JP6578594B2 - インクジェットインク - Google Patents

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Description

本発明は、特に医薬品等として服用される錠剤やカプセル剤などの表面に直接に、例えば識別のための文字や記号等を印字するのに適したインクジェットインクに関するものである。
各種錠剤のうち表面にコーティングを施していないいわゆる素錠は、当該表面がポーラスであるため、水性のインクジェットインクを用いて良好な印字が可能である。
すなわち水性のインクジェットインクは、当該インクジェットインク中に含まれる水がポーラスな表面から錠剤の内部へ浸透することによって速やかに乾燥(浸透乾燥)されるため、滲みや、あるいは印字直後の未乾燥の状態で他の錠剤と接触することによるインクジェットインクの転移等のない鮮明な印字を得ることができる。
しかし、例えばヒドロキシプロピルセルロース等でコートされたFC(フィルムコーティング)錠の表面や、あるいは水溶性のプラスチック等からなるカプセル剤の表面は、セミポーラスないしノンポーラスであって水が内部へ浸透しにくい。
そのため水性のインクジェットインクを速やかに乾燥させることはできず、上記滲みや転移等を生じて印字の鮮明性が低下しやすいという問題がある。
そのためFC錠等に対しては、例えばエタノール等の揮発乾燥性に優れた有機溶剤を含む速乾性のインクジェットインクを用いて印字するのが一般的である(特許文献1〜4等参照)。
しかし従来の速乾性のインクジェットインクは、上記エタノール等の表面張力が水よりも小さいため濡れ性が高くなりすぎて、インクジェットプリンタのノズルの周囲に滲んで濡れ拡がるいわゆるパドリングを生じやすい上、パドリングしたインクジェットインクが乾燥してノズルの詰りによる吐出不良等を生じやすい。
そのため、特に印字データに応じてインクジェットインクをノズルから断続的に吐出させて印字をするオンデマンド型のインクジェットプリンタに使用して、錠剤等に連続して高速で印字をする際に、上記吐出不良にともなうドット抜けなどを生じやすく、連続印字性が低いという問題がある。
なお特許文献1〜4に記載のインクジェットインクはいずれも、ノズルからインクジェットインクを連続的に吐出させながら、その飛翔軌道を制御して印字をする連続式(コンティニュアス型)のインクジェットプリンタでの使用を前提としている。
連続式のインクジェットプリンタでは、常に新鮮なインクジェットインクがノズルに連続して供給され、そしてノズルから連続して吐出され続けるため、本来的に乾燥等によるノズルの詰りは生じにくい。したがって、ノズルの詰りによる吐出不良を防止して良好な連続印字性を維持するための技術的な難易度は低く、特許文献1〜4に記載のインクジェットインクであっても適度の連続印字性は確保できる。
しかし前述したオンデマンド型のインクジェットプリンタ、特にインクジェットインクを加熱して気泡を発生させることで、その体積増加分のインクジェットインクをノズルから吐出させるサーマル方式のインクジェットプリンタを用いる場合には、インクジェットインクが、特に吐出停止時にノズル周りで乾燥しやすいため、当該ノズルの詰りを生じやすい。
すなわち印字を断続的に繰り返した際に、ノズルの詰りによる吐出不良とそれに伴う印字の欠け等を防止する特性(間欠印字性)が大幅に低下する傾向があり、かかる間欠印字性や、あるいは先述した連続印字性を良好なレベルに維持するための技術的な難易度は、連続式のインクジェットプリンタよりオンデマンド型のものの方がかなり高いと言える。
また、特に医薬品の場合は、その種別等を確実に識別できるようにしなければならない。そのためインクジェットインクには、上述したように印字の際に速乾性の不足による滲みや、未乾燥の状態で他の錠剤と接触することによるインクジェットインクの転移、あるいは吐出不良によるドット抜けや欠け等を生じにくいだけでなく、乾燥後にも印字の定着性、耐擦過性に優れ、乾燥後の接触によるかすれをも生じにくくできることが求められる。
特開昭57−1768号公報 特表2000−507820号公報 特開2010−248313号公報 WO2014/014010A1
本発明の目的は、速乾性や印字の定着性、耐擦過性に優れる上、特にオンデマンド型のインクジェットプリンタに使用した際のノズルの詰りによる吐出不良の発生と、それにともなう連続印字性や間欠印字性の低下とを現状よりも良好に抑制でき、FC錠等の錠剤やカプセル剤などに滲み、転移、かすれ、ドット抜け、欠け等のない鮮明な印字をすることが可能なインクジェットインクを提供することにある。
本発明は、着色剤、エステルガム、少なくともエタノールを含む有機溶剤、ジメチルポリシロキサンおよびその側鎖型変性物からなる群より選ばれた少なくとも1種のシリコーンオイル、およびHLBが10以上、14以下であるグリセリン脂肪酸エステルを含むインクジェットインクである。
本発明によれば、速乾性や印字の定着性、耐擦過性に優れる上、特にオンデマンド型のインクジェットプリンタに使用した際のノズルの詰りによる吐出不良の発生と、それにともなう連続印字性や間欠印字性の低下とを現状よりも良好に抑制でき、FC錠等の錠剤やカプセル剤などに滲み、転移、かすれ、ドット抜け、欠け等のない鮮明な印字をすることが可能なインクジェットインクを提供できる。
本発明は、着色剤、エステルガム、少なくともエタノールを含む有機溶剤、ジメチルポリシロキサンおよびその側鎖型変性物からなる群より選ばれた少なくとも1種のシリコーンオイル、およびHLBが10以上、14以下であるグリセリン脂肪酸エステルを含むインクジェットインクである。
特許文献1〜4に記載の発明では、バインダとしてセラック、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等を用いており、これらのバインダは造膜性が強いため、印字の耐擦過性を向上して乾燥後の接触によるかすれを防止する効果には優れている。
しかし発明者の検討によると、上記従来のバインダは造膜性が強すぎるため、特にオンデマンド型のインクジェットプリンタに使用した際には、ノズルの開口内等で固まってノズルの詰りを生じやすい。そのため、かかる詰りによる吐出不良を生じやすくなり、連続印字性や間欠印字性が低下してドット抜けや欠けを生じやすくなる。
これに対し、本発明でバインダとして用いているエステルガムは弾性がなく、造膜性が弱く硬もろいものであるため、特にノズルの開口内等で固まりかけても次の新たなインクジェットインクの吐出によって容易に除去できる。
そのため、ノズルを常に詰りのない正常な状態に維持でき、当該ノズルの詰りによる吐出不良の発生と、それにともなう連続印字性や間欠印字性の低下、そしてドット抜けや欠け等の発生を現状よりも良好に抑制できる。
その上、エステルガムはバインダとして、FC錠等の表面に対する適度の定着性も有している。
しかし有機溶剤としてのエタノールは、先述したように速乾性には優れるものの表面張力が小さいため、インクジェットインクの濡れ性が高くなり、ノズルの周囲に濡れ拡がってパドリングを生じやすい。
そしてパドリングを生じると、インク滴の吐出が妨げられて飛翔軌道が変化したり、所定体積のインク滴が吐出されなかったり、あるいはインク滴が全く吐出されなかったりする結果、連続印字性が低下しやすい。
また、上記インクジェットインクはFC錠等の表面で濡れ拡がりやすいため、印字の鮮明性も低下しやすい。
そこで本発明では、さらに前述した特定のシリコーンオイルと、特定のグリセリン脂肪酸エステルとを添加している。
このうちシリコーンオイルはインクジェットインクの濡れ性を抑えて、パドリングの発生とそれに伴う連続印字性の低下とを抑制したり、FC錠等の表面でインクジェットインクが濡れ拡がるのを抑制して、印字の鮮明性を向上したりするために機能する。
しかしシリコーンオイルのみを添加した場合には、インクジェットインクの濡れ性が低くなりすぎて、当該インクジェットインクがノズル内にスムースに供給されないため、使用開始直後から、インクジェットインクの供給不良によるかすれを生じ、ごく短期間で印字不可となって連続印字性が著しく低下するおそれがある。
これに対し本発明では、シリコーンオイルとともに、特定のHLBを有するグリセリン脂肪酸エステルを併用することで、インクジェットインクの濡れ性が低くなりすぎるのを抑制できる。
そのため、インクジェットインクの供給不良とそれに伴う短期間での印字不可の発生を抑制して連続印字性を向上できる。
したがって本発明によれば、着色剤とともに上記の各成分を併用することにより、速乾性や印字の定着性、耐擦過性に優れる上、特にオンデマンド型のインクジェットプリンタに使用した際のノズルの詰りによる吐出不良の発生と、それにともなう連続印字性や間欠印字性の低下とを現状よりも良好に抑制でき、FC錠等の錠剤やカプセル剤などに滲み、転移、かすれ、ドット抜け、欠け等のない鮮明な印字をすることが可能なインクジェットインクを提供できる。
(エステルガム)
バインダとしてのエステルガムとしては、天然樹脂であるロジンから誘導されるエステル樹脂であって、古くから粘着・接着剤のタッキファイヤやチューインガムの基礎剤等として使用されている種々の化合物がいずれも使用可能である。
かかるエステルガムとしては、例えば荒川化学工業(株)製のAA−G、AA−L、A、AAV、105、AT等のロジンエステルや、同社製のH、HP等の水素化ロジンエステル等の1種または2種以上が挙げられる。特に連続印字性や間欠印字性の低下とそれによるドット抜けや欠けの発生とを防止する効果の点でロジンエステルが好ましい。
(シリコーンオイル)
シリコーンオイルとしては、式(a):
Figure 0006578594
で表されるジメチルポリシロキサン、およびその側鎖型変性物からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
このうち式(a)で表される、ポリシロキサンの両末端および側鎖が全てメチル基であるジメチルポリシロキサンとしては、例えば信越化学工業(株)製のKF-96シリーズの、25℃での動粘度によって分類される各種製品が挙げられる。
またジメチルポリシロキサンの側鎖型変性物としては、上記式(a)中の側鎖のメチル基の少なくとも1つを、例えばポリエーテル、長鎖アルキル、高級脂肪酸エステル等の変成基で変性した、側鎖型でかつ非反応性の種々のシリコーンオイルが挙げられる。特にポリエーテル変性物が好ましい。
ジメチルポリシロキサンのポリエーテル変性物としては、例えばジメチル,メチル(ポリエチレンオキサイドメチルエーテルキャップド)シロキサン〔東レ・ダウコーニング(株)製のFZ−2123、25℃での動粘度:85mm/s〕、ポリ〔ジメチルシロキサン−co−メチル(3−ヒドロキシプロピル)シロキサン〕−graft−ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル〔シグマ−アルドリッチ社製、25℃での動粘度:45mm/s以下〕等の、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体の1種または2種以上が挙げられる。
特に印字の鮮明性の点で、式(a)で表されるジメチルポリシロキサンが好ましい。
(グリセリン脂肪酸エステル)
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸等の各種脂肪酸とグリセリンとの反応生成物である脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、ならびに上記各種脂肪酸とポリグリセリンとの反応生成物であるポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
前述したように、グリセリン脂肪酸エステルとしては、HLB(親水性親油性バランス)が10以上、14以下であるものを選択して用いる必要がある
HLBが上記の範囲未満、または上記範囲を超えるグリセリン脂肪酸エステルを使用した場合には、このいずれにおいてもノズルからインク滴をまっすぐに吐出させることができず、インク滴の飛翔軌道に曲がりを生じ、印字が乱れて印字品質が低下す
HLBが上記範囲であるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば下記の各種化合物の1種または2種以上が挙げられる。
坂本薬品工業(株)製のSYグリスター MSW−7S〔モノステアリン酸デカグリセリル、HLB:13.4〕、TS−7S〔トリステアリン酸デカグリセリル、HLB:10.0〕、MS−5S〔モノステアリン酸ヘキサグリセリル、HLB:11.6〕、MO−7S〔モノオレイン酸デカグリセリル、HLB:12.9〕、MO−5S〔モノオレイン酸ヘキサグリセリル、HLB:11.6〕、ML−500〔モノラウリン酸ヘキサグリセリル、HLB:13.4〕、ML−310〔モノラウリン酸テトラグリセリル、HLB:10.4〕。
太陽化学(株)製のサンソフト(登録商標)Q−17S〔モノオレイン酸デカグリセリル、HLB:12.0〕、Q−18S〔モノステアリン酸デカグリセリル、HLB:12.0〕、Q−182S〔ジステアリン酸デカグリセリル、HLB:11.0〕、A−121E〔モノラウリン酸ペンタグリセリル、HLB:14.0〕、A−141E〔モノミリスチン酸ペンタグリセリル、HLB:13.0〕、A−171E〔モノオレイン酸ペンタグリセリル、HLB:13.0〕、A−181E〔モノステアリン酸ペンタグリセリル、HLB:13.0〕。
日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL(登録商標)DECAGLYN 1−M〔モノミリスチン酸デカグリセリル、HLB:14.0〕、1−SV〔モノステアリン酸デカグリセリル、HLB:12.0〕、1−OV〔モノオレイン酸デカグリセリル、HLB:12.0〕、2−ISV〔ジイソステアリン酸デカグリセリル、HLB:10.0〕。
(比R
シリコーンオイルが式(a)のジメチルポリシロキサンであるとき、かかるジメチルポリシロキサンとグリセリン脂肪酸エステルは、前述した両者の機能の兼ね合いを考慮すると、ジメチルポリシロキサンの25℃での動粘度K〔mm/s〕、当該ジメチルポリシロキサンの、インクジェットインクの総量中の含有量w(質量%)、およびグリセリン脂肪酸エステルの、インクジェットインクの総量中の含有量w(質量%)から、式(1):
Figure 0006578594
で求められる比Rが1以上、100以下となるように上記動粘度Kと含有量w、wを設定するのが好ましい。
すなわち比Rがこの範囲未満では、ジメチルポリシロキサンによる、インクジェットインクの濡れ性を抑える効果が不十分になり、パドリングとそれに伴う連続印字性の低下を生じたり、インクジェットインクがFC錠等の表面で濡れ拡がって印字の鮮明性が低下したりするおそれがある。
一方、比Rが上記の範囲を超える場合には、グリセリン脂肪酸エステルによる、インクジェットインクの濡れ性が低くなりすぎるのを抑制する効果が不十分になり、当該インクジェットインクがノズル内にスムースに供給されにくくなって、使用開始直後からインクジェットインクの供給不良によるかすれを生じ、ごく短期間で印字不可となって連続印字性が著しく低下するおそれがある。
これに対し、比Rを上記1以上、100以下の範囲に設定することにより、ジメチルポリシロキサンとグリセリン脂肪酸エステルの相反する機能を良好にバランスさせて、上述した各種の問題を生じにくいインクジェットインクを得ることができる。
なお比Rを設定するに際し、ジメチルポリシロキサンを、含有量w(質量%)だけでなく、当該含有量wにジメチルポリシロキサンの25℃での動粘度Kを掛け合わせた数値K×wで規定しているのは下記の理由による。
すなわちジメチルポリシロキサンの動粘度Kは、当該ジメチルポリシロキサンの主鎖の鎖長、つまり式(a)中のnと比例する。
また鎖長が長く動粘度Kが大きいジメチルポリシロキサンほど、先に説明した、インクジェットインクの濡れ性を抑える効果が大きい。
そのため動粘度Kの異なるジメチルポリシロキサンを同じ含有量wで含有させても、同じ効果は得られない。
ジメチルポリシロキサンとグリセリン脂肪酸エステルの効果の兼ね合いを考慮する場合、ジメチルポリシロキサンについては、含有量wとともに動粘度Kをも併せ考慮する必要があり、発明者が検討した結果、上記のように含有量wに動粘度Kを掛け合わせた数値K×wで規定するのが適していることが判明した。
なおジメチルポリシロキサンの含有量wは、当該ジメチルポリシロキサンの動粘度Kにもよるが、当該動粘度Kが1mm/s以上、特に5mm/s以上で、かつ200mm/s以下、特に100mm/s以下であるとき、0.005質量%以上、特に0.01質量%以上であるのが好ましく、1質量%以下であるのが好ましい。
ジメチルポリシロキサンの含有量wがこの範囲未満では、上記式(1)を満足するために、25℃での動粘度Kが上記の範囲を超える、インクジェットインクの濡れ性を抑える効果がより高いジメチルポリシロキサンを使用しなければならないが、かかるジメチルポリシロキサンは、インクジェットインクを構成するエタノール等の有機溶剤と均一に相溶しないおそれがある。
一方、上記含有量wの好適範囲を超える多量のジメチルポリシロキサンは、やはりインクジェットインクを構成するエタノール等の有機溶剤と均一に相溶しないおそれがある。
これに対し、ジメチルポリシロキサンの含有量wを上記の範囲とすることにより、当該ジメチルポリシロキサンをエタノール等の有機溶剤と均一に相溶させて、均一で吐出性能等に優れたインクジェットインクを得ることができる。
グリセリン脂肪酸エステルの含有量wは、上記ジメチルポリシロキサンの動粘度K、および含有量wとともに、式(1)の範囲を満足しうる範囲に設定すればよい。
(有機溶剤)
有機溶剤としては、少なくともエタノールを用いる。
エタノールは、先述したように揮発乾燥性に優れるため、インクジェットインクに良好な速乾性を付与できる。
ただしエタノールは極性が強すぎて、エステルガムの溶解性が低いことから、それを補助してインクジェットインクの安定性を向上するためには、エタノールよりもエステルガムの溶解性に優れた他の有機溶剤を併用するのが好ましい。
かかる他の有機溶剤としては、例えばブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等の炭素数3〜4のアルコールや、2−エトキシエタノール(エチレングリコールモノエチルエーテル)、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル)等のエチレングリコールエーテルなどの1種または2種以上が挙げられる。
ただし、上記他の有機溶剤のみを使用してエタノールを併用しない場合には、エステルガムに対する溶解性が良好すぎるため、間欠印字性が低下して、ドット抜けや欠けを生じやすくなってしまう。
間欠印字性の低下を抑制するには、エステルガムが最初から有機溶剤にぎりぎりで溶解している程度であるのが好ましく、そのためにはエステルガムの溶解性の低いエタノールは必須の成分である。
さらに、他の有機溶剤の揮発に伴って濃度が上昇した際にその溶解性が大きく低下して、インクジェットインク中からエステルガムが析出しやすくなる傾向があることから、有機溶剤としては、揮発乾燥性に優れるもののエステルガムの溶解性の低いエタノールと、揮発乾燥性はエタノールよりも低いもののエステルガムの溶解性に優れた他の有機溶剤とを併用するのが最適である。
他の有機溶剤のうち炭素数3〜4のアルコールは、上述したようにエステルガムの溶解性に優れている。中でもブタノールが、エステルガムの溶解性の点で好ましい。
炭素数3〜4のアルコールの含有量は、エタノールの含有量に対する質量比で表して1/10〜1/2の範囲、またはインクジェットインクの総量の5質量%以上、20質量%以下であるのが好ましい。
この範囲より炭素数3〜4のアルコールが少ない場合にはエスエルガムの溶解性が不足するため、当該エステルガムが析出しやすくなって、インクジェットインクの安定性が低下するおそれがある。
一方、上記範囲より炭素数3〜4のアルコールが多い場合には相対的にエタノールが少なくなるため、インクジェットインクの速乾性が低下して滲みや、あるいは未乾燥の状態で他の錠剤と接触することによるインクジェットインクの転移等を生じやすくなるおそれがある。
また、先に説明したエタノールを併用することによる効果が得られず、インクジェットインクの間欠印字性が低下して、ドット抜けや欠けを生じやすくなるおそれもある。
これに対し、炭素数3〜4のアルコールの含有量を上記の範囲とすることにより、エタノールと炭素数3〜4のアルコールの機能を良好にバランスさせて、上述した各種の問題を生じにくいインクジェットインクを得ることができる。
また、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、上記エタノールと炭素数3〜4のアルコールの合計の、有機溶剤の総量に占める含有量は50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがさらに好ましい。
他の有機溶剤のうちエチレングリコールエーテルは、やはりエステルガムの溶解性に優れている。
また、前述したようにエタノールは表面張力が小さいため、インクジェットインクをFC錠等の表面で面方向に濡れ拡がらせる性質を有している。
これに対しエチレングリコールエーテルは、インクジェットインクを上記表面から内部へ縦に浸透させる性質を有しており、インクジェットインクの面方向への濡れ拡がりを抑制して印字の鮮明性を向上する効果にも優れている。
エチレングリコールエーテルの含有量は、エタノールの含有量に対する質量比で表して1/2.5〜1/1の範囲、またはインクジェットインクの総量の20質量%以上、40質量%以下であるのが好ましい。
この範囲よりエチレングリコールエーテルが少ない場合にはエスエルガムの溶解性が不足するため、当該エステルガムが析出しやすくなって、インクジェットインクの安定性が低下するおそれがある。また、インクジェットインクの面方向への広がりを抑制して印字の鮮明性を向上する効果が不十分になるおそれもある。
一方、上記範囲よりエチレングリコールエーテルが多い場合には相対的にエタノールが少なくなるため、インクジェットインクの速乾性が低下して滲みや、あるいは未乾燥の状態で他の錠剤と接触することによるインクジェットインクの転移等を生じやすくなるおそれがある。
また、先に説明したエタノールを併用することによる効果が得られず、インクジェットインクの間欠印字性が低下して、ドット抜けや欠けを生じやすくなるおそれもある。
これに対し、エチレングリコールエーテルの含有量を上記の範囲とすることにより、エタノールとエチレングリコールエーテルの機能を良好にバランスさせて、上述した各種の問題を生じにくいインクジェットインクを得ることができる。
エチレングリコールエーテルとしては、印字の鮮明性と間欠印字性のバランスに優れるため、特に2−エトキシエタノールが好適に使用される。
上記炭素数3〜4のアルコールおよびエチレングリコールエーテルは、上述したようにそれぞれ機能が異なるため、この両者をともに他の有機溶剤として、エタノールと併用するのが好ましい。
また、例えばインクジェットインクの表面張力や粘度、乾燥性等をインクジェット印字に適した範囲に調整するため、有機溶剤としては、さらにエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、ジエタノールアミン、ベンジルアルコール等の比較的沸点の高い有機溶剤を併用してもよい。
かかる沸点の高い有機溶剤の含有量は、インクジェットインクの総量の3質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下であるのが好ましい。
(セルロース系樹脂)
本発明のインクジェットインクには、さらに他のバインダとしてセルロース系樹脂を含有させてもよい。
バインダとして、エステルガムとともにセルロース系樹脂を併用すると、造膜性を調整して印字の定着性や耐擦過性を向上できる。また、特に可食用インクジェットインクのバインダとして一般的なセラックよりも印字を引き締めて、当該印字の鮮明性も向上できる。
セルロース系樹脂としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、結晶セルロース等の1種または2種以上が挙げられる。
特に上記の効果に優れる上、アルコールに対する溶解性にも優れたヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば日本曹達(株)製のセルニー(登録商標)SSL、SL、L、M、H等の1種または2種以上が挙げられる。
(比R
セルロース系樹脂を併用する場合は、エステルガムの含有量w(質量%)とセルロース系樹脂の含有量w(質量%)から、式(2):
Figure 0006578594
で求められる比Rを1以上、6以下に設定するのが好ましい。
すなわち比Rがこの範囲未満では、エステルガムと比べて造膜性が強いセルロース系樹脂が多くなるため、連続印字性や間欠印字性が低下してドット抜けや欠けを生じやすくなるおそれがある。
一方、比Rが上記の範囲を超える場合には、セルロース系樹脂を併用することによる前述した効果が不十分になって定着性や耐擦過性が低下するおそれがある。
これに対し、比Rを上記の範囲とすることにより、エステルガムとセルロース系樹脂の機能を良好にバランスさせて、上述した各種の問題を生じにくいインクジェットインクを得ることができる。
また上記併用系において、エステルガムの含有量wは、インクジェットインクの総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、2.5質量%以下であるのが好ましい。
この範囲よりエステルガムが少ない場合には印字の定着性が不十分になるおそれがある。
一方、上記の範囲よりエステルガムが多い場合には連続印字性や間欠印字性が低下して、ドット抜けや欠けを生じやすくなるおそれがある。
セルロース系樹脂の含有量wは、上記エステルガムの含有量wとともに、式(2)の範囲を満足しうる範囲に設定すればよい。
またバインダとしてエステルガムを単独で使用する場合の含有量は、本来のエステルガムの含有量wに、セルロース系樹脂の含有量w分のエステルガムを加えた値とすればよい。
(着色剤)
着色剤としては、食品添加物もしくは医薬品添加物として使用が認められた種々の顔料、染料等がいずれも使用可能である。例えば黒色の着色剤としてはカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラック等の顔料は、例えば界面活性剤の存在下、エタノール等の有機溶剤中に分散させた顔料分散液の状態でインクジェットインクの調製に使用できる。
着色剤の種類および含有量は、印字に求められる色味や色濃度等に応じて適宜調整できる。
(その他の成分)
インクジェットインクをアルカリ性にして、特にセルロース系樹脂等の他のバインダの溶解性を向上したり、インクジェットプリンタのヘッドの金属部材の腐食を防止したりするため、インクジェットインクにはpH調整剤を含有させてもよい。
pH調整剤としては、例えばアンモニア、有機アミン、苛性アルカリ等の1種または2種以上が挙げられ、特に有機アミンが好ましい。
また有機アミンとしては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノ−1−プロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールアミンおよびこれらの誘導体等の1種または2種以上が挙げられる。
pH調整剤の含有量は、当該pH調整剤を加える前のインクジェットインクのpHや目標とするpH等に応じて任意に設定できるが、好ましくはインクジェットインクの総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下であるのが好ましい。
(含有量)
エタノールの含有量は、以上で説明した各成分の残量である。すなわち、上記各成分にエタノールを加えた総量が100質量%となるように、エタノールの含有量を設定すればよい。
なお他の有機溶剤の、エタノールに対する質量比は、例えば顔料分散液がエタノール中に顔料を分散したものである場合、当該顔料分散液中のエタノールを含むエタノールの総量に対する質量比とする。
本発明のインクジェットインクは、先述したコンティニュアス型、およびオンデマンド型の種々のインクジェットプリンタに好適に使用できる。特にオンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタに使用して、FC錠等の錠剤やカプセル剤などの表面に滲み、インクの転移、かすれ、ドット抜け、欠け等のない鮮明な印字をすることが可能である。
〈実施例1〉
バインダとしては、エステルガムとしてのロジンエステル〔前出の荒川化学工業(株)製のAA−G〕と、セルロース系樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロース〔前出の日本曹達(株)製のセルニーSSL〕を用いた。
またシリコーンオイルとしては、25℃での動粘度Kが5mm/sであるジメチルポリシロキサン〔信越化学工業(株)製のKF-96L−5cs〕を用い、グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸デカグリセリル〔前出の日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL DECAGLYN 1−SV、HLB:12.0〕を用いた。
さらに着色剤としては、カーボンブラックをエタノールに分散させた顔料分散液〔カーボンブラックの濃度10質量%〕を用いた。
上記の各成分をブタノール、2−エトキシエタノール、プロピレングリコール、ジエタノールアミンおよびエタノールとともに、下記表1に示す含有量となるように混合したのち、5μmのメンブランフィルタを用いてろ過してインクジェットインクを調製した。
Figure 0006578594
シリコーンオイルの25℃での動粘度K〔mm/s〕、当該シリコーンオイルの含有量w(質量%)、およびグリセリン脂肪酸エステルの含有量w(質量%)から、前述した式(1)で求められる比Rは10、エステルガムの含有量w(質量%)とセルロース系樹脂の含有量w(質量%)から、前述した式(2)で求められる比Rは1.5であった。
またエタノールの含有量は、顔料分散液中に含まれるものも含めて、インクジェットインクの総量の50.8質量%であった。
〈実施例2〉
エステルガムとして、ロジンエステルに代えて水素化ロジンエステル〔前出の荒川化学工業(株)製のH〕を同量含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは1.5であった。
〈実施例3〉
シリコーンオイルの含有量を0.02質量%とし、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは1、比Rは1.5であった。
〈実施例4〉
シリコーンオイルの含有量を0.01質量%、グリセリン脂肪酸エステルの含有量を0.2質量%とし、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは0.25、比Rは1.5であった。
〈実施例5〉
シリコーンオイルとして、25℃での動粘度Kが100mm/sであるジメチルポリシロキサン〔信越化学工業(株)製のKF-96L−100cs〕を用い、その含有量を0.1質量%とするとともに、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは100、比Rは1.5であった。
〈実施例6〉
シリコーンオイルとして、25℃での動粘度Kが100mm/sであるジメチルポリシロキサン〔信越化学工業(株)製のKF-96L−100cs〕を用い、その含有量を0.15質量%とするとともに、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは150、比Rは1.5であった。
〈実施例7〉
シリコーンオイルとして、ジメチルポリシロキサンのポリエーテル変性物であるジメチル,メチル(ポリエチレンオキサイドメチルエーテルキャップド)シロキサン〔東レ・ダウコーニング(株)製のFZ−2123、25℃での動粘度:85mm/s〕を用い、その含有量を0.1質量%とするとともに、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは1.5であった。
〈実施例8〉
エステルガムとしてのロジンエステルの含有量を1.25質量%、セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースの含有量を1.25質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは1であった。
〈実施例9〉
エステルガムとしてのロジンエステルの含有量を2.1質量%、セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースの含有量を0.35質量%とし、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは6であった。
〈実施例10〉
エステルガムとしてのロジンエステルの含有量を1.1質量%、セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースの含有量を1.4質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは0.8であった。
〈実施例11〉
エステルガムとしてのロジンエステルの含有量を2.1質量%、セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースの含有量を0.3質量%とし、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは7であった。
〈実施例12〉
セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロースに代えて、セラックを同量含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10であった。
〈実施例13〉
グリセリン脂肪酸エステルとして、モノオレイン酸デカグリセリル〔前出の日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL DECAGLYN 1−OV、HLB:12.0〕を同量含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは1.5であった。
〈実施例14〉
グリセリン脂肪酸エステルとして、モノミリスチン酸デカグリセリル〔前出の日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL DECAGLYN 1−M、HLB:14.0〕を同量含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは1.5であった。
〈実施例15〉
グリセリン脂肪酸エステルとして、ジイソステアリン酸デカグリセリル〔前出の日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL DECAGLYN 2−ISV、HLB:10.0〕を同量含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは1.5であった。
比較例1
グリセリン脂肪酸エステルとして、モノステアリン酸デカグリセリル〔日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL DECAGLYN 1−50SV、HLB:15.0〕を同量含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは1.5であった。
比較例2
グリセリン脂肪酸エステルとして、トリオレイン酸デカグリセリル〔日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL DECAGLYN 3−OV、HLB:7.0〕を同量含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10、比Rは1.5であった。
〈比較例
エステルガムを含有させず、バインダとして、セルロース樹脂としてのヒドロキシプロピルセルロース1.25質量%およびセラック1.25質量%を含有させたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは10であった。
〈比較例
グリセリン脂肪酸エステルを含有させず、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは1.5であった。
〈比較例
シリコーンオイルを含有させず、全量が100質量%となるようにエタノールの含有量を調整したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
比Rは1.5であった。
〈鮮明性評価〉
オンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタ〔ビデオジェット(株)製のPrint Mail Wide Array〕を使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、FC錠の表面に4ポイントの小文字「abcdefg」を印字した。そして印字を目視にて観察して、下記の基準で印字の鮮明性を評価した。
○:鮮明性に優れていた。良好。
△:鮮明性が「○」に比べて僅かに劣っていたが通常レベル。
×:「△」より鮮明性に劣っていた。不良。
〈印字パターン〉
以下の連続印字性、間欠印字性の評価では、
* フォントサイズ11ポイントの大文字「ABCDE」、小文字「abcdefg」が正字体およびイタリック体でそれぞれ1列ずつ2列、
* 1.2cm×1.2cmのQRコード(登録商標)1つ、
* 1.2cm×1.2cmのベタ部1つ、および
* バーコード1つ
を1列として列ごとにフォントの太さを違えて4列配列した印字パターンを印字して評価した。
〈連続印字性評価〉
前出のオンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、1000枚のオフセットコート紙上に前述した印字パターンを連続印字した。そして1000枚目の印字のうちベタ部を目視にて観察して、下記の基準で連続印字性を評価した。
○:ドット抜けはなく筋は見られなかった。良好。
△:小さなドット抜けがありわずかな筋が見られたものの通常レベル。
×:「△」よりドット抜けが大きくはっきりとした筋が見られた。不良。
××:連続印字の初期に、インクジェットインクの供給不良によるかすれを生じ、ごく短期間で印字不可となった。極めて不良。
〈間欠印字性評価〉
前出のオンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、オフセットコート紙上に前述した印字パターンを印字し、10分間静置後に再び印字した。そして10分間静置後の印字のうち文字を目視にて観察して、下記の基準で連続印字性を評価した。
○:欠けは見られなかった。良好。
△:わずかにかけが見られたが文字は判読可能であった。通常レベル。
×:欠けが見られ文字を判読できなかった。不良。
〈耐擦過性評価〉
前出のオンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、FC錠の表面に4ポイントの小文字「abcdefg」を印字した。
次いでこの印字を綿棒でこすった際の印字の変化を目視にて観察して、下記の基準で耐擦過性を評価した。
○:印字に変化なく綿棒も汚れなかった。良好。
△:綿棒がうっすら黒くなったが印字に変化はなかった。通常レベル。
×:印字がかすれ綿棒が黒くなった。不良。
〈吐出安定性試験〉
前出のオンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、50m/分の印字速度で複数本の平行な罫線を連続して印刷した。そして印字した罫線を目視にて観察して、下記の基準で吐出安定性を評価した。
○:等間隔できれいな罫線を印字できた。良好
×:罫線に若干以上の波打ちが見られるか、または罫線の間隔に若干以上のばらつきが見られた。不良。
以上の結果を表2〜表5に示す。
Figure 0006578594
Figure 0006578594
Figure 0006578594
Figure 0006578594
表2〜表5の実施例1〜15、比較例1〜の結果より、着色剤およびエタノールとともに、エステルガム、特定のシリコーンオイル、およびHLBが10以上、14以下であるグリセリン脂肪酸エステルを併用することにより、速乾性や印字の定着性、耐擦過性に優れる上、連続印字性や間欠印字性にも優れ、FC錠等の錠剤やカプセル剤などに滲み、転移、かすれ、ドット抜け、欠け等のない鮮明な印字をすることが可能なインクジェットインクを提供できることが判った。
実施例1、2の結果より、エステルガムとしては水素化ロジンエステルよりもロジンエステルを使用するのが、特に連続印字性や間欠印字性の低下とそれによるドット抜けや欠けの発生を防止する効果の点で好ましいことが判った。
実施例1、3〜7の結果より、シリコーンオイルとしては、印字の鮮明性を向上するために、式(a)で表されるジメチルポリシロキサンが好ましいこと、当該ジメチルポリシロキサンを使用する場合はその25℃での動粘度K〔mm/s〕、と含有量W(質量%)、ならびにグリセリン脂肪酸エステルの含有量W(質量%)から、前述した式(1)で求められる比Rが1以上、100以下であるのが好ましいことが判った。
実施例1、8〜11の結果より、エステルガムとセルロース系樹脂の併用系では、当該エステルガムの含有量w(質量%)とセルロース系樹脂の含有量w(質量%)から、前述した式(2)で求められる比Rは1以上、6以下であるのが好ましいことが判った。
実施例1、12の結果より、エステルガムと併用する他のバインダとしては、セラックよりもセルロース系樹脂が好ましいことが判った。

Claims (3)

  1. 着色剤、エステルガム、少なくともエタノールを含む有機溶剤、ジメチルポリシロキサンおよびその側鎖型変性物からなる群より選ばれた少なくとも1種のシリコーンオイル、およびHLBが10以上、14以下であるグリセリン脂肪酸エステルを含むインクジェットインク。
  2. 前記シリコーンオイルはジメチルポリシロキサンであり、前記ジメチルポリシロキサンの25℃での動粘度K〔mm/s〕、当該ジメチルポリシロキサンの含有量w(質量%)、およびグリセリン脂肪酸エステルの含有量w(質量%)から、式(1):
    Figure 0006578594
    で求められる比Rは1以上、100以下である請求項1に記載のインクジェットインク。
  3. さらにセルロース系樹脂を含むとともに、前記エステルガムの含有量w(質量%)、および前記セルロース系樹脂の含有量w(質量%)から、式(2):
    Figure 0006578594
    で求められる比Rは1以上、6以下である請求項1または2に記載のインクジェットインク。
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