JP6583371B2 - 屈曲ガラス物品の製造方法 - Google Patents
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Description
(1) 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスはいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、いずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持する、ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。
(2) 第1主面と第2主面と端面とを有し、少なくとも一部に屈曲部を備えた屈曲ガラス物品であって、
前記屈曲ガラスは化学強化ガラスを備え、
前記第1主面又は前記第2主面における、圧縮応力深さDOLの面内平均値に対する、DOLの面内平均偏差の割合として求められる変動割合が3%以下である屈曲ガラス物品。
(3) 第1主面と第2主面と端面とを有し、少なくとも一部に屈曲部を備えた屈曲ガラス物品であって、
前記端面近傍のいずれかの主面において積分された主応力差が5MPa以下である屈曲ガラス物品。
本実施形態の屈曲ガラス物品の製造方法では、被成形体である板状ガラスを軟化点以上の温度まで加熱して軟化させた後、成形型で成形して板状ガラスに屈曲部を付与する。その後、成形された屈曲ガラスを、支持治具により支持させながら熱処理、例えばアニール処理する。このアニール処理により、屈曲ガラスの成形形状からの変形を防止しつつ、屈曲ガラスの残留ひずみや残留応力を除去する。
屈曲ガラスの成形工程は、まず、被成形体である板状ガラスを準備して、支持台、下型、アーム等の適宜の手段で支持する(S1)。次に、支持された板状ガラスを加熱し、温度は特に制限はないが、300〜600℃、例えば、約500℃に加熱する(S2)。平衡粘性としては1012.5Pa・s以上1017Pa・s以下となるように加熱することが好ましい。この加熱処理が板状ガラスの予熱工程となる。
平衡粘性は、測定される粘性範囲に応じて、例えばビーム曲げ法(ISO 7884−4:1987)や繊維引き伸ばし法(ISO 7884−3:1987)や平行平板粘度計(ASTM C 338−93:2003)や棒沈降式粘度計(ISO 7884−5:1987)を用いて測定される。本発明の実施態様では、平衡粘性は、ビーム曲げ法(ISO 7884−4:1987)に基づき測定する。
保温工程では、この屈曲ガラスの平衡粘性が1012.5〜1017Pa・sになるようなアニール温度に加熱された屈曲ガラスを、例えば、10〜180分保持することが好ましい。これによれば、十分に応力を緩和し熱歪みを除去でき、均一な応力分布にできる。応力分布が均一となり、得られた屈曲ガラス物品のばね力が均一となり、例えば、屈曲ガラス物品と表示パネルとを接着剤を介して貼合する場合に、接着剤に負担がかからずに剥離等が抑制できる。なお、場合によっては、加熱工程での加熱温度より保温温度を低く設定して保温工程を実施してもよい。
徐冷工程では、例えば、屈曲ガラスを0.3〜10℃/分の降温速度で、平衡粘性が1017.8Pa・s以上までゆっくりと冷却するのが好ましい。降温速度は、0.3〜5℃/分がより好ましい。これにより、得られた屈曲ガラス物品内の新たな温度分布を発生させず、温度分布による残留応力の発生を防止でき、その結果、良好な効果が得られる。
図3に屈曲ガラスを支持する支持治具の第1構成例の斜視図を示す。本構成の屈曲ガラス100は、上面視長方形であり、長辺に沿って湾曲して形成されている。そして、屈曲ガラス100は、支持治具10により、凹状の下面である第1主面101が支持された状態でアニール処理される。なお、前述のように成形型の成形面に接触した面である第1主面を支持治具10に支持させる必要はなく、状況により第2主面を支持させてもよい。
なお、成形型の成形面に接触した面である第1主面を用いて説明したが、第2主面としてもよく、以下同様である。
図5に屈曲ガラスの切断工程を示す工程説明図を示す。
切断加工では、成形された屈曲ガラス100又は屈曲ガラス物品(以下、これらをまとめて被加工物と記載)とから、製品として不要となる一部の周縁部103を切断し、外観及び寸法を調整する。例えば、前述した支持治具10との接触位置を除去する場合、切断位置は被加工物の端面から10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
研削による面取加工では、図示はしないが、外観及び寸法が調整された被加工物の少なくとも一部の端面を面取加工する。面取加工は、最初は目の粗い研削砥石で加工した後、徐々に目の細かい研削砥石で加工して、切断加工で形成された端面105角部に面取加工を施す。目の粗い研削砥石の材質としては、アルミナ、cBN(立方晶窒化ホウ素)、ダイヤモンド等を使用でき、研削性、硬度の点では、材質がダイヤモンドであるのが好ましい。目の粗い研削砥石の粗さとしては、#80〜#500が好ましく、#200〜#400がより好ましい。目の細かい研削砥石の材質としては、アルミナ、cBN、ダイヤモンド等を使用でき、研削性、硬度の点で材質がダイヤモンドであるのが好ましい。目の細かい研削砥石の粗さとしては、#300〜#3000が好ましく、#400〜#1200がより好ましい。
本実施形態に用いられる被成形体である板状ガラスは、例えば、厚みが0.5mm以上であり、0.7mm以上が好ましい。また、ガラス素板の厚みは、5mm以下であり、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。この範囲であれば、最終製品において割れにくい強度が得られる。
(i)酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiO2を63〜73%、Al2O3を0.1〜5.2%、Na2Oを10〜16%、K2Oを0〜1.5%、Li2Oを0〜5%、MgOを5〜13%及びCaOを4〜10%を含むガラス。
(ii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を50〜74%、Al2O3を1〜10%、Na2Oを6〜14%、K2Oを3〜11%、Li2Oを0〜5%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%及びZrO2を0〜5%含有し、SiO2及びAl2O3の含有量の合計が75%以下、Na2O及びK2Oの含有量の合計が12〜25%、MgO及びCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス。
(iii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を68〜80%、Al2O3を4〜10%、Na2Oを5〜15%、K2Oを0〜1%、Li2Oを0〜5%、MgOを4〜15%及びZrO2を0〜1%含有するガラス。
(iv)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を67〜75%、Al2O3を0〜4%、Na2Oを7〜15%、K2Oを1〜9%、Li2Oを0〜5%、MgOを6〜14%及びZrO2を0〜1.5%含有し、SiO2及びAl2O3の含有量の合計が71〜75%、Na2O及びK2Oの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
また、ガラス基材として着色ガラスを用いる場合、ガラス中に、酸化物基準のモル百分率表示で、着色成分(Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Bi、Se、Ti、Ce、Er、及びNdの金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1成分)を7%以下の範囲で含有してもよい。着色成分が7%を超えると、ガラスが失透しやすくなり望ましくない。この含量は好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下である。ガラスの可視光透過率を優先させる場合は、典型的にはこれらの成分は含有しない。また、ガラス基材は、溶融の際の清澄剤として、SO3、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。
更に、このような板状ガラス(屈曲形状への成形前又は成形後)に表面圧縮応力層を形成する強化処理方法として、物理強化法や化学強化法が利用できる。ガラス主面が強化処理されたガラス板は、機械的強度の高いガラスが得られる。本構成においては、いずれの強化手法を採用してもよいが、厚みが薄くかつ表面圧縮応力(CS)値が大きなガラスを得る場合には、化学強化法によって強化するのが好ましい。
なお、t(単位mm)はガラスの板厚である。
印刷層は、用途に応じて種々の印刷方法、インキ(印刷材料)により形成されて良い。印刷方法としては、例えば、スプレー印刷、インクジェット印刷やスクリーン印刷が利用される。これらの方法により、面積の広いガラスでも良好に印刷できる。特に、スプレー印刷では、屈曲部を有する屈曲ガラス物品に印刷しやすく、印刷面の表面粗さを調整しやすい。一方、スクリーン印刷では、広い平坦部を有する屈曲ガラス物品に平均厚さが均一になるように所望の印刷パターンを形成しやすい。また、インキは、複数使用してよいが、印刷層の密着性の観点から同一のインキであるのが好ましい。
図6は屈曲ガラスを支持する支持治具の第2構成例の斜視図である。以下の説明において、共通する部材や部位に対して同一の符号を付与して、その説明を省略又は簡略化する。
図7は屈曲ガラスを支持する支持治具の第3構成例の斜視図である。
本構成例の支持治具30は、屈曲ガラス100の第1主面101を下方から支持する一対の支持ピン31A,31Bを有する連結板33と、連結板33を固定するベース板14と、を備える。ベース板14は、連結板33が直立して固定できれば、短縮化又は省略できる。
図8は屈曲ガラスを支持する支持治具の第4構成例の斜視図である。
本構成の支持治具40は、ベース板14と、ベース板14に立設された複数のピン43と、を備える。複数のピン43の長さは、屈曲ガラス100の第1主面101の形状に倣って、それぞれ異なる長さに調整されている。つまり、複数のピン43は、屈曲ガラス100の曲面形状をそれぞれ異なる位置で支持するように、高さが調整されている。
図9は屈曲ガラスを支持する支持治具の第5構成例の斜視図である。
本構成例の支持治具50は、屈曲ガラス100の第1主面101の形状に倣った形状を有する載置面51を有する。この屈曲ガラス100の載置面51は、点又は線状の微小凸部が形成された凹凸面となっている。屈曲ガラス100は、凹凸面にされた載置面51に、点接触又は線接触で支持される。
図10は屈曲ガラスを支持する支持治具の第6構成例の正面図(A)と側面図(B)である。
本構成例の支持治具60は、屈曲ガラス100を傾斜して立てかけた状態で支持する。この支持治具60は、ベース板61と、ベース板61に立設された支持ピン63と、支持ピン63の先端に設けられ屈曲ガラス100を支持する支持面を有する支持部65と、固定部材67と、を備える。固定部材67は、ベース板61に固定され、屈曲ガラス100の下端100aが係止される。なお、屈曲ガラス100は、前述したような長辺が湾曲した形状に限らず、図10に示すように、短辺が湾曲した形状であってもよい。
図11は屈曲ガラスを支持する支持治具の第7構成例の正面図(A)と側面図(B)である。
本構成例の支持治具70は、第6構成例の支持治具60と同様に屈曲ガラス100を傾斜して立てかけた状態で支持する。この支持治具70は、ベース板71と、ベース板71に立設された支持ピン73と、支持ピン73の先端に設けられ水平方向に延設されるアーム部材75と、アーム部材75の両端に設けられ、屈曲ガラス100を支持する支持面を有する一対の支持部77A,77Bと、を備える。
また、主応力差Σを端面近傍も屈曲部なども上限以下で、同水準となることで、形状等の歪みが少なくなり、例えば、後工程の化学強化処理により均質な強度を有する屈曲ガラスを得られる。
ここで曲げ深さとは、屈曲部を有する基材の厚さ方向断面視において、2つの下端部を結ぶ線分と、この線分と平行となる直線のうち、屈曲部に接する接線との距離をいう。
真空成形法では、成形後の屈曲ガラスの形状に応じた所定の金型上に板状ガラスを設置し、板状ガラス上にクランプ金型を設置し、板状ガラスの周辺をシールする。その後、金型と板状ガラスとの空間をポンプで減圧することにより、板状ガラスの表裏面に差圧を与えて成形する。
圧空成形法では、成形後の屈曲ガラスの形状に応じた所定の金型上に板状ガラスを設置し、板状ガラス上にクランプ金型を設置し、板状ガラスの周辺をシールする。その後、板状ガラスの上面に対して圧力を圧縮空気によって付与し、板状ガラスの表裏面に差圧を与えて成形する。
なお、真空形成法と圧空成形法は互いに組み合わせて行ってもよい。
プレス成形法は、成形後の屈曲ガラスの形状に応じた所定の金型(下型、上型)間に板状ガラスを設置し、板状ガラスを軟化させた状態で、上下の金型間にプレス荷重を加えて、板状ガラスを曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。
なお、成形後の屈曲ガラスの形状に応じて、上述の成形法のうち2種以上の成形法を併用してもよい。
被加工物の少なくとも一方の主面を研削・研磨加工を実施してもよい。成形時に使用する成形型に接触した第1主面を研磨することが好ましい。
被加工物について必要に応じて各種表面処理層を形成する工程を実施してもよい。表面処理層としては、防眩処理層、反射防止処理層、防汚処理層などが挙げられ、これらを併用してもよい。被加工物の第1主面又は第2主面のいずれの面でもよい。これらは成形工程後やアニール工程後に形成されることが好ましいが、防眩処理層については成形工程前でもよい。
防眩処理層とは主に反射光を散乱させ、光源の映り込みによる反射光の眩しさを低減する効果をもたらす層のことである。防眩処理層は被加工物の表面を加工して形成してもよく、別途堆積形成してもよい。防眩処理層の形成方法として、例えば、被加工物の少なくとも一部に化学的(例、エッチング)あるいは物理的(例、サンドブラスト)な方法で表面処理を施し、所望の表面粗さの凹凸形状を形成する方法を使用できる。また、形成方法として、被加工物の少なくとも一部に処理液を塗布あるいは噴霧して、板上に凹凸構造を形成してもよい。
更に熱的な方法により被加工物の少なくとも一部に凹凸構造を形成してもよい。
反射防止処理層とは反射率低減の効果をもたらし、光の映り込みによる眩しさを低減する他、表示装置に使用した場合には、表示装置からの光の透過率を向上でき、表示装置の視認性を向上できる層のことである。
反射防止処理層が反射防止膜である場合、被加工物の第1主面又は第2主面に形成されることが好ましいが制限はない。反射防止膜の構成としては光の反射を抑制できれば限定されず、例えば、波長550nmでの屈折率が1.9以上の高屈折率層と屈折率が1.6以下の低屈折率層とを積層した構成、もしくは膜マトリックス中に中空粒子や空孔を混在させた波長550nmでの屈折率が1.2〜1.4の層を含む構成とできる。
防汚処理層とは表面への有機物、無機物の付着を抑制する層、又は、表面に有機物、無機物が付着した場合においても、ふき取り等のクリーニングにより付着物が容易に除去できる効果をもたらす層のことである。
防汚処理層が防汚膜として形成される場合、被加工物のいずれかの主面上又はその他表面処理層上に形成されることが好ましい。防汚処理層としては、防汚性を付与できれば限定されない。中でも含フッ素有機ケイ素化合物を加水分解縮合反応により得られる含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなることが好ましい。
板状ガラスに(1)予熱・成形工程、(2)アニール工程、(3)化学強化工程、の順に以下の手順で行った。
板状ガラスを以下の手順で成形し、屈曲ガラスを得た。
まず、板状ガラスを搬送アームに載置し、この状態で板状ガラスを予熱炉に搬送した。予熱炉では板状ガラスの平衡粘度が約1012.5Pa・sとなるように加熱した(予熱工程)。続いて、予熱した板状ガラスを搬送アームにて所望の屈曲ガラスが得られるような表面形状を有する下型上に載置し、この状態で板状ガラスを軟化炉に搬送した。軟化炉では板状ガラスの平衡粘度が約107.7Pa・s程度となるように加熱した。この状態で安定化した後、板状ガラスが自重で下型の表面形状に沿わせ成形した(成形工程)。これを約5℃/分程度で降温し(冷却工程)、所望の形状を有する屈曲ガラスを得た。この屈曲ガラスは、全体的に屈曲し、曲率半径が1000mmの屈曲部を有していた。なお、屈曲部の屈曲方向をX軸方向、X軸と直交し厚さ方向と平行となる方向をZ軸方向、X軸とZ軸と直交する方向をY軸方向とする。
続いて、得られた屈曲ガラスについて、以下の手順でアニール処理を実施した。得られた屈曲ガラスを、図7に示すような支持治具上に載置し、アニール炉内に搬送した。その後、加熱を開始し、平衡粘度が約1014Pa・s程度となるように、約10℃/分で昇温した(アニール工程における加熱工程)。アニール炉内が所望の温度に安定した後、15分間保持した(アニール工程における保温工程)後、これを約10℃/分で降温し(徐冷工程)、アニールした屈曲ガラス物品を得た。
アニールした屈曲ガラス物品を450℃に加熱して溶融させた硝酸カリウム塩に2時間浸漬しイオン交換処理した。その後、ガラス板を溶融塩より引き上げ、1時間で室温まで徐冷することで化学強化処理を行った。
更に、この屈曲ガラス物品をアルカリ溶液(商品名:サンウォッシュTL−75、ライオン社製)に4時間浸漬してアルカリ処理を施した。
(2)アニール工程を実施せず、それ以外については例1と同様の手順で、板状ガラスに(1)予熱・成形工程、及び(3)化学強化工程を実施した。以上より、同条件にて5枚の屈曲ガラスを得た(ガラスサンプルB)。
各種評価は以下に示す分析方法により行った。
〔ガラスの評価:表面圧縮応力(CS)及び表面圧縮応力層の深さ(DOL)〕
ガラスサンプルの表面圧縮応力(CS)及び表面圧縮応力層の深さ(DOL)(以降、応力分布と記載)は、折原製作所社製のガラス表面応力計装置(FSM−6000LE)により測定した。
CS及びDOLの測定はガラスサンプル面内において中心付近及び左右端面付近の、計3点について実施した。DOLについては面内のバラつきを示す面内平均偏差σ及びDOL面内平均値に対する面内平均偏差σの割合として求められる変動割合も算出した。
ガラスサンプルの主応力差は、フォトニックラティス社製のワイドレンジ複屈折評価システム(型番WPA−100)により測定した。
主応力の測定はガラスサンプル面内において、ガラスサンプルの主面のうち、下型と接触していない面について測定を実施した。測定はX軸方向とY軸方向での主応力差をそれぞれ100mmの測定長で実施した。ガラスサンプルAのうちA−1を、ガラスサンプルBのうちB−1について測定を実施し、その結果を図12に示した。
また、表1に示すようにガラスサンプルAは、ガラスサンプルBよりも表面圧縮応力CSが高くなった。これは、ガラスサンプルBは化学強化工程でイオン交換処理を実施してもガラスサンプルBに残存していた残留応力が緩和し、これに伴い化学強化層の残留応力も緩和するため、表面圧縮応力CSの値が低くなったと考えられる。なお、得られたガラスサンプルAのヤング率は全て50GPa以上と高い値であった。
以上より、高温での加熱処理を行った屈曲ガラスに残留した残留応力をアニール処理により除去でき、緩和しにくい均質な化学強化層を形成した屈曲ガラス物品が得られた。
(1) 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスはいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、いずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持する、ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、屈曲ガラスの変形を抑制しつつ、熱処理できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、アニール処理中の屈曲ガラスの変形を抑制しつつ、アニール処理によって屈曲ガラス内部の残留ひずみや残留応力を除去できる。
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスにおける成形型に接触していた面を前記支持治具に支持させる、(1)又は(2)に記載の屈曲ガラス物品の製造方法。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、後工程において主面を研磨・研削する場合、第1面について重点的に研磨をすればよいなど、後工程負荷を低減できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、熱処理工程前に、屈曲ガラスが5℃/min以上の速い冷却速度で冷却され、屈曲ガラス内部に残留ひずみや残留応力が生じていても、容易に残留ひずみや残留応力を除去できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、屈曲ガラス内部の残留ひずみや残留応力をより確実に除去できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、アニール温度に加熱された後、徐冷されるので、屈曲ガラス内の残留ひずみや残留応力の発生を抑制できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、面取加工により屈曲ガラスの縁部を滑らかにできる。また、縁部の微細な傷を除去できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、端面が滑らかとなって屈曲ガラスの寸法精度が高められ、また、操作者のハンドリング性を向上できる。よって、屈曲ガラスの商品価値を向上できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、設計形状に合わせて、屈曲ガラスの外観や寸法を調整できる。
この屈曲ガラス物品の製造方法によれば、例えば、アニール処理の際、支持治具により保持されて屈曲ガラスの表面に傷や接触痕等が生じた場合でも、この傷や接触痕等を生じた周縁部を除去できる。
前記屈曲ガラス物品は化学強化ガラスを備え、
前記第1主面又は前記第2主面における、圧縮応力深さDOLの面内平均値に対する、DOLの面内平均偏差の割合として求められる変動割合が3%以下である屈曲ガラス物品。
この屈曲ガラス物品は、圧縮応力の面内偏差が小さく、均質な強度が得られる。
この屈曲ガラス物品は、画像の乱れが小さく綺麗であり、かつ長期的な破損を防ぐことができる。
前記端面近傍のいずれかの主面において積分された主応力差が5MPa以下であることを特徴とする、屈曲ガラス物品。
この屈曲ガラス物品は、切断工程、面取工程、化学強化工程などを経て、損傷などを抑制でき高効率で高品質となる。
この屈曲ガラス物品は、屈曲部も端面付近も低い主応力差で均一となり、歪みが少なくなる。
この屈曲ガラス物品は、機械的強度の高い屈曲ガラス物品が得られる。
この屈曲ガラス物品は、均質な強度が得られ設計通りの形状が得られる。
この屈曲ガラス物品は、押圧などでガラスに負荷がかかっても変形を抑制でき、ガラスの形状精度を維持できる。
この屈曲ガラス物品は、曲率半径が小さい屈曲部を有するが、アニール処理により残留応力などを除去でき、寸法精度が高い状態で維持でき、均一な化学強化をしやすくなる。
この屈曲ガラス物品は、ひねり構造のような複雑な形状を有するが、アニール処理により残留応力などを除去でき、寸法精度が高い状態で維持でき、均一な化学強化をしやすくなる。
15,51 載置面(支持部)
65,77A,77B 支持部
100 屈曲ガラス
101 第1主面
103 周縁部
105 端面
Claims (8)
- 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
前記熱処理工程は、アニール工程であり、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスはいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、いずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持する、ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。 - 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
板状ガラスを成形型に接触させて前記屈曲ガラスを得る成形工程を更に有し、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスは、前記屈曲ガラスにおける成形型に接触していたいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、前記屈曲ガラスのいずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持する、ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。 - 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
板状ガラスを成形型に接触させて前記屈曲ガラスを得る成形工程を更に有し、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスは、前記屈曲ガラスにおける成形型に接触していたいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、前記屈曲ガラスのいずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持し、
前記熱処理工程は、前記成形工程において前記屈曲ガラスが、平衡粘性が10 12.5 Pa・sから、10 20 Pa・sまでの領域を、5℃/分以上の冷却速度で冷却された後に実施する、ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。 - 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスはいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、いずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持し、
前記熱処理工程は、前記屈曲ガラスを平衡粘性が10 12.5 〜10 17 Pa・sの範囲になるまで加熱する、
ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。 - 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスはいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、いずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持し、
前記熱処理工程は、前記屈曲ガラスを所望の温度に加熱する加熱工程と徐冷工程とを含み、
前記徐冷工程後、前記屈曲ガラスの少なくとも一部を面取りする面取工程を有する、
ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。 - 前記面取工程は、前記屈曲ガラスの前記端面を面取りする、請求項5に記載の屈曲ガラス物品の製造方法。
- 第1主面と第2主面と端面とを有する屈曲ガラスに、熱処理を実施する熱処理工程を含む屈曲ガラス物品の製造方法であって、
前記熱処理工程において、前記屈曲ガラスはいずれか一方の主面を下側にして支持治具に支持され、
前記支持治具は、いずれか一方の主面の最下位置よりも高い位置で、いずれか一方の主面又は端面の少なくとも一部を支持し、
前記熱処理工程は、前記屈曲ガラスを所望の温度に加熱する加熱工程と徐冷工程とを含み、
前記徐冷工程後、前記屈曲ガラスの少なくとも一部を切断する切断工程を有する、
ことを特徴とする屈曲ガラス物品の製造方法。 - 前記切断工程は、前記屈曲ガラスの前記端面を含む周縁部を切断する、請求項7に記載の屈曲ガラス物品の製造方法。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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