本発明は、部分的には、ヨウ化物等のハロゲン化合物を使用して、例えば、慢性心不全を含む、例えば、低酸素症、虚血、または再灌流、活性酸素種の形成、免疫もしくは炎症反応、または新陳代謝率の上昇に関連するものを含む、疾患または損傷を治療または予防することができるという驚くべきかつ予測されなかった知見に基づく。添付の実施例に記載されるように、心臓発作等の虚血性攻撃前、その間、またはその後のハロゲン化合物による治療が、得られた組織傷害を防ぐ。加えて、添付の実施例は、ハロゲンによる治療が、例えば、心臓発作後の慢性心不全の症状を改善することを実証する。したがって、本発明は、低酸素症、虚血、及び/または再灌流に関連するものまたはこれらに起因するものを含む、様々な疾患、状態、及び損傷を治療及び予防する新規の方法であって、そのような疾患、状態、または損傷の危険性がある対象に、ヨウ化物等のハロゲン化合物を含む組成物を提供することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、本組成物は、疾患、状態、もしくは損傷前、それと同時に、またはその後、対象に提供され得る。加えて、本発明は、ハロゲン化合物を含む新規の組成物(例えば、薬学的組成物)を提供する。ある特定の実施形態において、本組成物は、例えば、ヨウ化物等の安定した還元型のハロゲン化合物を含む。特定の実施形態において、本組成物は、静脈内投与、注入による投与、または経口投与用に製剤化される。本発明の方法は、多くのハロゲン化合物が哺乳動物で用いるのに安全であることが知られているため、特に好都合であり、そのため、本発明は、多くの疾患、状態、及び損傷を治療及び予防する新規かつ安全な方法を提供する。
加えて、本発明は、安定した還元型のハロゲン化合物、例えば、ヨウ化物を含む組成物、例えば、薬学的組成物を含む。これらの組成物は、対象への投与に適している還元型のハロゲン化合物を維持するように製剤化され得、したがって、使用前の分配及び保存に適している保存寿命を有する、宿主の疾患、状態、及び損傷を治療及び予防するための新規かつ改善された薬学的製品を構成する。ハロゲン化合物に加えて、本発明の組成物は、1つ以上のさらなる活性薬剤、例えば、安定した還元型でもあり得るカルコゲニド等をさらに含んでもよい。特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、静脈内投与、注入、または経口投与用に製剤化され得る。
本発明はまた、有効量のハロゲン化合物を含む組成物の単位剤形も含み、これらは、とりわけ、様々な疾患、状態、及び損傷を治療するのに有用である。様々な実施形態において、本組成物は、静脈内投与、注入による投与、経口投与用に製剤化され得、及び/または保存中、還元型のハロゲン化合物を維持するように製剤化され得る。特定の実施形態において、単位剤形は、予め測定された有効量のハロゲン化合物を含むか、またはそれを構成し、特に、損傷の部位への緊急介入時または対象の移送時に、適切な有効量のハロゲン化合物を対象に送達するために好都合である。ある特定の実施形態において、本組成物は、液体組成物であるのに対して、他の実施形態において、本組成物は、固体または半固体組成物である。例えば、本組成物は、静脈内投与または注入による投与に適している液体組成物であり得るか、または本組成物は、経口投与に適している丸剤、錠剤、またはカプセル等の固体または半固体組成物であり得る。
さらに、本発明は、虚血、低酸素症、または再灌流に関連するものまたはこれらに起因するものを含む、本明細書に記載される疾患、状態、または損傷のうちのいずれかの治療または予防のために、1つ以上のさらなる活性薬剤と組み合わせたハロゲン化合物の使用に関する方法及び組成物を含む。これらの方法は、対象に、1つ以上のさらなる活性薬剤を含むさらなる組成物と組わせたハロゲン化合物を含む組成物を提供することを含み、これには、対象に、ハロゲン化合物及び1つ以上のさらなる活性薬剤の両方を含む単一の組成物を提供することを含む方法も含む。本発明は、例えば、硫化物及びセレン化物等のカルコゲニド、ならびに他の薬剤を含む多種多様のさらなる活性薬剤の使用を企図する。特定の実施形態において、本組成物は、ハロゲン化合物と、慢性心不全を治療または予防するために使用される別の活性薬剤と、を含む。本組成物は、静脈内投与、注入による投与、または経口投与が挙げられるが、これらに限定されない、様々な異なる投与経路用に製剤化され得る。
ある特定の実施形態において、本発明は、担体を含む組成物を含み、ハロゲン化合物は、担体と結合している。カルコゲニド等のさらなる活性薬剤もまた、担体と結合していてもよい。一実施形態において、この担体は、アルブミンもしくは関連ポリペプチド、血漿、血清、アルファ−2−マクログロブリン、または免疫グロブリンである。
本発明はまた、部分的には、グルタチオンが、セレン化物を含むカルコゲニドを安定化するか、またはカルコゲニドの酸化を妨げるという驚くべきかつ予測されなかった知見に基づく。したがって、本発明は、例えば、低酸化症、虚血、または再灌流に関連するものを含む疾患または損傷を治療または予防するために使用されてもよいハロゲン化合物(ヨウ化物等)と任意に組み合わせて、グルタチオン、及びカルコゲニド(セレン化物等)を含む組成物(例えば、薬学的組成物)を含む。特定の実施形態において、本組成物は、静脈内投与、注入による投与、または経口投与用に製剤化される。本発明の組成物は、グルタチオンがカルコゲニドの酸化を阻害し、したがって、より安定した組成物を作製することは、その貯蔵寿命を延長するため、特に好都合である。
本発明はまた、有効量のカルコゲニド及びグルタチオンを含む組成物の単位剤形も含み、これらは、とりわけ、様々な疾患、状態、及び損傷を治療するのに有用である。本組成物は、有効量のハロゲン化合物をさらに含んでもよい。特定の実施形態において、単位剤形は、予め測定された有効量のカルコゲニド、例えば、セレン化物または硫化物を含むか、またはそれを構成し、特に、損傷の部位への緊急介入時または対象の移送時に、適切な有効量のカルコゲニドを対象に送達するために好都合である。ある特定の実施形態において、本組成物は、液体組成物であるのに対して、他の実施形態において、本組成物は、固体または半固体組成物である。例えば、本組成物は、静脈内投与または注入による投与に適している液体組成物であり得るか、または本組成物は、経口投与に適している丸剤、錠剤、またはカプセル等の固体または半固体組成物であり得る。本発明はまた、部分的には、グルタチオンが、ヨウ素化合物、例えば、ヨウ化物及びヨウ素酸塩を含むハロゲンを安定化するか、またはハロゲンの酸化を妨げるという知見に基づく。したがって、本発明は、例えば、低酸化症、虚血、または再灌流に関連するものを含む疾患または損傷を治療または予防するために使用されてもよい別の活性薬剤、例えば、カルコゲニド化合物(硫化物またはセレン化物等)と任意に組み合わせて、グルタチオン及びハロゲン化合物(例えば、ヨウ素化合物、例えば、ヨウ化物またはヨウ素酸塩)を含む組成物(例えば、薬学的組成物)を含む。特定の実施形態において、別の活性薬剤は、慢性心不全を治療または予防するために使用されるものである。ある特定の実施形態において、本組成物は、ハロゲン化合物と、グルタチオンと、心不全を治療または予防するために使用される別の活性薬剤と、を含む。特定の実施形態において、本組成物は、静脈内投与、注入による投与、または経口投与用に製剤化される。本発明の組成物は、グルタチオンがハロゲン化合物(及び存在する場合、カルコゲニド)の酸化を阻害し、したがって、より安定した組成物を作製することは、その貯蔵寿命を延長するため、特に好都合である。
本発明はまた、有効量のハロゲン化合物及びグルタチオンを含む組成物の単位剤形も含み、これらは、とりわけ、様々な疾患、状態、及び損傷を治療するのに有用である。本組成物は、有効量の、カルコゲニド及び/または慢性心不全を治療または予防するために使用される別の活性薬剤をさらに含んでもよい。特定の実施形態において、単位剤形は、予め測定された有効量のハロゲン化合物、例えば、ヨウ化物またはヨウ素酸塩等のヨウ素化合物を含むか、またはそれを構成し、特に、損傷の部位への緊急介入時または対象の移送時に、適切な有効量のハロゲン化合物を対象に送達するために好都合である。ある特定の実施形態において、本組成物は、液体組成物であるのに対して、他の実施形態において、本組成物は、固体または半固体組成物である。例えば、本組成物は、静脈内投与または注入による投与に適している液体組成物であり得るか、または本組成物は、経口投与に適している丸剤、錠剤、またはカプセル等の固体または半固体組成物であり得る。
本発明はまた、有効量のハロゲン化合物、及び慢性心不全を治療または予防するために使用される別の活性薬剤を含む組成物の単位剤形も含み、これらは、とりわけ、例えば、心臓発作後の慢性心不全を治療または予防するのに有用である。本組成物は、有効量の、カルコゲニド及び/またはグルタチオンをさらに含んでもよい。特定の実施形態において、単位剤形は、予め測定された有効量のハロゲン化合物、例えば、ヨウ化物、及び他の活性薬剤を含むか、またはそれを構成し、これは、適切な有効量のハロゲン化合物及び他の活性薬剤を、対象、例えば、慢性心不全または心臓発作後に苦しんでいる対象に送達するために好都合である。ある特定の実施形態において、本組成物は、液体組成物であるのに対して、他の実施形態において、本組成物は、固体または半固体組成物である。例えば、本組成物は、静脈内投与または注入による投与に適している液体組成物であり得るか、または本組成物は、経口投与に適している丸剤、錠剤、またはカプセル等の固体または半固体組成物であり得る。
本発明はまた、部分的には、例えば甲状腺腫誘発物質を含む、甲状腺ホルモンの産生、活性、または取り込みを阻害する、損傷または疾患の部位での過酸化物の形成を妨げるまたは阻害し、したがって、過酸化物の悪影響を防止し、したがって、該損傷または疾患を予防、阻害、または低減する、セレン化物、ヨウ化物、及び他の化合物という発見に基づく。したがって、本発明は、対象に、甲状腺腫誘発物質、または損傷または疾患の部位で過酸化物の形成を阻害するまたは妨げる活性薬剤を提供することによって、対象における本明細書に記載される損傷及び疾患のうちのいずれかを治療または予防するための方法を含む。特定の実施形態において、そのような活性薬剤は、ヨウ化物またはセレン化物である。
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ヨウ素による甲状腺ホルモン産生の阻害が、少なくとも部分的には、ウォルフチャイコフ効果によるものであると考えられている。ウォルフチャイコフ効果は、大量のヨウ素の摂取によって引き起こされる甲状腺ホルモンレベルの減少である。それは、甲状腺における有機化(ヨウ化物の酸化)、甲状腺濾胞内の甲状腺ホルモンの形成、及び血流中への甲状腺ホルモンの放出を阻害する、自己制御現象であると考えられる。これが明らかになり、循環するヨウ化物の上昇したレベルに続発する。ウォルフチャイコフ効果は、数日間(約10日間)続き、その後、ヨウ素の正常な有機化及び正常な甲状腺ペルオキシダーゼ機能の回復が続き、これは、甲状腺濾胞細胞の側底膜における無機ヨウ素濃度の低下により起こるヨウ化ナトリウムシンポーター(NIS)の下方調節が続発すると考えらえる。損傷または疾患の部位での甲状腺ホルモンの産生、活性、またはレベルを妨げることによって、代謝活性が低減するか、または代謝亢進活性が阻害されると、損傷または罹患した組織への傷害が低減をもたらすと考えられる。どのくらい高いヨウ化物レベルがH2O2を生成する甲状腺ペルオキシダーゼを妨げるかは知られていない一方で、いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ヨウ化物が過酸化水素に電子を供与して水を形成し、このことが甲状腺ペルオキシダーゼの阻害として誤って解釈されてきたと仮定される。
本発明はまた、本明細書に記載される疾患、障害、状態、または損傷のうちのいずれかを治療または予防するための、ヨウ化物または硫化物もしくはセレン化物等の他の元素還元剤(ERA)の使用も対象にする。加えて、本発明はまた、部分的には、対象における免疫応答を阻害、予防、または低減するためにハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドを使用する方法も対象にする。本明細書に記載されるように、ハロゲン化合物、例えばヨウ化物、及びカルコゲニド、例えばセレン化物は、活性酸素種を阻害または低減することができる。したがって、それらを使用して、代謝活性及び代謝ストレス、ならびに例えば、活性酸素種に起因する応答を含む、炎症及び望ましくない免疫応答を低減してもよい。
還元型のハロゲン化合物及び/または還元型のカルコゲニドを含む安定した組成物を含む本発明の組成物は、本発明の様々な方法のうちのいずれかに使用してもよい。
定義及び略語
別途本明細書に定義されない限り、本明細書中で使用される科学的及び技術的用語は、当該技術分野の当業者により一般的に理解される意味を有するものとする。概して、本明細書中に記載される、化学、分子生物学、細胞及び癌生物学、免疫学、微生物学、薬理学、ならびにタンパク質及び核酸化学に関して使用される術語、及びそれらの技術は、当該技術分野において周知であり、一般に使用されるものである。
本明細書で使用される、以下の用語は、別途特定されていない限り、それらのものと見なす意味を有する。
「含むこと」という用語は、「含んでいるが、これらに限定されない」を意味するために使用される。「含むこと」及び「含んでいるが、これらに限定されない」は、互換的に使用される。
別途記されない限り、「a」及び「an」という用語は、1つ以上を示す。
「約」とは、数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、長さが、参照の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%までの大きさで変動することを意味する。「約」という用語とともに使用される数値の文脈において論じられる任意の実施形態において、約という用語は、省略できることが具体的に企図される。
別途文脈上必要とされない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む」という用語及び「含んでいる」等の変化形は、開いた包含的な意味、すなわち、「含んでいるが、これらに限定されない」というような意味に解釈されるものとする。
「からなる」とは、「からなる」という語句の前に何が付いても、それを含んでいるが、これらに限定されないことを意味する。それ故に、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要であるかまたは必須であること、及び他の要素が存在し得ないことを示す。
「から本質的になる」とは、この語句の後に列挙される任意の要素を含み、かつ列挙された要素に関して本開示において特定される活性または作用と干渉しないか、またはそれに寄与しない他の要素に限定されないことを意味する。それ故に、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要であるかまたは必須であるが、しかし、他の要素は任意であり、それらが列挙された要素の活性または作用に影響を与えるかどうかに応じて、存在し得る場合と存在し得ない場合があることを示す。
本明細書を通しての「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特色、構造、または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それ故に、本明細書を通しての様々な場所における「1つの実施形態において」または「一実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特色、構造、または特徴が、1つ以上の実施形態における任意の適切な様式で組み合わされてもよい。
「増加した」または「増強した」量は、典型的には、「統計学的に有意な」量であり、すなわち、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、または50倍もしくはそれ以上(例えば、100倍、500倍、1000倍)(例えば、2.1、2.2、2.3、2.4等の1より上のすべての整数及びその間の小数点を含む)の、本明細書に記載される量またはレベルである増加を含んでもよい。
「低下した」または「低減された」または「より少ない」量は、典型的には、「統計学的に有意な」量であり、すなわち、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、または50倍もしくはそれ以上(例えば、100倍、500倍、1000倍)(例えば、1.5、1.6、1.7、1.8等の1より上のすべての整数及びその間の小数点を含む)の、本明細書に記載される量またはレベルである低下を含んでもよい。
「組成物」は、活性薬剤、例えば、ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニド、及び担体、不活性または活性な、例えば、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含むことができる。組成物は、薬学的組成物であってもよい。特定の実施形態において、本組成物は、滅菌されており、エンドトキシンを実質的に含まないか、または用いられる投薬量もしくは濃度においては受容者に対して非毒性である。
「薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤」には、ヒトまたは飼育動物における使用に許容されるとして米国食品医薬品局によって認可されている、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味料、希釈剤、保存剤、色素/着色料、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が含まれるが、これらに限定されない。
「生体物質」という用語は、細胞、組織、臓器、及び/または生物体、ならびにこれらの任意の組み合わせを含む、任意の生きている生体材料を指す。本発明の方法は、生物体の一部が生物体の中に残っているか、もしくは生物体から除去されたかに関わらず、生物体の一部(例えば、細胞内、組織内、及び/または1つ以上の臓器内)に対して、または生物体全体に対して、実施されてもよいことが企図される。さらに、細胞及び組織の文脈において、同種及び異種の細胞集団が本発明の実施形態の対象であり得ることが企図される。「インビボ生体物質」という用語は、インビボである、すなわち、まだ生物体の中にあるかまたは生物体に付属している生体物質を指す。さらに、「生体物質」という用語は、「生体材料」という用語と同義語として理解されよう。ある特定の実施形態において、1つ以上の細胞、組織、または臓器が、生物体から分離されていることが企図される。「単離された」という用語は、そのような生体物質を説明するために使用することができる。本発明の方法が、インビボ及び/または単離された生体物質に対して実施されてもよいことが企図される。
「哺乳動物」及び「対象」という用語には、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、及びネコ等のヒト及び非ヒト哺乳動物が含まれる。
「薬学的に許容される塩」としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩(lsomcotinate)、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルコカロネート(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンセンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、パモン酸塩、フェニル酢酸塩、トルフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジメトロ安息香酸塩(dimtrobenzoate)、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン−2−安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、アルファ−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジカルボン酸塩、ヘキシン−1,4−ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩(mcotinate)、フタル酸塩、テラフタル酸塩(teraphthalate)、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ナフタレン−1,5−スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、及び酒石酸塩が挙げられる。「薬学的に許容される塩」という用語はまた、カルボン酸官能基等の酸性官能基、及び塩基を有する、本発明の拮抗薬の塩も指す。適切な塩基としては、ナトリウム、カリウム、及びリチウム等のアルカリ金属の水酸化物、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アルミニウム及び亜鉛等の他の金属の水酸化物、アンモニア、及び非置換またはヒドロキシ置換されたモノ−、ジ−、もしくはトリ−アルキルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N−メチル、N−エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−OH−低級アルキルアミン)、例えば、モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、またはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシル低級アルキル)−アミン、例えば、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−メチル−D−グルカミン等の有機アミン、ならびにアルギニン、リジン等のアミノ酸等が挙げられるが、これらに限定されない。「薬学的に許容される塩」という用語はまた、本発明の化合物の水和物も含む。
「組織」及び「臓器」という用語は、それらの通常かつ明白な意味に従って使用される。組織は細胞から構成されるが、「組織」という用語は、1つの明確な種類の構造的材料を形成する同様な細胞の集合体を指す。さらに、臓器は、特定の型の組織である。ある特定の実施形態において、組織または臓器は「単離されており」、このことは生物体の中に位置していないことを意味する。
「低酸化症」及び「低酸素」という用語は、正常より下の酸素のレベルを有する環境を指す。低酸化症は、正常な生理学的レベルの酸素が細胞、組織、または臓器に供給されていないときに起こる。「正常酸素(Normoxia)」は、問題の特定の細胞型、細胞状態、または組織についての正常な生理学的レベルの酸素を指す。「無酸素」は、酸素の非存在である。「低酸素状態」は、細胞、臓器、または生物体の低酸化症に導く状態である。これらの状態は、細胞型に依存し、組織または臓器の中の細胞の特定の構造または位置、ならびに細胞の代謝状態に依存する。本発明の目的のために、低酸素状態には、酸素濃度が清浄な大気状態であるかそれより低い状態、すなわち、20.8、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0%より下の状態が含まれる。あるいは、これらの数字は、1気圧(101.3kPa)における大気のパーセントを表すことができる。「無酸素」は、酸素の非存在である。ゼロパーセントの酸素濃度は、無酸素状態と定義する。それ故に、低酸素状態には、無酸素状態が含まれるが、いくつかの実施形態においては、少なくとも0.5%の低酸素状態が企図される。本明細書で使用される、「正常酸素状態」は、約20.8%またはそれ以上の酸素濃度を構成する。
「緩衝液」という用語は、本明細書で使用される場合、薬学的調製物のpHを安定化させる薬学的に許容される賦形剤を示す。適切な緩衝液は、該分野において周知である。適切な薬学的に許容される緩衝液としては、酢酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、トリス緩衝液、及びリン酸緩衝液が挙げらるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、緩衝液の濃度は、約0.01mM〜約1000mM、約0.1mM〜約(bout)1000mM、約0.1mM〜約500mM、約0.1〜約200mM、約0.1〜約100mM、約1mM〜約1000mM、約1mM〜約500mM、約1mM〜約200mM、約1mM〜約100mM、約1mM〜約50mM、約2mM〜約60mM、約4mM〜約60mM、または約4mM〜約40mM、約5mM〜約20mM、または約5mM〜約25mMである。
薬学的に許容される「凍結保護物質」は、当該技術分野において公知であり、例えば、スクロース、トレハロース、及びグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される凍結保護物質により、凍結及び/または凍結乾燥の効果から、組成物または組成物中の1つ以上の活性成分の安定性の保護がもたらされる。
「等張化剤」または「等張化調整剤」という用語は、本明細書で使用される場合、組成物の等張性を調整するために使用される薬学的に許容される薬剤を示す。適切な等張化剤としては、塩化ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、塩化カリウム、グリセリン、及び本明細書に定義されるようなアミノ酸、糖の群からの任意の成分、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、等張化剤は、約1mM〜約1000mM、約1mM〜約500mM、約5mM〜約500mM、約10mM〜約450mM、約20mM〜約400mM、約50mM〜約300mM、約100mM〜約200mM、または約125mM〜約175mMの量で使用されてもよい。ある特定の実施形態において、等張化剤は、約5mM〜約500mMで組成物中に存在するアミノ酸を含む。
「安定剤」という用語は、製造、保存、及び適用の間に、活性薬学的成分(複数を含む)もしくは薬剤(複数を含む)及び/または組成物を、化学的及び/または物理学的分解から保護する、薬学的に許容される賦形剤を示す。安定剤としては、糖、アミノ酸、ポリオール、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤、シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエチル−β−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、例えば、PEG3000、PEG3350、PEG4000、PEG6000、アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、ならびにキレーター、例えば、EDTAが挙げられるが、これらに限定されない。安定剤は、約0.1mM〜約1000mM、約1mM〜約500mM、約10〜約300mM、または約100mM〜約300mMの量で、組成物中に存在してもよい。
本明細書で使用される、「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する薬学的に許容される有機物質を指し、すなわち、溶解傾向が反対の基、典型的には、親油性炭化水素鎖及び水溶性イオン基から構成される。界面活性剤は、界面活性部分の電荷に応じて、アニオン性、カチオン性、及び非イオン性の界面活性剤に分類することができる。界面活性剤は、薬学的組成物のため、及び生体材料の調製のための潤剤、乳化剤、可溶化剤、及び分散剤として使用してもよい。本明細書に記載される組成物のいくつかの実施形態において、界面活性剤の量は、重量/体積パーセント(w/v%)で表されるパーセンテージとして記載される。適切な薬学的に許容される界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton−X)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic)、またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルには、ポリソルベート20(Tween20(商標)の商標で販売されている)及びポリソルベート80(Tween80(商標)の商標で販売されている)が挙げられる。ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーには、Pluronic(登録商標)F68またはPoloxamer188(商標)の名称で販売されているものが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルには、Brij(商標)の商標で販売されているものが挙げられる。アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルには、Triton−Xの商標で販売されているものが挙げられる。ポリソルベート20(Tween20(商標))及びポリソルベート80(Tween80(商標))は、組成物の総体積の約0.001%w/v〜約1%w/vまたは約0.002%w/v〜約0.1%w/v、あるいは約0.003%w/v〜約0.007%w/vの濃度範囲で一般的に使用されている。いくつかの実施形態において、Tween80(商標)は、約0.003%w/v、約0.004%w/v、約0.0045%w/v、約0.005%w/v、約0.0055%w/v、約0.006%w/v、または約0.007%w/vで使用されている。いくつかの実施形態において、Tween80(商標)は、約0.005%w/vで使用されている。この態様において、「w/v」は、組成物の総体積当たりの界面活性剤の重量を意図する。
「凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)」とは、凍結乾燥の間に、タンパク質、核酸、または他の活性薬学的成分(複数を含む)もしくは薬剤(複数を含む)を安定化する、薬学的に許容される物質を指す。凍結乾燥保護剤の例には、スクロース、トレハロース、またはマンニトールが含まれるが、これらに限定されない。
「ポリオール」とは、複数のヒドロキシル基を含有するアルコール、または糖アルコールを指す。糖アルコールは、水素化型の炭水化物であり、そのカルボニル基(アルデヒドまたはケトン、還元糖)は、第一級または第二級ヒドロキシル基(したがって、アルコール)まで還元されている。糖アルコールは、一般式H(HCHO)n+1Hを有するのに対して、糖はH(HCHO)nHCOを有する。
「抗酸化剤」とは、他の分子の酸化を遅らせるまたは防ぐことができる分子を指す。抗酸化剤は、多くの場合、還元剤、キレート剤、及チオール、アスコルビン酸、またはポリフェノール等の脱酸素剤である。抗酸化剤の非限定的な例には、アスコルビン酸(AA、E300)、チオ硫酸塩、メチオニン、トコフェノール(E306)、没食子酸プロピル(PG、E310)、第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、E320)、及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、E321)が挙げられる。
「保存剤」は、微生物の増殖または望ましくない化学的変化による分解を防ぐために、食品、薬学的組成物、塗料、生物学的試料、木材等の製品に添加される天然または合成の化学薬品である。保存添加剤は、単独で、または他の保存方法とともに使用することができる。保存剤は、細菌及び真菌の増殖を阻害する抗微生物保存剤、または構成成分の酸化を阻害する酸素吸収剤等の抗酸化剤であってもよい。抗微生物保存剤の例には、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロロヘキシジン(cholorohexidine)、グリセリン、フェノール、ソルビン酸カリウム、チメロサール、亜硫酸塩(二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等)、及びEDTA二ナトリウムが挙げられる。他の保存剤には、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレソール、クロロブタノール、またはメチルパラベン等の非経口タンパク質組成物中で一般に使用されているものが挙げられる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、反対のことが特定されない限り、以下の用語は示される意味を有する。
「哺乳動物」には、ヒト、ならびに実験用動物及び家庭内ペット等の飼育動物(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、及びウサギ)と、野生動物等の非飼育動物の両方が含まれる。
「任意の」または「任意に」は、引き続いて記載される状況の事象が起こる場合も起こらない場合もあること、及びその記載が、該事象または状況が起こる事例と、それが起こらない事例とを含むことを意味する。
「薬学的組成物」とは、哺乳動物、例えば、ヒトに生物学的に活性な化合物を送達するために当該技術分野において一般的に許容されている、化合物及び媒体の製剤を指す。したがって、そのような媒体は、任意の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含んでもよい。
「硫化物」とは、−2価の状態の硫黄、例えば、H2Sとして、またはその塩(例えば、NaHS、Na2S等)としてのいずれかの硫黄を指す。
「セレン化物」とは、−2価の状態のセレン、例えば、H2Se、またはその塩(例えば、NaHSe、Na2Se等)としてのいずれかのセレンを指す。
「ヨウ化物」及び「還元型のヨウ化物」の両方は、−1価の状態を有するヨウ化物(例えば、NaI)を指す。「還元型のヨウ化物」には、ヨウ化物が含まれる。
「カルコゲニド」または「カルコゲニド化合物」とは、カルコゲン元素、すなわち、周期表の第6族の元素を含有する化合物であるが、酸化物を除く化合物を指す。これらの元素は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルリウム(Te)、及びポロニウム(Po)である。具体的なカルコゲニド及びそれらの塩としては、H2S、Na2S、NaHS、K2S、KHS、Rb2S、CS2S、(NH4)2S、(NH4)HS、BeS、MgS、CaS、SrS、BaS、H2Se、Na2Se、NaHSe、K2Se、KHSe、Rb2Se、CS2Se、(NH4)2Se、(NH4)HSe、BeSe、MgSe、CaSe、SrSe、PoSe、及びBaSeが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される、「酸化生成物」とは、例えば、亜硫酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、ポリ硫化物、ジチオン酸塩、ポリチオン酸塩、硫黄元素、亜セレン酸塩、セレン酸塩、チオセレン酸塩、ポリセレン化物、及びセレン元素を含む、例えば、カルコゲニドまたはハロゲン化物化合物の化合物の酸化から生じる生成物を指す。そのような酸化生成物は、加工、製造、または保存の結果として起こり得る(例えば、酸化による)。
本明細書で使用される、「甲状腺腫誘発物質」とは、身体で甲状腺ホルモンの産生を阻害する物質を指す。機序が完全に理解されているわけではないが、ある甲状腺腫誘発物質が、ヨウ素の取り込みまたは有機化(甲状腺ホルモンの合成)を妨害することによって甲状腺の機能を抑制し、結果として、甲状腺の肥大、すなわち、甲状腺腫を引き起こし得るのに対して、他の甲状腺腫誘発物質は、他の機序を通してそれらの効果を発揮し得ると考えられる。甲状腺腫誘発物質の効果を有することが示されている化学薬品には、
スルファジメトキシン、プロピルチオウラシル、過塩素酸カリウム、及びイオパノ酸、
ゴイトリン等のいくつかのオキサゾリジン、
チオシアン酸塩(例えば、アフリカ中部におけるオーバーロードのチオシアン酸塩、また特にセレン欠乏症と併発した場合)が挙げられる。炭水化物としてのキャッサバへの依存により、いくつかの地域ではチオシアン酸塩の源が提供され、
競合阻害剤によりヨウ化物の取り込みを減少させ、腺によるチロキシン及びトリヨードチロニンの分泌の低減の結果として、低用量で、(負のフィードバックの低減によって)甲状腺刺激ホルモンの放出の増加を引き起こし、これが次いでこの腺を刺激する、チオシアン酸塩及び過塩素酸塩等のイオン、
チロキシンのトリヨードチロニンへの末梢変換を阻害し、また、甲状腺ホルモン作用にも干渉する、アミオダロン、
リチウムは甲状腺ホルモン放出を阻害し、
メチマゾール、ならびに
フェノバルミトン(phenobarbitone)、フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピンは、トリヨードチロニン(T3)及びチロキシン(T4)の代謝低下を誘導する。
「治療有効量」とは、生体材料、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトに投与されたときに、生体材料、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、疾患、損傷、または状態の、以下に定義されるような治療に影響を及ぼすのに十分である本発明の化合物または組成物の量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の化合物または組成物の量は、化合物もしくは組成物、疾患、損傷、もしくは状態及びその重症度、投与の様式、及び治療される生体材料、例えば哺乳動物の年齢に応じて異なるが、これは、当業者によって、当業者自身の知識、及び本開示に関して日常的に決定することができる。
「治療すること」または「治療」は、本明細書で使用される場合、例えば、生体材料、例えば、対象となる疾患または状態を有する、哺乳動物、好ましくはヒトにおける対象となる疾患、損傷、または状態、例えば、組織損傷の治療を網羅し、これには、(i)生体材料、例えば哺乳動物において、特に、そのような哺乳動物が状態に対して素因があるが、それを有するとまだ診断されていないときに、疾患、損傷、もしくは状態を予防または阻害する、(ii)疾患、損傷、もしくは状態を阻害すること、すなわち、その発達を阻止すること、(iii)疾患、損傷、もしくは状態を低減すること、すなわち、疾患もしくは状態を退行させること、または、(iv)疾患、損傷、もしくは状態から生じる徴候を低減すること、が含まれる。本明細書で使用される、「疾患」、「障害」、及び「状態」という用語は、互換的に使用されてもよい。本明細書で使用される、「損傷」という用語は、非意図的な損傷及び意図的な損傷を含み、これには、「人のせいで」生じる損傷が含まれ、手術及び移植術等の医学的手技と関連する損傷が含まれる。
「慢性心不全」(CHF)はまた、鬱血性心不全(CHF)または鬱血性心臓麻痺(CCF)とも称され、心臓が体の要求を満たすように血流を維持するために十分に送り出すことができない場合に生じる。CHFの一般的原因には、心筋梗塞(心臓発作)の病歴、高血圧、心房性細動、心臓弁膜症、及び心筋症を含む冠動脈疾患が挙げられる。これらは、心臓の構造または機能を変化させることにより心不全を引き起こす。2つの主なタイプの心不全は、(1)収縮させる左心室の能力が影響を及ぼし、収縮期心不全とも称される、左心室の機能障害による心不全、及び(2)弛緩させる心臓の能力が影響を及ぼし、拡張期心不全とも称される、正常な駆出率を有する心不全である。
ハロゲン化合物
本発明は、ハロゲン化合物に関し、該化合物は、周期表の第17族に含まれる任意の元素を含む。任意の型のハロゲン化合物は、本発明に従って、使用されてもよく、これには、例えば、ハロゲン化水素、金属ハロゲン化物、ハロゲン間化合物、有機ハロゲン化合物、及びポリハロゲン化化合物が含まれる。いくつかの実施形態において、ハロゲン化合物は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン、またはウンウンセプチウムを含有する任意の化合物を指す。特定の実施形態において、本発明は、還元型のハロゲン化合物(conpound)、例えば、ヨウ化物に関する。
最も軽いハロゲンであるフッ素(F)は、原子番号9を有する非金属元素である。標準圧力及び温度下で、それは二原子ガスF2として存在する。フッ素は、最も化学反応性の高い元素であり、酸素、ヘリウム、ネオン、及びクリプトンを除くすべての他の元素と反応する。フッ素はまた、最も電気陰性元素であり、それ故に、すべての他の元素よりも強力に電子を引き付ける。既知の半減期を有する11のフッ素同位体があり、該同位体は、15〜25の範囲の質量数を有する。しかしながら、天然フッ素は、1つの安定した同位体である19Fからなる。
2番目に軽いハロゲンである塩素(Cl)は、原子番号17を有する非金属元素である。標準圧力及び温度下で、それは二原子ガスF2として存在する。塩素は、最も高い電子親和力を有し、3番目に高い電気陰性度を有する元素である。既知の半減期を有する16の塩素同位体があり、該同位体は、31〜46の範囲の質量数を有する。天然に存在する塩素は、2つの安定した同位体35Cl及び37Clの混合物であり、約3:1の天然存在比で存在する。
3番目に軽いハロゲンである臭素(Br)は、原子番号35を有する非金属元素である。標準圧力及び温度下で、それは二原子ガスBr2として存在する。既知の半減期を有する26の臭素同位体があり、該同位体は、68〜94の範囲の質量数を有する。天然に存在する塩素は、2つの安定した同位体79Cl及び81Clの混合物であり、約1:1の天然存在比で存在する。
2番目に重い天然ハロゲンであるヨウ素(I)は、原子番号53を有する非金属元素である。標準圧力及び温度下で、それは固体の二原子I2分子として存在する。既知の半減期を有する34のヨウ素同位体があり、該同位体は、108〜144の範囲の質量数を有する。しかしながら、天然ヨウ素は、1つの安定した同位体である127Iからなる。
最も重い天然ハロゲンであるアスタチンは、原子番号85を有する高放射性の非金属元素である。非常に急速(12時間に満たない最長の半減期)に崩壊するため、その特性は、非常に確実性を有することが知られていない。アスタチンは、この形態が今まで実際に観察されていないため、二原子のAt2分子として存在するかどうか議論されている。アスタチンは、水素と反応して、アスタチン化水素を形成することができ、ナトリウム等の金属と反応して、塩を形成することが予測される。37の既知のアスタチン同位体があり、これらのすべては、放射性があり、非常に短い半減期を有する。該同位体は、207〜221の範囲の質量数を有する。安定したアスタチンの同位体は存在しない。
様々な実施形態において、本発明の組成物及び方法は、様々な型のヨウ素または臭素等の1つ以上のハロゲン化合物を含む。
一実施形態において、本発明は、ヨウ素を含有するハロゲン化合物に関する。特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ化物等の還元型のヨウ素である。ある特定の実施形態は、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、有機ヨウ化物、過ヨウ素酸塩、またはペルヨージナンであるヨウ素含有ハロゲン化合物を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、ヨウ化アルミニウム、一ヨウ化アルミニウム、ヨウ化アンモニウム、三ヨウ化アンチモン、二ヨウ化ヒ素、三ヨウ化ヒ素、ヨウ化バリウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化ビスマス(III)、三ヨウ化ボロン、ヨウ化カドミウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化カンドクロニウム、四ヨウ化炭素、ヨウ化コバルト(II)、コッシーナイト、ヨウ化銅(I)、DiOC6、四ヨウ化二リン、ヨウ化ジチアザニン、エコチオフェート、ヨウ化アインスタイニウム(III)、エッシェンモーザー塩、エチレンジアミンジヒドロヨウ化物、ヨウ化ガリウム(III)、ゲルグリーン、ゲルレッド、ヨウ化ゲルマニウム、一ヨウ化金、三ヨウ化金、ヨウ化水素、酸化ヨウ素、ヨウ化ヨードメチル亜鉛、ヨードシラン、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉛(II)、ヨウ化物リチウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化マンガン(II)、ヨウ化水銀(I)、ヨウ化水銀(II)、ヨウ化ニッケル(II)、三ヨウ化窒素、ヨウ化パラジウム(II)、三ヨウ化リン、ポリヨウ化物、ヨウ化カリウム、テトラヨード水銀(II)酸カリウム、ヨウ化プロピジウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化ルビジウム銀、ヨウ化サマリウム(II)、四ヨウ化シリコン、ヨウ化銀、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化テルリウム、四ヨウ化テルリウム、ヨウ化テルビウム(III)、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、三ヨウ化タリウム、ヨウ化タリウム(I)、ヨウ化トリウム(IV)、ヨウ化チベゾニウム、ヨウ化チエモニウム、ヨウ化スズ(II)、ヨウ化スズ(IV)、四ヨウ化チタン、三ヨウ化物、ヨウ化トリメチルシリル、ヨウ化トリメチルスルホキソニウム、五ヨウ化ウラン、四ヨウ化ウラン、三ヨウ化ウラン、ヨウ化バナジウム(III)、ヨウ化亜鉛、及びヨウ化ジルコニウム(IV)、の非限定的な一覧からの1つ以上の化合物を含むヨウ化物である。
特定の実施形態において、該ハロゲン化合物は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化水素、ヨウ化カルシウム、またはヨウ化銀を含むヨウ化物である。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ素酸、ヨウ素酸カリウム、シーリガーアイト、ヨウ素酸銀、及びヨウ素酸ナトリウムの非限定的な一覧からの1つ以上の化合物を含むヨウ素酸塩である。
特定の実施形態において、該ハロゲン化合物は、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸カルシウム、またはヨウ素酸銀を含むヨウ素酸塩である。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、25I−NBF、25I−NBMD、25I−NBOH、25I−NBOMe、2C−I、5、5−I−R91150、アセトリゾ酸、アジピオドン、アドステロール、アルトロパン、AM−1241、AM−2233、AM−630、AM−679(カンナビノイド)、AM−694、AM251、アミオダロン、ベンジオダロン、ブロモヨードメタン、ブジオダロン(Budiodarone)、ヨウ化ブチル、四ヨウ化炭素、キニオホン、クロロヨードメタン、クリオキノール、ジアトリゾ酸、ジヨードヒドロキシプロパン、ジヨードヒドロキシキノリン、ジヨードメタン、2,5−ジメトキシ−4−ヨードアンフェタミン、ドミオドール、エリトロシン、ヨウ化エチル、ヨード酢酸エチル、フィアルリジン、フルオロヨードメタン、ハロプロギン、ヘラパタイド(Herapathite)、IAEDANS、イバシタラビン、IDNNA、イドキシフェン、イドクスウリジン、イニパニブ、ヨーベングアン、イオベンザム酸、ロビトリドール、イオカルミン酸、イオセタム酸、ヨーダミド、イオジキサノール、ヨードアセトアミド、ヨード酢酸、パラ−ヨードアンフェタミン、ヨードベンズアミド、ヨードベンゼン、2−ヨード安息香酸、19−ヨードコレステロール、ヨードシアノピンドロール、ヨードホルム、1−ヨードモルフィン、ヨードフェノール、ヨードフェンプロピット、4−ヨードプロポフォール、ヨードプロピニルブチルカルバメート、ヨードトリフルオロエチレン、ヨードキサム酸、2−ヨードキシ安息香酸、ロフェタミン(123I)、イオフルパン(Ioflupane)(123I)、イオグリシン酸、イオグリカム酸、イオマゼニル、イオメプロール、イオパミドール、イオパノ酸、イオペントール、イオプロミド、イオピドール、イオトロラン、イオトロクス酸、イオベルソール、イオキサグル酸、イオキシラン(Ioxilan)、イポダートナトリウム、ヨウ化イソプロピル、メチオダール、ヨウ化メチル、メトリザミド、メトリゾ酸、ヨウ化ペンタフルオロエチル、プラコヒパホリン、ヨウ化N−プロピル、プロピリオドン、ラフォキサニド、ローズベンガル、RTI−121、RTI−229、RTI−353、RTI−55、SB−258、585、アセトリゾ酸ナトリウム、チラトリコール、トリフルオロヨードメタン、及びチロパノ酸の非限定的な一覧からの1つ以上の化合物を含む有機ヨウ化物である。
特定の実施形態において、該ハロゲン化合物は、有機ヨウ化物である。有機ヨウ素化化合物は、1つ以上の炭素−ヨウ素結合を含む有機化合物である。ほとんどすべての有機ヨウ素化化合物は、1つの炭素中心に接続されるヨウ化物を特徴とする。これらは、通常、I−の誘導体に分類される。いくつかの有機ヨウ素化化合物は、より高度な酸化状態でヨウ素を特徴とする。多くの場合、殺菌剤または殺虫剤として使用される有機ヨウ素化化合物としては、例えば、ヨードホルム(CHI3)、ヨウ化メチレン(CH2I2)、及びヨウ化メチル(CH3I)が挙げられる。特定の実施形態において、有機ヨウ素化化合物は、ポリヨード有機化合物である。ポリヨード有機化合物は、蛍光透視法において、一種の医学画像のX線コントラスト剤として用いられる場合がある。様々なそのようなポリヨード有機化合物が市販されており、多くは、1,3,5−トリヨードベンゼンの誘導体であり、約50重量%のヨウ素を含有する。ある特定の実施形態において、この薬剤は、水溶性、非毒性であり、及び/または容易に排出される。代表的な試薬は、水溶性のジオール置換基を有するイオベルソールである。他の有機ヨウ素化化合物としては、チロキシン(「T4」)及びトリヨードサイロニン(「T3」)の2つの甲状腺ホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。海洋天然物は、海綿のPlakortis simplex由来の最近発見されたプラコヒパホリンを含む有機ヨウ素化化合物の豊かな源である。
本発明はまたは、化合物、例えば、薬物化合物の使用も含み、これに、ヨウ素が組み込まれる。例えば、ヨウ素は、N−アセチルシステイン等の標準的な鎮痛剤、ならびに、例えば、アスピリン、イブプロフェン、及びナプロキセン等の非ステロイド性抗炎症剤のような既存の薬物に組み込まれ得る。ほとんどのNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)のアイソザイムの両方を阻害する、酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)の非選択的阻害剤としての役割を果たす。
ある特定の実施形態において、該ハロゲン化合物は、ポリヨウ化物である。ポリヨウ化物は、完全にヨウ素イオンからなる一種のポリハロゲンの陰イオンである。最も一般的かつ単純なメンバーは、I
3 −の三ヨウ化物である。他の公知のより大きなポリヨウ化物としては、[I
4]
2−、[I
5]
−、[I
7]
−、[I
8]
2−、[I
9]
−、[I
10]
2−、[I
10]
4−、[I
11]
−、[I
12]
2−、[I
13]
3−、[I
16]
2−、[I
22]
4−、[I
26]
3−、[I
26]
4−、[I
28]
4−、及び[I
29]
3−が挙げられる。ポリヨウ化物の一例は、ルゴールヨウ素であり、ルゴール液とも呼ばれる。ルゴール液は、1%、2%、または5%のヨウ素の異なる有効性で市販されている。5%の溶液は、蒸留水中で混合された5%(wt/v)のヨウ素(I
2)及び10%(wt/v)のヨウ化カリウム(KI)からなり、130mg/mLの全ヨウ素含有量を有する。ヨウ化カリウムは、三ヨウ化物(I
−3)イオンの形成を通して水溶性の元素ヨウ素を提供する。ルゴール液の他の名称は、I
2KI(ヨウ素−ヨウ化カリウム)、Markodineの強溶剤(Systemic)、及び水性ヨウ素溶液BCPである。ポリヨウ化物(それらのイオン及び対カチオンを含む)の例を表1に示す。
一実施形態において、ハロゲン化合物は、元素ヨウ素、ならびに水及びアルコール中に溶解されるヨウ化物塩を含むか、これらからなる、ヨウ素溶液のチンキ剤である。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、デスマーチンペルヨージナン、I、2−ヨードオキシ安息香酸、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸カリウム、及び過ヨウ素酸ナトリウムの非限定的な一覧からの1つ以上の化合物を含む過ヨウ素酸塩である。
特定の実施形態において、該ハロゲン化合物は、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カルシウム、または過ヨウ素酸銀を含む過ヨウ素酸塩である。
特定の実施形態において、該ハロゲン化合物は、ペルヨージナンである。ペルヨージナンは、超原子価ヨウ素を含有する化学的化合物である。いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、(ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード)ベンゼン、デスマーチンペルヨージナン、ヨードベンゼンジクロリド、ヨードソベンゼン、及び2−ヨードオキシ安息香酸の非制限的な一覧からの1つ以上の化合物を含むペルヨージナンである。
一実施形態において、ハロゲン化合物は、油が注入されたヨウ化物またはヨウ素油注入物である。
一実施形態において、本発明は、臭素を含有するハロゲン化合物に関する。ある特定の実施形態は、臭化物、臭素酸塩、有機臭化物、または過臭素酸塩である臭素含有ハロゲン化合物を含み得る。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、臭化アクリジニウム、臭化アルミニウム、臭化アンモニウム、ANNINE−6plus、三臭化アンチモン、三臭化ヒ素、臭化バリウム、臭化ベンゾドデシニウム、臭化ベリリウム、臭化ビベンゾニウム、三臭化ビスマス、三臭化ホウ素、臭化銀鉱、ブロモ(テトラヒドロチオフェン)金(I)、ブロモペンタアンミンコバルト(III)臭化物、ブロモペンタカルボニルレニウム(I)、臭化カドミウム、臭化セシウム、カエシウムカドミウムブロミド、臭化カルシウム、臭化セリウム(III)、臭化セトリモニウム、臭化クロム(III)、臭化シメトロピウム、臭化クリジニウム、臭化コバルト(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、臭化シアン、臭化デメカリウム、ジテルリウムブロミド(Ditellurium bromide)、DODAB、臭化ドミフェン、臭化エエチジウム(EEthidium bromide)、臭化ファザジニウム、フェントニウム、臭化ガリウム(III)、臭化金(I)、臭化金(III)、臭化ヘキサフルロニウム、臭化水素酸、臭化水素、臭化インジウム(I)、臭化インジウム(III)、一臭化ヨウ素、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、臭化ランサナム(III)、臭化鉛(II)、臭化リチウム、臭化マグネシウム、臭化マンガン(II)、臭化水銀(I)、臭化水銀(II)、モルフィンメチルブロミド、臭化ニッケル(II)、臭化ニオビウム、臭化ニオビウム(V)、三臭化窒素、臭化ニトロシル、臭化オチロニウム、臭化オキシトロピウム、臭化オキシフェノニウム、臭化パラジウム(II)、臭化パンクロニウム、七臭化リン、五臭化リン、三臭化リン、ピフィスリン、臭化ピペクロニウム、臭化白金(II)、臭化白金(IV)、二臭化ポロニウム、臭化カリウム、臭化プロパンテリン、臭化ラジウム、臭化ルビジウ、四臭化ケイ素、臭化銀、臭化ナトリウム、臭化ストロンチウム、臭化タンタル(V)、四臭化テルリウム、臭化テルビウム(III)、テトラブロモ金酸、テトラブロモメタン、臭化タリウム(I)、臭化チメピジウム、臭化スズ(II)、臭化スズ(IV)、四臭化チタニウム、トリブロモシラン、トリフェニルシクロプロペニウムブロミド(Triphenylcyclopropenium bromide)、臭化タングステン(V)、タングステン(VI)オキシテトラブロミド、五臭化ウラン、四臭化ウラン、臭化バナジウム(III)、臭化イッテルビウム(III)、臭化イットリウム(III)、臭化亜鉛、及び臭化ジルコニウム(IV)の非制限的な一覧からの1つ以上の化合物を含む臭化物である。
特定の実施形態において、該ハロゲン化合物は、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化水素、臭化カルシウム、または臭化銀を含む臭化物である。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、臭素酸、臭化カルシウム、臭化カリウム、臭化銀、臭化ナトリウム、及び臭化ストロンチウムの非限定的な一覧からの1つ以上の化合物を含む臭化物である。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、2−ブロモ酪酸、25B−NBOMe、2C−B、2C−B−BZP、2C−B−FLY、2CB−Ind、2CBCB−NBOMe、2CBFly−NBOMe、66−Br−APB、アセカルブロマール、アゲリフェリン、臭化アリル、AM−087、アンブロキソール、アルビドール、AS−8112、BCDMH、ベンズブロマロン、臭化ベンジル、ビブロカトール、ブラロバルビタール、ブレタゼニル、ブレチリウム、心室細動治療用のブレチリウム、ブリモニジン、ブリブジン、ブロジファコウム、ブロジモプリム、ブロファロミン、ブロマシル、ブロマジオロン、ブロマドリン、ブロマンタン、ブロマゼパム、ブロマジン、ブロメタリン、ブロムフェナク、ブロムヘキシン、臭素化難燃剤、ブロミソバル、2−ブロモ−1−クロロプロパン、4−ブロモ−3,5−ジメトキシアンフェタミン、2−ブロモ−4,5−メチレンジオキシアンフェタミン、ブロモ−DragonFLY、ブロモ酢酸、ブロモアセトン、ブロモアセチルアルプレノロールメタン、8−ブロモアデノシン3’,5’−サイクリック一リン酸塩、パラ−ブロモアンフェタミン、4−ブロモアニリン、ブロモアニソール、ブロモベンゼン、ブロモビマン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、ブロモクロロジフルオロメタン、ブロモクロロメタン、ブロモクロロサリチルアニリド、ブロモクレソールグリーン、ブロモクレソールパープル、ブロモクリプチン、ブロモシクロヘキサン、ブロモデオキシウリジン、ブロモジクロロメタン、ブロモジフルオロアセチルクロリド、ブロモジフルオロメタン、ブロモジフェニルメタン、Bコントブロモエタン(B cont.Bromoethane)、ブロモフルオロメタン、ブロモホルム、3−ブロモフラン、8−ブロモグアノシン3’,5’−環状一リン酸塩、1−ブロモヘキサン、2−ブロモヘキサン、ブロモヨードメタン、ブロモメタン、4−ブロモ−N−メチルカチノン(methylcathinone)、ブロモペンタン、ブロモフェノールブルー、ブロマドール(Bromadol、2−ブロモプロパン、ブロモピルビン酸、N−ブロモスクシンイミド、ブロモトリフルオロメタン、5−ブロモウラシル、5−ブロモウリジン、ブロモキシニル、ブロムペリドール、ブロムフェニラミン、ブロムスルファレイン、ブロニドックス、ブロノポール、ブロフェバルビタル(Brophebarbital)、ブロピリミン、ブロチゾラム、ブロキサテロール(Broxaterol)、ブロキシキノリン、ブタリロナール(Butallylonal)、Tert−ブチルブロミド、C−8813、カルブロマール(Carbromal)、クロルフェナピル(Chlorfenapyr)、シクロチゾラム(Ciclotizolam)、コンボルチンドールA、DBDMH、DBNPA、デカブロモジフェニルエーテル、デルタメトリン、デスホルイルフルストラブロミン(Desformylflustrabromine)、デキスブロムフェニルアミン(Dexbrompheniramine)、ジアリールピリミジン、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン、1,4−ジブロモベンゼン、ジブロモクロロメタン、ジブロモジフルオロメタン、1,1−ジブロモエタン、1,2−ジブロモエタン、ジブロモフルオロメタン、ジブロモメタン、1,2−ジブロモプロパン、1,3−ジブロモプロパン、ジブロモテトラフルオロエタン、ジブロモチロシン、ジブロムプロパミジン(Dibrompropamidine)、ジフェチアロン(Difethialone)、2,5−ジメトキシ−4−ブロモアンフェタミン、DS−1(薬物)、エブロチジン(Ebrotidine)、エンブラミン(Embramine)、エオシン、エオシンB、エオシンY、エチルブロモアセテート、エトラビリン(Etravirine)、FL3(flavagline)、フルブロマゾラム(Flubromazolam)、ギダゼパム(Gidazepam)、H−89、ハロフジノン(Halofuginone)、ハロモン、ハロタン、ハロキサゾラム、ヘキサブロモシクロドデカン、イブロリピム(Ibrolipim)、イミダゼニル、イソブロミンジオン(Isobromindione)、JWH−249、JWH−424、KF−26777、ロナルファルニブ(Lonafarnib)、メブロクアロン(Mebroqualone)、メルブロミン、Meta−DOB、メタクラゼパム(Metaclazepam)、ミトブロニトール、ムコブロム酸、ナルコバルビタール(Narcobarbital)、ネロタンセリン(Nelotanserin)、ネルテネキシン(Neltenexine)、NGD−4715、ニセルゴリン、O−806、オクタブロモジフェニルエーテル、有機臭素化合物、P7C3、パマブロム(Pamabrom)、PEAQX、ペンタブロモジフェニルエーテル、臭化フェナシル、フェナゼパム(Phenazepam)、2−フェニルエチルブロミド、フロキシン(Phloxine)、ピナベリウム(Pinaverium)、ピンドビンド(Pindobind)、ピポブロマン(Pipobroman)、PNU−282、PNU−987、多臭素化ビフェニル、多臭素化ジフェニルエーテル、プロパリロナール(Propallylonal)、臭化プロパルギル、N−プロピルブロミド、レモキシプリド(Remoxipride)、ロミフィジン(Romifidine)、RTI−51、SB−357、SB−134、Sigmodal、SSR−180、SSR−711、スタムピジン(Stampidine)、スリナバント(Surinabant)、スルガトキシン(Surugatoxin)、TCB−2、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモエタン、テトラブロモエチレン、テトラブロモメタン、TH−302、チルブロキノール、トラロメトリン、2,4,6−トリブロモアニソール、及びトリブロモフルオロメタンの非限定的な一覧からの1つ以上の化合物を含む有機臭化物である。
いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、過臭素酸塩であり、該過臭素酸塩は、過臭素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過臭素酸水素、または過臭素酸銀を含む。
本発明の特定の実施形態は、還元型のハロゲン化合物に関する。ハロゲン化合物の多くの許容される還元手段が可能であり、当業者であれば公知である。還元型のハロゲン化物化合物の例としては、例えば、ヨウ化物及び臭化物が含まれ、ハロゲンは、−1の価数を有する。還元方法の非限定的な例には、陽性金属元素金属(例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、及びアルミニウム等)、水素化物移動試薬(例えば、NaBH4及びLiAIH4等)を用いた化学的還元、またはパラジウム、白金、もしくはニッケル触媒を用いた水素ガスの使用が含まれる。
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載される種類のハロゲン化合物の哺乳動物対象への投与、組成物中に投与された該化合物、該哺乳動物に対して著しい毒性がない濃度または製剤、例えば、薬学的組成物に関する。特定の実施形態において、哺乳動物対象に対して毒性があることが知られているハロゲン化合物は、本発明から除外される。それ故に、特定の実施形態において、ヨウ化カリウムは、本発明から除外される。いくつかの実施形態が、個々に著しい毒性がない該化合物の組み合わせはまた、組み合わせた場合に著しい毒性がないように、同時にまたは別々に、該ハロゲン化合物のうちの2つ以上を該哺乳動物に投与することを含み得ることがさらに企図される。
ハロゲン化合物またはハロゲン元素を含む他の化合物はまた、本発明の方法に従って使用されてもよく、及び/または本発明の組成物に含まれてもよい。いくつかの実施形態において、該ハロゲン化合物は、市販の物質である。ある特定の実施形態において、該市販の物質は、放射線学的コントラスト剤、局所ヨウ素調製物、溶液、または薬物を含んでもよい。ある特定の実施形態において、該市販の物質は、ヨウ素を含み、ジアトリゾアート、イパノ酸(Ipanoic acid)、イオタラメート、メトリザミド、ジアトロジド(Diatrozide)、ジヨードヒドロキシキノロン、ヨードチンキ、ポビドンヨード、ヨードクロロヒドロキシキノロン、ヨードホルムガーゼ、飽和ヨウ化カリウム(SSKI)、ルゴール液、ヨウ化グリセロール、ヨウ化エコチオフェート、ヨウ化水素酸シロップ、ヨウ化カルシウム、アミオダロン、去痰薬、ヨウ素含有ビタミン、ヨードクロロヒドロキシキノロン、ジヨードヒドロキシキノロン、ヨウ化カリウム、ベンジオダロン、ヨウ化イソプロパミド、レボチロキシン、及びエリスロシンの非限定的な一覧から選択され得る。ある特定の実施形態において、該市販の物質は、臭素を含み、アルファゲン(ブリモニジン)、アトロベント(イプラトロピウム)、セレクサ(シタロプラム)、コンビベント(臭化イプラトロピウム)、エナブレックス(ダリフェナシン)、Guaifenex DM(デキストロメトルファン)、ラザダイン(ガランタミン)、及びスピリーバ(チオトロピウム)の非限定的な一覧から選択され得る。
本発明のある特定の組成物及び方法は、グルタチオン及び/または甲状腺腫誘発物質と組み合わせた、ハロゲン化合物を含む。本明細書で論じられるように、グルタチオンは、還元型のハロゲン化合物を安定化させることができ、甲状腺腫誘発物質は、甲状腺ホルモンの産生を阻害することができる。
他の活性薬剤
本発明は、本明細書に記載される疾患、状態、または損傷のうちのいずれかを治療または予防するために、他の活性薬剤を、単独でまたはハロゲン化合物と組み合わせた使用をさらに含む。これらの疾患、状態、または損傷のうちのいずれかを治療または予防するのに有効である様々な薬剤が、記載されているか、または当該技術分野で周知であり、これらの薬剤または他の薬剤のうちのいずれかを使用してもよい。加えて、他の薬剤を、本発明の方法に従ってハロゲン化合物と組み合わせて使用してもよい。
ある特定の実施形態において、活性薬剤は、カルコゲニドまたはその塩である。カルコゲニドによる治療が、生体物質の閉塞を誘導し、低酸素及び虚血損傷から生体物質を保護することを示されている。これらの研究において、硫化物が代謝を低減し、低酸素損傷からマウス及びラットを保護することができることが実証された(国際出願公開第WO2005/041655号)。カルコゲン元素を含有する化合物、すなわち、周期表の第6族の元素を含有する化合物であるが、酸化物を除く化合物は、一般に、「カルコゲニド」または「カルコゲニド化合物」と称される。これらの元素は、硫黄(S)、セレン(Se)、テルリウム(Te)、及びポロニウム(Po)である。一般的なカルコゲニドは、他の元素に加えて、S、Se、及びTeのうちの1つ以上を含有する。特定のカルコゲニド及びそれらの塩としては、H2S、Na2S、NaHS、K2S、KHS、Rb2S、CS2S、(NH4)2S、(NH4)HS、BeS、mgS、CaS、SrS、BaS、H2Se、Na2Se、NaHSe、K2Se、KHSe、Rb2Se、CS2Se、(NH4)2Se、(NH4)HSe、BeSe、mgSe、CaSe、SrSe、PoSe、及びBaSeが挙げられるが、これらに限定されない。様々なカルコゲニドが、国際出願公開第WO2005/041656号、同第WO2005/041655号、及び同第WO2006/113914号に記載されている。
ある特定の実施形態において、活性薬剤は、酸素拮抗物質である。「酸素拮抗物質」という用語は、それが生存するために酸素を必要としている生体物質(「酸素利用生体物質」)によって使用される限りにおいて、酸素と競合する物質を指す。酸素は、典型的には、容易に利用可能なエネルギーの生体物質の一次供給源を作り出す様々な細胞のプロセスに使用されるか、または必要とされる。酸素拮抗物質は、酸素利用生体物質が入手可能な酸素の量、及び/または酸素利用生体物質によって使用することができる酸素の量を効果的に低減するか、または排除する。それ故に、いくつかの実施形態において、酸素拮抗物質は、例えば、シトクロムcオキシダーゼ部位に結合することによって、細胞内に生じる細胞呼吸の量を抑制するか、またはその量を低減する。酸素拮抗物質の一例は、一酸化炭素である。様々な酸素拮抗物質が、国際出願公開第WO2005/041656号、同第WO2005/041655号、及び同第WO2006/113914号に記載されている。
さらなる実施形態において、活性薬剤は、ロテノン等の鬱血誘発化合物である。さらなる鬱血誘発化合物は、例えば、米国特許第US2010/0021387号に記載されている。
ある特定の実施形態において、活性薬剤は、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物等の元素還元剤(ERA)である。
他の実施形態において、活性薬剤は、HIF調節化合物であり、様々な化合物は、米国特許公開第2009/0011051号に記載されている。転写因子であるHIF(低酸化誘導因子)系は、低酸化症に対する応答の重要な調節因子であり、多種多様な生物における酸素恒常性において中心的な位置を占めている。血管新生、赤血球生成、エネルギー代謝、炎症、血管運動機能、及びアポトーシス/増殖応答において決定的に重要な役割を果たす多数の転写標的が同定されている。この系は、正常な発生に必須であり、虚血/低酸化症に対する病態生理学的応答において重要な役割を果たす。HIFは、癌においても重要であり、癌では通常それが上方調節され、腫瘍増殖及び血管新生に大きな影響を及ぼす。HIF DNA結合複合体は、αサブユニット及びβサブユニットのヘテロ二量体からなる。酸素による調節はα−サブユニットのヒドロキシル化により生じ、酸素化細胞においては該α−サブユニットはプロテアソームにより急速に破壊される。これは、フォン・ヒッペル−リンダウ腫瘍抑制タンパク質(pVHLまたはVHL)がHIFα−サブユニットに結合することを伴い、pVHLは、HIFα−サブユニット中の特異的配列(複数を含む)との相互作用を介してユビキチン依存性タンパク質分解を促進するユビキチンリガーゼに対する認識成分としてまたはその一部として作用する。低酸化症では、この過程が抑制され、それにより、HIFαを安定化し、HIFα/βのヘテロ二量体を介した転写活性化を可能にする。代謝活性に影響を及ぼすことが示されるある特定の化合物もまた、HIFを安定化させるように作用し、それにより、低酸化症、虚血、閉塞、及び/または出血性ショック等のHIFの安定化に付随する任意の他の病態もしくは状態に対する予防及び治療レジメンとしてそのような化合物に関与している。これらの化合物のうちのいずれかを、本発明に従って使用してもよい。
他の実施形態において、活性薬剤は、ポリカルコゲニドである。代表的なポリカルコゲニドは、国際出願公開第WO2009/003061号に記載されている。
さらなる実施形態において、活性薬剤は、ポリ硫化化合物であり、この例は、国際出願公開第WO2010/045582号に記載されている。
例えば、ハロゲン化合物と組み合わせて使用することができる別の活性薬剤は、一酸化窒素である。
本発明のある特定の組成物及び方法は、グルタチオン及び/または甲状腺腫誘発物質と組み合わせた、カルコゲニドを含む。本明細書で論じられるように、グルタチオンは、還元型のカルコゲニドを安定化させることができ、甲状腺腫誘発物質は、甲状腺ホルモンの産生を阻害することができる。
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、以下に示される組み合わせのうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない、以下の薬剤または化合物のうちのいずれかを単独でまたは組み合わせて、それを必要とする対象に提供することを含む:
ハロゲン化合物、
カルコゲニド、
甲状腺腫誘発物質、または甲状腺ホルモンの産生、活性、または取り込みを減少または阻害する他の化合物、
ハロゲン化合物及びカルコゲニド、
カルコゲニド及びグルタチオン、
ハロゲン化合物及びグルタチオン、ならびに
ハロゲン化合物、カルコゲニド、及びグルタチオン。
ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、CHF、例えば左心室機能傷害によるCHFを治療するために使用される活性薬剤、例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、ベータ遮断薬、アルドステロン拮抗薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、またはヒドラジン硝酸塩等と共に投与されるか、またはそれと共に製剤化される。さらなる実施形態において、別の活性薬剤は、抗凝血剤、抗血小板療法、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿薬、血管拡張剤、またはスタチンである。
本発明に従って使用され得るアンジオテンシン変換酵素阻害剤の非限定的な例としては、カプトプリル(Capoten(登録商標))、エナラプリル(Vasotec(登録商標))、リシノプリル(Prinivil(登録商標)、Zestril(登録商標))、ベナゼプリル塩酸塩(Lotensin(登録商標))、ホシノプリルナトリウム(Monopril(登録商標))、ラミプリル(Altace(登録商標))、キナプリル塩酸塩(Accupril(登録商標))、ペリンドプリルエルブミン(Aceon(登録商標))、トランドラプリル(Mavik(登録商標))、及びモエキシプリル塩酸塩(Univasc(登録商標))が挙げられるが挙げられる。
本発明に従って使用され得るベータ遮断薬の非限定的な例としては、アルプリノール、ブシンドロール、カルテオロール、カルベジロール(さらなるα−遮断活性を有する)、ラベタロール(さらなるα−遮断活性を有する)、ナドロール、オクスプレノロール(内因性の交感神経刺激活性を有する)、ペンブトロール(内因性の交感神経刺激活性を有する)、ピンドロール(内因性の交感神経刺激活性を有する)、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、及び杜仲樹皮(薬草)が挙げられる。
本発明に従って使用され得るβ1−選択的(心選択性としても知られている)ベータ遮断薬の非限定的な例としては、アセブトロール(内因性の交感神経刺激活性を有する)、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ベリプロロール、エスモロール、メトプロロール、及びネビボロール(血管拡張のために一酸化窒素の放出も増加する)が挙げられる。
本発明に従って使用され得るβ2選択的薬剤の非限定的な例としては、ブタキサミン(弱性α−アドレナリン作動薬の活性)が挙げられる。
慢性心不全に具体的に適応されるベータ遮断薬の非限定的な例としては、カルベジロール、徐放性メトプロロール、ビソプロロール、及びネビボロールが挙げられる。
アンジオテンシンII遮断薬の非限定的な例としては、カンデサルタン(Atacand(登録商標))、エプロサルタン(Teveten(登録商標))、イルベサルタン(Avapro(登録商標))、ロサルタン(Cozaar(登録商標))、テルミサルタン(Micardis(登録商標))、及びバルサルタン(Diovan(登録商標))が挙げられる。
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、それを必要とする対象、例えば、慢性心不全であると診断されたまたはそのリスクがある対象に、以下に示される組み合わせのうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない、以下の薬剤または化合物のうちのいずれかを単独でまたは組み合わせて提供することを含む:
ハロゲン化合物、
ハロゲン化合物及びグルタチオン、
ハロゲン化合物、及び慢性心不全を治療するために使用される別の活性薬剤、ならびに
ハロゲン化合物、慢性心不全を治療するために使用される別の活性薬剤、及びグルタチオン。
組みあわて使用される場合、2つ以上の薬剤は、同じまたは異なる組成物において、対象に提供され得る。加えて、3つ以上の薬剤が対象に提供される場合、その2つは1つの組成物中に存在し得、3つ目は別々の組成物中に存在し得る。本組成物は、同時に、重複期間中、または異なる期間中に投与され得る。
組成物及び単位剤形
本発明はまた、例えば、ヨウ化物または臭化物のようなハロゲン化合物を含む組成物も含む。特定の実施形態において、本組成物は、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む、1つ以上のさらなる活性薬剤をさらに含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、薬学的組成物である。特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、緩衝液等の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ハロゲン化合物及びグルタチオンを含む薬学的組成物である。特定の組成物は、ヨウ化物等のハロゲン化合物と、慢性心不全を治療または予防するために使用される別の活性薬剤と、を含む。本発明のさらなる組成物は、カルコゲニド及び/またはハロゲン化合物と組み合わせて、グルタチオンを含む。ある特定の実施形態において、組成物は、グルタチオン、カルコゲニド、及びハロゲン化合物を含む。特定の実施形態において、本発明の組成物は、グルタチオン及びセレン化物を含む。特定の実施形態において、本発明の組成物は、グルタチオン及び硫化物を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ヨウ化物(またはヨウ素酸塩)、セレン化物、及びグルタチオンを含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ヨウ化物(またはヨウ素酸塩)、硫化物、及びグルタチオンを含む。特定の実施形態において、セレン化物または硫化物の少なくとも一部は、還元型であり、グルタチオンは、組成物中のカルコゲニドの酸化を阻害する。還元型のカルコゲニドは、本明細書に記載されるもののうちのいずれかであってもよい。特定の実施形態において、ヨウ化物またはヨウ素酸塩の少なくとも一部は、還元型であり、グルタチオンは、組成物中のハロゲン化合物の酸化を阻害する。還元型のハロゲン化合物は、本明細書に記載されるもののうちのいずれかであってもよい。
ある特定の実施形態において、本発明は、ハロゲン化合物、例えば、還元型のハロゲン化合物を含む組成物を含む。関連実施形態において、本発明は、ハロゲン化合物、例えば、還元型のハロゲン化合物、及び1つ以上のさらなる活性薬剤、例えば、カルコゲニド、例えば、還元型のカルコゲニド、または慢性心不全を治療するために使用される活性薬剤を含む組成物を含む。ある特定の実施形態において、本組成物は、グルタチオンをさらに含む。本発明は、対象に、還元型のハロゲン化合物を含む組成物を、単独で、または対象に、例えば還元型のカルコゲニド等の1つ以上のさらなる活性薬剤を含む組成物を提供することと組み合わせて提供することを含む方法をさらに含む。特定の実施形態において、還元型のカルコゲニドは、カルコゲン、例えば、−2価の状態で、硫黄またはセレンを含む。特定の実施形態において、単一の組成物は、ハロゲン化合物、及び慢性心不全を治療するために使用される1つ以上のさらなる活性薬剤または活性薬剤の両方を含む。本発明の組成物のうちのいずれかのある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、還元型のハロゲン化合物であり、これは、−1価の状態でハロゲン、例えば、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物または臭化物を含む。本明細書に記載される組成物のうちのいずれかのある特定の実施形態において、本組成物は、グルタチオンまたは別の還元剤をさらに含む。
特定の実施形態において、本組成物は、ある期間にわたって保存される場合に、還元型でハロゲン及び/またはカルコゲニドを維持するように製剤化される。それ故に、本組成物は、還元型のハロゲン化合物及び/または還元型のカルコゲニド、またはその塩もしくは前駆体の安定した組成物であり得、治療剤としてのそれらの有効性は、通常は、酸化生成物を生成する酸化反応の結果として、製造及び保存の間に損なわれる恐れがある。貯蔵寿命を増加させる本発明の組成物は、容易かつ再現性よく製造され、標準的な投与経路のために設計され、したがって、多くの疾患、状態、及び損傷の治療及び予防において好都合である。本発明は、疾患または損傷、特に、虚血、低酸素、または再灌流損傷から生物学的組織を保護する方法、ならびに対象における損傷または疾患を治療または予防する方法におけるそれらの使用を企図する。
ある特定の実施形態において、カルコゲニド及び/またはハロゲン化合物を含む安定した組成物は、グルタチオンを含む。
さらなる実施形態において、組成物は、甲状腺腫誘発物質、または甲状腺ホルモンの産生、活性、または取り込みを阻害または減少させる活性薬剤を、単独で、またはカルコゲニド及び/またはハロゲン化合物等の別の活性薬剤と組み合わせて含む。
本組成物のある特定の実施形態において、組成物は、安定していると見なされる、すなわち、安定した組成物は、組成物中のハロゲン化合物もしくはカルコゲニド(組成物中に存在する場合)、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方(両方が組成物中に存在する場合)のうちの少なくとも90%が、室温、4℃、25℃、40℃、または50℃で保存された場合に、少なくとも1時間還元型で存在する。関連実施形態において、組成物は、組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、室温で保存される場合または4℃で保存される場合のいずれかで、少なくとも1時間還元型で存在する場合、安定していると見なされる。安定した組成物のある特定の実施形態において、該組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも90%は、室温で保存される場合または4℃、25℃、40℃、または50℃で保存される場合のいずれかで、少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、または少なくとも1年間、該還元型で存在する。関連実施形態において、安定した組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、室温で保存される場合または4℃で保存される場合のいずれかで、少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、または少なくとも1年間、該還元型で存在する。特定の実施形態において、安定した組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも98%は、4℃で保存される場合に、少なくとも1カ月間または少なくとも6カ月間、該還元型で存在する。関連実施形態において、安定した組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、室温で保存される場合または室温もしくは25℃で保存される場合のいずれかで、少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、または少なくとも1年間、該還元型で存在する。特定の実施形態において、安定した組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも98%は、室温または25℃で保存される場合に、少なくとも1カ月間または少なくとも6カ月間、該還元型で存在する。関連実施形態において、安定した組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、室温で保存される場合または40℃もしくは50℃で保存される場合のいずれかで、少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも6カ月間、または少なくとも1年間、該還元型で存在する。特定の実施形態において、安定した組成物中のハロゲン化合物、カルコゲニド、またはハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方のうちの少なくとも98%は、40℃または50℃で保存される場合に、少なくとも1カ月間または少なくとも6カ月間、該還元型で存在する。様々な実施形態において、本組成物は、液体薬学的組成物であるが、他の実施形態において、本組成物は、固体または半固体組成物であるか、または乾燥、凍結乾燥、またはフリーズドライさせる。
特定の実施形態において、本発明は、ヨウ化物を含む安定した液体組成物に関し、この安定した液体組成物は、1%未満の、ヨウ化物(−1の酸化状態):次亜ヨウ素酸塩(+1の酸化状態)、亜ヨウ素酸塩(+3の酸化状態)、ヨウ素酸塩(+5の酸化状態)、または過ヨウ素酸塩(+7の酸化状態)、の酸化生成物のうちのいずれかを含む。特定の実施形態において、ヨウ化物を含む安定した液体組成物は、1%未満のヨウ素(I2)を含む。
ある特定の実施形態において、還元型のハロゲン化合物は、−1の価数状態でハロゲンを含む。特定の実施形態において、還元型のカルコゲニドは、−2の価数状態で、例えば、硫黄またはセレン等のカルコゲンを含む。特定の実施形態において、還元型のハロゲンは、ヨウ化物等の還元型のハロゲン、ヨウ素である。特定の実施形態において、還元型のハロゲン化合物は、NaI、KI、HI、CaI、またはAgIである。特定の実施形態において、還元型のカルコゲニドは、H2Se、Na2Se、NaHSe、HSe−、H2S、NaHS、Na2S、またはHS−である。
特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物のうちのいずれかは、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。さらに、本組成物のうちのいずれかは、緩衝液、還元剤、等張化剤、安定剤、界面活性剤、リコプロテクタント、ポリオール、抗酸化剤、または保存剤のうちの1つ以上を含んでもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物のうちのいずれかは、グルタチオンを含む。
特定の実施形態において、組成物は、1つ以上の溶媒を含んでもよい。特定の実施形態において、この溶媒は、水である。特定の実施形態において、この溶媒は、リン酸緩衝生理食塩水である。
本発明の組成物及び本発明の方法は、任意の所望の濃度で、ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニド化合物、またはその塩もしくは前駆体を含んでもよい。この濃度は、便利な様式でかつ適切な時間フレームにわたって、例えば、治療される損傷または疾患の型、投与経路に応じて、容易に最適化され得る。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物中に存在するハロゲン化合物またはその塩もしくは前駆体の濃度は、約0.0001mM〜約100M、約0.0005mM〜約50M、約0.001mM〜約10M、約0.001mM〜約5M、約0.001mM〜約1M、約0.005mM〜約10M、約0.005mM〜約5M、約0.005mM〜約1M、約0.005mM〜約0.5M、約0.01mM〜約10M、約0.01mM〜約5M、約0.01mM〜約2M、約0.1mM〜約1M、約0.1mM〜約0.5M、約0.5mM〜約5M、約0.5mM〜約2M、約0.5mM〜約1M、約0.5mM〜約0.5M、約1mM〜約5M、約1mM〜約2M、約1mM〜約1M、約1mM〜約0.5M、約5mM〜約5M、約5mM〜約2M、約5mM〜約1M、約5mM〜約0.5M、約5mM〜約0.25M、約10mM〜約1M、約10mM〜約0.5M、約10mM〜約0.25M、または約10mM、約50mM 約100mM、または約200mMである。
いくつかの実施形態において、カルコゲニドまたはカルコゲニド化合物またはその塩もしくは前駆体の濃度は、約0.001mM〜約5,000mM、約1mM〜約1000mM、約10mM〜約500mM、約50mM〜約500mM、約75mM〜約250mM、または約95mM〜約150mMである。
特定の実施形態において、組成物は、約0.1mM〜約1000mM、約1mM〜約1000mM、約5mM〜約1000mM、約10mM〜約1000mM、約10mM〜約750mM、約50mM〜約500mM、約100mM〜約500mM、約10mM〜約500mM、1mM〜約500mM、または約10mM〜約250mMの濃度でセレン化物を含む。
特定の実施形態において、組成物は、約0.1mM〜約1000mM、約1mM〜約1000mM、約5mM〜約1000mM、約10mM〜約1000mM、約10mM〜約750mM、約50mM〜約500mM、約100mM〜約500mM、約10mM〜約500mM、1mM〜約500mM、または約10mM〜約250mMの濃度で硫化物を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物中の還元型のハロゲン化合物及び/またはカルコゲニド、例えば、セレン化物または硫化物は、約、少なくとも約、または最大で約0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、
3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0mMまたはMもしくはそれ以上、またはそこにおいて引き出される任意の範囲である(標準温度及び標準圧力(STP)において)。
本明細書で使用される「%」という用語は、必要条件(w/v、v/v、またはw/wを伴うような)なしで使用される場合、固体が液体中にある溶液については重量体積%(w/v)、気体が液体中にある溶液については重量体積%(w/v)、液体が液体中にある溶液については体積%(v/v)、固体及び半固体の混合物については重量(w/w)を意味する(Remington’s Pharmaceutical Sciences(2005);第21版、Troy,David B.Ed.Lippincott,Williams and Wilkinsを参照のこと)。
一実施形態において、組成物は、80%〜100%(w/v)と測定されるセレン化物または硫化物を含む。一実施形態において、組成物は、90%〜100%(w/v)と測定されるセレン化物または硫化物を含む。一実施形態において、組成物は、95%〜100%(w/v)と測定されるセレン化物または硫化物を含む。一実施形態において、組成物は、98%〜100%(w/v)と測定される硫化物を含む。
ある特定の実施形態において、組成物は、約1.5μM〜約10M、約15μM〜約1M、約150μM〜約1M、約1.5mM〜約1M、約10mM〜約500mM、約10mM〜約250mM、または約100mM、約120mM、約150mM、約170mM、または約200mMの濃度でグルタチオンを含む。
ある特定の実施形態において、組成物は、約0.1μM〜約100M、約1.5μM〜約10M、約15μM〜約1M、約150μM〜約1M、約1mM〜約1M、約10mM〜約500mM、約10mM〜約250mM、または約100mM、約120mM、約150mM、約170mM、または約200mMの濃度で、甲状腺腫誘発物質、または甲状腺ホルモンの産生、活性、または取り込みを阻害するまたは妨げる化合物を含む。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、カルコゲニド及びグルタチオン、任意にハロゲン化合物またはその塩もしくは前駆体を含み、カルコゲニドの濃度は、約1mM〜約1M、約10mM〜約500mM、または約10mM〜約100mMであり、グルタチオンの濃度は、約100μM〜約1M、約1mM〜約1M、または約10mM〜約500mMであり、存在する場合、ハロゲン化合物の濃度は、約0.01mM〜約5M、約1mM〜約0.5M、または約10mM〜約250mMである。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、本組成物中に存在する。特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ化物またはヨウ素酸塩であり、カルコゲニドは、セレンまたは硫黄を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、ハロゲン化合物またはその塩もしくは前駆体及びグルタチオン、任意にカルコゲニドを含み、ハロゲン化合物の濃度は、約0.01mM〜約5M、約1mM〜約0.5M、または約10mM〜約250mMであり、グルタチオンの濃度は、約100μM〜約1M、約1mM〜約1M、または約10mM〜約500mMであり、存在する場合、ハロゲン化合物の濃度は、約約1mM〜約1M、約10mM〜約500mM、または約10mM〜約100mMである。ある特定の実施形態において、カルコゲニドは、本組成物中に存在する。特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ化物またはヨウ素酸塩であり、カルコゲニドは、セレンまたは硫黄を含む。これらの組成物のうちのいずれかの特定の実施形態において、本組成物は、経口送達用に製剤化されるか、または経口剤形であり、ハロゲン化合物(存在する場合)は、ヨウ素(例えば、ヨウ化物またはヨウ素酸塩)を含み、カルコゲニド(存在する場合)は、セレンを含む。ある特定の実施形態において、カルコゲニドは、セレン化物またはセレン化物である。特定の実施形態において、本組成物は、静脈内投与用に製剤化され、ハロゲン化合物(存在する場合)は、ヨウ化物またはヨウ素酸塩であり、カルコゲニド(存在する場合)は、還元型の、例えば、セレン化物または硫化物である。一実施形態において、本組成物は、セレン化物、ヨウ化物、及びグルタチオンを含み、各々は、濃度範囲のうちのいずれかの間、または本明細書に記載される濃度である。
特定の実施形態において、本発明の組成物のpHは、(3.0〜12.0)の範囲内であるが、一方、他の実施形態において、pHは、(5.0〜9.0)の範囲内である。薬学的組成物のpHは、生理学的に適合可能な範囲に調整されてもよい。例えば、一実施形態において、安定した組成物のpHは、6.5〜8.5の範囲内である。他の実施形態において、本発明の組成物は、7.5〜8.5または7.4〜9.0の範囲内でpHを有する。
特定の実施形態において、酸素は、0μM−5μMまたは0μM−1μMまたは0μM−0.1μM、または0μM〜0.01μMの範囲内の濃度で、本発明の組成物中に存在する。特定の実施形態において、酸素は、3μM未満、1μM未満、0.1μM未満、0.01μM未満、または0.001μM未満の濃度で、本組成物中に存在する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、限られた量の酸化生成物をさらに含んでもよい。本発明の様々な実施形態において存在し得る酸化生成物としては、ヨウ素、ヨウ素酸塩、臭素、臭素酸塩、亜セレン酸塩、チオセレン酸塩、ポリセレン化物、セレン元素、セレン酸塩、亜硫酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、ポリ硫化物、ジチオン酸塩、ポリチオン酸塩、及び硫黄元素が挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、これらの酸化生成物のうちの1つ以上は、本組成物中の総ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの10%未満、5.0%未満、2.0%未満、1.0%未満、0.5%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、または0.01(w/v)%未満の量で、本組成物中に存在する。
一実施形態において、組成物は、200〜400mOsmol/Lの範囲のオスモル濃度を有する。NaClは、オスモル濃度を調整するための賦形剤として使用してもよい。
ある特定の実施形態において、本組成物の等張性は、これが投与の際の痛みの低減を生じ、高張または低張の組成物に関連する潜在的な溶血作用を最小限に抑えるため、望ましい。それ故に、本発明の組成物は、酸及び酸の塩型からなる他のより従来的な緩衝液を使用する製剤と比較した場合に、増大した保存安定性を有するのみならず、投与の際の痛みの実質的な低減という追加の利点も有する。
硫化物またはセレン化物を含む還元型のカルコゲニドを含む安定した液体組成物、及びその製造方法は、例えば、国際出願公開第WO2008/043081号、米国仮特許出願第61/659,311号、及び国際出願公開第WO2013/188528号に記載されている。これらの組成物のうちのいずれかは、本明細書に記載される疾患、状態、または損傷のうちのいずれかを治療または予防するために使用してもよい。
還元型のカルコゲニドを含み、かつグルタチオンをさらに含む本発明の組成物は、同様の様式で、例えば、還元型のカルコゲニドを含む組成物を調製し、グルタチオンを添加することによって当業者によって調製され得る。同様に、還元型のカルコゲニド及び還元型のハロゲン化合物を含む組成物は、同様の様式で、例えば、還元型のカルコゲニドを含む組成物を調製し、それを還元型のハロゲン化合物または還元型のハロゲン化合物を含む組成物と混合することによって当業者によって調製され得る。
国際出願公開第WO2008/043081号は、安定した液体の薬学的カルコゲニドまたはカルコゲニド化合物または薬学的に許容される担体中のその塩もしくは前駆体を含む組成物を記載し、該カルコゲニドまたはカルコゲニド化合物または塩の濃度、pH、及び酸化生成物は、該液体の薬学的組成物の保存後、判定基準の範囲内にとどまる。様々な実施形態において、カルコゲニド化合物またはカルコゲニド塩は、H2S、Na2S、NaHS、K2S、KHS、Rb2S、CS2S、(NH4)2S、(NH4)HS、BeS、MgS、CaS、SrS、及びBaSからなる群から選択される。他の実施形態において、カルコゲニド化合物またはカルコゲニド塩は、H2Se、Na2Se、NaHSe、K2Se、KHSe、Rb2Se、CS2Se、(NH4)2Se、(NH4)HSe、BeSe、MgSe、CaSe、SrSe、PoSe、及びBaSeからなる群から選択される。本発明によれば、該組成物は、ハロゲン化合物、例えば、ヨウ化物、グルタチオン、または甲状腺腫誘発物質をさらに含んでもよい。
安定した液体または水性組成物の特定の実施形態において、カルコゲニド化合物またはカルコゲニド塩は、硫化物であり、95mM〜150mMの範囲内の濃度を有する。
該カルコゲニド化合物またはカルコゲニド塩が硫化物である特定の実施形態において、該硫化物は、約80w/v%〜約100w/v%、約90w/v%〜100w/v%、または約95w/v%〜100w/v%の範囲の量で存在する。
特定の実施形態において、この液体は、水酸化ナトリウムである。
ある特定の実施形態において、本組成物は、6.5〜8.5の範囲内でpHを有する。一実施形態において、本組成物は、5μM以下の酸素含有量を有する。
一実施形態において、本組成物は、ポリ硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、及びチオ硫酸塩から選択される1つ以上の酸化生成物をさらに含む。酸化生成物は、(0%〜1.0%)の範囲内で硫酸塩、または(0%〜1.0%)の範囲内で亜硫酸塩、または(0%〜1%)の範囲内でポリ硫化物、または(0%〜1.0%)の範囲内でチオ硫酸塩であってもよい。
保存期間は、(23°〜27°)の範囲で約3カ月、または(23°〜27°)の範囲で6カ月であってもよい。一実施形態において、本組成物は、250〜330mOsmol/Lの範囲内でオスモル濃度を有する。本組成物は、等張であっても、ほぼ等張であってもよい。
ある特定の実施形態において、組成物は、脱酸素水及び硫化ナトリウム九水和物の溶液を含む、滅菌され安定した水性薬学的組成物であり、硫化ナトリウム九水和物は、Na2S、H2S、及びHS−を生成し、H2Sの濃度は、1.0mg/mL〜4.0mg/mLの範囲内であり、溶液は、HCIをこの溶液に添加することによって、7.5〜8.5の範囲内でpHを調整され、溶液は、250〜330mOsmol/Lのオスモル濃度を有し、溶液は、ポリ硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、及びチオ硫酸塩からなる群から選択される硫化物酸化生成物をさらに含み、酸化生成物は、(0%〜1.0%)の範囲内で硫酸塩、または(0%〜1.0%)の範囲内で亜硫酸塩、または(0%〜1%)の範囲内でポリ硫化物、または(0%〜1.0%)の範囲内でチオ硫酸塩であってもよく、溶液は、等張、またはほぼ等張であり、溶液は、少なくとも4カ月間安定している。特定の実施形態において、本組成物は、0μM〜5μM、0μM〜3μM、0.01μM〜1μM、または0.001μM〜1μMの範囲内で酸素含有量を有する。ある特定の実施形態において、本組成物は、例えば、ヨウ化物または臭化物、例えば、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化合物をさらに含む。そのような組成物は、グルタチオンまたは甲状腺腫誘発物質、または甲状腺ホルモンの産生、活性、または取り込みを妨げるまたは阻害する他の薬剤をさらに含み得る。
ある特定の実施形態において、本組成物は、脱酸素水及びNa2Sの溶液を含む、滅菌され安定した水性薬学的組成物であり、Na2Sは、HS−を生成し、溶液は、7.8〜8.2の範囲内でpHを有し、溶液は、250〜330mOsmol/Lのオスモル濃度を有し、溶液は、ポリ硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、及びチオ硫酸塩からなる群から選択される硫化物酸化生成物をさらに含み、酸化生成物は、(0%〜1.0%)の範囲内で硫酸塩、または(0%〜1.0%)の範囲内で亜硫酸塩、または(0%〜1%)の範囲内でポリ硫化物、または(0%〜1.0%)の範囲内でチオ硫酸塩を含み、溶液は、少なくとも4カ月間安定しており、溶液は、等張、またはほぼ等張である。ある特定の実施形態において、本組成物は、例えば、ヨウ化物または臭化物、例えば、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化合物をさらに含む。そのような組成物は、グルタチオン(または甲状腺ホルモンの産生もしくは活性を阻害するもしくは妨げる別の化合物、または甲状腺腫誘発物質)をさらに含み得る。
ある特定の実施形態において、本組成物は、滅菌され、安定した液体薬学的組成物であって、Na2S.9H2O結晶を脱酸素水、蒸留水、及び脱イオン水ですすぐことによってNa2Sの溶液を作製することと、HS−を生成するNa2Sを発生させる溶液を通して、N2、N2/CO2の混合物、またはN2/H2Sの混合物を発泡させることと、HCIをこの溶液に添加することによって、7.5〜8.5の範囲内でpHを調整することと、を含む、任意の好適な順序の工程によって作製され、該溶液は、250〜330mOsmol/Lの範囲内でオスモル濃度を有し、該溶液は、ポリ硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、及びチオ硫酸塩からなる群から選択される硫化物酸化生成物をさらに含み、酸化生成物は、(0%〜1.0%)の範囲内で硫酸塩、または(0%〜1.0%)の範囲内で亜硫酸塩、または(0%〜1%)の範囲内でポリ硫化物、または(0%〜1.0%)の範囲内でチオ硫酸塩を含み、該組成物は、等張、またはほぼ等張である。ある特定の実施形態において、本組成物は、例えば、ヨウ化物または臭化物、例えば、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化合物をさらに含む。そのような組成物は、グルタチオンまたは甲状腺腫誘発物質、または甲状腺ホルモンの産生、活性、または取り込みを妨げるまたは阻害する他の薬剤をさらに含み得る。
カルコゲニドを含む上述の組成物の様々な実施形態において、HS−の濃度は、1mM〜250mM、10mM〜200mM、または95mM〜150mMの範囲内である。カルコゲニドを含む上述の組成物の一実施形態において、HS−の濃度は、1mM〜250mM、10mM〜200mM、または95mM〜150mMの範囲内である。カルコゲニドを含む上述の組成物の一実施形態において、HS−の濃度は、1mM〜250mM、10mM〜200mM、または95mM〜150mMの範囲内である。
本発明は、本発明の組成物(複数を含む)を含むキットをさらに含む。ある特定の実施形態において、そのようなキットは、本発明の組成物(複数を含む)を保存するために1つ以上の容器を含む。一実施形態において、組成物は、不活性または希ガス下、容器内に保存され、この容器は、密閉され、酸素不透過性光保護容器(例えば、アンバーバイアル)を有する。ある特定の実施形態において、キットは、ハロゲン化合物、例えば、還元型のヨウ素、例えば、ヨウ化物等を含む組成物、及び慢性心不全を治療するために使用される活性薬剤を含む組成物を含む。
ある特定の実施形態において、組成物は、不透過性容器内にパッケージ化される。「不透過性容器」とは、ガス分子の通過に対して障壁をもたらす容器を指す。不透過性容器は、当業者に公知であり、「静脈内バッグ」またはガス不透過性構成材料を含むシリンジ、または密閉ガラスバイアルが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本組成物は、不活性雰囲気、不活性ガス、または希ガスを含有する不透過性容器にパッケージ化されてもよい。希ガスとは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、及びラドン(Rn)を指す。不活性ガスとは、窒素(N2)を指す。「不活性雰囲気」という用語は、容器内の窒素またはアルゴン雰囲気を指す。特定の実施形態において、容器は、酸素減少または無酸素環境を含む。「酸素減少環境」は、100ppm(100万分の1)未満の酸素濃度を有する環境である。本組成物は、例えば、アンバーバイアル等の光保護バイアルまたは容器内にパッケージ化され得る。一実施形態において、本組成物は、ガラスアンプル中に密閉され、保存される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、保存中、ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの酸化を防ぐために含まれる1つ以上の賦形剤を含み、保存は、1カ月〜12カ月、またはそれより長い範囲内である。いくつかの実施形態において、保存は、1カ月〜6カ月の範囲内である。いくつかの実施形態において、保存は、3カ月〜6カ月の範囲内である。いくつかの実施形態において、保存は、4カ月〜5カ月の範囲内である。本発明の実施形態は、単一の賦形剤または賦形剤の組み合わせを使用してもよい。多くの好適な賦形剤が存在する。例としては、キレーター、pH調整剤、還元剤、抗酸化剤、スピントラップ剤、及び保存剤が挙げられる。
一実施形態において、本発明の組成物は、キレーターまたはキレート剤を任意に含有してもよい。可溶性金属錯体を生じるキレート剤はまた、金属イオン封鎖剤とも呼ばれる。キレート剤は、典型的には、−O、−NH2、または−COO−等の金属に電子対を供与する少なくとも2つの官能基を有する。天然に存在するキレーターの例としては、多糖を含む炭水化物、1つより多い配位基を有する有機酸、脂質、ステロイド、アミノ酸及び関連化合物、ペプチド、リン酸、ヌクレオチド、テトラピロール、フェリオキサミン、イオノフォア、例えば、グラミシジン、モネンシン(monensin)、バリノマイシン、及びフェノール類が挙げられる。合成キレーターの例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(DTPA5)、CaDTPAH、ジメルカプロール(BAL)、デフェロキサミン、デスフェラール、2,2’−ビピリジルジメルカプトプロパノールエチレンジアミン四酢酸、エチレンジオキシ−ジエチレン−ジニトリロ−四酢酸(EDTA)、CaNa2エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコール−ビス−(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、イオノフォア、ニトリロ三酢酸(NTA)、オルト−フェナントロリン、サリチル酸、サクシマー(メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、(DMSA)、トリエタノールアミン(TEA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸三ナトリウム塩(HEDTA)、ニトリロ酢酸(NTA)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、合成キレーターは、DTPAである。ある特定の実施形態において、DTPAの濃度は、約、少なくとも約、または最大で約0、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mMもしくはM、またはそこにおいて引き出される任意の範囲である。一実施形態において、DTPAは、0.1mM〜50mMの範囲内である。一実施形態において、合成キレーターは、DTPA5からなる。ある特定の実施形態において、DTPA5の濃度は、(0.0001%〜0.1%)(w/v)の範囲内である。別の実施形態において、DTPA5は、(0%〜1.0%)(w/v)の範囲内である。一実施形態において、DTPA5は、(0%〜0.01%)(w/v)の範囲内である。一実施形態において、合成キレーターは、CaDTPAである。ある特定の実施形態において、CaDTPAの濃度は、(0.0001%〜0.1%)(w/v)の範囲内である。一実施形態において、CaDTPAは、(0%〜0.01%)(w/v)の範囲内である。別の実施形態において、CaDTPAは、(0%〜1.0%)(w/v)の範囲内である。一実施形態において、合成キレーターは、デフェロキサミンである。ある特定の実施形態において、デフェロキサミンの濃度は、約、少なくとも約、または最大で約0、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mMもしくはM、またはそこにおいて引き出される任意の範囲である。一実施形態において、デフェロキサミンは、0.1mM〜10mMの範囲内である。一実施形態において、合成キレーターは、EDTAである。ある特定の実施形態において、EDTAの濃度は、約、少なくとも約、または最大で約0、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mMもしくはM、またはそこにおいて引き出される任意の範囲である。ある特定の実施形態において、EDTAは、0%〜1%(w/v)の範囲内である。別の実施形態において、EDTAは、0.0001%〜0.1%(w/v)の範囲内である。別の実施形態において、EDTAは、0%〜1.0%(w/v)の範囲内である。一実施形態において、EDTAは、0%〜0.01%(w/v)の範囲内である。
本発明の組成物は、1つ以上のpH調整剤をさらに含んでもよい。pH調整剤としては、無機塩、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸化水素カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、マレイン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、チオグリコール酸、酢酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、リン酸亜鉛、乳酸亜鉛、マレイン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他のpH調整剤としては、例えば、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、酒石酸、二酸化炭素、炭酸、N−メチル−D−グルカミン、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、トロメタミン、オロチン酸、及び塩酸が挙げられる。一実施形態において、pH調整剤は、水酸化ナトリウムである。
pH調整剤は、すでに酸性または塩基性である溶液に添加され、次いで、これが新しいpHに調整されかつ維持されるときには、緩衝液としての役割を果たし得る(The United States Pharmacopeia−National Formulary 29th Edition,(2006) Rockville,Md.;Stahl,P.Wermuth,C.ed.Handbook of Pharmaceutical Salts Properties,Selection and Use.Wiley(2002)を参照のこと)。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、グルタチオン(米国特許第6,586,404号を参照のこと)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TSEP)、I−システイン、システイン、またはメチオニン等の還元剤である1つ以上の賦形剤を含む。一実施形態において、還元剤は、グルタチオン(Vincent et al.,Endocrine Reviews(2004) 25:612−628を参照のこと)、ジチオストレイトール(DTT)(Weir et al.,Respir and Physiol Biol;(2002)132:121−30)、またはジチオエリトリトール(DTE)である。ある特定の実施形態において、グルタチオンの濃度は、約、少なくとも約、または最大で約0、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mM、またはMもしくはそれ以上、またはそこにおいて引き出される任意の範囲である。ある特定の実施形態において、ジチオストレイトール(DTT)の濃度は、約、少なくとも約、または最大で約0、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mM、または1M、またはそこにおいて引き出される任意の範囲で存在する。ある特定の実施形態において、還元剤は、ジチオエリトリトール(DTE)であり、約、少なくとも約、または最大で約0、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mMもしくは1M、またはそこにおいて引き出される任意の範囲である。
本発明の組成物は、フリーラジカルスカベンジャーまたは抗酸化剤を任意に含んでもよい。フリーラジカルスカベンジャーまたは抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸(ビタミンC)、D−アルファ酢酸トコフェロール、DL−アルファ−トコフェロール(ビタミンE)、メラトニン、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、Trolox(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、メラトニン、亜ジチオン酸塩、ピロ亜硫酸塩、システイン、重亜硫酸カリウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオエチレングリコール、L−スレオアスコルビン酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニドール、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン、セファルム、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、トリヒドロキシブチロフェノン、ジメチルフェノール、レシチン、エタノールアミン、メグルミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる(米国出願公開第2005/0106214号を参照のこと)。一実施形態において、抗酸化剤は、スピントラップ剤である。スピントラップ剤の例としては、N−t−ブチル−フェニルニトロン(PBN)(Kotake,Y.,Antioxid Redox Signal(1999) 481を参照のこと)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPOL)(Gariboldi,M.B.,et al.(2000),Free Radic.Biol.Med.29:633、Miura,Y.,et al.J.Radiat.Res.(Tokyo)(2000) 41:103、Mota−Filipe,H.,et al.(1999),Shock 12:255R: 22−41;S:39−26 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)(Lapchak,et al.,Stroke(2001) 32:147−53を参照のこと)、(ジナトリウム−[(tert−ブチルイミノ)メチル]ベンゼン−1,3−ジスルホネートN−オキシド(NXY−059)(Lapchak et al.,CNS Drug Rev(2003)9:253−62を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、スピントラップ剤は、TEMPOであり、0mg/kg〜1,000mg/kgの範囲内で存在する。いくつかの実施形態において、スピントラップ剤は、TEMPOであり、100mg/kg〜1,000mg/kgの範囲内で存在する。別の実施形態において、スピントラップ剤は、TEMPOであり、0mg/kg〜100mg/kgの範囲内で存在する。
本発明の組成物は、保存剤を任意に含んでもよい。本明細書で使用される、「保存剤」という用語は、微生物の増殖を防ぐために使用される化合物を意味することが意図される。そのような化合物には、例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンセトレニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェノキシエタノール(pheenoxyethanol)、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、メタクレゾール、ミリスチルガンマ塩化ピコリニウム、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チオグリセロール、チメロサール、チモール、及びメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、またはブチルパラベン、ならびに当業者に公知である他の保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような保存剤は、安定した組成物中で、記載されるような受容可能な薬学的実務に従って典型的な濃度で使用される。(The United States Pharmacopeia−National Formulary 29th Edition,(2006) Rockville,Md.;Remington’s Pharmaceutical Sciences(2005) 21st Edition,Troy,D B,Ed.Lippincott,Williams and Wilkinsを参照のこと)。ある特定の実施形態において、保存剤は、ベンジルアルコールであり、0%〜1.0%(w/v)の範囲内で存在する。一実施形態において、保存剤は、ベンジルアルコールであり、0%〜0.5%(w/v)の範囲内で存在する。一実施形態において、保存剤は、0%〜0.5%(w/v)の範囲内のフェノールである。ある特定の実施形態において、保存剤は、(0.0%〜0.25%(w/v)の範囲内のメチルパラベンである。ある特定の実施形態において、保存剤は、0%〜0.25%(w/v)の範囲内のエチルパラベンである。ある特定の実施形態において、保存剤は、0%〜0.25%(w/v)の範囲内のプロピルパラベンである。ある特定の実施形態において、保存剤は、0%〜0.4%(w/v)の範囲内のブチルパラベンである。ある特定の実施形態において、保存剤は、0%〜0.02%(w/v)の範囲内の塩化ベンザルコニウムである。
特定の実施形態において、本発明の組成物のうちのいずれかは、還元型のハロゲン化合物及び還元型のカルコゲニドの両方を含んでもよい。加えて、組成物は、2つ以上のハロゲン化合物及び/または2つ以上のカルコゲニドを含んでもよい。
本発明はまた、本発明の組成物の単位剤形も含む。ある特定の実施形態において、単位剤形は、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するために、有効量のハロゲン化合物を含むか、またはこれからなる。ある特定の実施形態において、単位剤形 は、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するために、有効量のカルコゲニドを含むか、またはこれからなる。ある特定の実施形態において、単位剤形は、本明細書に記載される条件のうちのいずれかの下で、還元型のカルコゲニド及び/またはハロゲン化合物を維持するために有効な量でグルタチオンをさらに含む。特定の実施形態において、単位剤形は、静脈内投与、注入による投与、または経口投与用に製剤化される。ある特定の実施形態において、本明細書で使用される、「予防」という用語は、疾患または損傷の開始もしくは進行を阻害するまたは妨げること、または疾患または損傷によって引き起こされる損傷もしくは傷害を低減することを含む。
特定の実施形態において、ヨウ化物またはNaI等のハロゲン化合物を含む単位剤形は、約0.005mg〜約5000mg、約0.05〜約1000mg、約0.5mg〜約100mg、約1mg〜約100mg、約2.5mg〜約100mg、約0.5mg〜約50mg、約1mg〜約50mg、約2.5mg〜約50mg、約5mg〜約50mg、約10mg〜約50mg、または約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、または約15mgを含むか、またはこれらからなる。関連実施形態において、単位剤形は、150mg以下、125mg以下、100mg以下、75mg以下、50mg以下、25mg以下、または10mg以下のハロゲン化合物を含む。ある特定の実施形態において、単位剤形は、約1mg〜約150mg(この範囲内のあらゆる区間を含む)、約1mg〜約125mg、約1mg〜約100mg、約1mg〜約75mg、約1mg〜約50mg、約1mg〜約25mg、または約1mg〜約10mgのハロゲン化合物を含む。ある特定の実施形態において、単位剤形は、約150mg、約125mg、約100mg、約75mg、約50mg、約25mg、または約10mgのハロゲン化合物を含む。ある特定の実施形態において、単位剤形は、1000mg以下、800mg以下、700mg以下、500mg以下、250mg以下、200mg以下、または150mg以下のハロゲン化合物を含む。ある特定の実施形態において、単位剤形は、約100mg〜約1000mg(この範囲内のあらゆる区間を含む)、約150mg〜約800mg、約200mg〜約700mg、約250mg〜約600mg、約300mg〜約500mg、約350mg〜約450mg、または約300mg〜約700mgのハロゲン化合物を含む。ある特定の実施形態において、単位剤形は、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mgのハロゲン化合物を含む。
例えば、単位剤形が、液体として、例えば、静脈内投与または注入による投与用に製剤化される実施形態を含むいくつかの実施形態において、本発明の単位剤形中に存在するハロゲン化合物またはその塩もしくは前駆体の濃度は、約0.0001mM〜約100M、約0.0005mM〜約50M、約0.001mM〜約10M、約0.001mM〜約5M、約0.001mM〜約1M、約0.005mM〜約10M、約0.005mM〜約5M、約0.005mM〜約1M、約0.005mM〜約0.5M、約0.01mM〜約10M、約0.01mM〜約5M、約0.01mM〜約2M、約0.1mM〜約1M、約0.1mM〜約0.5M、約0.5mM〜約5M、約0.5mM〜約2M、約0.5mM〜約1M、約0.5mM〜約0.5M、約1mM〜約5M、約1mM〜約2M、約1mM〜約1M、約1mM〜約0.5M、約5mM〜約5M、約5mM〜約2M 約5mM〜約1M、約5mM〜約0.5M、約5mM〜約0.25M、約10mM〜約1M、約10mM〜約0.5M、約10mM〜約0.25M、または約10mM、約50mM 約100mM、または約200mMである。この単位剤形は、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体をさらに含んでもよい。
ある特定の実施形態において、単位剤形は、ヨウ素、例えば、NaIを含み、有効量は、約150μg以上、約300μg以上、約500μg以上、約1mg以上、約2mg以上、約5mg以上、約10mg以上、約15mg以上、または約20mg以上である。ある特定の実施形態において、有効量は、150μg〜1000mg、300μg〜1000mg、500μg〜1000mg、1mg〜1000mg、2mg〜1000mg、5mg〜1000mg、10mg〜1000mg、150μg〜100mg、300μg〜100mg、500μg〜100mg、1mg〜100mg、2mg〜100mg、5mg〜100mg、または10mg〜100mgである。ある特定の実施形態において、有効量は、150μg〜50mg、300μg〜20mg、500μg〜10mg、1mg〜20mg、1mg〜10mg、または約5mg、約10mg、約15mg、または約20mgである。他の実施形態において、有効量は、約1mg〜約150mg(この範囲内のあらゆる区間を含む)、約1mg〜約125mg、約1mg〜約100mg、約1mg〜約75mg、約1mg〜約50mg、約1mg〜約25mg、または約1mg〜約10mgのハロゲン化合物である。ある特定の実施形態において、有効量は、約150mg、約125mg、約100mg、約75mg、約50mg、約25mg、または約約10mgのハロゲン化合物である。ある特定の実施形態において、有効量は、1000mg以下、800mg以下、700mg以下、500mg以下、250mg以下、200mg以下、または150mg以下のハロゲン化合物を含む。ある特定の実施形態において、有効量は、約100mg〜約1000mg(この範囲内のあらゆる区間を含む)、約150mg〜約800mg、約200mg〜約700mg、約250mg〜約600mg、約300mg〜約500mg、約350mg〜約450mg、または約300mg〜約700mgのハロゲン化合物である。ある特定の実施形態において、有効量は、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または約約1000mgのハロゲン化合物である。特定の実施形態において、有効量は、1日当たりの量である。
ある特定の実施形態において、単位剤形は、本明細書に記載されるカルコゲニドのうちのいずれかを含む、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するために、有効量のカルコゲニドを含むか、またはこれからなる。特定の実施形態において、単位剤形のカルコゲニドは、約0.005mg〜約5000mg、約0.05mg〜約5000mg、約0.1mg〜約5000mg、約0.005mg〜約2000mg、約0.05mg〜約2000mg、約0.1mg〜約2000mg、約0.5mg〜約2000mg、約1mg〜約1000mg、約2mg〜約500mg、約5mg〜約500mg、約10mg〜約100mg、約10mg、約20mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約100mg、または約150mgを含む。
ある特定の実施形態において、単位剤形は、有効量のハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方を含むか、またはこれからなり、ハロゲン化合物及びカルコゲニドは、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含み、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するのに有用な量で単位剤形中に存在する。ハロゲン化合物及びカルコゲニドのそれぞれの有効量は、それらが個別に使用される場合と比較して、組み合わせて使用される場合に異なり得ることを理解されたい。
ある特定の実施形態において、単位剤形は、慢性心不全を治療するために使用される、有効量のハロゲン化合物及び活性薬剤の両方を含むか、またはこれらからなり、ハロゲン化合物及び活性薬剤は、それを必要とする対象における慢性心不全等の疾患、状態、または損傷を治療または予防するのに有用な量で単位剤形中に存在する。ハロゲン化合物及びカルコゲニドのそれぞれの有効量は、それらが個別に使用される場合と比較して、組み合わせて使用される場合に異なり得ることを理解されたい。
ある特定の実施形態において、単位剤形は、有効量の、カルコゲニド及びグルタチオンの両方を含む組成物、ハロゲン化合物及びグルタチオンの両方を含む組成物、またはハロゲン化合物、カルコゲニド、及びグルタチオンのすべてを含む組成物を含むか、またはこれらからなり、ハロゲン化合物(存在する場合)及びカルコゲニド(存在する場合)は、本明細書に記載されるもののいずれかを含み、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するのに有用な量で本組成物中に存在する。グルタチオンは、カルコゲニド及び/またはハロゲン化合物の酸化を阻害するのに十分な量で存在し得る。ハロゲン化合物及びカルコゲニドのそれぞれの有効量は、それらが個別に使用される場合と比較して、組み合わせて使用される場合に異なり得ることを理解されたい。ある特定の実施形態において、本組成物は、約15mM〜約500mMのグルタチオンまたは約10mM〜約500mMのグルタチオンを含む。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、経口または非経口投与に好適な剤形で製剤化され得る。加えて、特定の実施形態において、本発明の組成物は、即放性または放出調節製剤の形態であり得る。例えば、ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの製剤は、制御放出を提供するために使用することができ、化合物(複数を含む)の放出は、投与頻度を少なくすることができるか、または所与の活性薬剤の薬物動態または毒性プロファイルを改善するように制御及び調節される。
概して、組成物または単位剤形中に存在する活性化合物の量は、とりわけ、特定の化合物及び製剤、対象の年齢及び状態、治療または予防される損傷、状態、もしくは疾患、投与経路、ならびに投薬頻度により異なる。
投薬頻度はまた、治療または予防される損傷、状態、もしくは疾患、化合物の量もしくは濃度、使用される特定の組成物、投与経路により異なり、年齢、体重、性別、または全体的な健康状態が挙げられるが、これらに限定されない対象特異的な変動を組み込んでもよい。例えば、経口組成物は、手術中または術後の虚血/再灌流損傷を予防するために手術前に投与されてもよく、この場合、任意に即放性または放出調節または放出制御製剤のいずれかで、手術前に1回以上投与されてもよい。その他の状況では、例えば、経口または静脈内組成物は、損傷後または医学的状態(例えば、脳卒中または心臓発作)の発生後に投与され得、その場合、損傷または医学的状態の部位で虚血/再灌流損傷の治療または予防の比較的迅速な開始を達成するために即放性製剤を使用することが好都合であり得る。
ある特定の実施形態において、経口投与に好適な単位剤形は、丸剤、ドレンチ剤(水性もしくは非水性溶液または懸濁液)、ボーラス剤、散剤、顆粒剤、ポリマー放出製剤、舌への適用のためのペースト剤、錠剤、キャプレット、またはカプセル剤の形態である。丸剤は、錠剤及びカプセル剤の出現前に用いられた小型で丸い固体の薬学的経口剤形である。口語の慣用法では、錠剤、カプセル剤、及びキャプレットは、依然として、集合的に「丸剤」として称されることが多い。ある特定の実施形態において、丸剤は、乳鉢及び乳棒において、活性成分をグルコースシロップ等の賦形剤と混合して、ペースト剤を形成することによって作製し、次いで、好適なサイズに分割し、しばしば、糖でコーティングして、より口当たりをよくする。
錠剤は、通常、粉末形態であり、粉末から固体投与量に圧縮または成形される、活性物質及び賦形剤の混合物を含む薬学的剤形である。賦形剤は、希釈剤、結合剤、または造粒剤、流動促進剤(流動助剤)、及び効率的な錠剤化を確実に行うための滑沢剤;消化管において錠剤の分解を促進するための崩壊剤;味覚を強化するための甘味料もしくは香味料;ならびに錠剤を視覚的に引き付けるための顔料等を含むことができる。ポリマーコーティングは、しばしば、錠剤をより円滑かつ容易に飲み込むため、活性成分の放出速度を制御するため、またはより安定させるために適用される。典型的には飲み込まれる錠剤のサイズは、数ミリメートル〜約1センチメートルの範囲に及ぶ。いくつかの錠剤は、カプセル剤の形状であり、「キャプレット」と呼ばれる。
カプセル剤は、通常、乾燥粉末材料もしくは小型ペレット用に使用される硬殻カプセル剤の形態であっても、主に油用及び油中に溶解または懸濁する活性成分用に使用される軟殻カプセル剤の形態であってもよい。ある特定の実施形態において、カプセル剤は、ゼラチンまたは植物性多糖等のゲル化剤の水溶液から作製される。他の材料は、カプセル剤の硬度、着色剤、保存剤、崩壊剤、滑沢剤、及び表面処理を減らすために、グリセリン及び/またはソルビトール等の可塑剤等のゲル化剤溶液に添加することができる。
本明細書に記載される組成物中に存在するハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの投与量レベルは、対象に対する毒性がなく、特定の対象に対して所望の治療効果を達成するのに有効であるハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの量、ハロゲン化合物、カルコゲニド、ならびに投与モードを得るために異なり得る。
ある特定の実施形態において、経口送達用に製剤化される本発明の組成物の単位剤形、例えば、丸剤、錠剤、キャプレット、またはカプセルは、約0.005mg〜約5000mg、約0.05〜約1000mg、約0.5〜約500mg、約0,5〜約250mg、約0.5mg〜約100mg、約1mg〜約500mg、約1〜約250mg、約1mg〜約125mg、約1mg〜約120mg、約1〜約100mg、約2.5mg〜約250mg、約2.5〜約100mg、約0.5mg〜約50mg、約1mg〜約50mg、約2.5mg〜約50mg、約5mg〜約50mg、約10mg〜約50mg、約1〜約15mg、約1〜約10mg、または約1mg、約2mg、約5mg、約10mg、または約15mgのヨウ化物またはNaI等のハロゲン化合物を含むか、またはこれらからなる。単位剤形は、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含み得る。
特定の実施形態において、経口送達用に製剤化される本発明の組成物の単位剤形、例えば、丸剤、錠剤、キャプレット、またはカプセルは、150mg未満、140mg未満、130mg未満、120mg未満、110mg未満、100mg未満、90mg未満、80mg未満、70mg未満、60mg未満、50mg未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、10mg未満、または5mg未満のヨウ化物またはNaI等のハロゲン化合物を含むか、またはこれらからなる。単位剤形は、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含み得る。
ある特定の実施形態において、単位剤形は、カルコゲニドを単独でまたはハロゲン化合物等の別の活性薬剤と組み合わせて含み得る。具体的な実施形態において、カルコゲニド、例えば、硫化物またはセレン化物は、約0.005mg〜約5000mg、約0.05mg〜約5000mg、約0.1mg〜約5000mg、約0.005mg〜約2000mg、約0.05mg〜約2000mg、約0.1mg〜約2000mg、約0.5mg〜約2000mg、約1mg〜約1000mg、約2mg〜約500mg、約5mg〜約500mg、約10mg〜約100mg、約10mg、約20mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約100mg、または約150mgの量で、単位剤形中に存在する。
経口投与に適している単位剤形の特定の実施形態において、単位剤形は、ハロゲン化合物及びカルコゲニドの両方を含む。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物、及び硫化物またはセレン化物等のカルコゲニドの両方は、還元型で存在する。一実施形態において、単位剤形は、ハロゲン化合物、例えばヨウ素を含み、かつカルコゲニドを含む液体溶液を含む内部領域を包囲または封入する固体外層を含む。特定の実施形態において、単位剤形は、ハロゲン化合物及びカルコゲニドを含む内部液体領域を封入する固体外層を含む。ある特定の実施形態において、封入されたカルコゲニドは、固体外層によって酸化から保護される。ある特定の実施形態において、活性薬剤は、分子レベルで混合される。
経口投与に好適な単位剤形の特定の実施形態において、単位剤形は、グルタチオン及びカルコゲニドの両方を含む。ある特定の実施形態において、カルコゲニド、例えば、硫化物またはセレン化物は、還元型で存在する。ある特定の実施形態において、単位剤形は、ハロゲン化合物をさらに含む。ある特定の実施形態において、これらの薬剤は、分子レベルで混合される。
経口投与に好適な単位剤形の特定の実施形態において、単位剤形は、グルタチオン及びハロゲン化合物の両方を含む。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物、例えばヨウ素は、例えば、ヨウ化物またはヨウ素酸塩の還元型で存在する。ある特定の実施形態において、単位剤形は、カルコゲニド化合物をさらに含む。ある特定の実施形態において、これらの薬剤は、分子レベルで混合される。
様々な実施形態において、本発明の組成物及び単位剤形は、所望の送達経路に好適な任意の異なる様式で製剤化され得る。典型的には、製剤は、すべての生理学的に許容される組成物を含む。そのような製剤は、ハロゲン化合物を、単独でまたはカルコゲニド等の別の活性薬剤と組み合わせて、任意の生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組わせて含んでもよい。そのような製剤は、カルコゲニドを、単独でまたはハロゲン化合物等の別の活性薬剤と組み合わせて、任意の生理学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組わせて含んでもよい。ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドは、水、緩衝食塩水、ポリオール、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない、任意の生物学的に許容される媒質を用いる投与用に製剤化され得る。「生物学的に許容される媒質」は、いずれか及びすべての、溶媒、分散媒質等を含み、これらはその薬学的組成物の所望の投与経路に適切なものであり得る。好適な生物学的に許容される媒質及びそれらの製剤は、例えば、最新のRemington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences.Mack Publishing Company,Easton,Pa.,USA 1985)において記載されている。
製剤及びそれらの単位剤形は、ハロゲン化合物及び/または他の活性薬剤の薬学的に使用され得る調製物への処理を促進する賦形剤及び/または補助物質を含む好適な生理学的に許容される担体を含有してもよい。製剤及びそれらの単位剤形はまた、ハロゲン化合物及び/または他の活性薬剤のバイオアベイラビリティを増加させるか、またはそうでなければそれに影響を及ぼす薬剤も含んでもよい。本明細書で使用される、「バイオアベイラビリティ」とは、対象に投与された後の活性薬剤(複数を含む)の効果、可用性、及び持続性を指す。
薬学的に許容される担体は、体の臓器またはその一部に対象の作用薬を担持または輸送することに関与する、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料が挙げられるが、これらに限定されない、任意の薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルであり得る。各担体は、製剤の他の成分に適合し、対象に有害でないものでなければならない。薬学的に許容される担体としての機能を果たし得る材料のいくつかの例としては、糖、例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチ及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース;トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物及び植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油類、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張性生理食塩水;リンガー液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに薬学的製剤に用いられている任意の他の適合性のある物質が挙げられるが、これらに限定されない。
製剤はまた、湿潤剤;乳化剤及び滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム;着色剤;離型剤;コーティング剤;甘味剤、香味剤、及び/または芳香剤;保存剤;ならびに抗酸化剤も含み得る。製剤はまた、ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの吸収を援助するか、またはこれらを安定化させるために、緩衝剤及び/または塩を組み込んでもよい。薬学的組成物の生物学的活性を促進し得る、他の添加剤、例えば、キレート剤、酵素阻害剤等もまた、製剤中に組み込んでもよい。
製剤は、単位剤形中に存在し得、当該技術分野で公知の任意の方法によって調製され得る。担体と組み合わせて、単一剤形を生成し得るハロゲン化合物の量は、概して、治療効果をもたらすハロゲン化合物の量であろう。
経口投与に好適な製剤は、固体の形態(カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、粉剤、糖衣錠、顆粒)で;または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油型もしくは油中水型液体エマルションとして;またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として;またはトローチ剤(ゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアカシア等の不活性基剤を使用する)として;ならびに/またはマウスリンスもしくはマウスウォッシュ等として;またはボーラス、舐剤、もしくはペースト剤としてであってもよい。
固体製剤は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸ニカルシウム;デンプン;ラクトース;スクロース;グルコース;マンニトール;及び/またはケイ酸が挙げられるが、これらに限定されない、薬学的に許容される担体及び増量剤を有してもよい。固体製剤は、結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/またはアカシア;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収加速剤、例えば第四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール;吸収剤、例えばカオリン及びベントナイト粘土;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物;ならびに着色剤を含むがこれらに限定されない、さらなる成分を含み得る。製剤はまた、特にハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドがカプセル剤、錠剤、または丸剤の形態である場合に、緩衝剤も含み得る。
固形製剤はまた、ラクトースまたは乳糖等の賦形剤及び高分子量ポリエチレングリコール等を使用するソフト及びハード充填ゼラチンカプセル用の充填剤も含み得る。
ドラジェ剤、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤等の本明細書に記載される組成物の固体製剤は、任意に、割線を刻まれるかまたはコーティング及びシェル、例えば腸溶コーティング及びその他のコーティングを用いて調製され得る。固形剤形はまた、薬剤薬剤(複数を含む)の持続または制御放出を提供するように製剤化され得る。それ故に、固体製剤は、様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはその他のポリマーマトリクス、リポソーム、及び/またはマイクロスフィアを含むがこれらに限定されない、活性薬剤(複数を含む)の所望の放出プロファイルを提供することができる任意の材料を含み得る。の製剤はまた、包埋剤を含むことによっても製剤化され得る。使用することができる包埋剤の例には、ポリマー物質及びワックスが含まれるが、これらに限定されない。ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドはまた、適当な場合、上記の賦形剤のうちの1つ以上と共に、マイクロカプセル化形態であり得る。
ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの経口投与用の液体投薬製剤には、薬学的に許容されるエマルション剤、マイクロエマルション剤、溶剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が含まれ得る。ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドに加えて、液体投薬製剤は、水またはその他の溶媒;可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール;油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油);グリセロール;テトラヒドロフリルアルコール;ポリエチレングリコール;ならびにソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含むが、これらに限定されない、当技術分野で一般に使用されている不活性希釈剤を含み得る。
本発明は、非経口投与、例えば、静脈内投与または注入による投与用に製剤化される安定した液体薬学的組成物をさらに含む。ある特定の実施形態において、安定した液体薬学的組成物は、還元型のカルコゲニド及び/または還元型のハロゲン化合物を含む。特定の実施形態において、本組成物は、グルタチオンをさらに含む。他の実施形態において、非経口投与用に製剤化される安定した液体薬学的組成物は、甲状腺腫誘発物質、または甲状腺ホルモンの合成、活性、または取り込みを阻害するまたは妨げる化合物を含む。特定の実施形態において、非経口投与用に製剤化される安定した液体薬学的組成物は、カルコゲニド、例えばセレン化物、及びグルタチオンを含む。特定の実施形態において、非経口投与用に製剤化される安定した液体薬学的組成物は、ハロゲン化合物、例えばヨウ化物、及びグルタチオンを含む。特定の実施形態において、非経口投与用に製剤化される安定した液体薬学的組成物は、セレン化物、ヨウ化物、及びグルタチオンを含む。セレン化物、ヨウ化物、及びグルタチオンは、本明細書に記載される濃度で、または本明細書に記載される量を対象に送達するのに十分なもしくは適切な量で存在し得る。組成物中の各活性薬剤の濃度は、それを必要とする対象に送達されるべき所望の量の各活性薬剤に基づいて容易に決定され得る。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、カルコゲニド、ハロゲン化合物、及びグルタチオンを含む。ある特定の実施形態において、カルコゲニドは、硫化物またはセレン化物(またはその還元型)であり、ハロゲン化合物は、ヨウ化物またはヨウ素酸塩である。特定の実施形態において、カルコゲニドは、セレン化物である。特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ化物である。それ故に、一実施形態において、本発明の組成物は、セレン化物、ヨウ化物、及びグルタチオンを含む。本組成物は、静脈内投与または注入による投与用に製剤化される。本組成物は、安定した組成物として、静脈内投与または注入による投与用に製剤化され得る。特定の実施形態において、本組成物は、約1mM〜約1Mまたは約10mM〜約500mMの濃度でセレン化物、約1mM〜約1Mまたは約10mM〜約500mMの濃度でヨウ化物、及び約1mM〜約500mMまたは約10mM〜約500mMの濃度でグルタチオンを含む。特定の実施形態において、本組成物は、酸素不透過性容器内に含まれ、それは、窒素またはアルゴンガス下であり得る。特定の実施形態において、容器内に存在する組成物の量は、それを必要とする対象への投与のために好適な投与量を含むか、またはこれからなる単一の投与量である。
ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドの非経口用の製剤は、1つ以上の薬学的に許容される等張水溶液もしくは非水溶液、分散物、懸濁物、もしくはエマルション、または使用直前に注射可能な滅菌溶液または分散物に再構成され得る粉末と組み合わせて、ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドを含み得る。非経口用製剤は、抗酸化剤;意図した対象の血液との等張性をその製剤に与える緩衝剤もしくは溶質;静菌剤;懸濁化剤;または増粘剤を含み得る。
ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドを含む注射可能なデポー製剤は、生分解性ポリマー中にハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドのマイクロカプセル化マトリクスを形成することによって作製され得る。生分解性ポリマーの例には、ポリラクチド−ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(無水物)が含まれるが、これらに限定されない。ポリマーに対する活性薬剤の比率及び用いられる特定のポリマーの性質が、活性薬剤の放出の速度に影響を及ぼし得る。注射可能なデポー製剤はまた、薬物をリポソームまたはマイクロエマルション中に捕捉することによっても調製され得る。
本発明は、本発明の組成物または単位剤形を含むキットをさらに含む。ある特定の実施形態において、そのようなキットは、本発明の組成物を保存するために1つ以上の容器を含む。一実施形態において、本組成物は、不活性または希ガス下、容器内に保存され、この容器は、密閉され、酸素不透過性光保護容器(例えば、アンバーバイアル)を有する。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、担体を含む。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、担体と結合しており、他の実施形態において、本組成物中に存在するハロゲン化合物及び1つ以上のさらなる活性薬剤の両方もまた、担体と結合している。ハロゲン化合物及び1つ以上のさらなる活性薬剤は、共有結合または非共有結合的に結合している。ある特定の実施形態において、担体は、例えば、生分解性または不活性であり得る生体適合担体である。ある特定の実施形態において、担体は、例えばアルブミン、例えばヒトアルブミン等のポリペプチドである。本発明に従って使用され得る他の担体の例としては、血漿、血清、アルファ−2−マクログロブリン、及び免疫グロブリンが挙げられるが、これらに限定されない。
組成物の調製方法
ヨウ化物及び臭化物等の還元型のハロゲン化合物を含むハロゲン化合物を含む組成物は、既知であり利用可能な任意の手段によって調製され得る。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、水、またはNaCl緩衝液等の好適な緩衝液中に溶解される。
ある特定のカルコゲニド化合物(例えば、硫化水素、セレン化水素)は、酸素と化学的に反応する能力があり、それらの酸化及び化学変換を引き起こすため、酸素の存在下で安定しない。したがって、その溶液への陰圧の印加(真空脱気(vacuum degasing))または溶液を試薬と接触させ、酸素を結合または「キレート化」させて溶液から酸素を効果的に除去すること等を含むが、これらに限定されない、当該技術分野で公知の方法を用いて、酸素を、これらの方法において使用される溶液から除去し得る。概して、本発明に従って使用される組成物を調製する方法は、製造及び保存の各態様において、酸素含有量を制限することを含み得る。
国際出願公開第WO2008/043081号は、カルコゲニドまたはその塩を含む安定した液体組成物であって、還元型のカルコゲニドを含むものを含む、組成物を調製する方法が記載されている。
米国仮出願第61/159,311号はまた、還元型のカルコゲニドを含む組成物を調製する方法も記載されており、例えば、セレンまたは硫黄を含むカルコゲニドは、−2価の状態、例えば、セレン化物または硫化物である。
本明細書に記載される安定した組成物を生成する方法のうちのいずれかの特定の実施形態において、還元型のカルコゲニドは、マイナス2の酸化またはマイナス2価の状態である。ある特定の実施形態において、還元型のカルコゲニドは、H2Se、Na2Se、NaHSe、またはHSe−アニオンである。
一実施形態において、還元型のカルコゲニドを含む組成物は、還元剤の大部分の酸化及びカルコゲンの大部分の還元を可能にするのに十分な条件下及び時間期間中、酸素減少環境において、カルコゲン、またはカルコゲンの酸、及び還元剤を混合することにより生成される。ある特定の実施形態において、この条件は、約室温の温度を含む。特定の実施形態において、この時間期間は、約1時間、約2時間、約3時間、または一晩、例えば約12時間である。特定の実施形態において、この時間期間は、混合溶液が視覚的に透明に見えるか、または発泡(水と反応するホウ化水素からの水素の生成による)が停止するか、または観察されなくなるときに、完了または終了する。
特定の実施形態において、カルコゲンは、硫黄またはセレンであり、還元型のカルコゲニドは、−2の酸化状態で硫黄またはセレンを含む。ある特定の実施形態において、カルコゲンの酸は、亜セレン酸または亜セレン酸ナトリウムまたはセレン元素であり、還元型のカルコゲニドは、−2の酸化状態で硫黄またはセレンを含む。
特定の実施形態において、還元剤は、約0.4V以下の還元電位(Eo)を有する。一実施形態において、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)である。ある特定の実施形態において、還元剤対カルコゲン、またはカルコゲンの酸のモル比は、約5:1〜約0.5:1、または約3:1〜約1:1である。一実施形態において、還元剤対カルコゲン、またはカルコゲンの酸のモル比は、約2:1である。
特定の実施形態において、還元剤は水素化ホウ素ナトリウムであり、該カルコゲンは、硫黄またはセレンであり、該カルコゲンの酸は亜セレン酸である。1つのある特定の実施形態において、還元剤は水素化ホウ素ナトリウムであり、カルコゲンはセレンであり、水素化ホウ素ナトリウム対セレンのモル比は、約2:1である。特定の実施形態において、セレンは、約1mM〜約10M、または約1mM〜1M(79mg/L〜79g/L)の量で存在する。特定の実施形態において、水素化ホウ素ナトリウムは、1M水溶液中に存在する。
ある特定の実施形態において、この方法は、酸素減少または無酸素環境で行われる。ある特定の実施形態において、この方法は、不活性ガスまたは希ガス下で行われる。ある特定の実施形態において、この方法は、窒素下で行われる。例えば、窒素は、該酸素減少環境に注入されてもよい。ある特定の実施形態において、窒素は、約100cc/分の速度で注入される。特定の実施形態において、酸素減少環境は、無酸素環境を有する容器である。特定の実施形態において、この容器は、シリンジ、静脈内バッグ、チューブ、またはバイアルである。ある特定の実施形態において、この容器は、入口の閉鎖可能なポートまたは再密封可能なポートを備える。一実施形態において、この容器は、ラバーセプタムを備える密封可能なチューブ、例えば、Hungateチューブである。
この方法の特定の実施形態において、この容器、例えば、チューブの中への窒素の注入及びチューブからの取り出しは、容器のセプタムを貫通する2本の針を介して行われ、2本の針のうちの一方が窒素をチューブの中に運ぶためのポートとして使用され、2本の針のうちの第2の針が窒素をチューブから取り出すために使用される。
特定の実施形態において、この方法は、該時間期間の後で混合物を加熱することをさらに含む。特定の実施形態において、この加熱はいかなる発泡も観察されなくなるまで継続される。これらの方法はまた、加熱後の混合物を冷却することも含み得る。冷却は、例えば、混合物を氷上に配置することによって行われ得る。ある特定の実施形態において、冷却は、混合溶液からホウ酸ナトリウムが沈殿するまで継続される。
これらの方法はまた、混合溶液を遠心分離して沈殿したホウ酸ナトリウムから上清を分離することと、該上清を除去することと、をさらに含み得、上清が、該還元されたカルコゲニドを含む該安定した組成物を含む。
特定の実施形態において、これらの方法は、混合物を酸で酸性化することであって、該酸が還元性であるが揮発性でない、酸性化することと、セレン化水素ガスまたは硫化水素ガスを溶液を通して発泡することと、を含み、この溶液は3.9より大きいpHを有する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、非揮発性酸(例えば、リン酸)が、溶液中に望ましくない非揮発性化合物を有し得る還元されたカルコゲニドの溶液に添加される場合、これはpHをカルコゲニドのpKよりも低い値に低下させ、それ故に、気体状(例えば、H2SまたはH2Se)を生成すると考えられる。この気体状を、混合物を通して窒素を通過させることによって溶液から噴出させ、カルコゲニドをガスではないイオン状にするpKを超えるpHを有する第2の溶液に運ぶことが可能である(すなわち、カルコゲニドをトラップする)。
ある特定の実施形態において、酸は亜リン酸であり、該溶液はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)である。これにより、セレン化水素または硫化水素ガスがベッセル中にトラップされ得る。
別の実施形態において、本発明は、還元型のカルコゲニドを含む組成物を生成する別の方法を含み、この方法は、鉱油またはテトラヒドロフラン(THF)を含む溶液中でセレン元素(Se)または硫黄元素(S)及び水素化ナトリウムを混合し、それによって、セレン化水素ナトリウムまたは硫化ナトリウムを含む安定した組成物を生成することを含む。ある特定の実施形態において、この方法はまた、水を混合溶液に添加し、それによって、水素化ナトリウムを除去することも含む。溶液が鉱油を含む特定の実施形態において、この方法は、混合溶液の水相を除去することをさらに含み、還元されたカルコゲニドは水相中に存在する。溶液がTHFを含む特定の実施形態において、この方法は、該混合溶液を約70℃で煮沸させることによって該THFを除去することをさらに含む。
様々な実施形態において、本発明の組成物の調製方法は、組成物のpHを調整することをさらに含む。ある特定の実施形態において、pHは、塩化水素、二酸化炭素、窒素、または硫化水素のうちの1つ以上の添加によって調整される。別の実施形態において、pHは、窒素、二酸化炭素、セレン化水素、または硫化水素、またはこれらの任意の組み合わせを、組成物に溶解することによって調整される。
ある特定の実施形態において、一旦生成されると、様々な実施形態において、組成物は、不透過性容器、例えば、酸素不透過性容器の中で保存される。これは、還元型のハロゲン化合物またはカルコゲニドの酸化を防ぐために特に望ましい。不透過性容器は、当業者に公知であり、ガス不透過性構成材料を含む「静脈内バッグ」、または密閉ガラスバイアルが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、不透過性容器は、10−10[cm3(STP)/cm/(cm2+s+Pa)]未満の酸素透過係数を有する酸素不透過性材料を含み、式中、STP=標準温度及び圧力(25℃及び1気圧);PA=パスカル、及びs=秒である。例えば、容器の壁は、酸素不透過性ポリマーの層を含んでもよい。例示的な酸素不透過性ポリマーとしては、シリコーンゴム、天然ゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(APET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ナイロン6(Ny6)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリアセトニトリル(PAN)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、及びポリビニルアルコール(PVA)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、該ポリマーの酸素透過係数は、10−10[cm3(STP)/cm/(cm2+s+Pa)]未満である。特定の実施形態において、容器の壁は、1つ以上の酸素不透過性ポリマーの複数の層を含む。
さらなる実施形態において、この容器は、1つ以上の再密封可能なまたは閉鎖可能な入口のポートを備える。ある特定の実施形態において、この容器は、2つ以上の再密封可能なまたは閉鎖可能な入口のポートを備える。上述のように、特定の実施形態において、この容器は、ボトル、バッグ、チューブ、バイアル、またはシリンジである。ある特定の実施形態において、この容器は、静脈内バッグまたはシリンジである。特定の実施形態において、この容器は、ラバーセプタムを備える密封可能なチューブ、例えば、Hungateチューブである。
関連実施形態において、このデバイスは、再密封可能なまたは閉鎖可能な入口のポートを通して、容器に連結された送達手段をさらに備える。特定の実施形態において、この送達手段は、容器から溶液を、それを必要とする対象に静脈内送達するように構成されている。例えば、この送達手段は、針またはカニューレであってもよい。ある特定の実施形態において、この送達手段は、酸素減少もしくは無酸素環境を含むか、または酸素減少もしくは無酸素環境下で存在する。
本発明の保存または送達デバイスの特定の実施形態において、化合物は、ハロゲン化合物またはカルコゲニドである。ある特定の実施形態において、化合物は、還元型のハロゲン化合物またはカルコゲニド、例えば、ヨウ化物、臭化物、NaI、KI、HI、CaI、AGI、H2Se、Na2Se、NaHSe、もしくはHSe−アニオン、または本明細書に記載されるその他である。ある特定の実施形態において、このデバイスは、本発明の組成物を含む。
気密保存容器中で空気への曝露を防ぐために、窒素またはアルゴン等の不活性ガスまたは希ガスが、閉鎖前に本発明の組成物を含有する容器に導入されてもよい。
他の関連実施形態において、組成物は、耐光容器もしくは光保護容器またはアンバーバイアル等のバイアルの中で保存される。この組成物は、ガラスバイアル中にパッケージ化され得る。組成物の酸化的分解を防ぐ/遅延させるために、不活性大気、例えば窒素中で、わずかに過度の圧力まで充填されてもよく、光の進入を防ぐような形態で含有され、それによって、この組成物の光化学的分解を防いでもよい。これは、アンバーバイアルを使用して達成され得る。多くの静脈内溶液が酸素に対して感受性があるので、溶液が無酸素環境において保存されることを可能にするさらなる容器系が知られている。例えば、充填及び密封プロセスの間に酸素がパージされるガラス容器が使用され得る。別の実施形態において、軟質プラスチック容器が利用可能であり、これは、酸素に対して密封するための上包に封入されてもよい。基本的に、酸素が安定した組成物と相互作用することを防ぐ任意の容器が使用され得る(例えば、米国特許第6,458,758号を参照のこと)。一実施形態において、この容器は、1つ以上の酸素スカベンジャーを含む。例えば、酸素捕捉性組成物は、酸素透過に対する障壁として機能する手段を支持または保持する生成物の内部表面にコーティングまたはライニングとして適用することができる(例えば、米国特許第5,492,742号を参照のこと)。
特定の実施形態において、容器またはバイアルは、本発明の組成物の単位用量を含み得る。ある特定の実施形態において、単位剤形は、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するために、有効量の組成物を含むか、またはこれからなる。
特定の実施形態において、本発明は、ハロゲン化合物、例えば、ヨウ化物または臭化物の予混合液体組成物を含む、生理食塩水バッグ等の容器を含み、予混合液体組成物の量は、本明細書に記載されるもののうちのいずれか、及び1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するために有用な用量を構成する。特定の実施形態において、液体組成物は、滅菌である。
特定の実施形態において、本発明は、ハロゲン化合物、例えば、ヨウ化物または臭化物の乾燥組成物を含む、バイアル等の容器を含み、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む、乾燥組成物の量は、それを必要とする対象における疾患、状態、または損傷を治療または予防するために有用な用量を構成する。乾燥組成物は、それを必要とする対象に送達する前に、例えば、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤、例えば、滅菌水を用いて再構成され得る。
ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物及び慢性心不全の治療のために使用される活性薬剤を含む組成物は、還元型のハロゲン化合物、例えばヨウ化物と、慢性心不全の治療のために使用される活性薬剤とを混合することによって調製され得る。ある特定の実施形態において、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体もまた、混合される。
ハロゲン化合物及び他の組成物の使用方法
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、生体材料、例えば対象、例えばヒト等の哺乳動物における損傷または疾患を治療または予防するために使用される。特定の実施形態において、本発明の組成物は、虚血もしくは低酸素状態、または再灌流への曝露前、その間、またはその後に対象(または生体材料)を処置するために使用される。生体材料は、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで処置され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物は、心臓発作または心臓発作もしくは脳卒中から生じる梗塞によって引き起こされる損傷を処置または予防するために使用される。特定の実施形態において、本発明の組成物は、細胞、組織、または臓器移植によって生じる損傷を処置または予防するために使用される。様々な疾患、損傷、及び状態が本明細書に記載され、これらのすべてが、本発明の組成物、例えば、ヨウ化物等のハロゲン化合物を含む組成物、または硫化物もしくはセレン化物等のカルコゲニドを含む組成物によって処置され得る。特定の実施形態において、本組成物は、その還元状態でハロゲン化合物またはカルコゲニドを維持するように製剤化された安定した製剤である。
ある特定の実施形態において、本発明は、生体材料に、有効量の本発明の組成物を提供することを含む、それを必要とする生体材料における疾患または損傷を治療または予防する方法を含む。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。特定の実施形態において、ハロゲン化物またはハロゲン化合物は、ヨウ素、例えば、ヨウ化物またはヨウ素酸塩を含む。特定の実施形態において、カルコゲニドは、硫黄またはセレン、例えば、硫化物またはセレン化物を含む。特定の実施形態において、本組成物はまた、グルタチオンまたは別の還元剤も含む。
一実施形態において、本発明の組成物は、疾患、損傷、外傷、または救命救急処置を受けたことがある、それを受けている、またはその感受性がある対象を治療するために使用される。それ故に、本発明は、対象に有効量の本発明の組成物を提供することを含む、救命救急処置関連の損傷を含む、それを必要とする対象における疾患、損傷、または外傷を治療または予防する方法を含む。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。特定の実施形態において、損傷は、火傷、創傷、切断術、銃創、もしくは外科的外傷、腹部手術、前立腺手術等の外部傷害、例えば、循環の急激な低下を生じる、敗血症ショック、脳卒中、もしくは心停止、心臓発作、慢性心不全等の内部傷害、または寒さもしくは放射線への曝露等の非侵襲性ストレスによる循環の低下によって引き起こされ得る。細胞レベルでは、損傷は、多くの場合、細胞、組織、及び/または臓器の低酸化症への曝露を生じ、それによって、プログラム細胞死、または「アポトーシス」の誘導を生じる。特定の実施形態において、損傷は、低酸素または虚血事象の後での細胞、組織、臓器、または哺乳動物への酸素の再灌流から生じる。特定の実施形態において、ハロゲン化物及び/またはカルコゲニドのいずれかまたは両方に関連するものを含む本発明の組成物及び方法は、外科的癒着、例えば、腹部、骨盤、及び心臓の外科的癒着を治療及び予防するために使用される。ある特定の実施形態において、癒着は、組織または臓器の2つの部分を一緒に結合する帯状に連なる瘢痕組織である。癒着は、体の修復機構が、組織擾乱、例えば、外科手術、感染症、外傷、または放射線に応答するときに発生し得る。癒着は、どこでも生じ得るが、一般的な位置は、腹部、骨盤、及び心臓内である。ある特定の実施形態において、ハロゲン化物及び/またはカルコゲニドのいずれかまたは両方に関連するものを含む本発明の組成物及び方法は、幹細胞移植関連の損傷を治療または予防するため、ならびに/あるいは例えば、対象に導入される同種もしくは自家幹細胞の幹細胞移植を促進するまたは幹細胞拒絶を低減するために使用される。
一実施形態において、本発明は、細胞、組織、臓器、手足、さらには全生物を、損傷または疾患の有害作用からそれらを保護する方法として、有効量の本発明の組成物と接触させることを企図する。本発明はまた、遅延した創傷治癒及び組織再生をもたらし得る生物学的過程の阻害/予防/遅延によって組織再生及び創傷治癒を誘導するための方法も企図する。ある特定の実施形態において、本発明は、生体材料に有効量の本発明の組成物を提供することを含む、生体材料を予防する、またはそれを必要とする生体材料への損傷を予防もしくは阻害する方法を含む。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。この文脈において、手足または生物への実質的な創傷がある状況では、治癒及び再生を阻害する生物学的過程を管理することによる生体物質と本発明の組成物との接触は、創傷治癒及び組織再生に役立つ。創傷治癒に加えて、本発明の方法は、心停止または脳卒中等の外傷、または出血性ショックを予防または治療することが企図され得る。本発明は、例えば、開胸術(thoroacotomy)、開腹術、及び脾臓処理または心臓手術、動脈瘤、外科手術、脳外科手術等の緊急外科的処置からの外傷のリスクに関して重要性を有する。
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、生存率を増強する、または虚血損傷を阻害/予防する、または例えば心停止もしくは脳卒中に起因する再灌流損傷を阻害/予防するように企図され得る。したがって、一実施形態において、本発明は、例えば心停止もしくは脳卒中に起因する再灌流損傷を阻害/予防するために、虚血損傷であると診断されるもしくはそのリスクが高い生体材料に、本発明の組成物、例えば、ハロゲン化合物を含み、任意にカルコゲニド等の1つ以上のさらなる活性薬剤と組み合わせた組成物を提供することによって、生存率を増強する、または虚血もしくは再灌流損傷を低減する方法を含む。これは、例えば、心停止または脳卒中に罹患しているまたはそのリスクが高い対象において、心筋梗塞、心停止、または脳卒中の前、その後、またはその前及び後の両方で、有効量の本発明の組成物を対象に提供することを含み得る。
「虚血」とは、組織への血液供給の制限を指し、これにより、細胞代謝において必要とされる酸素及びグルコースの欠乏を引き起こす。それは、血管での問題により引き起こされ得、その結果として罹患組織への傷害をもたらす。ある特定の実施形態において、それは、血管収縮、血栓症、心筋梗塞、脳卒中、または塞栓症に起因する。本明細書で使用される「再灌流損傷」とは、虚血または酸素不足の期間後に、細胞に戻ってくる血液に起因する組織傷害を指す。虚血期間中血液からの酸素及び栄養素の欠如は、循環の回復が酸化ストレスの誘発を通して炎症及び酸化的損傷を生じる状態を作り出すことであると考えられている。ある特定の実施形態において、本方法は、安定した組成物による治療を行わない場合の梗塞サイズと比較して、梗塞サイズの低減を生じる。
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、虚血、低酸素、または再灌流損傷もしくは事象または疾患傷害前に、本発明の組成物を用いて、生体材料、例えば対象を事前に治療することを含む。これらの方法は、虚血または低酸化症を引き起こす可能性が高い損傷または疾患が前もって予定されるまたは選出される、あるいはそれらを生じる可能性があることが前もって予測される場合に使用され得る。例としては、自発的にまたは処置の結果として血液喪失が起こり得る大手術、血液の酸素化に障害が起き得るまたは血液の血管送達が低減し得る(冠動脈バイパス移植術(CABG)の手術の設定等の場合)心肺バイパス法、または細胞、組織、もしくは臓器移植を必要とする受容者への輸送及び移植のためのドナーの細胞、組織、もしくは臓器を取り出す前の細胞、組織、もしくは臓器ドナー(またはドナー細胞、組織、もしくは臓器)の処置が挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、ドナーの細胞、組織、もしくは臓器は、移植片または移植受容者に対して自家または異種である。例としては、損傷または疾患の進行のリスクが固有である医学的状態(例えば、不安定な狭心症、血管形成術後、動脈瘤の出血、出血性脳卒中、大きな外傷もしくは血液喪失後の状況において)、または医学的診断テストを使用してリスクが診断できる医学的状態が挙げられるが、これらに限定されない。
ある特定の実施形態において、本発明の化合物、組成物、及び方法は、以下の治療のうちのいずれかに関連するまたはそれらに起因する以下の疾患もしくは状態、または損傷のうちのいずれかを治療、阻害、低減、または予防するために使用される:移植(例えば、腎臓移植、死体腎臓移植、肝臓移植、腸移植、肺移植、もしくは組織片移植);腸閉塞(例えば、蠕動不全及び術後腸閉塞);移植片宿主病;放射線誘発肺損傷;人工呼吸器誘発肺損傷;白内障(例えば、初発白内障、老人性白内障、または(ro)初発老人性白内障);ハンタ肺ウイルス(HPV);エボラウイルス;サルモネラ感染症、細菌感染症;出生時虚血(例えば、低酸素性虚血性脳症(HIE)もしくは出生時仮死);末梢血管疾患;永久虚血;ST部上昇心筋梗塞(STEMI);聴覚消失(例えば、大騒音による聴覚消失もしくは急性聴覚消失);てんかん重積症(てんかん)、上腸間膜動脈虚血/再灌流損傷(例えば、上腸間膜動脈閉塞後の虚血−再灌流損傷);鎌状赤血球貧血もしくは鎌状赤血球クリーゼ;または造影剤誘発性腎症。ある特定の実施形態において、これらの疾患、障害、または損傷のうちのいずれは、カルコゲニドを含む組成物またはハロゲン化物を含む組成物で治療される。特定の実施形態において、カルコゲニドを含む組成物は、例えば、還元型の硫化物またはセレン化物を含み、これには、還元型の硫化物またはセレン化物を維持するもの等の本明細書に記載される組成物が含まれる。
ある特定の実施形態において、本発明は、治療または予防を必要とする対象における放射線造影剤誘発性腎臓損傷を治療または予防することを含み、これには、対象に有効量のハロゲン(例えば、ヨウ化物)またはカルコゲニド(例えば、硫化物またはセレン化物)を含む組成物を提供することが含まれる。放射線造影剤誘発性腎臓損傷(造影剤誘発性腎症)は、深刻な臨床上の問題を表し、患者の死亡率の増加及びより長期の入院と関連している。冠状動脈、末梢動脈、または腎臓の画像化と併用して行われる放射線造影剤投与は、一般的な医学的な介入である。しかしながら、放射線造影剤投与は、ある特定のリスク因子を有する患者の一部において深刻な腎臓損傷を引き起こす場合がある。例えば、高齢、かつ基礎疾患(例えば、糖尿病またはアテローム性動脈硬化症)を有する、及び/または腎機能において境界型機能障害を有する患者は、特に、腎臓損傷の傾向がある。一実施形態において、放射線造影剤は、腎臓の画像診断前またはその間に投与される。別の例示的な実施形態において、放射線造影剤は、心臓血管の画像診断前またはその間に投与される。本方法の別の例示的な実施形態において、放射線造影剤は、ヨウ化放射線造影剤である。本方法の別の例示的な実施形態において、対象(例えば、それを必要とするヒト患者)は、放射線造影剤の投与前に腎機能障害の前歴を有する。本方法の別の例示的な実施形態において、ヒトは、120μmol/L以上のベースラインのクレアチニンレベル、1.73m2当たり60mL/分未満の糸球体濾過速度、及び/または60mL/分未満のクレアチニンクリアランスを有する。本方法の別の例示的な実施形態において、ヒトは、1または2型真性糖尿病、アテローム性動脈硬化症、鬱血性心不全、動脈内バルーンポンプ、貧血、80mM Hg未満の収縮期血圧、50歳を超える年齢、1.73m2当たり60mL/分未満の糸球体濾過速度、及び血管内容量から選択されるさらなる状態のうちの1つを有する。本方法の別の例示的な実施形態において、放射線造影剤誘発性腎臓損傷は、放射線造影剤誘発性腎症または急性腎機能障害である。
それ故に、ある特定の実施形態において、本発明は、生体材料(例えば、対象)における本明細書に記載される障害または処置(prcedures)のうちのいずれかを治療、予防、低減、阻害する(またはそれと関連する損傷を低減もしくは阻害する)方法を含み、これには、有効量の本明細書に記載される化合物または組成物を生体材料(例えば、対象)に提供することが含まれる。
ある特定の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象における慢性心不全を治療、予防、低減、阻害する方法を含み、これには、有効量の本明細書に記載される化合物または組成物を対象(例えば、対象)に提供することが含まれる。特定の実施形態において、対象は、慢性心不全、例えば、収縮期心不全に罹患しているまたはその感受性があると診断されている。CHFは、症状の病歴及び心エコー検査による確認のある検診に基づいて診断され得る。加えて、血液検査、心電図記録法、及び胸部X線撮影法は、根本原因を判定するのに有用であり得る。特定の実施形態において、対象は、左心室機能障害または収縮期心不全による慢性心不全であると診断されている。特定の実施形態において、対象は、例えば、治療開始の1日、1週間、1カ月、6カ月、1年、または5年以内に、心臓発作を経験したことがある。ある特定の実施形態において、対象に、ヨウ素含有ハロゲン等のハロゲン、例えば、ヨウ化物が提供される。特定の実施形態において、対象に、還元型のハロゲン化合物、例えば、還元型のヨウ素、例えば、ヨウ化物またはヨージエート、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む薬学的組成物が提供される。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、グルタチオンをさらに含む。ある特定の実施形態において、グルタチオンは、ハロゲンまたはハロゲン化合物をその還元状態で維持するのに十分な量で存在する。特定の実施形態において、対象に、本明細書に記載される投与経路のうちのいずれかを介して、組成物のうちのいずれか、例えば、本明細書に記載される薬学的組成物または単位剤形が提供される。特定の実施形態において、対象に、ハロゲン化合物が経口または静脈内に提供される。
CHF、例えば、収縮期心不全を治療または予防する方法の特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、CHFを治療するために使用される1つ以上の他の活性薬剤と組み合わせて、対象に提供される。ある特定の実施形態において、対象に、還元型のハロゲン化合物、例えば、還元型のヨウ素、例えば、ヨウ化物またはヨージエート、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む有効量の第1の薬学的組成物、ならびにCHFを治療するために使用される別の活性薬剤を含む有効量の第2の薬学的組成物が提供される。組み合わせて使用される場合の各薬学的組成物の有効量は、それらが単独で使用される場合の1つまたは両方の組成物の有効量よりも少ない場合があることを理解されたい。ある特定の実施形態において、2つの薬学的組成物は、CHFを治療または予防するように相乗的に作用する。
ある特定の実施形態において、CHF、例えば左心室機能傷害によるCHFを治療するために使用される別の活性薬剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはベータ遮断薬である。他の実施形態において、別の活性薬剤は、アルドステロン拮抗薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、またはヒドラジン硝酸塩である。さらなる実施形態において、別の活性薬剤は、抗凝血剤、抗血小板療法、アンジオテンシンII受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿薬、血管拡張剤、またはスタチンである。特定の実施形態において、生体材料、例えば、哺乳動物の細胞、組織、臓器、または哺乳動物は、虚血、低酸素、または再灌流事象または損傷前に、本発明の組成物、例えば、ハロゲン化合物を含む組成物で事前処置される。特定の実施形態において、生体材料を、虚血、低酸素、または再灌流事象または損傷前またはその直前に、少なくともまたは約1時間、少なくともまたは約2時間、少なくともまたは約4時間、少なくともまたは約6時間、少なくともまたは約8時間、少なくともまたは約10時間、少なくともまたは約12時間、少なくともまたは約16時間、少なくともまたは約20時間、少なくともまたは約24時間、少なくともまたは約36時間、少なくともまたは約48時間、少なくともまたは約3日間、少なくともまたは約4日間、少なくともまたは約5日間、少なくともまたは約1週間、少なくともまたは約2週間、少なくともまたは約1カ月間、1時間〜1週間、1時間〜48時間、1時間〜24時間、2時間〜1週間、2時間〜48時間、2時間〜24時間、4時間〜1週間、4時間〜48時間、4時間〜24時間、12時間〜1週間、12時間〜48時間、12時間〜24時間、24時間〜1週間、または24時間〜48時間、本組成物と接触させる。ある特定の実施形態において、虚血、低酸素、または再灌流事象または損傷の治療後及びその直前の時間期間であり、この間、生体物質は、例えば、約5分間、約10分間、約20分間、約30分間、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、または約24時間の時間期間、本発明の組成物と接触しない。特定の実施形態において、生体材料、例えば、細胞、組織、または臓器は、本発明の組成物で治療されている間または治療後に、移植片化または移植される。特定の実施形態において、移植片化または移植された生体材料は、移植受容者に対して自家移植または異種移植である。
関連して、本発明のさらなる実施形態は、生存率を増強すること、及び適切な血液供給の欠如から等の、細胞または組織に対する血液喪失または他の酸素取り込みの欠如からの不可逆的組織傷害を予防することに関係がある。ある特定の実施形態において、本発明は、生存率を増強する、またはそれを必要とする生体材料における細胞または組織に対する血液喪失または他の酸素取り込みの欠如からの組織傷害を予防する方法を含み、これには、生体材料に有効量の本発明の組成物を提供することが含まれる。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。適切な血液供給の欠如は、例えば、実際の血液喪失の結果であり得るか、または細胞もしくは組織への血流の遮断を引き起こすか、生物体において局所的もしくは全体的に血圧を低下させるか、血液中に運ばれる酸素の量を低減するか、または血液中の酸素を運ぶ細胞の数を低減する、状態または疾患からであり得る。関係し得る状態及び疾患としては、凝血及び塞栓症、嚢胞、増殖、腫瘍、貧血(鎌状赤血球貧血を含む)、血友病、他の血液凝固疾患(例えば、フォンヴィレブランド病またはITP)、及びアテローム性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。そのような状態及び疾患はまた、損傷、疾患、または状態により、生物体の中の細胞または組織について、本質的に低酸素または無酸素状態を作り出すものも含まれる。
一実施形態において、本発明は、出血性ショックを受けているか、または再灌流を受けている生体材料(例えば、哺乳動物または哺乳動物内の組織もしくは臓器)に対して、生存率を増強し、または損傷もしくは傷害を低減もしくは予防するための方法及び組成物を提供し、これには、出血性ショックのリスクがあるかまたはその状態にある生体材料を、実際にはできるだけ早く、例えば、損傷から1時間以内に、有効量の本発明の組成物と接触させることが含まれる。この方法により、損傷の最初の原因が対処可能である、制御された環境(例えば、外科手術)に対象を移動させることが可能となり、次いで、患者は制御された様式で正常な昨日まで戻すことができる。この適応のために、「黄金時間」と称される損傷後の最初の1時間は、首尾よい転帰のために重要である。
様々な他の実施形態において、本発明の方法及び組成物は、虚血、低酸化症、または再灌流と関連する神経変性疾患の治療または予防において、低体温症の治療において、過剰増殖性障害の治療において、及び免疫障害の治療において使用されてもよい。様々な他の実施形態において、生物学的状態は、神経疾患、心臓血管疾患、代謝性疾患、感染性疾患、肺疾患、遺伝性疾患、自己免疫疾患、及び免疫関連疾患のうちの任意の1つまたはそれらの組み合わせである。ある特定の実施形態において、本発明の方法及び組成物は、例えば、単離された細胞、組織、及び臓器を含む、低酸素または虚血状態に供されたエクスビボ生体物質の生存率を増強するために使用される。そのようなエクスビボ生体材料の具体的な例には、血小板及び他の血液製剤、ならびに例えば、自家移植または異種移植のために移植される細胞、組織、及び臓器が挙げられる。様々な実施形態において、移植のための生体材料は、本明細書に記載される組成物で処置されるが、一方、依然として、ドナーにおいては、ドナーから取り出した後、または受容者に移植した後、またはこれらの任意の組み合わせで処置される。特定の実施形態において、移植受容者は、生体材料、例えば、細胞、組織、または臓器の移植前、その間、またはその後に、本明細書に記載される組成物で処置される。
本発明の方法は、例えば、損傷または疾患、例えば、心筋梗塞の部位に存在するものを含む、血液、組織、または細胞の還元環境を調節するために使用され得る。ある特定の実施形態において、本発明は、生体材料における還元環境を調節する方法を含み、これには、生体材料に有効量の本発明の組成物を提供することが含まれる。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、標準条件下で、赤色細胞において、還元型グルタチオン対酸化型グルタチオンが約99:1の定比率で存在することを理解されたい。これらの条件下で、亜セレン酸塩及びヨウ素酸塩等のアニオンは、細胞膜上でアニオン輸送体/バンド3タンパク質を介して赤色細胞に侵入し、高度に還元されたグルタチオンに曝露されると、セレン化物及びヨウ化物に形質転換/還元される。この反応の生成による添加物は、少量の酸化型グルタチオンの生成物である。この酸化型グルタチオンは、ペントースリン酸経路を介してグルコースの酸化から生じたエネルギーを用いて再還元される。セレン化物及びヨウ化物は、アニオン輸送体/バンド3タンパク質を介して離れ、体の他の部分に赤色細胞の還元力を移動させる効果を有する。この経路が、例えば、損傷または疾患時に圧倒される場合、還元型グルタチオン対酸化型グルタチオンの比率が、例えば、心臓発作後に、90:10より下、80:10より下、70:10より下、60:10より下、または低くても50:50下落する。加えて、赤血球によって生成され、血流及び組織に放出される、セレン化物及びヨウ化物等の還元型アニオンの量もまた、減少し、これにより、例えば、損傷または罹患した組織を含む、血流及び組織中のより低量の還元剤をもたらすと考えられる。より低量の還元剤(ヨウ化物及びセレン化物)は、遊離基を中和する容量を減少させ、これにより、酸化ストレスをもたらし、組織傷害、例えば、低酸化症、虚血、または再灌流に起因する傷害を引き起こす。この減少は、「血液攻撃」と称される。この関連する機構は、例えば、D’Alessandro,A.et al.Blood Transf,2013:11:75−87、Salmi,H.et al.,Pediatric Endocrinology,Diabetes,and Metabolism 2011,17,1,14−19、Snethil,S.et al.,Clinica Chimica Acta 348(2004) 131−137、及びTolan,N.et al.,Anal.Chem.2009,81,31202−3108において論じられている。さらに、血流への外因性ヨウ化物及びセレン化物の添加は、赤色細胞における負担を軽くして、セレン化物及びヨウ化物を生成し、赤色細胞がヘモグロビンの維持のために還元力を思い出させる使用を可能にする。
グルタチオン(GSH)は、システイン(通常のペプチド結合によってグリシンに結合されている)のアミン基とグルタミン酸塩の側鎖のカルボキシル基との間のガンマペプチド結合を有するトリペプチドである。それは、遊離ラジカル及び過酸化物等の活性酸素種によって引き起こされる重要な細胞成分への傷害を防ぐ抗酸化剤である。チオール基は、動物細胞中で約5mMの濃度で存在する還元剤である。グルタチオンは、電子供与体としての役割を果たすことによって、システインへの細胞質タンパク質内に形成されたジスルフィド結合を減少させる。この過程において、グルタチオンは、L−(−)−グルタチオンとも呼ばれる酸化型のグルタチオンジスルフィド(GSSG)に変換される。酸化されたグルタチオンは、電子供与体としてNADPHを使用して、グルタチオン還元酵素によって減少させることができる。細胞内の還元型グルタチオン対酸化型グルタチオンの比率は、細胞毒性の尺度として使用されることが多い。
したがって、本発明は、対象の血流中または疾患もしくは損傷の部位で、例えば、罹患または損傷した組織において、還元型グルタチオンの量またはモル濃度対酸化型グルタチオンの量またはモル濃度の比率の低下を阻害または防止することによって、それを必要とする対象における虚血または再灌流損傷が挙げられるが、これらに限定されない、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む損傷または疾患を治療または予防する方法を提供する。ある特定の実施形態において、本方法は、対象に、有効量の本発明の組成物を提供することを含む。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。本方法はまた、対象の血流中または疾患もしくは損傷の部位で、還元型のグルタチオンの量またはモル濃度対酸化型のグルタチオンの量またはモル濃度の比率を上昇させるために使用されてもよい。特定の実施形態において、本方法は、該疾患または損傷の発症前、その時点で、またはその後、該対象に、ハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドを全身的に提供することを含む。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物、例えば、ヨウ化物は、疾患または損傷の発症前に対象に提供される。特定の実施形態において、カルコゲニド、例えば、セレン化物は、疾患または損傷の発症前、疾患または損傷の発症または発生中、疾患または損傷の発症後、対象に提供される。甲状腺腫誘発物質を含む、甲状腺ホルモンの産生、活性、または機能を妨げる他の化合物が、本発明のこれらまたはその他の方法を実践するために、ハロゲン化合物またはカルコゲニドの代わりに、またはそれと組み合わせて使用されてもよいことをさらに理解されたい。カルコゲニド及びハロゲン化合物は、本明細書に記載される様々な量のうちのいずれかで使用されてもよい。ある特定の実施形態において、約1pg/kg〜約1g/kgのカルコゲニド、硫化物、またはセレン化物が対象に提供され、約10μg/kg〜約10mg/kgのカルコゲニド、硫化物、またはセレン化物が対象に提供される。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物はヨウ化物であり、約10pg/kg〜約1g/kgのヨウ化物が対象に提供される。ある特定の実施形態において、約10μg/kg〜約10mg/kgのヨウ化物が対象に提供される。
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、対象の血流中または疾患もしくは損傷の部位で、疾患または損傷の発症後、99%未満、98%未満、97%未満、96%未満、95%未満、94%未満、93%未満、92%未満、91%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満より低くなる、還元型のグルタチオンの量またはモル濃度対酸化型のグルタチオンの量またはモル濃度の比率を阻害または維持する。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、対象の血流中または疾患もしくは損傷の部位で、疾患または損傷の発症後、99%以上、98%以上、97%以上、96%以上、95%以上、94%以上、93%以上、92%以上、91%以上、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、20%以上、10%以上まで、還元型のグルタチオンの量対酸化型のグルタチオンの量の比率を上昇させる。特定の実施形態において、言及された比率は、組成物が対象に提供される時間の1分間、5分間、30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、または48時間以内に達成されるか、または維持される。
本発明は、本明細書に記載される組成物または方法のうちのいずれかを含む、組成物または治療法の治療効果を決定または監視する方法をさらに提供し、これらは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかを単独でまたはそれらと組み合わせて実施され得る。これらの方法は、還元グルタチオンの量または濃度対酸化グルタチオンの量または濃度の比率を決定することを含む。還元グルタチオンの量またはモル濃度対酸化グルタチオンの量またはモル濃度の比率は、例えば、前述の論説のうちのいずれかに記載されるような、例えば、血液試料について決定され得る。治療後のさらなる比率の低下の増加または阻害は、有効性を示し、一方、比率の減少は、治療が限界であるか、または治療的価値がないことを示唆している。
いくつかの実施形態において、本発明は、生体材料または対象に、有効量の本発明の組成物を提供することを含む、それを必要とする生体材料または対象における免疫応答を予防、阻害、または低減する方法に関する。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。いくつかの実施形態において、免疫応答は、概して、先天的または適応的免疫系によって引き起こされる任意の応答を指す。いくつかの実施形態において、免疫応答は、T細胞の活性化によって始まる。いくつかの実施形態において、免疫応答は、B細胞の活性化によって始まる。本明細書に企図される免疫応答は、任意の手段で刺激され得る。いくつかの実施形態において、免疫応答は、病原体によって誘発される。いくつかの実施形態において、免疫応答は自己免疫応答である。いくつかの実施形態において、免疫応答は、炎症を指す。ある特定の実施形態において、自己免疫応答は、細胞、組織、または臓器の移植後に誘発される。ある特定の実施形態において、自己免疫応答は、自己免疫障害の結果である。
いくつかの実施形態において、炎症とは、感じ取られた傷害または危険な兆候に応答して免疫系によって取り込まれた非特異的な第1の反応を指す。炎症は、先天性防衛反応であり、免疫系のより正確に適合した適応反応とは異なる。炎症は、さらにゆっくりと発達するが、局所的な傷害を引き起こし得る化学物質または病原体等の有害な薬剤に対してより正確に標的とされる、免疫系の適応反応と共同的に作用し得る。
炎症は、感染症と関連し得るが、身体外傷、風邪、放射線からの火傷、熱もしくは腐食性材料、化学性刺激物、細菌もしくはウイルス性の病原菌、局所的酸素欠乏(虚血)または再灌流(虚血組織への酸素の突然の再注入)、及びその他を含む、実質的には、あらゆるタイプの傷害または危険な兆候に応答して生じる。炎症には、古典的症状の赤み、発熱、腫れ、及び疼痛が含まれ、炎症を起こした臓器または組織の機能低下を伴い得る。炎症は、傷害または危険な兆候が検出された部位に存在し得る障害性物質と闘う傾向があり得るか、または炎症が急速に広がるのを避けるために、その初期位置に対して傷害または危険な兆候を含む傾向があり得る、いくつかの効果を含む全身反応であり得る。
いくつかの実施形態において、自己免疫応答は、概して、それ自体の細胞及び組織に対して免疫攻撃をもたらす生物体における任意の応答として定義される。自己免疫の病因は非常に広範であり、これには、遺伝及び環境因子、ならびにT細胞バイパス、T細胞B細胞の不一致、異常なB細胞受容体媒介性フィードバック、分子擬態、イディオタイプ交差反応、サイトカイン調節異常、樹状細胞アポトーシス、エピトープ拡散、エピトープドリフト、エピトープ修飾、または隠蔽エピトープ曝露が挙げられるが、いずれにしても、これらに限定されない免疫学的機構が含まれる。
いくつかの実施形態において、自己免疫とは、例えば、紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、強皮症、リウマチ性関節炎、及び自己免疫性筋炎、例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎、脈管炎(例えば、チャーグストラウス症候群)、サルコイドーシス、一般的なアレルギー等の多くの臓器に損傷を与える自己免疫疾患として定義される、全身性自己免疫疾患を指す。
いくつかの実施形態において、自己免疫とは、例えば、1型真性糖尿病、橋本甲状腺炎、アジソン病、セリアック病、クローン病、グレーブス病、悪性貧血、乾癬、尋常性天疱瘡、白斑、自己免疫溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症等の単一の臓器または組織に影響を及ぼす自己免疫疾患として定義される、局所的自己免疫症候群を指す。
本発明は、臓器拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)及び/またはそれに関連する状態の治療、予防、または緩和に関する。ある特定の実施形態において、本発明は、治療または予防を必要とする対象における臓器拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)及び/またはそれに関連する状態の治療または予防する方法を含み、これには、該対象に、有効量の本発明の組成物を提供することが含まれる。ある特定の実施形態において、本発明は、治療または予防を必要とする対象における臓器拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)及び/またはそれに関連する状態の治療または予防する方法を含み、これには、移植された細胞、組織、または臓器を有効量の本発明の組成物と接触させることが含まれる。特定の実施形態において、本組成物は、有効量の1つ以上のハロゲン化物及び/または1つ以上のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む任意に1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。臓器拒絶反応は、免疫応答を通して移植された組織の宿主免疫細胞破壊によって生じる。同様に、免疫応答もまた、GVHDに関与するが、この場合、外来の移植された免疫細胞が宿主組織を破壊する。免疫応答を阻害する本発明のハロゲンまたはカルコゲニド化合物の投与は、臓器拒絶反応またはGVHDを予防する際の有効な治療法であり得る。
いくつかの実施形態は、虚血または再灌流損傷に起因する炎症の治療、予防、または緩和に関する。ある特定の実施形態において、本発明は、炎症、例えば、治療または予防を必要とする対象における虚血または再灌流損傷を治療または予防する方法を含み、これには、該対象に、有効量の本発明の組成物を提供することが含まれる。ある特定の実施形態において、本組成物は、有効量のハロゲン化物及び/または有効量のカルコゲニド、ならびに本明細書に記載されるもののいずれかを含む1つ以上のさらなる活性薬剤を含む。ある特定の実施形態において、再灌流損傷は、臓器への血液供給が、例えば、心筋梗塞、脳卒中、及び他の血栓症事象後等の時間期間中中断されるときに生じる。虚血中、組織は酸素不足によりストレスを受け、最終的には、虚血が長期に及ぶ場合、組織は壊死し、様々な代謝中間体の蓄積をもたらす。血流の回復は、炎症につながる酸素ラジカルの急増をもたらす。それ故に、本発明の実施形態は、活性酸素種の形成を減少させるためのヨウ化物等のハロゲン化合物、またはセレン化物もしくは硫化物等のカルコゲニド化合物の使用に関する。
免疫応答の活性化を検出するために有用な当該技術分野において記載されている多くの異なるアッセイがある。これらのいくつかの典型的な非限定的な例には、リンパ球(すなわち、T細胞、B細胞、及びNK細胞)、単球、及び樹状細胞を検出する方法が含まれるが、これに限定されない。そのようなアッセイの例には、例えば、ELISPOT、サイトカイン発現のフローサイトメトリーに基づいた分析、HLA−ペプチド多量体染色、MHC四量体分析、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルアッセイ、抗原特異的免疫応答、遅延型過感受性、T細胞受容体遺伝子使用またはサイトカイン産生のPCRに基づいた検出、T細胞増殖を測定するための混合リンパ球反応等が挙げられる。
実施形態において、任意の刺激によって生じる免疫応答を検出することができる任意のアッセイは、ハロゲン化合物またはカルコゲニド化合物が免疫応答の抑制において有し得る効果を測定するために有用である。
特定の実施形態において、ハロゲンまたはカルコゲニド化合物によって誘発された免疫抑制は、例えば、活性化された抗原提示細胞に応答して、T細胞増殖を測定することによって評価される。本質的には、混合リンパ球反応、このアッセイは、提示された抗原へのT細胞曝露がT細胞活性化及び増殖、ならびにDNA合成の支持的な増加をもたらすことを利用する。PBMCは、2人のドナーから単離され、次いで、これらの試料は、一方は照射を受け、もう一方は、照射を受けない、2つの群に分割された。照射は、抗原提示細胞への多くの抗原の提示をもたらし、それ故に、照射された細胞は、T細胞の強力な活性化因子としての役割を果たす。照射された細胞を照射されていない細胞と混合することによって、強力なT細胞増殖を生じる。この増殖は、当業者には一般的に知られているように、任意の増殖アッセイを用いて測定することができる。一実施形態において、増殖は、DNA合成を測定することによって評価される。混合したPBMCを、ハロゲンまたはカルコゲニド化合物の存在または非存在下で、5日間培養し、次いで、トリチウム化チミジンで18時間パルスし、新たに合成されたDNAを標識化した。標識化の程度は、T細胞活性化の程度と直接相関し、それ故に、低レベルの標識化は免疫抑制と相関する。
いくつかの実施形態において、ハロゲンまたはカルコゲニド化合物の免疫抑制は、このアッセイを用いて評価され、ハロゲン化合物が、トリチウム化チミジンの取り込みの10%の低下をもたらすことが見出され、これにより、10%の免疫抑制を示す。いくつかの実施形態において、このようにして、ハロゲン化合物による治療は、20%の免疫抑制、または30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の免疫抑制をもたらす。特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ化物を含む。特定の実施形態において、免疫抑制を誘発するカルコゲニド化合物は、セレン化物または硫化物を含む。
本発明の方法のある特定の実施形態において、生体材料、例えば、そこにおいて哺乳動物または組織に提供されるハロゲン化合物の量または有効量は、約、少なくとも、少なくとも約、または最大で約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000mg、mg/kg、またはmg/m2、またはそこにおいて引き出される任意の範囲である。あるいは、その量は、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000mMもしくはM、またはそこにおいて引き出される任意の範囲として表され得る。
本発明の方法のある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ素またはヨウ化物、例えば、NaIを含み、有効量は、約150μg以上、約300μg以上、約500μg以上、約1mg以上、約2mg以上、約5mg以上、約約10mg以上、約15mg以上、または約20mg以上である。ある特定の実施形態において、有効量は、150μg〜1000mg、300μg〜1000mg、500μg〜1000mg、1mg〜1000mg、2mg〜1000mg、5mg〜1000mg、10mg〜1000mg、150μg〜100mg、300μg〜100mg、500μg〜100mg、1mg〜100mg、2mg〜100mg、5mg〜100mg、または10mg〜100mgである。ある特定の実施形態において、有効量は、150μg〜50mg、300μg〜20mg、500μg〜10mg、1mg〜20mg、1mg〜10mg、または約5mg、約10mg、約15mg、または約20mgである。
本発明の方法のうちのいずれかの特定の実施形態において、生体材料、例えば、対象は、有効量の本発明の組成物または化合物により治療されるか、またはそれと接触させ、約0.01mg/kg〜約20mg/kg、約0.05mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約5mg/kg、約0.5mg/kg〜約2mg/kg、約0.5mg/kg〜約1mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、または約1.2mg/kgの該有効量。
特定の実施形態において、ヨウ素またはヨウ化物の有効量は、以下に列記される一日の平均推奨量の少なくともまたは約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、または20倍の量である。特定の実施形態において、ヨウ素またはヨウ化物の有効量は、以下に列記されるヨウ素の一日の平均推奨量の2倍〜20倍、4倍〜15倍、または5倍〜10倍の量である。
12011年6月24日に改訂され、2013年に取得された、消費者に対する、NIHのダイエタリーサプリメント局(Office of Dietary Supplements)のヨウ素の概況報告書。
本発明の方法のうちのいずれかの特定の実施形態において、本方法は、生体材料または治療される対象中に存在するハロゲン化合物の量または濃度(例えば、対象の血流中に存在する濃度)を測定または決定することをさらに含み、生体材料または対象に、ある量のハロゲン化合物を含む組成物を提供して、生体材料または対象におけるハロゲン化合物の所望の総量または濃度を達成し、この総量または濃度は、生体材料または対象において測定または決定された量または濃度、及び生体材料または対象に提供された量の両方を含む。特定の実施形態において、所望の総量は、対象が罹患している疾患または損傷の治療または予防のための有効量、または移植臓器の炎症または拒絶反応を予防するための有効量である。本発明の方法のある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ素、例えば、NaIを含み、有効量は、約0.01mg/kg〜約20mg/kg、約0.05mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約5mg/kg、約0.5mg/kg〜約2mg/kg、約0.5mg/kg〜約1mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、または約1.2mg/kgである。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ素を含み、有効量は、以下に列記される一日の平均推奨量の少なくともまたは約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、または20倍である有効量のヨウ素によって達成されるのとほぼ同じ濃度または量を達成する量である。特定の実施形態において、ヨウ素またはヨウ化物の有効量は、以下に列記されるヨウ素の一日の平均推奨量の2倍〜20倍、4倍〜15倍、または5倍〜10倍の量である。
12011年6月24日に改訂され、2013年に取得された、消費者に対する、NIHのダイエタリーサプリメント局(Office of Dietary Supplements)のヨウ素の概況報告書。
ハロゲン化合物を含む組成物が1つ以上のさらなる活性薬剤(またはそれを含む組成物)と組み合わせて提供されるさらなる実施形態において、さらなる活性薬剤の量または有効量は、ハロゲン化合物に対して本明細書に記載される濃度または投与量のうちのいずれかである。加えて、さらなる活性薬剤は、ハロゲン化合物を含む組成物に対して本明細書に記載される投与経路のうちのいずれかによって提供され得る。加えて、ハロゲン化合物を含む組成物、及びさらなる活性薬剤、例えば、硫化物またはセレン化物等のカルコゲンを含む組成物は、同じ時間で、異なる時間で、または重複する時間期間中で対象に提供され得る。
本組成物がグルタチオンならびにハロゲン化合物及びカルコゲニドのいずれかまたはその両方を含む特定の実施形態において、ハロゲン化合物及びカルコゲニド(存在する場合)は、いずれかの活性薬剤において本明細書に記載される量のうちのいずれかで投与される。ある特定の実施形態において、グルタチオンは、本明細書に記載される範囲のうちのいずれかを含む、カルコゲニド及び/またはハロゲン化合物の酸化を阻害するのに十分な量で存在する。特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、ヨウ化物、例えば、NaIであり、カルコゲニドは、硫化物またはセレン化物である。
本発明の特定の実施形態において、有効量の組成物は、生体材料、例えば、組織または対象に、再灌流前、例えば、虚血または再灌流直前から10分または30分のうちの少なくとも1分間、2分間 3分間、4分間、5分間、または10分間投与される。特定の実施形態において、本組成物のこの投与は、虚血または再灌流損傷の低減をもたらす。ある特定の実施形態において、再灌流損傷は、本組成物による治療を行わない場合、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、または30%未満の再灌流損傷がある。
特定の実施形態において、損傷、例えば、心臓発作または脳卒中後の本発明の組成物による生体材料、すなわち、対象の治療は、損傷、例えば、梗塞サイズの低減をもたらす。ある特定の実施形態において、損傷または梗塞サイズは、安定した組成物による治療を行わない場合の重篤度または梗塞サイズの80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、または30%未満である。
特定の実施形態において、心臓発作の(or)10分以内、30分以内、1時間以内、または2時間以内での、生体物質、例えば、対象の治療は、本組成物による治療を行わない場合と比較して、心臓傷害の減少または短縮率もしくは左心室機能の増加をもたらす。特定の実施形態において、心臓傷害の減少は、本組成物による治療を行わない場合と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%である。心臓傷害の減少は、治療後の対象の血液中の心臓特異的タンパク質、心臓トロポニンIのレベルを評価することによって検出され得る。特定の実施形態において、短縮率もしくは左心室機能の増加は、本組成物による治療を行わない場合と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%である。
ある特定の実施形態において、本発明は、対象に本発明の組成物を投与することによって、対象、例えば哺乳動物の心臓における心臓発作後の炎症を低減する方法を含む。ある特定の実施形態において、心臓炎症の減少は、本組成物による治療を行わない場合と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%である。
本発明の方法の様々な実施形態において、生体材料、例えば、臓器、対象、または対象中の組織は、本発明の組成物に、約、少なくとも、少なくとも約、または最大で約30秒間、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間もしくはそれ以上、及びそこにおける任意の範囲または組み合わせで曝露される。
さらに、本発明に従う組成物の投与が静脈内または注入による場合、以下のパラメータが適用され得ることが企図される。約、少なくとも約、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100gtts/分またはμgtts/分、またはそこにおいて引き出される任意の範囲の流速。いくつかの実施形態において、本組成物の量は、本組成物中に存在するハロゲン化合物の濃度に応じて、体積で特定される。時間量は、約、少なくとも約、または最大で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60分間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間、1、2、3、4、5、6、7日間、1、2、3、4、5週間、及び/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月間、またはそこにおいて引き出される任意の範囲であり得る。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940,950、960、970、980、990、1000mlまたはリットルの体積、またはそこにおける任意の範囲は、全体でまたは単回セッションで投与されてもよい。
本発明の方法の様々な実施形態によれば、生体材料は、本発明の組成物を、例えば、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、眼内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜内、心膜内、臍帯内、眼内、経口的、局所的、局在的、注入による、連続注入による、吸収による、吸着による、浸漬による、局所的灌流、カテーテルを介して、または洗浄液を介して提供される。特定の実施形態において、非経口的に、例えば、静脈内または吸入により提供される。「非経口」とは、消化管を介する以外の物質の投与の任意の経路を指す。特定の実施形態において、ハロゲン化合物は、対象に、静脈内投与でまたは注入によって提供される。
ある特定の実施形態において、本発明の方法または組成物は、焼灼療法、副腎摘出術、大動脈瘤、大動脈基部手術、大動脈弁狭窄症、大動脈弁疾患、不整脈、アテローム性動脈硬化症、心房粗動、心房性細動、心房中隔欠損症、動静脈奇形、覚醒脳手術、肥満外科手術、骨髄移植手術、上腕神経叢損傷、徐脈、脳動脈瘤、脳動脈瘤(brain aneuryism)、豊胸手術、乳房縮小手術、火傷、白内障、冠動脈バイパス形成手術、冠動脈疾患、心臓焼灼術、心臓カテーテル法、心臓再同期療法、心臓手術、心筋症、心臓手術、心臓血管疾患、頸動脈血管形成術及びステント留置術、大動脈の狭窄、先天性心疾患、冠動脈バイパス形成手術、冠動脈疾患、救命救急医療、慢性閉塞性肺疾患、エボラウイルス、肘置換手術、救急医療、てんかん、一般内科医学、一般外科、胃腸出血、移植片対宿主病、ハンタ肺疾患ウイルス(HPV)、心臓発作、心臓移植、心臓弁膜手術、人工股関節置換手術、肥大性心筋症、低酸素性虚血性脳症、子宮摘出術、回腸肛門吻合(jパウチ)手術、腸閉塞、術後腸閉塞、炎症性腸疾患、虚血性心疾患、虚血再灌流障害、過敏性腸症候群、顎手術、腎臓移植、喉頭気管形成手術、肝臓移植、肺容量減少手術、肺移植、最小限侵襲心臓手術、神経外科医学、騒音誘発聴覚消失、口腔及び顎顔面外科手術、整形外科、膵臓移植、膵臓炎、腎部分切除術、小児頚椎手術、小児外科、骨盤臓器脱、末梢血管疾患、美容整形及び再建手術、肺疾患及び救命救急医療、肺動脈閉鎖、肺静脈隔離術、放射線誘発肺損傷、直腸脱、拘束型心筋症、網膜剥離、未熟児網膜症、ロボット外科手術、サルモネラ菌食中毒、外科用接着剤、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球クリーゼ、ST部上昇型心筋梗塞(STEMI)、幹細胞移植、脊髄損傷、自然冠動脈解離、ウィリス動脈輪閉塞症、脳卒中、脳卒中遠隔治療(遠隔脳卒中診療)、突然の心臓停止、定位的放射線治療、手術、慢性心不全、収縮期心不全、頻脈、ティア病、胸部大動脈瘤、胸部手術、全肘関節形成術、三尖弁膜症、潰瘍性大腸炎、自己弁温存大動脈基部修復術、脈管及び血管内手術、脈管学、人工呼吸器誘発肺損傷、または心室性頻拍症、のうちのいずれかから選択されるか、またはこれらのうちのいずれかによって引き起こされるか、またはこれらのうちのいずれかに起因する、疾患または損傷を治療または予防するために使用される。
ある特定の実施形態において、損傷または疾患は、炎症、心臓発作、冠動脈バイパス形成手術、虚血、小腸虚血、肝臓虚血、腎虚血、低酸素性虚血性脳症、脳卒中、外傷性脳損傷、肢虚血、眼虚血、敗血症、喫煙、火傷、再灌流、または急性肺損傷から選択されるか、これらに起因するか、またはこれらによって引き起こされる。ある特定の実施形態において、損傷は、心臓発作または脳卒中によって引き起こされる梗塞である。特定の実施形態において、損傷は、冠動脈バイパス形成手術、任意に、冠動脈バイパス移植術(CABG)によって引き起こされる。一実施形態において、疾患は、低酸素性虚血性脳症である。
送達デバイス
さらなる実施形態において、本発明は、還元型の活性薬剤、例えば、還元型のハロゲン化合物または還元型のカルコゲニド等の酸化を限定、防止、または阻害するように設計された薬物送達デバイスを含む。特定の実施形態において、デバイスは、還元型の活性薬剤をその還元型で維持する。特定の実施形態において、デバイスは、例えば、還元型のハロゲン化合物またはカルコゲニド等の還元型の活性薬剤を含む。特定の実施形態において、薬物デバイスは、本発明の組成物を含む。
製造業者によって調製され、予め混合した、すぐに使用できる製品は、静脈内または注入された薬物を測定及び希釈することに関連する誤りを除いているため、静脈内薬物安全性に対する有用なアプローチを表す。したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、還元型の活性薬剤を含むすぐに使用できる製品の投与のための薬物送達デバイスを含む。特定の実施形態において、還元型の活性薬剤は、還元型のハロゲン化合物及び/またはカルコゲニド、例えば、セレン化物または硫化物である。
関連実施形態において、本発明は、有効量の本発明の組成物または有効量のハロゲン化合物をその中に有する容器を含む。有効量は、液体型であり得、例えば、活性薬剤は、溶液中に溶解され得るか、または活性薬剤が対象への投与前に溶液中に溶解され得るように、乾燥型であり得る(例えば、乾燥される、凍結乾燥されるか、またはフリーズドライされる)。
本明細書に記載される組成物のすべての実施形態において、本組成物が薬学的組成物であり得ることを理解されたい。
加えて、シリンジまたはバッグに活性薬剤を引き込むプロセスの間に、活性薬剤を含むバイアルに空気を注入することを包含し得る、活性薬剤を送達するための従来の方法が、還元型である活性薬剤の望ましくない酸化をもたらし得ることを理解されたい。したがって、本発明は、対象への送達の間に、活性薬剤の酸素との接触を最小にする送達デバイスを企図する。
一実施形態において、本発明は、薬物送達デバイスを含み、これには、
本発明の組成物を含有する、すなわち、ハロゲン化合物または還元型のハロゲン化合物を、単独でまたは1つ以上のさらなる活性薬剤、例えば、カルコゲニドまたは硫化物もしくはセレン化物等の還元型のカルコゲニドと組み合わせて含むためのリザーバーと、
対象への送達の間に、本組成物中の還元型の活性薬剤の少なくとも90%を還元型で維持するように構成された液体連通部材と、を備える。特定の実施形態において、対象への投与の間に、還元型の活性薬剤の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%を還元型で維持するように構成される。ある特定の実施形態において、液体連通部材は、リザーバーと液体連通している。他の実施形態において、それは、リザーバーと液体連通するように設置され得る。
ある特定の実施形態において、リザーバーは、酸素不透過性であり、及び/またはこれは酸素不透過性ポリマーから形成される。ある特定の実施形態において、リザーバーは、例えば、その内部表面に、ポリエチレン(LDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、APET、ポリ塩化ビニル(PVC)、ナイロン6(Ny6)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリアセトニトリル(PAN)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、またはポリビニルアルコール(PVA)を含み得る、酸素不透過性層を含む。ある特定の実施形態において、該ポリマーの酸素透過係数は、10−10[cm3(STP)/cm/(cm2+s+Pa)]未満である。関連実施形態において、それは、10−9未満、10−8未満、または10−7[cm3(STP)/cm/(cm2+s+Pa)]未満である。関連実施形態において、リザーバーは、複数の層の酸素不透過性ポリマーを含む。
特定の実施形態において、リザーバーは、再密封可能なポートを含む。再密封可能なポートは、還元型のハロゲン化合物及び/または還元型のカルコゲニド等の治療剤を含む溶液をリザーバーに導入するために使用され得る。再密封可能なポートは、液体連通部材に連結するために使用され得る。特定の実施形態において、リザーバーは、複数の再密封可能なポートを含む。ある特定の実施形態において、リザーバーは、ボトル、バッグ、チューブ、バイアル、またはシリンジである。特定の実施形態において、それは、静脈内バッグまたはシリンジである。特定の実施形態において、それは、チューブ部材であり、このチューブ部材は、該チューブ部材を気密に封止するように構成されたセプタムを有する。一実施形態において、チューブ部材は、Hungateチューブである。
特定の実施形態において、液体連通部材は、再密封可能なポートによってリザーバーに液体連結されるように構成される。関連実施形態において、液体連通部材は、リザーバーから活性薬剤、例えば、還元型のハロゲン化合物及び/または還元型のカルコゲニドを、それを必要とする対象に静脈内に送達するように構成される。ある特定の実施形態において、液体連通部材は、針及びカニューレのうちの少なくとも1つを含む。
ある特定の実施形態において、液体連通部材を含むデバイスは、酸素減少または無酸素環境で配置される。特定の実施形態において、酸素減少または無酸素環境は、容器内であり、任意に、該容器は、例えば、最初は連結されてない実施形態においてリザーバーへの液体連通部材を連結するようなバッグを通してデバイスの構成要素の操作を可能にするバッグまたは可鍛性容器である。特定の実施形態において、容器は、上述されたもののうちのいずれかを含む、1つ以上の酸素不透過性ポリマーを含む。特定の実施形態において、この容器の壁は、複数の層の1つ以上の酸素不透過性ポリマーを含む。
特定の実施形態において、デバイスは、リザーバーの中に、還元型のハロゲン化合物及び/またはカルコゲニドを含む組成物を含む。ある特定の実施形態において、還元型のハロゲン化合物は、ヨウ化物、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、もしくはヨウ化水素であり、及び/または還元型のカルコゲニドは、H2Se、Na2Se、もしくはNaHSe、または硫化性化合物である。
特定の実施形態において、還元型の活性薬剤、例えば、ヨウ化物等の還元型のハロゲン化合物及び/またはセレン化物もしくは硫化物等の還元型のカルコゲニドの送達を可能にし、活性薬剤の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、還元型で対象に送達される。
本発明は、対象における損傷を低減するか、または疾患を治療するための方法であって、該対象に、本発明の組成物を提供することを含み、該組成物が本発明のデバイスを用いて該対象に提供される、方法をさらに含む。特定の実施形態において、損傷または疾患は、虚血または再灌流に起因する損傷が挙げられるが、これに限定されない、本明細書に記載されるもののうちのいずれかである。特定の実施形態において、損傷は、心臓発作または脳卒中、または慢性心不全によって引き起こされる梗塞である。他の実施形態において、損傷は、炎症によって引き起こされる。ある特定の実施形態において、ハロゲン化合物を含む本組成物は、本明細書に記載されるデバイスを用いて対象に提供される。ハロゲン化合物を含む組成物がまた、さらなる治療剤をも含むか、またはハロゲン化合物を含む組成物が還元型のカルコゲニド等のさらなる活性薬剤を含む組成物と組み合わせて提供されるある特定の実施形態において、ハロゲン化合物を含む組成物及び/または他の組成物は、本明細書に記載されるデバイスを用いて提供される。
さらに、本発明はまた、還元型の活性薬剤を含む組成物(ハロゲン化合物を含む)をそれを必要とする対象に送達する方法も含み、この方法は、
活性薬剤を還元型に維持するように構成されたリザーバーの中に還元型の活性薬剤を含む組成物を含有することと、
リザーバーと対象との間の流体連通を確立することと、
実質的に酸素を含まない環境において、リザーバーから対象に所定量の組成物を送達することと、を含む。
特定の実施形態において、本発明のデバイスは、(1)本発明の組成物を含む静脈内バッグであって、該静脈内バッグが酸素不透過性である、静脈内バッグと、(2)チューブであって、該チューブが、チューブの第1末端において、静脈内バッグの中のポートを通して静脈内バッグに連結されるか、または該チューブが、チューブの第1末端において、静脈内バッグ中のポートを通して静脈内バッグへの連結が可能である、チューブと、を備え、該チューブは、チューブの第2末端において、針またはカニューレに連結されているか、または該チューブは、チューブの第2末端において、針またはカニューレに連結が可能であり、該デバイスは、酸素減少環境または無酸素環境を備えるバッグの中に含有される。特定の実施形態において、静脈内バッグ及び/またはバッグは、本明細書に記載される1つ以上の酸素不透過性ポリマーを含む。特定の実施形態において、このバッグは柔軟性であり、例えば、デバイスがバッグの中で密封されたままで、ユーザが静脈内バッグ及び/または針に連結することを可能にする。
特定の実施形態において、本発明のデバイスは、(1)本発明の組成物を含む静脈内バッグであって、該静脈内バッグが酸素不透過性である、静脈内バッグと、(2)チューブであって、該チューブが、チューブの第1末端において、静脈内バッグの中のポートを通して静脈内バッグに連結されるか、または該チューブが、チューブの第1末端において、静脈内バッグ中のポートを通して静脈内バッグへの連結が可能である、チューブと、を備え、該チューブは、チューブの第2末端において、針またはカニューレに連結されているか、または該チューブは、チューブの第2末端において、針またはカニューレに連結が可能であり、該デバイスは、酸素減少環境または無酸素環境を備えるバッグの中に含有される。特定の実施形態において、静脈内バッグ及び/またはバッグは、本明細書に記載される1つ以上の酸素不透過性ポリマーを含む。特定の実施形態において、このバッグは柔軟性であり、例えば、デバイスがバッグの中で密封されたままで、ユーザが静脈内バッグ及び/または針に連結し、及び/静脈内バッグを加圧して、チューブを通して針またはカニューレに向けてまたはその中への組成物の流れを開始させることを可能にする。
特定の実施形態において、本発明のデバイスは、(1)本発明の組成物を含むシリンジであって、酸素不透過性である、シリンジと、(2)針またはカニューレであって、シリンジ中のポートを通してシリンジに連結されるか、またはシリンジ中のポートを通してシリンジに連結可能である、針またはカニューレと、を備え、該デバイスは、酸素減少または無酸素環境を備えるバッグの中に含有される。特定の実施形態において、シリンジ及び/またはバッグは、本明細書に記載される1つ以上の酸素不透過性ポリマーを含む。特定の実施形態において、このバッグは柔軟性であり、例えば、デバイスがバッグの中で密封されたままで、ユーザがシリンジに針またはカニューレを連結し、及び/シリンジを加圧して、針またはカニューレの中への安定した組成物の流れを開始させることを可能にする。
特定の実施形態において、このデバイスは、治療有効量の本発明の薬剤または組成物を含む。
実施例1
ヨウ化ナトリウムは、心筋梗塞の転帰を改善する
この実施例は、ヨウ化ナトリウム(NaI)が梗塞サイズを低減することによって、心臓発作のマウスモデルにおける転帰を改善することを実証する。
心臓発作のマウスモデルにおいて心筋梗塞サイズにおけるNaIの効果を試験するために、左冠状動脈下行枝の開胸結紮(LAD結紮)をマウスにおいて実施した。虚血の開始から55分後、ビヒクル(生理食塩水)または試験薬剤(NaI)のいずれかを各マウスの大腿静脈に注射した。心臓の筋肉を、虚血の開始から60分後、結紮を解放することによって再灌流した。再灌流の2時間後、梗塞サイズを、形態計測によって測定した(図1)。生理食塩水ビヒクル群(n=3)及び0.25mg/kg(n=4)、0.5mg/kg(n=5)、1mg/kg(n=5)、または2mg/kg(n=6)のNaIを受容した5つの試験群を含む、5つの群マウスをこの研究において利用した。この研究においてすべての動物を同様の方法で処置したことを確認するために、左心室の割合としてのリスク面積(AAR)を決定した(図1)。リスク面積(AAR)及び梗塞サイズ(Inf)を、特異的色素TTC及びエバンスブルーを使用して測定した。加工した画像は、一定の閾値を設定し、Photoshop(登録商標)により定量されている画像を生成させて、図1中に示されるデータを生成することによって、不偏方式で得た。
これらの結果は、NaIを受容した4つすべての試験群に対する生理食塩水群と比較した場合に、統計学的に有意な梗塞サイズの減少があったことを示す(図1)。試験した各投与量について、NaIによる治療は、ビヒクル単独と比較して、梗塞サイズの約70%の低減をもたらした。
さらなる試験は、同じ条件下であるが、拡大した範囲のNaIの濃度を用いて行った。この試験の結果もまた、NaIを受容した4つすべての試験群に対する生理食塩水群と比較した場合に、統計学的に有意な梗塞サイズの減少があったことを示す(図2)。
心臓発作前のNaIによる治療が心臓発作の転帰を改善するかどうかを判定するために、ビヒクル(生理食塩水)または試験薬剤(NaI)のいずれかを虚血開始の5分前または48時間前に各マウスの大腿静脈に注射する開胸結紮実験を実施した。次いで、左冠状動脈下行枝の開胸結紮(LAD結紮)を実施し、心臓の筋肉を、虚血開始から60分後、結紮を解放することによって再灌流した。再灌流の2時間後、梗塞サイズを、上述のように形態計測によって測定した(図3)。生理食塩水ビヒクル群(n=1)ならびにLAD結紮の5分前に1mg/kgのNaIを受容した(n=4)またはLAD結紮の48時間前に1mg/kgのNaIを受容した(n=1)2つの試験群を含む3つの群のマウスをこの試験において利用した。
これらの結果は、NaIを受容した両方の試験群に対する生理食塩水群と比較した場合に、統計学的に有意な梗塞サイズの減少があったことを示す(図3)。試験した各投与量について、NaIによる前治療は、ビヒクル単独と比較して、梗塞サイズの約70%の低減をもたらした。
加えて、NAIの保護効果を、図4に示されるように、心エコー検査法によって確認した。Vevo 770(Visualsonics)と適合した30MHzのRMVスキャンヘッドを使用して左心室(LV)のインビボでの経胸壁心エコー検査を実施し、二次元心エコー検査画像を得た。LV拡張末期直径(EDD)及びLV収縮末期直径(ESD)を、ベースラインにおいては心筋虚血及び再灌流の1日前、ならびに心筋虚血及び再灌流の1週間後及び4週間後に測定した。LV短縮率(FS)及びLV駆出率(EF)を計算した。
実施例2
グルタチオンはセレン化物を安定化する
グルタチオンがセレン化物の酸化を防ぐことを実証するために、50mMのセレン化物溶液を水または150mMのGSHのいずれかで調製し、調製直後から8分間観察した。図5では、酸化型のセレン化物は溶液中に暗く見え、グルタチオン中の試料は、各時点で酸化のレベルが低減されたことを明らかに示す。
実施例3
ハロゲン化合物及びカルコゲニドの免疫抑制特性
ヨウ化物及びセレン化物の免疫抑制特性を実証するために、2人のドナー(A及びB)から血液を得、末梢血単核細胞(PBMC)を血液から精製した。PBMCを、3500radで照射した(Ax及びBx)、または照射しなかった(A及びB)。各患者から照射及び非照射のPBMCを混合し(各々から100,000)、様々な量のシクロスポリンA(CSA、陽性対照)、ヨウ化物(Iod)、セレン化物(Sel)を含有する培養培地、または培地のみに5日間設置した。特定の量の各化合物を図6に示す。このインキュベーション後、細胞をトリチウム化チミジンで18時間パルスして、DNA合成の量を決定した。細胞を溶解させ、この溶解物を濾過して、フィルター上のDNAをトラップし、フィルターをシンチレーションカウンターで計測した。組み込まれたトリチウムの量を記録し、図7に示す。他の細胞と混合していないドナーAからのPBMCまたはドナーAからの照射したPBMCと混合したPBMCは陰性対照としての役割を果たし、これは、ドナーBに対しても同様であった。陽性対照は、Bxと混合したAからのPBMCまたは逆もしかりであった(visa versa)。すべての濃度のセレン化物は、対照レベルに対する標識を低減した。最大濃度のヨウ化物が標識量を低減した。その他は、標識化の程度がT細胞活性化の程度と直接相関することを示した。低レベルの標識化は、免疫抑制と相関する。これらの実験は、セレン化物及びヨウ化物が免疫抑制効果を有することを実証する。
実施例4
ヨウ化ナトリウムは、心筋梗塞の転帰を改善する
この実施例は、梗塞を誘発する前の2日間飲料水中のヨウ化ナトリウム(NaI)による治療が心臓発作のマウスモデルにおける転帰を改善することを実証する。
心臓発作のマウスモデルにおける心筋梗塞のサイズへのNaIを含有する飲料水による事前の処置の効果を試験するために、虚血を開始させるために左冠状動脈下行枝の開胸結紮(LAD結紮)の直前の2日間、第1の群においては0.07mg/kg/日(通常の飲料水)、第2の群においては0.77mg/kg/日、または第3の群においては7.07mg/kg/日の投与量を達成するために、3つの群のマウスに、様々な濃度のヨウ化物を含有する飲料水を提供した。第4群のマウスに、虚血の開始前の2日間通常の飲料水を提供したが、虚血の開始から55分後、ビヒクル(生理食塩水)または試験薬剤(NaI)のいずれかをこれらのマウスの各々の大腿静脈に注射した。次いで、マウスの心臓の筋肉を、虚血の開始から60分後、結紮を解放することによって再灌流した。再灌流の2時間後、梗塞サイズを、形態計測によって測定した(図1)。この研究においてすべての動物を同様の方法で処置したことを確認するために、左心室の割合としてのリスク面積(AAR)を決定した(図8)。リスク面積(AAR)及び梗塞サイズ(Inf)を、特異的色素TTC及びエバンスブルーを使用して測定した。加工した画像を、不偏的な方法で、一定の閾値を設定し、Photoshop(登録商標)によって画像を生成し得ることによって生成し、定量して、図8中に示されるデータを得た。
これらの結果は、通常の水で事前に処置した群をより高い濃度のヨウ化物を含有する水で事前に処置した群と比較した場合に、統計学的に有意な梗塞サイズの減少があったことを示す(図8)。これらの減少は、再灌流時にヨウ化物を静脈内投与したマウスにおいて観察されたものより若干少ないか、またはそれと同程度であった。
実施例5
ヨウ化ナトリウムは、慢性心不全を改善する
この実施例は、ヨウ化ナトリウム(NaI)による処置が慢性心不全のマウスモデルにおける転帰を改善することを実証する。
マウスモデルにおける心臓発作後の慢性心不全へのNaIを含有する飲料水の効果を試験するために、2つの群のマウスに、虚血を開始させるために左冠状動脈下行枝の開胸結紮(LAD結紮)の直後から開始し、ヨウ化物を欠く飲料水または0.77mg/kg/日のヨウ化物を含有する飲料水を提供し、このことを12週間にわたる研究が終了するまで継続した。LAD結紮前、ならびにLAD結紮から1週間後、2週間後、4週間後、8週間後、及び12週間後、マウスを心エコー検査によって検査して、それらの左心室駆出率及び左心室短縮率を決定した。これらの結果を図9に示す。この研究は、より多くのマウスを用いて上述のように繰り返され、両方の研究の組み合わせた結果を図10に示す。
これらの結果は、通常の飲料水で処置した群と比較して、0.77mg/kg/日のヨウ化物を含有する水で処置した群において、左心室駆出率低下及び左心室短縮率の統計学的に有意な増加があったことを示す(図9)。これらの結果は、処置が心筋梗塞後の慢性心不全を含む、慢性心不全を治療または予防するために使用され得ることを実証する。
実施例6
ヨウ化ナトリウムは、急性心筋梗塞の治療において有効である
この試験は、生理食塩水のみ受容し、30分間の虚血に供したプラセボコホート、30分間の虚血に供した虚血条件付けコホート(5分間の虚血/5分間の再灌流、3x)と、静脈内ボーラスとして1mg/kgのNaIを受容し、30分間の虚血に供した処置コホートとの間の4及び24時間の血漿心臓トロポニンI(cTpnI)値及び24時間での心筋梗塞のサイズを比較することによって、急性心筋梗塞(AMI)のラットモデルにおける、静脈内ボーラスとして1mg/kgで投与したヨウ化ナトリウムの有効性を実証する。
方法
Male CD(登録商標)IGSラット(300〜450g)を、30分間のLAD閉塞に供し、続いて、24〜30時間の再灌流を行った。200〜400uLの血液を、EIAによる血漿cTpnI測定のために、再灌流から4時間及び24〜30時間後に採血した。24〜30時間後の採血後、LADを再閉塞し、エバンスブルーの静脈内投与後、心臓を切除した。心臓を一晩冷凍し、切断し、その後の盲目梗塞分析のためにトリフェニルテトラゾリウムクロライドで染色した。
動物の調製及び外科手術
ラットを、ケタミン/キシラジンの混合物(それぞれ、100mg/kg及び10mg/kg)を用いて麻酔し、16ゲージの血管カテーテルシース(Terumo(登録商標)Surflo静脈内カテーテル、16Gx2”、VWRカタログ番号TESR−OX1651CA)により挿管した後、100%の医療用酸素中2〜3%のイソフルラン下で維持した。動物に、1.5〜2.0mLの1回換気量/ストローク及び105ストロークの呼吸数/分で5ccのシリンダーを備えたHarvard Apparatus Model 683小動物人工呼吸器を用いて酸素を供給した。ラットを右側に横たわらせて、動物の毛をクリッパーを用いて外科領域から除去し、次いで、アルコールパッドで洗浄した。心拍を胸壁を通して視覚化し、左胸壁において鼓動する心臓より上を直接背腹切開した。下部の筋膜を離れるように解剖して、肋骨及び肋間筋を露出させた。次いで、4番目の肋間腔において、左開胸術を行い、肋骨を、アルム開創器(Fine Science Tools カタログ番号17008−07)を用いて分離させた。次いで、心膜を慎重に開き、手術野から肺及び胸腺を保持するために使用した。左前下降冠動脈を視覚化し、RB−2テーパー針(Ethiconカタログ番号8710H)が付いた5から0のprolene縫合糸を左心耳の境界で2回表面下で通過させて、動脈を完全に取り囲んだ。縫合糸の端を1cmの長さのPU−50チューブに通過させ、チューブに対して縫合糸を引き締め、止血鉗子を用いて定置にしっかり固定することによって、虚血を誘発した。虚血は、左心室壁におけるチアノーゼ及び無筋症の視覚的確認によって検証された。再灌流は、止血鉗子を取り外し、チューブをその心室壁から離して持ち上げ、それによって、LAD周辺の縫合糸を緩めることによって達成された。再灌流は、その心室壁のチアノーゼの回復を視覚化することによって確認された。LAD周辺の縫合糸は、定置に残し、次いで、胸は、肋骨の端を再度隣接させ、連続した5〜0のシルク縫合糸で筋肉組織を縫合することによって閉胸した。最後の縫合糸を設置させた場合、胸腔からの空気を吐き出させるために、人工呼吸器の呼息肢(expiratory limb)を3〜4サイクル塞ぐことによって、肺を一時的に膨張させた。次いで、縫合糸をきつく締めて、胸腔を密閉し、肋骨及び肋間筋より上にある筋膜を5〜0のシルクで縫合して、閉口し、次いで、皮膚を5〜0のシルクで縫合して、閉口した。次いで、麻酔を解除し、動物は、一旦自発呼吸が再び始まると、人工呼吸器を取り外した。一旦動物が意識を取り戻したら、気管内チューブを取り外した。全外科的手技の過程にわたって、動物は、加温の循環水パッド上に置き、加熱ランプ下で、中核体温を維持した。回復後、すべての動物は、4時間の採血まで加熱ランプ下、ケージ内に保持し、この時点で、動物は、動物居住施設に戻された。
血漿試料調製及びcTpnI EIA
イソフルラン麻酔(誘発用3%、維持用2%)下で、4時間の採血は、(ナイーブについては尾部出血によって、及びカテーテルを挿入する前の動物については頸動脈カテーテルから)ヘパリン化microtainer血漿分離チューブ(VWRカタログ番号VT365985)に回収されたが、一方、24〜30時間の採血は、頸動脈カテーテル(Charles Riverからのカテーテルを挿入する前)または頸静脈カテーテル(胸壁を開胸する前にナイーブ動物にインプラントされ、LADを再閉塞させる)のいずれかから回収された。血液は、10,000rpm以上で5分間遠心分離され、血漿を0.5mLのマイクロチューブに移し、−20℃で保存した。
心臓トロポニンIは、合計51の血漿試料(26の4時間の試料及び25の24〜30時間の試料)で測定し、これは、製造業者に指示に従って、ラット心臓;トロポニンI、高感度ELISA(Kamiya Biomedical Companyカタログ番号KT−639)において、1:50の希釈で行った。
形態学的分析
24時間の採血後、前日の切開によって胸壁を再度開胸し、LADを、前日のLAD周辺の適切な位置に残したprolene縫合糸を用いて再度閉塞した。一旦虚血が視覚的に観察されると、10%のエバンスブルー溶液を、心臓の灌流領域が青色に変わるまで、静脈内(頸動脈または頸静脈カテーテルを介して)投与し、次いで、心臓を胸腔から切除した。心房、弁、大血管、及び右心室を水中で徹底的に洗浄した後にトリミングし、次いで、左心室を再度水で簡単に洗浄し、セロファンで覆い、−20℃で一晩冷凍した。次いで、左心室を6つの2mM厚さのスライスに薄く切り、PBS中1.5mLの1% TTC中で、37℃で20分間インキュベートした。次いで、各スライスの頂点及び基底面の画像を、マクロレンズを搭載したNikon DSL 3200で取得した。梗塞分析を、処置に関して盲目で行った。
結果
血漿トロポニンレベルは、プラセボで処置された動物よりもヨウ化ナトリウムで処置された動物において一貫してより低かった(図10)。加えて、梗塞は、プラセボで処置された動物と比較して、ヨウ化ナトリウムで処置された動物においてより小さかった(図11)が、一方で、虚血条件付けコホートにおける梗塞は、プラセボと比較して、低減されたサイズの有意でない傾向のみ(onlyu)を示した。これらのデータは、ヨウ化物の投与がAMIを治療するのに有効であることを実証する。
実施例7
元素還元剤によるヒト疾患の治療
ヨウ化物(または硫化物もしくはセレン化物)による治療が有効であることが前述の実施例において示される疾患を含む、様々なヒト疾患は、脂質過酸化反応及びタンパク質のカルボニル化を引き起こす、活性酸素種の形成と関連している。バイオポリマーのこれらの化学的修飾は、疾患及び死亡をもたらす細胞の喪失において因果的役割を果たす。したがって、活性酸素種の形成と関連する他の疾患もまた、ヨウ化物または本明細書に記載されるもののうちのいずれか、例えば、硫化物もしくはセレン化物を含む別の元素還元剤(ERA)を用いて治療され得る。以下の疾患は、動物または組織がヨウ化物または硫化物もしくはセレン化物等の別のERAで処置される場合に期待される転帰を実証するために、動物またはヒト疾患のエクスビボモデルにおいて試験される。すべての研究には、ERAによる静脈内処置が含まれる。
腎臓移植
腎臓をイヌ及びブタから取り出し、24時間保存し、次いで、第2の腎臓を欠いており、それ故に、移植された腎臓の機能に依存する動物に移植する。ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、及びセレン化物は、保存した腎臓の機能性を増加させることが期待され、これにより、ERAがヒト腎臓移植を改善するために使用され得ることを確立する。
移植片対宿主病
マウス及びイヌを照射して、骨髄系幹細胞(BMSC)を破壊し、不適合ドナーのBMSCを、シクロスポリンA処置がない場合に、照射した動物に移植した。ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物は、シクロスポリンの役割を果たし、移植片拒絶及び死亡させずに、非関連骨髄を移植するのを可能にすることが期待される。
末梢血管疾患
マウスに外科手術を施して、後肢への大腿骨の血流を防ぐ。ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物による、外科手術後から2週間、1日2回の処置は、血流を永久に改善することが期待される。
騒音誘発聴覚消失
マウスは、大きな音に曝露され、次いで、ヨウ化物、セレン化物、または硫化物等のERAにより静脈内処置された。ERAによる処置は、未処置対照動物と比較して、転帰を改善する、すなわち、聴覚消失の低減をもたらすことが期待される。
急性虚血性脳卒中
脳への血流の一時的喪失に曝露されたラットが、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物等のERAで処置されると同時に再灌流される。ERAによる処置が、血流の喪失によって引き起こされた組織傷害を低減し、虚血再灌流損傷を低減することが期待される。
急性心筋梗塞
動物(マウス、ラット、及びウサギ)の左前下降冠動脈を、心臓発作を模倣するために一時的に結紮した。再灌流時に、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物等のERAを注入する。この処置により、心臓傷害を低減し、心臓機能を改善する。
造影剤誘発性腎症
マウスを、血管画像化の最中で、静脈内造影剤に曝露される患者が苦しむことが多い損傷の型をモデル化するために腎損傷を誘発する条件下で造影剤により処置する。ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物による処置は傷害を低減し、腎臓機能を改善することが期待される。
鎌状細胞貧血
特異的変異ヘモグロビンを担持するマウスは、鎌状細胞貧血に罹患している患者に見出されるのと同様の赤色細胞の溶血及び血管傷害に罹患している。これらのマウスにおける傷害は、急性低酸素曝露によって悪化させる。これらのマウスは、急性低酸素曝露の存在または非存在下で、硫化物、セレン化物、またはヨウ化物等のERAにより処置され、ERAによる処置によりマウスをこの傷害から保護することが期待される。
術後イレウス
腹膜(Pertioneal)外科手術は、腸蠕動運動の欠如がある期間のため、長期回復と関連している。そのような蠕動の欠如を、マウスにおいて誘発し、次いで、これらのマウスを、ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物により処置する。ERAは外科手術後のこの蠕動の欠如を短縮/排除することが期待される。
放射線誘導性肺損傷
癌治療の最中での放射線治療は、意図されたものでない肺損傷をもたらす場合がある。マウスを照射して、肺損傷を生じさせる。ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物を、照射前及び照射後にマウスに投与する。ERAによる処置は、肺傷害を減少させることが期待される。
人工呼吸器誘発肺損傷
肺の換気は一部の患者において大きな価値を有するが、換気は、肺に傷害を与え得る。マウスは、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物等のERAでの処置を有するまたは処置を有しない換気傷害に曝露される。ERA処置は、肺傷害を減少させることが期待される。
サルモネラ感染症
サルモネラによる細菌感染症は、致死的であり得る。マウスをサルモネラに感染させ、ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物により処置する。ERAは、免疫及び炎症応答を抑制し、それによって、生存を改善することが期待される。
網膜症
網膜における細胞の喪失は、活性酸素種から生じると考えられる。ERAは、抗酸化剤である。ラットは、ヒト網膜変性をモデル化する網膜症を引き起こす条件で処置し、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物等のERAにより処置する。ERAによる処置は、網膜細胞生存率を改善することが期待される。
臓器保存
臓器保存は、血流の一時的な喪失に関与する。ドナーブタからの移植された臓器は、受容ブタに移植される前に、保存溶液中のERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物によりエクスビボ灌流される。ERAによる処置は、一旦受容体に移植されると、臓器の機能を改善することが期待される。
低酸化性虚血性脳症
血流の一時的喪失、続いて、再灌流が永久的な脳傷害をもたらし得る。新生児フェレットを、この脳傷害を模倣する条件下で、ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物により処置する。出生時におけるERAによる処置が脳傷害を減少させることが期待される。
てんかん
てんかんは、脳及び傷害において過度な代謝活性を引き起こす発作と関連している。ERA処置は、代謝率を減少させる。ラットを、てんかん性発作及び脳傷害をモデル化する条件下で、ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、またはセレン化物により処置する。発作を患っているラットのERA処置が脳傷害を減少させることが期待される。
幹細胞移植
幹細胞の移植は、酸化的傷害及び多くの細胞の喪失をもたらす。心筋細胞を、傷害を受けたラット心臓に移植し、細胞及び動物を、ERA、例えば、ヨウ化物、硫化物、もしくは硫化物により処置するか、または処置しないで放置する。ERAによる幹細胞及び受容動物の処置は、幹細胞移植を改善することが期待される。
本明細書中で引用され、及び/または出願データシートにおいて列挙された、すべての上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。