JP6562246B2 - 遊星ローラ式動力伝達装置 - Google Patents
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Description
遊星ローラ式動力伝達装置は通常、固定輪、当該固定輪の内側に同心状に配設された太陽軸、当該太陽軸と固定輪との間に圧接状態で介挿された複数の遊星ローラ、および複数の遊星ローラを回転自在に支持するキャリアを備え、上記固定輪内にはグリースが充填されているのが一般的である。
基材樹脂としては、例えば超高分子量ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン等が用いられ、当該基材樹脂とともに含油ローラを形成するトラクションオイルとしては、例えばナフテン系鉱油やシリコーンオイル等の、トラクション特性に優れたオイルを用いるのが好ましいと考えられている。
また固定輪内に充填されるグリースとしては、基油としてシリコーンオイルを用いたものが、トラクション特性の点で特に優れているため好適に使用される。
そこで、例えばナフテン系鉱油等の、基材樹脂との焼き締め性の良いトラクションオイルを使用して、高強度で耐久性に優れた含油ローラを形成することが考えられる。
請求項3に記載の発明は、前記分散剤は、アルケニルコハク酸イミド、およびポリエーテルアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の遊星ローラ式動力伝達装置である。
なお上記において括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号によって特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
そのため、上記2種のオイルの混合物を単一のオイルと同等に挙動させて、遊星ローラ式動力伝達装置を構成する各部の表面に、現状よりも長期間に亘って均一な油膜を形成し続けることができ、良好なトラクション特性を安定して維持できるため、現状よりも耐久性に優れた遊星ローラ式動力伝達装置を提供できる。
請求項3に記載の発明によれば、分散剤として、アルケニルコハク酸イミド、およびポリエーテルアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いることにより、当該分散剤を配合することによる上述した効果をより一層有効に発現させることができる。
図1は、本発明の遊星ローラ式動力伝達装置の、実施の形態の一例を示す縦断面図、図2は、図1のII−II線断面図である。
両図を参照して、この例の遊星ローラ式動力伝達装置1は、当該遊星ローラ式動力伝達装置1を組み込む機器類のハウジング2に、ネジ3によって固定された円環状の固定輪4、上記ハウジング2を図2において右方向から貫通させて、その先端を固定輪4内に挿入した状態で配設された円柱状の太陽軸5、および太陽軸5の先端より前方側(図2において左側)から同方向へさらに延設された入出力軸6を備えている。
また上記太陽軸5と固定輪4との間には、当該両者と圧接状態で複数(図では4つ)の遊星ローラ7が介挿されている。
各ローラ軸9とそれに軸支された各遊星ローラ7は、いずれもその軸線を太陽軸5の軸線と平行させた状態で、上記太陽軸5を中心としてその周囲に太陽軸5から等距離で、かつ周方向に互いに等間隔に配設されている。
各含油ローラ10は、太陽軸5および入出力軸6とは別個に、固定輪4に対して回転自在に配設された支持体11によって保持されている。
支持体11は、固定輪4とキャリア8の間に、このいずれとも非接触の状態で介挿された円板状の本体11aと、当該本体11aの固定輪4側の側面から、太陽軸5を囲むように突設されて固定輪4内に挿入された複数(図では4つ)の支持軸11bとを備えており、上記各支持軸11bに、各含油ローラ10がそれぞれ回転自在に、もしくは非回転に軸支されている。
図1を参照して、個々の含油ローラ10の外径は、隣り合う遊星ローラ7間の間隔よりも小さめに形成されており、入出力軸6の回転による遊星ローラ7の公転に伴って、当該公転の前方側に位置する含油ローラ10が、公転する遊星ローラ7と非回転で接触して、あるいは接触して回転して、前述したようにその回転トルクを制御したり、固定輪4内にトラクションオイルを補給したりするために機能する。
上記含油ローラ10は、先に説明したように基材樹脂とトラクションオイルの焼締体によって形成される。すなわち基材樹脂の粉末とトラクションオイルとの混合物を、上記基材樹脂の融解温度以上に加熱し、冷却して一体化させる焼き締めをしたのち、含油ローラ10の形状に加工する等して当該含油ローラ10が形成される。
ただし含油ローラ10の強度や耐久性等を向上することを考慮すると、基材樹脂としては超高分子量ポリエチレン、ナイロン、およびポリプロピレンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
中でも焼き締め性に優れ、強度や耐久性等に優れた含油ローラ10を形成できる上、シリコーンオイル程ではないもののトラクション特性にも優れたナフテン系鉱油が好ましい。
固定輪4内には、基油として少なくともシリコーンオイルを含むグリースを充填する。
シリコーンオイルは、種々のトラクションオイルの中でもトラクション特性に特に優れるため、当該シリコーンオイルを基油として含むグリースを充填することにより、遊星ローラ式動力伝達装置1のトラクション特性を大幅に向上できる。
なおすべり率は式(1):
図3から、基油としてナフテン系鉱油を用いたグリースに比べて、シリコーンオイルを用いたグリースは、トルク負荷時の負荷トルクが大きくなってもすべり率の増加の割合が小さく、トラクション特性の点で特に優れていることが判る。
なおナフテン系鉱油は、上記のようにシリコーンオイルと比べるとトラクション特性が低いものの、先に説明したように、トラクションオイルの中ではシリコーンオイルに次いで良好なトラクション特性を有している。そのため、前述したように含油ローラ10に含ませるトラクションオイルとしては、基材樹脂との焼き締め性をも考慮して、ナフテン系鉱油が好適に使用される。
このうち増ちょう剤としては、上記基油に配合した際に所定の混和ちょう度を有するグリースを調製しうる種々の増ちょう剤が使用可能である。
増ちょう剤としては、例えばウレア系増ちょう剤や各種石けん系増ちょう剤等が挙げられる。
分散剤としては、例えばコハク酸イミド、コハク酸エステル、ベンジルアミン、ポリブテンアミン、ポリエーテルアミン、アルキルフェノールアミン等の1種または2種以上が挙げられる。
例えば、シリコーンオイルにウレア系増ちょう剤を添加したグリースの場合は、アルケニルコハク酸イミド〔シェブロンジャパン(株)製のOAS1200等〕やポリエーテルアミン〔日油(株)製のナイミーン(登録商標)L−201等〕が好適に使用される。
分散剤の添加量がこの範囲未満では、当該分散剤を配合することによる前述した効果が十分に得られないおそれがある。
一方、分散剤の添加量が上記の範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、グリースの混和ちょう度が高くなりすぎて、油漏れ等を生じやすくなるおそれもある。
(グリースおよび分散剤)
ベースのグリースとしては、基油としてのシリコーンオイルにウレア系増ちょう剤を添加したグリース〔(株)ニッペコ製のユーレット(登録商標)EDM−1、動粘度:250mm2/s、滴点:285℃、ちょう度(NLGI No.):No.2〕を使用した。
(試料としてのグリースの調製)
上記分散剤を先のグリースに添加して、その添加量が、グリースの総量の0.1質量%(試料2)、1質量%(試料3)、および3質量%(試料4)である、試料としてのグリースを調製した。また分散剤を添加しないベースのグリースを試料1とした。
上記試料1〜4のグリースの混和ちょう度を、日本工業規格JIS K2220:2013「グリース」所載の測定方法に則って測定した。混和ちょう度は、グリースが柔らかくなりすぎて油漏れ等を生じるのを防止することを考慮すると350以下、特に330以下であるのが好ましい。
シリコーンオイルとナフテン系オイルを混合したものに、上記試料1〜4のグリースと同じ添加量となるように分散剤を添加して加熱撹拌し、次いで30分間以上静置したのち、分離したか、あるいはそのまま相溶していたかを目視によって確認した。
以上の結果を表1に示す。
また試料2〜3の結果より、分散剤の添加量は、上記分離をより一層良好に防止するためには0.1質量%以上であるのが好ましいこと、混和ちょう度が高くなりすぎて油漏れ等を生じるのを防止するためには3質量%以下、特に2質量%以下であるのが好ましいことが判った。
本発明の構成は、以上で説明した例のものには限定されない。
例えば遊星ローラ7、および含油ローラ10の数と配置は適宜変更できる。
Claims (4)
- 固定輪、前記固定輪内に同心状に配設された太陽軸、前記太陽軸と前記固定輪との間に圧接状態で介挿された複数の遊星ローラ、前記複数の遊星ローラを回転自在に支持するキャリア、および前記遊星ローラまたは固定輪に接触させて配設された、基材樹脂とトラクションオイルの焼締体からなる含油ローラを備え、前記固定輪内には、基油として少なくともシリコーンオイルを含むグリースが充填されているとともに、前記トラクションオイルは前記シリコーンオイルとは別種のオイルであり、前記グリースには、増ちょう剤とともに、前記シリコーンオイルと前記トラクションオイルとの分離を抑制する分散剤が含まれている遊星ローラ式動力伝達装置。
- 前記分散剤の添加量は、グリースの総量の0.1質量%以上、3質量%以下である請求項1に記載の遊星ローラ式動力伝達装置。
- 前記分散剤は、アルケニルコハク酸イミド、およびポリエーテルアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の遊星ローラ式動力伝達装置。
- 前記トラクションオイルはナフテン系鉱油、前記基材樹脂は超高分子量ポリエチレン、ナイロン、およびポリプロピレンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遊星ローラ式動力伝達装置。
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