以下、本発明の実施態様の例を記載するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない限りにおいて、任意の改変を加えて実施することが可能である。
[不溶性食物繊維含有組成物]
本発明の一側面は、不溶性食物繊維を含む微粒子複合体を含有する組成物(以下適宜「本発明の組成物」という)に関する。
[不溶性食物繊維]
本発明の組成物は、不溶性食物繊維を含有する。本発明において「食物繊維」とは、ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体を意味する。また、本発明において「不溶性食物繊維」とは、食物繊維のうち水不溶性のものを指す。不溶性食物繊維の例としては、制限されるものではないが、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、キチン、キトサン等が挙げられる。但し、不溶性食物繊維の中でもリグニン、特に酸可溶性リグニンは、摂食性が顕著に悪いことから、本願発明の適用により摂食性改善効果がより顕著に得られることになる。こうした観点からは、不溶性食物繊維としてリグニン、特に酸可溶性リグニンが好ましい。
本発明の組成物は、不溶性食物繊維を一定以上の含有率で含有する。具体的に、本発明の組成物における不溶性食物繊維の含有率の下限は、通常は0.1質量%以上である。中でも0.2質量%以上、更には0.3質量%以上、更には0.4質量%以上、更には0.5質量%以上、とりわけ0.7質量%以上、又は1質量%以上、又は1.5質量%以上、又は2質量%以上、特に3質量%以上であることが好ましい。不溶性食物繊維の含有率を前記下限値以上とすることにより、組成物の摂食性が顕著に改善することから好ましい。一方、本発明の組成物における不溶性食物繊維の含有率の上限は、制限されるものではないが、工業上の生産性という観点からは、通常20質量%以下、中でも15質量%、更には10質量%以下であることが好ましい。
本発明の組成物における不溶性食物繊維の組成は、制限されるものではない。但し、前述の理由から、不溶性食物繊維全体に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の比率が一定値以上である場合に、本願発明の適用により摂食性改善効果がより顕著に得られることになる。具体的には、不溶性食物繊維全体に占めるリグニン(中でも酸可溶性リグニン)の乾燥質量比率が、通常5%以上、中でも10%以上、更には30%以上であることが好ましい。
不溶性食物繊維の由来は、制限されるものではなく、不溶性食物繊維を含有する各種天然材料に由来するものでもよく、合成されたものでもよい。前者の場合、各種材料に含有される不溶性食物繊維を単離・精製して用いてもよいが、斯かる不溶性食物繊維を含有する材料をそのまま用いてもよい。後者の場合、不溶性食物繊維を含有する材料としては、食材が好ましい。不溶性食物繊維含有食材については後述する。
なお、食物繊維及び不溶性食物繊維の定量法としては、プロスキー変法が挙げられる。
[不溶性食物繊維含有食材]
前述のように、本発明の組成物に含まれる不溶性食物繊維は、食材に由来するものであることが好ましい。ひいては、本発明の組成物は、不溶性食物繊維含有食材を含むことが好ましい。不溶性食物繊維含有食材の種類は制限されず、飲食に適する食材であれば、任意の食材を使用することが可能である。但し、不溶性食物繊維を一定比率以上含有することが好ましい。具体的には、食材に対する不溶性食物繊維の乾燥質量比率が、通常1質量%以上、中でも3質量%以上、更には5質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。
斯かる不溶性食物繊維含有食材の例としては、これらに限定されるものではないが、植物性食材、微生物性食材、動物性食材等が挙げられる。中でも植物性食材が好ましい。植物性食材としては、これらに限定されるものではないが、野菜類(芋類、きのこ類を含む)、果実類、スパイス類、藻類、穀物類、種実類、豆類等が挙げられる。これらの食材は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。また、これらの食材はそのまま用いてもよく、各種の処理(例えば乾燥、加熱、灰汁抜き、皮むき、種実抜き、追熟、塩蔵、果皮加工等)を加えてから使用してもよい。
野菜類としては、その可食部及び/又は非可食部に不溶性食物繊維が含有されるものであれば、その種類は任意である。例としては、これらに限定されるものではないが、ダイコン、ニンジン、ルタバガ、パースニップ、カブ、ブラック・サルシファイ、サツマイモ、キャッサバ、ヤーコン、タロイモ、サトイモ、コンニャクイモ、タシロイモ(ポリネシアン・アロールート)、レンコン、ジャガイモ、ムラサキイモ、ビート(好適にはビーツ(ビートルート):ビートの根を食用とするために改良された品種)、キクイモ、クワイ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ユリネ、カタクリ、ケール、ヤムイモ、ヤマノイモ、ナガイモ、タマネギ、アスパラガス、ウド、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイ、アブラナ、コマツナ、チンゲンサイ、ニラ、ネギ、ノザワナ、フキ、フダンソウ(不断草、スイスチャード)、ミズナ、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、キュウリ、ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリー、食用菊、ニガウリ、オクラ、アーティチョーク、ズッキーニ、てんさい、タイガーナッツ、ショウガ、シソ、ワサビ、パプリカ、ハーブ類(クレソン、コリアンダー、クウシンサイ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉、ステビア)、ワラビ、ゼンマイ、クズ、チャノキ(茶)、タケノコ、シイタケ、マツタケ、キクラゲ、マイタケ、サルノコシカケ、ヒラタケ、エリンギ、エノキタケ、シメジ、ナラタケ、マッシュルーム、ナメコ、アミタケ、ハツタケ、チチタケ等が挙げられる。中でも、ニンジン、カボチャ、トマト、パプリカ、キャベツ、ビート(好適にはビーツ(ビートルート))、タマネギ、ブロッコリー、アスパラガス、ムラサキイモ、サツマイモ等が好ましく、ニンジン、カボチャ、トマト、パプリカ、ビート(好適にはビーツ(ビートルート))、ブロッコリー等が特に好ましい。
果実類としては、その可食部及び/又は非可食部に不溶性食物繊維が含有されるものであれば、その種類は任意である。例としては、これらに限定されるものではないが、カリン、チュウゴクナシ(白梨、シナナシ)、ナシ、マルメロ、セイヨウカリン、ジューンベリー、シポーバ、リンゴ、アメリカンチェリー(ブラックチェリー、ダークチェリー)、アンズ(杏、杏子、アプリコット)、ウメ(梅)、サクランボ(桜桃、スイートチェリー)、スミミザクラ、スピノサスモモ、スモモ(李、酸桃)、モモ、イチョウ(銀杏)、クリ、アケビ(木通)、イチジク(無花果)、カキ、カシス(クロスグリ)、キイチゴ(木苺)、キウイフルーツ(キウイ)、グミ(頽子、胡頽子、茱萸)、クワの実(マルベリー、どどめ)、クランベリー(オオミツルコケモモ)、コケモモ(苔桃、岩桃、はまなし、おかまりんご)、ザクロ(柘榴、石榴)、サルナシ(猿梨、シラクチズル、コクワ)、シーバックソーン(サジー、ヒッポファエ、シーベリー)、スグリ(酢塊、グーズベリー)、ナツメ(棗)、ニワウメ(庭梅、こうめ、いくり)、ハスカップ(クロミノウグイスカグラ)、ビルベリー、フサスグリ(房酸塊、レッドカラント)、ブドウ(葡萄)、ブラックベリー、ブルーベリー、ポーポー(ポポー、ポウポウ、ポポウ)、マツブサ、ラズベリー、ユスラウメ、ミカン、キンカン、カラタチ、オリーブ、ビワ(枇杷)、ヤマモモ(山桃、楊梅)、羅漢果、トロピカルフルーツ類(マンゴー、マンゴスチン、パパイヤ、チェリモヤ、アテモヤ、バナナ、ドリアン、スターフルーツ、グァバ、パイナップル、アセロラ、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、ライチ、エッグフルーツ等の熱帯果実)、イチゴ、リンゴ、スイカ、メロン、アボカド、ミラクルフルーツ、オレンジ、レモン、プルーン、ユズ、スダチ、グレープフルーツ、ダイダイ、シークアーシャー等が挙げられる。中でも、アボカド、リンゴ等が好ましい。
藻類としては、その可食部及び/又は非可食部に不溶性食物繊維が含有されるものであれば、その種類は任意である。例としては、これらに限定されるものではないが、コンブ類、ワカメ類、海苔類、アオノリ類、テングサ類等の大型藻類や、緑藻類、紅藻類、藍藻類、渦鞭毛藻類、ユーグレナ類等の微細藻類が挙げられる。具体例としては、あおさ、あおのり(青海苔)、アナアオサ、うみぶどう(クビレヅタ)、カタシオクサ、クビレヅタ、クロミル、タマミル、とりのあし(ユイキリ)、ヒトエグサ、ヒラアオノリ、フサイワヅタ、ボウアオノリ、アカモク、アミジグサ、アラメ、アントクメ、イシゲ、イチメガサ、イロロ、イワヒゲ、ウミトラノオ、ウミウチワ、オオバモク、オキナワモヅク、カイガラアマノリ、カゴメノリ、かじめ(アラメ)、カヤモノリ、ぎばさ(アカモク、銀葉草、神馬草、じばさ)、サナダグサ、シワノカワ、シワヤハズ、セイヨウハバノリ、ツルアラメ、なのり(カヤモノリ)、ネバリモ、ノコギリモク、ハバノリ、ヒジキ、ヒロメ、フクロノリ、フトモヅク、ホンダワラ、コンブ(特にマコンブ、リシリコンブ)、マツモ、むぎわらのり(カヤモノリ)、ムチモ、モヅク(モズク)、ユナ、ワカメ、アサクサノリ、イボツノマタ、ウシケノリ、ウスカワカニノテ、エゾツノマタ(クロハギンナンソウ)、オオブサ、オゴノリ、オキツノリ、オバクサ、カタノリ、カバノリ、カモガシラノリ、キジノオ、クロハギンナンソウ(エゾツノマタ)、サクラノリ、シラモ、タンバノリ、ツノマタ、ツルシラモ、ツルツル、トサカノリ、トサカマツ、のげのり(フクロフノリ)、海苔(のり、スサビノリ)、ハナフノリ、ハリガネ、ヒラガラガラ、ヒラクサ、ヒラムカデ、ピリヒバ、フクロフノリ、フシツナギ、マクサ、マルバアマノリ、ミツデソゾ、ミドリムシ(ユーグレナ)、クロレラ、ミリン、ムカデノリ、ユイキリ、ユカリ、天草(テングサ)等が挙げられる。中でも、コンブ類、海苔類、アオノリ類等が特に好ましい。なお、これらの藻類のうち、クロレラ類等の一部の微細藻類は、非常に強い細胞壁を有するため、後述の不溶性食物繊維微粒子複合体を形成することが困難となる場合がある。よって、微細藻類については細胞壁を破壊する前処理を行ってから利用するか、微細藻類以外の藻類を用いることが好ましい。
種実類としては、その可食部及び/又は非可食部に不溶性食物繊維が含有されるものであれば、その種類は任意である。例としては、これらに限定されるものではないが、アーモンド、カシューナッツ、ペカン(ピーカン)、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、松の実、ヒマワリの種、カボチャの種、スイカの種、シイ、クルミ、クリ、銀杏、ごま、ブラジルナッツ等が挙げられる。中でも、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ等が好ましい。
豆類としては、その可食部及び/又は非可食部に不溶性食物繊維が含有されるものであれば、その種類は任意である。例としては、これらに限定されるものではないが、インゲンマメ(隠元豆)、キドニー・ビーン、赤インゲン、白インゲン、ブラック・ビーン、うずら豆、とら豆、ライマメ、ベニバナインゲン、エンドウ(特には未熟の種子であるグリーンピース)、キマメ、緑豆、ササゲ、アズキ、ソラマメ、大豆(特に枝豆)、ヒヨコマメ、レンズマメ、ヒラ豆、レンティル、ラッカセイ、ルピナス豆、グラスピー、イナゴマメ(キャロブ)、ネジレフサマメノキ、ヒロハフサマメノキ、コーヒー豆、カカオ豆、メキシコトビマメ等が挙げられる。中でも、エンドウ(特には未熟の種子であるグリーンピース)、大豆(特に枝豆)等が好ましい。なお、カカオ豆の加工品であるカカオマスも使用可能であるが、外皮と胚芽が製造工程中で除去されている上に、製造工程で発酵されているため、本来の風味が感じ難くなっている。このため、カカオ豆を用いる場合には、カカオマス以外の形態のものを用いることが好ましい。
穀物類としては、その可食部及び/又は非可食部に不溶性食物繊維が含有されるものであれば、その種類は任意である。例としては、これらに限定されるものではないが、コーン(特にスイートコーンが好ましい)、コメ、コムギ、オオムギ、モロコシ、エンバク、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、キノア、ひえ、アワ、きび、ジャイアントコーン、サトウキビ、アマランサス等が挙げられる。中でも、コーン(特にスイートコーンが好ましい)、ジャイアントコーン等が好ましい。
スパイス類としては、その可食部及び/又は非可食部に不溶性食物繊維が含有されるものであれば、その種類は任意である。例としては、これらに限定されるものではないが、白胡椒、赤胡椒、唐辛子、ホースラディシュ(西洋ワサビ)、マスタード、ケシノミ、ナツメグ、シナモン、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペパー、オリーブの実)等が挙げられる。中でも、白胡椒、赤胡椒、唐辛子等が特に好ましい。
不溶性食物繊維含有食材としては、以上に挙げた各種の例を含む任意の食材を適宜選択して使用することが可能であるが、特に以下の特性を考慮して選択することが好ましい。
不溶性食物繊維含有食材としては、組成物中における後述の微粒子複合体の形成性等の観点から、利用可能炭水化物が所定値以上の食材を用いることが好ましい。具体的に、不溶性食物繊維含有食材中の利用可能炭水化物は、通常2%以上、中でも3%以上、更には5%以上、とりわけ7%以上、特に10%以上であることが好ましい。一方、単糖当量が少ないごま(利用可能炭水化物約1質量%)等の食材も使用することはできるが、組成物中における後述の微粒子複合体の形成性等の観点からは、利用可能炭水化物が前記下限値以上の食材が好ましい。また、後述のように不溶性食物繊維含有食材として乾燥食材を用いる場合は、乾燥後の利用可能炭水化物が前記下限値以上であるのが好ましい。なお、食材中の利用可能炭水化物量は、日本食品標準成分表に記載の方法に準じて測定した炭水化物のうち、直接分析した成分(でん粉、ぶどう糖、果糖、しょ糖、麦芽糖、乳糖、ガラクトース、トレハロース)の合計値を意味し、その単位としては「%(単糖当量g/100g)」を用いることができる。
不溶性食物繊維含有食材の水分活性は、特に制限されるものではないが、組成物中における後述の微粒子複合体の形成性等の観点からは、水分活性が所定値以下であることが好ましい。具体的に、不溶性食物繊維含有食材の水分活性は、通常0.95以下、中でも0.9以下、更には0.8以下、とりわけ0.65以下であることが好ましい。なお、一般的な果実や野菜の水分活性は前記上限値よりも大きくなる場合が多いため、こうした食材を不溶性食物繊維含有食材として用いる際は、後述のように予め乾燥処理を行ってから用いることが好ましい。一方、不溶性食物繊維含有食材の水分活性の下限は、特に制限されるものではないが、保管管理の容易性の観点からは、通常0.10以上、中でも0.20以上、更には0.30以上、とりわけ0.40以上とすることが好ましい。なお、食材の水分活性は、一般的な水分活性測定装置を用いて、定法に従って測定することができる。
不溶性食物繊維含有食材の形態は特に限定されず、生の食材を使用してもよく、前述のように各種の処理(例えば乾燥、加熱、灰汁抜き、皮むき、種実抜き、追熟、塩蔵、果皮加工等)を加えたものを使用してもよい。但し、組成物中における後述の微粒子複合体の形成性等の観点からは、予め乾燥処理を施した食材、即ち乾燥食材を使用することが好ましい。食材の乾燥方法としては、一般的に食材の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。例としては、天日乾燥、陰干し、フリーズドライ、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥等が挙げられる。中でも、食材が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(こげ臭等)を制御できるという点から、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)又はフリーズドライによる方法が好ましい。
本発明の組成物に不溶性食物繊維含有食材を使用する場合、その使用比率は制限されるものではなく、食材の種類や不溶性食物繊維の含有率に応じて任意の比率を使用することが可能である。但し、不溶性食物繊維含有食材を一定比率以上含有する組成物であれば、本発明の適用による効果もより顕著になるため好ましい。具体的には、組成物中の不溶性成分(組成物に対して不溶な成分)の乾燥質量換算の合計質量に対する、不溶性食物繊維含有食材の乾燥質量換算の合計質量の比率が、通常30質量%以上、中でも50質量%以上、更には70質量%以上、とりわけ90質量%以上、特に100質量%であることが好ましい。なお、組成物が食品である場合、そこに含まれる不溶性成分は何れも食材に由来することになるが、それらの食材を不溶性食物繊維含有食材とそれ以外の(不溶性食物繊維を含有しない)食材とに分別することで、前記の比率を算出することが可能となる。例えば、ある組成物が、不溶性食物繊維含有食材であるニンジン乾燥物由来の不溶性食物繊維含有微粒子を20質量部、それ以外の(不溶性食物繊維を含有しない)食材である乾燥ツナを30質量部、水を50質量部含有する組成物の場合、不溶性成分(乾燥ニンジン+乾燥ツナ:50質量部)に対して不溶性食物繊維含有食材(ニンジン:20質量部)が占める比率は、40質量%となる。
[その他の食材]
本発明の組成物は、前記の不溶性食物繊維含有食材の他にも、任意の不溶性食物繊維を含有しない1又は2以上の食材を含んでいてもよい。斯かる食材の例としては、植物性食材、微生物性食品、動物性食材等が挙げられる。
[食材の非可食部及び可食部]
本発明の組成物に使用される食材、即ち不溶性食物繊維含有食材及び/又はその他の(不溶性食物繊維を含有しない)食材が、可食部と共に非可食部を含有する場合、その可食部のみを用いてもよく、非可食部のみを用いてもよく、可食部と非可食部とを共に用いてもよい。本発明において、食材の「非可食部」とは、食材の通常飲食に適さない部分や、通常の食習慣では廃棄される部分を表し、「可食部」とは、食材全体から廃棄部位(非可食部)を除いた部分を表す。特に不溶性食物繊維含有食材の場合、不溶性食物繊維を含有する部分は、摂食性や他の食品との相性が悪く、従来は喫食に用いられず廃棄される場合が多かったが、本発明ではこうした不溶性食物繊維を含有する非可食部を好適に使用することができる。本発明において、組成物中に非可食部が湿重量で0.1質量%以上含有されることが好ましく、0.5質量%以上含有されることがさらに好ましく、0.8質量%以上含有されることがさらに好ましく、1.0質量%以上含有されることがさらに好ましく、2.0質量%以上含有されることがさらに好ましく、3.0質量%以上含有されることが最も好ましい。また、前記質量比率の上限は、通常98質量%以下、中でも91質量%以下、更には85質量%以下、とりわけ80質量%以下、特に55質量%以下であることが好ましい。
本発明の組成物に使用される不溶性食物繊維含有食材の可食部及び/又は非可食部は、それぞれ単一種類の不溶性食物繊維含有食材に由来するものであってもよく、複数種類の不溶性食物繊維含有食材に由来するものの任意の組み合わせであってもよい。さらに、可食部と非可食部を共に含有する場合には、「非可食部/(可食部+非可食部)」の割合が、0.2%以上であることで可食部の味質が向上するため好ましく、0.5%以上であることがさらに好ましく、0.8%以上であることがさらに好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましく、2.0%以上であることがさらに好ましく、3.0%以上であることが最も好ましい。また、前記割合の上限は、通常100%以下、中でも90%以下、更には80%以下、とりわけ70%以下、特に60%以下であることが好ましい。
また、本発明の組成物が不溶性食物繊維含有食材の可食部と非可食部とを共に含有する場合、これらの可食部及び非可食部はそれぞれ別の種類の不溶性食物繊維含有食材に由来するものであってもよいが、同一種類の不溶性食物繊維含有食材に由来する可食部及び非可食部を含むことが好ましい。即ち、同一種類の不溶性食物繊維含有食材に由来する可食部の一部又は全部と、非可食部の一部又は全部とを使用することで、斯かる不溶性食物繊維含有食材の栄養を無駄なく摂取することが可能となる。特に本発明の組成物は、後述のように不溶性食物繊維に起因する収斂味が改善されるので、こうした不溶性食物繊維を多く含む食材の非可食部を無駄なく容易に摂取できる。
不溶性食物繊維含有食材の非可食部の例としては、前述の各種の不溶性食物繊維含有食材の皮、種実、芯、搾り滓等が挙げられる。中でも、これらに限定されるものではないが、とうもろこし(例としてスイートコーン等)、パプリカ、カボチャ、ビーツ、ブロッコリー、エダマメ(枝豆)、トマト、米、タマネギ、キャベツ、りんご、ぶどう、さとうきび、柑橘類(例としてウンシュウミカン、ユズ等)等の皮、種実、芯、搾り滓等は、栄養が豊富に残存しているため、本発明に好適に使用することができる。不溶性食物繊維含有食材の非可食部の具体例としては、これらに限定されるものではないが、とうもろこし(例としてスイートコーン等)の包葉、めしべ及び穂軸(芯)、パプリカの種及びへた、カボチャの種又はわた、ビーツの皮、ブロッコリーの茎葉、エダマメ(枝豆)の鞘(さや)、トマトのへた、米(籾)の籾殻、タマネギの皮(保護葉)、底盤部及び頭部、キャベツの芯、りんごの芯、ぶどうの果皮及び種子、さとうきびの搾り滓、柑橘類(例としてウンシュウミカン、ユズ等)の皮、種及びわた等が挙げられる。また、人体に有害な成分を人体に影響する程度含まないものが好ましい。
本発明の組成物が、不溶性食物繊維含有食材に加えてその他の(不溶性食物繊維を含有しない)食材を含有する場合も、不溶性食物繊維含有食材の場合と同様、その可食部及び/又は非可食部を任意の組み合わせで使用することが可能である。
なお、本発明の組成物に使用される食材、即ち不溶性食物繊維含有食材及び/又はその他の(不溶性食物繊維を含有しない)食材における、非可食部の部位や比率は、その食品や食品の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。例としては、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の「廃棄部位」及び「廃棄率」を参照し、これらをそれぞれ非可食部の部位及び比率として扱うことができる。以下の表1に、不溶性食物繊維含有食材の例と、それらの食材について日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載されている「廃棄部位」及び「廃棄率」(すなわち非可食部の部位及び比率)を挙げる。なお、食材における非可食部の部位や比率から、可食部の部位や比率についても理解することができる。
[油脂]
本発明の組成物は、1種又は2種以上の油脂を含有していてもよい。油脂の種類としては、各種の脂肪酸(例えばリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸等)を1種又は任意の組合せで2種以上用いてもよいが、食用油脂、又は、食用油脂を含む食材や食用油脂を原料とする食材等を用いることが好ましい。
食用油脂の例としては、ごま油、菜種油、高オレイン酸菜種油、大豆油、パーム油、パームステアリン、パームオレイン、パーム核油、パーム分別油(PMF)、綿実油、コーン油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、香味油、ココナッツオイル、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、サラダ油、キャノーラ油、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油、乳脂、ギー、カカオバター等が挙げられる。中でも、ごま油、オリーブ油、菜種油、大豆油、乳脂、ひまわり油、米油、パームオレイン等の液体状の食用油脂は、組成物の滑らかさを高める効果を有することから好ましい。一方、製造時の取り扱いの観点からは、カカオバター以外の油脂を用いることが好ましい。なお、これらの食用油脂は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。食用油脂としては、飽和脂肪酸割合よりも不飽和脂肪酸割合(一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の合計割合)が多い食用油脂であることで、微細化処理が効率的に行なえるため好ましく、飽和脂肪酸割合の2倍量よりも不飽和脂肪酸割合が多い方がさらに好ましい。
一方、食用油脂を原料とする食材の例としては、バター、マーガリン、ショートニング、生クリーム、豆乳クリーム(例えば不二製油株式会社の「濃久里夢(こくりーむ)」(登録商標)等)等が挙げられる。常温で液体状の食材が利便性の面で好ましい。また、前述の不溶性食物繊維含有食材やその他の食材の中でも、食用油脂を含む食材をこうした目的で使用することもできる。これらの食材は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
但し、食材のなじみを向上させる観点からは、不溶性食物繊維含有食材やその他の食材に油脂が含まれるか否かによらず、食材とは別に抽出精製処理がなされた食用油脂を添加する方が好ましい。具体的には、本発明の組成物が含有する全油脂分含量のうち、通常10質量%以上、中でも30質量%以上が、抽出精製処理がなされた食用油脂に由来することが好ましい。
なお、本発明の組成物は、組成物内で後述の微粒子複合体を好適に形成させる観点から、その全油脂分含量が一定値以下であることが好ましい。なお、ここで組成物の全油脂分含量とは、組成物に含まれる全食材を含む全成分に由来する油脂分の含量を意味する。具体的に、本発明の組成物の全油脂分含量の上限は、通常20質量%未満、中でも15.5質量%未満、更には10.5質量%未満であることが好ましい。一方、本発明の組成物の全油脂分含量の下限は、制限されるものではないが、組成物内で後述の微粒子複合体を速やかに形成させる観点からは、通常0.1質量%以上、更には0.2質量%以上、中でも0.3質量%以上であることが好ましい。
[調味料・食品添加物等]
本発明の組成物は、任意の1又は2以上の調味料・食品添加物等を含んでいてもよい。調味料・食品添加物等の例としては、醤油、味噌、アルコール類、糖類(例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(例えばキシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(例えばスクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(例えばカルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等)、香料、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、シクロデキストリン、酸化防止剤(例えばビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)等、乳化剤(例としてはグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ショ糖脂肪酸エステル等)、着色料、増粘安定剤等が挙げられる。
但し、昨今の自然志向の高まりからは、本発明の組成物は、いわゆる乳化剤及び/又は着色料及び/又は増粘安定剤(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)の「表示のための食品添加物物質名表」に「着色料」、「増粘安定剤」、「乳化剤」として記載されているもの)を含有しないことが好ましい。中でも、素材の味が感じられやすい品質とする観点からは、本発明の組成物は、乳化剤を含有しないことが好ましい。更には、本発明の組成物は、食品添加物(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)中の「表示のための食品添加物物質名表」に記載されている物質を食品添加物用途に用いたもの)を含有しないことがとりわけ望ましい。また、食品そのものの甘みが感じられやすくなるという観点からは、糖類(ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)を添加しない方が好ましい。さらに、素材の味が感じられやすくなるため、本発明の組成物は、酢酸を含有しない態様であってもよい。
[水分]
本発明の組成物には、水分が含まれていることが好ましい。組成物中の水分は、前述した組成物の各種成分に由来するものであってもよいが、更に水として添加してもよい。本発明において、組成物の水分含量とは、組成物の各種成分に由来する水分量と別途添加した水分量の合計量を意味する。
具体的に、組成物全体に対する水分含量の質量比は、通常35質量%以上、中でも45質量%以上、更には50質量%以上、とりわけ55質量%以上であることが好ましい。組成物全体に対する水分含量の質量比が前記下限値以上であることにより、微粒子複合体形状の制御が容易となるので好ましい。一方、水分含量の質量比の上限は制限されないが、工業上の生産性という観点から、通常98質量%以下、更には96質量%以下、中でも90質量%以下とすることが便利である。
また、本発明の組成物は、組成物内で後述の微粒子複合体を好適に形成させる観点から、その水分含量と全油脂分含量との合計に対する水分含量の比率、即ち「水分含量/(水分含量+全油脂分含量)」の値が、通常75%以上、更には80%以上、中でも85%以上であることが好ましい。一方、前記の「水分含量/(水分含量+全油脂分含量)」の値の上限は、制限されるものではないが、組成物内で後述の微粒子複合体を速やかに形成させる観点からは、通常100質量%以下であることが好ましい。
[微粒子及び微粒子複合体]
本発明の組成物においては、不溶性食物繊維が微粒子の形態で存在する。なお、前記の微粒子は、1種又は2種以上の不溶性食物繊維のみから形成されるものであってもよいが、1種又は2種以上の不溶性食物繊維と、1種又は2種以上の他の成分とから形成されるものであってもよい。
更に、本発明の組成物においては、不溶性食物繊維を含む前述の微粒子が複数個凝集し、擾乱によって解砕しうる複合体を形成する。即ち、本発明の組成物は、不溶性食物繊維を含む微粒子の複合体を含有する。本発明の組成物は、不溶性食物繊維を斯かる複合体の状態で含有することにより、組成物の水分分離が抑制され、且つ食感が改善され、摂取しやすく、他の食品との相性が良好となる。なお、本発明では特に断り無き限り、微粒子複合体を解砕させる外部からの擾乱の典型的な例として、超音波処理を想定するものとする。本発明において「超音波処理」とは、特に指定が無い限り、測定サンプルに対して周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間印加する処理を表す。
本発明の組成物は、不溶性食物繊維を含む微粒子の複合体を含有すると共に、擾乱を加える前後における前記微粒子複合体の形態や大きさ等を後述する範囲に調節することにより、組成物の安定性向上(乾燥防止)や乳化容量向上等、各種の有利な特性を有した組成物を提供することができる。その原因は不明であるが、組成物中であたかも食物繊維が複数縒り集まったような特徴的な形状の複合体を形成し、この複合体が様々な効果が発揮すると考えられる。昨今、食品分野を含む各種分野で微細化技術の研究が盛んに行なわれているが、微細化後の微粒子同士が凝集して形成する二次構造(複合体)の形状による特性については、これまで全く知られていなかった。ましてや、斯かる微粒子複合体の形態や大きさ等を調節することにより、従来知られていない様々な効果が奏されることは、これまで全く知られていなかった。
[組成物中の粒子径]
本発明の組成物は、擾乱前後の組成物に含まれる微粒子複合体及び微粒子の粒子径に関する各種パラメータ、即ち最大粒子径、モード粒子径、及び粒子径のd50が、以下の特定の要件を満たすことが好ましい。即ち、本発明の組成物は、擾乱を加えない状態、即ち超音波処理を行う前の状態では、多数の微粒子複合体を含有するのに対し、擾乱を加えた状態、即ち超音波処理を行った後の状態では、その微粒子複合体の一部又は全部が崩壊して単独の微粒子となるので、超音波処理前と処理後では、最大粒子径だけでなく、モード粒子径、及び粒子径のd50等、粒子径に関する各種パラメータが大きく変化する。
本発明の組成物における擾乱前の微粒子複合体の最大粒子径は、所定の範囲内に調整される。具体的には、本発明の組成物の擾乱前、即ち超音波処理前の最大粒子径は、通常100μm以上である。中でも110μm以上であることが好ましい。超音波処理前の組成物の最大粒子径が前記下限以上であることにより、食材の組織が破壊されて好ましく無い風味が付与されることを防ぐことができる。一方、本発明の組成物の擾乱前、即ち超音波処理前の最大粒子径は、限定されるものではないが、通常2000μm以下、中でも1500μm以下であることが好ましい。超音波処理前の組成物の最大粒子径を前記上限以下とすることにより、工業上の生産性という理由から便利である。
本発明の組成物における擾乱後の微粒子複合体の最大粒子径は、所定の範囲内に調整される。具体的には、本発明の組成物の擾乱後、即ち超音波処理後の最大粒子径は、通常20μm以上、中でも30μm以上であることが好ましい。超音波処理後の組成物の最大粒子径が前記下限以上であることにより、食材の組織が破壊されて好ましく無い風味が付与されにくいという理由から好ましい。一方、本発明の組成物の擾乱後、即ち超音波処理後の最大粒子径は、限定されるものではないが、通常1100μm以下、中でも800μm以下であることが好ましい。超音波処理後の組成物の最大粒子径を前記上限以下とすることにより、工業上の生産性という理由から便利である。
なお、本発明の組成物は混濁系であるため、目視による最大粒子径を正確に判別することは困難であるが、少なくとも最大粒子径の下限値については、目視により大まかに判断することが可能である。即ち、顕微鏡にて観察される最大粒子径がある一定値よりも大きい場合には、実際の最大粒子径もその一定値よりも大きい蓋然性が高いと考えられる。
本発明の組成物における擾乱前の微粒子複合体のモード粒子径(モード径)は、所定の範囲内に調整される。具体的には、本発明の組成物の擾乱前、即ち超音波処理前のモード粒子径は、通常5μm以上である。中でも10μm以上、更には12μm以上であることが好ましい。超音波処理前の組成物のモード粒子径が前記下限以上であることにより、組成物が離水しにくい品質となり、商業的に流通させる観点から好ましい。一方、本発明の組成物の擾乱前、即ち超音波処理前のモード粒子径は、通常400μm以下である。中でも300μm以下、更には200μm以下、とりわけ100μm以下であることが好ましい。超音波処理前の組成物のモード粒子径を前記上限以下とすることにより、食感の悪化を防ぎ、適切な喫食時の食感、触感を組成物に付与することが可能となる。
本発明の組成物における擾乱後の微粒子複合体のモード粒子径も、所定の範囲内に調整される。具体的には、本発明の組成物の擾乱後、即ち超音波処理後のモード粒子径は、通常0.3μm以上である。中でも1.0μm以上、更には3.0μm以上、とりわけ5.0μm以上、特に7.0μm以上であることが好ましい。超音波処理後の組成物のモード粒子径が前記下限以上であることにより、組成物が乾燥しにくい品質となり、長期間の保管が可能となるため好ましい。一方、本発明の組成物の擾乱後、即ち超音波処理後のモード粒子径は、通常100μm以下である。中でも90μm以下、更には80μm以下、とりわけ70μm以下、又は60μm以下、特に50.0μm以下であることが好ましい。超音波処理後の組成物のモード粒子径が前記上限以下であることにより、食感の悪化を防ぎ、適切な喫食時の食感、触感を組成物に付与することが可能となる。
また、本発明においてモード粒子径とは、組成物をレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定して得られたチャンネル毎の粒子径分布について、粒子頻度%がもっとも大きいチャンネルの粒子径を表す。全く同じ粒子頻度%のチャンネルが複数存在する場合には、その中で最も粒子径の小さいチャンネルの粒子径を採用する。粒子径分布が正規分布であればその値はメジアン径と一致するが、粒子径分布に偏りがある場合、特に粒子径分布のピークが複数ある場合には大きく数値が異なる。レーザー回折式粒度分布測定装置によるサンプルの粒子径分布測定は、例えば以下の方法で実施することができる。なお、サンプルが熱可塑性固形物の場合は、サンプルを加熱処理して液体状にした後に分析に供することで、レーザー解析式粒度分布測定装置による分析に供することができる。
以上の最大粒子径及びモード粒子径に加えて、本発明の組成物における擾乱前後の微粒子複合体の粒子径のd50(50%積算径、メジアン粒子径、メジアン径)も、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、本発明の組成物の擾乱前、即ち超音波処理前の粒子径のd50は、通常5μm以上、中でも10μm以上、また、通常400μm以下、中でも300μm以下、更には250μm以下、中でも200μm以下であることが好ましい。また、本発明の組成物の擾乱後、即ち超音波処理後の粒子径のd50は、通常1μm以上、中でも5μm以上、更には7μm以上、また、通常150μm以下、中でも100μm以下、更には75μm以下であることが好ましい。なお、組成物の粒子径のd50は、組成物の粒子径分布をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、50:50となる粒子径として定義される。組成物の粒子径のd50は、例えば後述するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
なお、本発明における「粒子径」とは、特に指定が無い限り全て体積基準で測定されたものを表す。また、本発明における「粒子」とは、特に指定が無い限り単独の微粒子のみならず、それらが凝集してなる微粒子複合体も含みうる概念である。
本発明の粒子径に関する各種パラメータの測定条件は、制限されるものではないが、以下の条件とすることができる。まず、測定時の溶媒は、組成物中の不溶性食物繊維の構造に影響を与え難いものであれば、任意の溶媒を用いることができる。例としては、蒸留水を用いることが好ましい。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、制限されるものではないが、例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300EXIIシステムを使用することができる。測定アプリケーションソフトウェアとしては、制限されるものではないが、例えばDMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングでサンプルの濃度が適正範囲内に入るまでサンプルを直接投入すればよい。擾乱前のサンプル、即ち超音波処理を行なわないサンプルは、サンプル投入後のサンプルローディング2回以内にその濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とすればよい。一方、擾乱後のサンプル、すなわち超音波処理を行ったサンプルを測定する場合は、予め超音波処理を行ったサンプルを投入してもよく、サンプル投入後に前記の測定装置を用いて超音波処理を行い、続いて測定を行ってもよい。後者の場合、超音波処理を行っていないサンプルを投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とすることができる。測定時のパラメータとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.333、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとすることができる。
また、本発明における組成物の各種の粒子径を求める際には、チャンネル(CH)毎の粒子径分布を測定した上で、後述の表2に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて求めることが好ましい。具体的には、後記の表2の各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を、後記の表2の各チャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる(これを「○○チャンネルの粒子頻度%」とも称する)。例えば、1チャンネルの粒子頻度%は、2000.00μm以下かつ1826.00μmより大きい粒子の頻度%を表す。特に、最大粒子径については、後記の表2の132チャンネルのそれぞれにおける粒子頻度%を測定して得られた結果について、粒子頻度%が認められたチャンネルのうち、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径として求めることができる。言い換えれば、本発明において組成物の最大粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定する場合、その好ましい測定条件としては、測定溶媒として蒸留水を用い、測定上限2000.00μm、測定下限0.021μmの対象について、サンプル投入後速やかに粒子径を測定するということになる。
[組成物中の粒子の比表面積]
本発明の組成物は、前記の各種要件に加えて、擾乱を加える前後、即ち、超音波処理前後の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積が、以下の要件を満たすことが好ましい。即ち、本発明の組成物は、擾乱を加えない状態、即ち超音波処理を行う前の状態では、多数の微粒子複合体を含有するのに対し、擾乱を加えた状態、即ち超音波処理を行った後の状態では、その微粒子複合体の一部又は全部が崩壊して単独の微粒子となるので、超音波処理前と処理後では、その単位体積当り比表面積も大きく変化する。
即ち、擾乱を加える前、即ち、超音波処理前の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積(γB)は、通常1.00m2/mL以下、中でも0.80m2/mL以下であるのが好ましい。当該比表面積(γB)が前記上限以下であれば、微粒子が十分に複合体を形成し、本発明の安定性向上効果が充分に奏されるので好ましい。なお、当該比表面積(γB)の下限は限定されないが、組成物の安定性向上効果を強化する観点からは、通常0.07m2/mL以上、中でも0.10m2/mL以上、更には0.15m2/mL以上の範囲とすることが好ましい。
また、擾乱を加えた後、即ち、超音波処理後の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積(γA)は、通常1.70m2/mL以下、更には1.50m2/mL以下、更には1.30m2/mL以下、更には1.10m2/mL以下、中でも0.80m2/mL以下であるのが好ましい。当該比表面積(γA)が前記上限以下であれば、微粒子が十分に複合体を形成し、本発明の安定性向上効果が充分に奏されるので好ましい。また、前記比表面積(γA)の下限は限定されないが、組成物の安定性向上効果を強化する観点からは、通常0.07m2/mL以上、中でも0.10m2/mL以上、更には0.15m2/mL以上、中でも0.20m2/mL以上の範囲とすることが好ましい。
また、擾乱を加える前後、即ち、超音波処理前後の組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積の比、即ち(γB/γA)が、所定範囲を満たすことが好ましい。具体的には、(γB/γA)は通常0.80以下であることが好ましい。γB/γAが前記上限値以下であることにより、食物繊維同士が良い塩梅に複合体化されており、組成物の安定性向上効果が適切に発現されるため好ましい。なお、(γB/γA)の下限は限定されないが、通常は0.1以上であることが好ましい。
本発明において、組成物の単位体積当り比表面積とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した、粒子を球状と仮定した場合の単位体積(1mL)当り比表面積を表す。なお、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積は、粒子の成分や表面構造等を反映した測定値(透過法や気体吸着法等で求められる体積あたり、質量あたり比表面積)とは異なる測定メカニズムに基づく数値である。また、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積は、粒子1個当りの表面積をai、粒子径をdiとした場合に、6×Σ(ai)÷Σ(ai・di)によって求められる。
[組成物中の形態的特徴]
本発明の組成物は、その中に含まれる、不溶性食物繊維を含む微粒子及び微粒子複合体の形態を規定する以下の要件(1)〜(3)のうち、少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ全てを充足する。
<要件(1):数値N(I)>
要件(1)は、下記式(I)により求められる数値N(I)を所定値以上とする要件である。
(数1)
N(I)=(α/β) (I)
但し、前記式(I)中、
αは、粒子形状画像解析装置により測定される超音波処理前の「長径」の90パーセンタイル値を表し、
βは、粒子形状画像解析装置により測定される超音波処理前の「短径」の90パーセンタイル値を表す。
言い換えれば、要件(1)を満たす、即ち、数値N(I)が所定値以上である微粒子複合体含有組成物とは、短径に対して長径が長い(細長い)という形態的特徴を持った微粒子を支配的に有し、その割合が通常の組成物よりも高いことを意味する。
具体的に、要件(1)によれば、数値N(I)は通常1.20以上であり、中でも1.30以上、更には1.40以上、とりわけ1.50以上であることが好ましい。数値N(I)が前記下限値以上であることにより、組成物の乳化容量が向上すると共に、その収斂味も改善されるという効果が得られるので好ましい。
なお、数値N(I)の上限は制限されないが、生産時の利便性の観点から、通常4.0以下、中でも3.0以下であることが好ましい。
また、微細化前後で数値N(I)が5%以上増加するまで微細化処理を施すことで、組成物の収斂味が改善される効果が認められるため、好ましく、更には10%以上増加するまで微細化処理を施すことが好ましく、中でも15%以上増加するまで微細化処理を施すことが好ましく、20%以上増加するまで微細化処理を施すことが最も好ましい。すなわち、微細化前後で数値N(I)が5%以上増加するまで微細化処理された状態である組成物について、収斂味改善などの効果が顕著に認められる。例えば、媒体攪拌ミル処理前の組成物(後述する試験例10、15、25などが相当)の数値N(I)が例えば1.24(試験例10)であり、それに対応する媒体攪拌ミルで微細化処理した後の組成物(後述する試験例11〜13、16〜18、26〜28などが相当)の数値N(I)が例えば1.54(試験例11)である場合、数値N(I)が約24%増加するまで微細化処理を施したと言える。
<要件(2):数値N(II)>
要件(2)は、下記式(II)により求められる数値N(II)を所定値以上とする要件である。
(数2)
N(II)=(α/β)/ω (II)
但し、前記式(II)中、
αは、粒子形状画像解析装置により測定される超音波処理前の「長径」の90パーセンタイル値を表し、
βは、粒子形状画像解析装置により測定される超音波処理前の「短径」の90パーセンタイル値を表し、
ωは、粒子形状画像解析装置により測定される超音波処理前の「凹凸度」の10パーセンタイル値を表す。
言い換えれば、要件(2)を満たす、即ち、数値N(II)が所定値以上である微粒子複合体含有組成物とは、短径に対して長径が長く(細長く)、且つ粒子表面が凸凹しているという形態的特徴を持った微粒子を支配的に有し、その割合が通常の組成物よりも高いことを意味する。
具体的に、要件(2)によれば、数値N(II)は通常1.40以上であり、中でも1.50以上、とりわけ1.60以上、更には1.70以上、又は1.80以上、又は1.90以上、特に2.00以上であることが好ましい。数値N(II)が前記下限値以上であることにより、組成物の乳化容量が向上すると共に、その収斂味も改善されるという効果が得られるので好ましい。
なお、数値N(II)の上限は制限されないが、生産時の利便性の観点から、通常4.0以下、中でも3.0以下であることが好ましい。
また、微細化前後で数値N(II)が5%以上増加するまで微細化処理を施すことで、組成物の収斂味が改善される効果が認められるため、好ましく、更には10%以上増加するまで微細化処理を施すことが好ましく、中でも20%以上増加するまで微細化処理を施すことが好ましく、30%以上増加するまで微細化処理を施すことが最も好ましい。すなわち、微細化前後で数値N(II)が5%以上増加するまで微細化処理された状態である組成物について、収斂味改善などの効果が顕著に認められる。例えば、媒体攪拌ミル処理前の組成物(後述する試験例10、15、25などが相当)の数値N(II)が例えば1.43(試験例10)であり、それに対応する媒体攪拌ミルで微細化処理した後の組成物(後述する試験例11〜13、16〜18、26〜28などが相当)の数値N(II)が例えば2.34(試験例11)である場合、数値N(II)が約63%増加するまで微細化処理を施したと言える。
<要件(3):数値N(III)>
要件(3)は、下記式(III)により求められる数値N(III)を所定値以上とする要件である。
(数3)
N(III)=(α/β)×γA (III)
但し、前記式(III)中、
αは、粒子形状画像解析装置により測定される超音波処理前の「長径」の90パーセンタイル値を表し、
βは、粒子形状画像解析装置により測定される超音波処理前の「短径」の90パーセンタイル値を表し、
γAは、超音波処理後の単位体積当り比表面積を表す。
言い換えれば、要件(3)を満たす、即ち、数値N(III)が所定値以上である微粒子複合体含有組成物とは、短径に対して長径が長く(細長く)、且つ超音波処理によって凝集が崩れた後の単位体積あたりの比表面積が大きいという形態的特徴を持った微粒子を支配的に有し、その割合が通常の組成物よりも高いことを意味する。
具体的に、要件(3)によれば、数値N(III)は通常0.50以上であり、中でも0.60以上、とりわけ0.70以上、更には0.80以上、又は0.90以上、特に1.00以上であることが好ましい。数値N(III)が前記下限値以上であることにより、組成物の乳化容量が向上すると共に、その収斂味も改善されるという効果が得られるので好ましい。
なお、数値N(III)の上限は制限されないが、生産時の利便性の観点から、通常4.0以下、中でも3.0以下であることが好ましい。
また、微細化前後で数値N(III)が5%以上増加するまで微細化処理を施すことで、組成物の収斂味が改善される効果が認められるため、好ましく、更には10%以上増加するまで微細化処理を施すことが好ましく、更には20%以上増加するまで微細化処理を施すことが好ましく、中でも30%以上増加するまで微細化処理を施すことが好ましく、40%以上増加するまで微細化処理を施すことが最も好ましい。すなわち、微細化前後で数値N(III)が5%以上増加するまで微細化処理された状態である組成物について、収斂味改善などの効果が顕著に認められる。例えば、媒体攪拌ミル処理前の組成物(後述する試験例10、15、25などが相当)の数値N(III)が例えば0.54(試験例10)であり、それに対応する媒体攪拌ミルで微細化処理した後の組成物(後述する試験例11〜13、16〜18、26〜28などが相当)の数値N(III)が例えば1.31(試験例11)である場合、数値N(III)が約142%増加するまで微細化処理を施したと言える。
<形態的要件の測定手法>
本発明において、前述のN(I)〜N(III)を算出するための各種パラメータ、即ち、組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の長径、短径、及び凹凸度の測定は、粒子形状解析装置を用いた平面画像解析により行うことができる。例としては、微粒子粒子画像の正確な形態的特徴が把握できるため、以下の手法で行なうことで好ましい。即ち、一般的な個別の粒子画像を撮影してその形状を解析できる機能を有する粒子形状解析装置を用い、例えば粉粒体懸濁液である組成物をフローセル内に流し、撮影視野に入った微粒子複合体を自動的に判別し、その形態的特徴を把握解析することが好ましい。ここで、微粒子複合体を無作為に抽出し、短時間で大量の個別粒子情報を自動的に得ることができる粒子形状解析装置を用いることが好ましい。具体的には、動的画像解析法による粒子分析型の装置であって、高画素のカメラを設置可能な粒子分析計(例えば株式会社セイシン企業製のPITA−4等)を使用することが好ましい。
具体的に、組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の撮影は、粒子の詳細な画像を撮影できるカメラを用いて行うことができる。中でも、少なくとも有効画素数1920(H)×1080(V)、画素サイズ2.8μm×2.8μm程度よりも詳細な平面画像を撮影できる撮像カメラ(CCDカメラもしくはC−MOSカメラ)を用いることが好ましい。斯かる撮像カメラの例としては、DMK33UX290(The Imaging Source社製)が挙げられる。画像撮影の条件としては、例えば以下の条件を使用することができる。即ち、画像撮影時の対物レンズとしては倍率4倍のものを用い、適切な流量でサンプルを流しながら微粒子粒子画像を撮影する。特に、フローセルの形状については平面伸張効果を高め、大部分の超音波処理前の組成物中の複合体の中心がレンズの持つ焦点範囲内を通過させることができる平面伸張セルを用いることで、正確な形態的特徴を把握することができる。画像の撮影に際しては、焦点が適切に設定され、粒子形状が明瞭に確認でき、背景とのコントラストが超音波処理前の組成物中の複合体が背景と明確に判別できる程度に粒子画像解析装置の条件を設定する。画像取得時の各種パラメータの設定例としてはあ、8Bitグレースケールの撮像カメラ(0を黒色、255を白色とする)を使用した場合、LED強度100、カメラゲイン100db、として平面画像を取得したのち、その中に存在する粒子画像の明るさレベル115、画像の輪郭レベル160とすることができる。測定時の溶媒やキャリア液としては、組成物内の微粒子複合体の形態に影響を与えない限りにおいて、任意の溶媒を用いることが可能であるが、例としては蒸留水が好ましい。例えば、測定の際に使用する溶媒でサンプルを1000倍に希釈し、粒子画像測定用セル(合成石英ガラス)に注入し、微粒子複合体形状画像解析に供することができる。画像撮影は、例えば1920画素×1080画素の平面画像(画素サイズ2.8μm×2.8μm)として撮影し、撮影対象粒子数が、例えば10000検体に達するまで行うことができる。なお、撮影画像のピントが適切に調整されていないとその形状が正確に測定できないため、撮影画像のピントを良く合わせた状態で撮影を実施する。また、撮影により撮影条件の設定がずれることがあるため、撮影の都度適切な条件に調整しなおしてから再度の撮影を行うことが望ましい。
また、撮影した組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の画像解析は、例えば以下の手順により行うことができる。即ち、平面画像内に存在する最低画素数15画素以上の微粒子粒子画像について、長径、短径、凹凸度を10000枚の画像のそれぞれについて測定し、長径及び短径については、10000検体中の90パーセンタイル値を採用し、凹凸度については、10000検体中の10パーセンタイル値を採用する。なお、本発明において「パーセンタイル値」とは、計測値の分布を小さい数字から大きい数字に並べ変え、小さいほうから数えて任意の%に位置する値を意味する。例えば、10000個の微粒子粒子画像を測定した場合の任意の測定値における90パーセンタイル値は、全微粒子粒子画像におけるその測定値のうち小さいほうから数えて9000番目の測定値を指す。
なお、本発明において、組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の「長径」及び「短径」は、粒子画像の縦横斜めに隣接する画素同士を連結して形成される粒子形状に基づいて決定することができる。即ち、粒子の「長径」は、当該粒子画像上の前記粒子形状における輪郭線上の2点間の最大距離を表し、粒子の「短径」は、当該粒子画像の前記粒子形状において、前記最大距離に沿った直線に対し平行な2本の直線で前記粒子形状を挟んだ場合の最短距離を表す。すなわち、細長い形態的特徴を持つような特定の形態的特徴を強く持つ微粒子又は微粒子複合体が多いほど、組成物の長径及び短径の支配的特徴が表される各々の90パーセンタイル値にその傾向が反映され、N(I)(即ち、長径(α)の90パーセンタイル値/短径(β)の90パーセンタイル値)が大きくなる。
また、本発明において、組成物中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の「凹凸度」は、当該粒子画像上の前記粒子形状の凹凸の度合いを表す値であって、(当該粒子画像上の前記粒子形状の凸部の頂点を最短の距離をもって結んだときの周囲の長さ)÷(当該粒子画像上の前記粒子形状の輪郭長)によって求められる。すなわち、粒子表面に凹凸が多いような特定の形態的特徴を強く持つ粒子が多いほど、擾乱を加えた状態の組成物、即ち超音波処理後の組成物の全体的特徴を反映する凹凸度の10パーセンタイル値に、その傾向が反映されることになる。具体的には、細長い形態的特徴を有し、且つ、粒子表面に凹凸を有する粒子が多いほど、組成物の長径及び短径の支配的特徴が反映される90パーセンタイル値、並びに、凹凸度の10パーセンタイル値にその傾向が反映され、結果として数値N(II)(即ち、{[長径(α)の90パーセンタイル値]/[短径(β)の90パーセンタイル値]}/[凹凸度(ω)の10パーセンタイル値])が大きくなる。
[微粒子複合体の含有量]
本発明の組成物において、不溶性食物繊維を含有する微粒子及び微粒子複合体の含有量は、所定の範囲を満たすことが好ましい。具体的に、組成物全体に対する微粒子及び微粒子複合体の質量比率は、通常4質量%以上、中でも6質量%以上、更には8質量%以上、とりわけ9質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。前記質量比率を前記下限値以上とすることにより、不溶性食物繊維を含有する食味を十分に感じることができて好ましい。一方、前記質量比率の上限は、通常98質量%以下、中でも91質量%以下、更には85質量%以下、とりわけ80質量%以下、特に55質量%以下であることが好ましい。前記質量比率を前記上限値以下とすることにより、不溶性食物繊維を含有する食材の摂取を容易とすることができて好ましい。また、微粒子複合体が食品微粒子の複合体であることで、より食味を感じやすくなるため、好ましく、食物繊維含有食品微粒子の複合体であることが最も好ましい。
なお、本発明において、組成物中の微粒子及び微粒子複合体の含有量は、例えば以下の手順で行うことができる。即ち、組成物中の不溶性成分の合計質量から、レーザー回折式粒度分布測定や粒子形状画像解析装置の測定対象とならない2000μm(2mm)よりも大きい食品等を除いた成分の質量を測定する。ここで、組成物が2mmよりも大きい食品等を含む場合には、例えば、組成物中の9メッシュ(目開き2mm)パスさせた画分中のうち、遠心分離による分離上清を充分に取り除いた沈殿画分の質量が、組成物中の微粒子及び微粒子複合体の含有量となる(具体的には、固形油脂の場合は加温して溶解した状態で、必要に応じて2mmよりも大きい食品等を取り除いた後、遠心分離を実施し、分離上清を取り除くことができる。)。なお、一部の油脂や水分は沈殿画分に取り込まれるため、組成物中の微粒子及び微粒子複合体の合計質量は、沈殿画分に取り込まれたそれら成分と食材との合計質量を表す。
なお、より具体的には、本発明において、組成物中の微粒子及び微粒子複合体の含有量は、例えば以下の手順で行うことができる。即ち、例えば任意の量の組成物を9メッシュ(タイラーメッシュ)パスさせた後、通過画分に対して15000rpmで1分間の遠心分離を行い、分離上清を充分に取り除いた沈殿画分質量を量ることで、組成物中の微粒子及び微粒子複合体の含有量を測定することができる。9メッシュパスさせる際のメッシュ上残分については、充分に静置した後、組成物の粒子サイズが変わらないようにヘラ等で9メッシュの目開きより小さい不溶性食物繊維含有微粒子を充分に通過させた後、通過画分を得た。9メッシュを通過しない程度に流動性が低い組成物(例えばボストウィック粘度が20℃30秒間で10cm以下の物性)については、オリーブオイル等の溶媒で3倍程度に希釈した状態で9メッシュパスさせた後の組成物を遠心分離して組成物中の不溶性食物繊維含有微粒子の含有量を測定することができる。また熱可塑性の組成物については、加熱して流動性を持たせた状態で水等の溶媒で3倍程度に希釈した状態で9メッシュパスさせた後の組成物を遠心分離して組成物中の不溶性食物繊維含有微粒子の含有量を測定することができる。
また、本発明の組成物は、擾乱を加える前、即ち超音波処理前の状態において、粒子径が所定範囲内の微粒子又は微粒子複合体を、所定個数以上含有することが好ましい。具体的には、粒子径が2.3μm〜1600μmの粒子形状画像解析装置の測定対象となる微粒子又は微粒子複合体が、通常10000個/cm3以上、中でも10000個/cm3以上、更には1000000個/cm3以上含有されることが好ましい。前記所定範囲内の粒子径を有する微粒子又は微粒子複合体の含有個数が前記下限よりも少ないと、本発明の効果が十分に発揮されず好ましくない。なお、前記所定範囲内の粒子径を有する微粒子又は微粒子複合体の含有個数は、前記の組成物中の粒子の形態的特徴を解析する手法において例示した、粒子形状解析装置による平面粒子画像解析(PITA−4)を用いて測定することが可能である。
[組成物の製法]
本発明の組成物を調製する方法は、制限されるものではなく、前記の各種要件を充足する組成物が得られる限りにおいて、任意の手法を用いることができる。具体的には、本発明の組成物の材料、例えば不溶性食物繊維含有食材、並びに任意により用いられるその他の食材、食用油脂、調味料、及びその他の成分を混合すればよい。但し、不溶性食物繊維含有食材を、場合により食用油脂やその他の食材や成分の存在下で、微細化処理する工程を含む方法が好ましい。このように不溶性食物繊維含有食材を微細化処理することで、不溶性食物繊維を含む微粒子の複合体が形成されやすくなる。斯かる微細化処理により、どうして微粒子の複合体が形成されるのかは定かではないが、不溶性食物繊維含有食材を微細化処理することで、不溶性食物繊維を含有する微粒子が形成されると共に、斯かる微粒子が複数集合して再凝集を起こし、前記の特殊な形状的特徴を有する複合体が形成される可能性がある。斯かる微粒子の凝集による複合体の形成は、特に一定の水分や油脂を共存させたり、高剪断力を印加したり、加圧条件や昇温条件を印加したりすることで、より促進される可能性もある。従来、このような条件の下で、微粒子複合体が再凝集によって特定の形状特性を有する複合体を形成することや、斯かる複合体の形成により前述の各種の有用な効果が得られることは、全く知られていなかった。
本発明に用いられる微細化処理の手段は特に限定されない。微細化時の温度も制限されず、高温粉砕、常温粉砕、低温粉砕の何れであってもよい。微細化時の圧力も制限されず、高圧粉砕、常圧粉砕、低圧粉砕の何れであってもよい。但し、本発明で規定される特定形状の微粒子及び微粒子複合体を含む組成物を効率的に得る観点からは、組成物の材料たる食材及びその他の成分を、高剪断力で加圧条件下且つ昇温条件下で短時間で処理できる手段が好ましい。斯かる微細化処理のための装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらの何れであってもよい。微細化時の系としては、乾式粉砕又は湿式粉砕の何れであってもよい。乾式微細化の場合、その装置としては、例えば乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。一方、湿式微細化の場合、その装置としては、例えばビーズミルやボールミル(転動式、振動式、遊星式ミル等)等の媒体撹拌ミル、ロールミル、コロイドミル、スターバースト、高圧ホモジナイザー等を用いることができる。中でも、媒体攪拌ミル(ボールミル、ビーズミル)又は高圧ホモジナイザーが好ましく、媒体攪拌ミルがより好ましい。中でも湿式媒体攪拌ミル、特に湿式ビーズミルを用いることが好ましい。湿式媒体攪拌ミルを用いることで、その他の微細化処理法に比べて、食品組成物を静置した際に組成物中の水分の乾燥が起こりにくく、安定性の高い品質となるため好ましい。その原理は不明であるが、湿式媒体攪拌ミル処理により好ましい状態の微粒子複合体が形成されやすくなるためであると考えられる。
例として、湿式ビーズミル等の湿式媒体攪拌ミルを用いて微細化処理を行う場合、組成物の材料たる食材及びその他の成分を、湿式媒体攪拌ミルに装填して破砕すればよい。食材の大きさや性状、更には目的とする微粒子複合体の性状に合わせて、ビーズの大きさや充填率、出口メッシュサイズ、原料スラリーの送液速度、ミル回転強度、一回のみ通過させる方式(ワンパス)か、何度も循環させる方式(循環式)か等の条件を、適宜選択・調整すればよい。以下に具体的な条件の例を挙げるが、本発明は以下の条件に何ら束縛されるものではない。
湿式ビーズミルに使用されるビーズの粒子径は、通常2mm以下、中でも1mm以下とすることが好ましい。前記上限値よりも大きい粒子径のビーズを用いたビーズミル粉砕機(例えば通常3〜10mmのビーズを使用するアトライタ等の「ボールミル」と称される媒体攪拌ミル)の場合、本発明で規定される特定形状の微粒子及び微粒子複合体を含む組成物を得るには長時間の処理が必要となり、原理上常圧より加圧することも困難であることから、本発明の組成物を得ることが難しい。また、湿式ビーズミルに使用されるビーズの材質は、ビーズミル内筒の材質と同じ材質とすることが好ましく、材質が共にジルコニアであることが更に好ましい。
湿式媒体攪拌ミルによる処理は、加圧条件下で行うことが好ましい。微細化処理時に加圧条件を作り出す方法は限定されないが、特にビーズミル粉砕機で加圧条件を好ましく得るためには、処理出口に適当なサイズのフィルターを設置して、内容物の送液速度を調整しながら加圧条件を調整しつつ処理する方法が好ましい。処理時の圧力条件は制限されるものではないが、処理時間中の最大圧力の常圧に対する差が、通常0.01MPa以上、中でも0.02MPa以上、更には0.03MPa以上、とりわけ0.04MPa以上であることが好ましい。処理時の最大圧力の常圧に対する差が、前記下限値以上であることにより、本発明で規定される特定形状の微粒子及び微粒子複合体を含む組成物を、短時間で効率的に得ることができる。一方、処理時の圧力の上限は制限されないが、加圧条件が過酷すぎると設備が破損する恐れがあるため、処理時間中の最大圧力の常圧に対する差が、通常1MPa以下、中でも0.50MPa以下、更には0.40MPa以下、とりわけ0.30MPa以下であることが好ましい。
湿式媒体攪拌ミルによる微細化処理時の温度も制限されず、高温粉砕、常温粉砕、低温粉砕の何れであってもよい。但し、粉砕処理開始直後のサンプル温度(処理温度:T1)に対して、粉砕処理終了時のサンプル温度(処理温度:T2)が、「T1+1<T2<T1+50」を満たす範囲内での昇温条件下となるように調整することが好ましい(ここで単位は摂氏(℃)である。)。また、粉砕処理終了時のサンプル温度(処理温度:T2)は25℃以上(T2≧25)とすることが好ましい。
湿式媒体攪拌ミルによる微細化処理の対象物は、組成物の材料たる食材(不溶性食物繊維含有食材及びその他の食材)及びその他の成分の混合物である。斯かる混合物には、予め前処理として、ジェットミル、ピンミル、石臼粉砕ミル等による粗粉砕処理を施しておくことが好ましい。この場合、混合物のd50(メジアン粒子径)を、例えば通常10μm以上、中でも20μm以上、また、通常1500μm以下、中でも1000μm以下の範囲に調整してから、媒体攪拌ミルによる微細化処理に供することが好ましい。混合物のメジアン粒子径をこの範囲内に調整しておくことにより、工業上の生産性という観点から便利である。
また、湿式媒体攪拌ミルによる微細化処理の対象となる混合物に水分が含まれている場合、食材(不溶性食物繊維含有食材及びその他の食材)の水分含量がその他の成分及び媒体としての水分含量よりも低い状態とすることで、本発明で規定される特定形状の微粒子及び微粒子複合体を含む組成物を効率的に得ることが可能となるので好ましい。具体的には、食材(不溶性食物繊維含有食材及びその他の食材)として乾燥食材を用いると共に、媒体として油脂に加えて水を用い、媒体攪拌ミル処理、特に湿式ビーズミル処理に供することが好ましい。
また、湿式媒体攪拌ミルによる微細化処理の対象となる混合物の粘度を所定値以下とすることにより、本発明で規定される特定形状の微粒子及び微粒子複合体を含む組成物を効率的に得ることが可能となるので好ましい。具体的に、前記混合物の粘度(測定温度20℃)の上限は、通常20Pa・s以下、中でも8Pa・s以下とすることが好ましい。一方、前記粘度(測定温度20℃)の下限値は特に制限されないが、通常100mPa・s以上、中でも500mPa・s以上とすることが好ましい。
また、媒体攪拌ミルによる微細化処理の対象となる混合物のボストウィック粘度を所定値以下に調整しておくと、湿式媒体攪拌ミルによる処理時の圧力を、前述の所望の圧力条件に調整しやすくなり、微細化処理効率がさらに高まるので好ましい。具体的に、前記混合物のボストウィック粘度(測定温度20℃)は、1秒間で通常28.0cm以下とすることが好ましい。
媒体攪拌ミルによる微細化処理の回数及び時間も制限されないが、通常はワンパス処理で破砕することで、本発明で規定される特定形状の微粒子及び微粒子複合体を含む組成物を効率的に得ることが可能となるので好ましい。ワンパス処理の場合、その処理時間は、通常0.1分以上、中でも1分以上、更には2分以上とすることが好ましく、また、通常25分以下、中でも22分以下、更には20分以下とすることが好ましい。なお、媒体攪拌ミルや高圧ホモジナイザーによる微細化処理の時間とは、処理対象物が十分に剪断処理されて、本発明の所望の微粒子複合体を含む組成物が形成されるまでの時間を表す。具体例として、例えば粉砕室の容積が100mLで、そのビーズを除いた(即ち処理液を注入可能な)空隙率が50%のビーズミル破砕機を用い、毎分200mLの速度でサンプルを循環させずにワンパス処理する場合、粉砕室内の空寸は50mLであるから、サンプル処理時間は(100mL×50%)/(200mL/分)=0.25分(15秒)となる。
[組成物の特性・用途]
本発明の組成物は、種々の優れた特性を有する。その一つが乳化容量の向上である。本発明において「乳化容量」とは、20℃に調整したサンプルを100rpm程度で攪拌しながらサラダ油を徐々に注加し、組成物の表面に油滴が浮遊し始めるまで油を注加した時の、組成物1質量部に対する油の全注加量の質量割合(%)を表す。組成物100gに対する油の全注加量が50gであった場合、乳化容量は50%となる。乳化容量の高い組成物は、他の油脂と接触し、又は他の油脂と混合された場合に、当該油脂を乳化・安定化する能力に優れている。具体的に、本発明の組成物の乳化容量は、限定されるものではないが、通常50%以上、中でも70%以上、更には100%以上、とりわけ150%以上、特に200%以上であることが好ましい。こうした特性により、本発明の組成物は、油水混合食品の安定剤として用いることができる他、本発明の組成物を食品として、油脂を多く含有する料理と共に喫食することで、料理の乾燥(食材由来の水の蒸発)を防ぎ、さらに料理の離油(食材由来の油脂分の浸出)も抑制することで、料理の食味を向上させると共に、斯かる向上した食味を長時間持続させることができるという性質を示す。なお、本明細書において「油脂を多く含有する料理」とは、特に断りなき限り、油脂を通常3質量%以上、中でも5質量%以上含む料理を指すものとする。斯かる料理の例は種々存在するが、一例としては各種の揚げ物等が挙げられる。
また、本発明の組成物は、これを食品として喫食した場合に、不溶性食物繊維に起因する収斂味が低減される(改善される)という特性も有する。収斂味(astringent taste、astringency)とは、組成物を口に含んだ時に口中をしめつけるような感じを与える味のことである。その発生メカニズムは明確ではないが、収斂味は、味覚の神経細胞を刺激することにより感じる味とは異なり、口中の細胞を収縮させることにより感じる触覚に近い感覚と考えられている。例えば、赤ワインにはブドウ由来のタンニンに由来する渋味が特徴とされているが、収斂味はこの渋味や苦味やえぐみと似ているものの異なる感覚である。不溶性食物繊維を含有する食品には、通常はこうした収斂味が存在するため、喫食の妨げとなる場合が多い。しかし、本発明の組成物は、不溶性食物繊維を含有するにもかかわらず、こうした収斂味が低減されているため、喫食が容易である。斯かる収斂味改善の原理は不明であるが、組成物の乳化容量の高まりに伴い、油脂との親和性が高まることで、味蕾細胞表面の脂質膜に何らかの影響を与えている可能性が考えられる。
また、本発明の組成物は、離水防止性(水分分離が抑制されるという性質)や乾燥防止性(水分の蒸発による乾燥が抑制されるという性質)等の安定性に優れるという特性を有する場合もある。こうした優れた安定性により、本発明の組成物は、食品として商業的に流通させる場合に、微生物増殖や風味悪化等のリスクが低下するため有利である。
本発明の組成物は、そのままの状態で食品として喫食することができる他、飲食品又は液状調味料の原料や素材として好適に使用することができる。即ち、本発明の対象としては、本発明の組成物を含有する飲食品及び液状調味料が包含される。本発明の組成物を原料の一部として用いることで、分散安定性の高いソースやたれやディップやマヨネーズやドレッシングやバターやジャム等の調味料を製造することができる。このように本発明の組成物を調味料に添加する場合、本発明の組成物の調味料への添加量は限定されないが、概ね0.001〜50質量%程度とすることが望ましい。また、製造に際しては、前記組成物をどのタイミングで調味料に添加してもよい。詳細には、調味料に対して組成物を添加しても良く、調味料の原料に本発明の組成物の材料(食材等)を添加してから微細化処理を実施してもよく、それらの方法を組み合わせてもよいが、調味料に対して本発明の組成物を添加する方法が産業的に便利であり、好ましい。本発明の組成物は、前述の収斂味の低減という未知の属性により、主に食品分野での応用が期待される。また、前述の乳化容量向上という未知の属性により、食品分野の中でも、主に例えば製パン業界等の、食品添加物の使用が忌避される業界において、乳化剤の代替物として使用されうる。また、本発明の組成物は、前述の乳化容量向上という未知の属性により、食品分野の他にも、乳化剤の代替物として各種分野に広く使用されうるため、産業的に有利である。
なお、本発明の組成物が発揮する未知の属性である、乳化容量の向上作用を応用すれば、本発明の一側面として、不溶性食物繊維を含む組成物の乳化容量を向上させる方法も抽出される。斯かる乳化容量向上方法は、不溶性食物繊維を含む任意の組成物を粉砕処理することにより、前述の本発明の組成物に転換することを含む。斯かる乳化容量向上方法において、不溶性食物繊維を含む組成物は、前述の本発明の組成物を製造する方法において微細化の対象となる、本発明の組成物の構成要素たる食材及びその他の成分の混合物に相当する。その他の詳細については、本発明の組成物及びその製法について先に詳述したとおりである。
なお、本発明の組成物が発揮する未知の属性である、収斂味の改善(低減)作用を応用すれば、本発明の一側面として、不溶性食物繊維を含む組成物の収斂味を改善させる方法も抽出される。斯かる収斂味改善方法は、不溶性食物繊維を含む任意の組成物を粉砕処理することにより、前述の本発明の組成物に転換することを含む。斯かる収斂味改善方法において、不溶性食物繊維を含む組成物は、前述の本発明の組成物を製造する方法において微細化の対象となる、本発明の組成物の構成要素たる食材及びその他の成分の混合物に相当する。その他の詳細については、本発明の組成物及びその製法について先に詳述したとおりである。
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
[組成物試料の調製]
試験例1〜41の組成物試料を以下のとおりに調製した。
果実類の一種であるリンゴ及びアボカド、藻類の一種であるコンブ、種実類の一種であるカシューナッツ、穀物類の一種であるコーン、並びに、野菜類の一種であるビーツ、ニンジン、カボチャ、パプリカ、ブロッコリー、及びトマトの乾燥物を、後出の表3の「前処理」に記載された方法で粉砕し、乾燥粉砕物を得た。また、豆類の一種であるグリーンピース、大豆、及び枝豆(大豆を未熟な状態で鞘ごと収穫したもので、豆が緑色の外観を呈するもの)を、茹でて鞘から出して乾燥したものを可食部として、後出の表3の「前処理」に記載された方法で粉砕し、乾燥粉砕物を得た。各乾燥粉砕物は全て、少なくとも水分活性が0.95以下になるまで乾燥処理した。なお、各食材の可食部として、一般的に飲食に供される部分(非可食部以外の部分)を用いると共に、一部の食材の非可食部として、コーンの芯、パプリカの種又はへた、カボチャの種又はわた、ビーツの皮、ブロッコリーの茎葉、枝豆の鞘、及びトマトのへたを用いた。
これらの乾燥粉砕物を、後出の表に記載された処方に従って、媒体である水及び任意により油脂と共に適宜混合し、卓上攪拌機で外見上略均一になるまでよく攪拌し、ペースト状の粗粉砕組成物を得た。油脂としては、市販のオリーブオイル(飽和脂肪酸14%、不飽和脂肪酸80%)を用いた。
これらの粗粉砕組成物に対して、任意により後出の表3の「前処理」に記載された方法に従って前処理を行った上で、後出の表3の「微細化処理方法」に記載された方法に従って微細化処理を実施した。媒体メディアとして「ビーズ」を用いる場合は、湿式ビーズミル微粉砕機及びφ1mmのビーズを用いて、後出の表に記載された処理条件に基づいて微細化処理を施し、各組成物試料を得た。加圧条件については、湿式ビーズミル微粉砕機の出口の目開き及び送液速度を適宜変更することで、処理中の最大圧力(常圧下での処理の場合、与圧されないため0となる。)を後出の表中に記載された加圧条件となるように調整し、処理終了後まで一定の条件で微細化処理を行なった。
[組成物試料の形態及び物性に関する特徴の解析]
上記手順で得られた試験例1〜41の組成物試料について、その形態及び物性に関する特徴を以下の手順により解析した。
<組成物試料の形態的特徴解析(長径、短径、凹凸度)>
擾乱を加えない状態での(超音波処理前の)各組成物試料中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の形態的特徴解析には、動的画像解析法による粒子分析型であり、且つ、後述する高画素カメラを設置可能な粒子分析計として、株式会社セイシン企業製のPITA−4を使用した。粒子画像の撮影には、有効画素数1920(H)×1080(V)であり、且つ、画素サイズが2.8μm×2.8μm程度よりも詳細な平面画像を撮影可能なカメラとして、DMK33UX290(The Imaging Source社製)を用いた。撮影時の対物レンズとしては倍率4倍のものを用い、フローセルとしては合成石英ガラス製の平面伸張セルを用いた。
各組成物試料中の粒子画像の撮影は、各組成物試料を溶媒で1000倍に希釈し、適切な流量でフローセル内に流しながら行った。粒子画像の撮影に際しては、焦点が適切に設定され、試料中の粒子形状が明瞭に確認できると共に、背景とのコントラストが適切に設定され、試料中の粒子が明確に判別できるように、粒子画像解析装置の条件を設定した。粒子画像取得時の解析条件の設定例としては、8Bitグレースケールの撮像カメラを使用し、LED強度100、カメラゲイン100dbとして平面画像を取得したのち、その中に存在する粒子画像の明るさレベルを115、輪郭レベルを160として個々の粒子の画像を10000枚以上撮影し、形態的特徴解析に供した。測定時の溶媒及びキャリア液としては蒸留水を用いた。なお、超音波処理前の全ての組成物試料1cm3中から、粒子径2.3μm〜1600μmの粒子が少なくとも10000個以上確認された。
超音波処理前の各組成物試料について撮影された1920画素×1080画素の粒子画像(画素サイズ2.8μm×2.8μm)10000枚中、最低画素数15画素以上の粒子について、前述の手法により「長径」及び「短径」並びに「凹凸度」を計測し、前述の数値N(I)〜N(III)を算出した。数値N(III)の算出に当たっては、後述の超音波処理後の単位体積当り比表面積も用いた。
<粒子径分布(モード径、最大径、d50、単位体積当り比表面積)>
レーザー回折式粒度分布測定装置として、マイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EX2システムを用い、各組成物試料の粒子径分布を測定した。測定時の溶媒としては蒸留水を使用し、測定アプリケーションソフトウェアとしてはDMSII(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いた。測定に際しては、測定アプリケーションソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングで適正濃度範囲に入るまでサンプルを直接投入した。
擾乱を加えない試料、即ち超音波処理前の試料の測定に当たっては、試料投入後にサンプルローディング2回以内に試料濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折測定を行い、得られた結果を測定値とした。一方、擾乱を加えた試料、即ち超音波処理後の試料の測定に当たっては、試料投入後にサンプルローディングにて試料濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して周波数40kHzの超音波を出力40Wにて、3分間印加した。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、試料濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折測定を行い、得られた結果を測定値とした。測定条件としては、分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.333、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmという条件を用いた。
試料のチャンネル毎の粒子径分布を測定する際は、以下の表2に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて測定した。各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を各チャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めた。具体的には以下132チャンネルのそれぞれにおける粒子頻度%を測定した。測定して得られた結果について、粒子頻度%がもっとも大きいチャンネルの粒子径をモード粒子径とした。全く同じ粒子頻度%のチャンネルが複数存在する場合には、その中で最も粒子径の小さいチャンネルの粒子径をモード粒子径として採用した。また、粒子頻度が認められたチャンネルのうち、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径を最大粒子径として採用した。
<乳化容量>
各組成物試料を20℃に調整し、100rpm程度で攪拌しながら、サラダ油を徐々に注加し、組成物の表面に油滴が浮遊し始めた時点で注加を停止し、組成物試料に対する油の全注加量の質量割合(%)を測定した。
[組成物試料の官能評価]
上記手順で得られた試験例1〜41の組成物試料について、以下の手順によりその官能評価を実施した。
<乾燥抑制、離油抑制、及び油脂含有料理の食味>
油脂含有料理として鶏のから揚げ(脂質8%)を用いた。当該料理をレンジアップした後、その上面に各組成物試料を大さじ1杯戴置し、冷蔵庫(4℃)で一晩(概ね16時間)静置した。その後、訓練された官能検査員のべ10名が料理を試食して、喫食時の食味について品質を評価した。
具体的に、「乾燥抑制」については、5:しっとりしておいしい、4:ややしっとりしてややおいしい、3:ややパサパサしているが許容範囲、2:ややパサパサしておいしくない、1:パサパサしておいしくない、の5段階で、喫食時における料理の乾燥度合について評価した。
また、「離油抑制」については、5:離油が少ない、4:離油がやや少ない、3:離油はあるが許容範囲、2:離油がやや多い、1:離油が多い、の5段階で、喫食時における料理からの離油(食材由来の油脂分浸出)について評価した。
また、「油脂含有料理の食味」については、5:おいしい、4:ややおいしい、3:普通、2:ややおいしくない、1:おいしくない、の5段階で、油脂含有料理(鶏のから揚げ)の食味について評価した。
<収斂味>
訓練された官能検査員のべ10名が、各組成物試料大さじ1杯を試食して、喫食時の「収斂味」について品質を評価した。具体的には、5:収斂味がなくおいしい、4:収斂味が少なく、ややおいしい、3:やや収斂味があるが許容範囲、2:やや収斂味が目立ち、ややおいしくない、1:収斂味が目立ち、おいしくない、の5段階で、喫食時における組成物試料の収斂味を評価した。
<安定性(離水防止)、安定性(乾燥防止)>
各組成物試料を皿に1mmの厚さで薄く伸ばしたものを、訓練された官能検査員のべ10名が目視で観察し、その品質を評価した。
具体的に、「安定性(離水防止)」については、官能検査員が、4℃に一晩(16時間)静置した組成物試料の水分の分離度合を、製造直後の組成物試料と比較して評価した。評点としては、5:ほぼ離水がなく好ましい、4:液滴分離が組成物表面に認められるが、全体として少なくやや好ましい、3:液滴分離が組成物表面に認められるが、許容範囲、2:液滴分離が組成物表面に認められ、その数がやや多くやや好ましくない、1:液滴分離が組成物表面に認められ、その数が目立ち好ましくない、の5段階で評価した。
また、「安定性(乾燥防止)」については、官能検査員が、4℃に一晩(16時間)静置した組成物試料の乾燥度合を、製造直後の組成物試料と比較して評価した。評点としては、5:組成物の乾燥が少なく好ましい、4:組成物の乾燥がやや少なくやや好ましい、3:組成物の乾燥はあるが許容範囲、2:組成物の乾燥がやや目立ち、やや好ましくない、1:組成物の乾燥が目立ち好ましくない、の5段階で評価した。
<官能評価の実施手順>
前記の各官能試験のうち、味覚に関する評価項目である「乾燥抑制」、「離油抑制」、「油脂含有料理の食味」、及び「収斂味」については、官能検査員に対して下記A)〜C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や外観といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
また、前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、のべ10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、のべ10名のスコアの算術平均値から算出し、更にパネラー間のばらつきを評価するために標準偏差を算出した。
[組成物試料の解析・評価結果]
試験例1〜41の組成物試料の解析及び評価結果を以下の表3に示す。