以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16とを備えている。動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース18(図2参照)内に配設されたトルクコンバータ20および自動変速機22と、自動変速機22の出力回転部材である変速機出力ギヤ24がリングギヤ26aに連結された差動歯車装置26と、差動歯車装置26に連結された一対の車軸28等とを備えている。動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、トルクコンバータ20、自動変速機22、差動歯車装置26、及び車軸28等を順次介して駆動輪14へ伝達される。また、トルクコンバータ20は、自動変速機22とエンジン12との間の動力伝達経路に設けられている。
エンジン12は、車両10の動力源であり、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。
図2は、トルクコンバータ20や自動変速機22の一例を説明する骨子図である。なお、トルクコンバータ20や自動変速機22等は、自動変速機22の入力回転部材である変速機入力軸30の軸心RCに対して略対称的に構成されており、図2ではその軸心RCの下半分が省略されている。
トルクコンバータ20は、エンジン12のクランク軸12aと動力伝達可能に連結され、軸心RC回りに回転するように配設されたポンプ翼車(入力部材)20pと、変速機入力軸30に動力伝達可能に連結されたタービン翼車(出力部材)20tと、ポンプ翼車20pとタービン翼車20tとの間を直結するロックアップクラッチ32とを備えている。また、動力伝達装置16には、ポンプ翼車20pに動力伝達可能に連結された機械式のオイルポンプ34が備えられている。機械式オイルポンプ34は、エンジン12によって回転駆動されることにより、自動変速機22を変速制御したり、ロックアップクラッチ32を係合したり、動力伝達装置16の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の作動油を圧送する。
自動変速機22は、エンジン12から駆動輪14までの動力伝達経路の一部を構成し、摩擦締結要素として機能する複数の摩擦係合装置(第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2)の何れかが選択的に係合されることによりギヤ比(変速比)が異なる複数のギヤ段(変速段)が形成される有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式多段変速機である。例えば、車両によく用いられる所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。自動変速機22は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置42と、ラビニヨ型に構成されているシングルピニオン型の第2遊星歯車装置44およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置46とを同軸線上(軸心RC上)に有し、変速機入力軸30の回転を変速して変速機出力ギヤ24から出力する。
第1遊星歯車装置42は、外歯歯車である第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1と同心円上に配置される内歯歯車である第1リングギヤR1と、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1と噛み合う、一対の歯車対からなる第1ピニオンギヤP1と、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1とを有している。
第2遊星歯車装置44は、外歯歯車である第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2と同心円上に配置される内歯歯車である第2リングギヤR2と、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2と噛み合う第2ピニオンギヤP2と、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2とを有している。
第3遊星歯車装置46は、外歯歯車である第3サンギヤS3と、第3サンギヤS3と同心円上に配置される内歯歯車である第3リングギヤR3と、その第3サンギヤS3および第3リングギヤR3と噛み合う、一対の歯車対からなる第3ピニオンギヤP3と、その第3ピニオンギヤP3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3とを有している。
上記第1クラッチC1,第2クラッチC2,第3クラッチC3,第4クラッチC4、および第1ブレーキB1,第2ブレーキB2(以下、特に区別しない場合は単に摩擦係合装置という)は、油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される。
これら摩擦係合装置の係合と解放とが制御されることで、図3の係合作動表に示すように、ドライバのアクセル操作や車速V等に応じて前進8段、後進1段の各ギヤ段が形成される。図3の「1st」-「8th」は前進ギヤ段としての第1変速段−第8変速段を意味し、「Rev」は後進ギヤ段としての後進変速段を意味しており、各変速段に対応する自動変速機22のギヤ比γ(=変速機入力軸回転速度Nin/変速機出力ギヤ回転速度Nout)は、第1遊星歯車装置42、第2遊星歯車装置44、及び第3遊星歯車装置46の各歯車比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)によって適宜定められる。
図4は、シフトレバー84の操作ポジションPshの一例を示す図である。図4に示すように、シフトレバー84は、操作ポジション「P」、「R」、「N」、「D」、又は「M」へ手動操作される。操作ポジション「P」は、自動変速機22のパーキングポジション(Pポジション)を選択し、自動変速機22を動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態(中立状態)(すなわち摩擦係合装置の解放によってエンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路を動力伝達が不能なニュートラル状態)とし且つ機械的に変速機出力ギヤ24の回転を阻止する為のパーキング操作ポジションP(以下、P操作ポジションという)である。又、操作ポジション「R」は、自動変速機22の後進走行ポジション(Rポジション)を選択し、後進走行する為の後進走行操作ポジションR(以下、R操作ポジションという)である。このR操作ポジションは、自動変速機22の後進ギヤ段を用いて後進走行を可能とする走行操作ポジションである。又、操作ポジション「N」は、自動変速機22のニュートラルポジション(Nポジション)を選択し、自動変速機22をニュートラル状態とする為のニュートラル操作ポジションN(以下、N操作ポジションという)である。P操作ポジション及びN操作ポジションは、各々、エンジン12の動力による走行を不能とする非走行操作ポジションである。又、操作ポジション「D」は、自動変速機22の前進走行ポジション(Dポジション)を選択し、前進走行する為の前進走行操作ポジションD(以下、D操作ポジションという)(すなわち自動変速機22の前進ギヤ段を形成する摩擦係合装置の係合によってエンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路を前進走行用の動力伝達経路が形成された動力伝達可能状態とするD操作ポジション)である。このD操作ポジションは、自動変速機22の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で第1速ギヤ段「1st」−第8速ギヤ段「8th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行して前進走行を可能とする走行操作ポジションである。又、操作ポジション「M」は、自動変速機22のギヤ段を切り替える為の手動変速操作ポジションM(以下、M操作ポジションという)である。このM操作ポジションは、ドライバによる操作によって自動変速機22のギヤ段を切り替える、手動変速を可能とする走行操作ポジションである。このM操作ポジションにおいては、シフトレバー84の操作毎にギヤ段をアップ側にシフトさせる為のアップシフト操作ポジション「+」、シフトレバー84の操作毎にギヤ段をダウン側にシフトさせる為のダウンシフト操作ポジション「−」が備えられている。このように、シフトレバー84は、人為的に操作されることで自動変速機22のギヤ段の切替要求を受け付けるギヤ段切替操作部材として機能する。操作ポジションPshがD操作ポジションにあるときには、公知の変速マップに従って自動変速機22を自動変速する自動変速モード(以下、Dモードという)が成立させられ、操作ポジションPshがM操作ポジションにあるときには、ドライバによる変速操作により自動変速機22を変速することが可能な手動変速モード(以下、マニュアルモード又はMモードという)が成立させられる。
図5は、摩擦係合装置の各油圧アクチュエータACT1−ACT6の作動を制御するソレノイドバルブSL1−SL6等に関する油圧制御装置として機能する油圧制御回路50の要部を示す回路図である。図5において、油圧制御回路50は、油圧供給装置52と、ソレノイドバルブSL1−SL6とを備えている。
油圧供給装置52には、機械式オイルポンプ34と、機械式オイルポンプ34が発生する油圧を供給する油路に逆止弁62を介して接続された電動式オイルポンプ36とから油圧が供給されている。油圧供給装置52は、機械式オイルポンプ34と電動式オイルポンプ36とが発生する油圧を元圧としてライン油圧PLを調圧するプライマリレギュレータバルブ54と、ライン油圧PLが調圧される為にプライマリレギュレータバルブ54へ信号圧Psltを供給するソレノイドバルブSLTと、ライン油圧PLを元圧としてモジュレータ油圧PMを一定値に調圧するモジュレータバルブ56と、シフトレバー84の切替操作に連動して機械的に油路が切り替えられるマニュアルバルブ58とを備えている。マニュアルバルブ58は、シフトレバー84がD操作ポジション或いはM操作ポジションにあるときには、入力されたライン油圧PLを前進油圧(Dレンジ圧、ドライブ油圧)PDとして出力し、シフトレバー84がR操作ポジションにあるときには、入力されたライン油圧PLを後進油圧(Rレンジ圧、リバース油圧)PRとして出力する。又、マニュアルバルブ58は、シフトレバー84がN操作ポジション或いはP操作ポジションにあるときには、油圧の出力を遮断し、ドライブ油圧PD及びリバース油圧PRを排出側へ導く。このように、油圧供給装置52は、ライン油圧PL、モジュレータ油圧PM、ドライブ油圧PD、及びリバース油圧PRを出力する。
クラッチC1,C2,C4の各油圧アクチュエータACT1,ACT2,ACT4には、ドライブ油圧PDを元圧としてそれぞれソレノイドバルブSL1,SL2,SL4により調圧された油圧Pc1,Pc2,Pc4が供給される。又、クラッチC3、ブレーキB1,B2の各油圧アクチュエータACT3,ACT5,ACT6には、ライン油圧PLを元圧としてそれぞれソレノイドバルブSL3,SL5,SL6により調圧された油圧Pc3,Pb1,Pb2が供給される。ソレノイドバルブSL1−SL6は、基本的には何れも同じ構成であり、制御装置の機能に相当する電子制御装置40によりそれぞれ独立に励磁、非励磁や電流制御が為され、各油圧Pc1,Pc2,Pc3,Pc4,Pb1,Pb2が独立に調圧される。尚、油圧制御回路50は、シャトル弁60を備えており、ブレーキB2の油圧アクチュエータACT6には、油圧Pb2及びリバース油圧PRのうち何れか供給された油圧がシャトル弁60を介して供給される。このように、油圧制御回路50は、電子制御装置40が出力する油圧制御指令信号Sat(油圧指示値)に基づいて摩擦係合装置へ油圧を供給する。又、マニュアルバルブ58は、摩擦係合装置へ供給する油圧の元圧となる、ドライブ油圧PDやリバース油圧PRを出力する。
図1に戻り、車両10は、シフトレバー84がたとえば非走行ポジションであるN操作ポジションもしくはP操作ポジションに手動操作された場合に、摩擦係合装置の係合圧を制御する係合油圧制御を油圧制御回路50を介して実行する電子制御装置40を備えている。図1は、電子制御装置40の入出力系統を示す図であり、電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロックである。電子制御装置40は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各制御を実行する。
電子制御装置40には、車両10が備える各種センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、エンジン回転速度センサ70により検出されるエンジンの回転速度Ne(rpm)、入力軸回転速度センサ72により検出されるタービン回転速度Ntとも呼ばれる入力軸の回転速度Nin(rpm)、出力回転速度センサ74により検出される車速Vに対応する変速機出力ギヤ回転速度すなわち出力回転速度Nout(rpm)、アクセル開度センサ76により検出されるアクセル開度θacc(%)、ブレーキスイッチ78により検出されるブレーキ信号Bon、シフトポジションセンサ82により検出されるシフトレバー84の操作を示す操作ポジションPshを表す信号等、が電子制御装置40に入力される。また、電子制御装置40からは、自動変速機22の変速に関する油圧制御の為の変速指示圧Sat、エンジン12の図示されていないスロットル、点火コイルの点火時期、燃料噴射量、バルブタイミング、エンジン始動信号等の指示信号Se、電動式オイルポンプ36の駆動信号Seop等が出力される。
図1に示す電子制御装置40は、その制御機能の要部として、停止S&Sエンジン停止判定手段90と、走行ポジション切替判定手段92と、始動要求経過時間カウント手段94と、エンジン再始動要求判定手段96と、係合油圧制御選択手段98と、係合油圧制御手段100と、エンジン制御手段102とを備えている。
電子制御装置40における上記の制御機能は、S&S(ストップ・アンド・スタート)制御或いはエコラン制御などと呼ばれる、車両10の停車中および走行中にエンジン12の自動停止および自動再始動が行われる制御の一部であり、停止S&S制御ともいわれる。停止S&S制御は、車両10が停車中であり、ブレーキ信号Bonの出力すなわちブレーキペダル80の踏込み操作に基づいてエンジン12を停止し、ブレーキ信号Bonのオフすなわちブレーキペダル80の踏込み解放操作に基づいてエンジン12を再始動する制御である。このほかS&S制御には、減速S&SおよびフリーランS&Sがあり、減速S&Sにおいては、車速Vが所定値以上でありアクセル開度θaccが略零すなわちアクセルオフでブレーキオンの場合にエンジン12を停止し、アクセルオンもしくはブレーキオフの場合にエンジンを再始動する。またフリーランS&Sにおいては、所定の車速以上での場合に、アクセルオフでエンジン12を停止し、アクセルオンでエンジン12が再起動する。またS&S制御は、車両10および電子制御装置40等を含むシステムの維持のために必要な場合において、例えばバッテリの蓄電が不十分であったり、車両内の温度維持に充分な電力が必要な場合等にエンジン12を停止しない制御も実施する。
図1において、停止S&Sエンジン停止判定手段90は、エンジン12が停止S&Sにおけるエンジン停止中であるか否かを判定する。車両10が停止中であり、ブレーキオンに基づくエンジン12の停止であることから停止S&Sにおけるエンジン停止と判断すると、走行ポジション切替判定手段92は、非走行ポジションすなわちP操作ポジションおよびN操作ポジションから、走行ポジションすなわち前進走行ポジションであるD操作ポジションおよび手動変速を可能とする走行操作ポジションであるM操作ポジション、後進走行ポジションであるR操作ポジションの何れかへの切替えが行われたか否かを判定する。またエンジン再始動要求判定手段96は、エンジン状態フラグにおけるエンジン始動要求フラグが設定(セット)されているか否かを確認する。エンジン始動要求フラグが設定されている場合は、エンジン再始動要求判定手段96は、エンジン制御手段102を介してエンジンの始動信号Seを出力する。また始動要求経過時間カウント手段94は、エンジン始動要求フラグの設定から走行ポジションへの切替えまでの経過時間tp(sec)のカウントを開始する。走行ポジション切替判定手段92が、非走行ポジションから走行ポジションへの切替を判定すると、走行ポジション切替判定手段92は、電動式オイルポンプ36を始動する。始動要求経過時間カウント手段94は、非走行ポジションから走行ポジションへの切替信号を走行ポジション切替判定手段92から受けると、カウントを終了しカウントされた時間を経過時間tpとする。係合油圧制御選択手段98は、経過時間tpが予め設定されている所定時間ta(sec)を下回るか否かを判定する。係合油圧制御選択手段98は、経過時間tpが予め設定されている所定時間taを下回る場合には、摩擦係合装置への指示油圧すなわちクラッチ係合指示油圧を最大油圧P2に選択し、経過時間tpが予め設定されている所定時間ta以上である場合には、予め設定されている摩擦係合装置への指示油圧すなわちクラッチ係合油圧を最大油圧P2より緩やかに指示油圧が上昇する制御油圧を選択する。係合油圧制御手段100は、係合油圧制御選択手段98の選択に基づいて係合油圧を制御する。なお、停止S&S制御において、エンジン12の停止にともなって解放され、エンジン12の再始動にともなって係合される摩擦係合装置は、各変速段を形成する2つの摩擦係合装置のうちの一方もしくは両方を選択することができる。
図1に戻り、停止S&Sエンジン停止判定手段90が、車両10が停止中であり、ブレーキオンに基づくエンジン12の停止であることから停止S&Sにおけるエンジン停止と判断し、さらに走行ポジション切替判定手段92が、走行ポジションへの切替えが行われていると判定すると、走行ポジション切替判定手段92は、電動式オイルポンプ36を始動する。エンジン再始動要求判定手段96は、エンジン状態フラグにおけるエンジン始動要求フラグが設定(セット)されているか否かを確認する。エンジン再始動要求判定手段96は、エンジン始動要求フラグが設定されるまで待機し、エンジン始動フラグが設定されるとエンジン制御手段102はエンジン12に対し始動信号Seを出力し、係合油圧制御選択手段98は、摩擦係合装置への指示油圧すなわちクラッチ係合指示油圧を最大油圧P2に選択し、係合油圧制御手段100は、係合油圧制御選択手段98の選択に基づいて係合油圧を制御する。
図6は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち停止S&Sにおいてエンジン12が停止された場合に走行ポジションの切替えとエンジン12の始動要求が生じた場合の制御作動を説明するフローチャートであり繰り返し実行される。
図6において、停止S&Sエンジン停止判定手段90の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、停止S&Sに基づくエンジン12の停止中であるか否かが判定される。この判定が否定される場合は、本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は、走行ポジション切替判定手段92の機能に対応するS20において、非走行ポジションから走行ポジションへの切替えが行われたか否かが判定される。この判定が否定された場合は、エンジン再始動要求判定手段96およびエンジン制御手段102の機能に対応するS30において、エンジン12の始動要求すなわちエンジン始動要求フラグが設定(セット)されているか否かが確認される。S30における判定すなわちエンジン12の始動要求が否定される場合は、本ルーチンが終了させられる。このS30の判定が肯定される場合すなわちエンジン始動フラグの設定が確認されるとエンジン制御手段102からエンジン12に対し始動信号Seが出力される。始動要求経過時間カウント手段94の機能に対応するS50において、始動要求経過時間のカウントが開始される。走行ポジション切替判定手段92の機能に対応するS70において、走行ポジションへの切替えが要求されたか否かが判定される。この判定が肯定されるまで、判定が繰り返される。またこの判定が肯定された場合は、走行ポジション切替判定手段92の機能に対応するS80において、電動式オイルポンプが始動されるとともに、始動要求経過時間カウント手段94の機能に対応するS90において、カウントが終了され、カウントされた時間が経過時間tpとされる。始動要求経過時間カウント手段94の機能に対応するS100において、経過時間tpが予め設定されている設定時間taを下回るか否かが判定される。経過時間tpが所定時間時間taを下回る場合には、係合油圧制御選択手段98と係合油圧制御手段100の機能に対応するS110において、摩擦係合装置への指示油圧すなわちクラッチ係合指示油圧に最大油圧P2が選択され、最大油圧P2に制御される。また、経過時間tpが所定時間ta以上である場合は、係合油圧制御選択手段98と係合油圧制御手段100の機能に対応するS120において、予め設定されている摩擦係合装置への指示油圧すなわちクラッチ係合油圧を最大油圧P2より緩やかに指示油圧が上昇する制御油圧が選択され、その選択に基づいて油圧が制御される。
図6において、走行ポジション切替判定手段92の機能に対応するS20において、非走行ポジションから走行ポジションへの切替えが行われたか否かが判定される。この判定が肯定された場合は、走行ポジション切替判定手段92の機能に対応するS40において、電動式オイルポンプ36が始動される。エンジン再始動要求判定手段96とエンジン制御手段102の機能に対応するS60において、エンジン始動要求フラグが設定されているか否かが確認され、エンジン始動フラグの設定が確認されるとエンジン12に対し始動信号Seが出力される。また、係合油圧制御選択手段98と係合油圧制御手段100との機能に対応するS110において、摩擦係合装置への指示油圧すなわちクラッチ係合指示油圧は最大油圧P2が選択され、その選択に基づいて係合油圧が制御される。
図7は、エンジン12の出力の上昇に対応するように摩擦係合装置への指示油圧を緩やかに上昇させる制御油圧が選択された場合を示すタイムチャートである。図7には、エンジン状態フラグ、シフトポジション、エンジン回転速度Ne、タービン回転数Nin、タービントルク、車両前後G、油圧指示圧、油圧実圧、スロットル開度の時間的変化が示されている。t1時時点おいて、エンジン状態フラグがF1すなわち停止からF2すなわちエンジン始動要求に設定され、これと同時にシフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションへと切替えられた一例である。t1時点において、エンジン12の始動要求フラグの設定後すなわちエンジン12の始動信号Seが出力された後、t2時点において、エンジン回転速度Neが上昇を始める、すなわちエンジン12の始動が開始されている。t3時点において、油圧指示圧は、最大油圧P2より低圧であるP1に設定される。エンジン回転速度Neは上昇を続け、タービントルク回転速度すなわち入力軸回転速度Ninは略零のまま維持されているが、タービントルクは増加している。t3時点からt4時点において、油圧実圧は、略零からP11に上昇しエンジン回転速度Neおよび入力軸回転速度Ninは上昇を継続している。t4時点において、エンジン状態フラグはF3すなわちエンジンが定常状態にあることを示すフラグが設定されている。t4時点からt5時点まで油圧指示圧はP1に維持されているが、油圧実圧は緩やかに上昇している。t5時点において、車両前後Gが上昇を開始しており、車両10がタービントルクによってわずかに移動を始めたことを示している。t6時転移おいて、油圧指示圧は、P2すなわち最大油圧に増加され、油圧実圧もP12から更に上昇している。なお、アクセル開度θaccは略零が維持されており、このためスロットル開度は略零を示している。
図8は、エンジン12の始動要求が生じる前に、シフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションへ切替えられ、指示油圧すなわちクラッチ係合指示油圧が最大油圧P2に選択された場合を示すタイムチャートである。図8には、エンジン状態フラグ、シフトポジション、エンジン回転速度Ne、タービン回転数Nin、タービントルク、車両前後G、油圧指示圧、油圧実圧、スロットル開度、およびエンジン始動要求からの経過時間の時間的変化が示されている。t1時点においてシフトレバー84は、Pポジションから走行ポジションであるRポジションと非走行ポジションであるNポジションを経由してDポジションに移動されている。このシフトレバー84の移動によって油圧指示圧は最大油圧P2への上昇と下降とを示し、t2時点において、再度最大油圧P2へと上昇し、電動式オイルポンプ36の駆動も開始される。t3時点において、例えばブレーキオフによってエンジン状態フラグが、F1すなわち停止からF2すなわちエンジン始動要求に設定されると、エンジン12の始動信号Seが出力される。なおギヤ段を形成する摩擦係合装置は、指示油圧が最大油圧P2に設定されていることと電動式オイルポンプ36の駆動によって、エンジン12の始動前に係合を完了している。t4時点において、エンジン回転速度Neが上昇を開始すなわちエンジン12の始動が開始され、油圧実圧も機械式オイルポンプ34の駆動にともなってP12から上昇を開始する。t5時点において、タービントルクが上昇し車両10の移動が開始される。このため車両前後Gも上昇を示している。油圧実圧は、エンジン12のエンジン回転速度Neの上昇と共に上昇し、P13に達している。t6時点において、エンジン状態フラグはF3すなわちエンジンが定常状態にあるとのフラグが設定されており、油圧実圧は、P14に達しt6以降もほぼ一定の油圧を示している。なおエンジン始動要求からの時間として示されているのは、エンジン始動要求Seからの経過時間であり図8の実施例においては、ブレーキ信号Bonのオフからの経過時間であり、非走行ポジションから走行ポジションへのシフトレバー84の移動が、エンジン始動要求より先に生じた場合の、エンジン始動要求からの経過時間である。したがって、図8と異なり、エンジン始動要求F2後にシフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションへ移動された場合においては、t3時点から経過時間tpのカウントが開始され、シフトレバー84が非走行ポジションから走行ポジションへ移行された時点までの時間すなわち経過時間tpが所定時間taを下回るか否かが判定され、経過時間tpが所定時間taを下回った場合には、車両10の始動後の変速段を形成する摩擦係合装置への油圧指示圧は最大油圧P2に設定される。また経過時間tpが所定時間ta以上の場合には、予め設定されている摩擦係合装置への指示油圧すなわちクラッチ係合油圧を最大油圧P2より緩やかに指示油圧が上昇する制御油圧が選択され、油圧が制御される。なお、アクセル開度θaccは略零が維持されており、このためスロットル開度は略零を示している。
上述のように、本実施例の電子制御装置40によれば、エンジン12と、エンジン12の出力を制御するエンジン制御手段102と、エンジン12の出力トルクを伝達する摩擦係合装置を有する車両10の電子制御装置40であって、車両10の停車中に自動停止中のエンジン12の自動再始動要求を判定するエンジン再始動要求判定手段96と、自動再始動要求からシフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションに切替えられるまでの経過時間tpをカウントし、経過時間tpが予め定められた所定時間taを下回る場合、もしくは、エンジン始動要求フラグF2が設定されるより前にシフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションへ切替えられた場合には、電動式オイルポンプ36を駆動し、自動変速機22へ供給する油圧の指示油圧を最大油圧P2に設定することによって、エンジン12が始動する前にギヤ段を形成する摩擦係合装置を締結させる。摩擦係合装置の係合をエンジン12の始動前に完了することによって摩擦係合装置の係合時のショックの発生を抑制することが可能となる。またエンジン12の始動前に摩擦係合装置の係合が完了することにより、係合を制御することによる係合の遅れ、すなわち摩擦係合装置の係合の応答性が損なわれることも生じない。また、エンジン始動要求が生じた時点から、シフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションに切替えられるまでの経過時間tpをカウントし、経過時間tpが予め定められた所定時間ta以上である場合には、エンジン12の出力に対応して自動変速機22への油圧指示圧を制御する、すなわち摩擦係合装置の係合を制御することによって摩擦係合装置の係合時のショックを軽減することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
実施例においては、エンジン始動要求フラグF2の設定からシフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションに切替えられるまでの経過時間tpが、経過時間tpが予め定められた所定時間ta以上である場合には、自動変速機22に供給される油圧指示圧を所定の油圧P1に保持し、その後最大油圧P2に増加するものとしたが、特にこれに限らず、例えば、エンジン回転速度Neの特性に合わせて緩やかに上昇させるものであったり、また、エンジン回転速度Neを測定し、エンジン回転速度Neにあわせて変動させるものであっても良い。
本実施例において、自動変速に基づく走行に対応する、Dポジションと共に自動変速機22のギヤ段を手動で切替えるための手動変速操作ポジションMを持つものとしたが特に操作ポジションMに限らず、例えばシーケンシャル操作ポジションSといわれる、変速可能な高車速側(ハイ側)のギヤ段が異なる複数種類の変速レンジを切り替えることにより手動変速を可能とする走行操作ポジションとしても本実施例の制御を用いることができる。
また、本実施例において、非走行ポジションから走行ポジションへの切替えを含むシフトポジションの切替えをシフトレバー84で行うものとしたが、特にシフトレバー84に限らず、これに替えてスイッチ等のシフト切替装置などが用いられても良い。
さらに、本実施例では、車両10にはトルクコンバータ20が用いられていたが、トルクコンバータ20に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などが用いられても良い。
また、本実施例において設けられている摩擦係合装置である第2ブレーキB2と並列にOWC(ワン・ウェイ・クラッチ)を設けても良い。この場合、前進走行においては、第2ブレーキB2の係合は不要となる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。