JP6580756B2 - 骨切術用開大器 - Google Patents

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智章 平川
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Description

本発明は、骨切術用開大器に関する。
骨切術は、例えば、脚の形がいわゆる「O脚」あるいは「X脚」に変形した患者に対して従来から行われている治療方法である。この骨切術では、膝関節近くの大腿骨または脛骨を切除あるいは切込みに人工骨(骨補填材)を挿入することにより、立位時の大腿骨または脛骨の角度を矯正する治療を行う。
具体的には、「O脚」を矯正する場合には、脛骨の角度を変化させる高位脛骨骨切術(High Tibial Osteotomy:HTO)が行われている。この高位脛骨骨切術の一つに、膝の関節近くの脛骨に形成した切込みに楔形の骨補填材を挿入し、立位時の脛骨の角度を矯正するオープンウェッジ法がある。このオープンウェッジ法において、骨補填材を挿入する際に切込みを開大した状態にする骨切術用開大器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−6140号公報
前記提案にかかる骨切術用開大器は、先端に配置されたヒンジ部で連結されている揺動部材が2対と、これら2対の揺動部材をそれぞれ開閉させる2つの開閉機構とを備えている。この骨切術用開大器を用いて切込みを開大して骨補填材を挿入する際には、まず、2対の揺動部材を連結させた状態で切込みに先端から差し込み、一方の開閉機構で開く操作を行うと2対の揺動部材が連動して開き、切込みを所望の角度まで開大させる。次に、他方の開閉機構で閉じる操作を行うと他方の開閉機構が設けられている一対の揺動部材もそれ自体で開いた状態に維持されるようになる。この状態で、一方の開閉機構で閉じる操作を行うと2対の揺動部材の連結が解除され、閉じた1対の揺動部材を切込みから抜く。すると、切込みに残された1対の揺動部材で切込みを開大した状態を保持することができ、骨補填材を切込みに挿入することができる。
しかし、この骨切術用開大器は、ヒンジ部を含む部品点数が多く、洗浄などのメンテナンスを行う際に手間がかかるという問題があった。また、切込みに残された1対の揺動部材で脛骨の切込みを開大した状態を保持し、切込みに骨補填材を挿入しようとすると、1対の揺動部材のヒンジ部を含めた先端が切込みの奥に入り込んでいるため、切込みの奥全体が視認できないばかりか切込みの奥全体に骨補填材を挿入できないという問題があった。
ここで、切込みの奥全体が視認できず、切込みの奥全体に骨補填材を挿入できないという問題について、図1A及び図1Bを参照しながら説明する。
図1Aは、前記提案にかかる骨切術用開大器200を用いて切込みK1を開大して保持した状態の一例を上面から見たときの説明図である。図1Bは、図1Aに示した状態を、切込みK1に対し正面から見たときの説明図である。
図1A及び図1Bに示すように、前記提案にかかる骨切術用開大器200では、図示しない1対の揺動部材を切込みK1から抜き取った後に、更にもう1対の揺動部材220が開閉機構212により開大状態を保持された状態で切込みK1に残る。この状態では、1対の揺動部材220のヒンジ部211cを含めた先端が切込みの奥に入り込んでいるため、切込みK1の奥全体が視認できないばかりか切込みK1の奥全体に骨補填材を挿入できないことがわかる。
本発明は、従来における前述の諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ヒンジ部を含む部品の数を減らした簡易な機構によりメンテナンスを容易に行うことができ、かつ切込みを開大して移植物を挿入する際には、切込みの奥全体が視認可能になるとともに切込みの奥全体に移植物を挿入できる骨切術用開大器を提供することを目的とする。
本発明の骨切術用開大器は、
骨に形成された切込みに挿入され、該切込みを開大して移植物を挿入可能なスペースを形成する骨切術用開大器であって、
先端に配置されたヒンジ部により相対的に回動可能に連結された1対の回動部材と、
前記1対の回動部材を前記ヒンジ部の軸線回りに開閉させる1つの開閉機構と、
を備える開閉手段と、
前記1対の回動部材における開く側の表面に重ねて載置されて前記1対の回動部材と連動する1対の離間部材と、
前記1対の離間部材が離間した状態を保持させる保持機構と、
を備える開大保持手段と、
を有する。
本発明によると、ヒンジ部を含む部品の数を減らした簡易な機構によりメンテナンスを容易に行うことができ、かつ切込みを開大して移植物を挿入する際には、切込みの奥全体が視認可能になるとともに切込みの奥全体に移植物を挿入できる骨切術用開大器を提供することができる。
図1Aは、従来の骨切術用開大器を用いて切込みを開大して保持した状態の一例を上面から見たときの説明図である。 図1Bは、図1Aに示した状態を、切込みに対し正面から見たときの説明図である。 図2Aは、本発明の骨切術用開大器の一例を示す概略斜視図である。 図2Bは、図2Aに示した骨切術用開大器の開閉手段を示す概略斜視図である。 図2Cは、図2Aに示した骨切術用開大器の開大保持手段を示す概略斜視図である。 図3Aは、図2Aに示した骨切術用開大器の概略上面図である。 図3Bは、図2Aに示した骨切術用開大器の概略背面図である。 図3Cは、図2Aに示した骨切術用開大器の概略側面図である。 図4は、スプレッター固定ピンの一例を示す概略斜視図である。 図5Aは、スプレッター固定ピンを用いてブレードにスプレッターを連結する動作についての説明図である。 図5Bは、スプレッター固定ピンを用いてブレードにスプレッターを連結する動作についての説明図である。 図6Aは、保持機構の動作の一例を示す透過背面図である。 図6Bは、保持機構の動作の一例を示す透過背面図である。 図7Aは、オープナーを切込みに差し込む動作について、切込みに対し側面から見たときの説明図である。 図7Bは、図7Aに示した動作を、切込みに対し正面から見たときの説明図である。 図8Aは、ブレードを開いて切込みを開大する動作について、切込みに対し側面から見たときの説明図である。 図8Bは、図8Aに示した動作を、切込みに対し正面から見たときの説明図である。 図9Aは、スプレッターの保持機構のストッパーを摺動部材に当接させて切込みの開大状態を保持する動作について、切込みに対し側面から見たときの説明図である。 図9Bは、図9Aに示した動作を、切込みに対し正面から見たときの説明図である。 図10Aは、ブレードとスプレッターとの連結を解除する動作について、切込みに対し側面から見たときの説明図である。 図10Bは、図10Aに示した動作を、切込みに対し正面から見たときの説明図である。 図11Aは、スプレッターが切込みを開大して保持した状態でブレードを閉じる動作について、切込みに対し側面から見たときの説明図である。 図11Bは、図11Aに示した動作を、切込みに対し正面から見たときの説明図である。 図12Aは、ブレードを切込みから抜き取る動作について、切込みに対し側面から見たときの説明図である。 図12Bは、図12Aにおいてブレードが切込みから抜き取られ、スプレッターが切込みを開大して保持した状態を、切込みに対し正面から見たときの説明図である。
(骨切術用開大器)
骨切術用開大器には、例えば、変形性膝関節症患者の変形した大腿骨または脛骨に形成された切込みに挿入され、該切込みを開大して移植物を挿入可能なスペースを形成するという目的がある。なお、以下では骨切術用開大器を「オープナー」と称することがある。
ここで、変形性膝関節症とは、O脚の変形が進むなどにより膝関節の内側に荷重がかかり、膝軟骨がすり減るなどして損傷する疾患である。
変形性膝関節症患者の変形した大腿骨または脛骨とは、変形が進んだO脚の患者の大腿骨または脛骨を意味する。
切込みは、ノミや骨鋸などにより、完全に骨を切断しないように骨皮質の連続性を保ちながら形成される。変形が進んだO脚の患者の場合では、脛骨の内側に切込みを形成して、切込みを開大した状態で移植物を挿入することにより、立位時の大腿骨または脛骨の角度を変化させてO脚を矯正することができる。
移植物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、骨補填材(人工骨)などが挙げられる。
骨補填材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形状(ブロック)、顆粒状、ペースト状などが挙げられる。変形が進んだO脚の患者の場合には、骨補填材の形状としては、症状に応じた形状の楔形のブロックが好ましい。骨補填材の形状が楔形のブロックであれば、脛骨の内側に形成した切込みに挿入することにより、O脚を矯正することができる。
骨補填材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、セラミックス材料が好ましい。骨補填材の材質がセラミックス材料であれば、加工性に優れているため切削加工などにより形状を症例に応じて調整することが容易である。セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物などのバイオセラミックスが好ましい。リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウムなどが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、疾患として変形性膝関節症を対象とし、形成した切込みを開大して移植物を挿入する骨を大腿骨または脛骨としたが、これに限ることなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の骨切術用開大器によると、上記の目的に対し、ヒンジ部を含む部品の数を減らした簡易な機構によりメンテナンスを容易に行うことができ、かつ切込みを開大して移植物を挿入する際には、切込みの奥全体が視認可能になるとともに切込みの奥全体に移植物を挿入できる。
骨切術用開大器の形状としては、切込みに差し込むことができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、対象となる骨の大きさに応じて変更することが好ましい。
骨切術用開大器の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属材料などが挙げられる。金属材料としては、例えば、貴金属合金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、チタン、チタン合金などが挙げられる。
骨切術用開大器の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、対象となる骨の大きさに応じて変更することが好ましい。
骨切術用開大器の構造としては、開閉手段と、開大保持手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
<開閉手段>
開閉手段は、大腿骨または脛骨に形成された切込みを開大するために用いられ、開閉手段と連動して開いた開大保持手段により切込みの所望の開大状態を保持された後、閉じて切込みから抜き取られる。なお、以下では開閉手段を「ブレード」と称することがある。
開閉手段の形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
開閉手段の構造としては、1対の回動部材と、1つの開閉機構とを備え、更に必要に応じてその他の部材又は機構を有する。
<<1対の回動部材>>
1対の回動部材は、ヒンジ部が配置された先端から切込みに差し込まれ、ヒンジ部で回動して切込みを開大するために用いられる。
1対の回動部材の構造としては、先端に配置されたヒンジ部により相対的に回動可能に連結されていれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1対の矩形状の平板であって、一方の短辺の端部がヒンジ部により相対的に回動可能に連結されているものなどが挙げられる。
1対の回動部材の形状としては、閉じられた状態で先端からそれぞれ漸次厚くなる略楔形状に形成されていることが好ましい。これにより、1対の回動部材は、大腿骨または脛骨に形成された切込みの奥まで先端を挿入しやすくなる。
1対の回動部材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<<1つの開閉機構>>
1つの開閉機構は、1対の回動部材をヒンジ部の軸線回りに開閉させるために用いられる。
ここで、1対の回動部材を開閉させるとは、1対の回動部材のうち少なくとも一方の回動部材を回動させ、1対の回動部材がヒンジ部より後端側で当接する状態(閉状態)から当接しない状態(開状態)に、あるいは開状態から閉状態にすることを意味する。
1つの開閉機構の形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
1つの開閉機構の構造としては、1対の回動部材をヒンジ部の軸線回りに開閉させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、1つの開閉機構の構造としては、1対の回動部材の後端側にそれぞれ設けられているネジ孔と、各ネジ孔を貫通して螺合するネジシャフトとを有する機構などが挙げられる。この機構の場合、ネジシャフトは、一方のネジ孔と螺合し、他方のネジ孔とは螺合せずに空転させるようにすると、螺合するネジ孔側の回動部材をヒンジ部の軸線回りに開閉させることができる。より好ましい態様としては、ネジシャフトは、2つのネジ孔とそれぞれ螺合する箇所で巻回方向が逆であり、いわゆる「正ネジ」と「逆ネジ」の関係にあるようにするようにしてもよい。これにより、1対の回動部材を同時に効率よく回動させて開閉することができる。
<<その他の部材又は機構>>
開閉手段に取付けられるその他の部材又は機構としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、連結部材などが挙げられる。
連結部材は、1対の回動部材の開大動作に対して開大保持手段をより確実に連動させるために、1対の回動部材に開大保持手段を連結させる。また、開大保持手段が切込みを開大状態で保持した後に1対の回動部材を閉じる際に、連結部材は、1対の回動部材と開大保持手段の連結を解除することができる。
連結部材の形状としては、例えば、ピン形状などが挙げられる。連結部材がピン形状であれば、より確実に連結するために位置決めピンを併用することが好ましい。位置決めピンとしては、例えば、ボールプランジャなどが挙げられる。
連結部材の構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<開大保持手段>
開大保持手段は、開閉手段により切込みが開大された状態を保持するために用いられる。なお、以下では開大保持手段を「スプレッター」と称することがある。
開大保持手段は、1対の回動部材の開く側の表面に載置することができ、1対の回動部材の開大動作に対して後述する1対の離間部材を連動させることができる。
開大保持手段の形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
開大保持手段の構造としては、1対の離間部材と、保持機構とを備え、更に必要に応じてその他の部材又は機構を有する。
<<1対の離間部材>>
1対の離間部材は、1対の回動部材における開く側の表面に重ねて載置されて1対の回動部材と連動して開き、1対の回動部材により切込みが開大になった状態を保持するために用いられる。
ここで、1対の離間部材が離間した状態とは、1対の離間部材が連動する1対の回動部材が開いた状態を意味する。また、1対の離間部材が離間していない状態とは、1対の離間部材が連動する1対の回動部材が閉じている状態を意味する。
1対の離間部材の形状としては、1対の回動部材における開く側の表面に重ねて載置できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1対の回動部材より長手方向に短く、1対の回動部材の後端側で重ねて載置可能であることが好ましい。これにより、切込みの奥全体が見えやすくなるとともに、小さいサイズの骨補填材や粒状の骨補填材を切込みに挿入しやすくなる。
1対の離間部材の構造としては、1対の回動部材と連動することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
1対の離間部材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<<保持機構>>
保持機構は、1対の離間部材が離間した状態を保持させるために用いられる。
保持機構が、1対の離間部材が離間した状態を保持させたときに、1対の離間部材が切込みの奥に入り込んでいないため、切込みの奥全体が視認可能になるとともに切込みの奥全体に移植物を挿入できる。
保持機構の形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
保持機構の構造としては、1対の離間部材が離間した状態を保持させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<<その他の部材又は機構>>
開大保持手段に取付けられるその他の部材又は機構としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、摺動機構を備えることが好ましい。
摺動機構は、1対の離間部材を連結させながら1対の離間部材に連動して摺動するために用いられる。
摺動機構の形状、大きさとしては、切込みの奥全体を視認できなくなるような厚く大きいものでなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
摺動機構の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1対の離間部材の後端側に設けられ、切込みの開大状態を保持した際に切込みに入り込まない位置が好ましい。また、摺動機構の構造としては、摺動部材ベース部と、摺動部材と、ガイド部材と、を有することが好ましい。
摺動部材ベース部の形状、構造、大きさとしては、摺動部材を固定することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
摺動部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一部がヒンジ部の軸線回りに沿って弧を描くアーチ形状が好ましい。これにより、ヒンジ部を有する1対の回動部材と連動する1対の離間部材に取付けられた摺動部材が摺動しやすくなる。また、摺動部材の形状がアーチ形状であれば、1対の離間部材がなす角を示す目盛りを有することが好ましい。これにより、一見して1対の離間部材がなす角、つまり切込みの開大角度を把握することができる。
摺動部材の構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ガイド部材の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<その他の手段>
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
骨切術用開大器の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属加工による手法、金型による手法、3Dプリンタによる手法等により作製する方法などが挙げられる。
このように、骨切術用開大器は、先端にヒンジ部を配置された1対の回動部材を開閉する開閉手段と、1対の回動部材に連動する1対の離間部材が開いて離間した状態を保持する開大保持手段とによる、ヒンジ部を含む部品の数を減らした簡易な機構であるため、メンテナンスを容易に行うことができる。また、この骨切術用開大器では、開大保持手段の1対の離間部材により切込みの開大状態を保持した後、開閉手段の1対の回動部材を閉じて切込みから抜くと、開大保持手段が切込みの奥に入り込んでいないため、切込みの奥全体が視認可能になるとともに切込みの奥全体に移植物を挿入できる。
以下、本発明の骨切術用開大器の実施例について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。
ここでは、変形性膝関節症患者の「O脚」を矯正することを目的として、膝の関節近くの脛骨に形成した切込みに楔形の骨補填材を挿入するため、本発明の骨切術用開大器を用いて切込みを開大する場合について説明する。
<骨切術用開大器の実施例>
図2Aは、本発明の骨切術用開大器の一例を示す概略斜視図である。図2Bは、図2Aに示した骨切術用開大器の開閉手段を示す概略斜視図である。図2Cは、図2Aに示した骨切術用開大器の開大保持手段を示す概略斜視図である。
また、図3Aは、図2Aに示した骨切術用開大器の概略上面図である。図3Bは、図2Aに示した骨切術用開大器の概略背面図である。図3Cは、図2Aに示した骨切術用開大器の概略側面図である。
図2A〜図2C及び図3A〜図3Cに示すように、骨切術用開大器としてのオープナー100は、開閉手段としての1対のブレード110と、開大保持手段としてのスプレッター120と、を有する。
ブレード110は、スプレッター120を載置した状態又は連結した状態で、脛骨に形成された切込みに差し込まれ、スプレッター120を連動させながら切込みを開大することができる。その後、スプレッター120が切込みの開大状態を保持した後、ブレード110は、閉じた状態に戻されて切込みから抜き取られる。
ブレード110は、1対の回動部材111と、1つの開閉機構112と、スプレッター固定ピン113a、113bと、を有する。
1対の回動部材111は、閉じられた状態で先端111cからそれぞれ漸次厚くなる略楔形状に形成されている。
1対の回動部材111は、先端111cに配置されたヒンジ部111dにより相対的に回動可能に連結されている回動部材111a、111bを有する。
回動部材111a、111bの開く側の表面には、その短手方向の半分の部分において、長手方向全長にわたって凹部(段差)が形成されている。凹部にはスプレッター120が載置されることで、離間部材121a、121bと回動部材111a、111bの開く側の表面には、その短手方向において段差のない面を形成する。これにより、段差がなく比較的広い骨との接触面を確保できるので、開大時の骨への負荷が軽減される。
回動部材111a、111bは、後端側に設けられている1つの開閉機構112により相対的に回動して開閉する。
1つの開閉機構112は、1対の回動部材111をヒンジ部111dの軸線回りに開閉させるために、回動部材111a、111bの後端側にそれぞれ設けられているネジ孔112a、112bと、各ネジ孔を貫通して螺合するネジシャフト112cとを有する。
雄ネジであるネジシャフト112cは、ネジ孔112a、112bとそれぞれ螺合する箇所で巻回方向が逆であり、いわゆる「正ネジ」と「逆ネジ」の関係にある。また、ネジシャフト112cの端部には六角穴が設けられており、六角ドライバーなどが嵌め合わされることによりネジシャフト112cを回転させることができる。
雌ねじであるネジ孔112a、112bは、ネジシャフト112cの巻回方向に応じた「正ネジ孔」と「逆ネジ孔」である。また、ネジ孔112a、112bには、ブレード110が開いたときにネジシャフト112cの回転が規制されないように傾斜が設けられている。このため、1つの開閉機構112は、ネジシャフト112cを回転させると、回動部材111a、111bが相対的に回動して1対の回動部材111を円滑に開閉することができる。
連結部材としてのスプレッター固定ピン113aは、本実施例では、図4に示すような形状を有する。なお、スプレッター固定ピン113bも同様の形状を有する。
スプレッター固定ピン113a、113bは、ブレード110の回動部材111a、111bの背面側にそれぞれ設けられている。スプレッター固定ピン113a、113bは、スプレッター120をブレード110に連結させることができ、またその連結を解除させることができる。具体的には、図5A及び図5Bを参照しながら説明する。
図5A及び図5Bは、スプレッター固定ピンを用いてブレードにスプレッターを連結する動作についての説明図であり、回動部材111aの上面の一部及び離間部材121aの上面の一部を透過して示している。
図5Aに示すように、スプレッター固定ピン113aを用いて、回動部材111aとスプレッター120とを連結させる際には、図5A中矢印D1で示す方向にスプレッター固定ピン113aを押し込む。すると、図5Bに示すように、ボールプランジャ124aがスプレッター固定ピン113aの先端部分に設けられた図示しない位置決め穴に嵌め込まれ、スプレッター120と回動部材111aとを連結することができる。スプレッター固定ピン113bにおいても、スプレッター固定ピン113aと同様に、回動部材111bにスプレッター120を連結させることができる。
また、スプレッター120とブレード110との連結を解除するには、スプレッター固定ピン113a、113bを図5A中矢印D1で示した方向とは逆の方向に引っ張ることによりその連結を解除できる。
なお、本実施例では、スプレッター固定ピンでスプレッターをブレードに連結するが、本発明においては、スプレッターをブレードに載置してブレードの開大動作にスプレッターが連動できればよく、必ずしもスプレッターをブレードに連結させなくてもよい。
スプレッター120は、1対の回動部材111の開く側の表面に載置することができる。これにより、スプレッター120は、1対の回動部材111の開大動作に連動する。また、スプレッター120は、後述する保持機構123により脛骨に形成された切込みの開大状態を保持することができる。
スプレッター120は、1対の離間部材121と、摺動機構122と、保持機構123と、を有する。
1対の離間部材121は、閉じた状態では平行に対向して離間しており、1対の回動部材111の開大動作に連動したときに開いた状態となる。1対の離間部材121は、長手方向において1対の回動部材111よりも短い離間部材121a、121bを有する。
摺動機構122は、摺動部材ベース部122aと、摺動部材122bと、ガイド部材122cと、を有する。
摺動部材ベース部122aは、離間部材121aの後端側に設けられており、摺動部材122bが固定されている。
摺動部材122bの一部は、ヒンジ部111dの軸線回りに沿って弧を描くアーチ形状を有する。また、アーチ形状の摺動部材122bの上面には、離間部材121aと離間部材121bとのなす角を示す目盛りを有する。
ガイド部材122cは、摺動部材122bと同様に、離間部材121bの後端側に設けられており、アーチ形状の摺動部材122bの摺動をガイドする。また、ガイド部材122cの下部には、保持機構123が設けられている。
保持機構123は、図6Aに示すような、ストッパー123aと、ネジ123bとを有する。
ストッパー123aは、ガイド部材122cの内部に設けられており、ネジ123bと螺合している。ネジ123bはガイド部材122cの外部に配置されているため、ガイド部材122cには、ネジ123bをストッパー123aと螺合させるためにネジ孔が設けられている。また、このネジ孔の形状は、図6Aにおける上下方向に長く設けられており、ストッパー123aとガイド部材122cとの当接部には傾斜が設けられている。このネジ孔の形状と当接部の傾斜により、ネジ123bを図6A中矢印R1で示す方向に回すと、ネジ123bが締るとストッパー123aが図6A中矢印D2で示す方向に移動する。すると、図6Bに示すように、ストッパー123aが摺動部材122bに当接し、摺動部材122bの摺動が規制されることにより、1対の離間部材121で切込みの開大状態を保持することができる。
次に、オープナー100を脛骨Kの切込みK1に差し込み、切込みK1を開大した後にその開大状態を保持するまでの動作について、図7A〜図12Bを参照しながら説明する。
なお、図7A、図8A、図9A、図10A、図11A、図12A、及び図12Aは、切込みK1に対し正面から見たときの説明図であり、図7B、図8B、図9B、図10B、図11B、図12B、及び図12Bは、切込みK1に対し側面から見たときの説明図である。
また、切込みK1に差し込む前のオープナー100は、スプレッター固定ピン113a、113bにより、ブレード110にスプレッター120が連結している状態とする。
まず、図7A及び図7Bに示すように、オープナー100の先端、即ち1対の回動部材111の先端111cが切込みK1に入れられ、図7A中の矢印D3で示す方向にオープナー100が差し込まれる。
次に、図8A及び図8Bに示すように、ネジシャフト112cの端部に設けられている六角穴にドライバーdが嵌め込まれ、ドライバーdが図8中矢印R2で示す方向に回転すると、1対の回動部材111の回動部材111a、111bがそれぞれ図8中矢印D4及びD5で示す方向に回動する。すると、1対の回動部材111が開くとともにスプレッター120も連動して開き、切込みK1を開大させる。
次に、図9A及び図9Bに示すように、ネジ123bに設けられている六角穴にドライバーdが嵌め込まれ、ドライバーdが図9中矢印R3で示す方向に回転すると、図6Bで示したように、ガイド部材122cの内部に設けられているストッパー123aが摺動部材122bに当接する。すると、摺動部材122bの摺動が規制され、1対の離間部材121で切込みK1の開大状態を保持する。
次に、図10A及び図10Bに示すように、スプレッター120とブレード110との連結を解除するために、スプレッター固定ピン113a、113bをそれぞれ図10A中矢印D5及びD6で示す方向に引っ張られる。すると、スプレッター固定ピン113aの場合では、図5Bで示したように、ボールプランジャ124aがスプレッター固定ピン113aの先端部分の位置決め穴から抜け、更にスプレッター固定ピン113bも同様に行うと、スプレッター120とブレード110との連結が解除される。
次に、図11A及び図11Bに示すように、ネジシャフト112cの端部に設けられている六角穴にドライバーdが嵌め込まれ、ドライバーdが図11中矢印R4で示す方向に回転すると、回動部材111a、111bがそれぞれ図11中矢印D7及びD8で示す方向に回動し、1対の回動部材111が閉じる。このとき、スプレッター120は、ブレード110との連結が解除されており、かつストッパー123aにより摺動部材122bの摺動が規制されているため、切込みK1を開大した状態を保持する。
そして、図12Aに示すように、図12A中矢印D8で示す方向にブレード110が切込みK1から抜き取られると、切込みK1の奥全体に骨補填材を挿入できるようになる。また、図12Bに示すように、切込みK1を開大して骨補填材を挿入する際には、切込みK1に対し正面から見ても切込みK1の奥全体が視認可能になる。
骨補填材の挿入後は、ストッパー123aによる摺動部材122bの摺動規制を解除し、スプレッター120を抜き去る。スプレッター120を抜き去ることで形成されたスペースには、更に骨補填材を挿入してもよい。また開大された切込みを跨ぐようにして、金属プレートをスクリュー固定により設置してもよい。
以上、説明したように、本発明の骨切術用開大器は、先端にヒンジ部を配置された1対の回動部材を開閉する開閉手段と、1対の回動部材に連動する1対の離間部材が開いて離間した状態を保持する開大保持手段との簡易な機構であるため、洗浄などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、この骨切術用開大器では、1対の離間部材により切込みの開大状態を保持した後、1対の回動部材を閉じて切込みから抜き取ると、1対の離間部材を連結させる部材が切込みに入り込んでいないため、切込みの奥全体が視認可能になるとともに切込みの奥全体に移植物を挿入できる。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 骨に形成された切込みに挿入され、該切込みを開大して移植物を挿入可能なスペースを形成する骨切術用開大器であって、
先端に配置されたヒンジ部により相対的に回動可能に連結された1対の回動部材と、
前記1対の回動部材を前記ヒンジ部の軸線回りに開閉させる1つの開閉機構と、
を備える開閉手段と、
前記1対の回動部材における開く側の表面に重ねて載置されて前記1対の回動部材と連動する1対の離間部材と、
前記1対の離間部材が離間した状態を保持させる保持機構と、
を備える開大保持手段と、
を有することを特徴とする骨切術用開大器である。
<2> 前記1対の離間部材が、前記1対の回動部材より長手方向に短く、前記1対の回動部材の後端側で重ねて載置可能である前記<1>に記載の骨切術用開大器。
<3> 前記開大保持手段が、前記1対の離間部材を連結させながら前記1対の離間部材に連動して摺動する摺動部材を更に備える前記<1>から<2>のいずれかに記載の骨切術用開大器である。
<4> 前記摺動部材が、前記1対の離間部材がなす角を示す目盛りを有する前記<3>に記載の骨切術用開大器である。
<5> 前記開閉手段が、前記1対の回動部材に前記1対の離間部材を連結させる連結部材を更に備える前記<1>から<4>のいずれかに記載の骨切術用開大器である。
<6> 前記1対の回動部材が、閉じられた状態で前記先端からそれぞれ漸次厚くなる略楔形状に形成されている前記<1>から<5>のいずれかに記載の骨切術用開大器である。
前記<1>から<6>のいずれかに記載の骨切術用開大器によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
100 骨切術用開大器(オープナー)
110 開閉手段(ブレード)
111 1対の回動部材
111a、111b 回動部材
111c 先端
111d ヒンジ部
112 1つの開閉機構
112a、112b ネジ孔
112c ネジシャフト
113a、113b スプレッター固定ピン(連結部材)
120 開大保持手段(スプレッター)
121 1対の離間部材
121a、121b 離間部材
123 保持機構
123a ストッパー
123b ネジ
122 摺動機構
122a 摺動部材ベース部
122b 摺動部材
122c ガイド部材

Claims (6)

  1. 骨に形成された切込みに挿入され、該切込みを開大して移植物を挿入可能なスペースを
    形成する骨切術用開大器であって、
    先端に配置されたヒンジ部により相対的に回動可能に連結された1対の回動部材と、
    前記1対の回動部材を前記ヒンジ部の軸線回りに開閉させる1つの開閉機構と、
    を備える開閉手段と、
    前記1対の回動部材における開く側の表面に重ねて載置されて前記1対の回動部材と連
    し、先端側が前記1対の回動部材より長手方向に短い1対の離間部材と、
    前記1対の離間部材が離間した状態を保持させる保持機構と、
    を備える開大保持手段と、
    を有することを特徴とする骨切術用開大器。
  2. 前記1対の離間部材が、前記1対の回動部材より長手方向に短く、前記1対の回動部材
    の後端側で重ねて載置可能である請求項1に記載の骨切術用開大器。
  3. 前記開大保持手段が、前記1対の離間部材を連結させながら前記1対の離間部材に連動
    して摺動する摺動部材を更に備える請求項1から2のいずれかに記載の骨切術用開大器。
  4. 前記摺動部材が、前記1対の離間部材がなす角を示す目盛りを有する請求項3に記載の
    骨切術用開大器。
  5. 前記開閉手段が、前記1対の回動部材に前記1対の離間部材を連結させる連結部材を更
    に備える請求項1から4のいずれかに記載の骨切術用開大器。
  6. 前記1対の回動部材が、閉じられた状態で前記先端からそれぞれ漸次厚くなる略楔形状
    に形成されている請求項1から5のいずれかに記載の骨切術用開大器。
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