以下、本発明の量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.原子発振器(量子干渉装置)
まず、本発明の原子発振器(本発明の量子干渉装置を備える原子発振器)について説明する。なお、以下では、本発明の量子干渉装置を原子発振器に適用した例を説明するが、本発明の量子干渉装置は、これに限定されず、例えば、磁気センサー、量子メモリー等のデバイスにも適用可能である。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る原子発振器を簡単に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る原子発振器(量子干渉装置)を示す概略図である。図2は、アルカリ金属原子のエネルギー状態を簡略的に説明するための図である。図3は、光源部から出射される2つの光の周波数差と、受光部で検出される光の強度との関係を示すグラフである。
図1に示す原子発振器1は、量子干渉効果を利用した原子発振器である。この原子発振器1は、図1に示すように、原子セル2(ガスセル)と、光源部3と、受光部4と、ヒーター5と、温度センサー6と、磁場発生部7と、制御部8と、を備えている。
まず、原子発振器1の原理を簡単に説明する。
図1に示すように、原子発振器1では、光源部3が原子セル2に向けて光LLを出射し、原子セル2を透過した光LLを受光部4が検出する。
原子セル2内には、ガス状のアルカリ金属(金属原子)が封入されている。アルカリ金属は、図2に示すように、2つの基底準位(第1基底準位および第2基底準位)と励起準位とからなる3準位系のエネルギー準位を有する。ここで、第1基底準位は、第2基底準位よりも低いエネルギー状態である。
光源部3から出射された光LLは、周波数の異なる2種の共鳴光として第1共鳴光および第2共鳴光を含んでいる。これら第1共鳴光および第2共鳴光を前述したようなガス状のアルカリ金属に照射したとき、第1共鳴光の周波数ω1と第2共鳴光の周波数ω2との差(ω1−ω2)に応じて、共鳴光1、2のアルカリ金属における光吸収率(光透過率)が変化する。
そして、第1共鳴光の周波数ω1と第2共鳴光の周波数ω2との差(ω1−ω2)が第1基底準位と第2基底準位とのエネルギー差ΔEに相当する周波数に一致したとき、第1基底準位および第2基底準位から励起準位への励起がそれぞれ停止する。このとき、第1共鳴光および第2共鳴光は、いずれも、アルカリ金属に吸収されずに透過する。このような現象をCPT現象または電磁誘起透明化現象(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)と呼ぶ。
例えば、光源部3が第1共鳴光の周波数ω1を固定し、第2共鳴光の周波数ω2を変化させていくと、第1共鳴光の周波数ω1と第2共鳴光の周波数ω2との差(ω1−ω2)が第1基底準位と第2基底準位とのエネルギー差ΔEに相当する周波数ω0に一致したとき、受光部4の検出強度は、図3に示すように、急峻に上昇する。このような急峻な信号をEIT信号として検出する。このEIT信号は、アルカリ金属の種類によって決まった固有値をもっている。したがって、このようなEIT信号を基準として用いることにより、高精度な発振器を構成することができる。
以下、原子発振器1の各部を簡単に説明する。
[ガスセル]
原子セル2内には、ガス状のルビジウム、セシウム、ナトリウム等のアルカリ金属が封入されている。また、原子セル2内には、必要に応じて、アルゴン、ネオン等の希ガス、窒素等の不活性ガスが緩衝ガスとしてアルカリ金属ガスとともに封入されていてもよい。
後に詳述するが、原子セル2は、貫通孔を有する胴体部と、この胴体部の貫通孔の開口を塞ぐ1対の窓部とを有し、これにより、気体状のアルカリ金属が封入される内部空間が形成されている。
[光出射部]
光源部3は、原子セル2内のアルカリ金属原子を共鳴させる共鳴光対を構成する前述した第1共鳴光および第2共鳴光を含む光LLを出射する機能を有する。
また、光源部3が出射する光LLは、第1共鳴光および第2共鳴光に加えて、第3共鳴光を含んでいる。
第1共鳴光は、原子セル2内のアルカリ金属原子を前述した第1基底準位から励起準位へ励起する光(probe光)である。一方、第2共鳴光は、原子セル2内のアルカリ金属原子を前述した第2基底準位から励起準位へ励起する光(coupling光)である。ここで、第1共鳴光および第2共鳴光は、互いに同方向に円偏光している。また、第3共鳴光は、原子セル2内のアルカリ金属の磁気量子数を調整する「調整光」(repump光)である。この第3共鳴光は、第1共鳴光および第2共鳴光と同方向に円偏光している。後述するように第3共鳴光は、原子セル2に対して第2共鳴光および第2共鳴光とは反対側から照射されるため、原子セル2内において、第3共鳴光の円偏光の回転方向は、第1共鳴光および第2共鳴光の円偏光の回転方向と逆となる。これにより、原子セル2内のアルカリ金属原子の磁気量子数を調整することができる。なお、光源部3については、後に詳述する。なお、「円偏光」とは、光波の電場成分または磁場成分の、どちらか一方の振動に着目するとき、その振動方向が光の進行方向に対して垂直な面内で光波の周波数で回転し、振幅がその向きによらず一定である光であり、言い換えれば電場(または磁場)の振動が伝播に伴って円を描く光である。
[受光部]
受光部4は、原子セル2内を透過した光LL(特に、第1共鳴光および第2共鳴光で構成された共鳴光対)の強度を検出する機能を有する。
この受光部4としては、上述したような光LLの強度を検出し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、受光した光の強度に応じた信号を出力するフォトダイオード等の光検出器(受光素子)を用いることができる。なお、受光部4の構成は、後に詳述する。
[ヒーター]
ヒーター5(加熱部)は、前述した原子セル2(より具体的には原子セル2中のアルカリ金属)を加熱する機能を有する。これにより、原子セル2中のアルカリ金属を適切な濃度のガス状に維持することができる。
このヒーター5は、例えば、通電により発熱する発熱抵抗体を含んで構成されている。この発熱抵抗体は、原子セル2に対して接触して設けられていてもよいし、原子セル2に対して非接触で設けられていてもよい。
より具体的には、例えば、発熱抵抗体を原子セル2に対して接触して設ける場合、原子セル2の1対の窓部にそれぞれ発熱抵抗体を設ける。これにより、原子セル2の窓部にアルカリ金属原子が結露することを防止することができる。その結果、原子発振器1の特性(発振特性)を長期にわたり優れたものとすることができる。このような発熱抵抗体は、光LLに対する透過性を有する材料、具体的には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物等の透明電極材料で構成される。また、このような発熱抵抗体は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、ゾル・ゲル法等を用いて形成することができる。
また、発熱抵抗体を原子セル2に対して非接触で設ける場合、熱伝導性に優れる金属等、セラミックス等の部材を介して発熱抵抗体から原子セル2へ伝熱すればよい。
なお、ヒーター5は、原子セル2を加熱することができるものであれば、前述した形態に限定されず、各種ヒーターを用いることができる。また、ヒーター5に代えて、または、ヒーター5と併用して、ペルチェ素子を用いて、原子セル2を温度調節してもよい。
[温度センサー]
温度センサー6は、ヒーター5または原子セル2の温度を検出する機能を有する。
この温度センサー6は、例えば、ヒーター5または原子セル2に接触して配置される。
温度センサー6としては、それぞれ、特に限定されず、サーミスタ、熱電対等の公知の各種温度センサーを用いることができる。
[磁場発生部]
磁場発生部7は、原子セル2内のアルカリ金属に磁場を印加する機能を有する。これにより、ゼーマン分裂により、原子セル2内のアルカリ金属原子の縮退している異なる複数のエネルギー準位間のギャップを拡げて、分解能を向上させることができる。その結果、原子発振器1の発振周波数の精度を高めることができる。
ここで、磁場発生部7からの磁場は、原子セル2内において、光LLの進行方向に沿っている(ほぼ平行である)。なお、原子セル2内のアルカリ金属に対して共鳴光対および調整光を効率的に作用させる観点から、原子セル2内において、磁場発生部7からの磁場の方向は、光LLの進行方向に対して、0°以上30°以下であることが好ましく、0°以上20°以下であることがより好ましく、0°以上10°以下であることがさらに好ましい。
この磁場発生部7は、例えば、ソレノイド型を構成するように原子セル2の外周に沿って巻回して設けられたコイルで構成されていてもよいし、ヘルムホルツ型を構成するように原子セル2を介して対向して設けられた1対のコイルで構成されていてもよい。
また、磁場発生部7が発生する磁場は、定磁場(直流磁場)であるが、交流磁場が重畳されていてもよい。
[制御部]
制御部8は、光源部3、ヒーター5および磁場発生部7をそれぞれ制御する機能を有する。
この制御部8は、光源部3を制御する光源制御部82と、原子セル2中のアルカリ金属の温度を制御する温度制御部81と、磁場発生部7からの磁場を制御する磁場制御部83とを有する。
光源制御部82は、前述した受光部4の検出結果に基づいて、光源部3から出射される第1共鳴光および第2共鳴光の周波数を制御する機能を有する。より具体的には、光源制御部82は、前述した周波数差(ω1−ω2)が前述したアルカリ金属固有の周波数ω0となるように、光源部3から出射される第1共鳴光および第2共鳴光の周波数を制御する。なお、光源制御部82の構成については、後に詳述する。
また、温度制御部81は、温度センサー6の検出結果に基づいて、ヒーター5への通電を制御する。これにより、原子セル2を所望の温度範囲内に維持することができる。例えば、原子セル2は、ヒーター5により、例えば、70℃程度に温度調節される。
また、磁場制御部83は、磁場発生部7が発生する磁場が一定となるように、磁場発生部7への通電を制御する。
このような制御部8は、例えば、基板上に実装されたICチップに設けられている。
以上、原子発振器1の構成を簡単に説明した。
(光源部および受光部の詳細な説明)
図4は、図1に示す原子発振器が備える光源部、原子セルおよび受光部を説明するための概略図である。図5は、図4に示す第2光源部の発光素子および受光部を含む構造体を説明するための概略断面図である。図6は、図5に示す構造体の概略平面図である。
図4に示すように、光源部3は、第1共鳴光および第2共鳴光を含む共鳴光対LL1を第1の光として出射する第1光源部31と、第3共鳴光を含む調整光LL2を第2の光として出射する第2光源部32と、を備えている。
第1光源部31は、第1光源311と、λ/4波長板312と、を有している。なお、第1光源部31は、第1光源311とλ/4波長板312との間にλ/2波長板が配置されていてもよい。この場合、第1光源311を光軸まわりに90°回転させた姿勢で設置すればよい。また、第1光源部31は、第1光源311と原子セル2との間に、レンズが配置されていてもよい。これにより、原子セル2内の共鳴光対LL1を平行光とすることができる。
第1光源311は、直線偏光されている共鳴光対からなる第1光LL1aを出射する機能を有する。この第1光源311は、第1光LL1aを含む光を出射し得るものであれば特に限定されないが、例えば、端面発光レーザー、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザーである。なお、「直線偏光」とは、電磁波(光)の振動面が一平面内にある光であり、言い換えれば、電場(または磁場)の振動方向が一定な光である。
λ/4波長板312は、直交する偏光成分間に位相差π/2(90°)を生じさせる複屈折素子である。このλ/4波長板312は、第1光源311からの第1光LL1aを直線偏光から円偏光(楕円偏光も含む)の共鳴光対LL1に変換する機能を有する。これにより、前述した第1共鳴光および第2共鳴光で構成された共鳴光対LL1を生成することができる。
一方、第2光源部32は、原子セル2に対して、前述した第1光源部31とは反対側に配置されている。この第2光源部32は、第2光源321と、λ/4波長板322と、を有している。
第2光源321は、前述した第1光源311と同方向に直線偏光されている共鳴光からなる第2光LL2aを出射する機能を有する。この第2光源321は、第2光LL2aを含む光を出射し得るものであれば特に限定されないが、例えば、端面発光レーザー、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザー、発光ダイオード(LED)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等の発光素子である。
ここで、第2光源321の出力は、第1光源311の出力よりも小さいことが好ましい。これにより、後述するような調整光による作用を効果的に生じさせることができる。
λ/4波長板322は、直交する偏光成分間に位相差π/2(90°)を生じさせる複屈折素子である。このλ/4波長板322は、第2光源321からの第2光LL2aを直線偏光から円偏光(楕円偏光も含む)の調整光LL2に変換する機能を有する。これにより、前述した第3共鳴光となる調整光LL2を生成することができる。ここで、直線偏光されている第2光LL2aの偏光方向(図4に示すb2方向)は、直線偏光されている第1光LL1aの偏光方向(図4に示すb1方向)と同じ方向(平行な方向)である。したがって、λ/4波長板312で生成した共鳴光対LL1が右円偏光である場合、λ/4波長板322で生成した調整光LL2も右円偏光であり、一方、共鳴光対LL1が左円偏光である場合、調整光LL2も左円偏光である。このような右円偏光同士または左円偏光同士の共鳴光対LL1および調整光LL2を互いに反対側から原子セル2に照射することにより、原子セル2の窓部22と窓部23とが並ぶ方向に沿って同方向から見たとき、原子セル2内において、調整光LL2の円偏光の回転方向が共鳴光対LL1の円偏光の回転方向に対して逆方向となる。すなわち、共鳴光対LL1および調整光LL2の一方を右円偏光、他方を左円偏光とし、共鳴光対LL1および調整光LL2を原子セル2に対して同じ側から照射した場合と同様の回転方向の関係となる。
以上のように構成された光源部3は、第1光源311が光源制御部82により前述した第1共鳴光および第2共鳴光を出射するように制御される。
光源制御部82は、周波数制御部821と、電圧制御型水晶発振器822(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillators)と、位相同期回路823(PLL:phase locked loop)と、を有している。
周波数制御部821は、受光部4の受光強度に基づいて原子セル2内のEIT状態を検出し、その検出結果に応じた制御電圧を出力する。これにより、周波数制御部821は、受光部4でEIT信号が検出されるように電圧制御型水晶発振器822を制御する。
電圧制御型水晶発振器822は、周波数制御部821により所望の発振周波数となるように制御され、例えば、数MHz〜数10MHz程度の周波数で発振する。また、電圧制御型水晶発振器822の出力信号は、位相同期回路823に入力されるとともに、原子発振器1の出力信号として出力される。
位相同期回路823は、電圧制御型水晶発振器822からの出力信号を周波数逓倍する。これにより、位相同期回路823は、前述したアルカリ金属原子の2つの異なる2つの基底準位のエネルギー差ΔEに相当する周波数の1/2の周波数で発振する。このように逓倍された信号(高周波信号)は、直流バイアス電流が重畳された上で駆動信号として第1光源部31の第1光源311に入力される。これにより、第1光源311に含まれる半導体レーザー等の発光素子を変調して、周波数差(ω1−ω2)がω0となる2つの光である第1共鳴光および第2共鳴光を出射させることができる。ここで、直流バイアス電流の電流値は、図示しないバイアス制御部により所定値に制御される。これにより、第1共鳴光および第2共鳴光の中心波長を所望に制御することができる。
なお、第1光源311および第2光源321は、それぞれ、図示しない温度調節素子(発熱抵抗体、ペルチェ素子等)により、所定温度に温度調節される。また、第1光源311および第2光源321の温度を調整することにより、第1光源311および第2光源321からの光の中心波長を制御することもできる。
以上説明したように構成された第1光源部31および第2光源部32からの共鳴光対LL1および調整光LL2は、原子セル2に照射される。
図4に示すように、原子セル2は、胴体部21と、胴体部21を挟んで設けられた1対の窓部22、23とを有している。この原子セル2では、胴体部21が1対の窓部22、23の間に配置されていて、気体状のアルカリ金属が封入されている内部空間Sを胴体部21および1対の窓部22、23が区画形成(構成)している。
より具体的に説明すると、胴体部21は、板状をなしており、この胴体部21には、胴体部21の厚さ方向に貫通している貫通孔211が形成されている。
この胴体部21の構成材料としては、特に限定されず、ガラス材料、水晶、金属材料、樹脂材料、シリコン材料等が挙げられるが、中でも、ガラス材料、水晶、シリコン材料のいずれかを用いることが好ましく、シリコン材料を用いることがより好ましい。これにより、幅や高さが10mm以下となるような小さい原子セル2を形成する場合であっても、エッチング等の微細加工技術を用いて、高精度な胴体部21を容易に形成することができる。特に、シリコンは、エッチングによる微細加工が可能である。したがって、シリコンを用いて胴体部21を構成することにより、原子セル2の小型化を図っても、胴体部21を簡単かつ高精度に形成することができる。また、一般に、窓部22、23はガラスで構成されるが、シリコンはガラスに比べて熱伝導性に優れている。したがって、胴体部21の放熱性を優れたものとすることができる。また、窓部22、23がガラスで構成されている場合、胴体部21と窓部22、23とを陽極接合により簡単に気密的に接合することができ、原子セル2の信頼性を優れたものとすることができる。
このような胴体部21の一方の面には、窓部22が接合され、一方、胴体部21の他方の面には、窓部23が接合されている。これにより、貫通孔211の一端開口が窓部22により封鎖されるとともに、貫通孔211の他端開口が窓部23により封鎖されている。
胴体部21と窓部22、23との接合方法としては、これらの構成材料に応じて決められるものであり、気密的に接合できるものであれば、特に限定されないが、例えば、接着剤による接合方法、直接接合法、陽極接合法、表面活性化接合法等を用いることができるが、直接接合法または陽極接合法を用いることが好ましい。これにより、胴体部21と窓部22、23とを簡単に気密的に接合することができ、原子セル2の信頼性を優れたものとすることができる。
このような胴体部21に接合されている各窓部22、23は、前述した光源部3からの光LLに対する透過性を有している。そして、一方の窓部22は、原子セル2の内部空間S内へ共鳴光対LL1が入射する入射側窓部(第1光透過部)であり、他方の窓部23は、原子セル2の内部空間Sへ調整光LL2が入射する窓部(第2光透過部)であって、原子セル2の内部空間S内から共鳴光対LL1が出射する出射側窓部である。また、窓部22、23は、それぞれ、板状をなしている。
窓部22、23の構成材料としては、それぞれ、前述したような光LLに対する透過性を有していれば、特に限定されず、例えば、ガラス材料、水晶等が挙げられるが、ガラス材料を用いることが好ましい。これにより、励起光に対する透過性を有する窓部22、23を実現することができる。また、胴体部21がシリコンで構成されている場合、ガラスを用いて窓部22、23を構成することにより、胴体部21と窓部22、とを陽極接合により簡単に気密的に接合することができ、原子セル2の信頼性を優れたものとすることができる。なお、窓部22、23の厚さや光LLの強度によっては、窓部22、23をシリコンで構成することもできる。この場合でも、胴体部21と窓部22、23とを直接接合または陽極接合することができる。
このような窓部22、23により封鎖された貫通孔211内の空間である内部空間Sには、主に、気体状のアルカリ金属が収納されている。この内部空間S内に収納されている気体状のアルカリ金属は、光LLによって励起される。ここで、内部空間Sの少なくとも一部は、光LLが通過する「光通過空間」を構成する。
以上説明したように構成された原子セル2内において、図4に示すように、共鳴光対LL1の光軸a1および調整光LL2の光軸a2は、それぞれ、原子セル2の窓部22と窓部23とが並ぶ方向に沿った軸線aと平行となっている。
ここで、原子セル2の共鳴光対LL1が出射する側において、光軸a1またはその延長線上には、前述した受光部4および第2光源321が配置されており、原子セル2を通過した共鳴光対LL1は、λ/4波長板322で直線偏光に戻された後に、受光部4で受光される。
図5に示すように、受光部4は、第2光源321と一体的に構成されている。具体的に説明すると、第2光源321が受光部4の受光面上に配置されている。そして、受光部4および第2光源321を含んで一体的に構成された構造体40は、半導体基板41と、n型半導体層421と、空乏層422と、p型半導体層423と、絶縁層43と、n型半導体層441(クラッド層)と、活性層442(発光層)と、p型半導体層443(クラッド層)と、を有し、これらがこの順で積層されている。なお、図5および図6は、それぞれ、受光部4および第2光源321の構成を概略的に示したものであり、上述した構成の他の層や電極等が適宜設けられていてもよい。
n型半導体層421、空乏層422およびp型半導体層423を含む構造体42は、受光部4を構成している。より具体的には、例えば、半導体基板41がn型のGaAsで構成され、n型半導体層421がn型のAlGaAs、GaInPまたはAlGaInPで構成され、空乏層422がAlGaAsまたはGaInAsPで構成され、p型半導体層423がp型のAlGaAs、GaInPまたはAlGaInPで構成されている。
また、n型半導体層421上には、電極パッド471が設けられている。また、p型半導体層423上には、電極パッド472が設けられている。ここで、電極パッド471は、空乏層422およびp型半導体層423の一部を欠損させた欠損部424により露出したn型半導体層421の部分上に設けられている。これら電極パッド471、472間の電位差が受光部4の検出信号として出力される。
絶縁層43は、例えばSiO2またはSiNで構成されている。
n型半導体層441、活性層442およびp型半導体層443を含む構造体44は、第2光源321を構成している。具体的には、n型半導体層441がn型のAlGaAs、GaInPまたはAlGaInPで構成され、活性層442がAlGaAsまたはGaInAsPで構成され、p型半導体層443がp型のAlGaAs、GaInPまたはAlGaInPで構成されている。
また、絶縁層43上には、n型半導体層441に電気的に接続された電極パッド461と、p型半導体層423に電気的に接続された電極パッド462とが設けられている。これら電極パッド461、462間に電位差を生じさせることにより、第2光源321を発光させる。なお、電極パッド462とn型半導体層441および活性層442との間には、例えばSiO2またはSiNで構成された絶縁層45が設けられている。
以上のように構成された構造体40では、受光部4の第2光源321側の面が、原子セル2を通過した共鳴光対LL1を受光する「受光面」を構成している。このような受光面上に設けられた第2光源321は、共鳴光対LL1が照射される領域である受光領域内に配置されている。本実施形態では、第2光源321は、受光領域の中央部に設けられている。
ここで、原子セル2の調整光LL2が出射する側において、光軸a2またはその延長線上には、第1光源311が配置されている。原子セル2を通過した調整光LL2は、λ/4波長板312で直線偏光に戻された後に、一部が第1光源311に入射するが、残部が迷光とならないように、図示しない反射防止部に入射する。なお、原子セル2を通過した調整光LL2を受光素子で受光して、その受光素子の検出結果に応じて、第2光源321を制御してもよい。
また、図示しないが、原子セル2内において、調整光LL2の幅は、共鳴光対LL1の幅よりも大きい。これにより、原子セル2内において、共鳴光対LL1の通過領域は、調整光LL2の通過領域内に包含されている。
また、調整光LL2の幅は、原子セル2内の幅よりも小さいことが好ましい。これにより、調整光LL2が迷光となるのを低減することができる。
図7は、セシウム原子のエネルギー状態と共鳴光対(第1共鳴光、第2共鳴光)および調整光(第3共鳴光)との関係の一例を示す図である。図8は、ナトリウム原子の磁気量子数の分布を示す図であって、図8(a)は、σ+円偏光の共鳴光を照射した場合の分布を示す図、図8(b)は、σ−円偏光の共鳴光を照射した場合の分布を示す図である。なお、図7および図8では、説明の便宜上、セシウム原子またはナトリウム原子に対して共鳴光対および調整光を同じ方向から照射した場合を図示している。以下、図7および図8に基づき、かかる場合の共鳴光対および調整光の作用について説明する。
例えば、原子セル2内にセシウム原子が封入され、そのセシウム原子に対して共鳴光対および調整光を同じ方向から照射する場合、図7に示すように、第1共鳴光および第2共鳴光(共鳴光対)としてσ+偏光(左円偏光)しているD1線を用い、第3共鳴光(調整光)としてσ−偏光(右円偏光)しているD2線を用いる。なお、第1共鳴光および第2共鳴光がσ−偏光、第3共鳴光がσ+偏光であってもよいし、また、第1共鳴光および第2共鳴光がD2線、第3共鳴光がD1線であってもよい。
アルカリ金属原子の一種であるセシウム原子は、6S1/2の基底準位と、6P1/2および6P3/2の2つの励起準位と、を有する。また、6S1/2、6P1/2、6P3/2の各準位は、複数のエネルギー準位に分裂した微細構造を有している。具体的には、6S1/2準位はF=3、4の2つの基底準位を有し、6P1/2準位はF’=3、4の2つの励起準位を有し、6P3/2準位はF”=2、3、4、5の4つの励起準位を有している。
6S1/2のF=3の第1基底準位にあるセシウム原子は、D2線を吸収することで、6P3/2のF”=2、3、4のいずれかの励起準位に遷移することができるが、F”=5の励起準位に遷移することはできない。6S1/2のF=4の第2基底準位にあるセシウム原子は、D2線を吸収することで、6P3/2のF”=3、4、5のいずれかの励起準位に遷移することができるが、F”=2の励起準位に遷移することはできない。これらは、電気双極子遷移を仮定した場合の遷移選択則による。逆に、6P3/2のF”=3、4のいずれかの励起準位にあるセシウム原子は、D2線を放出して6S1/2のF=3またはF=4の基底準位(元の基底準位または他方の基底準位のいずれか)に遷移することができる。このような6S1/2のF=3、4の2つの基底準位と6P3/2のF”=3、4のいずれかの励起準位からなる3準位は、D2線の吸収・発光によるΛ型の遷移が可能であることからΛ型3準位と呼ばれる。同様に、6S1/2のF=3、4の2つの基底準位と6P1/2のF’=3、4のいずれかの励起準位からなる3準位も、D1線の吸収・発光によるΛ型の遷移が可能であるからΛ型3準位を形成する。
これに対し、6P3/2のF”=2の励起準位にあるセシウム原子は、D2線を放出して必ず6S1/2のF=3の基底準位(元の基底準位)に遷移し、同様に、6P3/2のF”=5の励起準位にあるセシウム原子は、D2線を放出して必ず6S1/2のF=4の基底準位(元の基底準位)に遷移する。したがって、6S1/2のF=3、4の2つの基底準位と6P3/2のF=2またはF=5の励起準位からなる3準位は、D2線の吸収・放出によるΛ型の遷移が不可能であることからΛ型3準位を形成しない。
このようなセシウム原子は、真空中でのD1線の波長が894.593nmであり、真空中でのD2線の波長が892.347nmであり、6S1/2の超微細分裂周波数(ΔE)が9.1926GHzである。
なお、セシウム原子以外のアルカリ金属原子も、同様に、Λ型3準位を形成する2つの基底準位と励起準位を有する。ここで、ナトリウム原子は、真空中でのD1線の波長が589.756nmであり、真空中でのD2線の波長が589.158nmであり、3S1/2の超微細分裂周波数(ΔE)が1.7716GHzである。また、ルビジウム(85Rb)原子は、真空中でのD1線の波長が794.979nmであり、真空中でのD2線の波長が780.241nmであり、5S1/2の超微細分裂周波数(ΔE)が3.0357GHzである。また、ルビジウム(87Rb)原子は、真空中でのD1線の波長が794.979nmであり、真空中でのD2線の波長が780.241nmであり、5S1/2の超微細分裂周波数(ΔE)が6.8346GHzである。
例えば、図8に示すように、アルカリ金属原子の一種であるナトリウム原子は、Λ型3準位を形成する2つの基底準位と励起準位を有し、3S1/2のF=1の第1基底準位は、mF1=−1、0、1の3つの磁気量子数を有し、3S1/2のF=2の第2基底準位は、mF2=−2、−1、0、1、2の5つの磁気量子数を有し、3P1/2の励起準位は、mF’=−2、−1、0、1、2の5つの磁気量子数を有する。
F=1またはF=2の基底準位にあるナトリウム原子に対してσ+円偏光の共鳴光対を照射すると、図8(a)に示すように、磁気量子数が1増えるという選択則をもって、励起準位に励起される。このとき、F=1またはF=2の基底準位にあるナトリウム原子は、磁気量子数が大きい方に分布が変化する。
一方、F=1またはF=2の基底準位にあるナトリウム原子に対してσ−円偏光の共鳴光対を照射すると、図8(b)に示すように、磁気量子数が1減るという選択則をもって、励起準位に励起される。このとき、F=1またはF=2の基底準位にあるナトリウム原子は、磁気量子数が小さい方に分布が変化する。
なお、図8では、説明の便宜上、簡単な構造のナトリウム原子を例に磁気量子数の分布を示しているが、他のアルカリ金属原子においても、基底準位および励起準位のそれぞれは、2F+1個の磁気量子数(磁気副準位)を有し、前述したような選択則をもって磁気量子数の分布が変化する。
以上説明したように、原子セル2内のアルカリ金属に対して共鳴光対および調整光を同じ方向から照射する場合、共鳴光対および調整光の一方を右円偏光とし、他方を左円偏光とすることにより、アルカリ金属の磁気量子数の偏りを低減することができる。ここで、このような効果を奏するには、アルカリ金属に照射される共鳴光対および調整光の円偏光の回転方向が互いに逆方向であることを要する。
したがって、アルカリ金属に対して共鳴光対および調整光を互いに反対方向から照射する場合、共鳴光対および調整光の双方を右円偏光または左円偏光とすればよい。具体的には、かかる場合、例えば、第1共鳴光および第2共鳴光(共鳴光対)としてσ+偏光(左円偏光)しているD1線を用い、第3共鳴光(調整光)としてσ+偏光(右円偏光)しているD2線を用いる。これにより、共鳴光対および調整光が照射されるセシウム原子において、調整光の円偏光の回転方向が共鳴光対の円偏光の回転方向とは反対方向となる。なお、第1共鳴光および第2共鳴光がσ−偏光、第3共鳴光がσ−偏光であってもよいし、また、第1共鳴光および第2共鳴光がD2線、第3共鳴光がD1線であってもよい。
以上説明したように、原子発振器1では、互いに同方向に円偏光している共鳴光対LL1に加えて、原子セル2内において共鳴光対LL1とは逆方向となる回転方向で円偏光している調整光LL2をアルカリ金属に照射することにより、共鳴光対LL1による磁気量子数の分布の偏りを調整光LL2により相殺または緩和させ、アルカリ金属の磁気量子数の分布の偏りを低減することができる。そのため、EITに寄与する所望の磁気量子数のアルカリ金属原子の数を増加させ、その結果、円偏光している共鳴光対LL1を用いることによってEIT信号の強度を向上させる効果を顕著に発現させ、よって、EIT信号の強度を効果的に向上させることができる。
しかも、共鳴光対LL1を内部空間Sに対して窓部22側から照射するとともに、調整光LL2を内部空間Sに対して窓部23側から照射する。このようにアルカリ金属に対して調整光LL2を共鳴光対LL1とは反対側から照射することにより、原子セル2と受光部4との間に調整光LL2を遮断するためのフィルターを設けなくても、受光部4に調整光LL2が入射することを低減することができる。そのため、受光部4で受光される共鳴光対LL1の強度を高めるとともに、受光部4で受光される調整光LL2の強度を低減することができる。その結果、S/Nを向上させることができる。
ここで、調整光LL2は、アルカリ金属を共鳴させるため、アルカリ金属原子の磁気量子数の分布を効率的に調整することができる。
また、共鳴光対LL1がD1線であり、調整光LL2がD2線である場合、EIT現象を効率よく生じさせ、その結果、EIT信号の強度を効率的に向上させることができる。
また、原子セル2内において調整光LL2の強度(光量子束密度)が共鳴光対LL1よりも小さいことが好ましい。これにより、原子セル2内のアルカリ金属の磁気量子数の偏りを効果的に低減することができる。
また、調整光LL2の強度が強すぎると、原子セル2内のアルカリ金属の磁気量子数の分布が、共鳴光対LL1による磁気量子数の分布の偏りとは反対側に大きく偏ってしまう場合がある。一方、調整光LL2の強度が弱すぎると、共鳴光対LL1による磁気量子数の分布の偏りを調整光LL2により十分に相殺または緩和させることができない場合がある。
このような観点から、原子セル2内の共鳴光対LL1の光量子束密度をD1とし、原子セル2内の調整光LL2の光量子束密度をD2としたとき、D2/D1は、0.1以上0.9以下であることが好ましく、0.2以上0.7以下であることがより好ましく、0.3以上0.5以下であることがさらに好ましい。
本実施形態では、前述したように、第2光源部32が原子セル2と受光部4との間に発光素子である第2光源321があることにより、比較的簡単な構成で、アルカリ金属に対して調整光LL2を共鳴光対LL1とは反対側から照射することができる。
また、第2光源321が受光部4の受光面上に配置されていることにより、比較的簡単な構成で、原子セル2と受光部4との間に第2光源321を配置することができる。
また、受光部4および第2光源321が一体で構成されていることにより、装置の小型化を図ることができる。
また、第2光源321が受光部4の受光面上の共鳴光対LL1が照射される領域(受光領域)内に配置されていることにより、共鳴光対LL1(第1光)および調整光LL2(第2光)を互いに平行となるように原子セル2内のアルカリ金属に照射することができる。そのため、原子セル2内のアルカリ金属のドップラー幅等を考慮して第2光源部32を設計するに際し、第2光源部32の設計が容易となる。
ここで、第2光源321の幅W1は、受光部4の受光領域の幅W2よりも小さい。これにより、第2光源321が受光領域内に配置されていても、受光部4が共鳴光対LL1を受光することができる。また、幅W1および幅W2の比W2/W1が、10以上50以下であることが好ましく、20以上40以下であることが好ましい。これにより、第2光源321が受光領域内に配置されていても、装置の小型化を図りつつ、受光部4が共鳴光対LL1を効率的に受光することができる。
また、装置の小型化を図りつつ、受光部4が共鳴光対LL1を効率的に受光する観点から、具体的な幅W1は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。
また、第2光源321が面発光レーザーである場合、所望の周波数を有する調整光LL2を容易に生成することができる。
また、第2光源321が発光ダイオードである場合、調整光LL2の線幅を共鳴光対LL1よりも大きくすることができる。そのため、幅広い速度分布のアルカリ金属原子に対して調整光LL2を共鳴させることができる。そのため、調整光LL2の中心波長が多少ずれても、所望の速度にあるアルカリ金属原子に対して調整光LL2を共鳴させることができる。その結果、調整光LL2の周波数制御が不要となり、装置構成を簡単化することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る原子発振器が備える光源部、原子セルおよび受光部を説明するための概略図である。図10は、図9に示す第2光源部の発光素子および受光部を含む構造体を説明するための平面図である。
本実施形態は、第2光源部の構成(特に発光素子の配置)が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。
なお、以下の説明では、第2実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図9、10において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図9に示す原子発振器1Aは、調整光LL2を原子セル2に対して第1光源部31とは反対側から照射する第2光源部32Aを有する。
第2光源部32Aは、受光部4の受光面上に配置されている発光素子である第2光源321Aと、原子セル2と受光部4との間に配置されているλ/4波長板322と、を有している。
第2光源321Aは、n型半導体層441、活性層442およびp型半導体層443を含む構造体44で構成されている。また、この構造体44は、p型半導体層423上に設けられた絶縁層43A上に配置されており、この絶縁層43A上には、n型半導体層441に電気的に接続された電極パッド461Aと、p型半導体層423に電気的に接続された電極パッド462Aとが設けられている。
このような第2光源部32Aは、共鳴光対LL1と調整光LL2との互いの光軸a1、a2が原子セル2内にて交差するように配置されている。そして、図9および図10に示すように、第2光源321Aは、受光部4の受光面上の共鳴光対LL1が照射される領域外に配置されている。これにより、比較的簡単な構成で、調整光LL2が第1光源部31の第1光源311に入射するのを低減したり、第2光源部32Aの第2光源321Aが受光部4で受光される共鳴光対LL1を阻害するのを低減したりすることができる。
本実施形態では、原子セル2の軸線aに対して、共鳴光対LL1の光軸a1は平行であるが、調整光LL2の光軸a2が傾斜している。これにより、原子セル2内に軸線aに平行な磁場が生じているとき、その磁場に沿って共鳴光対LL1を原子セル2内に照射することができる。そのため、EIT現象を好適に生じさせることができる。なお、共鳴光対LL1の光軸a1および調整光LL2の光軸a2の双方を原子セル2の軸線aに対して傾斜させてもよい。
ここで、原子セル2内における調整光LL2の光軸a2に対する共鳴光対LL1の光軸a1の傾斜角度θは、1°以上30°以下であることが好ましく、2°以上10°以下であることがより好ましい。これにより、装置の小型化および簡単化を図りつつ、調整光LL2による磁気量子数の分布の調整を容易に行うことができる。これに対し、傾斜角度θが小さすぎると、受光部4の受光面上の共鳴光対LL1が照射される領域外に第2光源321Aを配置しようとすると、装置の大型化を招く傾向となる。一方、傾斜角度θが大きすぎると、原子セル2内のアルカリ金属原子のドップラー幅等を考慮して、第2光源部32Aを設計しなければならず、設計が難しくなる傾向となる。
以上説明したような第2実施形態によっても、EIT信号の強度を効果的に向上させることができる。
2.電子機器
以上説明したような原子発振器は、各種電子機器に組み込むことができる。
以下、本発明の電子機器について説明する。
図11は、GPS衛星を利用した測位システムに本発明の原子発振器を用いた場合の概略構成を示す図である。
図11に示す測位システム100は、GPS衛星200と、基地局装置300と、GPS受信装置400とで構成されている。
GPS衛星200は、測位情報(GPS信号)を送信する。
基地局装置300は、例えば電子基準点(GPS連続観測局)に設置されたアンテナ301を介してGPS衛星200からの測位情報を高精度に受信する受信装置302と、この受信装置302で受信した測位情報をアンテナ303を介して送信する送信装置304とを備える。
ここで、受信装置302は、その基準周波数発振源として前述した本発明の原子発振器1を備える電子装置である。このような受信装置302は、優れた信頼性を有する。また、受信装置302で受信された測位情報は、リアルタイムで送信装置304により送信される。
GPS受信装置400は、GPS衛星200からの測位情報をアンテナ401を介して受信する衛星受信部402と、基地局装置300からの測位情報をアンテナ403を介して受信する基地局受信部404とを備える。
3.移動体
図12は、本発明の移動体の一例を示す図である。
この図において、移動体1500は、車体1501と、4つの車輪1502とを有しており、車体1501に設けられた図示しない動力源(エンジン)によって車輪1502を回転させるように構成されている。このような移動体1500には、原子発振器1が内蔵されている。
なお、本発明の電子機器は、前述したものに限定されず、例えば、スマートフォン、タブレット端末、時計、携帯電話機、ディジタルスチルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター)、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、地上デジタル放送、携帯電話基地局、GPSモジュール等に適用することができる。
以上、本発明の量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、本発明は、前述した各実施形態の任意の構成同士を組み合わせるようにしてもよい。