本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する各形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《実施形態1》
実施形態1に係る空気調和機(A)は、空調の対象空間である恒温室(S)の空気の温度を調節する。空調の対象空間は、恒温室(S)に限られず、冷却庫や室内等の空間であってもよい。また、空調の対象空間は、特に空気の温度調節に高い精度が要求される空間であることが好ましい。図1に示すように、空気調和機(A)は、複数の冷媒回路ユニット(10,20)と、空調ユニット(40)と、コントローラ(50)とを備えている。
〈冷媒回路ユニット〉
本実施形態の空気調和機(A)は、第1冷媒回路ユニット(10)と第2冷媒回路ユニット(20)とを有している。複数の冷媒回路ユニット(10,20)の数量はこれに限らず、3つ以上であってもよい。
〔第1冷媒回路ユニット〕
第1冷媒回路ユニット(10)は、第1冷媒回路(11)を有している。第1冷媒回路(11)は、第1熱源回路(11a)と第1利用回路(11b)とが第1液管(L1)及び第1ガス管(G1)を介して互いに接続されて構成される。第1冷媒回路(11)では、充填された冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
第1熱源回路(11a)は、第1室外ユニット(U1)に収容されている。第1熱源回路(11a)には、第1圧縮機(12)、第1室外熱交換器(熱源熱交換器)(13)、第1室外膨張弁(膨張機構)(14)、及び第1四方切換弁(流路切換機構)(15)が接続されている。
第1液管(L1)には、第1利用膨張弁(17)が接続されている。
第1利用回路(11b)は、空調ユニット(40)の内部に配置されている。第1利用回路(11b)には、第1室内熱交換器(利用熱交換器)(18)が接続されている。
第1圧縮機(12)は、吸入した低圧冷媒を圧縮し、圧縮後の高圧冷媒を第1冷媒回路(11)へ吐出する。第1圧縮機(12)は、回転式圧縮機(例えばスクロール圧縮機やロータリ圧縮機等)で構成される。第1圧縮機(12)は、そのモータにインバータ装置を介して電力が供給される。つまり、第1圧縮機(12)は、運転周波数が調節可能な可変容量式の圧縮機で構成される。
第1圧縮機(12)には、モータに供給される電流値を計測する第1電流計(電流検知部(31))が取り付けられる。第1圧縮機(12)の吐出部には、高圧冷媒の圧力を検知する第1高圧圧力センサ(高圧検知部)(32)が接続される。第1圧縮機(12)の吸入部には、第1低圧圧力センサ(低圧検知部)(33)が接続される。
第1室外熱交換器(13)は例えばフィン・アンド・チューブ式の熱交換器で構成される。第1室外熱交換器(13)の近傍には、第1室外ファン(16)が設置される。第1室外熱交換器(13)では、第1室外ファン(16)が搬送する室外空気と冷媒とが熱交換する。
第1室外膨張弁(14)は、第1熱源回路(11a)のうち第1室外熱交換器(13)の液側端部の近傍に接続される。第1室外膨張弁(14)は、開度が可変な電子膨張弁で構成される。
第1四方切換弁(15)は、第1冷媒回路(11)の冷媒の流路を切り換える。第1四方切換弁(15)は、第1〜第4のポートを有している。第1のポートは、第1圧縮機(12)の吐出部と接続し、第2のポートは、第1圧縮機(12)の吸入部と接続し、第3のポートは第1ガス管(G1)と接続し、第4のポートは第1室外熱交換器(13)のガス端部と接続する。
第1四方切換弁(15)は、第1のポートと第4のポートが接続し且つ第2のポートと第3のポートが接続する第1状態(図1の実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが接続し且つ第2のポートと第4のポートが接続する第2状態(図1の破線で示す状態)とに切換可能に構成される。第1四方切換弁(15)が第1状態になると、第1室外熱交換器(13)が凝縮器(放熱器)となり且つ第1室内熱交換器(18)が蒸発器となる冷媒流路が形成される。第1四方切換弁(15)が第2状態になると、第1室内熱交換器(18)が凝縮器(放熱器)となり且つ第1室外熱交換器(13)が蒸発器となる冷媒流路が形成される。
第1室内熱交換器(18)は、例えばフィン・アンド・チューブ式の熱交換器で構成される。
〔第2冷媒回路ユニット〕
第2冷媒回路ユニット(20)の構成は、第1冷媒回路ユニット(10)の構成と概ね同じである。即ち、第2冷媒回路ユニット(20)は、第2熱源回路(21a)と第2利用回路(21b)とが第2液管(L2)及び第2ガス管(G2)を介して互いに接続され第2冷媒回路(21)が構成される。
第2冷媒回路(21)には、第2圧縮機(22)、第2室外熱交換器(熱源熱交換器)(23)、第2室外膨張弁(膨張機構)(24)、第2四方切換弁(流路切換機構)(25)、第2高圧圧力センサ(高圧検知部)(35)、第2低圧圧力センサ(低圧検知部)(36)、第2利用膨張弁(膨張機構)(27)、及び第2室内熱交換器(熱源熱交換器)(28)が接続される。
第2冷媒回路ユニット(20)は、第2室外ユニット(U2)を有している。第2圧縮機(22)には、第2電流計(電流検知部(34))が取り付けられる。第2室外ユニット(U2)の内部には、第2室外熱交換器(23)の近傍に第2室外ファン(26)が設けられる。
〈空調ユニット〉
空気調和機(A)は、1つの空調ユニット(40)(空調部)を有している。空調ユニット(40)は、ケーシング(41)を有している。ケーシング(41)には、空気が吸い込まれる吸込口(42)と、空気が吹き出される吹出口(43)とが形成される。吸込口(42)は、吸込ダクト(D1)を介して恒温室(S)と連通している。吹出口(43)は、吹出ダクト(D2)を介して恒温室(S)と連通している。
空気調和機(A)は、吸込空気温度センサ(第1温度検知部)(37)と、吹出空気温度センサ(第2温度検知部)(38)とがそれぞれ配置される。例えば吸込空気温度センサ(37)は吸込口(42)に配置され、吹出空気温度センサ(38)は吹出口(43)に配置される。
吸込空気温度センサ(37)は、恒温室(S)から吸込ダクト(D1)を介して空気通路(44)に流入する空気の温度Tinを検知する。つまり、吸込空気温度センサ(37)は、実質的には恒温室(S)の空気温度Tinを検知する。従って、吸込空気温度センサ(37)に代えて、吸込ダクト(D1)や恒温室(S)に第1温度検知部を配置し、空気温度Tinを検知してもよい。
吹出空気温度センサ(38)は、空調ユニット(40)で温度の調節がされた空気の温度Toutを検知する。つまり、吹出空気温度センサ(38)は、恒温室(S)に供給される空気温度Toutを検知する。従って、吹出空気温度センサ(38)に代えて、吹出ダクトに第2温度検知部を配置し、空気温度Toutを検知してもよい。
ケーシング(41)の内部には、吸込口(42)から吹出口(43)に亘って空気通路(44)が形成される。空気通路(44)の下側には、凝縮水等を回収するドレンパン(45)が設置されている。空気通路(44)には、空気の上流側(吸込口(42)側)から下流側(吹出口(43)側)に向かって順に、第1及び第2の室内熱交換器(18,28)及びファン(空気搬送部)(46)が配置されている。
ファン(46)は、空気通路(44)の空気を吹出ダクト(D2)を介して恒温室(S)へ供給すると同時に恒温室(S)の空気を吸込ダクト(D1)を介して空気通路(44)へ吸い込む。つまり、ファン(46)は、空気通路(44)と恒温室(S)との間で空気を循環させる。
本実施形態では、複数の室内熱交換器(18,28)が空気の流れに対して並列に配置されている。例えば、第1室内熱交換器(18)は、空気通路(44)の上流部のうち下側寄りに配置され、第2室内熱交換器(28)は、空気通路(44)の上流部のうち上側寄りに配置される。これにより、吸込口(42)から吸い込まれた空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方を並行に通過する。
〈コントローラ〉
コントローラ(50)は、空気調和機(A)を制御するものである。図1に示すように、コントローラ(50)は、第1冷媒回路ユニット(10)及び第2冷媒回路ユニット(20)の各種の要素機器を制御する制御部を構成する。コントローラ(50)は、受信部(51)と、温度設定部(52)と、制御判定部(53)と、圧縮機制御部(54)と、切換制御部(55)と、膨張弁制御部(56)とを有している。
受信部(51)には、各種のセンサで検知された信号が入力される。具体的に、受信部(51)には、例えば各電流計(31,34)で検出したモータの電流値、各高圧圧力センサ(32,35)で検出した冷媒の高圧圧力、各低圧圧力センサ(33,36)で検出した低圧圧力、吸込空気温度センサ(37)で検出した空気温度Tin、吹出空気温度センサ(38)で検出した空気温度Tout等が入力される。ここで、各高圧圧力センサ(32,35)で検出した高圧圧力により冷媒の凝縮温度を、各低圧圧力センサ(33,36)で検出した低圧圧力により冷媒の蒸発温度をそれぞれ求めることができる。つまり、各高圧圧力センサ(32,35)は、冷媒の凝縮温度を検知する凝縮温度検知部ということもできる。また、低圧圧力センサ(33,36)は、冷媒の蒸発温度を検知する蒸発温度検知部ということもできる。
温度設定部(52)には、恒温室(S)の空気温度(即ち、Tin)の目標値(即ち、設定温度Ts)が適宜設定される。
制御判定部(53)は、受信部(51)に入力された指標や、温度設定部(52)に設定された設定温度に基づき、各種の制御や各運転の切換を行うための判定を行う(詳細は後述する)。
圧縮機制御部(54)は、制御判定部(53)の判定結果に基づいて各圧縮機(12,22)の運転周波数を制御する。切換制御部(55)は、制御判定部(53)の判定結果に基づいて四方切換弁(15,25)を第1状態と第2状態のいずれかに切り換える。膨張弁制御部(56)は、制御判定部(53)の判定結果に基づいて各膨張弁(14,17,24,27)の開度を調節する。
−運転動作−
空気調和機(A)の運転動作について説明する。
〈基本的な運転動作〉
空気調和機(A)は、冷却加熱運転(第1運転)と、全冷却運転(第2運転)と、全加熱運転(第3運転)とを切り換えて実行する。まず、各運転の基本的な運転動作について説明する。
〔冷却加熱運転〕
図2に示す冷却加熱運転では、複数(本実施例では2つ)の冷媒回路ユニット(10,20)のうちの一部の冷媒回路ユニット(本実施例では第1冷媒回路ユニット(10))の冷媒回路(11,21)において、第1室外熱交換器(13)が凝縮器となり第1室内熱交換器(18)が蒸発器となる第1冷凍サイクルが行われる。同時に、冷却加熱運転では、複数の冷媒回路ユニット(10,20)のうちの他の冷媒回路ユニット(本実施例では第2冷媒回路ユニット(20))の冷媒回路(21)において、第2室内熱交換器(28)が凝縮器となり第2室外熱交換器(23)が蒸発器となる第2冷凍サイクルが行われる。つまり、冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)が蒸発器となる動作(以下、冷却動作ともいう)と同時に第2室内熱交換器(28)が凝縮器となる動作(以下、加熱動作ともいう)が行われる。
冷却加熱運転について具体的に説明する。
第1冷媒回路ユニット(10)では、第1四方切換弁(15)が第1状態となり、第1室外膨張弁(14)が全開となり、第1利用膨張弁(17)の開度が調節される。第1利用膨張弁(17)の開度は、スーパーヒート制御(吸入過熱度制御)により調節される。第1室外ファン(16)及び第1圧縮機(12)が運転される。第1圧縮機(12)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第1圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、第1室外熱交換器(13)を流れ、室外空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第1利用膨張弁(17)で減圧され、第1室内熱交換器(18)を流れる。第1室内熱交換器(18)では、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第1圧縮機(12)に吸入されて再び圧縮される。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第2四方切換弁(25)が第2状態となり、第2利用膨張弁(27)が全開となり、第2利用膨張弁(27)の開度が調節される。第2利用膨張弁(27)の開度は、スーパーヒート制御により調節される。第2室外ファン(26)及び第2圧縮機(22)が運転される。第2圧縮機(22)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第2圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、第2室内熱交換器(28)を流れ、室内空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第2室外膨張弁(24)で減圧され、第2室外熱交換器(23)を流れる。第2室外熱交換器(23)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第2圧縮機(22)に吸入されて再び圧縮される。
空調ユニット(40)では、ファン(46)が運転される。これにより、恒温室(S)の空気が吸込ダクト(D1)及び吸込口(42)を通じてケーシング(41)内の空気通路(44)に流入する。空気通路(44)を流れる空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とを並行に流れる。冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)が蒸発器となり、第2室内熱交換器(28)が凝縮器となっている。このため、一部の空気が第1室内熱交換器(18)で冷却され、同時に残りの空気が第2室内熱交換器(28)で加熱される。このようにして複数の室内熱交換器(18,28)で温度が調節された空気は、吹出口(43)及び吹出ダクト(D2)を通じて恒温室(S)に供給される。
この冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ、第2室内熱交換器(28)で加熱動作が行われる。このため、恒温室(S)の温度(即ち、吸込空気の温度Tin)を設定温度Tsに精度よく近づけることができる。
〔全冷却運転〕
図3に示す全冷却運転では、全て(本実施例では2つ)の冷媒回路ユニット(10,20)の各冷媒回路(11,21)において、各室外熱交換器(13,23)が凝縮器となり各室内熱交換器(18,28)が蒸発器となる第1冷凍サイクルが行われる。つまり、全冷却運転では、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方で冷却動作が行われる。
全冷却運転について具体的に説明する。
第1冷媒回路ユニット(10)の動作は、上述した冷却加熱運転と同様である。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第2四方切換弁(25)が第1状態となり、第2室外膨張弁(24)が全開となり、第2利用膨張弁(27)の開度が調節される。第2利用膨張弁(27)の開度は、スーパーヒート制御(吸入過熱度制御)により調節される。第2室外ファン(26)及び第2圧縮機(22)が運転される。第2圧縮機(22)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsetとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第2圧縮機(22)で圧縮された冷媒は、第2室外熱交換器(23)を流れ、室外空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第2利用膨張弁(27)で減圧され、第2室内熱交換器(28)を流れる。第2室内熱交換器(28)では、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第2圧縮機(22)に吸入されて再び圧縮される。
空調ユニット(40)では、ファン(46)が運転される。これにより、恒温室(S)の空気が吸込ダクト(D1)及び吸込口(42)を通じてケーシング(41)内の空気通路(44)に流入する。空気通路(44)を流れる空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とを並行に流れる。全冷却運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器(28)が蒸発器となる。このため、空気通路(44)を流れる空気は、これらの室内熱交換器(18,28)で冷却される。このようにして複数の室内熱交換器(18,28)で温度が調節された空気は、吹出口(43)及び吹出ダクト(D2)を通じて恒温室(S)に供給される。
この全冷却運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器で冷却動作が行われる。このため、空調ユニット(40)の冷却能力は、冷却加熱運転よりも大きくなる。従って、恒温室(S)の冷却負荷が比較的大きい条件下であっても、恒温室(S)の温度(即ち、吸込空気の温度Tin)を速やかに設定温度Tsに近づけることができる。
〔全加熱運転〕
図4に示す全加熱運転では、全て(本実施例では2つ)の冷媒回路ユニット(10,20)の各冷媒回路(11,21)において、各室内熱交換器(18,28)が凝縮器となり各室外熱交換器(13,23)が蒸発器となる第2冷凍サイクルが行われる。つまり、全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)との双方で加熱動作が行われる。
全加熱運転について具体的に説明する。
第1冷媒回路ユニット(10)では、第1四方切換弁(15)が第2状態となり、第1利用膨張弁(17)が全開となり、第1利用膨張弁(17)の開度が調節される。第1利用膨張弁(17)の開度は、スーパーヒート制御により調節される。第1室外ファン(16)及び第1圧縮機(12)が運転される。第1圧縮機(12)の運転周波数は、原則として、吸込空気温度センサ(37)で検知される吸込空気の温度Tinと、設定温度Tsとの差(Tin−Ts)に応じて調節される。
第1圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、第1室内熱交換器(18)を流れ、室内空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、第1室外膨張弁(14)で減圧され、第1室外熱交換器(13)を流れる。第1室外熱交換器(13)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、第1圧縮機(12)に吸入されて再び圧縮される。
第2冷媒回路ユニット(20)の動作は、上述した冷却加熱運転と同様である。
空調ユニット(40)では、ファン(46)が運転される。これにより、恒温室(S)の空気が吸込ダクト(D1)及び吸込口(42)を通じてケーシング(41)内の空気通路(44)に流入する。空気通路(44)を流れる空気は、第1室内熱交換器(18)と第2室内熱交換器(28)とを並行に流れる。全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器(28)が凝縮器となる。このため、空気通路(44)を流れる空気は、これらの室内熱交換器(18,28)で加熱される。このようにして複数の室内熱交換器(18,28)で温度が調節された空気は、吹出口(43)及び吹出ダクト(D2)を通じて恒温室(S)に供給される。
この全加熱運転では、第1室内熱交換器(18)及び第2室内熱交換器で加熱動作が行われる。このため、空調ユニット(40)の加熱能力は、冷却加熱運転よりも大きくなる。従って、恒温室(S)の加熱負荷が比較的大きい条件下であっても、恒温室(S)の温度(即ち、吸込空気の温度Tin)を速やかに設定温度Tsに近づけることができる。
〈各運転の切換の判定動作〉
次いで、上述した冷却加熱運転、全冷却運転、及び全加熱運転を切り換えるための判定動作について図5を参照しながら説明する。
空気調和機(A)の運転の開始時には、例えば冷却加熱動作が実行される(ステップSt1)。冷却加熱運転が開始された後、ステップSt2へ移行すると、制御判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。
具体的に、ステップSt2では、以下の1)〜3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより大きい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最大に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最小に達している。ステップSt2において、これらの全ての条件が成立する場合、現状の冷却加熱運転では、恒温室(S)の冷却負荷に対し、空気調和機(A)の冷却能力が不足していると判断できる。従って、この場合、ステップSt3へ移行し、全冷却運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、全ての室内熱交換器(18,28)で冷却動作が行われるため、冷却能力の不足を解消できる。
全冷却運転が開始されると、ステップSt4へ移行し、制御判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt4では、以下の1)、2)、3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより大きい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最大に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の冷却能力)が最大に達している。ステップSt4において、これらの全ての条件が成立する場合、未だ恒温室(S)の冷却負荷が処理されていないと判断できる。従って、この場合、ステップSt3へ戻り、全冷却運転が継続して行われる。ステップSt4において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt5へ移行する。
ステップSt5では、制御判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt5では、以下の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより小さい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最小に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の冷却能力)が最小に達している。ステップSt5において、これらの全ての条件が成立する場合、全冷却運転では、恒温室(S)が過剰に冷却されていると判断できる。従って、この場合、ステップSt1へ移行し、全冷却運転から冷却加熱運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、一部の室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ、他の室内熱交換器(28)で加熱動作が行われるため、恒温室(S)が過剰に冷却されることを抑制しつつ、恒温室(S)の温度を精度よく調節できる。ステップSt5において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt3へ移行し、全冷却運転が継続して行われる。
上述したステップSt2において、該ステップSt2の判定条件が成立しない場合、ステップSt6へ移行する。ステップSt6では、制御判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt6では、以下の1)、2)、3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより小さい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の冷却能力)が最小に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最大に達している。ステップst6において、これらの全ての条件が成立する場合、現状の冷却加熱運転では、恒温室(S)の加熱負荷に対し、空気調和機(A)の加熱能力が不足していると判断できる。従って、この場合ステップSt7へ移行し、全加熱運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、全ての室内熱交換器(18,28)で加熱動作が行われるため、加熱能力の不足を解消できる。ステップSt7の判定条件が成立しない場合、ステップSt1へ移行し、冷却加熱運転が継続して行われる。
全加熱運転が開始されると、ステップSt8へ移行し、制御判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt8では、以下の1)、2)、3)の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより小さい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の加熱能力)が最大に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最大に達している。ステップSt8において、これらの全ての条件が成立する場合、未だ恒温室(S)の加熱負荷が処理されていないと判断できる。従って、この場合、ステップSt7へ戻り、全加熱運転が継続して行われる。ステップSt8において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt9へ移行する。
ステップSt9では、制御判定部(53)による運転の切換の判定が行われる。ステップSt5では、以下の条件が全て成立するか否かの判定が行われる。1)吸込空気の温度Tinが吹出空気の温度Toutより大きい。2)第1圧縮機(12)の運転周波数(即ち、第1室内熱交換器(18)の加熱能力)が最小に達している。3)第2圧縮機(22)の運転周波数(即ち、第2室内熱交換器(28)の加熱能力)が最小に達している。ステップSt9において、これらの全ての条件が成立する場合、全加熱運転では、恒温室(S)が過剰に加熱されていると判断できる。従って、この場合、ステップSt1へ移行し、全加熱運転から冷却加熱運転へ移行する。これにより、空気調和機(A)では、一部の室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ、他の室内熱交換器(28)で加熱動作が行われるため、恒温室(S)が過剰に加熱されることを抑制しつつ、恒温室(S)の温度を精度よく調節できる。ステップSt9において、この判定条件が成立しない場合、ステップSt7へ移行し、全加熱運転が継続して行われる。
〈各運転の詳細な制御動作〉
次いで、上述した冷却加熱運転、全冷却運転、及び全加熱運転の詳細な制御動作についてそれぞれ説明する。
〔全冷却運転の制御動作〕
図6に示す全冷却運転では、上述したように、蒸発器となる第1室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ(ステップSt31)、同時に蒸発器となる第2室内熱交換器(28)で冷却動作が行われる(ステップSt38)。本実施例の全冷却運転では、第1冷媒回路ユニット(10)と第2冷媒回路ユニット(20)とが基本的に同じ動作を行う。つまり、本実施例の全冷却運転では、各室内熱交換器(18,28)の蒸発温度が同じとなるように、各圧縮機(12,22)が制御される。
具体的に、第1冷媒回路ユニット(10)では、全冷却運転の開始の後、ステップSt32において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt1秒(例えばt1=30秒)が経過すると、ステップSt33へ移行する。ステップSt33では、制御判定部(53)により、吸込温度Tin(即ち、恒温室(S)の室内温度)と空気調和機(A)の設定温度Tsとの差(Tin−Ts)が算出され、この差(Tin−Ts)が所定値α(例えばα=1.0℃)より大きいか否かの判定が行われる。ステップSt33において、Tin−Ts>αである場合、ステップSt34へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ増大し、第1室内熱交換器(18)の冷却能力が増大する。その後、ステップSt35において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt2秒(例えばt2=30秒)が経過する、又はステップSt33の判定条件が成立しない場合、ステップSt36へ移行する。
ステップSt36では、制御判定部(53)により、Tin−Tsが算出され、この差が所定値β(例えばβ=1.0℃)より小さいか否かの判定が行われる。ステップSt36において、Tin−Ts<βである場合、ステップSt37へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ減少し、第1室内熱交換器(18)の冷却能力が低下する。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第1冷媒回路ユニット(10)と同様にして、ステップSt38〜ステップSt44の制御が行われる(詳細の説明は省略する)。
〔全加熱運転の制御動作〕
図7に示す全加熱運転では、上述したように、凝縮器となる第1室内熱交換器(18)で加熱動作が行われ(ステップSt71)、同時に凝縮器となる第2室内熱交換器(28)で加熱動作が行われる(ステップSt78)。本実施例の全加熱運転では、第1冷媒回路ユニット(10)と第2冷媒回路ユニット(20)とが基本的に同じ動作を行う。つまり、本実施例の全加熱運転では、各室内熱交換器(18,28)の凝縮温度が同じとなるように、各圧縮機(12,22)が制御される。
具体的に、第1冷媒回路ユニット(10)では、全加熱運転の開始の後、ステップSt72において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt3秒(例えばt3=30秒)が経過すると、ステップSt73へ移行する。ステップSt73では、制御判定部(53)により、空気調和機(A)の設定温度Tsと吸込温度Tin(即ち、恒温室(S)の室内温度)との差(Ts−Tin)が算出され、この差(Ts−Tin)が所定値α(例えばα=1.0℃)より大きいか否かの判定が行われる。ステップSt73において、Ts−Tin>αである場合、ステップSt74へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ増大し、第1室内熱交換器(18)の加熱能力が増大する。その後、ステップSt75において、第1圧縮機(12)の運転周波数が変化してからt4秒(例えばt4=30秒)が経過する、又はステップSt73の判定条件が成立しない場合、ステップSt76へ移行する。
ステップSt76では、制御判定部(53)により、Ts−Tinが算出され、この差が所定値β(例えばβ=1.0℃)より小さいか否かの判定が行われる。ステップSt76において、Ts−Tin<βである場合、ステップSt77へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が所定周波数だけ減少し、第1室内熱交換器(18)の加熱能力が低下する。
第2冷媒回路ユニット(20)では、第1冷媒回路ユニット(10)と同様にして、ステップSt78〜ステップSt48の制御が行われる(詳細の説明は省略する)。
〔冷却加熱運転の制御動作〕
図8及び図9に示す冷却加熱運転では、上述したように、蒸発器となる第1室内熱交換器(18)で冷却動作が行われ(ステップSt11)、同時に凝縮器となる第2室内熱交換器(28)で加熱動作が行われる(ステップSt21)。
[第1冷媒回路ユニット]
図8に示すように、第1冷媒回路ユニット(10)では、ステップSt12〜ステップSt14において、第1圧縮機(12)の運転周波数を増大させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt12では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、且つ2)Tin−Ts>T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt15へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大する。
ステップSt13では、1)第1圧縮機(12)の運転数周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、且つ2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts>T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt15へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大する。
ステップSt14では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t7(例えばt7=60秒)が経過し、且つ2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts>T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt15へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大する。ステップSt12〜14の各条件が成立しない場合、第1圧縮機(12)の運転周波数が増大することなく、ステップSt16へ移行する。
図9に示すように、第1冷媒回路ユニット(10)では、ステップSt16〜ステップSt19において、第1圧縮機(12)の運転周波数を減少させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt16では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、且つ2)Tin−Ts<T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt20へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt17では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過し、2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts<T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt20へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt18では、1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t7(例えばt7=60秒)が経過し、且つ2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Tin−Ts<T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt20へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt19では、以下の1)〜4)の条件が全て成立すると、ステップSt20へ移行する。1)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t5(例えばt5=30秒)が経過する。2)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過する。3)−T4≦Tin−Ts≦+T4(例えばT4=0.5℃)する。4):4−1)第1圧縮機(12)の運転周波数f1が、第2圧縮機(22)の運転周波数f2以下である、又は4−2)第1圧縮機(12)の電流値A1が、第2圧縮機(22)の電流値A2以下である。このように、ステップSt19では、1)〜4)の全ての条件が成立すると、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。ステップSt16〜20の各条件が成立しない場合、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少することはない。
[第2冷媒回路ユニット]
図8に示すように、第2冷媒回路ユニット(20)では、ステップSt22〜ステップSt24において、第2圧縮機(22)の運転周波数を増大させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt22では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、且つ2)Ts−Tin>T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt25へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大する。
ステップSt23では、1)第2圧縮機(22)の運転数周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、且つ2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin>T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt25へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大する。
ステップSt24では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t9(例えばt9=55秒)が経過し、且つ2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin>T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt25へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大する。ステップSt22〜24の各条件が成立しない場合、第2圧縮機(22)の運転周波数が増大することなく、ステップSt26へ移行する。
図9に示すように、第2冷媒回路ユニット(20)では、ステップSt26〜ステップSt30において、第2圧縮機(22)の運転周波数を減少させるか否かの判定がそれぞれ行われる。
ステップSt26では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、且つ2)Ts−Tin<T1(例えばT1=2.0℃)の条件が成立すると、ステップSt30へ移行し、第1圧縮機(12)の運転周波数が減少する。
ステップSt27では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt8=25秒)が経過し、2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin<T2(例えばT2=1.5℃)の条件が成立すると、ステップSt30へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少する。
ステップSt28では、1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t9(例えばt9=55秒)が経過し、且つ2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過し、且つ3)Ts−Tin<T3(例えばT3=1.0℃)の条件が成立すると、ステップSt30へ移行し、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少する。
ステップSt29では、以下の1)〜4)の条件が全て成立すると、ステップSt30へ移行する。1)第2圧縮機(22)の運転周波数の変化後t8(例えばt5=25秒)が経過する。2)第1圧縮機(12)の運転周波数の変化後t6(例えばt6=15秒)が経過する。3)−T4≦Ts−Tin≦+T4(例えばT4=0.5℃)する。4):4−1)第1圧縮機(12)の運転周波数f1が、第2圧縮機(22)の運転周波数f2より大きい、又は4−2)第1圧縮機(12)の電流値A1が、第2圧縮機(22)の電流値A2より大きい。このように、ステップSt29では、1)〜4)の全ての条件が成立すると、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少する。ステップSt26〜30の各条件が成立しない場合、第2圧縮機(22)の運転周波数が減少することはない。
なお、以上で述べた冷却加熱運転の制御動作では、各温度T1〜T3及び運転周波数の変化後の経過時間t5〜t8は単なる一例である。しかしながら、各温度T1〜T3は、T1>T2>T3>T4であることが好ましい。また、運転周波数の変化後の経過時間t5〜t8については、t7>t8>t5>t6であることが好ましい。
〈油溜まり回避運転〉
本実施形態の空気調和機(A)では、上述した冷却加熱運転が油溜まり回避運転を兼ねている。この点について以下に詳述する。
例えば第1冷媒回路ユニット(10)の第1室内熱交換器(18)で冷却動作を継続して行うと、第1圧縮機(12)から吐出された冷媒中に含まれた油(冷凍機油又は潤滑油とも
いう)が第1冷媒回路(11)に滞ってしまうことがある。具体的には、例えば各熱交換器(13,18)の内部や、各連絡配管(L1,G1)の内部に油が溜まってしまうことがある。特に、第1圧縮機(12)の回転数(運転周波数)が比較的小さく、冷媒の循環量が少ないと、第1冷媒回路(11)に冷媒が溜まり易い。
このようにして第1冷媒回路(11)に油が溜まってしまうと、第1圧縮機(12)の内部の油が不足し、いわゆる油上がりが生じる。この結果、第1圧縮機(12)の各摺動部の潤滑不良を招いてしまう。そこで、本実施形態では、冷却加熱運転において、第1冷媒回路(11)の油を第1圧縮機(12)へ回収するようにしている。
具体的に、冷却加熱運転(即ち、油溜まり回避運転)では、上述した第1圧縮機(12)の運転周波数の制御において、該運転周波数に下限値が設定されている。具体的には、図10に示すように、第1冷媒回路ユニット(10)には、下限運転周波数flが設定されており、第1圧縮機(12)の運転周波数が下限運転周波数flを下回らないように、該運転周波数の減少側の変化が制限される。つまり、冷却加熱運転では、コントローラ(50)の圧縮機制御部(50)が、第1圧縮機(12)の回転数を常に所定の第1回転数(下限運転周波数fl)以上に維持する。ここで、第1回転数(下限運転周波数fl)は、第1冷媒回路(11)に油が溜まらない程度の冷媒の循環量を確保できる値に設定される。
このように本実施形態の冷却加熱運転は、油溜まり回避運転を兼ねているため、第1冷媒回路(11)での油の溜まり込みを未然に回避できる。更に、冷却加熱運転では、恒温室(S)の室内温度Tinが設定温度Tsに近づくように、第1圧縮機(12)の運転周波数と、第2圧縮機(22)の運転周波数とが同じように変化する(図10を参照)。つまり、冷却加熱運転では、第1室内熱交換器(18)の冷却能力と、第2室内熱交換器(28)の加熱能力とが概ね等しくなるように、各圧縮機(12,22)の運転周波数が制御される。このため、空調ユニット(40)では、恒温室(S)へ供給される空気が過剰に冷やされたり、過剰に加熱されたりすることを防止できる。この結果、図10に示すように、恒温室(S)の室内温度Tinは、設定温度Tsの付近に維持される。
−実施形態1の効果−
実施形態1によれば、冷却加熱運転(油溜まり回避運転)において、例えば第1冷媒回路(11)の蒸発器側の第1室内熱交換器(18)に対応する第1圧縮機(12)の回転数を増大させるとともに、第2冷媒回路(21)の利用熱交換器(28)を凝縮器として機能させる。これにより、空調ユニット(40)では、蒸発器側の第1室内熱交換器(18)で空気が冷却されると同時に、凝縮器側の第2室内熱交換器(28)で空気を加熱できる。この結果、油溜まり回避運転において、過剰に冷え込んだ空気が対象空間(S)へ供給されることを回避しつつ、第1冷媒回路(11)の油の油溜まりを確実に回避できる。この結果、信頼性に優れた空気調和機(A)を提供できる。
蒸発器側の第1室内熱交換器(18)に対応する第1圧縮機(12)の回転数と、凝縮器側の第2室内熱交換器(28)に対応する第2圧縮機(22)の回転数とが互いに近づくように、各圧縮機(12,22)の回転数が制御される(図10を参照)。これにより、第1室内熱交換器(18)の冷却能力と、第2室内熱交換器(28)の加熱能力とを互いに近づけることができ、過剰に冷却された空気、あるいは過剰に加熱された空気が対象空間(S)へ供給されることを回避できる。この結果、対象空間(S)の温度が大きく変動してしまうことを防止しつつ、対象とする冷媒回路(11)での油溜まりも回避できる。
油溜まり回避運転において、蒸発器側の第1室内熱交換器(18)に対応する圧縮機(12)の回転数が常に所定値以上に維持されるため、第1冷媒回路(11)に油が溜まり込んでいくこと自体を未然に回避できる。これにより、圧縮機(12)の油上がりを確実に回避でき、圧縮機(12)の信頼性を向上できる。この油溜まり回避運転では、凝縮器側の第2室内熱交換器(28)に対応する第2圧縮機(22)の回転数も増大するため、対象空間(S)の温度が大きく変動してしまうことも防止できる。
〈実施形態1の変形例〉
上述した実施形態1では、冷却加熱運転において常に第1圧縮機(12)の回転数が所定値以上に維持される。しかしながら、例えば冷却加熱運転の一部の期間のみにおいて、第1圧縮機(12)の回転数を所定値以上に維持するようにしてもよい。
《実施形態2》
実施形態2に係る空気調和機(A)は、上記実施形態1とコントローラ(50)の構成が異なる。図11に示すように、実施形態2のコントローラ(50)は、油戻し運転判定部(57)と、入力部(58)とを有している。
油戻し運転判定部(57)は、油溜まり回避運転(油戻し運転ともいう)の開始のタイミングを判定し、この開始を示す信号を入力部(58)に発信するものである。油戻し運転判定部(57)は、上述した冷却加熱運転において、蒸発器となる第1室内熱交換器(18)に対応する第1圧縮機(12)の運転周波数が所定運転周波数f3以下である状態が、継続して所定時間Td以上続いた場合に、油戻し運転が必要であると判定する。ここで、f3やTdは、例えば冷媒回路(11,21)の仕様や運転条件に基づいて経験的に求められたものである。なお、f3は、上述した下限運転周波数flよりも小さい。この条件が成立するということは、冷媒回路(11)に過剰に油が溜まっていることを意味する。
入力部(58)は、油戻し運転判定部(57)からの油戻し運転の開始信号が入力される。入力部(58)に開始信号が入力されると、圧縮機制御部(50)は、第2圧縮機(22)の運転周波数を増大させる制御を行う。具体的には、図12に示すように、冷却加熱運転において、入力部(58)に開始信号が入力されると、第2圧縮機(22)の運転周波数が段階的且つ強制的に増大される。ここで、第2圧縮機(22)の運転周波数を増大させる速度は、通常の冷却加熱運転で第2圧縮機(22)の運転周波数を増大させる速度(例えば図8のステップSt25)よりも遅い。つまり、実施形態2の油戻し運転では、第2圧縮機(22)の運転周波数が比較的緩やかに増大変化する。これを実現する方法としては、第2圧縮機(22)の運転周波数を増大させる変化量を通常運転よりも小さくする、あるいは第2圧縮機(22)の運転周波数を増大させる間隔を通常運転よりも長くすることが挙げられる。
図12に示すように、第2圧縮機(22)の運転周波数が徐々に増大していくと、これに連動するように第1圧縮機(12)の運転周波数も徐々に増大していく。この結果、第1圧縮機(12)の運転周波数が、下限運転周波数flを越えるため、第1冷媒回路(11)に溜まった油を第1圧縮機(12)に回収することができる。
第1圧縮機(12)の運転周波数と第2圧縮機(22)の運転周波数とは、徐々に増大し、且つ互いに近い値となる。このため、第1室内熱交換器(18)の冷却能力や第2室内熱交換器(28)の加熱能力がハンチングしてしまうことを防止でき、且つ両者の能力を近づけることができる。この結果、恒温室(S)の室内温度Tinが設定温度Tsに対して大きく変化してしまうことを確実に防止できる。
この油戻し運転により第1圧縮機(12)の運転周波数が下限運転周波数flを越える時間が所定時間を越えると、上述した冷却加熱運転が再開される。油戻し運転では、恒温室(S)の室内温度Tinが設定温度Ts付近に維持されるため、油戻し運転から冷却加熱運転に移行しても室内温度Tinは設定温度Ts付近に維持される。
−実施形態2の効果−
実施形態2においても、油戻し運転(油溜まり回避運転)において、他の第2冷媒回路(21)の第2室内熱交換器(28)を凝縮器として運転させるため、第1室内熱交換器(18)に対応する第1圧縮機(12)の回転数を増大させたとしても、恒温室(S)の空気が過剰に冷やされてしまうことを回避できる。
特に、油戻し運転が開始されると、まず、凝縮器側の第2室内熱交換器(28)に対応する第2圧縮機(22)の回転数を増大させるため、第1室内熱交換器(18)の冷却能力が第2室内熱交換器(28)の加熱能力を過剰に上回ることを回避できる。従って、蒸発器側の第1室内熱交換器(18)の回転数の増大に起因して、恒温室(S)の室内温度Tinが極端に冷え込んでしまうことを確実に防止できる。
第2圧縮機(22)の回転数を徐々に大きくすることで、第1圧縮機(12)の回転数も徐々に大きく変化する。これにより、第1室内熱交換器(18)の冷却能力や、第2室内熱交換器(28)の加熱能力がハンチングしてしまうことを防止でき、恒温室(S)の室内温度Tinを設定温度Ts付近に確実に維持できる。
なお、油戻し運転における第2圧縮機(22)の回転数を増大させる速度を、通常の運転(冷却加熱運転)における第2圧縮機(22)の回転数を増大させる速度よりも大きくしてもよい。この場合、第1冷媒回路(11)に溜まった油を速やかに回収でき、第1圧縮機(12)の信頼性を確保できる。
〈実施形態2の変形例〉
上述した実施形態2のでは、予め経験的に求めた油戻し運転の最適な開始タイミング(蒸発器側の第1室内熱交換器(18)に対応する第冷媒回路)に油が過剰になったタイミングに併せて、油戻し運転判定部(57)が入力部(58)に信号を出力するようにしている。しかしながら、図13に示すように、油戻し運転判定部(57)は、このような油戻し運転の最適な開始タイミングよりも所定時間Δtだけ前のタイミングで入力部(58)に開始信号を発信する出力部を構成していてもよい。
つまり、この変形例では、上述した実施形態2と比較して、より早いタイミングで第2圧縮機(22)の運転周波数が増大される。これにより、第1圧縮機(12)の運転周波数をより早いタイミングで下限運転周波数fl以上に至らせることができ、第1冷媒回路(11)の油をより速やかに第1圧縮機(12)に回収できる。この結果、第1圧縮機(12)の油上がりを一層確実に防止でき、第1圧縮機(12)の信頼性を向上できる。
それ以外の作用効果は、上述した実施形態と同様である。
《その他の実施形態》
本開示の各種の形態では、以下のような構成としてもよい。
上記各形態に係る空気調和機(A)は、複数の室内熱交換器(18,28)を空気通路(44)に並列に配置しているが、これらの複数の室内熱交換器(18,28)を直列に配置してもよい。このような構成においても、上述のように、各種の油溜まり回避運転を行うことができる。
上記各形態において、空気通路(44)に空気を加熱する補助的なヒータや、空気の除湿や加湿を行う調湿部を配置してもよい。