JP6570472B2 - 毛髪の損傷の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、毛髪の損傷の評価方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、毛髪化粧料の開発、毛髪化粧料の評価などに有用な毛髪の損傷の評価方法および被験試料の評価方法に関する。
近年、毛髪へのパーマ、ブリーチなどの化学施術が一般化したことに伴い、毛髪の損傷に対する意識が高まっている。
毛髪の損傷の評価方法として、例えば、毛髪と水との接触角を指標として評価する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記毛髪の損傷の評価方法には、前記毛髪と水との接触角の測定に際し、多くの毛髪を必要とするという欠点がある。また、前記毛髪と水との接触角は、測定時の測定環境条件による影響を受けやすく、しかも測定者の測定技術の熟練度による測定結果のバラつきが生じやすいことから、前記毛髪の損傷の評価方法には、再現性が低いという欠点がある。
特開2004−59559号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、少量の毛髪を用いた場合であっても、高い再現性で毛髪の損傷を評価することができる毛髪の損傷の評価方法および少量の毛髪を用いた場合であっても、高い再現性で被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができる被験試料の評価方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、
(1)毛髪の損傷を評価する方法であって、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を毛髪の損傷の指標として用い、前記毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に基づき、当該毛髪の損傷を評価することを特徴とする毛髪の損傷の評価方法、
(2)毛髪の損傷を評価する方法であって、質量顕微鏡法、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法およびガスクロマトグラフ−質量分析法からなる群より選ばれた少なくとも1種の方法によって毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を測定し、得られたシグナルの強度を毛髪の損傷の指標として用い、前記シグナルの強度に基づき、当該毛髪の損傷を評価することを特徴とする毛髪の損傷の評価方法、
(3)被験試料が毛髪に与える損傷を評価する被験試料の評価方法であって、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を毛髪の損傷の指標として用い、被験試料との接触前後の毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量の変化に基づき、前記被験試料が毛髪に与える損傷を評価することを特徴とする被験試料の評価方法、
(4)被験試料が毛髪に与える損傷を評価する被験試料の評価方法であって、質量顕微鏡法、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法およびガスクロマトグラフ−質量分析法からなる群より選ばれた少なくとも1種の方法によって被験試料との接触前後の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を測定し、得られたシグナルの強度を毛髪の損傷の指標として用い、被験試料との接触前後の毛髪における前記シグナルの強度の変化に基づき、前記被験試料が毛髪に与える損傷を評価することを特徴とする被験試料の評価方法、ならびに
(5)前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドが、ベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミドおよびステアリン酸アミドからなる群より選ばれた少なくとも1種である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法
に関する。
本発明の毛髪の損傷の評価方法によれば、少量の毛髪を用いた場合であっても、高い再現性で毛髪の損傷を評価することができるという優れた効果が奏される。また、本発明の被験試料の評価方法によれば、少量の毛髪を用いた場合であっても、高い再現性で被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができるという優れた効果が奏される。
(a)は調製例1で得られた健常毛のマススペクトルを示す図、(b)は調製例4で得られた損傷毛3のマススペクトルを示す図である。 (a)は試験例2で得られた測定試料におけるm/z=340.40のマスクロマトグラムをを示す図、(b)は試験例2で得られた測定試料における親イオンm/z=340.40の娘イオンm/z=87.8のマスクロマトグラムを示す図、(c)は試験例2で得られたベヘニン酸アミドの標準品を含有する対照試料におけるm/z=340.40のマスクロマトグラムを示す図、(d)は試験例2で得られたベヘニン酸アミドの標準品を含有する対照試料における親イオンm/z=340.40の娘イオンm/z=87.8のマスクロマトグラムを示す図である。 実施例1において、健常毛および損傷毛1〜4のそれぞれにおけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布を調べた結果を示す図面代用写真である。 実施例2において、被験対象の毛髪におけるベヘニン酸アミドの含有量の残存度を調べた結果を示すグラフである。 実施例2において、毛髪の種類と接触角との関係を調べた結果を示すグラフである。 実施例3において、毛髪におけるベヘニン酸アミドの含有量を調べた結果を示すグラフである。 実施例3において、毛髪におけるパルミチン酸アミドの含有量を調べた結果を示すグラフである。 実施例3において、毛髪におけるステアリン酸アミドの含有量を調べた結果を示すグラフである。
1.毛髪の損傷の評価方法
本発明の毛髪の損傷の評価方法は、1つの側面では、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を毛髪の損傷の指標として用い、前記毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に基づき、当該毛髪の損傷を評価することを特徴とする。
損傷毛に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量は、健常毛に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量と比べて少なくなっている。また、健常毛に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量と比べて損傷毛に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量が少ないほど、毛髪の損傷度が大きい傾向にある。したがって、毛髪の損傷の指標として毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を用いることにより、毛髪の損傷を評価することができる。また、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量は、試料の毛髪が少量であっても測定することができることから、本発明の毛髪の損傷の評価方法によれば、少量の毛髪を用いた場合であっても、毛髪の損傷を評価することができる。さらに、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの測定は、当該脂肪酸アミドの量の測定時の環境条件による影響を受け難く、しかも測定者の測定技術の熟練度による測定結果のバラつきが生じ難いことから、本発明の毛髪の損傷の評価方法によれば、高い再現性で毛髪の損傷を評価することができる。
前記脂肪酸アミドの炭素数は、毛髪の損傷度との相関が高いため、毛髪の損傷を適確に評価することができることから、16以上であり、ヒトの毛髪などに多く存在する脂肪酸に由来する脂肪酸アミドであるため、ヒトの毛髪における指標として用いやすいことから、22以下である。前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドとしては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、アラキジン酸アミド、ベヘニン酸アミド、パルミトレイン酸アミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの炭素数16〜22の脂肪酸アミドのなかでは、毛髪の損傷を適確に評価する観点から、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドおよびベヘニン酸アミドが好ましく、ステアリン酸アミドおよびベヘニン酸アミドがより好ましい。本発明においては、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドを単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の測定方法としては、例えば、
(A)毛髪から炭素数16〜22の脂肪酸アミドを適切な溶媒に抽出し、得られた抽出物に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に基づき、毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を算出する方法;
(B)毛髪から得られた観察用試料を質量顕微鏡に供して毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに対応する質量電荷比のシグナルの強度を測定し、当該シグナルの強度に基づき、毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を算出する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記(B)の方法には、少量の毛髪を用いた場合であっても毛髪の損傷を適確に評価することができるとともに、毛髪における種々の部位の損傷を評価することができる利点がある。また、前記(B)の方法には、毛髪における特定部位での断面の顕微鏡画像から当該断面上の特定箇所に限定して当該特定箇所に存在する前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドを調べることができるという利点がある。このような利点から、前記測定方法のなかでは、前記(B)の方法が好ましい。
前記(A)の方法において、毛髪からの炭素数16〜22の脂肪酸アミドの抽出は、例えば、毛髪を破砕して得られた破砕物をメタノールなどの溶媒に浸漬させることなどによって行なうことができる。
前記抽出物に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の測定は、例えば、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法、ガスクロマトグラフ−質量分析法などによって行なうことができるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記(B)の方法において、前記質量顕微鏡は、通常、顕微鏡部とイオン源と質量分析部と検出部とを備えている。前記イオン源は、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドを含む試料をイオン化させる。前記イオン源に用いられるイオン化法としては、例えば、レーザー脱離イオン化法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法、高速原子衝突法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのイオン化法のなかでは、毛髪中の評価対象部位に存在する前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドを解析が容易な分子にイオン化することができることから、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法が好ましい。前記質量分析部は、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するイオンを高い質量精度で分析できる観点から、四重極型イオントラップ装置と飛行時間型質量分析計とから構成されている四重極型イオントラップ飛行時間型質量分析計が好ましい。前記四重極イオントラップ装置は、イオン化された試料から特定範囲の質量電荷比のイオンを分離する。前記飛行時間型質量分析計は、四重極イオントラップ装置によって分離された特定範囲の質量電荷比のイオンを加速して一定距離を飛行させ、当該イオンの飛行時間を測定する。前記飛行時間型質量分析計によれば、前記飛行時間に基づき、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの質量情報を得ることができる。また、前記検出部は、分離されたイオンに由来するシグナルの強度、当該イオンの位置情報などを得る。前記質量顕微鏡においては、炭素数16〜22の脂肪酸アミドを効果的に分析できる観点から、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法と四重極型イオントラップ飛行時間型質量分析計とが組み合わせて用いられていることが特に好ましい。
前記観察用試料は、例えば、毛髪の評価対象部位を含む切片に前処理を施すことなどによって得ることができる。前記前処理は、前記イオン源のイオン化法などによって異なるので、一概には決定することができないことから、前記イオン源のイオン化法などに応じて適宜決定することが望ましい。例えば、イオン源のイオン化法が、前記マトリックス支援レーザー脱離イオン化法である場合、前記前処理は、マトリックスによる前記切片の表面のコーティングである。前記マトリックスは、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドをイオン化するのに適したイオン化補助剤であればよい。前記マトリックスとしては、例えば、ゲンチジン酸、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、9−アミノアクリジンなどのイオン化補助剤が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに対応する質量電荷比は、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの種類などによって異なるので、一概には決定することができないことから、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの種類などに応じて適宜決定することが望ましい。
本発明の毛髪の損傷の評価方法では、前記毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に基づき、毛髪の損傷の有無、毛髪の損傷度などを評価することができる。
毛髪の損傷の有無は、被験対象の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量と対照の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量とを比較することによって評価することができる。被験対象の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量が、対照の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量よりも少ない場合、被験対象の毛髪が損傷を有すると判断することができる。被験対象の毛髪および対照の毛髪は、毛髪の損傷の有無を適確に判断することができることから、同一のヒトの同一の毛髪であること、具体的には、同一の毛髪において、互いに異なる部位から取得された毛髪であることが好ましい。対照の毛髪は、損傷を受けにくいことから、被験対象の毛髪の取得部位よりも根元に近い部分から取得された毛髪であることが好ましい。
毛髪の損傷度は、例えば、被験対象の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの残存度;対照の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量から被験対象の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を減じた値などに基づき、評価することができる。前記被験対象の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの残存度は、式(I):
〔被験対象の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの残存度〕
=〔[被験対象の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量]/[対照の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量]〕 (I)
に基づいて算出することができる。[被験対象の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの残存度]が小さいほど、被験対象の毛髪の損傷度が大きいと評価することができる。また、[対照の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量から被験対象の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を減じた値]が大きいほど、被験対象の毛髪の損傷度が大きいと評価することができる。
なお、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を、質量顕微鏡を用いた測定方法(以下、「質量顕微鏡法」ともいう)、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法、ガスクロマトグラフ−質量分析法などによって測定する場合、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量は、これらの測定方法で得られたクロマトグラムまたはスペクトルにおける前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度に比例する。したがって、本発明においては、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の指標として前記クロマトグラムまたはスペクトルにおける前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を用いることができる。
本発明の毛髪の損傷の評価方法は、他の側面では、質量顕微鏡法、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法およびガスクロマトグラフ−質量分析法からなる群より選ばれた少なくとも1種の方法によって毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を測定し、得られたシグナルの強度を毛髪の損傷の指標として用い、前記シグナルの強度に基づき、当該毛髪の損傷を評価することを特徴とする。
前記シグナル強度を用いる場合、対照の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度に対する被験対象の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度が小さいほど、被験対象の毛髪の損傷度が大きいと評価することができる。したがって、前記シグナル強度を用いる場合、毛髪の損傷度は、例えば、式(Ia):
〔被験対象の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの残存度〕
=〔[被験対象の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度]/[対照の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度]〕 (Ia)
に基づいて算出される被験対象の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの残存度;対照の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度から被験対象の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を減じた値などに基づき、評価することができる。前記シグナル強度を用いる場合、〔被験対象の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの残存度〕が小さいほど、被験対象の毛髪の損傷度が大きいと評価することができる。また、前記〔対照の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度から被験対象の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を減じた値〕が大きいほど、被験対象の毛髪の損傷度が大きいと評価することができる。
以上説明したように、本発明の毛髪の損傷の評価方法によれば、少量の毛髪を用いた場合であっても、高い再現性で毛髪の損傷を評価することができる。したがって、本発明の毛髪の損傷の評価方法は、毛髪化粧料の開発、毛髪化粧料の評価、毛髪の損傷をケアするのに適した毛髪化粧料の選択基準の情報の提供などに用いられることが期待されるものである。
2.被験試料の評価方法
本発明の被験試料の評価方法は、1つの側面では、被験試料が毛髪に与える損傷を評価する被験試料の評価方法であって、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を毛髪の損傷の指標として用い、被験試料との接触前後の毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量の変化に基づき、前記被験試料が毛髪に与える損傷を評価することを特徴とする。
このように、本発明の被験試料の評価方法には、毛髪の損傷の指標として毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量が用いられている点に1つの大きな特徴がある。毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量は、前記したように、少量の毛髪を用いることによって測定することができることから、本発明の被験試料の評価方法によれば、少量の毛髪を用いた場合であっても、被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができる。さらに、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の測定は、前記したように、当該脂肪酸アミドの量の測定時の環境条件による影響を受け難く、しかも測定者の測定技術の熟練度による測定結果のバラつきが生じ難いことから、本発明の被験試料の評価方法によれば、高い再現性で被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができる。
本発明の被験試料の評価方法では、被験試料との接触前後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の変化を求める。
被験試料と毛髪との接触は、被験試料中に毛髪を浸漬させること、被験試料を毛髪に塗布することなどによって行なうことができる。被験試料と毛髪との接触の際の温度、湿度および接触時間は、評価対象の被験試料の種類、評価結果の用途などによって異なるので、一概には決定することができないことから、評価対象の被験試料の種類、評価結果の用途などに応じて適宜決定することが望ましい。
被験試料が毛髪に与える損傷の評価は、被験試料との接触前後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の変化に基づいて行なわれる。被験試料との接触前後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の変化は、例えば、被験試料との接触前の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に対する被験試料との接触後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の比;被験試料との接触前後の毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量の変化率などを用いることによって調べることができる。〔被験試料との接触前の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に対する被験試料との接触後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量の比〕が小さいほど、被験試料が毛髪に与える損傷が大きいと評価することができる。また、〔被験試料との接触前後の毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量の変化率〕が大きいほど、被験試料が毛髪に与える損傷が大きいと評価することができる。前記被験試料との接触前後の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量の変化率は、式(II):
〔被験試料との接触前後の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量の変化率〕
=[{〔脂肪酸アミドの含有量A〕−〔脂肪酸アミドの含有量B〕}÷〔脂肪酸アミドの含有量A〕]×100 (II)
(式中、〔脂肪酸アミドの含有量A〕は、被験試料との接触前の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量、〔脂肪酸アミドの含有量B〕は、被験試料との接触後の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を示す)
に基づいて算出することができる。
本発明の被験試料の評価方法は、他の側面では、質量顕微鏡法、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法およびガスクロマトグラフ−質量分析法からなる群より選ばれた少なくとも1種の方法によって被験試料との接触前後の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を測定し、得られたシグナルの強度を毛髪の損傷の指標として用い、被験試料との接触前後の毛髪における前記シグナルの強度の変化に基づき、前記被験試料が毛髪に与える損傷を評価することを特徴とする。
前記シグナルの強度を用いる場合、被験試料との接触前の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度に対する被験試料との接触後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度が小さいほど、前記被験試料が毛髪に与える損傷度が大きいと評価することができる。
前記シグナル強度を用いる場合、被験試料との接触前後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度の変化は、例えば、被験試料との接触前の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度に対する被験試料との接触後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度の比;被験試料との接触前後の毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度の変化率などを用いることによって調べることができる。
前記〔被験試料との接触前の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度に対する被験試料との接触後の毛髪に含まれる前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度の比〕が小さいほど、被験試料が毛髪に与える損傷が大きいと評価することができる。
前記〔被験試料との接触前後の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度の変化率〕は、式(IIa):
〔被験試料との接触前後の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度の変化率〕
=[{〔脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度A〕−〔脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度B〕}÷〔脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度A〕]×100
(IIa)
(式中、〔脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度A〕は、被験試料との接触前の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度、〔脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度B〕は、被験試料との接触後の毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を示す)
に基づいて算出することができる。前記〔被験試料との接触前後の毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度の変化率〕が大きいほど、被験試料が毛髪に与える損傷が大きいと評価することができる。
被験試料との接触前の毛髪および被験試料との接触後の毛髪は、被験物質が毛髪に与える損傷を適確に判断することができることから、同一のヒトの毛髪であることが好ましい。また、被験試料との接触前の毛髪および被験試料との接触後の毛髪は、被験物質が毛髪に与える損傷をより適確に判断することができることから、同一の毛髪であることが好ましい。
以上説明したように、本発明の被験試料の評価方法によれば、少量の毛髪を用いた場合であっても、高い再現性で被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができる。したがって、本発明の被験試料の評価方法は、毛髪化粧料の開発、毛髪化粧料の評価、毛髪のダメージケアに適した物質のスクリーニングなどに用いられることが期待されるものである。
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の評価に用いられた健常毛および損傷毛は、個人差に起因する毛髪における脂肪酸アミドの含有量の測定データのバラつきを抑えるために、同一人物由来の単一人毛を用いて調製した。
調製例1
毛髪長約30cmの単一人毛からなる毛束2.5gを、約40℃の0.5質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液200g中に30分間浸漬させた後、前記毛束を約40℃の大過剰の水道水中に3分間浸漬させた。水道水への毛束の浸漬の操作を合計3回繰り返した。水道水への浸漬後の毛束を自然乾燥させ、健常毛を得た。
調製例2〜5
調整例1で得られた健常毛0.5gを、表1に示される組成を有する第1剤と第2剤とを等量混合したブリーチ剤中に室温で15分間浸漬させた。つぎに、浸漬後の毛髪を水で洗浄した後、約40℃の0.25質量%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液200g中に5分間浸漬させた。その後、前記毛髪を約40℃の大過剰の水道水中に3分間浸漬させた。水道水への毛髪の浸漬の操作を合計3回繰り返した。水道水への浸漬後の毛髪を自然乾燥させ、損傷毛1〜4を得た。なお、第1剤のI液およびII液ならびに第2剤のA液およびB液の組成を表2に示す。
試験例1
(1)観察用試料の調製
調製例1で得られた健常毛および調製例2〜5で得られた損傷毛それぞれを凍結包埋法にしたがって包埋して包埋試料を得た。クライオスタットを用いて前記包埋試料の横断面切片を作製した。前記横断面切片をスライドガラス上に接着させた後、前記横断面切片にマトリックス(ゲンチジン酸)を蒸着させ、観察用試料を得た。
(2)質量顕微鏡による試料の観察および質量分析
試験例1(1)で得られた観察用試料をイメージング質量顕微鏡〔(株)島津製作所製、商品名:iMScope〕に供し、前記観察用試料を観察するとともに、当該観察用試料について、m/z200〜1500の範囲のマススペクトルを測定した。分析条件は、以下のとおりである。
<分析条件>
イオン化法:マトリックス支援レーザー脱離イオン化法
測定モード:正イオン測定モード
レーザー強度:30%
レーザー繰り返し周波数:1000Hz
質量分析計:四重極型イオントラップ飛行時間型質量分析計
得られた測定結果を、解析ソフトウェア〔(株)島津製作所製、商品名:Imaging MS Solution〕を用いて解析した。得られた光学顕微鏡像に基づき、健常毛および損傷毛それぞれの対象領域(Region of Interest。以下、「ROI」ともいう)を設定し、ピークを抽出した。健常毛のROIの単位面積あたりのシグナルの平均強度と、損傷毛のROIの単位面積あたりのシグナルの平均強度とを比較し、Mann−Whitney(マン・ホイットニー)のU検定を行なった。つぎに、健常毛におけるシグナルの強度と比べ、すべての損傷毛において、シグナルの強度が減少するm/z値を抽出し、同定した。
調製例1で得られた健常毛のマススペクトルを図1(a)、調製例4で得られた損傷毛3のマススペクトルを図1(b)に示す。
図1に示された結果から、損傷毛3のマススペクトルにおける質量電荷比(m/z)=340.39のピークは、健常毛のマススペクトルにおけるm/z=340.39のピークと比べて減少していることがわかる。
また、損傷毛1、2および4のそれぞれのマススペクトルと健常毛のマススペクトルとを比較したところ、損傷毛1、2および4のマススペクトルにおける質量電荷比(m/z)=340.39のピークは、健常毛のマススペクトルにおけるm/z=340.39のピークと比べて減少していることがわかる。
マススペクトルにおけるm/z=340.39のピークについて、種々の化合物のデータベースを調べた結果、前記m/z=340.39のピークは、ベヘニン酸アミドに由来するピークであることが予想される。
試験例2
(1)測定試料の調製
調製例1で得られた健常毛500mgを液体窒素中で凍結させ、得られた凍結健常毛を乳鉢で破砕した。得られた健常毛の破砕物にメタノール15mLを添加した。得られた混合物を室温で1日振盪させた。振盪後の混合物を遠心分離に供して不溶物を沈降させ、上清を回収した。得られた上清を、メタノールで10倍希釈し、測定試料を得た。
(2)対照試料の調製
試験例1の結果から、マススペクトルにおけるm/z=340.39のピークは、ベヘニン酸アミドに由来することが予想された。そこで、ベヘニン酸アミドの標準品をその濃度が100ng/mLになるように試験例2(1)で得られた測定試料に添加し、対照試料を得た。
(3)化合物の同定
測定試料、対照試料およびベヘニン酸アミドの標準品それぞれと、トリプル四重極リニアイオントラップ質量分析システム〔(株)エービーサイエックス(ABSCIEX)製、商品名:4000 QTRAP LC/MS/MSシステム〕とを用い、液体クロマトグラフ−質量分析法によって、測定試料に含まれる前記m/z=340.39(試験例1のマススペクトルおけるm/z)のピークに対応する化合物の同定を行なった。測定条件は、以下のとおりである。
<液体クロマトグラフィー条件>
使用カラム:ジーエルサイエンス社製、商品名:Inertsil ODS−3(内径2.1mm、長さ150mm)
カラム温度:35℃
流速:0.2mL/min
移動相A:0.1体積%ギ酸水溶液
移動相B:アセトニトリル
グラジエント条件:
開始後0分から開始後5分経過時まで:
A/B(体積比)=5/95
開始後5分経過時から開始後15分経過時まで:
A/B(体積比)=0/100
開始後15.01分経過時から開始後25分経過時まで:
A/B(体積比)=5/95
<質量分析条件>
装置:トリプル四重極リニアイオントラップLC/MS/MSシステム(4000QTRAP AB Sciex)
イオン化法:ESI
解析:プロダクトイオンスキャンモードおよびMRM(Multiple Reaction Monitoring)
なお、前記試験例1のマススペクトルおけるm/z=340.39は、本試験例2においては、測定機器の違いにより、m/z=340.40に対応する。
試験例2で得られた測定試料におけるm/z=340.40のマスクロマトグラムを図2(a)、試験例2で得られた測定試料における親イオンm/z=340.40の娘イオンm/z=87.8のマスクロマトグラムを図2(b)、試験例2で得られたベヘニン酸アミドの標準品を含有する対照試料におけるm/z=340.40のマスクロマトグラムを図2(c)、試験例2で得られたベヘニン酸アミドの標準品を含有する対照試料における親イオンm/z=340.40の娘イオンm/z=87.8のマスクロマトグラムを図2(d)に示す。
図2に示された結果から、測定試料における親イオンm/z=340.40のピークの溶出時間および測定試料における娘イオンm/z=87.8のピークの溶出時間は、いずれも14.3分であることがわかる。また、測定試料に標準品に添加した対照試料の親イオンm/z=340.40および娘イオンm/z=87.8は、いずれも単一のピークであり、親イオンm/z=340.40および娘イオンm/z=87.8の溶出時間も14.3分で一致していることがわかる。これらの結果から、測定試料におけるm/z=340.40のピークに対応する化合物がベヘニン酸アミドであることがわかる。
実施例1
(1)観察用試料の調製
試験例1(1)と同様の操作を行ない、調製例1で得られた健常毛および調製例2〜5で得られた損傷毛1〜4それぞれの観察用試料を得た。
(2)毛髪におけるベヘニン酸アミドの分布の視覚化
実施例1(1)で得られた観察用試料をイメージング質量顕微鏡〔(株)島津製作所製、商品名:iMScope〕に供し、調製例1で得られた健常毛および調製例2〜5で得られた損傷毛1〜4それぞれにおけるm/z=340.39(試験例1のマススペクトルにおけるm/z)のピークに対応する化合物であるベヘニン酸アミドの分布を視覚化した。分析条件は、試験例1(2)で用いられた分析条件と同様である。
実施例1において、健常毛および損傷毛1〜4のそれぞれにおけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布を調べた結果を図3に示す。図中、(a)は調製例1で得られた健常毛および調製例5で得られた損傷毛4のそれぞれにおけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布、(b)は調製例1で得られた健常毛および調製例3で得られた損傷毛2のそれぞれにおけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布、(c)は調製例1で得られた健常毛および調製例4で得られた損傷毛3のそれぞれにおけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布、(d)は調製例1で得られた健常毛および調製例2で得られた損傷毛1のそれぞれにおけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布を示す。また、図中、1は健常毛におけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布、2は損傷毛におけるm/z=340.39のピークに対応する化合物の分布を示す。図3(a)および(b)のスケールバーは50μm、図3(c)および(d)のスケールバーは20μmを示す。
図3に示された結果から、損傷毛1〜4におけるベヘニン酸アミドのシグナルの検出強度は、健常毛におけるベヘニン酸アミドのシグナルの検出強度と比べて小さいことがわかる。これらの結果から、毛髪の損傷に伴い、毛髪におけるベヘニン酸アミドの含有量が減少することがわかる。したがって、これらの結果から、毛髪に含まれるベヘニン酸アミドの量は、毛髪の損傷の指標として用いることができることがわかる。
実施例2
試験例1(1)と同様の操作を行ない、調製例1で得られた健常毛および調製例2〜5で得られた損傷毛それぞれの観察用試料を得た。
得られた観察用試料をイメージング質量顕微鏡〔(株)島津製作所製、商品名:iMScope〕に供し、調製例1で得られた健常毛および調製例2〜5で得られた損傷毛それぞれに含まれるベヘニン酸アミドを定量した。つぎに、被験対象の毛髪におけるベヘニン酸アミドの残存度を、式(Ib):
〔被験対象の毛髪におけるベヘニン酸アミドの残存度〕
=〔[被験対象の毛髪に含まれるベヘニンアミドに由来するシグナルの強度]÷[健常毛に含まれるベヘニンアミドに由来するシグナルの強度]〕 (Ib)
に基づいて算出した。分析条件は、試験例1(2)で用いられた分析条件と同様である。
実施例2において、被験対象の毛髪におけるベヘニン酸アミドの残存度を調べた結果を図4に示す。図中、(a)は損傷毛1におけるベヘニン酸アミドの残存度を調べた結果、(b)は損傷毛2におけるベヘニン酸アミドの残存度を調べた結果、(c)は損傷毛3におけるベヘニン酸アミドの残存度を調べた結果、(d)は損傷毛4におけるベヘニン酸アミドの残存度を調べた結果を示す。
一方、調製例1で得られた健常毛(長さ30mm)を相対湿度60%で23℃に保たれた恒温恒湿槽内に48時間以上静置し、測定用試料を得た。得られた測定用試料を自動接触角計〔協和界面科学(株)製、商品名:DM−500〕を用いて水の接触角を測定した。各測定用試料につき、2か所で測定された値の平均値を該測定用試料の接触角とした。測定に用いた測定用試料は30本である。
また、前記において、調製例1で得られた健常毛(長さ30mm)を用いる代わりに調製例2〜5で得られた損傷毛1〜4(長さ30mm)を用いたことを除き、前記と同様の操作を行い、毛髪と水との接触角を求めた。
実施例2において、毛髪の種類と接触角との関係を調べた結果を図5に示す。図5(a)中、レーン1は健常毛と水との接触角、レーン2は損傷毛1と水との接触角、レーン3は損傷毛2と水との接触角を示す。また、図5(b)中、レーン1は健常毛と水との接触角、レーン2は損傷毛3と水との接触角、レーン3は損傷毛4と水との接触角を示す。
図4に示された結果から、健常毛におけるベヘニン酸アミドの残存度と比べて損傷毛1〜4におけるベヘニン酸アミドの残存度が小さいことがわかる。したがって、これらの結果から、毛髪に含まれるベヘニン酸アミドの量は、毛髪の損傷の指標として用いることができることがわかる。
また、損傷毛2および4それぞれの調製の際に用いられたブリーチ剤の第1剤(I液)におけるアンモニア水の含有量は、損傷毛1および3それぞれの調製の際に用いられたブリーチ剤の第1剤(II液)におけるアンモニア水の含有量よりも多い。そのため、損傷毛2の調製の際に用いられたブリーチ剤は、損傷毛1の調製の際に用いられたブリーチ剤よりも毛髪に対して大きい損傷を与えることが予想される。また、同様の観点から、損傷毛4の調製の際に用いられたブリーチ剤は、損傷毛3の調製の際に用いられたブリーチ剤よりも毛髪に対して大きい損傷を与えることが予想される。
図4に示された結果から、損傷毛1におけるベヘニン酸アミドの残存度〔図4(a)参照〕に比べて損傷毛2におけるベヘニン酸アミドの残存度〔図4(b)参照〕が小さいことがわかる。また、図5(a)に示された結果から、健常毛と水との接触角が最も大きく、損傷毛1および損傷毛2の順で毛髪と水との接触角が低下していることがわかる(健常毛と水との接触角>損傷毛1と水との接触角>損傷毛2と水との接触角)。したがって、健常毛の損傷度が最も小さく、損傷毛1および損傷毛2の順で毛髪の損傷度が増加していること(健常毛の損傷度<損傷毛1の損傷度<損傷毛2の損傷度)がわかる。よって、毛髪に含まれるベヘニン酸の量と、毛髪と水との接触角とは、相関していることがわかる。
さらに、図4に示された結果から、損傷毛3におけるベヘニン酸アミドの残存度〔図4(c)参照〕に比べ、損傷毛4におけるベヘニン酸アミドの残存度〔図4(d)参照〕が小さいことがわかる。また、図5(b)に示された結果から、健常毛と水との接触角が最も大きく、損傷毛3および損傷毛4の順で毛髪と水との接触角が低下していることがわかる(健常毛と水との接触角>損傷毛3と水との接触角>損傷毛4と水との接触角)。したがって、健常毛の損傷度が最も小さく、損傷毛3および損傷毛4の順で毛髪の損傷度が増加していること(健常毛の損傷度<損傷毛3の損傷度<損傷毛4の損傷度)がわかる。よって、毛髪に含まれるベヘニン酸の量と、毛髪と水との接触角とは、相関していることがわかる。
これらの結果から、健常毛に含まれるベヘニン酸アミドの量に比べて被験対象の毛髪に含まれるベヘニン酸アミドの量が少ないほど、被験対象の毛髪の損傷度が大きいことがわかる。また、被験試料が毛髪に与えるダメージが大きいほど、毛髪に含まれるベヘニン酸アミドの量が少ないことから、毛髪に含まれるベヘニン酸の量を指標として被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができることがわかる。
実施例3
試験例1(1)と同様の操作を行ない、調製例4で得られた損傷毛4および調製例1で得られた健常毛それぞれの観察用試料を得た。
得られた観察用試料をイメージング質量顕微鏡〔(株)島津製作所製、商品名:iMScope〕に供し、調製例4で得られた損傷毛4および調製例1で得られた健常毛それぞれのROIの単位面積あたりにおけるベヘニン酸アミドに対応する質量電荷比(m/z=340.4)のピークに由来するシグナルの強度を求めることにより、毛髪におけるベヘニン酸アミドの含有量を調べた。また、前記において、ベヘニン酸アミドに由来するシグナルの強度を求める代わりに、パルミチン酸アミドに対応する質量電荷比(m/z=253.28)のピークに由来するシグナルの強度およびステアリン酸アミドに対応する質量電荷比(m/z=284.33)のピークに由来するシグナルの強度を求めたことを除き、前記と同様の操作を行ない、毛髪におけるパルミチン酸アミドの含有量および毛髪におけるステアリン酸アミドの含有量を調べた。
実施例3において、毛髪におけるベヘニン酸アミドの含有量を調べた結果を図6、毛髪におけるパルミチン酸アミドの含有量を調べた結果を図7、毛髪におけるステアリン酸アミドの含有量を調べた結果を図8に示す。
図6〜8に示された結果から、健常毛におけるベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミドおよび毛髪におけるステアリン酸アミドそれぞれの含有量と比べて損傷毛におけるベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミドおよびステアリン酸アミドそれぞれの含有量が減少していることがわかる。
なお、実施例3において、毛髪におけるベヘニン酸アミドの含有量を用いる代わりに毛髪におけるパルミチン酸アミドの含有量および毛髪におけるステアリン酸アミドの含有量を用いた場合にも、ベヘニン酸アミドの場合と同様に、毛髪におけるパルミチン酸アミドの含有量の減少度および毛髪におけるステアリン酸アミドの含有量の減少度が大きいほど、毛髪の損傷度が大きい傾向がみられる。
したがって、これらの結果から、毛髪に含まれるベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量は、毛髪の損傷の指標として用いることができることがわかる。また、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を指標として被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができることがわかる。
以上説明したように、健常毛における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量と比べて損傷毛における炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量が少ないほど、毛髪の損傷度が大きいことから、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を毛髪の損傷の指標として用い、前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に基づき、当該毛髪の損傷および被験試料が毛髪に与える損傷を評価することができることが示唆される。

Claims (5)

  1. 毛髪の損傷を評価する方法であって、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を毛髪の損傷の指標として用い、前記毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量に基づき、当該毛髪の損傷を評価することを特徴とする毛髪の損傷の評価方法。
  2. 毛髪の損傷を評価する方法であって、質量顕微鏡、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法およびガスクロマトグラフ−質量分析法からなる群より選ばれた少なくとも1種の方法によって毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を測定し、得られたシグナルの強度を毛髪の損傷の指標として用い、前記シグナルの強度に基づき、当該毛髪の損傷を評価することを特徴とする毛髪の損傷の評価方法。
  3. 被験試料が毛髪に与える損傷を評価する被験試料の評価方法であって、毛髪に含まれる炭素数16〜22の脂肪酸アミドの量を毛髪の損傷の指標として用い、被験試料との接触前後の毛髪における前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドの含有量の変化に基づき、前記被験試料が毛髪に与える損傷を評価することを特徴とする被験試料の評価方法。
  4. 被験試料が毛髪に与える損傷を評価する被験試料の評価方法であって、質量顕微鏡、液体クロマトグラフ法、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ−質量分析法およびガスクロマトグラフ−質量分析法からなる群より選ばれた少なくとも1種の方法によって被験試料との接触前後の毛髪における炭素数16〜22の脂肪酸アミドに由来するシグナルの強度を測定し、得られたシグナルの強度を毛髪の損傷の指標として用い、被験試料との接触前後の毛髪における前記シグナルの強度の変化に基づき、前記被験試料が毛髪に与える損傷を評価することを特徴とする被験試料の評価方法。
  5. 前記炭素数16〜22の脂肪酸アミドが、ベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミドおよびステアリン酸アミドからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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