JP6581519B2 - 建設機械の周囲障害物検知システム - Google Patents

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Description

本発明は、鉱山用ダンプトラックやホイールローダ、ホイールショベルなどの建設機械に適用可能な周囲障害物検知システムに関する。
建設機械の内、鉱山用ダンプトラックやホイールローダ、ホイールショベルなどの大型作業車両は、車両の大きさから死角が多く、事故発生のポテンシャルが高い。この大型作業車両における事故防止のため、周囲にカメラを装着することで周囲状況を映像で監視する映像周囲監視システムが有効である。
自動車向けには、自車周囲の移動する障害物の検知を行う機能を持たせ、移動障害物の検知時に警報をドライバに通知する周囲障害物警報システムがある。
この自動車向けの障害物警報システムでは、障害物を検知する際に、自車の旋回時や走行時など画像上移動量が大きい場合であっても、高精度且つ安定的なトラッキングができるようにすることを求められている。
特開2011−192226号公報(特許文献1)では、自車の操舵角や速度情報を用いて、画面上の対象物の動きを推定し、トラッキングを行う例が示されている。
特開2011−192226号公報
しかしながら、従来の周囲障害物検知システムでは、以下の課題があった。
(1)オフロード環境下では、車両がスリップするため、自車速度を正確に測定することができず、それにより地面などの静止物体を障害物と誤検知してしまう。
(2)誤報を避けるために、車両のスリップの発生時に合わせて検知感度を低く設定すると、障害物検知の失報が増加する。
(3)地面などの静止物体を障害物と誤報してしまう場合に、その原因がスリップによるものなのか、故障によるものなのかの原因切り分けができず、利便性が悪い。
本発明の目的は、車両にスリップが発生した場合でも、障害物検知の誤報又は失報を抑制できる建設機械の周囲障害物検知システムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の建設機械の周囲障害物検知システムは、
車輪により走行する建設機械の周囲を撮影する複数のカメラと、
前記建設機械の走行速度及び操舵角を取得する車両情報取得部と、
前記建設機械の走行速度及び操舵角から推定した速度ベクトルと前記カメラにより撮影された映像とを用いて前記建設機械の周囲に存在する移動物体を検知する移動物体検知部と、
を備えた建設機械の周囲監視システムにおいて、
前記建設機械の車輪のスリップを検知するスリップ検知部と、前記スリップ検知部によりスリップの発生が検知された場合に前記移動物体検知部の検知感度を低くするように調整する検知感度調整部と、を備える。
本発明によれば、車両にスリップが発生した場合でも、障害物検知の誤報又は失報を抑制できる建設機械向け周囲障害物検知システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の第1実施例における周囲障害物検知システムに関するシステム構成図である。 第1実施例における鉱山ダンプの概要を示す図である。 第1実施例における周囲障害物検知システムの障害物検知処理フローを示す図である。 第1実施例における周囲障害物検知システムによる障害物検知処理フローの変更例を示す図である。 本発明の第2実施例に係る周囲障害物検知システムに関するシステム構成図である。 第2実施例における周囲障害物検知システムの障害物検知処理フローを示す図である。 本発明の実施例に係る鉱山ダンプのスリップ発生の様子を説明する図である。 本発明の実施例に係る検知感度が高い場合の検知対象に対する検知の可否を説明する図である。 本発明の実施例に係る検知感度が低い場合の検知対象に対する検知の可否を説明する図である。 本発明の実施例に係る自車停止時と自車走行時の物体の速度ベクトルを説明する図である。 本発明の実施例に係る背景フローキャンセル処理を説明する図である。 本発明に係る俯瞰表示画面および移動物体検知時のマーカー表示の一実施例を説明する図である。 本発明の実施例に係るスリップ検知時の画面を説明する図である。 第3実施例におけるホイールローダの概要を示す図である。
以下、本発明に係る実施例について説明する。以下の実施例では、車両として、鉱山で使用される鉱山用ダンプトラック(鉱山ダンプという)について説明している。本発明の対象となる車両は、鉱山ダンプに限らず、鉱山やそれ以外の土木現場、産廃現場等で使用されるホイールローダやホイールショベルなどの他の車両であってもよい。鉱山ダンプ及び鉱山で使用される他の車両、さらにそれ以外の現場で使用されるホイールローダやホイールショベルなどを含めて建設機械という。
[第1実施例]
本発明に係る第1実施例は、周囲障害物検知システムにおいて、自車が走行中に自動車や人などの移動障害物を検知するため、自車の速度や操舵などの走行状況に応じて、カメラ映像上の自車の動きを推定し、その動きを相殺(背景フローキャンセル)することで、地面や建物などの静止物体を移動障害物と検知しないようにする。すなわち、静止物体を検知対象から除外する。この処理において、鉱山ダンプが運行されるような路面が滑りやすいオフロード環境では、鉱山ダンプがスリップを生じやすい。鉱山ダンプがスリップした場合、速度情報を正確に計測できず、誤った背景フローキャンセル量を求めてしまうことになる。この場合、地面や建物などの静止物体を移動障害物と誤って検知してしまうことになる。本実施例では、鉱山ダンプがスリップした場合に、静止物体を移動障害物と誤って検知することを抑制する例について説明する。
はじめに、背景フローキャンセル処理の概要について図10及び図11を用いて説明する。図10は、本発明の実施例に係る自車停止時と自車走行時の物体の速度ベクトルを説明する図である。図11は、本発明の実施例に係る背景フローキャンセル処理を説明する図である。
まず、図10を用いて説明する。図10では、自車停止時1150と自車走行時1160とについて、移動物体と静止物体との映像上での移動量を説明している。自車が停止している場合1150のカメラ映像1155では、鉱山ダンプの周囲を移動する自動車や作業者などの移動物体1105は、その移動速度に応じた速度ベクトル1120が発生し、建物や地面などの静止物体1110は、静止しているために速度ベクトルが発生しない。一方、自車が走行している場合1160のカメラ映像1165では、移動物体1105は、移動物体1105の移動速度に鉱山ダンプの走行速度を加味した速度ベクトル1125が発生し、静止物体1110は鉱山ダンプの走行速度に応じた速度ベクトル1130が発生する。このため、自車走行時は、見かけ上、対地速度が発生し、地面や建物などの静止物体が移動物体として誤検知されてしまう。
そのため、背景フローキャンセル処理では、図11に示すように、自車走行時の移動物体1105の移動ベクトル1125に対して、鉱山ダンプの走行速度に応じた自車の移動ベクトル1210を差し引くことで、移動物体1105の速度ベクトル1220(対地速度)を求める。これにより、移動物体1105の対地速度は正しく求められ、自車移動による誤報を抑制することができる。静止物体1110に対しても同様に背景フローキャンセル処理を行うことで、対地速度は正しく求められ、自車移動による誤報を抑制することができる。
本実施例のシステム構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施例における周囲障害物検知システムに関するシステム構成図である。
本実施例の周囲障害物検知システムは、鉱山ダンプ200の前方を撮影する前方カメラ205と、鉱山ダンプの後方を撮影する後方カメラ210と、鉱山ダンプの左側を撮影する左カメラ215と、鉱山ダンプの右側を撮影する右カメラ220と、周囲障害物検知端末100とから構成される。このために、前方カメラ205は鉱山ダンプの車体の前部に配置され、後方カメラ210は車体の後部に配置され、左カメラ215は車体の左側面に配置されている。図1では、右カメラ220は鉱山ダンプの車体の陰に隠れて見えないため、車体から離れた位置に記載しているが、鉱山ダンプの車体の右側面に配置されている。
周囲障害物検知端末100は、周囲映像取得部110と、合成映像構築部105と、移動物体検知部130と、車両情報ネットワーク160と、車両情報取得部115と、スリップ検知部120と、検知感度切替部125と、入力部145と、表示部135と、報知部140と、スリップ発生報知部410とから構成される。
周囲映像取得部110は、前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215、右カメラ220から周囲映像を取得する。
合成映像構築部105は、周囲映像取得部110で取得した映像を鉱山ダンプを真上から見たような俯瞰映像に合成したり、俯瞰映像上に周囲移動物体の検知位置を重畳表示したりする。
移動物体検知部130は、周囲映像取得部110で取得した映像から、映像内の物体を動き量を算出し、周囲の移動物体を検知する検知する。
車両情報ネットワーク160は、鉱山ダンプ200における車両の走行速度や操舵角やエンジン稼動状況など、鉱山ダンプの車両情報が流れているネットワークである。車両情報ネットワーク160は、鉱山ダンプに設けられたものを周囲障害物検知端末100の一部としてそのまま利用することができる。
車両情報取得部115は、車両情報ネットワーク160からの走行速度や操舵角やエンジン稼動状況などの情報を取得する。
スリップ検知部120は、車両情報取得部115で取得した走行速度により、自車のスリップを検知する。
検知感度切替部125は、スリップ検知部120によりスリップが検知された場合に、移動物体検知部130における移動検知感度を切り替える。具体的には、検知感度切替部125はスリップが検知された場合に移動検知感度を抑制する。
入力部145は、鉱山ダンプのオペレータからの停止要求などを受け付ける。
表示部135は、合成映像構築部105で構築された映像を画面に表示する。
報知部140は、移動物体検知部130により移動物体が検知された場合に、検知された状況をオペレータに警報音や音声などで報知する。
スリップ発生報知部410は、スリップが発生したことを表示部135において画面に表示する。
図2を用いて鉱山ダンプの概要について説明する。図2は、第1実施例における鉱山ダンプの概要を示す図である。
鉱山ダンプ200には、鉱山ダンプの操作や動作状態を確認できるコックピット250内に周囲障害物検知端末100と、鉱山ダンプ200の前方、後方、左側及び右側にそれぞれ前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220とが装備されている。前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220は、周囲障害物検知端末100に接続されている。また、鉱山ダンプ200の各所にある走行速度、操舵角、エンジン始動状態、エンジン油温、荷台の角度、自車重量などの車両情報を計測するセンサは、車両情報ネットワーク160に接続されており、車両情報ネットワーク160を介することで鉱山ダンプ200内の様々な車両情報を取得することができる。この車両情報ネットワークは、例えば、自動車で一般的に使われるCAN(Control Area Network)などが用いられる。
図3を用いて、障害物検知処理フローについて説明する。図3は、第1実施例における周囲障害物検知システムの障害物検知処理フローを示す図である。
はじめにステップ300では、周囲障害物検知端末100、前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220などの起動状態を確認する初期設定処理を行う。
ステップ305では、周囲映像取得部110において、前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220からの映像を取得する。
ステップ310では、合成映像構築部105において、周囲映像取得部110で取得した前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220の映像を鉱山ダンプ200の上方から見た視点に変換し、それらを繋ぎ合わせることで俯瞰映像を生成する。
図12を用いて、本実施例の俯瞰映像について説明する。図12は、本発明に係る俯瞰表示画面および移動物体検知時のマーカー表示の一実施例を説明する図である。
図12における画面1300では、前方カメラ205と、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220の映像を鉱山ダンプ200の上方から見た視点に変換し、それら繋ぎ合わせた映像と、その映像の中心に鉱山ダンプの位置を示す鉱山ダンプアイコン1330を重畳した俯瞰映像を表示している。
ステップ315では、車両情報取得部115において、車両情報ネットワーク160を介して、鉱山ダンプ200の前輪車速と後輪車速と操舵角とを取得する。前輪車速は、前輪の単位時間当たりの回転数(回転速度)を車両(鉱山ダンプ200)の速度に換算した値である。後輪車速は、後輪の単位時間当たりの回転数(回転速度)を車両(鉱山ダンプ200)の速度に換算した値である。
ステップ317では、スリップ検知部120において、鉱山ダンプのスリップの有無を検知する。
鉱山ダンプのスリップ検知について図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施例に係る鉱山ダンプのスリップ発生の様子を説明する図である。
鉱山ダンプ200は、走行するための車輪(タイヤ)を備える。車輪は駆動輪と従動輪とで構成される。駆動輪は、内燃機関や電動機などの原動機が発生した力により駆動される車輪であり、鉱山ダンプ200が走行する駆動力を発生する車輪である。従動輪は、駆動輪が発生する駆動力で鉱山ダンプ200が走行することにより転動する車輪である。駆動輪は動輪、従動輪は従輪又は非駆動輪と呼ばれる場合もある。
鉱山ダンプ200は、一般に後輪815がエンジンやモーターからの駆動力を与える駆動輪となっており、前輪810は駆動力がない従動輪となっている。駆動輪である後輪は、オフロードなど地面との摩擦が小さい路面ではスリップが発生しやすい。一方、従動輪である前輪は、スリップ量はゼロではないが後輪よりも比較的スリップが発生しにくい。そこで、前輪車速と後輪車速との差が発生している場合に、スリップ発生と判断することができる。例えば、図7のように、前輪速度が20km/hで、後輪車速も20km/hである場合には、スリップ無と判断でき、前輪速度が20km/hで、後輪車速が30km/hである場合には、スリップ有と判断できる。
また、鉱山ダンプ200が後輪815をモーター駆動するタイプの場合、トルクを細やかに制御するために、モーター回転数を高い速度分解能で測定することができる。従って、後輪の方が前輪よりも速度分解能が高い。そのため背景フローキャンセルでは、高い精度で自車の挙動を推定できるように、後輪車速を使用するとよい。
ステップ320では、ステップ317におけるスリップの検知結果に基づいて、スリップの有無を判定する。スリップ無と判定された場合にはステップ325に進み、スリップ有と判定された場合にはステップ330に進む。
ステップ325では、移動物体検知における検知感度を高く設定する。一方、ステップ330では、移動物体検知における検知感度を低く設定する。
ここで、移動物体検知における検知感度について、図8と図9を用いて説明する。図8は、本発明の実施例に係る検知感度が高い場合の検知対象に対する検知の可否を説明する図である。図9は、本発明の実施例に係る検知感度が低い場合の検知対象に対する検知の可否を説明する図である。
背景キャンセルフローを用いて、映像から求めたオプティカルフロー、すなわち車両や人物等の周囲にある物体の速度ベクトルから、車両の車速情報から推定した鉱山ダンプの速度ベクトルにより生ずる映像上の見かけ上の速度ベクトルを差し引くことで物体の対地速度ベクトルを推定する。このため、車速情報の誤差は、車両、人物など周囲にある物体の速度ベクトルの推定量にも影響し、静止している車両や人物も移動物体として誤検知する可能性がある。ここで車速情報としては前輪速度および後輪速度、さらに車速情報の誤差は前後輪の速度差を含む。
検知感度とは移動物体か静止物体かを判定する基準であり、本実施例では基準以上の速度を有する物体を移動物体と検知する。例えば図8のように検知感度を0.5km/hと高く設定した場合は、検知対象900が移動速度3km/h(910)の場合(920)、及び検知対象900が移動速度1km/h(915)の場合(925)の両方とも、検知対象900を移動物体として検知する。
一方、図9のように検知感度を2km/hと低く設定した場合、検知対象900が移動速度3km/h(910)の場合は移動物体として検知し(1020)、検知対象900が移動速度1km/h(915)の場合は移動物体として検知しない(1025)。
このように、背景フローキャンセル処理時に、スリップによる自車の前後輪の速度差により生ずる周囲にある物体の速度の誤差分を、検知感度を低くすることにより移動物体として検知しないことで、周囲の移動物体や静止物体の誤報を抑制することができる。
ステップ335では、移動物体検知部130において、周囲映像取得部110で取得した前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220で撮影した映像データから、オプティカルフローなどを利用して、移動している物体の移動ベクトルを計算する。
このオプティカルフローは、連続する映像のフレームを用いて映像内の動きベクトルを計算する手法であり、本実施例では、この映像内の動きベクトルの中から、障害物らしい大きさや速度を持つ対象を抽出し、それを移動障害物として検知する。
ステップ340では、移動物体検知部130において、車両情報取得部115で取得した車両の走行速度や操舵角を用いて、映像上の自車の動きベクトル(速度ベクトル)を推定する。一般に、車速と操舵角がわかれば車両挙動モデル(アッカーマンステアリングモデル)などを用いて自車の動きを推定することができる。この車両挙動を映像上の動きに変換することで、映像上の自車の動きベクトルを推定し、背景フローキャンセル量を算出することができる。
ステップ345では、移動物体検知部130において、ステップ325あるいはステップ330で設定された検知感度と、ステップ335で計算した物体の移動ベクトルと、ステップ340で推定した映像上の自車の動きベクトルから移動物体を検知する。すなわち、移動物体検知部130は、前方カメラ205、後方カメラ210、左カメラ215及び右カメラ220で撮影した映像から、推定した自車の動きを相殺することで、自車の周囲の静止物体を検知対象から除外し、自車の周囲に存在する移動物体を検知する。
ステップ350では、表示部135において、ステップ345で検知した移動物体の検知結果をモニタに重畳表示する。図12における俯瞰表示画面1300上では、移動物体1305に対して、ステップ345で検知した移動物体の位置を表示する検知マーカー1315を重畳表示する。また、別の移動物体1310に対しても同様に、ステップ345で検知した移動物体の位置を表示する検知マーカー1320を重畳表示する。
俯瞰表示画面1300上には、自車を示す鉱山ダンプアイコン1330や移動物体1305,1310のほか、背景となる静止物体も表示される。移動物体1305,1310に検知マーカー1315,1320を重畳表示することにより、移動物体1305,1310を静止物体と区別して素早く認識することができる。
こうすることで、鉱山ダンプ200の位置を示す鉱山ダンプアイコン1330と、移動物体の位置を示す検知マーカー1315あるいは検知マーカー1325から、鉱山ダンプ200に対する移動物体1305,1310の接近度合いを、直感的に把握することができる。
ステップ355では、報知部140において、ステップ345で移動物体を検知した場合や、あるいは、ステップ345の検知結果において、自車からの距離が一定距離以内になった場合に、周囲に移動障害物があることを報知するため、警報音や音声などで発報する。
ステップ360では、オペレータによる入力部140を介した終了命令があったり、車両情報取得部115を介して取得した鉱山ダンプ200のエンジン停止情報があった場合には、ステップ365に進み、そうでない場合にはステップ305に戻る。
ステップ365では終了処理を行い、この終了処理により一連の処理を終了する。
図3の障害物検知処理フローでは、自車がスリップした場合、スリップ状態を検知し移動物体の検知感度を低く設定することで、地面や建物などの静止物体を移動障害物と誤って検知してしまうことを抑制することができる。例えば後輪速度を自車速度として背景フローキャンセルに用いており、スリップした場合の検知感度を0.5km/hから6km/hであると仮定する。前輪速度が20km/h(実際の対地速度)、後輪速度が25km/hとなってこれら速度差からスリップであるとスリップ検知部120が検知したとする。検知感度切替部125による検知感度切替がなかったとすると、オプティカルフローで求められる速度が20km/h、自車速度が25km/hであるから、これらを差し引いた背景キャンセルフローから周囲の静止物体は5km/hの移動物体と移動物体検知部130は見做してしまう。検知感度切替部125を備える事で検知感度を6km/hと低く切替え、移動物体検知部130は6km/h未満を移動物体と見做すことはなく、静止物体として除外することができる。これにより、誤報を少なくして移動物体の警報を行うことができる。
なお、図3の障害物検知処理フローでは、図1に示すスリップ発生報知部410を使用していない。スリップ発生報知部410を使用し、障害物検知処理フローを図4に示すように実施してもよい。図4の障害物検知処理フローでは、自車のスリップを検知した場合に、スリップが発生していることを鉱山ダンプのオペレータに報知することで、誤報の理由を明確にし、周囲障害物検知システムの使い勝手を良くすることができる。
図4は、第1実施例における周囲障害物検知システムによる障害物検知処理フローの変更例を示す図である。
図4の障害物検知処理フローでは、図3の障害物検知処理フローから、スリップ状況に応じた検知感度の設定に関わる処理であるステップ317からステップ330を削除し、その代わりに、ステップ350からステップ360までの間に、スリップ発生の報知に関わる処理を追加している。それ以外は図3の障害物検知処理フローと同じである。また、ステップ510のスリップ検知はステップ317のスリップ検知と同様に実施することができる。
図4の障害物検知処理フローのステップ350において、移動物体をモニタに重畳表示した後、ステップ510では、図3のステップ317と同様に、スリップ検知部120において、鉱山ダンプ200のスリップの有無を検知する。さらにステップ511で、スリップ無と判断された場合にはステップ355に進み、スリップ有と判断された場合にはステップ515に進む。
ステップ355では、図3の障害物検知処理フローと同様に、報知部140において、ステップ345で移動物体を検知した場合や、あるいは、ステップ345の検知結果において、自車からの距離が一定距離以内になった場合に、周囲に移動障害物があることを報知するため、警報音や音声などで発報する。
ステップ515では、スリップ発生報知部410において、スリップが発生したことを表示部135において画面に表示する。
この表示について、図13を用いて説明する。図13は、本発明の実施例に係るスリップ検知時の画面を説明する図である。
スリップ発生報知部410は、スリップ有と判断された場合に、図13に示すようにスリップが発生していることを示す“スリップ発生中”アイコン1410を画面中央に重畳し、この画面を表示部135において表示する。
このように図4の障害物検知処理フローでは、自車がスリップした場合、スリップ状態を検知し、スリップしたことをオペレータに報知することで、地面や建物などの静止物体を移動障害物と誤って検知していることを知らせることができる。これにより、オペレータは誤報の理由を明確に把握でき、周囲障害物検知システムの使い勝手を良くすることができる。
図3の障害物検知処理フローと図4の障害物検知処理フローとを融合し、検知感度の変更(ステップ325,330)と、移動物体を検知したことの報知(ステップ355)及びスリップしたことのオペレータへの報知(ステップ515)とを併せ実行するようにしてもよい。
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について説明する。本実施例は、自車のスリップを検知した場合に、スリップ率を計算し、そのスリップ率に応じて検知感度を設定することで、地面や建物などの静止物体を移動障害物と誤って検知してしまうことを抑制する例である。
第1実施例の場合には、スリップ検知により検知感度を高くあるいは低く設定していたが、本実施例では、スリップ率に応じて段階的に検知感度を設定する。例えば、スリップ率が小さい場合には検知感度を比較的高めに設定し、スリップ率が大きい場合には検知感度を比較的低めに設定し、スリップ率がその中間である場合には、検知感度もその中間程度に設定する。これにより、スリップ発生時に抑制される感度をできるだけ低くしないようにし、第1実施例よりも失報を抑制することができる。
図5を用いて、第2実施例のシステム構成について説明する。図5は、本発明の第2実施例に係る周囲障害物検知システムに関するシステム構成図である。
本実施例の周囲障害物検知システムは、第1実施例のシステム構成に対して、スリップ検知部120の代わりに、スリップ率測定部610を設け、検知感度切替部125の代わりに検知感度調整部620を設けている。それ以外は第1実施例の周囲障害物検知システムと同じ構成である。
このスリップ率測定部610はスリップの発生度合いを計算し、検知感度調整部620は、スリップ率測定部610により計算したスリップ率に基づき検知感度を設定する。
図6を用いて、本実施例における周囲障害物検知システムの障害物検知処理フローについて説明する。図6は、第2実施例における周囲障害物検知システムの障害物検知処理フローを示す図である。
本実施例における障害物検知処理フローでは、第1実施例の障害物検知処理フローから、スリップ状況に応じた検知感度の設定に関わる処理であるステップ317からステップ330を削除し、その代わりに、スリップ率の計算(ステップ710)と、スリップ率に基づく検知感度を設定する処理(ステップ715)に置換えている。それ以外は第1実施例の障害物検知処理フローと同じである。
ステップ315において、車両情報ネットワーク160を介して、鉱山ダンプ200の前輪車速と後輪車速と操舵角とを取得した後、ステップ710において、スリップ率計算部610により、鉱山ダンプ200のスリップ率を計算する。ここでは、駆動輪である後輪速度と従動輪である前輪速度の差に対し、駆動輪である後輪速度を除算することでスリップ率を求める。例えば、前輪車速が20km/hで後輪車速が20km/hの場合はスリップ率は(20−20)/20 = 0%(スリップ無)となり、前輪車速が20km/hで後輪車速が30km/hの場合はスリップ率=(30−20)/30=33%となる。
ステップ715では、検知感度調整部620において、スリップ率計算部610で計算したスリップ率に基づき、スリップ率が小さい場合には検知感度を比較的高めに設定し、スリップ率が大きい場合には検知感度を比較的低めに設定し、スリップ率がその中間である場合には、検知感度もその中間程度に設定する。すなわち、検知感度を複数段階に分け、スリップ率が大きいほど検知感度が小さくなるように、スリップ率に応じて検知感度を設定する。
ステップ715の処理後に、ステップ335に進み、移動物体検知部130において、移動している物体の移動ベクトルを計算する。
このように本実施例では、自車がスリップした場合、スリップ率に応じて段階的に検知感度を設することで、スリップ発生時に抑制される感度をできるだけ小さくしないようにすることで、スリップによる誤報を抑えつつ、また失報も抑制することができる。
本実施例の障害物検知処理フローを図4の障害物検知処理フローと融合し、スリップ率に応じて検知感度を段階的に設定すると共に、スリップ率が0%よりも大きくなった場合に、図4のステップ515のように、スリップしたことをオペレータに報知するようにしてもよい。
本実施例のスリップ率測定部610は、スリップを検知していることに変わりはなく、広義にはスリップ検知部である。或いは、第1実施例のスリップ検知部120にスリップ率の測定機能を持たせたものが本実施例のスリップ率測定部610である。また、本実施例の検知感度調整部620は、検知感度を複数段階に切り替えていることに変わりはなく、検知感度切替部である。或いは、第1実施例の検知感度切替部125及び本実施例の検知感度調整部620は、検知感度を調整しており、広義には検知感度調整部と言うことができる。
第1実施例及び第2実施例で説明した周囲障害物検知システムは、CPUを有する処理装置が図3、図4又は図6の障害物検知処理フローを実行することにより、実現される。CPUを有する処理装置は、当業者に知られている種々の形態のものを用いることができる。
[第3実施例]
次に、本発明の第3実施例を図14を用いて説明する。図14は、第3実施例におけるホイールローダの概要を示す図である。第3実施例における、第1実施例及び第2実施例との相違は、周囲障害物検知システムを鉱山ダンプ200の代わりにホイールローダ700に適用した点である。
本実施例のシステム構成は図14に示すように、ホイールローダ700は、車体前部770と車体後部775が連結ピン780で結合されたアーテキュレート構造である。車体前部770には油圧駆動の作業機790と前輪730が装備されており、車体後部775には操作や動作状態を確認できる運転席750と後輪735とが装備されている。運転席750内に周囲障害物検知端末100を装備し、ホイールローダ700の前方、後方、左側及び右側には各側を撮影する前方カメラ705、後方カメラ710、左カメラ715及び右カメラ720を装備している。前方カメラ705、後方カメラ710、左カメラ715及び右カメラ720は周囲障害物検知端末100に接続している。またホイールローダ700の各所にある走行速度、操舵角、エンジン稼働状態、エンジン油温、等の車両情報を計測するセンサは、車両情報ネットワーク760に接続されており、車両情報ネットワーク760を介しホイールローダ700内の様々な車両情報を習得できる。この車両情報ネットワークは、例えばCANなどが用いられる。
このような構成により第1実施例、第2実施例と同様の作用効果が得られる。
以上に説明したように、本発明に係る周囲障害物検知システムの実施例は、以下のように構成される。
(1)建設機械のタイヤのスリップを検知するスリップ検知手段と、スリップ検知手段によりスリップ発生と検知された場合に、移動体検知手段の検知感度を緩和するように切替えする検知感度切替手段とを設けた。
(2)建設機械のタイヤのスリップ率を測定するスリップ率測定手段と、スリップ率測定手段により測定されたスリップ率に基づき、スリップ率が大きいときに検知感度を大きく緩和し、スリップ率が小さい場合には、検知感度を小さく緩和するように感度を調整する検知感度調整手段とを設けた。
(3)建設機械のタイヤのスリップを検知するスリップ検知手段と、スリップ検知手段によりスリップ発生と検知された場合に、スリップ発生を報知するスリップ発生報知手段とを設けた。
これにより本発明の周囲障害物検知システムの実施例は、以下の効果を奏する。
(1)自車がスリップした場合、スリップ状態を検知し移動物体の検知感度を低く設定することで、地面や建物などの静止物体を移動障害物と誤って検知してしまうことを抑制することができる。これにより、誤報の少ない移動物体の警報を行うことができる。
(2)自車がスリップした場合、スリップ率に応じて段階的に検知感度を設定し、スリップ発生時に抑制される感度をできるだけ小さくしないようにすることで、スリップによる誤報を抑えつつ、また失報も抑制することができる。
(3)自車がスリップした場合、スリップ状態を検知しスリップしたことをオペレータに報知することで、地面や建物などの静止物体を移動障害物と誤って検知していることを知らせることができる。これにより、誤報の理由を明確に把握でき周囲障害物検知システムの使い勝手を良くすることができる。
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
100…周囲障害物検知端末、105…合成映像構築部、110…周囲映像取得部、115…車両情報取得部、120…スリップ検知部、125…検知感度切替部、130…移動物体検知部、135…表示部、140…報知部、145…入力部、160,760…車両情報ネットワーク、200,700…建設機械(鉱山ダンプ200,ホイールローダ700)、205,705…前方カメラ、210,710…後方カメラ、215,715…左カメラ、220,720…右カメラ、410…スリップ発生報知部、610…スリップ率測定部、620…検知感度調整部、730,810…前輪(従動輪)、735,815…後輪(駆動輪)、1300…俯瞰表示画面、1305…移動物体(検知対象)、1310…移動物体(検知対象)、1315…検知マーカー、1320…検知マーカー、1330…鉱山ダンプアイコン、1410…“スリップ発生中”アイコン。

Claims (6)

  1. 車輪により走行する建設機械の周囲を撮影する複数のカメラと、
    前記建設機械の走行速度及び操舵角を取得する車両情報取得部と、
    前記建設機械の走行速度及び操舵角から推定した速度ベクトルと前記カメラにより撮影された映像とを用いて前記建設機械の周囲に存在する移動物体を検知する移動物体検知部と、
    を備えた建設機械の周囲監視システムにおいて、
    前記建設機械の車輪のスリップを検知するスリップ検知部と、前記スリップ検知部によりスリップの発生が検知された場合に前記移動物体検知部の検知感度を低くするように調整する検知感度調整部と、を備えたことを特徴とする建設機械の周囲監視システム。
  2. 請求項1に記載の建設機械の周囲監視システムにおいて、
    前記移動物体検知部は、前記カメラで撮影される映像上における前記建設機械の動きを前記建設機械の速度ベクトルに応じて推定し、推定した前記建設機械の動きを前記カメラで撮影される映像から相殺することで、前記建設機械の周囲の静止物体を検知対象から除外することを特徴とする建設機械の周囲監視システム。
  3. 請求項1に記載の建設機械の周囲監視システムにおいて、
    前記スリップ検知部は、スリップ率を測定するスリップ率測定機能を有し、
    前記検知感度調整部は、前記スリップ検知部により測定されたスリップ率に基づいて、スリップ率が大きいほど前記検知感度が小さくなるように、検知感度を調整することを特徴とする建設機械の周囲監視システム。
  4. 請求項3に記載の建設機械の周囲監視システムにおいて、
    前記建設機械と前記移動物体検知部で検知した移動物体とを俯瞰表示する表示部を備え、
    前記表示部は、前記移動物体の位置を表示する検知マーカーを、俯瞰表示した前記移動物体に重畳して表示することを特徴とする建設機械の周囲監視システム。
  5. 請求項1に記載の建設機械の周囲監視システムにおいて、
    前記スリップ検知部によりスリップの発生が検知された場合に、スリップの発生を報知するスリップ発生報知部を備えたことを特徴とする建設機械の周囲監視システム。
  6. 請求項1に記載の建設機械の周囲監視システムにおいて、
    前記建設機械の車輪は、従動輪と駆動輪とで構成され、
    前記スリップ検知部は、前記従動輪と前記駆動輪との速度差に基づいてスリップの発生を検知することを特徴とする建設機械の周囲監視システム。
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