JP6581533B2 - リチウムイオン電池用セパレータ - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン電池用セパレータに関する。
従来、リチウムイオン電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と略記する場合がある)としては、貫通した微細孔を有するポリオレフィン多孔フィルムが用いられてきた。ポリオレフィン多孔フィルムのセパレータは、リチウムイオン電池(以下、「電池」と略記する場合がある)が異常を起こして発熱した場合に、貫通した微細孔が溶融して閉塞し、電池の内部抵抗を高めることで、電池の温度上昇が抑制される。しかし、外熱による温度上昇や、温度上昇により電池内部で化学反応が起きた場合には多孔フィルムが収縮して内部短絡が起こり、発火・破裂等の重大な事象に至ることがある。
このような課題に対し、ポリオレフィン多孔フィルムの片面又は両面に無機粒子が担持されてなるセパレータが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、塗工により無機粒子を含有する無機粒子層が設けられて、ポリオレフィン多孔フィルム上に無機粒子が担持された場合、無機粒子層に含まれるバインダによりポリオレフィン多孔フィルムの微細孔が閉塞し、内部抵抗が上昇する課題があるため、厚い無機粒子層は設けられず、ポリオレフィン多孔フィルムの収縮抑制には不十分であった。
このような課題に対し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の耐熱性の高い繊維を含む不織布に無機粒子を担持してなるセパレータが提案されている(例えば特許文献2〜5参照)。多孔フィルムに比べ、孔径の大きな不織布では、無機粒子を担持させたことによる内部抵抗上昇は抑制されるが、リチウムイオン電池の用途拡大、高容量化、高出力化に伴い、内部抵抗を悪化させることなく、良好なハイレート特性を有した上で、耐熱性の更なる向上が望まれている。
特許第3423338号公報 特開2007−294437号公報 特表2011−505663号公報 特表2005−536658号公報 国際公開第2013/176276号パンフレット
本発明の課題は、リチウムイオン電池用セパレータに関し、セパレータの耐熱性が高く、該セパレータを用いたリチウムイオン電池の安全性が高く、且つリチウムイオン電池のハイレート特性が良好になるセパレータを提供することである。
本発明者らは鋭意研究した結果、課題を解決できるリチウムイオン電池用セパレータを発明するに至った。即ち、不織布基材に無機粒子が担持されてなるリチウムイオン電池用セパレータにおいて、該リチウムイオン電池用セパレータの無機分比率が35%以上であり、且つリチウムイオン電池用セパレータのガーレー透気度が2〜25sec/100mlであることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータである。
本発明によれば、特に耐熱性に優れるリチウムイオン電池用セパレータが得られ、該リチウムイオン電池用セパレータを用いた電池の安全性が高く、且つリチウムイオン電池のハイレート特性が良好になるという効果が得られる。
本発明のリチウムイオン電池用セパレータは、不織布基材に無機粒子が担持されてなり、該セパレータの無機分比率が35%以上であり、且つ該セパレータのガーレー透気度が2〜25sec/100mlであることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池用セパレータの無機分比率は35%以上である。無機分比率が35%以上であるということは、全セパレータ質量の35%以上を無機粒子が占めるということであり、高い耐熱性が得られ、このセパレータを用いた電池は、安全性が高くなるという効果を達成することができる。セパレータの耐熱性をさらに高めるために、無機分比率は、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは45%以上である。また、無機分比率は75%以下であることが、塗工により無機粒子を担持させる際、安定塗工が容易であり、均一な無機粒子層を設けやすいため好ましい。
本発明において、無機分比率とは、セパレータに担持した無機粒子の単位当たり質量をセパレータの単位当たり質量で除して、百分率として表された値である。
本発明において、リチウムイオン電池用セパレータのガーレー透気度は2〜25sec/100mlである。セパレータのガーレー透気度を25sec/100ml以下とすることで、セパレータ内部に十分な空隙が確保され、イオン通過性が良好なセパレータが得られ、このセパレータを用いた電池は、ハイレート特性が良好になるという効果を達成することができる。また、セパレータのガーレー透気度を2sec/100ml以上とすることで、このセパレータを用いた電池の内部短絡を抑制することができる。セパレータの空隙をさらに高め、電池のハイレート特性をさらに良好にするために、より好ましくいガーレー透気度は2〜20sec/100mlである。
本発明において、ガーレー透気度はJIS P8117:2009に規定されたガーレー試験機法に基づく透気度である。
セパレータのガーレー通気度を2〜25sec/100mlに調整する方法は任意により選択されるが、例えば以下のような方法が上げられる。
(1)不織布基材に含まれる繊維を調整する方法
この方法では、繊維径の選択により、不織布基材の空隙率を調整することができ、結果的にセパレータの空隙率を調整してガーレー透気度を調整できる。繊維径を太くすれば、ガーレー透気度の値を小さく、すなわち高透気性にすることができ、繊維径を細くすれば、ガーレー透気度の値を大きく、すなわち低透気性にすることができる。
(2)無機粒子の粒子径及び粒子構造を調整する方法
この方法では、無機粒子の粒子径を大きくすれば、セパレータのガーレー透気度の値を小さく、すなわち高透気性にすることが可能であり、無機粒子の粒子径を小さくすれば、セパレータのガーレー透気度の値を大きく、すなわち低透気性にすることが可能である。また、粒子の一次構造、二次構造によってもセパレータのガーレー透気度の調整が可能である。なお、ここでいう粒子径とは、レーザー回折散乱法により測定される平均粒子径(D50)を指す。
(3)無機粒子層のバインダ量を調整する方法
バインダ量を増やすことで、無機粒子層の一部が皮膜化し、無機粒子層の透気性が低くなる。バインダ量を減らせば、皮膜部分が減ることで、無機粒子層の透気性が高くなる。
(4)不織布基材又はセパレータにカレンダー処理する方法
カレンダー処理により、不織布基材又はセパレータの密度を調整することで、セパレータのガーレー透気度を調整することが可能である。
これらの方法を適宜組み合わせることで、セパレータのガーレー透気度を2〜25sec/100mlに調整することが可能となる。
本発明において、不織布基材に含まれる繊維の構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びそれらの誘導体、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどのポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、脂肪族ポリケトン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(パラ−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルなどの樹脂;セルロースなどが挙げられる。該不織布基材はこれらの構成材料の2種以上を併用していても構わない。耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
本発明において、不織布基材としては、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法、乾式法、湿式法、エレクトロスピニング法などの方法によって製造した不織布基材を使用することができる。
本発明において、不織布基材の目付は、好ましくは4〜30g/mであり、より好ましくは5〜20g/mである。目付が4g/m以上であることで、不織布基材としての均一性を得やすくなり、また、30g/m以下であることで、リチウムイオン電池用セパレータに適した厚みとなる。なお、目付はJIS P 8124に規定された方法に基づく坪量を意味する。
本発明に用いることができる無機粒子としては、カオリン、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。これらを単独で用いても、2種以上併用して用いてもよい。なかでも熱安定性の点から、αアルミナ、ベーマイト又は水酸化マグネシウムが好ましく用いられる。
本発明において、無機粒子が不織布基材に担持される際に、バインダを使用してもよい。バインダとしては、ラテックス高分子が好ましく用いられる。具体例としては、例えばスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン等のラテックス高分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においてはセパレータのハイレート特性の及び無機粒子層強度の点から、無機粒子層中のバインダ量は、固形分中2〜15質量%とするのが好ましい。
本発明においては、発明の効果を損ねない範囲で、無機粒子が不織布基材に担持される際に、分散剤、濡れ剤、増粘剤等の各種添加剤を用いることができる。
本発明において、無機粒子が不織布基材に担持される方法に特に制限はなく、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、含浸コーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、スプレーコーター等により、無機粒子を含む塗液を塗工し、乾燥することにより、担持させることができる。
本発明において、無機粒子を含有する無機粒子層の塗工量(絶乾塗工量)としては、5〜30g/mが好ましく、さらに好ましくは10〜20g/mである。塗工量が5g/m以上であることで、不織布表面を十分に被覆しやすくなり、微小短絡を防止しやすくなる。また、塗工量が30g/m以下であることで、セパレータの厚み上昇を抑えやすくなる。
本発明のリチウムイオン電池用セパレータにおいて、セパレータの坪量は10〜50g/mが好ましく、より好ましくは、17〜40g/mである。また、セパレータの厚みは10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜40μmである。セパレータの密度としては0.4〜1.2g/cmが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0g/cmである。なお、坪量はJIS P 8124に規定された方法に基づく坪量を意味する。また、密度は坪量を厚みで除した値である。厚みはJIS B 7502に規定された方法に基づき、外側マイクロメーターにより測定された値を意味する。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、%及び部は、特にことわりのない限り、すべて質量基準である。また塗工量は絶乾塗工量である。
不織布基材Aの作製
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維45部と繊度0.1dtex(平均繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維15部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダ用PET系短繊維(軟化点120℃、融点230℃)40部とを一緒に混合し、パルパーにより水中で離解させ、アジテーターによる攪拌のもと、濃度1%の均一な抄造用スラリーを調製した。傾斜型抄紙機を用い、この抄造用スラリーを湿式法で抄き上げ、130℃のシリンダードライヤーによって、バインダ用PET系短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付12g/mの不織布とした。さらに、この不織布を誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度40m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚み18μmの不織布基材を作製した。
不織布基材Bの作製
繊度0.06dtex(平均繊維径2.4μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET系短繊維の代わりに、繊度0.6dtex(平均繊維径8μm)、繊維長5mmの配向結晶化PET系短繊維を用いた以外は、不織布基材Aと同様にして、厚み22μmの不織布基材Bを作製した。
塗液Aの作製
無機粒子として、粒子径0.7μmの一次粒子が凝集してなる平均粒子径2.3μmのベーマイトの二次粒子100部を、その1質量%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.3%水溶液120部に分散し、よく攪拌してベーマイト分散液を作製した。次いで、その1質量%水溶液の25℃における粘度が7000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.5%水溶液300部を混合、攪拌し、さらに、バインダとして45%スチレン/ブタジエン共重合体のラテックス高分子15部を混合、攪拌して、塗液を作製した。
塗液Bの作製
45%スチレン/ブタジエン共重合体のラテックス高分子の部数を30部とした以外は塗液Aと同様にして、塗液Bを作製した。
塗液Cの作製
無機粒子として、粒子径0.7μmの一次粒子が凝集してなる平均粒子径2.3μmのベーマイトの二次粒子の代わりに、粒子径1.0μmの一次粒子が凝集してなる平均粒子径4.8μmのベーマイトの二次粒子を用いた以外は塗液Aと同様にして、塗液Cを作製した。
実施例1
不織布基材A上に、塗液Aを絶乾塗工量が18g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータAを作製した。
実施例2
不織布基材A上に、塗液Aを絶乾塗工量が12g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータBを作製した。
実施例3
不織布基材A上に、塗液Aを絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータCを作製した。
実施例4
不織布基材A上に、塗液Aを絶乾塗工量が8g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータDを作製した。
比較例1
不織布基材A上に、塗液Bを絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータEを作製した。
比較例2
不織布基材A上に、塗液Aを絶乾塗工量が3.5g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータFを作製した。
比較例3
不織布基材B上に、塗液Cを絶乾塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥してセパレータGを作製した。
<評価>
[耐熱性]
作製した各セパレータから50mm×50mmのシートサンプルを切り出し、シートサンプルのCD(クロスディレクション、横方向)辺をクリップで固定して耐熱ガラス板に挟んで、150℃及び180℃の恒温槽中に1時間保持した後に取り出してサンプルの幅を測定し、加熱前後での収縮率を算出した。評価は以下に従った。
◎:収縮率が2%未満でほとんど収縮は見られない。
○:収縮率が2〜5%で実用上問題ないレベルである。
△:収縮率が5〜8%で局所過熱による収縮がやや懸念される。
×:収縮率が8%以上で局所過熱時収縮が懸念される。
[初回充放電時のクーロン効率]
各セパレータを用い、正極活物質がマンガン酸リチウム、負極活物質が人造黒鉛、電解液がリチウムヘキサフルオロフォスフェートのエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの1/1/1(容量比)混合溶媒溶液(1mol/L)である設計容量が100mAhのラミネート型リチウムイオン電池を作製した。
その後、作製した各電池について、50mA定電流充電→4.2V定電圧充電→充電電流10mAになったら50mAで2.8Vまで定電流放電を行い、充電容量及び放電容量を測定し、(クーロン効率)=(放電容量)/(充電容量)を算出した。クーロン効率が小さいものは微小短絡が発生していると考えられる。
◎:クーロン効率が0.90以上。
○:クーロン効率が0.80以上0.90未満。
△:クーロン効率が0.70以上0.80未満。
×:クーロン効率が0.70未満。
[電池のハイレート特性]
上記クーロン効率試験後の各電池について、100mA定電流充電→4.2V定電圧充電→充電電流10mAになったら100mAで2.8Vまで定電流放電→100mA定電流充電→4.2V定電圧充電→充電電流10mAになったら300mAで2.8Vまで定電流放電を行い、[(300mAにおける放電容量)/(100mAにおける放電容量)]×100(%)として放電容量比を求めハイレート特性とした。放電容量比が高い方が、ハイレート特性が良好な電池である。
◎:放電容量比が80%以上。
○:放電容量比が70%以上80%未満。
△:放電容量比が60%以上70%未満。
×:放電容量比が60%未満。
Figure 0006581533
表1から明らかなように、セパレータの無機分比率が35%以上であり、且つセパレータのガーレー透気度が2〜25sec/100mlである実施例1〜4のセパレータA〜Dは、耐熱性に特に優れ、初回充放電時のクーロン効率及びハイレート特性に優れる。
これに対し、セパレータのガーレー透気度が25sec/100ml超である、比較例1のセパレータEでは、電池のハイレート特性が低くなり、セパレータの無機分比率が35%未満である、比較例2のセパレータFでは、耐熱性及び電池のクーロン効率が低くなった。また、セパレータのガーレー透気度が2sec/100m未満である、比較例3のセパレータGでは、電池のクーロン効率が低くなった。
本発明のリチウムイオン電池用セパレータは、リチウムイオン電池用途以外にも、リチウムイオンポリマー電池、リチウムイオンキャパシター等にも利用でき、さらに、リチウム以外の金属を用いた金属イオン電池、金属イオンポリマー電池、金属イオンキャパシター等にも利用できる。

Claims (1)

  1. 不織布基材に無機粒子が担持されてなるリチウムイオン電池用セパレータにおいて、該リチウムイオン電池用セパレータの無機分比率が35%以上であり、且つリチウムイオン電池用セパレータのガーレー透気度が2〜25sec/100mlであることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータ。
    ただし、上記無機分比率とは、セパレータに担持した無機粒子の単位当たり質量をセパレータの単位当たり質量で除して、百分率として表された値である。
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