JP6580895B2 - アスタキサンチン含有デスモグレイン減少剤 - Google Patents
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Description
通常、角層細胞は、細胞膜がコーニファイドエンベロープとして残り、細胞小器官は消失し、ケラチン繊維と繊維間物質(ケラトヒアリン顆粒、天然保湿因子)を内包する形態を有する。表皮角化細胞が角層細胞となり、角層の最外層では、その接着機構が弱まって角層細胞が皮膚からはがれ落ちる。角層が最終的に表面から離脱するまで、肌で約40〜60日、口唇で約3〜4日を要するとされる。
本技術のデスモグレインの減少剤は、アスタキサンチンを有効成分として含む。アスタキサンチンは、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果を有するものと従来から認識されていた。本技術は、アスタキサンチンが角層細胞におけるデスモグレインを減少させる効果を有することを、初めて明らかにし、それを応用したものである。
本明細書において「アスタキサンチン」は、特に断らない限り、アスタキサンチンエステルなどの誘導体を含めるものとする。
本技術の角層細胞におけるデスモグレインの減少剤は、化粧料、医薬部外品、医薬品などの皮膚に適用できる剤形のものであれば特に限定されない。具体的な剤形としては、例えばクリーム状、ゲル状、液状、懸濁状、粉末状、フォーム状、シート状、固形のものなどが挙げられる。
本技術のデスモグレインの減少剤を化粧料・薬用化粧料に適用する場合、特に限定されないが、例えば、皮膚化粧料、口唇化粧料に配合されることが好ましい。具体的には、ハンドクリーム、化粧水、乳液、美容液、フェイスクリーム、クレンジングクリーム、洗顔石鹸、パック、日焼けクリーム、日焼けローション、日焼け止めクリーム、化粧下地、ファンデーション、おしろい、パウダー、口紅、リップグロス、リップクリーム、アイクリーム、アイシャドウ、シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディシャンプー、ボディローションなどの製品にすることができる。
本技術のデスモグレインの減少剤を皮膚外用剤に適用する場合、例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、点鼻液剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤などの形にすることができる。
表皮角化細胞や角層細胞中のデスモグレインの存在量が適切な状態にない場合、角層深層から異常に角層が剥離され、各種の病態を示す。デスモグレインなどの接着分子の異常分解によるデスモグレインの減少で生じる疾患としては、Netherton症候群、アトピー性皮膚炎、乾癬、酒さ、魚鱗癬や毛髪異常などの皮膚疾患が挙げられる。そこで、本技術のデスモグレインの減少剤は、それらの皮膚病の研究に用いることができる。具体的にいえば、これらの病態モデルの作成や、研究に際してのコントロール薬剤としての利用、治療薬のスクリーニング方法、スクリーニングに当たってのポジティブコントロールなどとして利用が可能である。
本技術のデスモグレインの減少剤を皮膚に適用すると、ターンオーバーが改善することによって、肌や口唇のくすみを改善できる。角層は、角層細胞が層状に重なったものであり、デスモグレインが関与する角層細胞の細胞接着性が亢進すると(角化亢進)、ターンオーバーが遅れ、更に角層重層化が進み、肌や口唇の表面形態が乱れ、角層重層剥離が生じる。
角層細胞は、加齢によりターンオーバーが遅れ、徐々に細胞面積が大きくなる。逆に角層細胞の細胞面積が減少すると、皮膚が抗老化(若返り)に向かっていると考えられる。本技術のデスモグレインの減少剤を皮膚に適用すると、ターンオーバーが改善し、角層細胞の面積を減少させることがわかった。これは、肌や口唇のくすみを改善し、健康な皮膚に導くことができることを示している。
(1)角層細胞における有核細胞の減少
肌や口唇状態の評価方法には、上記の他に、例えば、角層を採取し、その細胞中に核があるかどうか(有核細胞か否か)をみる方法が挙げられる。肌表面形態が乱れているときには、角層細胞に核が残る不全角化が認められることから、単に角層のみの変化にとどまらず、表皮角化細胞の増殖や角化の過程の異常を伴っていると考えられる。そこで、本技術のデスモグレインの減少剤を皮膚に適用し、角層細胞のうち、有核細胞の数が少なくなれば、表皮角化細胞の増殖や角化の過程の異常が改善され、肌や口唇のくすみが改善されたと考えられる。
また、別の方法として、スライドガラスなどに採取した角層と、標準物質試料として、スライドガラスなどに載せたトリプトファン試薬とを、蛍光分光測定装置を用いて蛍光分光測定を行う方法もある。この方法では、蛍光スペクトルから、トリプトファンの極大蛍光波長よりも短波長側に極大値が観察されると健常な皮膚と評価され、長波長側に極大値が観察されると肌表面形態が乱れていると評価される(特開平2008−281496号公報参照)。
更に、肌や口唇状態の別の評価方法として、採取した角層に標識抗デスモグレイン抗体を適用する方法も挙げられる。検出された標識が少なければ(弱ければ)、デスモグレインも少ないことを示す。本技術のデスモグレインの減少剤を皮膚に適用した結果、角層中のデスモグレインが少なくなれば、ターンオーバーの遅れ、肌や口唇のくすみが改善されたと考えられる。
下記成分を含有するリップクリームを製造した。
成分1 ポリエチレンワックス 6.0質量%
成分2 マイクロクリスタリンワックス 10.0質量%
成分3 2−エチルヘキサン酸セチル 10.0質量%
成分4 トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 20.0質量%
成分5 ワセリン 20.0質量%
成分6 ポリブテン 10.0質量%
成分7 トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
成分8 フェノキシエタノール 0.3質量%
成分9 アスタキサンチン5%含有油(オリザ油化社製 アスタキサンチン−5C) 0.1質量%
成分10 ビタミンE 0.3質量%
(1)試料の採取
20代から40代の男女被験者10名より、下口唇の角層のテープストリッピングを行った。その後、40代の男性被験者を選定し、リップクリームAもしくはリップクリームNを1週間、1日2回以上使用させた。リップクリーム使用前、使用1週間後にそれぞれ下口唇の角層のテープストリッピングを行った。テープストリッピングは、透明両面テープ(ニチバン社製)をスライドガラスに貼り付け、粘着面を下口唇の中央部に一定圧で押し当て、下口唇から剥がして行った。
上記で得られたスライドガラス試料のテープ表面に、抗デスモグレイン−1マウスIgGモノクローナル抗体(PROGEN社製)液を適量かけ、室温にて1時間反応させた。その後、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に浸し、未反応の抗体を洗い流した。
上記一次抗体反応させたスライドガラス試料のテープ表面に、蛍光標識抗マウスIgG抗体(Invitrogen社製)の200倍PBS希釈溶液を適量かけ、室温にて1時間反応させた。その後、PBSに浸し、未反応の抗体を洗い流した。
上記二次抗体反応させたスライドガラス試料の表面に、マウント・クイック・アクオス(Mount Quick Aqueous;SPI SUPPLIES)を滴下し、カバーガラスで覆い観察用試料とした。
上記包埋したスライドガラス試料をオリンパス社製の倒立型蛍光顕微鏡を用いて観察した。この観察画面を図1〜3に示した。
口唇状態が良好な被験者と口唇状態が悪化している被験者からそれぞれ採取した試料の蛍光顕微鏡写真を図1に示した。左の図1Aは、良好な口唇状態、右の図1Bは、悪化している口唇状態である。図1Bは、図1Aと比べて、角層細胞の1つ1つにおいて全体的に蛍光を発し、明度が高く、細胞形状も部分的にはっきりしたものが見られた。従って、口唇状態が悪化している被験者の角層細胞では、蛍光が強いことから、デスモグレイン−1が多く存在することがわかった。また、図1Bの方が、角層細胞の面積が大きく、角層重層剥離の割合も高いことが観察された。
(1)試料の採取
20〜40代の男性被験者20名を10名ずつ2群に分け、1群にリップクリームAを、もう1群にリップクリームNを、1週間1日2回以上使用させた。リップクリーム使用前、使用1週間後にそれぞれ下口唇の角層のテープストリッピングを行った。テープストリッピングは、テープ(ニチバン社製)の粘着面を下口唇の中央部に一定圧で押し当て、
下口唇から剥がし、スライドガラスに貼り付けた。
スライドガラスに貼り付けた角層をキシレンで洗浄し、水洗し、ケルンエヒトロート(武藤化学株式会社製)にて核染した。その後水洗した後に、アルコール脱水とキシレンで処理をし、標本用封入剤MX(松浪硝子工業株式会社製)で封入した。
上記包埋したスライドガラス試料をオリンパス社製の倒立型光学顕微鏡を用いて観察した。
まず、リップクリーム使用前の角層重層剥離の程度を初期値「0」とした。次に、リップクリームN又はリップクリームAをそれぞれ1週間適用した被験者の重層角層剥離の程度が、それぞれリップクリーム使用前の角層重層剥離の程度と比較して、角層重層の数が同数程度のもの(変化なし)は、スコア「0」とした。角層重層が減少したと観察されたもの(口唇状態が改善)は、スコア「1」とした。角層重層が増加したと観察されたもの(口唇状態が悪化)は、スコア「−1」とした。図4に、リップクリームA又はNを1週間使用した後の被験者から採取した角層重層剥離の程度をスコアの平均をとってグラフにしたものを示す。
リップクリームAを1週間使用した群では、角層重層剥離の程度のスコアの平均が約0.32であった。スコアが「0」よりも大きいほど角層重層剥離が低減されたことを示す。一方、リップクリームNを1週間使用した群では、角層重層剥離の程度のスコアの平均が約0.13であった。従って、アスタキサンチンを含有するリップクリームAは、アスタキサンチンを含有しないリップクリームNに比べて、有意に角層重層剥離の低減効果が見られた。これは、角層の重層化が抑制され、健康な角層で見られる1枚ごとの剥離が多くなり、口唇状態が改善されたと考えられた。
(1)実験方法
上記<アスタキサンチン含有リップクリームを口唇に適用したときの角層重層剥離の低減効果>の「(1)試料の採取」から「(3)観察」に記載した操作と同様の操作にて得られた画像を画像解析ソフトWinROOF(三谷商事株式会社)にて解析し、角層細胞の面積を測定した。
アスタキサンチンを含有するリップクリームAを1週間使用すると、角層細胞の面積が平均で約150μm2減少した。一方、アスタキサンチンを含有しないリップクリームNを1週間使用すると、角層細胞の面積が平均で約25μm2しか減少しなかった。したがって、アスタキサンチン含有リップクリームは、角層細胞面積を減少させることが確認された。これは、皮膚老化やターンオーバーの遅れなどによる角層細胞面積の増大を抑制し、健康な口唇に近づいたと考えられた。
(1)実験方法
上記<アスタキサンチン含有リップクリームを口唇に適用したときの角層重層剥離の低減効果>の「(1)試料の採取」から「(3)観察」に記載した操作と同様の操作にて得られた画像を画像解析ソフトWinROOFにて有核細胞の割合を測定した。
リップクリームAを1週間使用した群では、有核細胞の減少のスコアの平均が約0.07であった。スコアが「0」よりも大きいほど有核細胞の割合が減少したことを示す。一方、リップクリームNを1週間使用した群では、有核細胞の減少のスコアの平均が約−0.25であった。従って、アスタキサンチンを含有するリップクリームAは、アスタキサンチンを含有しないリップクリームNに比べて、有核細胞の減少効果が見られた。これは、角化の際、細胞の核が正常に消失して、ターンオーバーのバランスがとれ、口唇状態が改善されたと考えられた。
(1)実験方法
上記<アスタキサンチン含有リップクリームを口唇に適用したときの角層重層剥離の低減効果>の「(1)試料の採取」から「(3)観察」に記載した操作と同様の操作にて得られた試料を、倒立型蛍光顕微鏡(オリンパス社製)にセットし、340nmの紫外部領域の波長の光により生じる自家蛍光を観察した。
リップクリームAを1週間使用した群では、自家蛍光の蛍光強度のスコアの平均が約0.5であった。スコアが「0」よりも大きいほど自家蛍光が低減したことを示す。一方、リップクリームNを1週間使用した群では、自家蛍光の蛍光強度のスコアの平均が約−0.13であった。従って、アスタキサンチンを含有するリップクリームAは、アスタキサンチンを含有しないリップクリームNに比べて、有意に自家蛍光の低減効果が見られた。これは、アスタキサンチン含有リップクリームが、口唇状態の改善に、明らかに有効であることを示すと考えられた。
(1)実験方法
下記表1に示す成分を含有するアスタキサンチン含有リップクリーム(以下、「リップクリームA’」ということがある。)を製造した。
また、表1の成分6の代わりに、成分4のトリイソステアリン酸ポリグリセリル−2をその分増量したアスタキサンチンを含有しないリップクリーム(以下、「リップクリームN’」ということがある。)を製造した。
次に3週間使用を中止した後に、I群にはリップクリームN’を、II群にはリップクリームA’をそれぞれ3週間使用してもらい、同様にアンケートを実施した。
使用前に比べてやや改善もしくは改善を実感した被験者の数の割合(%)を表2に示した。
以上のことから、本技術のデスモグレインの減少剤を含有する口唇用化粧料の使用により、ふっくら感、シワ、うるおい感、くすみが改善することが明らかとなった。
Claims (5)
- アスタキサンチンを有効成分として含有し、表皮ターンオーバーを改善させる、角層細胞におけるデスモグレインの減少剤。
- アスタキサンチンを有効成分として含有し、角層細胞面積を減少させる、角層細胞におけるデスモグレインの減少剤。
- デスモグレインがデスモグレイン−1である、請求項1又は2に記載の減少剤。
- 皮膚化粧料に配合される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の減少剤。
- 口唇化粧料に配合される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の減少剤。
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