JP6566012B2 - テーパー鋼板の矯正方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板の長手方向に板厚が変化するテーパー鋼板をローラーレベラー方式の矯正機により矯正するテーパー鋼板の矯正方法に関する。
テーパー鋼板とは、鋼板の長手方向に板厚が変化する鋼板であり、一般に、橋梁材、造船材としての需要が多い鋼板である。このようなテーパー鋼板に平坦度不良が生じた場合、平坦度不良を修正するために、ローラーレベラー方式の矯正機(ホットレベラー、コールドレベラー)やプレス装置を用いた矯正が行われる。
一般的に、平板をローラーレベラー方式の矯正機により矯正する場合には、板厚が鋼板長手方向の一端から他端にかけて均一であり、またローラーレベラーのギャップ(圧下量)の設定値が1つであることから、鋼板の矯正作業中の圧下量を自動で制御する自動矯正により行われる。しかし、テーパー鋼板をローラーレベラー方式の矯正機により矯正する場合には、鋼板の矯正作業中に板厚が鋼板長手方向で変化するため、自動矯正により全長に渡り、均一な矯正を行うことが困難である。そのため、一般的には、オペレーターが、矯正中のモータ電流値変化等から板厚の変化を目視で判断し、手動操作で圧下量を調整しながらテーパー鋼板の矯正作業を行っている。
テーパー鋼板の矯正装置として、例えば特許文献1、2がある。特許文献1には、矯正装置入側に設置した板厚検出器により板厚一定の平行部の厚さを実測した後、実測板厚に基づき調整された圧下量を圧下駆動用電動機に入力して、最初の圧下量を平行部の実際板厚に応じて変化させ、鋼板材を搬送する搬送ローラーの回転数より圧下量調整を開始する時刻を求めると共に圧下量を調整する速度を制御する技術が開示されている。
特許文献2には、圧延機で圧延された鋼板を矯正する際に、圧延機出側に設置された板厚計で測定した板厚実測値から鋼板のテーパー部を認識し、鋼板長手方向における各位置での板厚に応じて圧下量を制御する技術が開示されている。
なお、テーパー鋼板の圧延方法ではあるが、例えば特許文献3には、鋼板を複数回のテーパパスで圧延して製造するに際し、第2回以後のテーパパスでは、前回パスで測定した荷重変動データを用いてテーパー部の位置を認識し、この位置を用いて第2回以後のパスのテーパー部の開始位置を修正する学習制御(フィードバック制御)の技術が開示されている。
特開昭49−109256号公報 特開平7−178455号公報 特開2005−230905号公報
従来の手動操作により圧下量を調整する矯正作業では、オペレーターが鋼板の矯正中のモータ電流値の変化等からテーパー部を認識し、圧下量の変更位置を調整していた。しかし、この方法では、モータ電流値の変化等からテーパー部を認識する際、判断に個人差が生じる。そのため、テーパー部が始まる位置(始点)あるいはテーパー部が終わる位置(終点)を正確に判断できない問題がある。
この問題に対しては、正確にテーパー部の始点と終点を認識するために、マイクロメータを用いて板厚を実測し、板厚が変化する位置を鋼板上に罫書くことで解決可能である。しかし、矯正対象となる鋼板ごとにマイクロメータを用いて板厚を実測して鋼板上に罫書くことは、膨大な時間を必要とし、現実的ではない。
また、特許文献1に記載の矯正装置では、矯正装置入側に設けた板厚検出器を用いてテーパー部を認識し、鋼板の搬送速度からテーパー部が矯正装置に差し掛かるタイミングを計算して圧下量の変更位置を調整する。そのため、この方法では、一般的に高価な設備である板厚検出器を導入する必要があった。また、搬送ローラーの回転数、ローラー直径を用いた所定の式で搬送速度を求めて、圧下量を調整するタイミングを計算するが、搬送中に加減速を行う場合には調整するタイミングを計算できなくなることや、ローラー直径が矯正圧延により経時変化した場合には計算された調整するタイミングと実際の調整するタイミングとの間に誤差が生じるという問題がある。
特許文献2に記載の矯正装置および矯正方法では、圧延後の板厚実測値からテーパー部を認識し、各テーパー部の板厚におけるローラレベラーの入側および出側の圧下量を、予め設定しておいた板厚と温度との関係から得られる適正圧下量の基準値を用いて演算する。そのため、この方法では、適正圧下量の基準値を予めテーブルに設定しておく必要がある。また、上記基準値を用いて板厚における圧下量を予測するため、その精度により誤差が生じるという問題がある。
特許文献3に記載の圧延方法は、鋼板を複数回のテーパパスで圧延して製造するに際し、第2回以後のテーパパスでは、前回パス(第1回のテーパパス)の荷重実績の微分値を用いてテーパー部を認識し、次パス以後(第2回以後のテーパパス)のテーパー開始位置を修正する学習制御である。すなわち、この方法はフィードバック制御であり、上記前回パスでテーパー部の認識およびテーパー開始位置の変動の両方を行うダイナミック制御ではないために、ロールの先進率誤差などの問題が未だ残っている。また、フィードバック制御を適用する場合、1回目のパスには学習制御が適用されないため、1回目のパスにおける長手方向の位置精度は落ち、矯正効果も低下するという問題がある。
本発明は係る問題に鑑み、テーパー鋼板の長手方向でテーパー部の位置を正確に認識し、全長にわたって矯正機の圧下量の制御を自動運転できる、テーパー鋼板の矯正方法の提供を目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、鋼板の矯正作業中に発生する荷重を監視することで、荷重の変化量から鋼板のテーパー部の位置を正確に認識できることを見出した。テーパー鋼板がローラーレベラー方式の矯正機により矯正されている間、矯正機には荷重が発生している。そして荷重は、テーパー部で板厚が変化する際に変動する。すなわち、板厚が薄部から厚部に変化する場合、荷重は増加し、一方、板厚が厚部から薄部に変化する場合、荷重は減少する。この荷重の変動からテーパー部の位置を認識し、鋼板長手方向位置における圧下量を自動的に調整することで、テーパー鋼板の全長にわたって自動矯正が高精度で可能となることを知見した。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は以下の通りである。[1] ローラーレベラー方式の矯正機により、鋼板の長手方向に板厚が変化するテーパー部を有するテーパー鋼板を矯正するテーパー鋼板の矯正方法であって、
矯正中のテーパー鋼板長手方向の荷重を測定し、
測定された前記荷重から荷重変化量を算出し、
算出された前記荷重変化量を用いて、テーパー部の板厚に対応した矯正圧下の圧下量に変更する制御を行うことを特徴とするテーパー鋼板の矯正方法。
[2] 同一パス内で行うことを特徴とする上記[1]に記載のテーパー鋼板の矯正方法。
[3] さらに、算出された前記荷重変化量が異常値を示す場合に、板厚に対する矯正圧下の圧下量を維持する制御を行うことを特徴とする上記[1]または[2]に記載のテーパー鋼板の矯正方法。
本発明によれば、テーパー鋼板の矯正中に発生する矯正機の荷重変動から板厚の変化を認識することにより、テーパー部の位置を高精度で認識することができる。そのため、鋼板長手方向位置における適切な圧下量の自動調整が可能となり、全長にわたって最適な矯正を実現できる。また、全長にわたって高精度かつ自動運転で矯正できるため、従来の矯正方法に比べて矯正効果が大幅に向上し、矯正後の鋼板の平坦度にも優れる。
図1は、本発明の一実施形態であるテーパー鋼板の矯正方法が適用されるローラーレベラー方式の矯正機の側面図である。 図2(A)は、本発明の矯正方法により矯正されるテーパー鋼板の一例を説明する側面図であり、図2(B)は、そのテーパー鋼板の矯正方法の概念を説明する図である。 図3(A)、(B)は、テーパー鋼板を矯正した場合の鋼板長手方向位置における荷重と圧下量との関係を説明する図である。 図4は、本発明の一実施形態であるテーパー鋼板の矯正方法を説明するフローチャートである。 図5は、実施例として、本発明例と比較例における再矯正低減の効果を説明する図である。
まず、本発明のテーパー鋼板の矯正方法を適用するローラーレベラー方式の矯正機について説明する。図1は、ローラーレベラー方式の矯正機の側面図である。なお、ここでは鋼板として平板を示している。
図1に示すように、一般的な鋼板のローラーレベラー方式の矯正機1は、例えば、複数の矯正ロール2、複数のバックアップロール3、ロールフレーム4、ロール撓み補正装置5、圧下装置6を有する。鋼板7は、パスラインに沿って紙面矢印方向(矯正方向)に搬送される。
矯正ロール2は、鋼板7が通過するパスラインに対して上側と下側に千鳥状に配置された複数本のロールからなる。ここでは、上側に配置されたロールを上側矯正ロール2U、下側に配置されたロールを下側矯正ロール2Dと称する。上側および下側の矯正ロール2U、2Dは、それらの上側および下側に設けたバックアップロール3U、3Dによりそれぞれ支持される。上側および下側のバックアップロール3U、3Dは、それらの上側および下側に設けたロールフレーム4U、4Dにより支持される。
ロール撓み補正装置5は、上側ロールフレーム4Uの上側に配置され、矯正ロール2U、2Dの幅方向に複数のロール撓み補正装置を設ける。ロール撓み補正装置5は、矯正反力により矯正ロール2U、2Dに生じる撓みを補正する装置であり、各矯正ロールの幅方向の圧下量を個別に調整する。
圧下装置6は、矯正機1の上部で鋼板の入側と出側に、それぞれ配置される。圧下装置6は、入側と出側の圧下量を個別に調整する。ここでは、紙面右側を入側とし、紙面左側を出側とする。
矯正機1は、矯正制御装置10により、コントローラを介して、入力情報に基づいてロール撓み補正装置5の開度を制御し、開度に応じて圧下装置6を昇降して上側および下側矯正ロール2U、2Dの間のギャップ(圧下量)を調整する。テーパー鋼板(以下、鋼板と称する場合もある)を矯正する場合には、上側矯正ロール2Uをロールフレーム4ごと傾斜させて、入側の上側および下側矯正ロール2U、2Dの間隔と出側の上側および下側矯正ロール2U、2Dの間隔を調整する。矯正ロールにより繰り返し曲げを付与することにより、鋼板の反りや波打ちなどの形状不良は矯正される。
図2、3を参照して、本発明におけるテーパー部を検出する方法、および荷重変動を用いてテーパー部を判定する効果について、それぞれ説明する。
図2(A)、(B)は、テーパー鋼板7と、テーパー鋼板7を矯正している状態を説明する図である。テーパー鋼板とは、鋼板の長手方向で板厚が変化する鋼板であり、1つ以上のテーパー部を有する。テーパー鋼板には、例えば、鋼板の全長で板厚が増加または減少する1方向テーパー鋼板や、板厚が凸型に増減する2方向テーパー鋼板などがある。また、鋼板の先端、尾端などに板厚が均一となる平行部を1つ以上有する鋼板や、2種類以上の厚さが異なる平行部を有する鋼板がある。
図2(A)に示すように、ここでは一例として、平行部を有する1方向テーパー鋼板7の矯正を行う。このテーパー鋼板7には、鋼板の長手方向(圧延方向)に板厚が均一となる平行厚部aと、この平行厚部aに連続して設けられ長手方向に板厚が減少するテーパー部bと、このテーパー部bに連続して設けられ長手方向に板厚が均一でかつ平行厚部よりも板厚が薄い平行薄部cが形成される。
一般に、平板を矯正する場合には、鋼板長手方向の一端から他端にかけて板厚が均一のため、ローラーレベラーの圧下量の設定値は1つでよい。一方、図2(A)に示すテーパー鋼板を矯正する場合には、鋼板長手方向に板厚の異なる平行部を2つ以上有するため、ローラーレベラーの圧下量の設定値は2つ以上必要である。また、鋼板の長手方向で板厚が連続的に変化するテーパー部を有するため、平坦度、荷重などを考慮した上で、最適なローラーレベラーの圧下量に制御することが要求される。すなわち、テーパー部を適切に認識し、テーパー部の板厚に対して圧下量を適正範囲に補正することが必要である。
そこで、本発明では、テーパー鋼板の矯正中における荷重の変動を適切に捉えることにより、テーパー部を正確に認識できることを特徴とする。本発明は、矯正機に発生する荷重の変動を用いてテーパー部の判定を行うが、荷重に変えてモータ電流値を用いて判定を行うことも考えられる。しかし、本発明者らは、モータ電流値を用いる場合、テーパー部における波形の変動が大きくなり、板厚が変化する位置を捉え難くなることを見出した。これに対し、荷重の測定値を用いる場合、テーパー部における波形が安定し、板厚が変化する位置を正確に捉えやすいことも見出した。そのため、本発明では、テーパー部の認識に荷重の変動を用いる。
図2(B)を参照して、テーパー部を検出する方法について説明する。ここでは、上側および下側矯正ロール2U、2Dは、入側(紙面右側)から順に数えて1番目の矯正ロールを#1、2番目の矯正ロールを#2、3番目の矯正ロールを#3と称する。矯正ロールは全部で9本あるため、#1〜#9の矯正ロールがある。図中、#2の矯正ロールに記載した矢印は、テーパー部を検出する位置が平行厚部から平行薄部に移動したことにより、圧下量が変わったことを示している。
テーパー鋼板7のテーパー部bの検出は、図1に示す圧下装置6に設けた荷重計測手段を用いて矯正中に生じる荷重を計測し、テーパー部検出手段によりその荷重の変化量(荷重の微分値)から鋼板の平行部あるいはテーパー部であるかを判断する。荷重の計測は、矯正機の入側あるいは出側で行う。例えば、荷重の計測を入側で行う場合には#2の矯正ロールを用い、出側で行う場合には#8の矯正ロールを用いる。荷重計測手段は、例えば圧力計である。荷重は、圧下装置6に設置された圧力計により、測定した圧力値を荷重に変換することで計測される。例えば、鋼板が入側を通過する場合、入側の圧下装置6に設けた荷重計測手段が、入側全体にかかる荷重を計測し、鋼板長手方向位置に対する荷重の計測値のトラッキングを行う。
そして、テーパー部検出手段が、荷重計測手段で得られた荷重の情報から、荷重の微分値(単位時間あたりの荷重変化量△P)を算出し、テーパー鋼板の平行部あるいはテーパー部であるかを判定する。テーパー部の場合、平行部の場合と比べて、単位時間あたりの荷重変化量△Pが大きくなる。その後、その判定結果に基づき、圧下量調整手段が、必要に応じて設定されていた圧下量の設定変更を行う。
以上のように、本発明は、上記した荷重計測手段により荷重を計測しているときに、テーパー部検出手段によりリアルタイムでテーパー部の判定を行い、その判定結果に応じて圧下量調整手段により圧下量の設定変更を行う機能を有する。すなわち、同一の矯正パスで、荷重の計測を行いながらテーパー部を検出し、さらに検出されたテーパー部の板厚に対応した矯正圧下の圧下量に変更するダイナミック制御を行っている。このようなダイナミック制御にすることにより、テーパー部の位置の認識の高精度化を実現し、さらに鋼板長手方向位置における矯正パスの圧下量を最適範囲に制御できる。
具体的には、図2(B)に示すように、矯正中に入側に配置される矯正ロール2(#2の矯正ロール)が平行厚部から平行薄部を通過する場合、トラッキングされる荷重は減少する。この減少量から、単位時間当たり、例えば5msecあたりの荷重変化量ΔPを算出し、この荷重変化量ΔPがテーパー部の判断基準となる基準荷重変化量(α)に達する場合には、入側の矯正ロールが通過した鋼板長手方向位置をテーパー部bとして検出する。その後、入側の圧下装置の圧下量が、平板厚部の圧下量から平行薄部の圧下量に設定変更され、テーパー部に倣うように圧下量は段階的に変化する。
ただし、平行厚部や平行薄部の平行部においても、形状不良により荷重の変動が生じる場合がある。そのため、わずかな荷重変化量の場合には、テーパー部と判断されないように、あらかじめ条件を設定しておく必要がある。例えば、単位時間当たりの荷重変化量ΔPが基準荷重変化量(α)に達しない場合には、平行薄部や平行厚部におけるわずかな形状不良であると判定し、本発明の矯正制御が適用されないようにする。また例えば、上位コンピュータより入力された製品寸法に基づいて予めテーパー部近傍を設定し、テーパー部近傍では単位時間当たりの荷重変化量ΔPが変動しても本発明の矯正制御が適用されないようにする。
図3を参照して、荷重変動を用いてテーパー部を判定することの効果について説明する。図3(A)、(B)は、鋼板の長手方向位置における、荷重と油圧シリンダ位置(圧下量)との関係を説明する図である。横軸は鋼板の長手方向位置(mm)とし、縦軸は荷重(ton)および油圧シリンダ位置(CYL位置)(mm)とする。なお、図3では、平行薄部、テーパー部、平行厚部の順に矯正する場合を示す。
図3(A)は、テーパー部の検出に際し、本発明の制御、すなわち荷重の微分値(単位時間当たりの荷重変動量△P)による判断を行わない場合を示したものである。本発明の制御を行わない場合、特に、図3(A)の点線で囲ったテーパー部では、トラッキング位置のズレが大きく発生していることがわかる。そのため、本発明の制御を用いない場合には、テーパー部の位置を正確に認識できず、矯正精度は低下する。
これに対し、図3(B)は、テーパー部の検出に際し、本発明の制御による判断を行う場合を示したものである。本発明の制御を行う場合、特に、図3(B)の点線で囲ったテーパー部では、トラッキング位置のズレがない。そのため、本発明の制御を用いる場合には、テーパー部の位置を高精度で認識できる。すなわち、鋼板長手方向位置に対する矯正中に生じる荷重変動が適切に捉えられるため、テーパー部が始まる位置やテーパー部が終わる位置を正確に認識することができる。これにより、テーパー部の板厚に対してローラーレベラーの圧下量が適正範囲となるように変更可能となるため、鋼板の全長にわたって高精度に矯正することができる。
次に、本発明のテーパー鋼板の矯正方法について説明する。本発明のテーパー鋼板の矯正方法は、ローラーレベラー方式の矯正機により、鋼板の長手方向に板厚が変化するテーパー部を有するテーパー鋼板を矯正するテーパー鋼板の矯正方法であって、矯正中のテーパー鋼板長手方向の荷重を測定し、測定された前記荷重から単位時間当たりの荷重変化量を算出し、算出された単位時間当たりの荷重変化量が予め設定された基準荷重変化量に達した場合に、テーパー部と判断して、テーパー部の板厚に対して矯正圧下の圧下量を変更する制御を行うものである。
図4を参照して、本発明における矯正圧下量制御処理を実行する際の矯正制御装置10の動作について説明する。例えば、本発明の矯正制御装置10は、鋼板移動距離計測手段、圧下量計測手段、荷重計測手段、テーパー部検出手段、圧下量調整手段を有する。図4に示す矯正圧下量制御処理は、矯正制御装置10に対して、荷重計測手段から荷重を示す信号の入力があったタイミングで開始され、ステップS1の処理に進む。
なお、ステップS1の処理がされる前に、矯正制御装置10により、テーパー鋼板の製品寸法に基づき平行厚部と平行薄部におけるローラーレベラーの各圧下量の設定、テーパー部を認識するための条件設定などの条件設定が、あらかじめ行われる。テーパー鋼板の製品寸法とは、例えば、テーパー鋼板の全長、平行部やテーパー部長さ等の情報である。テーパー部を認識するための条件とは、例えば、単位時間当たりの基準荷重変化量(α)等の情報である。基準荷重変化量αは、後述のステップS2で算出される単位時間当たりの荷重変化量がテーパー部であるか否かを判断する基準となる変化量であり、例えば、誤検出や検出タイミングの遅れが生じない位置を考慮して決定される。なお、これらの情報は、矯正制御装置10の上位コンピュータより送信される。
まず、ステップS1(測定ステップ)では、鋼板移動距離測定手段、圧下量測定手段、荷重計測手段により、矯正圧下中におけるテーパー鋼板の長手方向位置、テーパー鋼板の長手方向位置に対する矯正ロールのシリンダ位置およびテーパー鋼板の長手方向位置に対する荷重についての測定が、それぞれ行われる。そして、テーパー鋼板の長手方向位置に対する矯正ロールのシリンダ位置、テーパー鋼板の長手方向位置に対する荷重がトラッキングされる。
テーパー鋼板の長手方向位置の測定は、鋼板移動距離測定手段により、テーパー鋼板の先端部を検出後、鋼板長手方向の移動距離を測定することにより行う。例えば、鋼板移動距離測定手段は搬送ロールに設置されたPLG(ロール回転数検出)である。また、シリンダ位置の測定は、圧下量測定手段により、圧下装置6の位置に設置された圧力計を用いて測定することにより行う。例えば、圧下量測定手段は圧力計である。また、荷重の測定は、上述の荷重計測手段により行われる。
次に、ステップS2(テーパー部検出ステップ)では、テーパー部の検出が行われる。テーパー部の検出は、テーパー部検出手段により、ステップS1で測定された荷重から単位時間あたりの荷重変化量(△P)が算出された後、算出された単位時間あたりの荷重変化量△Pが、予め設定された基準荷重変化量(α)より大きいか否かを判断することにより行われる。なお、単位時間あたりの荷重変化量の算出は、実測されたテーパー鋼板の長手方向位置に対する単位時間当たりの荷重変化量ΔPを算出することにより行う。
単位時間あたりの荷重変化量△Pが、予め設定された基準荷重変化量(α)以上の場合(ステップS2のYes)には、矯正部分がテーパー部であると判断される。そして、ステップS3(圧下量変更ステップ)に進み、圧下量調整手段により、矯正圧下の圧下量の設定を変更する制御が行われる。これにより、圧下量はテーパー部の板厚に対して段階的に変更される。例えば、平行厚部の圧下量が設定されている場合には、平行厚部から平行薄部の圧下量に設定変更が行われる。
一方、単位時間あたりの荷重変化量△Pが、予め設定された基準荷重変化量(α)未満の場合(ステップS2のNo)には、矯正部分はテーパー部以外、すなわち平行薄部や平行厚部で生じた荷重変動と判断される。そして、ステップS4(圧下量維持ステップ)に進み、圧下量調整手段により、設定されている圧下量を維持する制御が行われる。
なお、鋼板の先端では鋼板噛み込み時の衝撃等により、実測された単位時間当たりの荷重変化量:ΔPが異常値を示す場合がある。そのため、異常値を示す場合にも、圧下量調整手段により設定されている圧下量を維持する制御(ステップS4)が行われるようにしてもよい。この場合、例えば、ステップS2において、さらに荷重変化量:ΔPが異常値を示すか否かの判断を行い、該当する場合にはステップS4の処理が行われる。なお、当該判断で異常値に該当しない場合には、テーパー部であるか否かの判断のため、上述のテーパー部の検出(ステップS2)と後続の処理が行われる。
ここで異常値とは、テーパー部検出手段が、通常テーパー部として判断可能な荷重変化量を超える大きな値を指す。上記した異常値を示すか否かの判断は、鋼板長手方向の全範囲に対して行ってもよく、あるいは鋼板長手方向の一部の範囲だけを対象に行ってもよい。鋼板長手方向の一部の範囲とは、例えば、予定の長手方向テーパー位置の始点や終点を基準に所定距離(m)離れた鋼板長手方向の範囲を指す。
以上により、矯正圧下量制御処理は終了する。その後、矯正制御装置10により、矯正圧下量制御処理後の圧下量で矯正処理が続けられる。本発明は、上記したようにダイナミック制御であり、同一パス内で、ステップS1の荷重計測手段による荷重の計測と、ステップS2のテーパー部検出手段によるリアルタイムでのテーパー部の判定と、ステップS3あるいはステップS4での圧下量調整手段による圧下量の設定変更あるいは設定維持が行われる。
なお、本発明では、異常値や平行部での荷重変動によりテーパー部と認識されて矯正圧下量制御処理が開始される誤動作を防止するため、テーパー部の始点および終点から所定距離離れた位置を基準として、上述の矯正圧下量制御処理を行うように制御してもよい。例えば、上位コンピュータより入力された製品寸法に基づいてテーパー部近傍を設定して、誤作動を防止する。この場合、鋼板移動距離測定手段により、テーパー部の始点から所定距離分だけ手前の位置を示す信号の入力があったタイミングで開始され、ステップS1の処理に進む。また、鋼板移動距離測定手段により、テーパー部の終点から所定距離分だけ後方の位置を示す信号の入力があったタイミングで終了する。
この場合の好適な制御方法としては、例えば図2(A)に示す鋼板の場合、テーパー部bと、テーパー部bを含めた所定範囲の平行部でのみ矯正圧下量制御処理を行う。それ以外の平行部では、矯正制御装置10により、予め設定された平行厚部あるいは平行薄部の圧下量に制御される。具体的には、平行厚部a:10000mm、テーパー部b:500mm、平行薄部c:3000mm、全長:13500mmのテーパー鋼板に対して、矯正圧下量制御処理を開始および終了する所定位置を1000mmと設定する。この場合、入側の矯正ロールが、テーパー部bの始点の位置から1000mm手前の平行厚部aを通過したタイミングで制御を開始し、テーパー部bの終点の位置から1000mm後の平行薄部cを通過したタイミングで制御を終了する。
以下、本発明の作用・効果について、実施例を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
本発明例として、図2(A)に示すテーパー鋼板7に、上述の矯正機1により、本発明の矯正方法で矯正圧下量制御を実施した。一方、比較例として、本発明例と同一寸法のテーパー鋼板に、上述の特許文献1に記載された従来の矯正方法(すなわち、矯正装置入側に設けた板厚検出器を用いてテーパー部を認識し、鋼板の搬送速度からテーパー部が矯正装置に差し掛かるタイミングを計算して圧下量の変更位置を調整する方法)を適用した。
図5に、本発明例と比較例における、再矯正率の比較結果を示す。再矯正とは、矯正によっても解消されない形状不良を解消するために行う加熱矯正をいう。再矯正率として、矯正対象となる全鋼板に対する再矯正を必要とする鋼板の割合を示す。図5に示すように、比較例の制御方法による矯正後に再矯正を必要とするものを1.0とした場合、本発明例の制御方法による矯正後に再矯正を必要とするものの割合は0.19であった。すなわち、本発明によれば、荷重変動によりテーパー部を検出することで、矯正ロールの圧下量の設定変化位置が適切になり、全長において適切なギャップで矯正できた。そして矯正能力が向上した結果、テーパー鋼板の再矯正率が大幅に低減した。
1 矯正機
2 矯正ロール
3 バックアップロール
4 ロールフレーム
5 ロール撓み補正装置
6 圧下装置
7 テーパー鋼板

Claims (3)

  1. ローラーレベラー方式の矯正機により、鋼板の長手方向に板厚が変化するテーパー部を有するテーパー鋼板を矯正するテーパー鋼板の矯正方法であって、
    矯正中のテーパー鋼板長手方向の矯正機に発生する荷重を測定し、
    測定された前記荷重から荷重変化量を算出し、
    算出された前記荷重変化量を用いて、テーパー部の板厚に対応した矯正圧下の圧下量に変更する制御を行うことを特徴とするテーパー鋼板の矯正方法。
  2. 同一パス内で行うことを特徴とする請求項1に記載のテーパー鋼板の矯正方法。
  3. さらに、算出された前記荷重変化量が異常値を示す場合に、板厚に対する矯正圧下の圧下量を維持する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のテーパー鋼板の矯正方法。
JP2017230428A 2016-12-01 2017-11-30 テーパー鋼板の矯正方法 Active JP6566012B2 (ja)

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