JP6573160B2 - 発光素子 - Google Patents

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Description

本開示は有機エレクトロルミネッセンス素子などの発光素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略する)は、一般に、陽極および陰極と、これらの間に配置された、有機EL材料を含む発光層とを備える。有機EL素子には、陽極側および陰極側の両方から光を取り出すことの可能な両面発光型と、いずれか一方の電極側からのみ光を取り出す片面発光型とがある。
片面発光型の有機EL素子では、光を取り出す側の電極として透明電極が用いられ、他方の電極として、反射層を兼ねた金属電極(反射電極)が用いられることが多い。
しかしながら、金属電極を用いると、金属電極による吸収および表面プラズモン失活によって光の取り出し効率が低下するという問題がある。有機EL素子の「光取り出し効率」とは、発光層で生じた光に対して有機EL素子の光取り出し側表面から大気中に放出される光の割合をいう。
これに対し、特許文献1および2は、陽極および陰極の両方に透明電極を用い、素子の光取り出し側表面とは反対側の面に反射層を設ける構造を提案している。
特許第4742880号公報 特開2011−233288号公報
有機EL素子などの発光素子においては、光取り出し効率をさらに高めることが求められている。
本開示の一態様は、発光層で生じた光を高効率で取り出すことの可能な新規な発光素子を提供する。
本開示の一態様による発光素子は、透光性を有する第1電極層と、前記第1電極層に対向し、透光性を有する第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置された発光層と、前記第2電極層の前記発光層と反対側に配置された反射層とを備え、前記反射層は、母材と、前記母材とは異なる屈折率を有するフィラーとを含み、前記反射層の前記母材の屈折率は、前記発光層の屈折率以上である。
本開示の一態様は、発光層で生じた光を高効率で取り出すことの可能な新規な発光素子を提供する。
図1は、第1の実施形態の有機EL素子の一例を模式的に示す断面図である。 図2は、第2の実施形態の有機EL素子の一例を模式的に示す断面図である。 図3は、第2の実施形態の有機EL素子の他の例を模式的に示す断面図である。 図4は、実施例1の有機EL素子の模式的な断面図である。 図5は、比較例1の有機EL素子の模式的な断面図である。 図6は、実施例2の有機EL素子の模式的な断面図である。 図7は、比較例2の有機EL素子の模式的な断面図である。 図8Aは、実施例1、2および比較例1の反射層の反射率の入射角依存性を検討するためのシミュレーションモデルを示す図である。 図8Bは、実施例1、2および比較例1の反射層の反射率の入射角依存性を示す図である。 図9Aは、反射層における母材とフィラーとの屈折率差と、反射率との関係を検討するためのシミュレーションモデルを示す図である。 図9Bは、反射層における母材とフィラーとの屈折率差と反射率との関係を示す図である。 図10は、第3の実施形態の有機EL素子の一例を模式的に示す断面図である。 図11は、第4の実施形態の有機EL素子の一例を模式的に示す断面図である。 図12は、実施例3の有機EL素子の模式的な断面図である。 図13は、実施例4の有機EL素子の模式的な断面図である。 図14は、実施例5の有機EL素子の模式的な断面図である。 図15Aは、低屈折率層の屈折率と反射率の入射角依存性との関係を検討するためのシミュレーションモデルを示す図である。 図15Bは、低屈折率層の屈折率と反射率の入射角依存性との関係を示す図である。
本開示は、以下の項目に記載の発光素子を含む。
[項目1]
透光性を有する第1電極層と、
第1電極層に対向し、透光性を有する第2電極層と、
第1電極層と第2電極層との間に配置された発光層と、
第2電極層の発光層と反対側に配置された反射層と
を備え、
反射層は、母材と、母材とは異なる屈折率を有するフィラーとを含み、
反射層の母材の屈折率は、発光層の屈折率以上である発光素子。
[項目2]
第2電極層の屈折率は発光層の屈折率以上である、項目1に記載の発光素子。
[項目3]
第1電極層の発光層と反対側に配置された基板をさらに備える、項目1または2に記載の発光素子。
[項目4]
発光層と反射層との間に配置された、発光層の屈折率の95%以上100%未満の屈折率を有する層と、
第1電極層の発光層と反対側に配置された光取出し層と
をさらに備える、項目1から3のいずれかに記載の発光素子。
[項目5]
フィラーの屈折率は、母材の屈折率よりも低い、項目1から4のいずれかに記載の発光素子。
[項目6]
フィラーの屈折率は、母材の屈折率よりも高い、項目1から4のいずれかに記載の発光素子。
[項目7]
フィラーの平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下である、項目1から6のいずれかに記載の発光素子。
[項目8]
母材は、基材と、基材よりも高い屈折率を有する母材フィラーとを含み、
母材フィラーの平均粒子径は0.005μm以上0.05μm以下である、項目1から7のいずれかに記載の発光素子。
[項目9]
透光性を有する第1電極層と、
第1電極層に対向し、透光性を有する第2電極層と、
第1電極層と第2電極層との間に配置され、光を発する発光層と、
第2電極層の発光層と反対側に配置され、光を拡散反射する反射層と、
発光層と反射層との間に配置され、発光層よりも屈折率の低い低屈折率層と
を備える発光素子。
[項目10]
発光層で発した光の一部は低屈折率層を透過し、発光層で発した光の他の一部は、低屈折率層と、低屈折率層の発光層側に位置する層との界面で反射する、項目9に記載の発光素子。
[項目11]
低屈折率層は、反射層と第2電極層との間に配置されている、項目9または10に記載の発光素子。
[項目12]
低屈折率層の前記反射層と反対側に配置された光取出し層を、さらに備える、項目9から11のいずれかに記載の発光素子。
[項目13]
光取出し層は、第2電極層と低屈折率層との間に配置されている、項目12に記載の発光素子。
[項目14]
光取出し層は、第1電極層の発光層と反対側に配置されている、項目12に記載の発光素子。
[項目15]
光取出し層は、低屈折率層と接している、項目12または13に記載の発光素子。
[項目16]
低屈折率層の厚さは1μm以上1mm以下である、項目9から15のいずれかに記載の発光素子。
[項目17]
低屈折率層の屈折率は1.5未満である、項目9から16のいずれかに記載の発光素子。
[項目18]
低屈折率層は空気層である、項目9から17のいずれかに記載の発光素子。
[項目19]
反射層は、母材と、母材とは異なる屈折率を有するフィラーとを含み、
反射層の母材の屈折率は、低屈折率層の屈折率以上である、項目9から18のいずれかに記載の発光素子。
[項目20]
反射層のフィラーの平均粒子径は0.1μm以上10μm以下である、項目19に記載の発光素子。
[項目21]
母材は、基材と、基材よりも高い屈折率を有する母材フィラーとを含み、
母材フィラーの平均粒子径は0.005μm以上0.05μm以下である、項目19または20に記載の発光素子。
(本発明者の知見)
特許文献2は、光取り出し側表面とは反対側の面に、透明電極および発光層よりも高い屈折率を有する高屈折率層と、反射層とをこの順で設けることを開示している。また、高屈折率層には、光散乱効果のある微粒子を分散させることを提案している。反射層は金属材料からなる膜もしくは誘電体多層膜である。
本発明者が検討したところ、特許文献2に開示された構成では、高屈折率層による吸収で光取り出し効率が低くなる可能性がある。また、反射層が金属材料からなる場合には、金属材料としてAgを用いるときの反射率が最大となるが、Ag層の可視光に対する反射率は95%程度であり、光取り出し効率を十分に高めることは難しい。反射層が誘電体多層膜の場合には、誘電体多層膜が波長依存性および角度依存性を有するので、可視光域全体または全光束において光取出し効率を高めることが困難である可能性がある。さらに、多層膜形成のプロセスが煩雑であるという問題もある。また、発光層の屈折率と反射層の母材の屈折率との関係に言及されていないため、高屈折率層と反射層の界面で全反射が生じる可能性がある。従って、特許文献2に開示された構成では、高い光取り出し効率が得られない場合がある。
本発明者は、光のロスを低減し得る反射層の構成を検討した。その結果、発光層、反射層の母材およびフィラーの屈折率の関係を制御することにより、発光層で生じた光の取り出し効率を向上できるという知見を得た。
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態の発光素子を説明する。以下では、発光素子として有機EL素子を例示する。
図1は、第1の実施形態の有機EL素子の一例を示す模式的な断面図である。図1に示す有機EL素子100は、基板21と、基板21に支持された第1電極層22と、第2電極層23と、第1電極層22と第2電極層23との間に配置された機能層としての有機層30と、第2電極層23の有機層30と反対側に配置された反射層40とを備える。有機層30は、少なくとも発光層32を含む。この例では、有機層30は、発光層32およびホール注入層31を含んでいる。
第1電極層22および第2電極層23は透光性を有している。ここで、「透光性を有する」とは、少なくとも第1の光を含む可視光が第1電極層あるいは第2電極層を通過する際に吸収される割合が、例えば50%以下であることをいう。「第1の光」の波長は、例えば、発光層32が発する光のピーク波長である。なお、第1の光の波長は、発光層32が発する波長帯域内の波長であればよく、ピーク波長でなくてもよい。典型的には、第1電極層および第2電極層の一方または両方は透明な導電材料を用いて形成される。
反射層40は、母材43と、フィラー44とを含む。ここでは、母材43の屈折率nPは、発光層32の屈折率nEL以上である。図示する例では、母材43は、基材41に、基材41よりも高い屈折率を有する母材フィラー42が添加された構成を有する。母材フィラー42の添加により、所望の高い屈折率nPを有することが可能である。なお、母材43は単一の材料でもよい。フィラー44の屈折率nFは、母材43の屈折率nPと異なっている。フィラー44の屈折率nFは、母材43の屈折率nPよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。なお、本明細書では、「屈折率」、「透過率」および「反射率」は、それぞれ、発光層32が発する光(可視光)に含まれる第1の光の屈折率、透過率および反射率をいう。
前述したように、従来の有機EL素子では、例えば反射層表面で全反射した光が、素子内部を導波する導波光となり、素子外部に取り出すことができない場合がある。導波光の一部は、有機層等を繰り返し通過する間に吸収される。これに対し、有機EL素子100では、反射層40の母材43の屈折率nPは、発光層32の屈折率nEL以上である。このため、発光層32で発した光は、反射層40と、反射層40の有機層30側に隣接する層(図1に示す例では第2電極層23)との界面で全反射されずに反射層40に入射するので、導波光を低減することが可能になる。また、反射層40は、母材43と屈折率の異なるフィラー44を含んでいるため、反射層40に入射した光は、反射層40内部で拡散反射する。拡散反射した光は、基板21側から取出され得る。従って、従来よりも光取り出し効率を向上できる。
また、本実施形態では、反射層40とその有機層30側に隣接する層との界面における光の全反射が抑制されるので、導波光を外部に取り出すための構造を設ける必要がない。例えば外部散乱層などの光取出し層を発光層32の基板21側に設けなくてもよい。
反射層40は、金属材料からなる金属電極の反射率よりも高い反射率を有し得る。金属電極の反射率は、最大反射率をもつAg電極でも95%である。これに対し、本実施形態では、母材43とフィラー44との屈折率差および光の入射角などにもよるが、反射層40の反射率を95%よりも高くすることが可能である。
本実施形態の有機EL素子100では、金属性の反射層(金属電極など)を用いる場合と比べて、表面プラズモンによるロスが発生しない。また、反射層として誘電体多層膜を用いる場合と比べて、反射率の波長依存性および入射角度依存性が小さい。このため、より確実に光取り出し効率を高めることができる。
さらに、本開示の実施形態では、反射層に入射する光が反射層で拡散反射されるので、金属性の反射層(例えばミラー層)を用いた場合のように鏡面反射による強い干渉が生じない。このため、素子を構成する各層の厚さバラつきに対するロバスト性が高い。
また、従来の有機EL素子では、反射層で全反射した光が導波光となり、有機層および電極層を繰り返し通過する。導波光の一部は、有機層または電極層で吸収され得る。これに対し、本実施形態では、反射層40の表面で全反射が生じないため、有機層30および電極層22、23での光の吸収を低減できる。従って、干渉を考慮することなく容易に有機EL素子の薄膜化を実現できる。
第2電極層23の屈折率は発光層32の屈折率nEL以上であってもよい。これにより、発光層32から反射層40に向かう光が、反射層40に達する前に、第2電極層23とその有機層30側に隣接する層(ここでは有機層30)との界面で全反射することを抑制できる。従って、発光層32からの光をより効率的に反射層40に入射させることが可能になる。
図示していないが、第2電極層23と反射層40との間に1または複数の層(介在層)をさらに設けてもよい。その場合、介在層の屈折率は発光層32の屈折率nEL以上であってもよい。これにより、第2電極層23と反射層40との間に位置する界面で光が全反射することを抑制できるので、より効率的に光を取り出し得る。
<有機EL素子100の各構成要素>
(基板21)
基板21としては、ガラス基板やプラスチック板などを用いることができる。ガラス基板の材料としては、例えば、石英ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを採用することができる。また、プラスチック板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどを採用することができる。プラスチック板を用いる場合は、プラスチック板の表面にSiON膜、SiN膜などが成膜されたものを用いることで、水分の透過を抑えることが好ましい。なお、基板は、リジッドなものでもよいし、フレキシブルなものでもよい。
(有機層30)
有機層30は、少なくとも発光層を含んでいればよく、発光層以外の、ホール注入層、ホール輸送層、インターレイヤー、電子輸送層、電子注入層などは適宜設ければよい。
発光層32の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体など、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したものなどや、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、およびこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、およびこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物などが挙げられる。また、上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えばイリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体、ユーロピウム錯体などの発光材料、またはそれらを分子内に有する化合物若しくは高分子も好適に用いることができる。
電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、チタン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムなどの酸化物、などを用いることができる。
また、電子輸送層の材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq3等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール(TAZ)誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。また、電子注入層の材料は、例えば、電子注入を促進させるドーパント(アルカリ金属など)を混合した有機半導体材料を用いることができる。
ホール輸送層の材料としては、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位が小さい低分子材料や高分子材料を用いることができる。例えば、ポリビニルカルバゾール(PVCz)や、ポリピリジン、ポリアニリンなどの側鎖や主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体などの芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ホール輸送層の材料としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを用いることが可能である。
ホール注入層31の材料としては、例えば、チオフェン、トリフェニルメタン、ヒドラゾリン、アミールアミン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニルアミンなどを含む有機材料が挙げられる。具体的には、たとえば、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、TPDなどの芳香族アミン誘導体などで、これらの材料を単独で用いてもよいし、2種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。
インターレイヤーは、発光層側からのキャリアの漏れを抑制するキャリアブロッキング機能を有することが好ましい。なお、本実施形態では、インターレイヤーが、発光層側からの電子の漏れを抑制する電子ブロッキング層を構成している。有機EL素子では、インターレイヤーを設けることにより、発光効率の向上および長寿命化を図ることが可能となる。インターレイヤーの材料としては、例えば、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などを用いることができる。
これら有機材料は、必要に応じて、適宜選択して用いることができる。また、塗布法(例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法など)のような湿式プロセス、真空蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜される。
(第1および第2電極層)
第1および第2電極層のうち一方は陽極、他方は陰極として用いられる。陽極および陰極の材料として、光吸収性の比較的低い導電性材料が用いられ得る。例えば、金(Au)やアルミニウム(Al)などの金属、ITOなどの金属酸化物、導電性高分子、金属ナノ粒子や金属ナノワイヤを保持する光透過樹脂が適用できる。
金属酸化物としてはITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO2、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム−亜鉛酸化物)などの金属酸化物などが挙げられる。これらの材料を用い、真空蒸着法や、スパッタリング法などによって電極を形成することができる。
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレン、ポリカルバゾールなどの導電性高分子材料を用いることができる。また、導電性を高めるために、例えば、スルホン酸、ルイス酸、プロトン酸、アルカリ金属、アルカリ土類金属などのドーパントをドーピングしたものを採用してもよい。
金属ナノ粒子や金属ナノワイヤを保持する光透過樹脂膜の金属ナノ粒子、金属ナノワイヤなどの導電性を持つ物質としては、銀、金、銅等の金属が挙げられる。この樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられる。
導電性高分子材料、金属ナノ粒子や金属ナノワイヤを保持する光透過樹脂膜は、塗布法(例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法など)のような湿式プロセス、転写法などの乾式プロセスによって成膜される。
本実施形態では、第1電極層22や第2電極層23の光透過率が、例えば50%以上、より好ましくは70%以上となるように、材料、厚さおよび形成方法を選択する。
有機EL素子100では、基板21上に第1電極層22および有機層30を形成した後、有機層30の上に第2電極層23を形成する。このため、第1電極層22と同じ成膜条件で、第2電極層23を形成することが困難な場合がある。第2電極層23を形成する際には、有機層30に用いる材料の耐熱性を考慮して温度などの条件を設定してもよい。有機層30へのダメージの要因として、例えばスパッタの場合は加熱温度およびイオン衝突、塗布の場合は塗布材料中の不純物の有機層30への浸透、乾燥時の温度等が挙げられる。
第1電極層22および第2電極層23として、例えばITO膜を形成してもよい。ITO膜では、加熱温度180℃程度で結晶化が生じ、結晶化の前後で特性が異なる。一般的に、ボトムエミッション型の有機EL素子の透明電極には、200℃以上の温度で形成されたITO膜が用いられる。200℃以上で形成されたITO膜は、低温で形成したITO膜よりも導電性に優れ、かつ、高い透明性を有する。また、光の吸収も小さい。このため、本実施形態における第1電極層22として、例えば200℃以上の温度で形成したITO膜を用いることが好ましい。一方、第2電極層23は、有機層30の上に形成される。このため、有機層30に用いる材料の耐熱性を考慮して低温(例えば200℃未満)で形成される。一例として、300℃で形成したITO膜(300℃成膜ITO)と室温で形成したITO膜(室温成膜ITO)との屈折率および消衰係数を表1(後述)に示す。表1から、室温成膜ITOでは、300℃成膜ITOよりも消衰係数が1桁高く、光の吸収が大きいことが分かる。
(反射層40)
反射層40は、母材43と、母材43と異なる屈折率を有するフィラー44とを含んでおり、拡散反射層として機能し得る。反射層40は、屈曲性を有していてもよい。母材43にフィラー44を添加することによって、高い反射率を有する反射層40が得られる。反射層40は、例えば60%以上、好ましくは80%以上の反射率を有していればよい。本実施形態によると、例えば、反射層40に、金属で最大の反射率を持つAgの反射率(95%)以上の反射率を持たせることも可能である。
母材43は、発光層32の屈折率以上の屈折率を有する。これにより、発光層32で発した光は、反射層40と、反射層40の発光層32側に位置する層(ここでは第2電極層23)との界面で全反射せずに、反射層40に入射する。
母材43は、単一の材料である必要はなく、例えば、基材41に、基材41よりも高い屈折率を有する母材フィラー42を混ぜることによって形成されていてもよい。これにより、基材41よりも高い屈折率を有する母材43が得られる。母材43が基材41および母材フィラー42を含む場合でも、母材43の屈折率が発光層32の屈折率以上であれば、本実施形態の効果が得られる。このような構造を有する反射層40を用いると、母材フィラー42の体積比率等によって母材43の屈折率を調整できる。このため、発光層32からの光を反射層40内により効率的に取り込むことが可能になり、光取出し効率をさらに高めることができる。
なお、基材41および母材フィラー42を含む母材43の屈折率は、下記の式(1)で求めることができる。
母材43の屈折率=(母材43に対する基材41の体積比率)×(基材41の屈折率)+(母材43に対する母材フィラー42の体積比率)×(母材フィラー42の屈折率) ・・・(1)
母材フィラー42は、可視光が散乱されない大きさを有すると有益である。母材フィラー42の平均粒子径は、例えば0.005μm以上0.05μm以下であってもよい。なお、本開示において、「平均粒子径」とは、動的光散乱法によって測定された粒径分布におけるピーク値を意味する。
母材フィラー42としては、TiO2(屈折率:2.1)、ZrO2(屈折率:2.5)、ITO(屈折率:2.0)、ATO(屈折率:2.0)、ZnO(屈折率:2.0)、CeO2(屈折率:2.2)、CdO(屈折率:2.5)などが挙げられる。母材43の基材41としては、高い屈折率を有するものが好ましく、例えば、フルオレン系樹脂化合物、ナフタレン系樹脂化合物などが挙げられる。母材43に対する母材フィラー42の体積比率は、母材43の屈折率が所望の値となるように適宜調整され得る。
言うまでもないが、母材43は、母材フィラー42を含まない単一の材料であってもよい。この場合、母材43となる材料としては、硫黄変性樹脂化合物、例えばチオフェン系樹脂化合物が挙げられる。
上述したように、反射層40は、フィラー44を含んでいる。母材43に混合されるフィラー44は、母材43と異なる屈折率を有していればよい。フィラー44の屈折率は、母材43よりも低くてもよいし、高くてもよい。フィラー44は、可視光が散乱される大きさを有すると有益である。フィラー44の平均粒子径は例えば0.1μm以上10μm以下であってもよい。これにより、発光層32からの光をより効率的に拡散反射することができる。
母材43よりも屈折率の低いフィラー44としては、シリカ粒子、中空シリカ粒子、中空アクリル粒子、中空多孔質アクリル粒子、メソポーラスシリカ粒子などが挙げられる。中空の粒子は、内部(空気)の屈折率が1.0と低いので、母材43の反射率をより効果的に高めることが可能である。また、基板21としてフレキシブル基板を用いて、有機EL素子100に屈曲性、形状自由度などを与えたい場合、フィラー44として、低い弾性(弾性率:例えば100MPa以下)を有するフィラーを用いることが好ましい。低弾性のフィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂粒子、PTFE樹脂粒子、中空有機粒子(スチレン−アクリル共重合体)、空孔などが挙げられる。なお、空孔は、発泡剤を母材43に混合し、加熱などの発泡処理を行うことによって母材43中に形成され得る。一方、母材43より屈折率の高いフィラー44としては、TiO2、ZrO2、中空TiO2、中空ZrO2などが挙げられる。
フィラー44と母材43との屈折率差は特に限定しないが、例えば0.11以上、好ましくは0.25以上である。これにより、より高い反射率を実現し得る。母材43が基材41と母材フィラー42とを含む場合、基材41よりも低い屈折率を有するフィラー44を用いると、母材フィラー42の添加によって母材43の屈折率を高めることができるとともに、母材43とフィラー44との屈折率差を大きくできるので、反射率をより高めることが可能になる。
母材43に対するフィラー44の体積比率は、所望の反射率が得られるように適宜調整され得る。母材43に対するフィラー44の体積比率は例えば1%以上であってもよい。フィラー44の体積比率が1%以上であれば、反射性を付与することができる。母材43に対するフィラー44の体積比率は、10%以上であり得る。これにより、高い反射率(例えば60%以上)を得ることが可能になる。フィラー44の体積比率は、30%以下であり得る。フィラー44の体積比率が例えば30%以下であると、基材41に母材フィラー42およびフィラー44の両方を混合させやすい。
反射層40が母材フィラー42およびフィラー44を含む場合、それらは平均粒子径によって区別され得る。例えば、動的光散乱法によって測定された粒径分布が、粒子径0.005μm以上0.05μm以下の範囲に第1ピークを有し、かつ、0.1μm以上10μm以下の範囲に第2ピークを有する場合、第1ピークを含む山部が母材フィラー42に相当し、第2ピークを含む山部がフィラー44に相当する。なお、0.05μmより大きくかつ0.1μmより小さい平均粒子径を有する粒子は、それが可視光を散乱する場合にはフィラー44に相当し、可視光を散乱しない場合には母材フィラー42に相当する。
反射層40は、例えば以下の方法で形成できる。ここでは、母材43の基材41として、光硬化性アクリル樹脂、母材フィラー42としてジルコニア粒子、フィラー44としてシリコーン樹脂粒子を用いた反射層40の一例を説明する。
まず、母材43として光硬化性アクリル樹脂組成物を作製する。例えば、SP値が例えば9.5以下である有機溶媒と、ジルコニア粒子と、フォスフェート系分散剤とを含む分散液を作製する。次いで、この分散液にアクリレートおよび光開始剤を添加する。続いて、分散液の有機溶媒を揮発させることにより、光硬化性アクリル樹脂組成物が得られる。一例として、ジルコニア粒子(第一稀元素化学工業株式会社製、UEP−100(一次平均粒径:10〜15nm))を19.0質量%、フォスフェート系分散剤(エレメンティス社製、「NUOSPERSE FA−196」)を1.0質量%、有機溶媒(酢酸エチル)を80質量%含む分散液に、アクリレート(大阪ガスケミカル社製、フルオレンアクリレート「オグソールEA−0200」(屈折率:1.62))および光開始剤(BASFジャパン株式会社製、「Darocur1173」)を添加する。この例では、ジルコニア粒子分散液、フルオレンアクリレートおよび光開始剤は、光硬化性アクリル樹脂組成物において、ジルコニア粒子+分散剤が50質量%、フルオレンアクリレートが49.5質量%、光開始剤が0.5質量%となるように混合する。この後、有機溶媒を揮発させると、波長533nmの光に対する屈折率が1.772の光硬化性アクリル樹脂組成物が得られる。
次いで、得られた母材43にフィラー44を添加する。フィラー44の添加量は、母材43に対する体積比率が所定の値になるように調整される。ここでは、フィラー44として、シリコーン樹脂粒子を、母材43に対する体積比率が例えば20%となるように添加する。代わりに、ZrO2粒子などの他の粒子を添加してもよい。この後、フィラー44と母材43とをヘラで混合する。続いて、脱泡混練機で母材43とフィラー44とを攪拌し、反射層溶液を得る。
得られた反射層溶液を第2電極層23の上に塗布する。塗布後、反射層溶液を硬化させて反射層40を得る。硬化方法は特に限定しないが、例えば反射層溶液に紫外線を照射することにより、硬化させることができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態の有機EL素子を説明する。本実施形態の有機EL素子は、発光層32と反射層40との間に、発光層32の屈折率nELの95%以上100%未満の屈折率を有する層(以下、「低反射率層」と称することがある)を少なくとも1層備え、かつ、発光層32の反射層40と反対側に光取出し層が配置されている点で、第1の実施形態の有機EL素子100と異なる。
図2は、第2の実施形態の有機EL素子を例示する模式的な断面図である。図2に示す有機EL素子200は、低反射率層として、発光層32と反射層40との間に電子輸送層33を有している。また、基板21と第1電極層22との間に光取出し層50を有している。その他の構成は、第1の実施形態の有機EL素子100であるため、説明を省略する。
低反射率層(ここでは電子輸送層33)および光取出し層50を備えることにより、次のような効果が得られる。
第1の実施形態の有機EL素子100では、第2電極層23および反射層40に高角度で入射する光の一部は、第2電極層23または反射層40の母材43によって吸収される可能性がある。「高角度で入射する光」とは、基板21の法線方向に対する入射角βが比較的大きい(例えば70°以上90°未満)光をいう。消衰係数kを有する層に高角度で入射する光(波長λ)は、層の中での伝播距離dが長くなる。このため、下記の式(2)で示されるランベルトの法則により透過率Tが低くなる。すなわち、その層による吸収が大きくなる。
透過率T=exp(−4πkd/λ) ・・・(2)
k:消衰係数、d:伝播距離、λ:波長
特に第2電極層23として、低い温度で形成したITO膜を用いる場合、第2電極層23による光の吸収が大きくなる。母材43および第2電極層23による吸収が大きくなると、光取り出し効率が低下する場合がある。
これに対し、有機EL素子200では、発光層32から第2電極層23側に臨界角以上の高角度で向かう光は、低反射率層(ここでは電子輸送層33)と発光層32との界面で全反射する。上記の臨界角は、低反射率層および発光層32の屈折率で決まる角度である。低反射率層で全反射した光は、光取出し層50で散乱されるので、導波光にならずに素子外部に取り出され得る。一方、発光層32から第2電極層23側に臨界角未満の低角度で向かう光は、第1の実施形態と同様に、反射層40に低角度で入射して拡散反射される。拡散反射された光は、基板21側から素子外部に取り出され得る。
このように、本実施形態によると、発光層32から第2電極層23に高角度で向かう光を、選択的に低反射率層表面で全反射させることができるので、第2電極層23または反射層40における光の吸収を低減できる。この結果、光取り出し効率を高めることが可能になる。
例えば発光層32の屈折率の95%の屈折率を有する低反射率層の臨界角は72°である。従って、低反射率層に入射する光のうち72°以上で入射する光は、低反射率層で全反射する。低反射率層の反射率は20%((90−72)°/90°×100)以下である。低反射率層の屈折率が発光層32の屈折率の95%以上であれば、臨界角は72°以上となり、臨界角以上の高角度で入射する光は、全反射する。一方、低反射率層の屈折率が発光層32の屈折率以上であると、高角度で入射する光を全反射する効果が得られない。従って、低反射率層の屈折率は、発光層32の屈折率の100%未満に設定される。
なお、低反射率層の位置は、図2に示す位置に限定されない。低反射率層が発光層32と反射層40との間に配置されていれば、上記効果が得られる。低反射率層は、第2電極層23と反射層40との間に配置されていてもよい。この場合、反射層40における光の吸収も低減できる。ただし、低反射率層が、第2電極層23と発光層32との間に配置されていると、反射層40だけでなく第2電極層23における光の吸収も低減できるのでより有益である。低反射率層は1層に限定されず、複数層存在してもよい。
図3は、本実施形態の他の有機EL素子を例示する模式的な断面図である。図3に示す有機EL素子300では、第2電極層23と反射層40との間に低屈折率層52が設けられている。低屈折率層52は、発光層32よりも低い屈折率を有する層であり、例えば発光層32の屈折率の95%未満の屈折率を有し得る。その他の構成は、図2に示す有機EL素子200と同様である。低屈折率層52を設けることにより、反射層40に高角度で入射する光の一部を、低屈折率層52と第2電極層23との界面で全反射させることができる。従って、反射層40による光の吸収をより効果的に抑制できる。
低屈折率層52は、透光性を有し、かつ、発光層32よりも低い屈折率を有する層であればよく、その材質や形成方法は特に限定しない。例えば、塗布法などで形成された透明樹脂層、透明フィルム、透明ガラス、シリカ膜等の無機膜、または有機膜であってもよい。無機膜および有機膜は、スパッタ、蒸着等によって形成され得る。透明樹脂としてはアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらは屈折率1.4程度である。また、低屈折率層52は空気層(屈折率1.0)などの気体層であってもよい。マッチングオイル(屈折率:例えば1.5)で低屈折率層52を形成することも可能である。
低屈折率層52の位置は、図3に示す位置に限定されない。低屈折率層52は、反射層40の発光層32側に配置されていればよい。これにより、低屈折率層52とその発光層側の層との界面に、臨界角以上の角度で入射する光を全反射させることができる。従って、反射層40または第2電極層23による光の吸収をより効果的に抑制できる。
<有機EL素子200、300の構成要素>
基板21、第1電極層22、第2電極層23および有機層30の材料および構成は、第1の実施形態と同様であり得る。
電子輸送層33の材料は、第1の実施形態で前述した材料を用いることができる。図2に示す例では、電子輸送層33を低反射率層として機能させている。この場合、電子輸送層33が、発光層32の屈折率の95%以上100%未満の屈折率を有するように、電子輸送層33の材料を選定する。これにより、電子輸送層33は、0%超20%以下の反射率を有し得るので、前述したように、第2電極層23および反射層40による光の吸収を抑制できる。
(光取出し層50)
光取出し層50は、光の反射角および/または屈折角を乱れさせる層であればよい。「光の反射角および/または屈折角を乱れさせる」または「光の角度を乱す」とは、例えば、ある一定の入射角で光取出し層50に入った光を、互いに異なる方向に進行する複数の光に変えることを意味する。光取出し層50を、例えば、屈折率の異なる2層の間に挿入すると、界面で全反射する光の角度を変えることができるので、全反射する光の一部を、臨界角以内で界面を通過する光に変えることが可能である。
光取出し層50の構造は特に限定しない。光取出し層50は、光取出し層50に入射する光の反射角および/または屈折角を乱れさせることが可能な構造を有していればよい。光取出し層50は、例えば表面が凹凸形状を有する層、内部に光反射性の界面を含有する層、屈折率の異なる媒体が接触する界面を含有する層などであってもよい。光取出し層50は、粒子または空隙を内部に含む層、または複数の材料が混合された層であってもよい。表面に凹凸形状を有する層は、マイクロレンズアレイシート(ピッチ:10μm程度)であってもよい。あるいは、凹凸形状を有する基板21上に光取出し層50を形成することによって、基板21の凹凸形状を反映した凹凸形状を有する光取出し層50を設けてもよい。光取出し層50として、例えばシリカ、アルミナなどの透光性微粒子を、透光性を有する結着剤中に分散させた光分散層を用いてもよい。光取出し層50は、屈折率の異なる2層の界面に設けられた凹凸構造であってもよい。
光取出し層50の光透過率は、例えば50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。光取出し層50による光の指向性の変化の大きさも特に限定しない。光取出し層50に入射する光は、光取出し層50の表面で全反射されずに、光取出し層50に入射することが好ましい。光取出し層50とその発光層側の層(ここでは第1電極層22)との界面による光の全反射を低減するためには、光取出し層50の屈折率は第1電極層22の屈折率以上であることが好ましい。
光取出し層50の具体的な例を以下に説明する。
・光取出し層50の具体例1
光取出し層50は光散乱層を有していてもよい。光散乱層では、例えば、光散乱粒子とバインダー樹脂とを含む光散乱領域と、光散乱領域よりも光散乱粒子の含有比率の低い光透過領域とが面内で混在していてもよい。このような光散乱層の形成方法は、例えば特開2009−76452号公報に開示されている。参考のため、特開2009−76452号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。以下、光散乱層を有する光取出し層50の形成方法の一例を説明する。
まず、テトラエトキシシラン86.8質量部にイソプロピルアルコール803.5質量部を加え、さらにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン34.7質量部及び0.1N−硝酸75質量部を加え、ディスパーを用いてよく混合することによって溶液を得る。得られた溶液を40℃恒温槽中で2時間攪拌し、重量平均分子量が1050のシリコーンレジン5質量%溶液を得る。このシリコーンレジン溶液に、光散乱粒子としてメチルシリコーン粒子(GE東芝シリコーン社製「トスパール120」:平均粒子径2μm)を、メチルシリコーン粒子/シリコーンレジン(縮合化合物換算)の固形分質量基準で80/20となるように添加して、ホモジナイザーで分散させることによって、メチルシリコーン粒子分散シリコーンレジン溶液をコーティング材料として得る。なお、上記の「縮合化合物換算」とは、テトラアルコキシシランの場合は、存在するSiがSiO2であるとしての質量、トリアルコキシシランの場合は、存在するSiがSiO1.5であるとしての質量である。
透光性の基板21として無アルカリガラス板(コーニング社製「No.1737」)を用い、上記のコーティング材料を基板21の表面にスピンコーターによって1000rpmの条件で塗布・乾燥する。この塗布・乾燥を6回繰り返した後に、200℃で30分間焼成する。これにより、厚さが約5μmの光散乱層を得る。得られた光散乱層付きの基板21のヘイズ値は例えば95.4、全光線透過率は例えば73.4%である。
上記方法で作製した光散乱層の表面を光学顕微鏡(キーエンス社製「VHX−500」)で観察すると、光散乱粒子が凝集した光散乱領域が海となり、光散乱粒子が存在しない光透過領域が島となった海島構造が確認される。島を構成する光透過領域の大きさは100μm以下である。また光散乱領域が占める面積割合は約70%である。
光散乱層の表面に、イミド系樹脂コーティング材(OPTMATE社製「HRI1783:nD=1.78、濃度18質量%)をスピンコーターによって2000rpmの条件で塗布して乾燥し、200℃で30分間加熱して硬化させることによって、厚さが約4μmの平坦化層を形成してもよい。このようにして、光散乱層および平坦化層を有する光取出し層50を得る。
・光取出し層50の具体例2
光取出し層50は、基板21上に配置された屈折率の低い第1層と、第1層上に配置された、第1層よりも屈折率の高い第2層とを含んでもよい。第1層と第2層との界面は凹凸構造を有していてもよい。
このような光取出し層は、例えば基板21の上に、表面に凹凸形状を有する第1層を形成し、その上に、高屈折率材料を用いて凹凸構造を埋め込むように第2層を形成することによって得られる。あるいは、基板の上に反射層40、第2電極層23、有機層30、第1電極層22を形成し、第1電極層22上に、表面に凹凸形状を有する第2層を形成し、次いで、凹凸構造を埋め込むように第1層を形成してもよい。
基板21として、一般的には、ガラス基板、樹脂基板などが用いられる。基板21の屈折率は、例えば1.5〜1.65程度である。第1層の材料は、基板21よりも低い屈折率を有する材料であればよく、例えばガラス、SiO2(石英)などの無機材料、樹脂などを用いることができる。第2層の材料としては、例えばITO(酸化インジウム錫)、TiO2(酸化チタン)、SiN(窒化シリコン)、Ta25(五酸化タンタル)、ZrO2(ジルコニア)などの比較的高い屈折率を有する無機材料または高屈折率樹脂などを使用することができる。第2層の屈折率は、例えば1.73以上であってもよい。
第1層および第2層の材料として無機材料を用いると、一般的には切削あるいは半導体プロセスといった比較的コストの高い工法が必要となる。一方、樹脂材料を用いれば、塗布、ナノインプリント、スピンコートといった比較的コストの低い工法で光取出し層を形成できる。
(実施例1および比較例1)
以下、図面を参照しながら、実施例1として、第1の実施形態の有機EL素子の一例を説明する。
図4は、実施例1の有機EL素子101を示す模式的な断面図である。図5は、比較例1の有機EL素子501を示す模式的な断面図である。比較例1の有機EL素子501は、発光層よりも屈折率の低い母材を用いた反射層140を有する。
実施例1および比較例1で用いる各層の材料の屈折率および消衰係数を表1にまとめて示す。表1に示す屈折率および消衰係数は、発光層としてAlq3層を用いる場合の発光ピーク波長533nmの光に対する値である。
Figure 0006573160
<実施例1>
図4に示すように、実施例1の有機EL素子101では、基板21としてのガラス基板上に、第1電極層22として300℃で形成したITO、ホール注入層31としてMoO3、ホール輸送層34としてα−NPD、発光層32としてAlq3、第2電極層23として室温で形成したITOを用いる。
反射層40は、発光層よりも高い屈折率を有する母材43と、フィラー44とを含む層である。本実施例では、基材41の材料としてのアクリル樹脂に母材フィラー42としてのZrO2粒子を分散させることによって得られた母材(屈折率:例えば1.772)43を用いる。フィラー44として、例えばシリコーン樹脂粒子を用いる。本実施例の反射層40は、例えば前述した方法で形成され得る。
なお、実際に有機EL素子として機能させる場合は、発光層32であるAlq3と第2電極層23である室温成膜ITOとの間に、光の挙動が無視できる程度の薄い電子注入層(厚さ:数nm程度)を設けることがある。電子注入層としては、Alq3にLiをドープしたもの、ZnOなどが用いられる。ここでは、電子注入層は、光の挙動に影響しないため、図示していない。
<比較例1>
図5に示すように、比較例1の有機EL素子501では、母材143を構成するアクリル樹脂に、フィラー44としてシリコーン樹脂粒子が混合された反射層140を用いる。反射層140の母材143は、高屈折率の母材フィラーを含まないため、発光層よりも低い屈折率(屈折率1.6)を有する。その他の構成は、実施例1と同様である。
<発光層で生じた光の挙動>
実施例1および比較例1における発光層で生じた光の挙動を、それぞれ、図4、図5に示す。
図5に示すように、比較例1では、発光層32からの光が反射層140に入射すると、反射層140のフィラー44と母材143との界面で拡散反射し、素子外部に取り出される。しかし、反射層140の母材143の屈折率(1.6)が発光層32の屈折率(1.768)よりも低いので、発光層32からの光の一部81は、第2電極層23と反射層140との界面で全反射する。全反射した光81は、第1電極層22と基板21との界面でも全反射する。このため、図示するように、素子中を導波し、素子の外部に取出すことができない。従って、光取り出し効率を高めることは困難である。
これに対し、実施例1では、反射層40の母材43は発光層32よりも高い屈折率を有するため、図4に示すように、第2電極層23と反射層40との界面で全反射が生じない。反射層40側に向かう光は全て反射層40に入射し、拡散反射する。従って、導波光の発生を抑制できるので、比較例1よりも高い取出し効率が得られる。
<反射率の入射角依存性>
続いて、シミュレーションにより、反射層40(あるいは反射層140)の母材43(あるいは母材143)の屈折率の違いによる反射率の入射角依存性を調べた。
図8Aは、シミュレーションに用いたモデルを示す図である。ここでは、30mm×30mm×厚さ1mmの反射層40に、波長533nmの光を入射角β(β:0°〜80°)で入射させる場合の反射率を求めた。なお、光の波長「533nm」は、有機EL材料としてAlq3を用いた場合の発光ピーク波長である。入射角βは、入射媒質から反射層40に向かう光の、反射層40の法線方向からの角度を指す。
シミュレーション条件は下記のとおりである。
・シミュレーション手法:光線追跡法
・シミュレーションソフト:照明設計解析ソフトウェアLightTools(Synopsys社)
・パラメータ:
反射層40の母材43の屈折率(実施例1) 1.772
反射層140の母材143の屈折率(比較例1) 1.6
入射媒質の屈折率 Alq3の屈折率 1.768
フィラー44の母材43に対する体積比率 20%
フィラー44(真球)の径 0.7μm
フィラー44の屈折率 1.4
シミュレーション結果を図8Bに示す。この結果から、比較例1では、入射角βが臨界角である65°以上になると全反射が生じることが確認できる。これに対し、実施例1では、アクリル樹脂にZrO2粒子を分散して高屈折率化した反射層40を用いているため、入射角βが大きくても全反射が生じないことが分かる。また、入射角βが0°以上65°未満(比較例1において全反射しない角度)のときの反射率を比較すると、実施例1の方が比較例1よりも高い。このことから、実施例1の反射層40は、比較例1の反射層140よりも高い反射率を有することが確認できる。これは、実施例1の反射層40では、母材43とフィラー44としてのシリコーン樹脂粒子との屈折率差が、比較例1の反射層140における屈折率差よりも大きいからと考えられる。
従って、反射層40の母材43の屈折率を高めることにより、発光層32からの光の反射層40の表面における全反射を抑制できるので、導波光に起因する光取り出し効率の低下を抑制できることが分かる。全反射せずに反射層40に入射した光は、反射層40内で拡散反射する。このとき、反射層40のフィラー44と母材43との屈折率差が大きいと、より高い反射率が得られるので、より効率的に光を取り出すことが可能になることが分かる。
(実施例2および比較例2)
以下、図面を参照しながら、実施例2として、第2の実施形態の有機EL素子の一例を説明する。
図6は、実施例2の有機EL素子201を示す模式的な断面図である。図7は、比較例2の有機EL素子502を示す模式的な断面図である。実施例2および比較例2で用いる各層の材料の屈折率および消衰係数を表1にまとめて示す。表1に示す屈折率および消衰係数は、発光ピーク波長533nmの光に対する値である。
<実施例2>
図6に示すように、実施例2の有機EL素子201は、発光層32の屈折率の95%以上の屈折率を有する低反射率層として、電子輸送層33を有している。また、基板21と第1電極層22との間に光取出し層50が設けられている。ここでは、電子輸送層33として、発光層32の屈折率の97%の屈折率を有するTAZ層を用いる。光取出し層50として、イミド系樹脂54にシリコーン樹脂粒子55を混合した層を用いる。光取出し層50は、例えば前述した具体例1と同様の方法で形成され得る。その他の構成は実施例1と同様である。
<比較例2>
図7に示すように、比較例2の有機EL素子では、基板21と第1電極層22との間に光取出し層50が設けられている。低反射率層は設けられていない。光取出し層50として、イミド系樹脂にシリコーン樹脂粒子を混合した層を用いる。その他の構成は比較例1と同様である。
<発光層で生じた光の挙動>
実施例2および比較例2における発光層で生じた光の挙動を、それぞれ、図6、図7に示す。
図7に示すように、比較例2では、発光層32から第2電極層23に向かう光の一部83は、第2電極層23である光吸収の大きい室温成膜ITOに高角度で入射し、このITO膜内を通る。光83の一部はITO膜で吸収される。
これに対し、実施例2では、図6に示すように、発光層32から高角度で反射層側に向かう光84は、発光層32と低反射率層(ここでは電子輸送層33)との界面で全反射する。従って、第2電極層23(光吸収の大きい室温成膜ITO)による光の吸収を低減できる。上記界面で全反射した光は、光取出し層50に入射し、散乱により外部に取り出される。より具体的には、低反射率層と発光層32との界面で全反射した光は、光取出し層50に入射し、その角度が乱される。光の角度が発光層32と空気の屈折率とで決まる臨界角未満であれば、空気中へ取出される。臨界角以上の光85は、例えば基板21と空気との界面で全反射した後、再び光取出し層50に入射して角度が乱される。これを繰り返すことで、臨界角以上の光85も、いつかは空気中に取り出され得る。従って、比較例2よりも高い光取出し効率が得られる。
<反射率の入射角依存性>
実施例1と同様のシミュレーション方法により、実施例2の有機EL素子における、発光層からの光の反射率の入射角依存性を調べた。シミュレーションモデルとして、光が低反射層を介して反射層40に入射された状態を想定した。低反射率層の屈折率を1.718とした。その他のパラメータは、実施例1と同様とした。
シミュレーション結果を図8Bに示す。なお、図8Bの実施例2における入射角βは、入射媒質から低反射率層33に入射される光の入射角を意味する。この結果から、低反射率層(TAZ層)を挿入することによって、入射角βが76°以上の光が全反射することが確認できる。従って、低反射率層(TAZ層)に76°以上の角度で入射した光は第2電極層23内に入らないため、第2電極層23内を伝播する光を低減できることが分かる。一方、低反射率層(TAZ層)を挿入しても、入射角βが76°未満であれば、本実施例における反射率は、実施例1の反射率と同程度であることが分かる。
従って、低反射率層を挿入することによって、低角度で反射層40に向かう光の反射率を低下させずに、高角度で反射層40側に向かう光の吸収を低減できることが確認できる。
(反射層40における母材43とフィラー44との屈折率差の検討)
続いて、本発明者は、反射層40における母材43とフィラー44との屈折率差と、反射層40の反射率との関係をシミュレーションによって検討した。
図9Aは、シミュレーションに用いたモデルを示す図である。ここでは、30mm×30mm×厚さ1mmの反射層40に、波長533nmの光を、反射層40の法線方向から入射させる場合(入射角β:0°)の反射率を求めた。なお、光の波長「533nm」は、有機EL材料としてAlq3を用いた場合の発光ピーク波長である。
シミュレーション条件は下記のとおりである。
・シミュレーション手法:光線追跡法
・シミュレーションソフト:照明設計解析ソフトウェアLightTools(Synopsys社)
・パラメータ:
反射層40の母材43の屈折率 1.8
入射媒質の屈折率 1.0
フィラー44の母材43に対する体積比率 60%
フィラー44(真球)の径 0.1μm、0.7μm、2μm
フィラー44の屈折率 1.0〜2.5
シミュレーション結果を図9Bに示す。この結果から、フィラーの屈折率と母材の屈折率との大小関係にかかわらず、屈折率差が0.11以上であれば、入射角βが0°の光に対する反射率を、Alの反射率である85%よりも高くできることが確認された。また、屈折率差が0.25以上であれば、入射角βが0°の光に対する反射率を、金属で最も反射率の高いAgの反射率(95%)よりも高くできることが確認された。
<フィラーの母材に対する体積比率と反射率との関係>
フィラーの屈折率を1.69(母材との屈折率差0.11)、フィラーの径を0.7μmとし、フィラーの母材に対する体積比率を変化させた点以外は、図9Aに示すモデルに適用した前述のシミュレーション条件と同じ条件でシミュレーションを行い、フィラーの体積比率と反射率との関係を検討した。この結果、フィラーの体積比率を10%以上に設定することにより、60%以上の高い反射率が得られることが分かった。従って、フィラーの径、屈折率などにもよるが、フィラーの体積比率を制御することにより、所望の反射率を実現できることが確認された。
(第3の実施形態)
発光層で発する光の一部は、反射層(拡散反射層)に吸収され得る。反射層における光の吸収は、光取り出し効率を低下させる要因となる。特に、高角度で透明電極から反射層に入射して反射層内を進行する光は、反射層内部を伝播する距離(光路長)が大きく、低角度で入射する光よりも吸収が大きい。
本発明者は、上記の点に着目し、反射層における光の吸収によるロスを低減することの可能な構造を検討した。その結果、発光層よりも屈折率の低い低屈折率層を反射層と発光層との間に挿入し、かつ、低屈折率層の挿入により全反射された光を散乱させる光取出し層を設けることにより、光取り出し効率を向上できるという知見を得た。
なお、第2の実施形態で説明された「低反射率層」および「低屈折率層」は、本実施形態における「低屈折率層」の例に含まれ得る。例えば、低屈折率層のうち、特に、発光層の屈折率の95%以上100%未満の屈折率を有するものが、低反射率層と呼ばれる場合がある。そのため、図3に示される有機EL素子300は、第3の実施形態の一具体例でもある。以下では、他の例について説明する。
図10は、第3の実施形態の有機EL素子の一例を示す模式的な断面図である。図10に示す有機EL素子102は、基板21と、第1電極層22と、第2電極層23と、機能層としての有機層30と、反射層45とを備える。この例では、有機層30は、発光層32およびホール注入層31を含んでいる。
反射層45は、前述の反射層40(例えば図1参照)と同様に、第2電極層23の有機層30と反対側に配置されている。反射層45は、発光層32から発する光を拡散反射する層であればよく、その材料および構造は特に限定しない。この例では、反射層45は、母材46およびフィラー44を含む拡散反射層である。反射層45の詳細は後述する。反射層45として、図1を参照して説明した反射層40を用いても構わない。
有機EL素子102は、図3を参照して説明した有機EL素子300と同様に、低屈折率層52および光取出し層50を有している。この例では、低屈折率層52は、第2電極層23と反射層45との間に配置されている。しかしながら、低屈折率層52の位置は、図10に示す位置に限定されない。低屈折率層52は、発光層32と反射層45との間に配置されていればよい。発光層32と反射層45との間に低屈折率層52を配置することにより、発光層32から、光取出し側とは逆側に向かう光を効率よく取り出し得る。従って、光取出し効率を向上することが可能である。有機EL素子102は、少なくとも1つの低屈折率層52を有していればよく、複数の低屈折率層52を有していてもよい。
低屈折率層52は、透光性を有する。本実施形態では、発光層32から反射層45側に向かう光の一部は、低屈折率層52を透過し、反射層45に入射する。発光層32から反射層45側に向かう光の他の一部は、低屈折率層52とその発光層32側に位置する層(ここでは光取出し層50)との界面で、発光層32側に全反射する。
光取出し層50は、発光層32で発した光の角度を乱すことの可能な層であり、基板21と低屈折率層52との間に配置され得る。この例では、光取出し層50は、第2電極層23と低屈折率層52との間に配置されている。有機EL素子102は、少なくとも1つの光取出し層50を有していればよく、複数の光取出し層50を有していてもよい。
本実施形態の有機EL素子102は、上記構成を有するので、次のような効果を奏する。
従来の有機EL素子では、反射層で光の吸収が生じ、光取り出し効率が低下するおそれがある。特に、反射層に高角度で入射して反射層内を進行する光の反射層の中での伝播距離dは、反射層に低角度で入射して反射層内を進行する光の反射層の中での伝播距離dよりも長いので、前述の式(2)からわかるように、反射層による吸収が大きい。つまり、反射層に高角度で入射する光が増加すると、光取り出し効率が低下することがある。
また、従来の有機EL素子では、発光層側から反射層に向かう光の一部が、素子内のいずれかの界面で全反射する場合がある。全反射した光は、素子内部を導波する導波光となり、素子外部に取り出すことができない可能性がある。導波光の一部は、有機層、電極層等を繰り返し通過する間に吸収される。
これに対し、本開示の有機EL素子102では、臨界角以上の高角度で、発光層32側から反射層45に向かう光は、低屈折率層52とその発光層32側に位置する層(ここでは光取出し層50)との界面で全反射するので、反射層45に入射しない。このため、反射層45における光の吸収を低減できる。このとき、全反射した光は、光取出し層50によって散乱され、導波光にならずに素子外部に取り出され得る。従って、反射層45による光の吸収に起因する光のロスを低減でき、光取り出し効率を高めることが可能である。低屈折率層52および発光層32の屈折率で決まる臨界角未満の低角度で、発光層32側から反射層45に向かう光は、低屈折率層52を透過して反射層45に入射し得る。反射層45に入射した光は拡散反射され、基板21側から素子外部に取り出され得る。
なお、低屈折率層52に高角度で向かう光は、低屈折率層52に入射せず全反射され得る。すなわち、高角度の光が低屈折率層52内に進入しないので、低屈折率層52における光の吸収を抑制できる。特に、吸収(消衰係数)の大きい低屈折率層52を用いる場合、または厚い(厚さ:例えば1μm〜1mm)低屈折率層52を用いる場合などでも、低屈折率層52における光の吸収に起因する取り出し効率の低下を抑制できる。
<有機EL素子102の構成要素>
有機EL素子102における基板21、第1電極層22、第2電極層23および有機層30の材料および構成は、第1または第2の実施形態と同様であり得る。
(反射層45)
反射層45は、発光層32から発する光を拡散反射する層であればよい。反射層45は、例えば、アルミニウム、クロム、銀等の金属膜であってもよい。金属膜は、蒸着、スパッタなどの任意の方法で形成され得る。あるいは、反射層45は、基材上に反射性粒子を塗布した反射膜、誘電体等の多層膜であってもよい。反射層45が拡散反射層として形成されるので、鏡面反射による強い干渉を考慮することなく容易に有機EL素子の薄膜化を実現し得る。
反射層45の第2電極層23側の表面が光散乱性を有すると有益である。光散乱性を有する構造は、特に限定しない。例えば、反射層45の第2電極層23側の表面は凹凸形状を有していてもよい。凹凸形状は、例えば、光取出し層50の凹凸形状と同様の方法で形成され得る。あるいは、反射層45は、反射膜と、反射膜の第2電極層23側に配置された光散乱層とを有していてもよい。例えば、光散乱層は、反射膜の表面に、互いに異なる屈折率を有する母材と粒子との混合物を付与することによって形成されていてもよい。ゾルゲル法によって、母材と粒子とを一体的に形成してもよい。また、光散乱層として、内部に多数の空洞を設けた層、複数の材料の相分離により散乱を示す層を用いてもよい。さらに、反射膜の表面に微細粒子を整列または散在させることにより、反射膜表面に光散乱性または回折性を付与することも可能である。反射層45は、例えば60%以上、好ましくは80%以上の反射率を有する。反射層45は、屈曲性を有していてもよい。
・反射層45の具体例1
反射層45は、表面に凹凸を有する透明電極層であってもよい。例えば0.005μm〜10μm以下のサイズを有する導電性粒子を母材に混合することによって反射層45を形成してもよい。導電性粒子としてはITO粒子、ZnO粒子、Agナノ粒子、Agナノワイヤ、Agフィラーなどが挙げられる。導電性粒子のサイズが0.005μm以上0.05μm以下である場合には、導電性粒子に加えて、拡散性を持たせるためのフィラーを母材に混合してもよい。拡散性を持たせるためのフィラーのサイズは、例えば0.1μm以上10μm以下であり得る。拡散性を持たせるためのフィラーの材料は、前述したフィラー44の材料と同様であり得る。
・反射層45の具体例2
図10に例示するように、反射層45は、母材46と、母材46と異なる屈折率を有するフィラー44とを含んでいてもよい。母材46にフィラー44を添加することによって、高い反射率を有する拡散反射層が得られる。反射層45は、反射層40と同様に、金属材料からなる金属電極の反射率よりも高い反射率を有し得る。母材46とフィラー44との屈折率差および光の入射角などにもよるが、例えば、反射層45に、金属で最大の反射率を持つAgの反射率(95%)以上の反射率を持たせることも可能である。
母材46は、単一の材料である必要はない。母材46は、例えば、基材41に、基材41よりも高い屈折率を有する母材フィラー42を混ぜることによって形成されていてもよい。これにより、母材フィラー42の体積比率等によって母材46の屈折率を調整できる。また、母材46とフィラー44との屈折率差を大きくすることが可能になる。このため、拡散反射層の反射率をさらに高めることができ、光取出し効率を向上できる。
母材46が、低屈折率層52の屈折率以上の屈折率を有していると有益である。発光層32で発し、低屈折率層52を透過した光は、反射層45と、反射層45の有機層30側に隣接する層(図10に示す例では低屈折率層52)との界面で全反射されずに反射層45に入射する。反射層45に入射した光は、母材46とフィラー44との界面で拡散反射する。従って、低屈折率層52以上の屈折率を有する母材46を用いることにより、導波光を低減することが可能になり、光取り出し効率を向上できる。また、全反射した光の干渉に起因する発光スペクトルの変動を抑制できる。
フィラー44が添加された母材46を用いて反射層45を形成すると、表面プラズモンによるロスを回避し得るので有益である。また、反射層として誘電体多層膜を用いる場合と比べて、反射率の波長依存性および入射角度依存性が小さいので、より確実に光取り出し効率を向上させ得る。
反射層45は、例えば前述の反射層40と同様の方法によって形成され得る。基材41、母材フィラー42およびフィラー44の材料としては、反射層40を形成するための材料と同様の材料を用い得る。フィラー44の屈折率nFは、母材46の屈折率nPと異なっていてもよい。
母材46は単一の材料であってもよい。この場合、母材46となる材料としては、低屈折率層52として空気層を用いた場合、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系、フッ素系などの樹脂化合物が挙げられる。もちろん母材46として硫黄変性樹脂化合物、例えばチオフェン系樹脂化合物を用いて、母材46が発光層32の屈折率以上の屈折率を有するようにしてもよい。
(低屈折率層52)
本実施形態においては、低屈折率層52として、図3を参照して説明した、第2の実施形態における低屈折率層52と同様の構成を適用し得る。ただし、低屈折率層52の屈折率は、発光層32の屈折率の95%未満の値に限定されない。低屈折率層52の屈折率は、発光層32の屈折率よりも低ければよい。
低屈折率層52の屈折率が低いほど、臨界角を小さくできる。従って、より広範囲の高角度の光を全反射させることが可能になる。低屈折率層52の屈折率は、例えば、1.5未満である。低屈折率層52として空気層(屈折率1.0)を設けると、屈折率をより低くできるので、臨界角をさらに小さくできる。上記臨界角は、例えば34°以上65°以下であってもよい。
低屈折率層52の厚さが1μm以上であると有益である。例えば、反射層45の母材46の屈折率が低屈折率層52の屈折率未満の場合、反射層45の表面で光が全反射し得る。このような場合、素子中で、全反射した光に強い干渉が生じ、発光層32を構成する各有機膜の厚さの変化による発光スペクトルの変動が大きくなる可能性がある。低屈折率層52の厚さを1μm以上に設定すると、反射層45と発光層32との距離を実質的に光学干渉しない程度まで大きくできるので、反射光による干渉が生じなくなる。このため、膜厚バラつきに対するロバスト性を高めることができる。反射層45の母材46の屈折率が低屈折率層52の屈折率以上の場合、低屈折率層52と高屈折率の反射層45との界面で屈折率差による反射が生じ得るが、低屈折率層52の厚さが1μm以上であれば、反射光による干渉を抑制できる。
さらに、低屈折率層52の厚さを、発光層32で発する可能性のある可視光の波長以上(例えば1μm以上)に設定することにより、全反射時のエバネッセント光の漏れを抑制できるので、光取り出し効率をさらに向上できる。
低屈折率層52の厚さが1mm以下であると有益である。低屈折率層52の厚さが1mm以下であれば、特に吸収(消衰係数)の大きい低屈折率層52を用いる場合に、低屈折率層52による光の吸収を低減できる。
(光取出し層50)
本実施形態においては、光取出し層50として、図2および図3を参照して説明した、第2の実施形態における光取出し層50と同様の構成を適用し得る。光取出し層50の構造は、特定の構造に限定されない。光取出し層50は、光取出し層50に入射する光の反射角および/または屈折角を乱れさせることが可能な構造を有していればよい。
光取出し層50は、基板21と低屈折率層52との間に配置されていればよい。光取出し層50は、例えば、基板21と第1電極層22との間に配置されていてもよい。この場合、有機層30および電極からなる素子部よりも先に、光取出し層50を基板21上に形成することが可能になる。このため、光取出し層50を形成するプロセスに対する制約が少なくなる。例えば、素子部を形成した後に光取出し層を形成する場合よりも、高い温度で光取出し層50を形成することが可能になる。一方、光取出し層50を先に形成すると、その上に形成される第1電極層22および有機層30に光取出し層50の凹凸形状が引き継がれ、有機EL素子のリークパスになる可能性がある。従って、光取出し層50の上面が略平坦であると有益である。また、低屈折率層52と光取出し層50との間に配置される、低屈折率層以外の各層の屈折率を、発光層32の屈折率以上に設定することが好ましい。これにより、低屈折率層52の下面で全反射した光が、光取出し層50に達する前に全反射することを抑制できるので、導波光の発生を抑えることができる。
図10に示すように、低屈折率層52が第2電極層23と反射層45との間に配置されている場合には、光取出し層50は、第2電極層23と低屈折率層52との間に配置されていてもよい。光取出し層50が第2電極層23よりも反射層45側に配置されていると、光取出し層50の凹凸形状がリークパスの要因にならない。従って、光取出し層50に高い平坦性が要求されないので、光取出し層50の構造および材料の選択の自由度が高くなる。また、上記のように、全反射を抑制する目的で、低屈折率層52以外の各層の屈折率を制御する必要がない。光取出し層50は、低屈折率層52と接していてもよい。低屈折率層52の凹凸と光取出し層50との界面において低屈折率層52が凹凸を有し得、かつ、低屈折率層52および光取出し層50がより大きい屈折率差を有し得るので、この界面における拡散をより高めることができ、光取出し効率を向上できる。
なお、光取出し層50を基板21と第1電極層22との間に形成する場合には、ホール注入層31と発光層32との界面で全反射が生じないように、ホール注入層31の屈折率を発光層の屈折率以上に設定することが有益である。これにより、低屈折率層52の下面と、ホール注入層31と発光層32との界面との間で光が導波することを抑制できる。
また、光取出し層50を基板21と第1電極層22の間に形成する場合、第1電極層22の屈折率が発光層32の屈折率未満であると、低屈折率層52の下面で全反射した光が、光取出し層50に達する前に、第1電極層22と有機層30との界面との間で全反射され、導波光となる可能性がある。このため、第1電極層22と有機層30との界面で全反射が生じないように、第1電極層22の屈折率を発光層32の屈折率以上に設定することが有益である。
発光層32と第2電極層23との界面で全反射が生じないように、第2電極層23の屈折率が発光層32の屈折率以上であると有益である。第2電極層23の屈折率を発光層32の屈折率以上とすることにより、第2電極層23の発光層32側の界面で全反射が生じることが無いため、素子中で閉じ込められる光が減少し、光取出し効率が向上する。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態の有機EL素子を説明する。本実施形態の有機EL素子は、低屈折率層として空気層を備える。
図11は、第4の実施形態の有機EL素子を例示する模式的な断面図である。
図11に示す有機EL素子202は、反射層45の発光層32と反対側に配置された封止基板70と、封止基板70と基板21とを接着するダム材80とを備えている。本実施形態では、ダム材80は、有機層30を含む積層体を封止するように配置されている。反射層45は、封止基板70によって支持されている。基板21と封止基板70とは、ダム材80によって、反射層45と光取出し層50との間に空隙を形成するように接着されている。空隙は、低屈折率層52として機能する。その他の構成は、第3の実施形態の有機EL素子102と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態でも、前述の第3の実施形態と同様の効果が得られる。特に本実施形態では、低屈折率層52として、屈折率の低い空気層を用いるので、低屈折率層52と発光層32との屈折率で決まる臨界角をより小さくできる。臨界角を50°以下、例えば40°程度まで小さくすることが可能である。このため、より広い角度範囲で、低屈折率層52に向かう光を全反射させることが可能となり、低屈折率層52および反射層45における光の吸収をさらに低減できる。
この例では、低屈折率層52は、反射層45と光取出し層50との間に配置されているが、低屈折率層52は、発光層32と反射層45との間に配置されていればよい。同様に、光取出し層50の位置も図示する例に限定されず、基板21と低屈折率層52との間に配置されていればよい。
有機EL素子202は、例えば次のようにして得られる。まず、反射層45を含む少なくとも1つの層を封止基板70上に形成し、第1電極層22および発光層32を含む複数の層を基板21上に形成する。次いで、封止基板70と基板21とを空隙を空けて対向させた状態で、ダム材80で接着させる。
<有機EL素子202の構成要素>
有機EL素子202における基板21、第1電極層22、第2電極層23、有機層30および反射層45の材料および構成は、第3の実施形態と同様であり得る。
(封止基板70)
封止基板70としては、基板21と同様の基板を用いることができる。封止基板70の上にあらかじめ反射層45を形成し、それを後述のダム材80を用いて基板21と接着してもよい。
(ダム材80)
ダム材80の材料としては、アクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂などが挙げられる。封止性を担保するために、水蒸気透過率の低い材料または吸湿材が混合されていると有益である。低屈折率層52として空気層を設ける場合には、ダム材80の高さを調整することにより、所望の1μm〜1mmの厚さの空気層を得ることができる。ダム材80の高さは、例えばダム材80に混合するフィラーのサイズによって調整できる。直径Hのフィラーが混合された樹脂をダム材の材料として用いることにより、高さHのダム材80を形成してもよい。
(実施例3〜5)
以下、図面を参照しながら、第3の実施形態の有機EL素子の実施例を説明する。
図12〜14は、それぞれ、実施例3〜5の有機EL素子を示す模式的な断面図である。
実施例3〜5で用いる各層の材料の屈折率および消衰係数を表2にまとめて示す。表2に示す屈折率および消衰係数は、発光層としてAlq3層を用いる場合の発光ピーク波長533nmの光に対する値である。
Figure 0006573160
<実施例3>
図12に示す実施例3の有機EL素子では、基板21としてのガラス基板上に、光取出し層50、第1電極層22として300℃で形成したITO、ホール注入層31としてMoO3、ホール輸送層34としてα−NPD、発光層32としてAlq3、第2電極層23として室温で形成したITOを用いる。第2電極層23上に、低屈折率層52としてのマッチングオイル層を介して、反射層45が設けられている。
光取出し層50として、イミド系樹脂54にシリコーン樹脂粒子55を混合した層を用いる。光取出し層50は、例えば前述した具体例1と同様の方法で形成され得る。反射層45は、前述の実施例1における反射層40と同様に形成する。このとき、母材46を構成する材料として、母材43を形成するための材料と同様の材料を用いる。
実施例3では、発光層32の屈折率1.768に対して、低屈折率層52となるマッチングオイルの屈折率は1.5である。このとき、発光層32の屈折率と低屈折率層52の屈折率とから決定される臨界角は58°である。従って、58°未満の角度で発光層32から反射層45側に向かう光は、低屈折率層52を通過して反射層45に入射する。反射層45に入射した光は反射層45で拡散反射し、基板21側から素子外部に取り出され得る。一方、58°以上の高角度で発光層32から反射層45側に向かう光81は、低屈折率層52と第2電極層23との界面で全反射する。上記界面で全反射した光は、光取出し層50に入射し、散乱により外部に取り出される。
なお、光取出し層50に入射した光は、その角度が乱される。光の角度が発光層32と空気の屈折率とで決まる臨界角未満であれば、空気中へ取り出される。臨界角以上の光85は、例えば基板21と空気との界面で全反射した後、再び光取出し層50に入射して角度が乱される。これを繰り返すことで、臨界角以上の光85も、いつかは空気中に取り出され得る。
<実施例4>
図13に示す実施例4の有機EL素子では、低屈折率層52としてフッ素系樹脂層(旭硝子製のサイトップ)を用いる。その他の構成は実施例3と同様である。
実施例4では、発光層32の屈折率1.768に対して、低屈折率層52となるフッ素系樹脂の屈折率は1.34であり、臨界角は49°である。従って、49°未満の角度で発光層32から反射層45側に向かう光は、反射層45に入射し、拡散反射する。一方、49°以上の角度で発光層32から反射層45側に向かう光81、82は、低屈折率層52と第2電極層23との界面で全反射する。全反射した光は、光取出し層50で散乱し、基板21側から取り出され得る。
実施例4では、49°以上58°未満の角度で発光層32から反射層45側に向かう光82も上記界面で全反射させることができるので、実施例3よりも高い光取り出し効率が得られる。
<実施例5>
図14に示す実施例5の有機EL素子では、低屈折率層52として空気層を用いる。その他の構成は実施例3と同様である。
実施例5では、発光層32の屈折率1.768に対して、空気の屈折率は1.0であり、臨界角は34°である。従って、34°未満の角度で発光層32から反射層45側に向かう光は、反射層45に入射し、拡散反射する。一方、34°以上の角度で発光層32から反射層45側に向かう光81、82、83は、低屈折率層52と第2電極層23との界面で全反射する。全反射した光は、光取出し層50で散乱し、基板21側から取り出され得る。
実施例5では、34°以上49°未満の角度で発光層32から反射層45側に向かう光83も上記界面で全反射させることができるので、実施例4よりも高い光取り出し効率が得られる。
<反射率の入射角依存性>
続いて、シミュレーションにより、低屈折率層52の屈折率の違いによる反射率の入射角依存性を調べた。
図15Aは、シミュレーションに用いたモデルを示す図である。ここでは、30mm×30mm×厚さ1mmの反射層45に、低屈折率層52を介して、波長533nmの光を入射角β(β:0°〜80°)で入射させる場合の反射率を求めた。入射媒質はAlq3層とした。なお、光の波長「533nm」は、有機EL材料としてAlq3を用いた場合の発光ピーク波長である。入射角βは、入射媒質から反射層45に向かう光の、反射層45の法線方向からの角度を指す。
シミュレーション条件は下記のとおりである。
・シミュレーション手法:光線追跡法
・シミュレーションソフト:照明設計解析ソフトウェアLightTools(Synopsys社)
・パラメータ:
反射層45の母材46の屈折率 1.772
入射媒質の屈折率 Alq3の屈折率 1.768
フィラー44の母材46に対する体積比率 20%
フィラー44(真球)の径 0.7μm
フィラー44の屈折率 1.4
低屈折率層52の厚さ 1μm
低屈折率層52の屈折率 1.5(実施例3)、1.34(実施例4)、1.0
(実施例5)
シミュレーション結果を図15Bに示す。この結果から、実施例3〜5では、それぞれ、入射角βが臨界角以上になると全反射が生じることが確認できる。また、入射角βが臨界角未満のときの反射率を比較すると、屈折率1.0の低屈折率層52を用いる場合(実施例5)は、屈折率1.5、1.34の低屈折率層52を用いる場合(実施例3、4)よりも低い。これは、屈折率が低いほど、低屈折率層52の屈折率差による透過率が低くなるからと考えられる。
(その他の実施例)
本開示の有機EL素子の構造は、各図面に示す構造に限定されない。例えば、反射層40に代えて、図11を参照して説明した反射層45を用いてもよい。すなわち、反射層40の母材として導電材料を用いて、導電性を有する反射層40を形成してもよい。このような反射層40は、第2電極層としても機能し得る。反射層40が第2電極層の機能を兼ねる場合には、第2電極層を別個に設けなくてもよい。導電性を有する反射層40は、反射層45を形成する方法と同様の方法によって形成され得る。このとき、発光層よりも屈折率の高い母材に導電性粒子を混合すればよい。
本開示の技術は、有機EL素子に限定されるものでもなく、発光層に硫化亜鉛などの無機材料を用いた無機EL素子など、広く発光素子に適用可能である。
本開示の発光素子は、高い光取出し効率を有するので、高効率な光学デバイスを実現し得る。本開示の発光素子は、例えば、照明、ディスプレイ、プロジェクターといった光学デバイスに広く適用可能である。
21 :基板
22 :第1電極層
23 :第2電極層
30 :機能層(有機層)
31 :ホール注入層
32 :発光層
33 :電子輸送層
34 :ホール輸送層
40、45、140 :反射層
41 :基材
42 :母材フィラー
43、46、143 :母材
44 :フィラー
50 :光取出し層
52 :低屈折率層
70 :封止基板
80 :ダム材
100〜102、200〜202、300 :発光素子(有機EL素子)

Claims (8)

  1. 透光性を有する第1電極層と、
    前記第1電極層に対向し、透光性を有する第2電極層と、
    前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置された発光層と、
    前記第2電極層の前記発光層と反対側に配置された反射層と、
    前記第1電極層の前記発光層と反対側に配置された基板と
    を備え、
    前記反射層は、母材と、前記母材とは異なる屈折率を有するフィラーとを含み、
    前記反射層の前記母材の屈折率は、前記発光層の屈折率以上であり、
    前記発光層、前記第1電極層、および前記第2電極層を含む積層体は基板表面上に接して支持される、発光素子。
  2. 前記第2電極層の屈折率は前記発光層の屈折率以上である、請求項1に記載の発光素子。
  3. 前記発光層と前記反射層との間に配置された、前記発光層の屈折率の95%以上100%未満の屈折率を有する層と、
    前記第1電極層の前記発光層と反対側に配置された光取出し層と
    をさらに備える、請求項1または2に記載の発光素子。
  4. 前記フィラーの屈折率は、前記母材の屈折率よりも低い、請求項1から3のいずれかに記載の発光素子。
  5. 前記フィラーの屈折率は、前記母材の屈折率よりも高い、請求項1から3のいずれかに記載の発光素子。
  6. 前記フィラーの平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の発光素子。
  7. 前記母材は、基材と、前記基材よりも高い屈折率を有する母材フィラーとを含み、
    前記母材フィラーの平均粒子径は0.005μm以上0.05μm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の発光素子。
  8. 前記光取出し層は、表面に凹凸形状を有する層、内部に光反射性の界面を含有する層、屈折率の異なる媒体同士が接触する界面を含有する層、粒子または空隙を内部に含む層、および複数の材料が混合された層からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載の発光素子。
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