本発明の実施の形態(以下、本実施の形態ともいう)について、以下、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態に用いられる熱反応型レジスト材料は、微細パターンを形成できる非常に有望なレジスト材料である。この熱反応型レジスト材料を用いた微細パターンの形成は、熱により熱反応型レジスト材料が変質した箇所と変質していない箇所との差に現像液を作用させ、微細パターンを顕在化させることで達成する。この際、熱は、隣接する変質させたくない箇所にも伝熱する。熱反応型レジスト材料の中でも、無機材料からなるレジスト材料は、伝熱により無機材料の粒子成長が進行し、粗大粒子を形成してしまうため、微細パターンのラフネスを低下させる。例えば超微細パターン形成時には熱で変質させたい箇所と変質させたくない箇所が非常に近接してくることで、伝熱の影響が非常に顕著になり、微細パターンラフネスの悪化が微細パターンの解像度に大きく影響を与えることもある。
本発明者らは、露光による熱反応型レジスト材料の温度上昇が露光の光が通過する際の光路上にある媒質である熱反応型レジスト材料の膜厚に応じて変化することに着眼し、鋭意研究を重ねた。その結果、熱反応型レジスト材料から成る微細パターンと、微細パターンの表面に設けられたネガ型の熱反応型レジスト材料から成る被覆層とを有する積層体を用いることにより、被覆層が、微細パターンを保護する効果、及び微細パターンのラフネスの改善効果を発現し、優れたパターンラフネスを達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
発明の骨子は、基板と、基板の上面側に凹凸の微細パターンを構成する熱反応型レジスト材料から成るレジスト材料層と、レジスト材料層の表面に形成されたネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層と、を有し、被覆層は、レジスト材料層の膜厚と同等あるいはそれよりも薄い膜厚で形成されていることを特徴とする積層体である。この積層体を用いることにより、微細パターン形成時において優れたパターンラフネスを達成可能である。そして、その優れたパターンラフネスの微細パターンをマスクとして用いることで、基板を正確にエッチングでき、その結果、基板を用いて優れたラフネスの微細パターンを有するモールドを得ることができる。
図1は、本実施の形態に係る積層体の断面概略図である。図1Aに示すように、本実施の形態に係る積層体10は、基板11を有する。基板11の主面を構成する上面には、熱反応型レジスト材料から成る複数の凸部(レジスト材料層)18が形成されている。各凸部18が間隔を空けて点在していてもよいし、凸部18がラインアンドスペース形状で形成されていてもよい。
図1Aの縦断面形状に現れる各凸部18は、側面15と上面16とを備える。側面15及び上面16は「凸部の表面」を構成する。図1Aでは、側面16が基板11の表面に対して直交する方向を向いている。また凸部18の上面16は基板11の主面と平行な方向を向いている。このように図1Aに示す凸部18の縦断面形状は矩形状とされる。図1Aに示す凸部18の縦断面形状は好ましい形状の一つであるが、図1Aの形状に限定されるものでない。すなわち、基板11の表面に凹凸からなる微細パターンを形成する際に、必要とされる前記微細パターンの形状に応じて、凸部18の形状を変えることができる。例えば、凸部18の側面15は基板11表面に対して直交方向から傾斜していてもよい。具体的には凸部18の縦断面形状は、図1Aに示す矩形状のほかに台形状、三角形状、楕円状等とすることができる。このとき、凸部の縦断面形状が三角形や楕円形状のように、「側面」と[上面]との区別ができない、あるいは、「側面」と[上面]との境目が不明瞭な場合、凸部18の表面を「側面」と[上面]の概念に当てはめることなく、「凸部の表面」とは、基板11と接する以外の面、あるいは凸部18の外面を指す。
図1Aに示すように、ネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13が、凸部の間の凹部底面14、凸部18の側面15、及び凸部18の上面16にかけて(沿って)形成されている。これにより、凹部底面14、凸部18の側面15、及び凸部18の上面16が被覆層13により被覆された状態とされている。そして、凸部18と、凸部18の表面及び凹部底面14に形成された被覆層13により、基板11の表面には凹凸の微細パターン12が形成されている。
「微細パターン」について説明する。図1Aに示す「微細パターン12」とは、基板表面に形成された凹凸パターンである。図1Aでは、凸部18及び被覆層13が微細パターン12を構成する要素となっている。図1Aに示すように、各凸部の間が凹部底面14に該当している。微細パターン12のピッチとは、隣り合う凸部18の幅中心の間の距離(隣り合う凹部の幅中心の間の距離)や、一個分の凸部18とその凸部18に隣接する凹部との各幅寸法を足した大きさで定義される。
上記したように、凸部18は、熱反応型レジスト材料で形成され、被覆層13は、ネガ型熱反応型レジスト材料で形成される。このように凸部18は「ネガ型」「ポジ型」の区別がなく、材料選択の適用範囲は凸部18のほうが被覆層13よりも広くなっている。ただし後述するように、凸部18と被覆層13とは同じ材質で形成されていることが好ましいため、凸部18もネガ型熱反応型レジスト材料で形成されることが好適である。また、熱反応型レジスト材料の中には成膜条件や加熱温度を変えることで「ネガ型」、「ポジ型」の両方の性能で機能するため、本実施の形態に係る積層体に好適に用いることができる。
図1Aに示すように、熱反応型レジスト材料から成る凸部18膜厚はTで形成され、ネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13の膜厚はtで形成される。「凸部の膜厚」は、基板表面に対する法線方向において凸部の最大厚(最大高さ)となる部分を指す。また「被覆層の膜厚」は、凸部の表面(側面及び上面の区別を問わない)に対する法線方向において被覆層の最大厚となる部分を指す。したがって「被覆層の膜厚」は、図1Aに示す凸部18の側面15及び上面16に形成された部分における被覆層13b、13cの最大厚を示し、凹部底面14に形成された被覆層13aの膜厚は含まない。
図1Aに示すように、被覆層13の膜厚tは、凸部18の膜厚Tよりも薄く形成されている。あるいは、被覆層13の膜厚tは、凸部18の膜厚Tと同等であってもよい。ここで「同等」とは、同じである場合のみならず、被覆層13の膜厚tが、凸部18の膜厚Tより10%程度厚い場合も含まれる。
図1Aに示すように、凹部底面14に形成された被覆層13aの膜厚はt0で形成され、膜厚t0は、凸部18の表面に形成された被覆層13b、13cの膜厚tと同等かそれよりも薄く形成されている。
図1Bは、本実施の形態に係る積層体の他の例を示す断面模式図である。本実施の形態に係る積層体20においては、図1Bに示すように、被覆層13は凸部18の側面15から上面16にかけて(すなわち、凸部18の表面に)形成され、凹部底面14に形成されていない。図1Bに示す積層体20の構成は、図1Aに示す構造の積層体10に形成された被覆層13のうち、凹部底面14に形成された被覆層13aを除去した状態である。これにより図1Bでは、凸部14間には基板11の表面が露出した状態とされる。
上記したように、図1Aに示す積層体10では、凹部底面14に形成された被覆層13の膜厚t0は、凸部18の表面に形成された被覆層13の膜厚tと同等あるいはそれよりも薄い。このため図1Aの積層体10に対して凹部底面14の被覆層13を除去する工程を行った際、図1Bに示すように、凸部の側面15から上面16にかけて被覆層13b、13cを残したまま、凹部底面14に形成された被覆層13aを適切に除去することができる。なお、膜厚t0=tとなっても、熱変質は膜厚に依存するために、凸部18の膜厚T分により、t0<t+Tとなり、被覆層13aを除去することができる。
図1Bに示す構成では基板11の表面に、凸部18の表面には被覆層13が形成され、凹部底面14には被覆層13が形成されていない凹凸からなる微細パターン17が形成されている。この微細パターン17は、基板11の表面に凹凸の微細パターンを形成(転写)する際のマスクとして機能する。
本実施の形態では図1A、図1Bの構成のように、熱反応型レジスト材料からなる凸部18の表面をネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13で覆うことにより、凸部18を適切に保護できるとともに、被覆層13によりラフネス改善された微細パターン12、17を得ることができる。そして後述するように、図1Bに示す形態の積層体20を用いることで、基板11に微細パターンを精度よく形成でき、所望のモールドを得ることができる。
ところで熱反応型レジスト材料は、露光の熱により熱反応型レジスト材料の一部を熱変質させて微細パターンを形成する。微細パターンを形成するに際し、より微細化するほど熱の影響により熱反応型レジスト材料の粒子成長に基づく粗大化が顕著化し、パターンラフネスが悪化しやすくなる。
図2は、パターンラフネスが悪い場合の微細パターンを示す断面図である。図2に示すように、基板11上に形成され、熱反応型レジスト材料から成る微細パターンを構成する凸部19は、特にその側面でのパターンラフネスが前述の理由から悪化している。このようにパターンラフネスが悪い微細パターンをマスクとして基板11をドライエッチングすると、マスク形状がそのまま基板11に転写されるため、パターンラフネスの悪い凹凸からなる微細パターンが基板11の表面に形成(転写)されてしまう。
図3は、本実施の形態に係る積層体のパターンラフネスの改善を説明するための説明図である。図3Aに示す本実施の形態に係る積層体30は、図1Aに示す積層体10と同様に、基板11と、基板11上に形成された複数の凸部19と、凸部19の表面及び凹部底面14を覆う被覆層13と、を有する。凸部19と被覆層13により基板11の表面には凹凸の微細パターン12が形成されている。
図3Aに示すように凸部19の側面15には凹みや突起が生じており、パターンラフネスが悪化した状態であることがわかる。そこで本実施の形態では、パターンラフネスの悪い凸部19の表面をネガ型熱反応型レジスト材料からなる被覆層13で覆うことで、パターンラフネスを改善し、これにより優れたラフネスを有する微細パターン12を形成することができる。
ここで、パターンラフネスの改善方法について説明する。被覆層13は、パターンラフネスの悪い凸部19の側面15及び凸部19の上面16に積層された被覆層13b及び13cと、凹部底面14に堆積した被覆層13aと、に大別できる。ここで被覆層13b及び13cは、後者の被覆層13aに比べて膜厚が厚い(図1A参照)。本実施の形態では被覆層13をスパッタ法等により形成するが、その際、凸部19の上面16や側面15に優先的に被覆層13が成膜されやすい。一方、凹部底面14は、その領域が狭く、また側面15に成膜される被覆層13の陰になって、凸部19の側面15や上面16に比べて成膜されにくい。このため、図3Aに示すように、凹部底面14に形成される被覆層13aの膜厚は、凸部19の側面15や上面16に形成される被覆層13b、13cの膜厚と同等あるいはそれに比べて薄く形成される。なお図3Aでは誇張して図示しているが、被覆層13の側面15に形成された凹みや突起は被覆層13の膜厚に比べて非常に小さく、凹みや突起は被覆層13により適切に被覆されるとともに被覆層13の成膜過程で徐々に凹みや突起上を覆う被覆層13の表面が徐々に均されていき、やがて図3Aのように表面が平坦な被覆層13を形成することができる。
次に図3Aに示す積層体30を露光した状態を図3Bに示す。凸部19の側面15及び凸部の上面16に積層された被覆層13b及び13cは、微細パターン12の凹部底面14に堆積した被覆層13aに比べ膜厚が同等あるいはそれに比べて厚いため、露光の際の光を多く吸収することができる。その結果、被覆層13b及び13cを、被覆層13aよりも高温にすることができる。そのため露光条件を最適化することで被覆層13b及び13cのネガ型熱反応型レジスト材料のみを適切に熱変質させることができる。図3Bでは、適度に熱変質した領域(被覆層13b及び13c)と、熱変質していない、あるいは被覆層13b及び13cに比べて熱変質が少ない領域(被覆層13a)とを区別すべく、図面上、被覆層13b及び13cと、被覆層13aとでハッチングを変えた。
ここで、熱反応型レジスト材料から成る凸部19は、被覆層13に対する露光条件に対して熱変質する材料でもよく、熱変質しない材料でもよい。図3Bでは熱変質する材料とし、図3Aから熱変質したことを示すため、凸部19のハッチングを図3Aと図3Bとで変えた。
次に図3Bに示す積層体30を現像した状態を図3Cに示す。被覆層13に用いる熱反応型レジスト材料はネガ型材料であるため、熱変質した被覆層13b及び13cは、現像液に対して不溶化している。一方、被覆層13b及び13cに比べて膜厚が薄い被覆層13aは熱変質していないか、熱変質の度合が被覆層13b及び13cに比べて低いため、現像により溶解して除去され、熱変質した被覆層13b及び13cは、パターンラフネスの悪い凸部19の表面を覆った状態を適切に保つ。これにより、表面が被覆層13で覆われた凸部19と、凸部19間にて基板表面が露出した凹部とが繰り返して形成された微細パターン21を基板11の表面に形成することができる。微細パターン21のうち、表面が被覆層13で覆われた凸部19の部分は、モールド形成の際のマスクとして機能し、本実施の形態では、優れたパターンラフネスを有する微細パターン形成用マスクを得ることができる。
図3では、凸部19のパターンラフネスが悪い例としたが、これに限らず、図1に示すようにパターンラフネスが良い凸部18の表面に被覆層13を形成してもかまわない。この場合、凸部18の側面15及び上面16に形成された被覆層13を熱変質させることで、前記被覆層13を凸部18に対する保護層として機能させることができる。そして、図1Bに示す微細パターン17の、表面に被覆層13が形成された凸部18の部分を微細パターン形成用マスクとして基材11をエッチングする際、エッチング耐性を上げることができる。
一方、広範に使用されているフォトレジスト材料では、反応メカニズムが熱ではなく光である。そのため、フォトレジストを用いた場合、光のスポット径(照射エリア)に対してはレジストの反応(変質)が進むものの、膜厚等の吸収率に応じた反応(変質)を制御することは困難になり、上記パターンラフネスの改善は困難である。そのため本実施の形態のような積層体に関する検討はこれまでなされてこなかった。
なお、「パターンラフネス」とは、パターン形状のラフネスであり、パターン側壁に引いた基準線(ラインアンドスペースの場合は、基準線が直線になる)からのずれの程度を指し、パターン側壁が基準線に近いほど凹凸が小さく、表面が滑らかであることを意味する。
図4は、図3Aの一部を拡大して示した部分拡大縦断面図である。図4に示すように、凸部19の側面15には突起19aが形成されている。凸部19の表面を覆う被覆層13には前記突起19aの表面に倣った微小な突起13dが形成されている。その後、図3Bと同様に、露光を行うことで、露光光が膜厚に応じて吸収され、熱に変換される。即ち、膜厚に応じて熱変質が進行する。図4に示すように、突起13dは、略露光方向である膜厚方向Hでは、凸部19と被覆層13cとの総合膜厚(高さ方向H′への膜厚)に比べて、膜厚が薄い。従って、突起13dは熱変質しない。また、被覆層13aの膜厚も凸部19と被覆層13cとの総合膜厚に比べて薄い。従って、被覆層13aも熱変質しない。以上により、現像工程により、突起13d及び被覆層13aが除去され、凸部19の表面に残された被覆層13b及び13cの表面は平坦面となる(図3C参照)。
本実施の形態に係る積層体において、凸部の表面を覆う被覆層13の膜厚t(図1A参照)は、10nm以上100nm以下であることが好ましい。ここで膜厚tは最大膜厚を示している。熱反応型レジスト材料の加熱は、露光等の光を熱反応型レジスト材料が吸収して熱に変化することで達成される。したがって、加熱を達成するためには、熱反応型レジスト材料が光を吸収する必要があり、この光の吸収量は膜厚に大きく依存する。ネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13の膜厚tが10nm以上だと、光の吸収量が多くなるため、効率よく加熱できる。したがって、本実施の形態に係るネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13の膜厚tは10nm以上が好ましい。なお、膜厚が薄い場合でも、被覆層13の上方と下方の両方、又はいずれか一方に光吸収層等を配置することで、光の吸収量を補うことができる。
一方、ネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層の膜厚tを100nm以下とすることで、露光による膜厚方向への均一性を適切に確保することができる。即ち、深さ方向だけでなく、膜面方向の微細パターン12の加工精度も好ましいものとなる。以上のことから、被覆層13の膜厚としては10nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上50nm以下が特に好ましい。
本実施の形態では、図1Aに示す凹部底面14に形成された被覆層13aの膜厚t0は、凸部(レジスト材料層)18の表面に形成された被覆層13b、13cの膜厚tと同等かそれよりも薄く、具体的には膜厚t0は、10nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以上80nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上50nm以下であり、特に好ましくは10nm以上30nm以下である。これにより、露光の際、凹部底面14に形成された被覆層13では熱変質せず、あるいは熱変質しにくくでき、現像により凹部底面14に形成された被覆層13の部分を選択的に除去することができる。
本実施の形態に係る積層体において、微細パターンの凸部に用いる熱反応型レジスト材料と被覆層13に用いるネガ型熱反応型レジスト材料は、無機材料からなることが好ましい。これにより、熱反応に着眼した微細パターンラフネス改善効果を適切に発揮することができる。
本実施の形態に係る積層体において、熱反応型レジスト材料とネガ型熱反応型レジスト材料は、無機材料の中でも主要フッ化物の沸点が200℃以上の元素を少なくとも1種類含む熱反応型レジスト材料や、タングステン不完全酸化物、モリブデン不完全酸化物、タングステンモリブデン不完全酸化物、金不完全酸化物等が好ましい。
次に、熱反応型レジスト材料とネガ型熱反応型レジスト材料に好適な主要フッ化物の沸点が200℃以上の元素について説明する。本実施の形態に係る積層体は、微細パターンが形成された熱反応型レジスト材料をマスクとして用いて基板11をドライエッチングして、モールドを作製するのに好適な材料である。従って、熱反応型レジスト材料がドライエッチング処理中にマスクとして機能するために、熱反応型レジスト材料のドライエッチング耐性が高いことが好ましい。本実施の形態において、熱反応型レジスト材料とネガ型熱反応型レジスト材料は、主要フッ化物の沸点が200℃以上の元素を少なくとも1種類含む熱反応型レジスト材料から構成されることが好ましい。これにより、フロン系ガスを用いたドライエッチング処理に対しドライエッチング耐性をより効果的に向上させることができる。
なお、フッ化物の沸点とは、元素が多価のフッ化物を形成する場合は、元素の主たる価数のフッ化物の沸点(=主要フッ化物の沸点)のことをいう。例えば、タングステンを例にとると、タングステンは2価、4価、5価、6価の価数をとり得る。このため、タングステンのフッ化物は、WF2、WF4、WF5、WF6が形成可能であるが、タングステンの主たる価数は6価であることから、タングステンの主要フッ化物とは、WF6を指し、主要フッ化物の沸点とは、WF6の沸点のことを指す。
本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料とネガ型熱反応型レジスト材料において、主要フッ化物の沸点が200℃以上の熱反応型レジスト材料について具体的には、以下のような熱反応型レジスト材料を挙げることができる。
本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料としては、不完全酸化物、分解性酸化物、分解性窒化物、分解性炭化物、分解性炭酸化物、分解性硫化物、分解性セレン化物、溶融性複合金属材料、相変化性複合金属材料、酸化性複合金属材料のいずれかを含有することが好ましい。
不完全酸化物としては、遷移金属及びXII族〜XV族元素からなる群から選ばれた元素の不完全酸化物であることが好ましい。また、不完全酸化物としては、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Rh、Ag、Hf、Ta、Au、Al、Zn、Ga、In、Sn、Sb、Pb、及びBiからなる群から選ばれた元素の不完全酸化物であることが好ましく、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Ag、Ta、Au、Sn、Pb、及びBiからなる群から選ばれた元素の不完全酸化物であることがさらに好ましい。
分解性酸化物としては、CuO、Co3O4、MnO2、Mn2O3、CrO3、Cr5O12、PbO2、Pb3O4、TaO2、Rh2O3、RuO2、MgO2、CaO2、BaO2、ZnO2、のいずれかであることが好ましい。また、分解性酸化物としては、CuO、Co3O4、MnO2、Mn2O3、CrO3、Cr5O12、PbO2、Pb3O4、MgO2、CaO2、BaO2、ZnO2、のいずれかであることがより好ましい。さらに、分解性酸化物としては、CuO、Co3O4、MnO2、Mn2O3、CrO3、Pb3O4、BaO2、CaO、のいずれかであることがさらに好ましい。
分解性窒素化物としては、Zn3N2、CrN、Cu3N、Fe2N、Mg3N2、のいずれかであることが好ましい。また、分解性炭化物としては、NdC2、Al4C3、のいずれかであることがより好ましい。
分解性炭酸化物としては、MgCO3、CaCO3、SrCO3、BaCO3、ZnCO3、CdCO3、Ag2CO3、PbCO3、NiCO3、のいずれかであることが好ましい。また、分解性炭酸化物としては、MgCO3、CaCO3、SrCO3、BaCO3、のいずれかであることがより好ましい。
分解性硫化物としては、CuS、Ni3S4、FeS、FeS2、Fe2S3、SnS2、HfS2、TiS2、Rh2S3、RuS2、Bi2S3、Cr2S3、GaS、BaS3、MnS2、Nd2S3、のいずれかであることが好ましい。また、分解性硫化物としては、CuS、FeS2、SnS2、HfS2のいずれかであることがより好ましく、FeS2、SnS2、のいずれかであることがさらに好ましい。
分解性セレン化物としては、CuSe、Bi2Se3、FeSe、GaSe、のいずれかであることが好ましい。また、分解性セレン化物としては、CuSeであることがより好ましい。
溶融性複合金属材料、相変化性複合金属材料、酸化性複合金属材料としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Al、Ga、In、Sn、Pb、Sb、及びBiからなる金属群(α)並びにV、Mo、W、Ge、Se、及びTeからなる金属群(β)からなる群から選択された2種類の金属を含有し、且つ、金属のうち少なくとも1種類が金属群(α)から選択されたものであることが好ましい。
また、溶融性複合金属材料、相変化性複合金属材料、酸化性複合金属材料としては、Mg、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Al、Ga、In、Pb、Sb、及びBiからなる金属群(γ)並びにV、Mo、W、Ge、及びTeからなる金属群(δ)からなる群から選択される2種類の金属を含有し、且つ、金属のうち少なくとも1種類が金属群(γ)から選択されたものであることがより好ましい。
さらに、溶融性複合金属材料、相変化性複合金属材料、酸化性複合金属材料としては、In−Sb、Sn−Sb、Cr−Sb、Ga−Sb、In−Sn、Ni−Sn、Al−Sn、Bi−Sn、Sn−Pb、Ni−Bi、Zn−Sb、Ni−Cr、Ni−Nb、Al−Ni、Cu−Zr、Ag−Zn、Ge−Sb、Sb−Te、Bi−Te、Ni−W、Zn−Te、Pb−Te、Mo−Nb、W−Nb、Cr−Mo、Cu−Vで表される金属種の組み合わせのうち、いずれかを含有することがさらに好ましい。
また、溶融性複合金属材料、相変化性複合金属材料、酸化性複合金属材料としては、In5Sb95、In32Sb68、In68Sb32、In1Sb99、Sn50Sb50、Cr50Sb50、Ga50Sb50、Ga40Sb60、Ga30Sb70、Ga20Sb80、Ga12Sb88、Ga10Sb90、In47Sn53、In53Sn47、Ni80.7Sn19.3、Al2.2Sn97.8、Bi43Sn57、Sn26Pb74、Sn25Pb75、Sn74Pb26、Ni50Bi50、Ni40Bi60、Ni60Bi40、Ni70Bi30、Ni80Bi20、Ni90Bi10、Zn32Sb68、Ni50Cr50、Ni83.8Nb16.2、Ni59.8Nb40.2、Al97.3Ni2.7、Cu90.6Zr9.4、Ag70Zn30、Ge10Sb90、Ge20Sb80、Ge30Sb70、Ge50Sb50、Bi90Te10、Bi97Te3、Ni81W19、Zn50Te50、Pb50Te50、Mo40Nb60、Mo50Nb50、W40Nb60、W50Nb50、Cr85Mo15、Sb40Te60、Bi10Te90、Cu8.6V91.4、Cu13.6V86.4、Cu18.6V81.4のいずれかを含有することが特に好ましい。さらに、溶融性複合金属材料、相変化性複合金属材料、酸化性複合金属材料としては、Sb40Te60、Bi10Te90、Cu8.6V91.4、Cu13.6V86.4、Cu18.6V81.4のいずれかを含有することが最も好ましい。
本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料としては、Cr、W、Nb、Ta、Ti、Sn、Pbのいずれかの不完全酸化物、Mn2O3、CuO、Co3O4、Pb3O4、BaO2、CaCO3、FeS2、SnS2のいずれかから選ばれることが好ましく、より微細パターンを形成する観点からは、銅酸化物(CuO)、クロム酸化物(Crの不完全酸化物)、スズ酸化物(Snの不完全酸化物)、コバルト酸化物(Co3O4)、マンガン酸化物(Mn2O3)、タングステン酸化物(Wの不完全酸化物)、モリブデン酸化物(Moの不完全酸化物)等を主成分とする材料であることが好ましい。
本実施の形態に係る積層体において、熱反応型レジスト材料から成る微細パターン12を構成する凸部18(19)とネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13は、同じ材料から成ることが好ましい。同じ材料を用いることで、成膜条件、露光条件などが類似化でき、さらに近い現像特性が得られることから、被覆層13で発現するパターンラフネス改善効果を高くすることができる。
以上のことから、本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料とネガ型熱反応型レジスト材料は、同じ材料から成ることが好ましく、具体的には、銅酸化物、クロム不完全酸化物、スズ不完全酸化物、コバルト酸化物、マンガン酸化物、タングステン不完全酸化物、モリブデン不完全酸化物、タングステンモリブデン不完全酸化物等を主成分とする材料が好ましい。
本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料とネガ型熱反応型レジスト材料は、前述のとおり、フロン系ガスを用いたドライエッチング処理に対し、高い耐性を有するため、アスペクト比(溝の深さをパターン幅で除した値)を自由に選択できることで、設計の自由度が広がる。このことからも、本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料とネガ型熱反応型レジスト材料は、ドライエッチングの耐性が高いことが重要になる。一方、基板11はドライエッチング耐性が低い材料が好ましい。本実施の形態に係る基板11は、材質について特に制限を受けない。しかし、表面平滑性、加工性に優れる材質であり、かつ、ドライエッチング処理できる材質であることが好ましい。そのような材質の代表としてガラスを用いることができる。その他、基板11として、シリコン、二酸化ケイ素等を用いることもでき、最も好ましい材質は石英である。
また、本実施の形態に係る積層体10、20、30は、基板11の上面、即ち基板11と凸部18、19及び被覆層13の間にエッチング層(図示せず)を導入し、エッチング層をドライエッチングしてモールドを作製しても良い。エッチング層を導入することで基板11にドライエッチング耐性が高い材料も用いることのできるため基板11の選択の幅が広がり、例えばアルミニウム、チタニウム、銅、銀又は金等を用いることもできる。
本実施の形態に係るエッチング層を構成するエッチング材料は、選択する元素の主たるフッ化物の沸点が低い材料を選択することが好ましい。具体的には、フッ化物の沸点が250℃未満の元素から選ばれる1つ以上の材料の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、及びシリサイドのうち少なくともいずれか1つより選択されることが好ましい。
本実施の形態に係るエッチング層の材料は具体的には、Ta、Mo、W、C、Si、Ge、Te、及び、P並びにそれら2種類以上の複合物、並びにそれらの酸化物、窒化物、及び炭酸化物からなる群より選ぶことができる材料であり、好ましくは、Ta、Si、Ge、及び、P並びにそれらの酸化物、窒化物、硫化物、及び炭酸化物、並びにMo、Wのシリサイドからなる群より選ばれた材料であり、さらに好ましくは、Ta、Si、Ge、及びP並びにそれらの酸化物、及び窒化物からなる群より選ばれた材料である。特に好ましくは、成膜の容易性、経時安定性、強度、コスト、密着性等の観点から、SiO2、Si、Si3N4であり、最も好ましくはSiO2である。
続いて、本実施の形態に係る積層体の製造方法を図5で説明する。図5は、本実施の形態に係る積層体の製造方法を説明するための工程図である。図6は、図5に続く、本実施の形態に係る積層体の製造方法を説明するための工程図である。
まず、図5Aに示すように、基板11上の全面に、微細パターン形成用としての熱反応型レジスト層42を成膜する。続いて、図示しないマスクを用いて図5Aに示す熱反応型レジスト層42を露光し、露光された熱反応型レジスト材料の部分を熱変質させる。そして熱変質したレジスト部分を現像液で現像し、図5Bに示すように、基板11上に複数の凸部19を得る。各凸部19の間の凹部底面14は基板表面が露出した凹部となり、このように凹凸の微細パターンを得ることができる。このとき、図5Bに示すように、凸部19の側面には凹みや突起が見られ、パターンラフネスが悪化している。このようなパターンラフネスの悪化は、凹凸の微細パターンのピッチがより微細化することで顕著化する。それは微細化するほど、熱反応型レジスト材料に対する露光の際の熱の影響により、熱反応型レジスト材料の粒子成長に基づく粗大化が顕著化するためである。
続いて本実施の形態では図5Cに示すように、凸部19の側面15、上面16及び凹部底面14にかけてネガ型熱反応型レジスト材料からなる被覆層13を成膜する。このとき、凸部19の表面に形成された被覆層13b、13cの膜厚tが凸部19の膜厚Tよりも薄くなるように成膜時間や成膜速度等を制御する。このとき、膜厚t(最大膜厚)が10nm以上100nm以下となるように制御する。また、凹部底面14に形成された被覆層13aの膜厚t0を被覆層13b、13cの膜厚tよりも薄く形成する。膜厚tと膜厚t0との制御については、スパッタ方向をやや斜めに傾けた状態として、凸部19の側面15及び上面16に優先的に成膜し、一方、凹部底面14は、凸部19が陰になって成膜されにくく、被覆層13aの膜厚t0が被覆層13b、13cの膜厚tよりも薄い状態を得ることができる。
続いて、図5Cに示す凹部底面14に形成された被覆層13a及び熱変質していない13b(図4の突起13d)を除去する。このとき、まず被覆層13に対して露光を行う。露光の際マスクは必要なく、被覆層13全体に露光を施す。本実施の形態では、凸部19の側面15及び上面16に積層された被覆層13b及び13cの部分における基板から微細パターン表面までの膜厚が、凹部底面14に堆積した被覆層13aに比べ厚いため、露光の光を多く吸収することができ、高温にすることができる。そのため露光条件を最適化することで被覆層13b、13cのネガ型熱反応型レジスト材料のみを熱変質させることができる。一方、被覆層13aは膜厚が薄く熱変質しない。また被覆層13aが薄いことに加えて、被覆層13aは露光の際の光が届きにくい奥まった場所に存在するため、熱変質が起こりにくい状態にある。
本実施の形態では上記したように、凸部19の表面に形成された被覆層13b、13cの膜厚tを凸部19の膜厚Tと同等、あるいは膜厚Tよりも薄くなるように調整している。被覆層13b、13cの膜厚tが凸部19の膜厚Tより厚くなると、パターンラフネスを適切に改善できないことが後述する実験によりわかっている。被覆層13b、13cの膜厚tを凸部19の膜厚Tより厚くなるように調整すると、特に凸部19の側面15に成膜される被覆層13bの膜厚制御が非常に困難となる。この結果、被覆層13bの膜厚を一定に保ち得ず、パターンラフネスが大きくなるものと考えられる。
また本実施の形態では、上記したように、凸部19の表面に形成された被覆層13の好ましい膜厚tを最大膜厚で10nm以上としたが、これにより、被覆層13b、13cにおいて露光光の適度な吸収量を得ることができる。また、凸部19の表面に形成された被覆層13の好ましい膜厚tを最大膜厚で100nm以下としたが、これにより、露光による膜厚方向への均一性を適切に確保することができる。
上記したように図6Aでは、被覆層13に対する露光により、被覆層13のうち凸部19の表面に形成された被覆層13b及び13cが熱変質しており、凹部底面14に形成された被覆層13aは熱変質していない。したがって図6Aに示す被覆層13b、13cは図5Cから熱変質しているため、図6Aと図5Cとで被覆層13b、13cのハッチングを変えた。また、凸部19を構成する熱反応レジスト材料は、被覆層13b、13cに対する露光の影響を受けて熱変質する材質であっても熱変質しない材質であってもどちらでもよいが、ここでは熱変質する材質を使用した。したがって、図6Aと図5Cとで凸部19のハッチングを変えた。
次に図6Aに示す熱変質していない被覆層13aを除去する。図6Aでは熱変質した被覆層13b及び13cに対して不溶な現像液を用いることで、被覆層13aだけを選択的に除去することができる。図6Bは、図6Aの状態から凹部底面14の被覆層13aが除去された状態を示す積層体の断面図である。図6Aでは、被覆層13が凸部19の表面にのみ形成され、凹部底面14では基板表面が露出している。本実施の形態では、「積層体」とは図5Cの構造、図6Aの構造あるいは図6Bの構造を指す。
次に、本実施の形態に係る積層体を用いたモールドの製造方法を図7A及び図7Bを用いて説明する。図7は、本実施の形態に係る積層体を用いたモールドの製造方法を説明するための工程図である。
図7Aでは、図6Bに示す、基板表面に形成された微細パターンを構成する凸部19と被覆層13とが積層された部分を、微細パターン形成用マスク23として用いる。本実施の形態では、凸部19のパターンラフネスが悪い状態であっても凸部19の表面を、ネガ型熱反応レジスト材料からなる被覆層13で覆うことで、微細パターン形成用マスク23のパターンラフネスを改善することができる。
そして図7Aでは、ラフネス改善が行われた微細パターン形成用マスク23を用いて、例えばフロン系ガスを用いて基板11をドライエッチング処理する。これにより基板11の表面に凹凸の微細パターン24を得ることができる。
続いて、図7Bでは、微細パターン形成用マスク23を除去する。このとき、マスク23は溶解するが、基板11は影響をうけない薬剤を用いることが必要である。これにより基板11の表面に凹凸の微細パターン24が形成されたモールド51を製造することができる。
本実施の形態に係る基板11の形状は、平板形状又はスリーブ(ロール、ドラム)形状とすることができる。光ディスクの原盤やナノインプリント等で用いられるモールドの多くは小型で平板形状であるため、簡単な装置により転写することが可能である。一方、スリーブ形状は、大面積にパターンを転写できる特徴がある。近年、大面積に微細パターンを形成する要望が多くなっているため、基板の形状は、スリーブ形状が好ましい。
熱反応型レジスト層42及びネガ型熱反応レジスト材料から成る被覆層13を成膜する場合は、スパッタリング法、蒸着法、あるいはCVD法を用いた成膜が好ましい。熱反応型レジスト材料は、数十nmレベルの微細パターン加工が可能であるため、微細パターンサイズによっては、成膜時の熱反応型レジスト材料の膜厚分布や表面の凹凸が非常に大きく影響することが考えられる。そこで、これらの影響をできる限り少なくするために、膜厚の均一性等の制御がやや困難な塗布法やスプレー法等による成膜方法より、スパッタリング法や蒸着法やCVD法等の成膜方法で熱反応型レジスト材料を形成することが好ましい。特に膜厚の制御や様々な材料種に対応できることからスパッタリング法が最も好ましい。
本実施の形態に係る露光に用いるレーザーは、KrFやArFレーザー等のエキシマレーザーや、半導体レーザー、電子線、X線等を用いることができる。KrFやArFレーザー等のエキシマレーザーは装置が非常に大型で高価なこと、電子線、X線等は真空チェンバーを使用する必要があることからコストや大型化の観点からかなりの制限がある。したがって、光源装置が非常に小型化でき、安価である半導体レーザーを用いることが好ましい。
一般的に、電子線やエキシマレーザー等を用いて露光光源を短波長化することで微細パターンの形成を可能にしてきたが、本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料は半導体レーザーでも十分に微細パターンを形成することが可能である。
本実施の形態に係る熱反応型レジスト材料は、レーザーのスポット径内(照射範囲内)に熱反応する領域と熱反応しない領域の双方を有することが好ましい。本実施の形態においては、レジスト材料としてフォトレジスト材料ではなく、熱反応型レジスト材料に着眼したことにより、レーザー光の照射範囲内において、レジスト材料が反応する領域、及び反応しない領域の双方を有することを達成している。図8は、熱反応型レジスト材料にレーザー光を照射した場合におけるレーザー光のスポット径(照射領域)とスポット径内の温度分布との関係を示す模式図である。図8に示すように、熱反応型レジスト材料の主面に対し、略垂直にレーザー光を照射した場合、レーザー光のスポット径は、レーザー光の焦点を中心に、レジスト材料の主面に対して略円形状に形成される。
ここで、レーザー光のスポット径内における温度分布は、図8の上段に示すように、レーザー光の焦点付近を頂点とし、照射範囲の外周縁に向かうにつれて低くなる。この場合、所定の温度で反応する熱反応型レジスト材料を用いることにより、レーザー光の焦点付近を露光することができる。即ち、熱反応型レジスト材料が、レーザーのスポット径内に生じた温度分布に対して、所定温度以上で反応する領域を持つようにすることで、スポット径より微細な加工を実現することを可能にしている。これにより、本実施の形態では、小型でかつ安価で特殊な付帯設備が不要である半導体レーザーを使って露光を行うことができる。例えば、現状市販されている短波長の半導体レーザーの波長は405nm程度で、そのスポット径は420nm程度(開口数:0.85)である。このため、420nm以下の微細加工は、フォトレジスト材料を使う限り原理的に不可能であるが、熱反応型レジスト材料を使うことでこの限界を超えることができ、半導体レーザーの波長以下の微細加工を行うことができる。
次に、本実施の形態に係る現像においては、露光で熱変質していない部分、即ち微細パターンの凹部底面14に形成された被覆層13aを選択的に除去する工程であり、除去には、ウェットエッチング又はドライエッチングを用いることができる。均一性やコスト等の観点で、ウェットエッチングが好ましい。現像に用いることのできる現像液は、酸溶液、アルカリ溶液、錯形成剤、及び有機溶剤等を単独又は適時組合せて用いることができる。酸溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、酢酸、シュウ酸、フッ酸、硝酸アンモニウム等を用いることができる。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等を用いることができる。錯形成剤としては、シュウ酸、エチレンジアミン4酢酸及びその塩、グリシン等の溶液を単独又は混合溶液として用いることができる。また、現像液中に過酸化水素や過酸化マンガン等の電位調整剤等を添加しても良い。さらに、現像液中に界面活性剤等を添加して現像性を向上させても良い。また、現像においては、まず酸現像液で現像した後に、アルカリ現像液で現像して所望の現像を達成する、あるいはアルカリ現像液で現像した後に、酸現像液で現像して所望の現像を達成する。又は、複数段階にわたる現像を行っても良い。なお、選択する熱反応型レジスト材料の組成によっては、現像が不要な場合がある。
現像液を、露光後の熱反応型レジスト層42(図5A参照)やネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13に作用させる方法は特に限定されず、現像液に浸漬させてもよく、現像液を噴射してもよい。現像液に浸漬させる際に液を循環させるか、あるいは露光後の熱反応型レジスト層42及びネガ型熱反応型レジスト材料から成る被覆層13の熱反応型レジスト材料を動作させることにより、単位時間当たりに熱反応型レジスト材料に触れる液の量を増加させると、現像速度を上げることができる。また、現像液を熱反応型レジスト材料に噴射する際に噴射圧を上げることで、現像速度を上げることができる。現像液を熱反応型レジスト材料に噴射させる場合は、ノズルを移動させる方法、熱反応型レジスト材料を回転させる方法等を単独で用いることもできるが、併用すると現像が均一に進行するため好ましい。噴射に用いるノズルの種類は任意のものが使用可能で、例えばラインスリット、フルコーンノズル、ホローコーンノズル、フラットノズル、均一フラットノズル、ソリッドノズル等を挙げることができ、熱反応型レジスト材料や基板11の形状に合わせて選択できる。また、一流体ノズルでも二流体ノズルでも構わない。
現像液を露光後の熱反応型レジスト材料に作用させる際に、不溶性の微粉末等の不純物が現像液中に存在すると、特に微細なパターンを現像する際にムラの原因となるおそれがあるので、現像液を事前にろ過しておくことが好ましい。ろ過に用いるフィルターの材質は現像液と反応しないものなら任意に選択でき、例えばPFA、PTFE等を挙げることができる。フィルターの目の粗さはパターンの微細度合いに応じて選択すればよいが、0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。また、溶出した成分の析出、再付着を防ぐためには、浸漬より噴射が好ましく、さらに、現像液を熱反応型レジスト材料に噴射する場合は現像液を使い捨てにすることが望ましい。現像液を再利用する場合は、溶出成分を除去することが好ましい。
現像方法においては、露光後の熱反応型レジスト材料を洗浄する工程と、現像後の基板11及び熱反応型レジスト材料を洗浄する工程と、を含むことが好ましい。
次に、本実施の形態に係るドライエッチングについて説明する。ドライエッチング処理する際に用いられる装置としては、真空中でフロン系ガスが導入でき、プラズマが形成でき、エッチング処理ができるものであれば特に制限はなく、例えば、市販のドライエッチング装置、RIE装置、ICP装置等を用いることができる。ドライエッチング処理を行うガス種、時間、電力等は、熱反応型レジスト材料の種類、エッチング層の種類、厚み、エッチングレート等によって適宜決定し得る。ドライエッチング処理に用いるフロン系ガスは、特に制限はないが、CF4、CHF3、CH2F2、C2F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、SF6、CCl2F2等のフルオロカーボン等が挙げられ、単独で用いても、複数のガスを混合して用いても構わない。さらにこれらのガスにO2、H2、Ar、N2、CO等を混合したガス、またHBr、NF3、SF6、CF3Br、HCl、HI、BBr3、BCl3、Cl2、SiCl4の混合ガスやこれらにAr、O2、H2、N2、CO等のガスを混合したガスもフロン系ガスの範囲とする。
さらに、前述のエッチングガスの種類、組成、エッチング圧力及び温度といった条件を最適化することによって微細パターン形成用マスク23の耐性や、基板11及びエッチング層のエッチング方向を制御することができる。例えば、フロン系のエッチングガスにAr添加することで、フロン系ガスの解離度を制御して、基板11又はエッチング層と微細パターン形成用マスク23に対するエッチングレートを増減させる方法や、使用するフロンガスのFとCとのモル比の制御や、ドライエッチング処理の圧力の制御で、エッチング方向を垂直から斜めに制御して、所望のモールド形状を製造する方法等がある。
最後に、モールドの製造過程において、基材11から微細パターン形成用マスク23を除去する必要がある。微細パターン形成用マスク23の除去方法は、基板11やエッチング層に影響がなければ特に制限はなく、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等を用いることができる。
本実施の形態においては、これらのモールドの製造方法を用いることにより、ピッチが1nm以上1μm以下の微細パターンを有するモールドを製造することが可能となる。本実施の形態に係る微細パターンは、ピッチが1nm以上5μm以下であり、1nm以上3μm以下が好ましく、1nm以上1μm以下がより好ましく、10nm以上950nm以下がさらに好ましく、30nm以上800nm以下が最も好ましい。ここで記載したピッチはモールド51の表面に形成された微細パターンのピッチであるが、積層体の表面に形成された微細パターンのピッチと置き換えることができる。
また本実施の形態では、LERを1.5nm以下にすることができる。LER(Line Edge Roughness)とは、パターンの乱れを表す指標である。具体的には、パターン側壁が基準線に比してどの程度凹凸があるかを表す指標である。本実施の形態では、微細パターン形成用マスク23により基板11(または、ドライエッチング層)をドライエッチングしてパターンを基板11に転写する。その際、レジストのパターンラフネスがドライエッチングを介して忠実に基板11側に転写される。以上のことから、微細パターン形成用マスク23のラフネスが基板11のラフネスに影響を与えることになる。したがってモールドを構成する基板11に転写された微細パターンのLERが1.5nm以下であるとともに、基板11に微細パターンを形成するために用いられる微細パターン形成用マスク23の微細パターンのLERも1.5nm以下であることが必要とされる。
本実施の形態のレジスト組成を用いることで上記した全ての微細パターンにおいて、LERが1.5nm以下にすることができる。
上記では、レジスト材料層として、複数の凸部18を例示したが、図9に示すように、レジスト材料層80に基板表面に向けて貫通する複数の凹部88を備えた構成としてもよい。凹部の底面84に基板表面あるいは基板上に形成された中間層の表面が露出している。底面84が図1の凹部底面14に該当する。
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(LER)
LER(Line Edge Roughness)とは、パターンの乱れを表す指標であり、パターンエッジ形状のラフネス、即ち、パターン端部にできた凹凸の大きさを表す。LERの値が小さいほど、パターン形状にバラつきがないことを表す。LERは、現像後のレジストの表面SEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、得られた像をSEMI International Standardsに記載のSEMI P47−0307に従い導出した。
(実施例1から実施例7)
2inφ、厚み0.5mmの石英ガラス基板上に、スパッタリング法を用いて表1の組成及び膜厚の通り微細パターン形成用の熱反応型レジスト材料(レジスト材料1)を成膜した。
以上のように成膜した熱反応型レジスト材料を、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜25mW
送りピッチ:100nm〜800nm
露光速度:0.6m/s〜11.0m/s
露光中にレーザーの強度を変調させることで、さまざまな形状やパターンを作製できるが、実験では露光精度を確かめるために、パターンとして連続の溝形を使用した。形成する形状は目的とする用途によっては孤立した円形や楕円形状等でも構わず、本発明は露光形状によって何ら制限を受けるものではない。
続いて、上記露光機によって露光された熱反応型レジスト層を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、3分間で実施した。
このように現像された熱反応型レジストについて、SEM(走査型電子顕微鏡)にて表面形状を観察したところ、微細パターンが観察され、表1に示す被覆層形成前のLERが得られた。
続いて、被覆層としてネガ型熱反応型レジスト材料(レジスト材料2)をスパッタリング法により表1の組成及び膜厚の通り成膜した。なお膜厚は凸部表面に形成された被覆層としての最大膜厚を示す。
以上のように成膜したネガ型熱反応型レジスト材料を、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜25mW
送りピッチ:20nm〜50nm
露光速度:0.6m/s〜11.0m/s
なお露光は、ネガ型熱反応型レジスト材料の全面が加熱されるように送りピッチを狭くした連続露光で実施した。
続いて、上記露光機によって露光された積層体を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、3分間で実施した。
このように現像された積層体について、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示すLERが得られた。実施例1で実施した全ての条件で被覆層形成前のLERに比べ、被覆層形成後のLERが小さくなり、パターンのラフネス改善が観察された。被覆層形成後のLERは、全て1.5nm以下であるため非常に優れたパターンラフネスであった。
次に得られた被覆層が設けられた微細パターンをマスクとして、ドライエッチング処理による石英ガラス基板のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧を1Pa、処理電力を300W、処理時間3分の条件で行った。これらパターンが付与された基板からマスクを剥離したものを、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示す被覆層形成後の微細パターンと同様に非常に優れたパターンラフネスが観察された。
(実施例8から実施例16)
熱反応型レジスト材料(レジスト材料1)とネガ型熱反応型レジスト材料(レジスト材料2)の組成及び膜厚を変更した以外は、実施例1から実施例7と同様にスパッタ法による成膜、露光、現像を表1の通りに行った。
得られた被覆層形成前の微細パターン及び、被覆層形成後の微細パターンについて、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示すLERが得られた。実施例8から実施例16全てにおいて被覆層形成前のLERに比べ、被覆層形成後のLERが小さくなり、パターンのラフネス改善が観察された。被覆層形成後のLERは、全て1.5nm以下であるため非常に優れたパターンラフネスであった。
次に得られた被覆層が設けられた微細パターンをマスクとして、ドライエッチング処理による石英ガラス基板のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSF6を用い、処理ガス圧を1Pa、処理電力を300W、処理時間3分の条件で行った。これらパターンが付与された基板からマスクを剥離したものを、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示す被覆層形成後の微細パターンと同様に非常に優れたパターンラフネスが観察された。
(実施例17)
φ80mm、長さ400mmの石英ガラスロール基板上に、スパッタリング法を用いて表1の組成及び膜厚の通り微細パターン形成用の熱反応型レジスト材料(レジスト材料1)を成膜した。
以上のように成膜した熱反応型レジスト材料を以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜25mW
送りピッチ:60nm〜800nm
回転速度:210rpm〜1670rpm
露光中にレーザーの強度を変調させることで、さまざまな形状やパターンを作製できるが、実験では露光精度を確かめるために、パターンとして溝形状を使用した。
続いて、上記露光機によって露光された熱反応型レジスト層を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、3分間で実施した。
このように現像された熱反応型レジストについて、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写し、SEMにて表面形状を観察したところ、微細パターンが転写されている状態が観察され、表1に示す被覆層形成前のLERが得られた。
続いて、被覆層としてネガ型熱反応型レジスト材料(レジスト材料2)をスパッタリング法により表1の組成及び膜厚の通り成膜した。
以上のように成膜したネガ型熱反応型レジスト材料を、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜25mW
送りピッチ:60nm〜800nm
回転速度:210rpm〜1670rpm
なお露光は、ネガ型熱反応型レジスト材料の全面が加熱されるように送りピッチを狭くした連続露光で実施した。
続いて、上記露光機によって露光された積層体を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、3分間で実施した。
このように現像された積層体について、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写し、SEMにて表面形状を観察したところ、微細パターンが転写されている状態が観察され、表1に示す被覆層形成後のLERが得られた。被覆層形成前のLERに比べ、被覆層後のLERが小さくなり、パターンのラフネス改善が観察された。被覆層形成後のLERは、1.2nmであるため非常に優れたパターンラフネスであった。
次に得られた被覆層が設けられた微細パターンをマスクとして、ドライエッチング処理による石英ガラスロール基板のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてCF4/O2(比率98%:2%)を用い、処理ガス圧を1Pa、処理電力を1000W、処理時間4分の条件で行った。これらパターンが付与された基板からマスクのみを剥離したものを、UV硬化樹脂を使って表面形状をフィルムに転写し、SEMにて断面形状を観察したところ、表1に示す被覆層形成後の微細パターン同様に非常に優れたパターンラフネスが観察された。
(比較例1)
2inφ、厚み0.5mmの石英ガラス基板上に、塗布法を用いて表1の組成及び膜厚の通り微細パターン形成用のフォトレジスト材料(レジスト材料1)を成膜し、フォトマスクを用いて露光した。露光パターンとして連続の溝形を使用した。
続いて、露光機によって露光されたフォトレジスト層を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、30秒間で実施した。
このように現像されたフォトレジストについて、SEM(走査型電子顕微鏡)にて表面形状を観察したところ、表1に示す被覆層形成前のLERが得られた。
続いて、被覆層としてレジスト材料(レジスト材料2)を、塗布法を用いて表1の組成及び膜厚の通り成膜し、全面が加熱されるように露光した。
続いて、露光機によって露光された積層体を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、30秒間で実施した。
このように現像された積層体について、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示すLERが得られた。被覆層形成後のLERは、被覆層形成前と変化がなく、パターンのラフネス改善が観察されなかった。
(比較例2)
2inφ、厚み0.5mmの石英ガラス基板上に、スパッタリング法を用いて表1の組成及び膜厚の通り微細パターン形成用の熱反応型レジスト材料(レジスト材料1)を成膜した。
以上のように成膜した熱反応型レジスト材料を、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜25mW
送りピッチ:100nm〜800nm
露光速度:0.6m/s〜11.0m/s
露光パターンとして連続の溝形を使用した。
続いて、上記露光機によって露光された熱反応型レジスト層を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、3分間で実施した。
このように現像された熱反応型レジストについて、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示す被覆層形成前のLERが得られた。
続いて、被覆層としてフォトレジスト材料(レジスト材料2)を塗布法により表1の組成及び膜厚の通り成膜し、全面が加熱されるように露光した。
続いて、上記露光機によって露光された積層体を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、30秒間で実施した。
このように現像された積層体について、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示すLERが得られた。被覆層形成後のLERは、被覆層形成前と変化がなく、パターンのラフネス改善が観察されなかった。
(比較例3)
2inφ、厚み0.5mmの石英ガラス基板上に、スパッタリング法を用いて表1の組成及び膜厚の通り微細パターン形成用の熱反応型レジスト材料(レジスト材料1)を成膜した。
以上のように成膜した熱反応型レジスト材料を、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜25mW
送りピッチ:100nm〜800nm
露光速度:0.6m/s〜11.0m/s
露光パターンとして連続の溝形を使用した。
続いて、上記露光機によって露光された熱反応型レジスト層を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、3分間で実施した。
このように現像された熱反応型レジストについて、SEMにて表面形状を観察したところ、表1に示す被覆層形成前のLERが得られた。
続いて、被覆層としてネガ型熱反応型レジスト材料(レジスト材料2)をスパッタリング法により表1の組成及び膜厚の通り成膜した。
以上のように成膜したネガ型熱反応型レジスト材料を、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜25mW
送りピッチ:20nm〜50nm
露光速度:0.6m/s〜11.0m/s
なお露光は、ネガ型熱反応型レジスト材料の全面が加熱されるように送りピッチを狭くした連続露光で実施した。
続いて、上記露光機によって露光された積層体を現像した。現像液は、表1に示す条件で行った。現像時間は、3分間で実施した。
このように現像された積層体について、SEMにて表面形状を観察したところ、パターンが形成されておらず、LERの測定が出来なかった。被覆層の膜厚が、微細パターン部の膜厚より厚かったため、被覆層が微細パターンを埋めてしまい、パターン形成ができなかったと予想される。
実施例1から実施例17と比較例1から比較例3とを比較すると、実施例1から実施例17に係る積層体を用いると、優れたパターンラフネスを形成が可能であることがわかった。