JP6583708B2 - 切削力適応制御方法及び切削力適応制御システム - Google Patents

切削力適応制御方法及び切削力適応制御システム Download PDF

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本発明は、機械加工の分野で加工プロセスを制御する方法及びシステムに関するものである。
機械加工の中でもエンドミル加工は、複雑な形状や曲面の加工が可能であり、様々な機械部品の金型や航空機部品の製造などに広く用いられている。最近では他社製品との差別化を意識して斬新なデザインの製品が増えており、今後ますますエンドミル加工の重要性が高まると予想される。しかし、工作機械が機械加工を行うための加工工程や切削順序、切削条件の決定といった部分は、未だ人の手に依存しているのが現状である。
加工状況を把握する一つの指標として切削力が挙げられる。切削力はその時の加工状態を表し、また加工面の精度に影響する工具や被削材の変形量を予測するための有用な情報である。しかし、加工中の切削力を検出する切削力センサを工作機械に取付けることは、コストや耐久性の観点で現実的には難しい。
そこで、何らかの方法で切削力を予測しようとする研究がなされている。切削力を予測するには切削加工モデルを作成しなければならず、多くの研究者たちによってエンドミル加工における種々の切削モデルが提案されてきており、近年では非常に精度の高い切削力シミュレーションが行えるようになってきている。しかし、こうした切削モデルは工具の切れ刃と被削材の幾何学的な関係に基づいて作成した数学モデルであり、加工形態が変化する場合にはそれに応じた数学モデルを作成しなければならず、様々な加工状況のシミュレーションを行うには、かなりの労力がかかるといった問題がある。また、加工中の被削材の形状変化が複雑になって、工具の切れ刃と被削材の接触状況が一様でなくなると数学モデルで表現することが難しく、切削力の予測が難しいという問題点もある。
例えば、エンドミルのように複雑な切れ刃形状をした工具では、加工時の切削力を予測するには、切込み、送り、切削速度などの基本的な加工条件以外に、工具の変形、摩耗、被削材の特性など、切削現象に関するあらゆる影響因子を考慮した切削加工モデルを作成しなければならないにもかかわらず、切削現象は、力学的に見れば高ひずみ速度下での連続的な破壊現象であり、きわめて複雑な物理現象であるため、あらゆる因子を考慮してモデル化することは困難であり、影響の大きい支配的な因子のみに注目して、切削現象を近似的に定式化することが行われているのが実状である。
機械加工の中で加工プロセスを制御する方法として、加工中の切削力をフィードバックして工具送り速度を制御する適応制御の研究が行われているが、上述の如く、実用化に際しては、コストや耐久性の観点で切削力センサの設置が困難、またセンサレスでは精度や分解能の観点で切削力のモニタリングが困難といった問題がある。
一方、フライス加工では、少量多品種対応やリードタイム短縮などの生産性向上、加工精度の向上などを目指して、数値制御やコンピュータ制御による自動化が進められている。自動化が進んでいるフライス加工では、CNC(Computerized Numerical Control)工作機械を用い、NC(Numerical Control)プログラムに基づいて運転される。NCプログラムは、工具を被削材に対して相対移動させるための工具経路情報や加工条件などから構成される。所望の加工形状が得られるように、工具が工具経路情報に基づいて、被削材に対して相対移動する。
現在のようにCAD(Computer Aided Design)やCAM(Computer Aided Manufacturing)が普及せず、NCプログラムの作成が容易でなかった時代には、工具経路情報を生成しながらフライス加工を行う「倣い加工」が行われていた。倣い加工では、作業者が製品形状を模した模型であるマスタモデルの表面に接触子であるスタイラスを接触させる倣い動作をさせながら工作機械を制御する。マスタモデルとスタイラスの相対運動を、被削材と工具の相対運動として再現し、マスタモデルの形状をコピーした製品を製造する。倣い加工における工具経路は、スタイラスの倣い動作に並行してリアルタイムで生成される。この倣い加工を、コンピュータを用いて仮想倣い動作として実現するものが既に「仮想倣い加工システム」として提案されている(特許文献1,特許文献2,非特許文献1を参照)。
仮想倣い加工システムでは、模型とスタイラスをコンピュータによる仮想空間に構築し、仮想マスタモデルと仮想スタイラスを用いる。仮想マスタモデルの表面形状は、製品形状の3次元CADモデルに基づいて準備され、CADによる製品設計とCNC工作機械による製造が直結され、フライス加工の自動化をより前進させる。仮想倣い加工システムを用いることにより、予め生成されるNCプログラムの介在を必要とせず、工具経路をインプロセスで生成すると共に、切削条件をインプロセスで修正可能とする。すなわち、仮想倣い加工システムでは、NCプログラムによる指令を用いず、製品形状の3次元CADモデルに基づいて加工中に工具経路を生成しながら逐次指令する。
上記の仮想倣い加工システムに、工具モーション制御の機能を付加して、逐次指令の柔軟性と自律性を改善する提案がなされている(非特許文献2を参照)。非特許文献2では、工具モーション制御を実現するに際し、素材形状の3次元CADモデルを参照して加工除去領域をボクセルモデルで表現し、ボクセル情報としてボクセル個々の属性値に、工具送り速度や工具姿勢の参照情報を設定している。工具送り速度や工具姿勢が加工中に急変することがないことから、これらの指令値が徐々に変化する状態を拡散現象と捉えて、拡散方程式を用いて、加工除去領域全域のボクセル個々の属性値に自動設定している。
工具送り速度については、製品表面に近い加工除去領域では工具送り速度を遅く,製品表面から離れた加工除去領域では送り速度を早く加工することが望まれることから、加工除去領域のボクセル属性値に、製品表面からの距離に対応した工具送り速度を設定する。具体的には、製品表面近傍のボクセルに境界条件として工具送り速度の下限値を設定し、製品表面近傍以外のボクセルに初期条件として工具送り速度の上限値を設定し、拡散方程式を用いたボクセル属性値(工具送り速度)の設定している。
特開平08−090387号公報 特開2007−257182号公報
白瀬敬一 他、「NCプログラムが不要な次世代スキルレス工作機械の試作」、平成13〜15年度科学研究費補助金[基盤研究(B)(2)]研究成果報告書、平成16年3月 白瀬敬一 他、「自律加工実現のための加工除去領域のボクセル表現とボクセル情報を参照した工具モーション制御」、日本機械学会論文集79巻808号(2013−12)、47〜56頁
上述したように、機械加工の中で加工プロセスを制御する方法として、加工中の切削力をフィードバックして工具送り速度を制御する適応制御が要望されているが、コストや耐久性の観点で切削力センサの設置が困難であり、現状では切削力のモニタリングが困難であるという問題がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、切削力をモニタリングするのではなく、切削力をリアルタイムで予測し、予測した切削力を適応制御に反映する切削力適応制御方法及びシステムを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明の切削力適応制御方法は、NCプログラムを用いず、工作機械の工具経路を生成し、工作機械に対して切削加工中に切削加工指令を動的に変更して逐次出力する方法であって、被削材をボクセルモデルで表現して、生成された前記工具経路を用いて、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測し、予測した切削力あるいは切削トルクが目標範囲に収まるように、切削加工指令を動的に変更して逐次出力すると共に、前記動的に変更された前記切削加工指令をフィードバックして前記工具経路をリアルタイムに再生成する。
本発明の方法によれば、切削力センサを用いず、加工中の切削負荷(切削力あるいは切削トルク)をリアルタイムで予測し、予測した切削力あるいは切削トルクに応じて切削条件を逐次変更することにより適応制御を行うことができる。すなわち、切削加工中にリアルタイムで工具の切削力あるいは切削トルクを予測し、予測した切削力あるいは切削トルクに基づいて、工作機械に対する切削加工指令を修正し、修正された切削加工指令を工作機械に逐次出力して適応制御を行う。また、修正された切削加工指令をフィードバックして、工作機械の工具経路を再生成する。
ここで、切削加工指令は、工具移動指令、工具送り速度、工具送り停止指令、工具交換指令、主軸回転速度など対象とする工作機械を操作するための指令を意味する。
上記の本発明の切削力適応制御方法は、以下の1)〜6)のステップを繰り返す。
1)切削加工中の被削材をボクセルモデルで表現するステップ
2)リアルタイム性のある微小時間経過後、切削加工指令値に基づく切削後の被削材をボクセルモデルで表現するステップ
3)上記1)のボクセルモデルと上記2)のボクセルモデルの差分から実切込み厚さ方向のボクセル個数を求め、ボクセル個数とボクセルサイズから、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測するステップ
4)予測された切削力から切削トルクを算出するステップ
算出した切削トルクと目標切削トルクとを比較して、目標範囲に収まるように次の微小時間の切削加工指令値を決定するステップ
6)決定された切削加工指令値を工作機械に出力するステップ
リアルタイム性のある微小時間は、コンピュータに対して、ジョブの実行が命令された時に、命令されたジョブの処理を終わらせる時間であり、数ミリ秒などである。
上記3)では、現時点の被削材のボクセルモデルと、微小時間経過後の切削後の被削材のボクセルモデルの差分から、実切込み厚さ方向のボクセル個数を求める。具体的には、工具切れ刃のすくい面を平面で近似し、工具回転角度の関数として工具軸を中心に回転掃引して、切れ刃によって除去される実切込み厚さ方向のボクセル個数を求める。ボクセルが立方体であれば、1辺の長さとボクセル個数から、実切込み厚さのx方向成分、y方向成分が求まるので、三平方の定理から実切込み厚さを求める。実切込み厚さを微小時間ごとに離散的に演算し、切削力を推定する。これにより、数式に依らず実切込み厚さが求められるため、工具切れ刃と被削材の関係が非一様な場合でも切削力を推定することができる。
上記5)における目標切削力および目標切削トルクは、加工前の準備段階で被削材の材質、工具材質、工具の推奨切削条件などを考慮して予め設定される。また、目標切削力や目標切削トルクは、一つの閾値である場合に限らず、上下限値で指定される目標トルクの範囲でもよい。更に、数段階に上下限値が設定された目標トルクの範囲でも構わない。
また、上記5)の切削加工指令値を決定するステップにおいて、切削力や切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に、切削加工を停止し、切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、切削加工指令値を許容範囲の最大値とすることでもよい。
ここで、切削加工指令値は、工具送り速度であり、切削加工中の切削負荷をフィードバッグして工具送り速度を増減することにより、シミュレーションで予測される切削負荷(切削力あるいは切削トルク)に応じて工具送り速度を増減するといった適用制御を行うことが可能になる。
本発明の他の観点の切削力適応制御方法は、被削材をボクセルモデルで表現して実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測し、予測した切削力から算出した切削力あるいは切削トルクに応じて、工作機械用CNC(Computerized Numerical Control)装置の切削加工パラメータを動的に変更することを特徴とする。
切削力の予測は、具体的には、工具切れ刃のすくい面を平面で近似し、工具回転角度の関数として工具軸を中心に回転掃引して、切れ刃によって除去される実切込み厚さ方向のボクセル個数を求める。また、切削加工パラメータを変更するとは、具体的には、切削力あるいは切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に工具送り速度を0(ゼロ)とし工具を停止するようにしたり、切削力あるいは切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、工具送り速度を許容範囲の最大値に変更したりする。
次に、本発明の切削力適応制御システムについて説明する。
本発明の切削力適応制御システムは、NCプログラムを用いず、工作機械の工具経路を生成する工具経路生成部を有し、工作機械に対して切削加工中に切削加工指令を動的に変更して逐次出力する適応制御システムにおいて、被削材をボクセルモデルで表現して、生成された前記工具経路を用いて、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測する切削力シミュレータ部と、予測した切削力あるいは切削トルクが目標範囲に収まるように、切削加工指令を動的に変更して逐次出力する逐次指令部を備える。
本発明の切削力適応制御システムによれば、切削力センサを用いず、加工中の切削負荷(切削力あるいは切削トルク)をリアルタイムで予測し、予測した切削力あるいは切削トルクに応じて切削条件を逐次変更することにより適応制御を行うことができる。
上記の本発明の切削力適応制御システムにおける切削力シミュレータ部は、以下のa)〜c)を備える。
a)切削加工中の被削材をボクセルモデルで表現する手段
b)リアルタイム性のある微小時間経過後、切削加工指令値に基づく切削後の被削材をボクセルモデルで表現する手段
c)上記a)のボクセルモデルと上記b)のボクセルモデルの差分から実切込み厚さ方向のボクセル個数を求め、ボクセル個数とボクセルサイズから、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測する手段
また、上記の本発明の切削力適応制御システムにおける逐次指令部は、以下のd)〜f)を備える。
d)予測された切削力から切削トルクを算出する手段
算出した切削トルクと目標切削トルクとを比較して、目標範囲に収まるように次の微小時間の切削加工指令値を決定する手段
f)決定された切削加工指令値を工作機械に出力する手段
上記c)の切削力を予測する手段において、具体的には、工具切れ刃のすくい面を平面で近似し、工具回転角度の関数として工具軸を中心に回転掃引して、切れ刃によって除去される実切込み厚さ方向のボクセル個数を求める。
上記e)の切削加工指令値を決定する手段において、切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に、切削加工を停止し、切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、切削加工指令値を許容範囲の最大値とする。
ここで、切削加工指令値は、工具送り速度であり、切削加工中の切削負荷をフィードバッグして工具送り速度を増減することにより、シミュレーションで予測される切削負荷(切削力あるいは切削トルク)に応じて工具送り速度を増減するといった適用制御を行うことが可能になる。
本発明の他の観点の切削力適応制御装置は、切削加工パラメータで制御され、切削加工用プログラム(NCプログラム)で運転される数値制御の工作機械を制御するシステムであって、被削材をボクセルモデルで表現して実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測する切削力シミュレータ部と、予測した切削力から算出した切削力あるいは切削トルクに応じて、工作機械用CNC(Computerized Numerical Control)装置の切削加工パラメータを動的に変更する切削加工パラメータ変更部から成ることを特徴とする。
数値制御の工作機械は、NC工作機械あるいはCNC工作機械であり、NCプログラムに基づいて運転される。また、切削力の予測は、エンドミルの場合、工具切れ刃のすくい面を平面で近似し、工具回転角度の関数として工具軸を中心に回転掃引して、切れ刃によって除去される実切込み厚さ方向のボクセル個数を求める。また、切削加工パラメータを変更するとは、具体的には、切削力あるいは切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に工具送り速度を0(ゼロ)とし工具を停止するようにしたり、切削力あるいは切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、工具送り速度を許容範囲の最大値に変更したりする。
本発明の切削力適応制御プログラムは、上述の切削力適応制御方法に含まれる1)〜6)のステップを繰り返し、コンピュータに実行させるものである。
本発明によれば、切削力をモニタリングするのではなく、切削力をリアルタイムで予測し、予測した切削力を用いて、算出した切削トルクに応じて切削条件を逐次変更することにより適応制御を行うことができるといった効果がある。
現在、機械加工を行う工作機械に切削加工中の切削力を検出する切削力センサが組み込まれておらず、切削加工中の切削力をフィードバックして切削加工プロセスを制御することが行われていない。切削加工プロセスを制御していない現状では、切削加工中の異常や外乱に対処できないため、試し削りを行わざるを得ず、試し削りのための時間を浪費したり、加工条件を抑制し(加工効率を下げて)安全を確保していたが、本発明によって、切削加工中の異常や外乱に対処できるようになり、加工効率を下げることなく安全を確保することができる。
切削力適応制御システムの機能ブロック図 切削力適応制御システムの模式図 適応制御方法のフロー図(1) 適応制御方法のフロー図(2) 危険トルク、目標切削トルク、許容トルクの関係を示した図 加工する被削材の初期形状と最終形状を示した図 切削トルクの分布を表すヒストグラム 平均切削力を一刃あたりの送り量に対してプロットしたグラフ スクエアエンドミルによるステップ加工の説明図 切削力シミュレーション結果の説明図 エンドミルの瞬間切削力モデルを示す図 切れ刃の軌跡の説明図 実切込み厚さの説明図 被削材をボクセルモデルで表現した図 工具切れ刃が通過したか、通過してないかの判定方法の説明図 工具切れ刃の面を工具回転角度とともに回転させた図 被削材に溝がある場合の説明図 切削力適応制御システムの機能ブロック図(実施例3)
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
本発明の切削力適応制御方法及びシステムで用いる切削力シミュレーションについて、従来の切削力シミュレーションとその問題点を指摘しながら説明する。
上述の如く、本発明で用いる切削力シミュレーションは、被削材をボクセルモデルで表現して実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測するものである。従来、エンドミル加工の切削力を予測する種々の切削モデルが提案されており、下記5種類に主に分類される。
(1)平均切削力モデル (Average Rigid Force, Static Deflection Model)
(2)瞬間切削力モデル (Instantaneous Rigid Force Model)
(3)瞬間切削力モデル,静変形モデル (Instantaneous Rigid Force, Static Deflection Model)
(4)工具変形を考慮した瞬間切削力モデル (Instantaneous Force with Static Deflection Feedback Model)
(5)切り屑再生効果を考慮した瞬間切削力モデル,動変形モデル (Regenerative Force, Dynamic Deflection Model)
本発明で用いる切削力シミュレーションでは、上記(1)〜(5)の5つの切削モデルのうち、(2)の瞬間切削力モデルに相当するモデルの考え方に基づいて切削力の予測を行う。瞬間切削力モデルの場合、エンドミルのねじれ刃による複雑な切削機構が考慮され、現実的な切削力の計算をすることが可能である。
瞬間切削力モデルでは、エンドミルを工具回転軸方向に沿って微小薄板要素に分割して個々の要素ごとに微小切削力を計算し、微小切削力を力の方向を考慮しながら足し合わせることによって、工具全体の切削力を求める。
微小切削力は、各薄板要素の切れ刃先端に作用すると仮定し、切れ刃に垂直な面内での加工を二次元切削状態で近似する。このやり方によって、ある工具回転角のときの切削力(瞬間切削力)を求めることができ、回転角度を徐々に変化させながら、工具1回転分を計算すると切削力波形が得られる。また、アップカットとダウンカットの違いや、半径方向および軸方向の切り込みの違いによる切削力波形の違いも予測することができる。但し、瞬間切削力モデルでは、切削力の計算に工具変形の影響は考慮されていないことに留意する必要がある。しかしながら、切削状態が一定であれば工具変形も一定となり、工具変形の切削力への影響は小さく無視しても問題は生じない。
従来、瞬間切削力モデルは、工具の切れ刃と被削材の幾何学的な関係に基づいて数学モデルが作成されており、工具の切れ刃と被削材との接触状況が一様であることが前提になる。このため、被削材の形状が加工によって複雑に変化し、工具と被削剤との接触状況が時々刻々と変化する場合には、数学モデルを作成することができず、切削力の予測は困難である。
そこで、本発明では、被削材の形状が複雑に変化する実加工の状態で切削力を予測するために、数学モデルに依らず、ボクセルモデルを用いてエンドミル加工の切削力シミュレーションを行う。
本発明で用いる切削力シミュレーションを説明する前に、従来の瞬間切削力モデルによる切削力予測について説明する。
図11に、エンドミルの瞬間切削力モデルを示す。座標系は工具送り方向をx,工具軸方向をz,それらと直角な方向をyとしている。エンドミルは、一般的に複数の切れ刃があるが、ここではそのうちの一つの刃に着目し、エンドミルを工具回転軸方向に沿って微小薄板要素に分割する。通常、エンドミルの切れ刃はねじれており、薄板要素ごとに切れ刃の位置が異なるため、工具先端(z=0)を基準とすると、そこから要素ごとに遅れが生じ、その遅れ角は工具ねじれ角をi、工具半径をRとすると下記数式1で表される。
そして、ある微小要素に作用する微小切削力の接線方向,半径方向,軸方向の成分dF、dF、dFは,それぞれ下記数式2で表される。
ここで、θは工具回転角で切れ刃先端(z=0)をy軸から時計回りに測定した角度に相当し、dzは工具軸方向の微小長さで微小要素の厚みを表す。さらに、上記数式2は、切削力を、逃げ面と被削材との摩擦によって生じる成分と、被削材のせん断によって生じる成分とに分けており、前者の切削係数をKte,Kre,Kae、後者のそれをKtc,Krc,Kacとしている。これらの切削係数は、後述するように、様々な工具送り速度で測定される切削力の平均値から実験的に求めることができる。また、h(θ,z)は実切込み厚さであり、図12に示すように、着目している切れ刃の軌跡と、一つ前の切れ刃が通過した軌跡の関係から求められる。工具は送りを与えられながら回転しているので、実際には切れ刃の軌跡はトロコイド曲線となるが、一刃あたりの送り量Sが工具半径に比べて十分に小さい場合は円弧で近似できるので、工具変形やびびり振動を考慮しない場合の実切込み厚さは、下記数式3で表すことができる。ここで、Ψ(θ,z)はzの位置にある微小切れ刃の工具回転角θにおける切り込み角である。
以上のように求めた微小切削力は、送り方向のx軸方向と工具軸方向のz軸方向、それらと直角な方向のy軸方向に分解することができ、下記数式4で表される。
そして、微小要素に作用する切削トルクは、切削力の接線方向成分と工具半径Rから求めることができるので、下記数式5で表される。
ある工具回転角θにおいて、1つの切れ刃全体に作用する切削力と切削トルクは、微小切削力と微小トルクをz軸方向の切削領域に沿って積分することにより求めることができ、下記数式6で表される。そして、これらの計算を他の切れ刃に関しても同じように行い、全て足し合わせることによって、工具全体に作用する切削力あるいは切削トルクを求める。
上述した従来の瞬間切削力モデルでは、工具や被削材の幾何学形状から数学モデルを作成することで実切込み厚さを求めて切削力を計算していたが、それでは被削材の複雑な形状変化に対処することが困難である。そこで、本発明では、被削材のボクセル表現を用いることで、被削材の形状変化が複雑であっても切削力を予測する。上記の数式2,5よれば、切削力は、切削係数、実切込み厚さ、切込み角、軸方向切削領域がわかれば求められることになる。切削係数は実験的に求められ、切込み角は時間の関数として表せ、軸方向切削領域は薄板要素の厚みから求められる。 すなわち、実切込み厚さを数式に依らない方法で求めることができれば、被削材の形状変化に対応した切削力の予測が可能になる。
図13に示すように実切込み厚さh(θ,z)のx方向成分をh(θ,z)、y方向成分をh(θ,z)と定義すると、実切込み厚さは下記数式7で表される。
本発明では、被削材のボクセル表現を用いて、実切込み厚さのx方向成分h(θ,z)とy方向成分h(θ,z)を離散的に求め、実切込み厚さh(θ,z)を算出し、被削材の形状変化に対応した切削力を予測する。
本発明で用いる切削力の予測手順について説明する。
(手順1)先ず、被削材をボクセルで表現して、工具切れ刃を面で近似する。
(手順2)次に、切れ刃を微小回転角度だけ回転させて切削除去されるボクセルを検出し、x方向成分h(θ,z)とy方向成分h(θ,z)を求めて、上記数式7から実切込み厚さh(θ,z)を求める。
(手順3)さらに、上記数式2に求めた値を代入して、1枚の薄板要素に作用する切削力を求める。
(手順4)そして、全ての薄板要素の切削力を足し合わせることにより、全体の切削力を予測する。
ここで、ボクセルモデルを用いて実切込み厚さを求めるアルゴリズムについて説明する。図14に示すように、先ず、エンドミルを微小薄板要素に分割して、その一つ一つの工具切れ刃を面で近似し、被削材をボクセルモデルで表現する。次に、図16(a)〜(d)に示すように、近似した工具切れ刃の面を工具回転角度とともに回転させていく。図16(a)は切れ刃が被削物に接触する前である(時刻t=t)。図16(b)では、切れ刃が回転して被削物に接触し始め、切れ刃が通過することにより切削されるボクセルが検出されている(時刻t=t+Δt)。図16(c)では、切れ刃が更に回転して被削物に接触し徐々にボクセルが取り除かれている(時刻t=t+2Δt)。そして、図16(d)では、切れ刃が90°回転し、切れ刃が通過した箇所はボクセルが完全に取り除かれている(時刻t=t+3Δt)。
図15(1)に示すように、工具切れ刃が通過したか、あるいは、通過してないかの判定方法は、ボクセルの中心の座標と工具切れ刃との距離をd、ボクセルの一辺の長さをlとし、下記数式8の条件を満たせば、工具切れ刃がボクセルを通過したと判定する。なお、数式8の右辺はボクセルの中心と工具切れ刃の距離が最大のときの長さである。
そして、切削除去されると判定されたボクセルの個数を、x方向、y方向でそれぞれカウントする。最後に求めたボクセルの数とボクセルの一辺の長さを掛けることにより、実切込み厚さのx方向成分h(θ,z)とy方向成分h(θ,z)が求められる。切削除去されると判定されたボクセルのx,y方向それぞれの個数をm,nとすると下記数式9のように表される。
上記数式9で求められたx方向成分h(θ,z)とy方向成分h(θ,z)を上記数式7に代入することにより、実切込み厚さh(θ,z)を求めることができる。例えば、図15(2)では、x方向に4個のボクセル、y方向に3個のボクセルであり、一辺の長さがLであれば、実切込み厚さは5Lになる。
また、求めた実切込み厚さh(θ,z)の値を上記数式2に代入すれば、エンドミルの1枚の薄板要素に作用する切削力が得られる。これを薄板要素ごとに求める。但し、2枚目以降は、遅れ角を考慮して工具切れ刃を回転させていく。そして、全ての薄板要素に作用する切削力を足し合わせることにより、工具に作用する全体の切削力を求めることができる。ここで、ボクセルに精密なボクセルモデルを構築しようとすると、ボクセルの個数が膨大になってしまうため、工具切れ刃が切削除去する部分に、ボクセルのオクトツリー構造(1つのボクセルを8個に細分化したボクセルと置き換える構造)を使用して、精度を維持したままでボクセルの使用量を抑えている。
本発明で用いる切削力シミュレーションでは、異形断面を有する被削材を加工する場合であっても、切削力を求めることができる。図17に示すように、被削材に溝がある場合でも、切削工具と被削材のモデルさえあれば、ボクセルの個数を数えることにより、溝のある部分を考慮したx方向成分h(θ,z)とy方向成分h(θ,z)を求めることができるので、従来の瞬間切削力モデルによるものと比べて、切削力を容易に推定することができる。
本発明の切削力シミュレーション結果と、従来の瞬間切削力モデルによって求めた切削力の推定結果を比べ、本発明の切削力の予測結果の妥当性を検証したところ、結果がよく一致しており、妥当性を確認できている。
以下の実施例では、被削材をボクセルモデルで表現して実切込み厚さを演算して切削力を求める上述の切削力シミュレーションを用いた切削力適応制御システムについて詳細に説明する。
図1は、切削力適応制御システムの機能ブロック図を示している。
切削力適応制御システムは、リアルタイムに工作機械の工具経路を生成する工具経路生成部と、被削材をボクセルモデルで表現して実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測する切削力シミュレータ部と、予測した切削力から算出した切削トルクに応じて、切削加工中に工具送り速度など切削加工指令を動的に変更する切削加工パラメータ変更部と、工具送り速度など切削加工指令をNCマシンに対して逐次出力する逐次指令部を備える。
切削力適応制御システムは、製品モデルと被削材(ワークピース)モデルの形状データ(CADデータ)を入力すると、CADデータに基づき、加工プロセス策定部が加工プロセスを策定し、工具経路生成部が工作機械の工具経路を生成する。工具経路生成部は、切削力シミュレータ部の切削力予測に基づいて工具経路を修正する。逐次指令部は、工具送り速度などの指令データをNCマシンに送る。
切削加工パラメータ変更部では、例えば、切削力あるいは切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に工具送り速度を0(ゼロ)とし工具を停止したり、切削力あるいは切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、工具送り速度を許容範囲の最大値に変更する。
図2の模式図に示すように、切削力適応制御システムは、NCマシンの工具に作用する切削力を計測するのではなく、被削材をボクセルモデルで表現して実切込み厚さを離散的に計算して、切削力を予測する切削力シミュレータを、加工中に工具経路を生成することができる仮想倣い加工システムに組み込むことによって、切削力の予測結果に基づく適応制御を行う。
仮想倣い加工システムは、加工中に工具経路や加工条件が変更できる。従来の機械加工では実際の加工を始める前に工具経路をすべて事前に決定し、それをNCコードに置き換えてプログラムを作成する必要があるため、切削異常が起こらないように入念にプログラムを作成しているが、仮想倣い加工システムでは事前に用意されたプログラムによる指令ではなく、工具経路を実時間で生成し、加工中に指令を動的に変更することができる逐次指令といった加工を行う。
図3は、適応制御方法のフローの一例を示している。まず、仮想倣い加工システムを用いて、加工中に実時間で工具経路を生成する(S01)。次に、生成した工具経路データを切削力シミュレータに渡し、切削力推定を行う(S03)。そして、推定した切削力から切削トルクを計算し、それに応じて工具送り速度を適切に修正する(S04)。このとき、加工前の準備段階で被削材の材質,工具材質,工具の推奨切削条件などを考慮して加工に適切な切削トルクである目標切削トルクと、加工を続けることが危険と判断される切削トルクを設定しておく。これによって、危険トルクを超えるような非常に大きな切削トルクが予測される場合(S05)には、危険と判断して加工(工具)を停止させる(S15)。危険トルクには達しないものの、目標切削トルクを超える(S06)もしくは下回る(S07)場合には、目標切削トルクの範囲に収まるように送り速度を修正する(S16,S17)。また、切削トルクがほとんど発生しないと予測される場合(S08)は、工具送り速度を設定した許容範囲の最大速度(例えば、1500mm/min)まで上げることで、加工時間を短縮する(S18)。生成された工具経路データと修正された工具送り速度に基づいてNCマシンに指令を出す(S10)。そして、これらの一連の処理を繰り返す。
生成された工具経路データに基づく仮想倣い加工システムによる指令と、修正された工具送り速度を、仮想倣い加工システムにフィードバックし、それを反映した工具経路と工具送り速度を計算して工作機械に逐次指令する。このように、2つのシミュレータと工作機械がリアルタイムで通信しながら同時に動作することで、切削負荷のモニタリングが不要な適応制御を実現する。
図4は、実施例1の適応制御方法の他のフローを示している。まず、仮想倣い加工システムを用いて、加工中に実時間で工具経路を生成する(S101)。次に、生成した工具経路データを切削力シミュレータに渡し、切削力予測を行う(S103)。そして、予測した切削力から切削トルクを計算し、それに応じて工具送り速度を適切に修正する(S104)。切削トルクは、工具が一回転する間に作用するトルクの中でも、その大きさが最大となる時のトルクの値を用いて、工具送り速度をどのように修正するかを評価する。このとき、加工前の準備段階で被削材の材質・工具材質・工具の推奨切削条件などを考慮して加工に適切な切削トルクである目標切削トルクと、加工を続けることが危険と判断される切削トルクを設定しておく。これによって、危険トルクを超えるような非常に大きな切削トルクが予測される場合(S105)には、危険と判断して加工を停止させる(S115)。危険トルクには達しないものの、目標切削トルクを超える(S101)もしくは下回る(S101)場合には、目標切削トルクの範囲に収まるように工具送り速度を修正する(S101)。さらに、どの程度修正するかを判断するために許容トルクを設定しておく。生成された工具経路データと修正された工具送り速度に基づいてNCマシンに指令を出す(S110)。そして、これらの一連の処理を繰り返す。生成された工具経路データに基づく仮想倣い加工システムによる指令と、修正された工具送り速度を、仮想倣い加工システムにフィードバックし、それを反映した工具経路と工具送り速度を計算して工作機械に逐次指令する。
図5は、危険トルク, 目標切削トルク, 許容トルクの関係を示した図である。目標切削トルクの上限値を上限目標切削トルク,下限値を下限目標切削トルク,許容トルクの上限値を上限許容トルク,下限値を下限許容トルク,修正後の新たな送り速度を“new Feed Rate”として、以下に工具送り速度修正のアルゴリズムを説明する。
(1)切削トルク≧危険トルクの場合
切削トルクはまず、危険トルクと比較される(S105)。トルクが危険トルクを超えていた場合、危険と判断して瞬時に加工を停止させる(S115)(修正後の新たな送り速度=0)。
(2)危険トルク>切削トルク>上限目標切削トルクの場合
切削トルクが危険トルクは超えないものの上限目標切削トルクより大きい場合(S106)には、工具送り速度を予め設定された割合で下方修正する(S116)。
(3)下限目標切削トルク > 切削トルクの場合
切削トルクが下限目標切削トルクよりも小さい場合(S107)には、送り速度を予め設定された割合で上方修正する(S117)。
(4)切削トルク=0
切削トルクがほとんど発生しないと予測される場合(S108)は、工具送り速度を許容範囲の最大速度1500(mm/min)まで上げることで、加工時間を短縮する(S118)。
(5)上限目標切削トルク≧切削トルク≧下限目標切削トルクの場合
切削トルクの値が加工状況に対して適切とされる目標切削トルクの範囲内である場合には、切削条件の修正は行わない。
ここで、工具送り速度には標準値,下限値,上限値を設定することで、加工開始時には標準値を採用し、修正後も下限値,上限値を超えないようにする。これは、加工状況によって工具送り速度が修正されるとき、修正後の速度が極端な値になってしまうことを回避するためである。修正された工具送り速度を仮想倣い加工システムにフィードバックし、それを反映した工具経路と工具送り速度を新たに計算して工作機械に逐次指令する。図2に示したように、切削力シミュレータ部と工具経路生成部とNCマシンが、リアルタイムでデータを授受しながら同時に動作することで、切削力のモニタリングが不要な適応制御を実現するのである。
ここで、本発明の切削力適応制御方法の有効性について述べる。切削力適応制御を用いた場合と用いなかった場合の加工時間,工具送り速度の変化,切削トルクの変化をシミュレーションによって比較した。図6に、加工する被削材の初期形状と最終形状を示す。また、切削条件を下記表1に示す。
被削材の初期形状は、図6(a)に示すように、最終形状より一回り大きい80×80×10の直方体とし、直径12mmのスクエアエンドミルで等高線加工を行うものとする。適応制御を用いない場合は、送り速度を一定(600mm/min)として加工シミュレーションを行った。適応制御を用いた場合は、加工開始時の工具送り速度を、適応制御を用いない場合と同じにし、加工開始後は、加工状況に応じて工具送り速度を修正しながら加工シミュレーションを行った。
図6(a)に示す被削材の初期形状から、4周分の工具経路を経て、図6(b)に示す最終形状に至るまでの周ごとのAからBまでの間の工具送り速度と切削トルクの変化を調べたところ、適応制御を用いた場合、切削トルクが小さい箇所では工具送り速度を上げ、切削トルクが大きい箇所では工具送り速度を下げる制御が行われていた。適応制御を用いた場合と用いない場合の加工時間と平均切削トルクを下記表2に示す。また、切削トルクの分布を表すヒストグラムを図7に示す。
適応制御を用いた場合の方が、加工時間が短縮し、目標切削トルクの範囲に入る切削トルクの割合が大きくなっていることから、適切に工具送り速度が制御できていることが確認できた。
本発明の切削力適応制御方法では、NCプログラムによる加工とは違い、加工中に工具送り速度を制御することで、加工効率を上げられることがわかる。また、工具送り速度が適切に修正されることで工具に作用する切削負荷も平準化されていており、切削トルクの急増による工具破損といった加工トラブルの回避にもつながる。
実際にエンドミルで被削材を削り、切削力のデータを取得する実験を行った結果について説明する。実験の手順は次の通りである。
先ず、工作機械に工具,動力計,被削材,アタッチメントを取り付ける。予め作成しておいたNCプログラムを用いて加工を行う。被削材に作用する切削力を動力計で検出し、チャージアンプで増幅したものをデータレコーダに記録する。データレコーダに記録されたデータをコンピュータで解析を行う。
切削力シミュレーションを行うために必要な切削係数は、実際に加工実験を行って得られた平均切削力と切削モデルの平均切削力を比較して求める。実験は6つの異なる送り速度(0.025mm、0.05mm、0.075mm、0.1mm、0.125mm、0.15mm)を設定して直線加工を行って切削力を計測した。この実験で使用した工具や被削材,各種切削条件を下記表3に示す。
実験データには、ばらつきがあるので工具10回転分を平均した値を用いた。図8に示すように、平均切削力を一刃あたりの送り量Stに対してプロットし、線形近似した。これより平均切削力は下記数式10のように表すことができる。
一方、切削加工モデルから導出した平均切削力の式は、下記数式11で表される。ただしP,Q,S,Tはθinをエンゲージ角,θoutをディスエンゲージ角,Zを刃数,Adを軸方向切込みとしてそれぞれ下記数式12で表される値である。
上記数式12を、数式11に代入することで切削係数を求めることができる。求めた切削係数を下記表4に示す。
実際に、スクエアエンドミル加工を行って計測した切削力と、切削力シミュレーションで予測された切削力の結果を比較する。図9に示すようなスクエアエンドミルによるステップ加工(大きさの違う穴や溝を有する被削材を対象とした穴や溝を横切るようにステップ加工)の結果を示す。切削条件を下記表5に示す。
上記表5に示す切削条件で行った加工のうち、アップカットの場合における切削力シミュレーション結果を図10に示す。工具切れ刃1刃ごとの切削力波形を右上に、工具10回転ごとの切削力波形の履歴を右下に示している。
アップカット,ダウンカットともに、実験結果と予測結果が良く一致し、どの加工位置においても被削材の形状を考慮して切削力が予測できていることが確認できた。
図18は、実施例3で説明する切削力適応制御システムの機能ブロック図を示している。図18に示すように、実施例3の切削力適応制御システムで、NCマシン用のCNC(Computerized Numerical Control)装置を制御するものである。NCマシンは、CNC装置がNCプログラムを入力し、NCプログラムをNC指令解釈部で解釈して、工具位置指令生成部で工具位置を決定し、工具送り速度をNCマシンに送り、NCマシンを制御する。
切削力適応制御システムでは、CNC装置の工具位置指令生成部から工具位置データを受け取り、切削力シミュレータ部で、被削材をボクセルモデルで表現して実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測する。そして、切削加工パラメータ変更部で、予測した切削力から算出した切削力あるいは切削トルクに応じて、CNC装置の工具送り速度を変更する。
切削加工パラメータ変更部では、切削力あるいは切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に工具送り速度を0(ゼロ)とし工具を停止する。また、切削力あるいは切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、工具送り速度を許容範囲の最大値に変更する。
本発明は、自律加工を行う工作機械に有用である。

Claims (11)

  1. NCプログラムを用いず、工作機械の工具経路を生成し、前記工作機械に対して切削加工中に切削加工指令を動的に変更して逐次出力する方法であって
    被削材をボクセルモデルで表現して、生成された前記工具経路を用いて、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測し、予測した切削力あるいは切削トルクが目標範囲に収まるように、前記切削加工指令を動的に変更して逐次出力すると共に、前記動的に変更された前記切削加工指令をフィードバックして前記工具経路をリアルタイムに再生成することを特徴とする切削力適応制御方法。
  2. 1)切削加工中の被削材をボクセルモデルで表現するステップ、
    2)リアルタイム性のある微小時間経過後、切削加工指令値に基づく切削後の被削材をボクセルモデルで表現するステップ、
    3)上記1)のボクセルモデルと上記2)のボクセルモデルの差分から実切込み厚さ方向のボクセル個数を求め、前記ボクセル個数とボクセルサイズから、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測するステップ、
    4)予測された切削力から切削トルクを算出するステップ、
    5)算出した切削トルクと目標切削トルクとを比較して、目標範囲に収まるように次の微小時間の切削加工指令値を決定するステップ、
    6)決定された切削加工指令値を工作機械に出力するステップ、
    7)上記1)〜6)のステップを繰り返す、
    ことを特徴とする請求項1に記載の切削力適応制御方法。
  3. 上記の切削力を予測するステップにおいて、
    工具切れ刃のすくい面を平面で近似し、工具回転角度の関数として工具軸を中心に回転掃引して、切れ刃によって除去される実切込み厚さ方向のボクセル個数を求めることを特徴とする請求項2に記載の切削力適応制御方法。
  4. 上記の切削加工指令値を決定するステップにおいて、
    前記切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に、切削加工を停止し、
    前記切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、切削加工指令値を許容範囲の最大値とする、
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の切削力適応制御方法。
  5. 前記切削加工指令値は、工具送り速度であり、切削加工中の切削負荷をフィードバッグして工具送り速度を増減することを特徴とする請求項〜4の何れかに記載の切削力適応制御方法。
  6. NCプログラムを用いず、工作機械の工具経路を生成する工具経路生成部を有し、切削加工パラメータで制御され、前記工作機械に対して切削加工中に切削加工指令を動的に変更して逐次出力する逐次指令部を備えた適応制御システムであって、
    被削材をボクセルモデルで表現して、生成された前記工具経路を用いて、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測する切削力シミュレータ部と、
    予測した切削力あるいは切削トルクが目標範囲に収まるように、前記切削加工パラメータを動的に変更する切削加工パラメータ変更部、
    を備え
    前記動的に変更された前記切削加工パラメータに応じて、前記切削加工指令を動的に変更して逐次出力すると共に、前記動的に変更された前記切削加工指令をフィードバックして前記工具経路をリアルタイムに再生成することを特徴とする切削力適応制御システム。
  7. 前記切削力シミュレータ部は、
    1)切削加工中の被削材を第1のボクセルモデルで表現する手段と、
    2)リアルタイム性のある微小時間経過後、切削加工指令値に基づく切削後の被削材を第2のボクセルモデルで表現する手段と、
    3)上記1)のボクセルモデルと上記2)のボクセルモデルの差分から実切込み厚さ方向のボクセル個数を求め、前記ボクセル個数とボクセルサイズから、実切込み厚さを離散的に演算して切削力を予測する手段、を備え、
    前記逐次指令部は、
    4)予測された切削力から切削トルクを算出する手段、
    5)算出した切削トルクと目標切削トルクとを比較して、目標範囲に収まるように次の微小時間の切削加工指令値を決定する手段、
    6)決定された切削加工指令値を前記工作機械に出力する手段、
    を備えることを特徴とする請求項6に記載の切削力適応制御システム。
  8. 上記の切削力を予測する手段において、
    エンドミルの場合、工具切れ刃のすくい面を平面で近似し、工具回転角度の関数として工具軸を中心に回転掃引して、切れ刃によって除去される実切込み厚さ方向のボクセル個数を求めることを特徴とする請求項7に記載の切削力適応制御システム。
  9. 上記の切削加工指令値を決定する手段において、
    前記切削トルクが、継続加工は危険と判断される閾値を超える場合に、切削加工を停止し、
    前記切削トルクが、略0(ゼロ)の場合に、切削加工指令値を許容範囲の最大値とする、
    ことを特徴とする請求項7又は8に記載の切削力適応制御システム。
  10. 前記切削加工指令値は、工具送り速度であり、切削加工中の切削負荷をフィードバッグして工具送り速度を増減することを特徴とする請求項〜9の何れかに記載の切削力適応制御システム。
  11. 請求項2〜5の何れかに記載の切削力適応制御方法に含まれる前記1)乃至7)のステップをコンピュータに実行させるための切削力適応制御プログラム。
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