JP6577869B2 - 密封装置 - Google Patents

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Description

本発明は、機器の回転部材と静止部材との間で機外の異物が機内へ侵入しないようシールする密封装置であって、回転側のシールフランジに非回転のシールリップを摺接させる構造を備えるものに関する。本発明の密封装置は例えば、自動車等の車両におけるハブベアリングシールとして用いられる。
例えば自動車のサスペンションに対して車輪を回転自在に支持するハブベアリングは、雨水や泥水等の外部異物に直接曝される。したがってこれら異物の侵入を防止するためハブベアリングにはハブベアリングシール(ハブシール)が装着されている。
図4は、このようにハブベアリングシールとして用いられる密封装置101の一例を示し、密封装置101は、回転部材であるベアリングの内輪51の外周に装着されるスリンガー111と、静止部材であるベアリングの外輪52の内周に装着されるリップシール部材121との組み合わせにより構成されている。
スリンガー111は、金属等の剛材製であって、内輪51の外周面に固定されるスリーブ112と、このスリーブ112の一端に設けられたシールフランジ113とを一体に有している。
一方、リップシール部材121は、外輪52の内周面に固定される取付環122と、この取付環122に被着されたゴム状弾性体123とを有し、このゴム状弾性体123によって、スリンガー111におけるシールフランジ113の機内側端面113aに摺動可能に密接するシールリップ(端面リップ)124が設けられている。
上記構成の密封装置101は、回転側のシールフランジ113に対し非回転のシールリップ124が摺接するので、機外Aの異物が機内Bへ侵入するのを抑制することができる。
特開2009−2425号公報
しかしながら上記図4の密封装置101に対しては、以下の点について更なる機能向上が求められる。
上記図4の密封装置101によると、回転側のシールフランジ113に対し非回転のシールリップ124が摺接することによりシール機能が発揮されるので、機外Aの異物はシールフランジ113外周の隙間131を侵入経路Sとして当該密封装置101の内部空間Cへ侵入する。したがって密封装置101の内部空間Cにおいて異物が徐々に堆積し、これによりシールリップ124の反発力が低下する等、シール性能に影響が及ぶことが懸念される。
本発明は以上の点に鑑みて、機器の回転部材と静止部材との間で機外の異物が機内へ侵入しないようシールする密封装置であって、回転側のシールフランジに非回転のシールリップを摺接させる構造を備える密封装置において、機外の異物が密封装置の内部空間へ侵入しにくいようにすることを目的とする。
本発明は上記目的を達成するため、以下の手段を採用した。
本発明の密封装置は、機器の回転部材と前記回転部材の外周側に配置された非回転の静止部材との間で機外の異物が機内へ侵入しないようシールする密封装置であって、回転側のシールフランジの機内側端面に非回転のシールリップを摺接させる構造を備える密封装置において、前記シールフランジの外周端部を機外側へ曲げ加工し、前記シールリップを設けたリップシール部材における筒状の取付部が前記シールフランジの外周側に配置され、前記シールフランジと前記取付部との間の径方向間隙が前記異物の侵入経路とされ、前記曲げ加工したシールフランジの外周端部における機外側端面の断面延長線が前記取付部の内周面と交差するように設定されていることを特徴とする(請求項1)。
本発明の密封装置(請求項1)によれば、シールフランジの外周端部が機外側へ曲げ加工されているため、シールフランジが回転したときにシールフランジの機外側に発生する外周側へ向けての空気の流れが曲げ加工に沿って機外側へ向けて斜めに流れることになり、よってこのように外周側であってかつ機外側へ向けて斜めに流れる空気の流れによって機外の異物を密封装置から遠ざけることが可能とされる。シールフランジはその回転時に遠心力による流体振り切り作用を発揮し、この流体振り切り作用によって外周側へ向けての空気の流れを生じさせるものである。したがってシールフランジが高速で回転するほど空気の流れ量が増大することになる。
また、本発明の密封装置(請求項1)によれば、シールフランジと取付部との間の径方向間隙が異物の侵入経路とされるところ、曲げ加工したシールフランジの外周端部における機外側端面の断面延長線が取付部の内周面と交差するように設定されているため、曲げ加工したシールフランジの外周端部における機外側端面に沿って流れる空気が取付部の内周面へ向けて流れ、このとき異物の侵入経路の開口部をその内周側から外周側へかけて横断するよう流れる。したがって空気の流れが侵入経路の開口部を塞ぐかたちとなるため、機外の異物が侵入経路の開口部へ近付くのを抑制することが可能とされる。
本発明は上記目的を達成するため更に、以下の手段を採用してもよい。
前記密封装置(請求項1)において、前記シールフランジの機外側端面に、回転時に外周側へ向けて空気の流れを生じさせるネジ部を設けたことを特徴とする(請求項2)。
本発明の密封装置(請求項2)によれば、シールフランジの機外側端面に回転時に外周側へ向けて空気の流れを生じさせるネジ部が設けられているため、シールフランジが回転したときに発生する空気の流れ量が増大する。したがってこのように空気の流れ量が増大するため、異物に対するシール性を高めることが可能とされる。ネジ部はその回転時に遠心力による流体ポンピング作用を発揮し、この流体ポンピング作用によって外周側へ向けての空気の流れを生じさせるものである。したがってネジ部が高速で回転するほど空気の流れ量が増大することになる。ネジ部は一般にネジ状の溝として形成されるが、このほかネジ状の突起などであっても良い。
本発明においては以上説明したように、外周側であってかつ機外側へ向けて斜めに流れる空気の流れによって機外の異物を密封装置から遠ざける。また、空気の流れが侵入経路の開口部を塞ぎ、機外の異物が侵入経路の開口部へ近付くのを抑制する。したがってこれらの作用に基づいて機外の異物が侵入経路を経由して密封装置の内部へ侵入するのを抑制することができ、密封装置の内部に異物が堆積してシール機能に影響を及ぼすのを防止することができる。またシールフランジの機外側端面にネジ部を設けることにより空気の流れ量が増大するため、異物に対するシール性を一層増大させることができる。
本発明の実施例に係る密封装置の要部断面図 同密封装置に備えられるネジ部の説明図 同密封装置の一部拡大断面図 従来例に係る密封装置の要部断面図
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)構成
・シールフランジの大気側の側面に螺旋状の溝を両回転方向に設ける。
・シールフランジの先端を大気側に曲げる。
・先端を大気側に曲げたシールフランジの外周面の延長上に開口部(泥水侵入経路)がある。
(2)作用効果
・軸回転時、溝を伝い、外周側へ向かう空気の流れを生じさせる。
・空気の流れが軸に対して垂直方向から大気側へ向き、泥水を大気側へ排出するとともに、侵入経路付近に泥水が近づきにくくなる。
・開口部(泥水侵入経路)へ空気を当てて泥水の侵入を防ぐ。
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の実施例に係る密封装置1の要部断面を示している。当該実施例に係る密封装置1は、自動車等の車両におけるハブベアリングシールとして用いられるものであって、機器の回転部材であるベアリングの内輪51の外周に装着されるスリンガー11と、機器の静止部材であるベアリングの外輪52の内周に装着されるリップシール部材21との組み合わせにより構成され、機外(大気側)Aの異物が機内(ベアリング側)Bへ侵入しないように異物をシールする。
スリンガー11は、金属等の剛材製であって、内輪51の外周面に固定(嵌合)されるスリーブ12と、このスリーブ12の一端(機外側端部)に設けられたシールフランジ13とを一体に有している。
一方、リップシール部材21は、外輪52の内周面に固定(嵌合)される筒状の取付部22と、この取付部22の一端(機内側端部)に設けられたリップ保持部23とを一体に有し、このリップ保持部23によって、スリンガー11におけるシールフランジ13の機内側端面13aに摺動可能に密接することにより機外Aの異物をシールするシールリップ(端面リップ)24と、スリンガー11におけるスリーブ12の外周面に摺動可能に密接することにより同じく機外Aの異物をシールするシールリップ(ラジアルリップ)25と、機内Bのグリースをシールするグリースリップ26が一体に保持されている。
また、このリップシール部材21は、構成部品としては、外輪52の内周面に固定(嵌合)される金属等の剛材よりなる取付環(芯金)27と、この取付環27に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体28とを有し、このゴム状弾性体28によって、上記シールリップ24,25およびグリースリップ26が一体に設けられている。
リップシール部材21における筒状の取付部22は、スリンガー11におけるシールフランジ13の外周側に配置されている。したがってシールフランジ13の外周側であってシールフランジ13と筒状の取付部22との間に環状を呈する径方向間隙31が形成され、この径方向間隙31が機外Aから密封装置1の内部空間Cへの異物の侵入経路Sとされる。
上記スリンガー11におけるシールフランジ13の機外側端面13bに、回転時に外周側へ向けて空気の流れを生じさせるネジ部14が設けられている。図2に示すようにこのネジ部14は、回転方向が正逆いずれの方向であっても良いように正方向ネジ14Aおよび逆方向ネジ14Bの組み合わせよりなる両方向ネジとして設けられ、正方向ネジ14Aおよび逆方向ネジ14Bがそれぞれ複数本ずつ円周上一定間隔で設けられている。またこのネジ部14は具体的にはネジ状の溝(凹み)よりなり、回転時に遠心力によるネジポンピング作用を発揮し、このポンピング作用によってシールフランジ13の機外A側で外周側へ向けての空気の流れを生じさせる。
上記スリンガー11におけるシールフランジ13は、軸直角の平面体として設けられているが、その外周端部13cは機外A側へ向けて曲げ加工され、外周端部13cの機外側端面13bは断面円弧形の曲線状とされている。したがってネジ部14のポンピング作用によって生じる空気の流れはこの曲げ加工部によって、外周側であってかつ機外A側へ向けての斜めの向きの流れとされる。
曲げ加工の曲げの度合いは、以下のように設定するのが好適である。
すなわち当該密封装置1では上記したようにシールフランジ13の外周側にリップシール部材21の取付部22が配置され、このシールフランジ13および取付部22間の径方向間隙31が異物の侵入経路Sとされるので、図3に示すように、曲げ加工したシールフランジ13の外周端部13cにおける機外側端面13bの断面延長線13b’が取付部22の内周面22aに対し斜めに交差するように曲げの度合いを設定する。
そして、このようにすれば、曲げ加工したシールフランジ13の外周端部13cにおける機外側端面13bに沿って流れる空気が取付部22の内周面22aへ向けて流れ(矢印x方向)、このとき侵入経路Sの開口部(侵入経路Sの機外A側開口およびその近傍部位)をその内周側から外周側へ横断し、取付部22の内周面22aに当たり、さらに取付部22の内周面22a当たってからは取付部22の内周側を侵入経路Sの開口部から離れる向きに流れるため、この空気の流れによって、侵入経路Sに侵入しようとする機外Aの異物を密封装置1から遠ざける方向へ押し戻すことができる(矢印y方向)。
したがって、上記構成の密封装置1によれば、機外Aの異物が侵入経路Sを経由して密封装置1の内部空間Cへ侵入するのを抑制することができ、よって密封装置1の内部空間Cに異物が堆積してシール機能に影響を及ぼすのを防止することができる。
尚、上記したようにシールフランジ13はその回転時に遠心力による流体振り切り作用を発揮し、この流体振り切り作用によって外周側へ向けての空気の流れを生じさせるので、このシールフランジ13の機外側端面13bには必ずしもネジ部14を設けるには及ばない。但し、ネジ部14を設けたほうが空気の流れ量が増大するので、シール性が高められることになる。
1 密封装置
11 スリンガー
12 スリーブ
13 シールフランジ
13a 機内側端面
13b 機外側端面
13b’ 断面延長線
13c 外周端部
14 ネジ部
14A 正方向ネジ
14B 逆方向ネジ
21 リップシール部材
22 取付部
22a 内周面
23 リップ保持部
24,25 シールリップ
26 グリースリップ
27 取付環
28 ゴム状弾性体
31 径方向間隙
A 機外
B 機内
C 密封装置の内部空間
S 異物の侵入経路

Claims (2)

  1. 機器の回転部材と前記回転部材の外周側に配置された非回転の静止部材との間で機外の異物が機内へ侵入しないようシールする密封装置であって、回転側のシールフランジの機内側端面に非回転のシールリップを摺接させる構造を備える密封装置において、
    前記シールフランジの外周端部を機外側へ曲げ加工し、
    前記シールリップを設けたリップシール部材における筒状の取付部が前記シールフランジの外周側に配置され、
    前記シールフランジと前記取付部との間の径方向間隙が前記異物の侵入経路とされ、
    前記曲げ加工したシールフランジの外周端部における機外側端面の断面延長線が前記取付部の内周面と交差するように設定されていることを特徴とする密封装置。
  2. 請求項1記載の密封装置において、
    前記シールフランジの機外側端面に、回転時に外周側へ向けて空気の流れを生じさせるネジ部を設けたことを特徴とする密封装置。
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