのメカニズムについて説明する。
図5で示したように、放電面の半導体物質の連続的な励起状態で、触媒的に生成された高濃度の酸素原子と供給される酸素分子(残原料酸素ガス)と第三物質との三体衝突で結合作用が、光触媒となる金属化合物質層1d(壁M)上で促進される働きで高濃度のオゾンが生成される。この放電電力Wと単位ガス量当たりに対するオゾンガスの発生できる効率をオゾン発生効率η(mg/J)として評価される。オゾン発生効率ηが高い金属化合物質層1dほど、取り出せるオゾン濃度が高くなることになる。
この三体衝突反応のよるオゾン生成能力は、酸素原子濃度に依存するが、金属化合物質層1dの放電界面の凹凸形状には、ほとんど依存しないものと判断する。
本発明では、低温の高純度酸素ガス中で、誘電体バリア放電を発生させ、放電面の全表面で、金属化合物質層1dを塗布して、誘電体バリア放電光エネルギーで、光触媒状態に励起すれば、酸素ガスと光触媒状態になった金属化合物質層1dとの接触した界面で、下記の化学触媒反応式である式(2)〜式(4)が促進され、触媒的に高濃度の酸素原子が生成し、生成した酸素原子と酸素ガスとの三体衝突反応式である式(5)でオゾンが生成される。このオゾン生成量が、上記で示した金属化合物質層1dの放電界面に接したオゾンを触媒的に分解させるオゾン量より多くなる条件下においては、オゾン発生器1内で、高濃度のオゾンが生成されることになる。
上記式(2)、式(3)及び式(4)の反応で、酸素ガスを酸素原子に解離させる触媒的な反応量が大きくなる金属化合物質材料の選定もしくは式(5)の三体衝突反応が促進できるオゾン発生の環境状態をオゾン発生器内で作り出せれば、オゾン生成効率η(g/J)が高められ、高濃度のオゾンガスが生成される。
図5は半導体の性質を有した金属化合物質で解離した酸素原子と酸素分子との結合作用でオゾンが生成されるメカニズムを示している。酸素原子と酸素分子とが結合するには単に酸素原子と酸素分子との衝突では、有効にエネルギーを授受できないため、有効に結合作用を促進させることができない。有効に結合作用を促進させるためには、図5に示すように酸素原子と酸素分子との衝突と同時にエネルギー授受をするための壁等の第3物質(M)との三体衝突が必要になる。
上記のような三体衝突を有効に促進するには、ガスの圧力を高め、ガス分子密度を高い状態にすることが有効である。実験からガスの圧力を絶対圧0.2[MPa]以上にすると、急激に三体衝突が促進され、オゾン生成効率ηが高められる働きをすることが分かった。また反応空間のガス圧力が上昇するにしたがって、放電電圧が上昇し、絶対圧0.5[MPa]を超えると有効放電光が電極の前面に照射できなくなり、不適となる。反応空間のガス圧力は好ましくは絶対圧約0.3[MPa]〜0.4[MPa]の範囲である。
(オゾン生成効率ηと発生器から取り出せるオゾン濃度との関連性)
オゾン生成効率ηは、塗布した物質の光触媒状態で、酸素ガスを解離してオゾンを生成する能力とオゾンガスを触媒的に解離分解させる能力との差で決まる値であると述べた。オゾン発生器1から取り出せるオゾン濃度は、図6で示すように、オゾン生成効率ηと単位体積当たりの放電によって注入される比電力W/Qで決まるオゾン生成量(1点鎖線の特性である接線La)と、オゾン発生器1自身の構造(ガス速度、放電ギャップ長dg等)やガス条件(ガス温度、ガス圧力等)によって決まる生成したオゾン量を分解する割合(オゾン分解率σ)の増加度合であって、取出せるオゾン濃度の低下度合を示す1点鎖線の接線Lcとの合成で決まる。
したがって、オゾン発生器1から取り出せるオゾン濃度を高めるには、第1要素としては、オゾン生成効率ηを高めた金属化合物質層1dの材質の選択、放電面の表面積を大きくし、注入する比電力W/Qによるオゾン生成量を高める必要がある。第2要素としては、オゾン発生器1自身の構造やガス条件で決まる生成したオゾン量の分解量を少なくすることが必要である。第2要素で、オゾン発生器1自身の構造については、オゾン発生器1の構造設計で決まってしまうため、規定はできないが、ガス条件であるガス温度については、注入する比電力W/Qによってガス温度が高まり生成したオゾンガスを分解させる要素が非常に大きい。
以上、本実施の形態では、金属化合物質層1dとして、金属元素を含め2種元素の電子結合した酸化金属化合物において、高濃度のオゾンガスを生成し、高濃度のオゾンを取り出せる放電面に固着する金属化合物質が考えられるが、金属元素を含め3種元素の電子結合した金属化合物または酸化以外の金属化合物質であっても、前述した条件(1)〜条件(4)を満足する金属化合物質層であれば、励起して誘起したホールによって酸素ガスを触媒的に解離させ、高濃度のオゾンガスを生成することができ、高濃度のオゾンを取り出せることが可能になる。
(放電空間の冷却)
オゾン発生器1から取り出せるオゾン濃度を高めるには、オゾン発生器1内で、オゾン生成効率ηを高め、生成するオゾン量を高めるとともに、生成したオゾン量に対して、オゾン分解率σを抑制する手段として、放電中のガス温度等の発生器構造もしくは設定手段を最適条件範囲にすることが必要である。
本実施例のオゾン発生装置において、放電面に塗布した金属化合物質層1dの活性化に起因するオゾン生成反応として、
(1)放電光で放電面を励起する反応+酸素ガスと励起金属との接触による酸素触媒解離反応と、
(2)酸素原子と酸素分子との三体衝突でのオゾン生成反応とがある。
上記(1)、(2)の一連の反応で、オゾン生成まで至る。それらのオゾン発生器1内での反応時間は、(1)の反応時間は、放電光の発光(放電開始)から〜10μsオーダの時間内と非常に短い時間で完了し、(2)のオゾン生成反応時間についても、(1)の反応で、酸素原子が生成されてからせいぜい100μs程度の時間をようすれば、オゾンガスが生成される。つまり、一連のオゾン生成反応は、所定電力を投入した放電発生から数百μs程度あれば、オゾン発生器1内でオゾンガスは生成される。
それに対し、生成したオゾンガスを取り出すには、ガス流量Qと放電空間体積Vで決まるガス通過時間を有する。このガス通過時間は、通常10ms〜200msかかり、この時間はオゾン生成反応時間に比べ、1000倍〜20000倍と非常に長い時間を要する。そのため、このガス通過時間において生成したオゾンは、放電で加熱されたガス温度Tに晒され、生成したオゾンを分解させるのに費やされることになる。そのため、生成したオゾンは、オゾン発生器1でガスが通過する時間とガス温度Tによってオゾン分解率σが決定され、生成したオゾンのほとんどがオゾン分解し、取出せるオゾン濃度は、オゾン発生器1自身のオゾン取出し時のオゾン分解率σに依存する。
オゾン取出し時のオゾン分解率σを左右するオゾン発生器1内でのガス温度Tは、投入する比電力W/Qが大きい程高くなり、オゾン発生器1を外部から冷却する電極冷却温度が低い程、低くすることができる。つまり、投入する比電力W/Qを一定であれば、電極冷却温度が低い程、オゾン分解率σを抑制させる効果が大きくなり、取出せるオゾン量(オゾン濃度)が高められることになる。
また、もう一つのオゾン取出し時のオゾン分解率σを左右するガス通過時間は、ガス流量Qと放電空間体積V、ガス圧力Pに依存しており、ガス流量が大きい程、オゾン分解率σは抑制され、取出せるオゾン量が増えるが、取出せるオゾン濃度は流量アップに対応して下がる。放電空間体積Vが大きくなるほど、ガス通過時間が長くなり、オゾン分解率σは大きくなり、取出せるオゾン濃度は低くなる傾向を示す。この放電空間体積Vは、発生器の放電ギャップ長dgに依存しており、一般的に放電ギャップ長dgが大きくなるほど、オゾン分解率σは大きくなり取出せるオゾン濃度は低くなる傾向を示す。
放電ギャップ長dgについては、放電体積により、比電力W/Qによるガス温度アップや電極面の冷却能力にも起因していることから、放電ギャップ長dgを極端に短くし過ぎると逆にオゾン分解率σを高め取出せるオゾン濃度が低くなるため、放電ギャップ長dgには、最適な範囲がある。
ガス圧力Pについては、一般的にガス圧力が高くなるほど、ガス通過時間が長くなりオゾン分解率σは大きくなり取出せるオゾン濃度は低くなる傾向を示す。ガス圧力Pについても、放電状態にも起因することから、ガス圧力Pも最適な範囲がある。
オゾン分解率を抑制する観点から最適な電極冷却温度T、放電ギャップ長dgに対して評価する。
放電ギャップ長dgについては、70μmの放電ギャップ長dgで最もオゾン分解率が低く抑えられる傾向にあり、70μmより放電ギャップ長dgを長くなると、生成したオゾンガスが放電空間を通過する時間が長くなり、通過する時間が長くなることで、オゾン分解率が高くなる。70μmより放電ギャップ長dgを短くなると、放電空間を通過する時間は短くなるが放電空間の壁が狭くなるので、生成したオゾンガスが壁との接触で分解する要素も増えオゾン分解率が高くなる傾向になる。
電極冷却温度Tに対しては、電極冷却温度Tが低いほど、単純に比例的なオゾン分解率が低くなる傾向を示す。
本実施の形態のオゾン発生器1において、高濃度のオゾンガスを取り出すためにオゾン発生器1でオゾン分解率を評価すると、オゾン分解率は少なくとも、80%以下に抑制しなければ、発生器内で生成したオゾンが放電空間を通過する時間において、ガス温度でほとんどオゾン分解に費やされ、高濃度のオゾンガスが取り出せなくなる。
以上の結果から、オゾン分解率を80%以下に抑制するには、オゾン発生器の放電ギャップ長dgは、0.02mm〜0.12mm範囲内に設定することが必要である。また、発生器の電極冷却温度Tは、40℃以下にする必要があるが、より高濃度のオゾンガスを安定的に取出せるようにするには、20℃以下にすることが望ましい。以下、この点を詳述する。
オゾンガスを分解させる要素として、放電空間(オゾン生成ガス空間)のガス温度が非常に大きいことを述べたが、ガス温度が20℃以上になると、非常にオゾン分解率が大きくなり、高濃度のオゾンガスが取り出せなくなることも実験から明らかになった。放電空間のガス温度を低く抑える手段として、放電面の電極を通じて、ガス温度を冷却するようにすれば、オゾン分解率を抑制することができる。つまり、放電面の電極に冷媒を流せる構造にし、電極面を常に20℃以下に冷やせれば、熱伝達で放電空間のガス温度を低く抑えられ、オゾン分解率の改善が見られ取出しオゾン濃度が高められる傾向にある。
同じオゾン生成効率ηであっても、放電面温度を低温にするほど、取り出せるオゾン濃度が高められていることを示している。つまり、これは、放電面を冷やすことで、ガス温度が下がりオゾン分解率を小さくなったことによるものである。
発生器内のガス圧力Pについても、上限圧は放電ギャップ長dgと同様に、放電空間を通過する時間で決まる。
下限圧は、オゾン生成に寄与する三体衝突反応を高める圧力で決まる。したがって、上記放電空間のガス圧力を絶対圧で、0.2MPa〜0.4MPaの範囲内設定する必要がある。
本実施の形態では、大流量で、かつ高濃度・高純度のオゾンガスを得るために、酸素純度が99.99[%]以上の高純度であって、かつ3[L/min]以上の大流量である原料ガスをオゾン発生器1に供給している。オゾン発生器1は、ガスが通過する空間に外部から酸素ガスに与えるエネルギーとして、誘電体バリア放電空間(放電空間)を形成することで、所定放電エネルギーWをオゾン発生器1に供給し、このオゾン発生器1のガスが通過する空間(放電空間)の放電ギャップ長dgを所定範囲dとし、通過する放電面を所定放電面積S以上にする必要がある。また、発生した高濃度・高純度のオゾンガスを分解させずに取り出すには、放電ギャップ長dgは、0.02mm〜0.12mm範囲内、放電空間のガス圧力を絶対圧で、0.2MPa〜0.4MPaの範囲内設定にして、かつ、発生器内で発生させたオゾンガスを冷やすため電極冷却温度を20℃以下になるようにさせる必要がある。
本実施の形態においては、オゾン発生器1の金属化合物質層1d(特定の半導体物質)によって放電界面を形成し、この放電界面の形状を凹凸形状にすると、金属化合物質層1dが放電光を有効に吸収し励起状態になり、かつ励起状態になったオゾン発生器1と供給された酸素ガスとの接触状態が良くなり、酸素解離が促進できることを述べた。そして、放電界面の凹凸形状の最適条件については、上述したオゾン発生器1の設定条件範囲にして、実験的に求めた結果、Sm値(凹凸の山と山、谷と谷の平均間隔ピッチ)を50〜700[μm]の範囲内とした条件(5)と、凹凸の高低差(うねり高さ)Rz値を20〜120[μm]以内にする条件(6)を満足することが、最もオゾン生成効率ηが高くなり、取出せるオゾン濃度が高くなることが確かめられた。
逆に、平均間隔ピッチSmを50μm以下にし、高低差Rzを120μm以上にすると、オゾン発生器1内での生成したオゾン量の分解量が高まるようなオゾン濃度特性を示し、高濃度オゾンが取出せなくなる傾向を示した。
また、平均間隔ピッチSmを700μm以上にし、高低差Rzを20μm以下にすると、放電界面の形状がフラット面(鏡面)にした場合のオゾン濃度特性とほぼ同等な特性を示し、高濃度オゾンが取出せなかった。
(効果の説明)
本実施の形態のオゾン発生器1において、誘電体1c及び接地電極1b間に存在する放電空間を直接形成する面である放電界面を各々が有する態様で一対の金属化合物質層1が設けられる。
本実施の形態のオゾン発生器は、上述した条件(1)〜(4)を満足した金属化合物質層1dを有しているため、上記放電空間を通過する原料ガス中の酸素ガスを選択的にかつ触媒的に解離させ高濃度の酸素原子を生成することができる結果、上記オゾン発生器内でオゾン生成効率ηを例えば0.01mg/J(36g/kWh)以上にして、高濃度のオゾンを発生させることができる。
さらに、一対の金属化合物質層1dそれぞれの放電界面の形状として凹凸形状を採用している。このため、金属化合物質層1dが放電光を有効に吸収し励起状態になり、かつ励起状態になった金属化合物質層1dと、供給された酸素ガスとの接触状態が良くなり、酸素解離が促進できる効果を奏する。
加えて、本実施の形態1のオゾン発生器1は、金属化合物質層1dの放電界面の凹凸形状に関し、凸部ピーク間あるいは凹部ピーク間の平均距離である平均間隔ピッチSmが{条件(5) 50[μm]≦Sm≦700[μm]}を満足し、かつ、凸部ピークと凹部ピークとの高低差の十点平均粗さである高低差Rzが{条件(6) 20[μm]≦Rz≦120[μm]}を満足することを特徴としている。
本実施の形態のオゾン発生器1は、上記条件(5)及び条件(6)を満足するため、最も効率よく高濃度オゾンを生成し、高濃度のオゾンガスを取り出せる効果が最も発揮でき、その結果、オゾン発生器のコンパクト化や大容量化に貢献する効果を奏する。
さらに、本実施の形態のオゾン発生器1を用いたオゾン発生方法は、以下のステップ(a) 〜(d) を備えている。
(a) 放電界面を有する金属化合物質層1d,1d間の放電空間に酸素ガスを主体にした原料ガスを供給するステップ、
(b) 外部エネルギーを与え、上記放電空間において誘電体バリア放電を発生させ、その放電光によって、金属化合物質層1dを光触媒状態にすることにより、上記ステップ(a) で供給した原料ガスから酸素原子を生成させるステップ、
(c) 上記ステップ(b) で生成された酸素原子と上記原料ガスに含まれる酸素ガスとの衝突化学反応でオゾンを発生させるステップ、
(d) オゾンの分解量を抑制させるオゾン分解抑制要件をオゾン発生器1に課した環境下で前記ステップ(a) 〜(c) を実行させるステップ。
そして、本実施の形態のオゾン発生器1に課したオゾン分解抑制要件は、上記ステップ(d) において、以下の要件(d1)〜(d3)を満足することを特徴としている。
(d1) 前記原料ガスとして酸素ガス純度を99.99(%)とした高純度酸素ガスを用い、
(d2) 前記原料ガスの供給時のガス流量は3(L/min)以上とし、
(d3) 前記誘電体バリア放電における放電電力密度を1〜5(W/cm2)の範囲内で、かつ、比電力W/Q値を300〜500(W・min/L) の範囲内にしている。
本実施の形態のオゾン発生方法は上記特徴を有することにより、オゾン発生器1内で高濃度のオゾンが生成でき、かつ、放電による単位体積当たりの注入エネルギーで発熱するガス温度も抑制でき、オゾン発生器1内でのオゾン分解率を80%以下に抑えて、取り出せるオゾン濃度が200(g/m3)以上の高濃度オゾンの生成を可能にすることができる。
加えて、本実施の形態のオゾン発生方法は、上記ステップ(d)にてオゾン発生器1に課した上記オゾン分解抑制要件は、以下の要件(d4)をさらに満足することを特徴としている。
(d4) オゾン発生器1における高圧電極1a及び接地電極1b(第1及び第2の電極)の温度を20(℃)以下に設定する。
本実施の形態のオゾン発生方法は、上記特徴を有することにより、放電空間(放電面上)を通過する原料ガスを比較的低温に冷却でき、生成するオゾンの熱分解率を抑制する効果が生じ、取り出せるオゾン濃度が高められる結果、オゾン生成量を高められ、オゾン発生器1に注入する電力をより小さくでき、かつオゾン発生器1を小さく構成できる効果を奏する。
さらに、本実施の形態のオゾン発生方法は、上記ステップ(d)にてオゾン発生器1に課した上記オゾン分解抑制要件は、以下の要件(d5)及び(d6) をさらに満足することを特徴としている。
(d5) オゾン発生器1の放電空間における放電ギャップ長dgを0.02〜0.12(mm)範囲内に設定し、
(d6) 上記放電空間のガス圧力を絶対圧で、0.2〜0.4(MPa)の範囲内に設定する。
本実施の形態のオゾン発生方法は、上記特徴を有することにより、上記放電空間で発生したオゾンガスの取出し時間の短縮化を図ることができるため、生成するオゾンの熱分解率を抑制する効果が生じ、取り出せるオゾン濃度が高められた結果、オゾン生成量が高められ、オゾン発生器1に注入する電力をより小さくでき、かつオゾン発生器1を小さく構成できる効果を奏する。
<その他>
なお、本実施の形態では、高圧電極1a上に誘電体1cを設けたが、接地電極1b上に誘電体1cを設けるように構成しても良い。この場合、一対の金属化合物質層1dのうち上方の金属化合物質層1dは高圧電極1a上の誘電体1cの下面上に形成され、下方の金属化合物質層1dは接地電極1b上の誘電体1cの上面上に形成される。
また、オゾン発生器1として、純度99.99(%)以上の酸素(原料ガス)を供給する、窒素添加レス・オゾン発生器を例に挙げたが、これに限定されず、窒素を含んだ酸素ガスを原料ガスとして供給するオゾン発生器においても、本発明は適用可能である。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。