以下に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1に本発明に係る実施の形態1の無菌充填機を示す。ボトルを殺菌する無菌充填機であり、プリフォームの供給から加熱部、成形部、検査部、ボトル殺菌部、エアリンス部、充填部、密封部及び排出部からなる無菌充填機の概要を図1により説明し、各部の詳細を図2、図3、図4及び図5により説明する。この実施の形態1によれば、無菌充填機のいずれかの部位にトラブルが発生しても、トラブル発生チャンバー内のみの洗浄や殺菌により無菌充填機の運転を再開することができるために、無菌充填機の停止時間を短くすることができ、エネルギー消費も少ない。
(実施の形態1の概要)
図1に示すように、本実施の形態1に係る無菌充填機は、プリフォーム1を供給するプリフォーム供給装置4、プリフォーム1をボトル2に成形する温度に加熱する加熱部6、加熱されたプリフォーム1をボトル2に成形する成形部16、成形されたボトル2を殺菌するボトル殺菌部30、殺菌されたボトル2をエアリンスするエアリンス部34、エアリンスされたボトル2に殺菌された内容物を充填する充填部39、密封部材であるキャップ3を殺菌するキャップ殺菌部52、内容部が充填されたボトル2を殺菌されたキャップ3により密封する密封部44、密封されたボトル2を排出コンベヤ50に載置する排出部47及び排出コンベヤ50によりボトル2を非無菌ゾーンに排出する出口部50aを備える。ここで、エアリンス部34は備えなくても構わない。
加熱部6は加熱部チャンバー12、成形部16は成形部チャンバー17、ボトル殺菌部30はボトル殺菌部チャンバー33、エアリンス部34はエアリンス部チャンバー36、充填部39は充填部チャンバー41、密封部44は密封部チャンバー46、排出部47は排出部チャンバー49及び出口部50aは出口部チャンバー50bにより各々遮蔽されている。ボトル殺菌部30で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が成形部16に流入しないように、成形部16とボトル殺菌部30の間には雰囲気遮断チャンバー27が設けられている。ボトル殺菌部30で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、雰囲気遮断チャンバー27が排気されることで、成形部16に流入することはない。ここで、加熱部6と成形部16は単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。また、キャップ殺菌部52と密封部44も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。さらに、密封部44と排出部47も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
無菌充填機の稼働中には、ボトル殺菌部チャンバー33、エアリンス部チャンバー36、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50bは、除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され、各チャンバー内の圧力を陽圧にすることで、無菌充填機の無菌性が維持される。陽圧にする圧力は、充填部チャンバー41内が最も高く、エアリンス部チャンバー36、ボトル殺菌部チャンバー33と上流に行くほど低く設定される。また、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49、出口部チャンバー50bと下流に行くにほど低く設定される。雰囲気遮断チャンバー27は排気されることで、雰囲気遮断チャンバー27内の圧力は、大気圧とほぼ同一に保持される。例えば、充填部チャンバー41内の圧力を20Pa〜40Paとすると、他のチャンバー内の圧力は充填部チャンバー41内の圧力よりも低い。
いずれかのチャンバー内の部位においてトラブルが発生した場合、トラブルを除去するためにチャンバーの扉を開いて、トラブルが発生したチャンバーであるトラブル発生チャンバー内を非無菌雰囲気としなければならない。無菌充填機の稼働中において、無菌性が維持されるならば各チャンバー内の圧力は低くても構わない。しかし、トラブルを除去する時に、非無菌雰囲気となったトラブル発生チャンバーからの菌等の流入を防ぎ、トラブルが発生していないチャンバーである非トラブル発生チャンバー内の無菌性を維持するために、非トラブル発生チャンバー内の圧力を比較的高く保持しなければならない。非トラブル発生チャンバー内の圧力は、好ましくは30Pa以上、より好ましくは50Pa以上である。50Pa以上とすることで、無菌充填機の停止中にトラブル発生チャンバーを非無菌雰囲気としても、非トラブル発生チャンバー内を無菌雰囲気に維持することができる。従って、無菌充填機の稼働中に無菌雰囲気を維持しなければならない、ボトル殺菌部チャンバー33、エアリンス部チャンバー36、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50bは、それぞれのチャンバー内の圧力を好ましくは30Pa以上、より好ましくは50Pa以上に保持できる無菌エア供給装置を備えている。
(実施の形態1の詳細)
まず、図2(A)に示すプリフォーム1が、図1に示すプリフォーム供給装置4から、プリフォーム供給コンベヤ5により所望の速度で連続的に加熱部6に搬送される。
本実施形態におけるプリフォーム1は試験管状の有底筒状体であり、図2(D)に示したボトル2と同様な口部1aがその成形当初に付与される。この口部1aにはプリフォーム1の成形と同時に雄ネジが形成される。また、プリフォーム1には口部1aの下部に搬送のためのサポートリング1bが形成される。プリフォーム1又はボトル2はこのサポートリング1bを介してグリッパ22により把持され、無菌充填機内を走行する。プリフォーム1は射出成形、圧縮成形等によって成形される。プリフォーム1の材質はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、これらの樹脂単体又は混合物であっても構わないし、リサイクルされた熱可塑性樹脂を含んでも構わない。また、バリア性を付与するために、エチレン−ビニルアルコール共重合体、メタキシリレンジアミンのような芳香族アミンをモノマーとするポリアミド等の熱可塑性樹脂を層として、又は混合物として含んでも構わない。
加熱部6に供給されたプリフォーム1は、一定ピッチで多数のグリッパ22が設けられたホイール7、8により搬送され、加熱部搬送ホイール9に達する。ここで、図2(B)のようにグリッパ22から解放され、プリフォーム1の口部1aにスピンドル19が挿入されて搬送される。
プリフォーム1は、図2(B)に示すように、赤外線ヒータ14又はその他の加熱手段によって、後のブロー成形に適した温度まで加熱される。この温度は90℃から130℃であると好適である。
なお、プリフォーム1の口部1aの温度は、変形等を防止するため70℃以下の温度に抑えられる。
プリフォーム1は図2(B)に示すように、口部1aにスピンドル19が挿入され、赤外線ヒータ14により加熱され、回転しながら無端チェーン13により搬送される。スピンドル19は無端チェーン13に一定間隔で設けられている。無端チェーン13はプーリ10及び11により回転する。スピンドル19に代えてマンドレルをプリフォーム1に挿入することにより、プリフォーム1を倒立状態で回転させつつ搬送することも可能である。
加熱されたプリフォーム1は、スピンドル19から解放され、グリッパ22に把持されて、ホイール15を経て、成形部16の成形ホイール18に搬送される。成形ホイール18に備えられた金型20により、図2(C)に示すように、プリフォーム1はボトル2にブロー成形される。金型20及びブローノズル21は、成形ホイール18の回りに複数個配置され、成形ホイール18の回転とともに成形ホイール18の周りを一定速度で旋回する。加熱されたプリフォーム1が到来すると、金型20はプリフォーム1を挟み込む。続いてブローノズル21がプリフォーム1に接合され、図示しない延伸ロッドがブローノズル21に設けられた孔に導かれ、プリフォーム1内に挿入されプリフォーム1は縦延伸され、同時にブローノズル21からプリフォーム1内に空気等の気体が吹きこまれ横延伸されることにより、金型20内でボトル2が成形される。成形されたボトル2は、図2(D)に示すように、金型20から取り出され、検査ホイール23に設けられたグリッパ22によりサポートリング1bを把持され、検査ホイール23に受け渡される。
成形されたボトル2は、検査ホイール23の周辺に備えられた検査機材24により、ボトル温度、ボトル胴部、サポートリング、ボトル口部天面、ボトル底部等が検査され、異常と判断された場合は、図示しない排出装置により、無菌充填機の外部に排出される。ボトルの検査は成形部チャンバー17内で行われるが、検査部として別個のチャンバーにより遮蔽しても構わない。
ボトル温度検査は、ボトル2の表面温度を検査して、ボトル2の良否を判断する。温度センサは、例えば赤外線放射温度計(赤外線放射カメラ)であるが、他の温度計を使用することも可能である。ボトル成形時の余熱がボトル2に残存することが、ボトル2を適正に殺菌するために必要である。温度センサにより検出される温度は50℃以上であることが好ましい。
また、ボトル胴部、サポートリング、ボトル口部天面、ボトル底部はカメラにより撮像され、各箇所の状態が検査される。撮像された画像は画像処理装置により処理され、傷、異物、変形、変色等の異常の存否について判断される。許容範囲を超えたボトル2は異常と判断される。
検査機材24による検査により異常と判断されなかったボトル2は、ボトル殺菌部30で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が成形部16に流入しないように、成形部16とボトル殺菌部30の間に設けられた雰囲気遮断チャンバー27内のホイール25、26を経て、ボトル殺菌部30に搬送される。
ボトル殺菌部30に搬送されたボトル2は、ホイール28において殺菌される。ボトル2を殺菌するためのボトル2への殺菌剤のガス吹き付け工程を図3(E−1)に示す。ボトル2に殺菌剤のガスを吹き付けるため、殺菌剤ガス吹き付けノズル31が設けられる。殺菌剤ガス吹き付けノズル31は、その先端のノズル孔が直下を走行するボトル2の口部1aの開口に正対し得るように固定される。また、必要に応じて殺菌剤ガス吹き付けノズル31の下方にボトル2の走行路に沿って、図3(E−1)に示すように殺菌剤ガス吹き付けトンネル32が設けられる。殺菌剤ガス吹き付けノズル31は一本であっても複数本であっても構わない。ボトル2に吹き付けられた殺菌剤のガスがボトル2の内部に流入し、ボトル2の内面を殺菌する。このとき、ボトル2が殺菌剤ガス吹き付けトンネル32内を走行することで、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が、ボトル2の外面にも流れて、ボトル2の外面が殺菌される。
また、図3(E−2)に示すように、殺菌剤ガス吹き付けノズル31をボトル2の搬送に追従させ、殺菌剤吹き付けノズル31をボトル2の内部に挿入して、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物をボトル2の内面に直接吹き付けても構わない。ボトル2から溢れた出た殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、殺菌剤ガス吹き付けノズル31を囲繞して設けた案内部材31aに衝突し、ボトル2の外面に流れボトル2の外面に接触する。案内部材31aにはノズル31と同軸のフランジ部とフランジ部から外周に突出する環状壁部が設けられている。
殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、図4に示す殺菌剤ガス生成器55によりガス化される殺菌剤又はガス化された殺菌剤が凝結したミスト又はこれらの混合物である。殺菌剤ガス生成器55は、殺菌剤を滴状にして供給する二流体スプレーノズルである殺菌剤供給部56と、この殺菌剤供給部56から供給された殺菌剤を分解温度以下に加熱して気化させる気化部57とを備える。殺菌剤供給部56は、殺菌剤供給路56a及び圧縮空気供給路56bからそれぞれ殺菌剤と圧縮空気を導入して殺菌剤を気化部57内に噴霧するようになっている。気化部57は、内外壁間にヒータ57aを挟み込んだパイプであり、このパイプ内に吹き込まれた殺菌剤を加熱し気化させる。気化した殺菌剤のガスは殺菌剤ガス吹き付けノズル31から気化部57外に噴出する。ヒータ57aに換えて誘電加熱により気化部57を加熱しても構わない。
殺菌剤供給部56の運転条件としては、例えば圧縮空気の圧力は0.05MPa〜0.6MPaの範囲で調整される。また、殺菌剤は重力落下であっても圧力を加えられても構わないし、供給量は自由に設定することができ、例えば殺菌剤は殺菌剤供給路56aに、1g/min.〜100g/min.の範囲で供給される。また、気化部57の内表面は140℃から450℃に加熱されることで噴霧された殺菌剤が気化する。
殺菌剤のガスは、図3(E)に示すように殺菌剤ガス吹き付けノズル31からボトル2に吹き付けられる。殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物の吹き付け量は任意であるが、吹き付け量は、殺菌剤ガス生成器55に供給される殺菌剤の量と吹き付け時間により決まる。殺菌剤ガス生成器55は複数備えても構わない。吹き付け量はボトル2の大きさによっても変動する。
殺菌剤は少なくとも過酸化水素を含有することが好ましい。その含有量は0.5質量%〜65質量%の範囲が適当である。0.5質量%未満では殺菌力が不足する場合があり、65質量%を超えると安全上、扱いが困難となる。また、さらに好適なのは0.5質量%〜40質量%であり、40質量%以下では扱いがより容易であり、低濃度となるために殺菌後のボトル2への殺菌剤の残留量を低減できる。
殺菌剤を過酸化水素水とした場合、過酸化水素水のガスの吹き付け量は以下の通りとなる。殺菌剤のガス吹き付けノズル31からボトル2の内面に吹き付けられる過酸化水素水のガスにより、ボトル2の内面に付着する過酸化水素の量は、過酸化水素を35質量%含む過酸化水素水の量として、30μL/ボトル〜150μL/ボトルが好ましく、より好ましくは50μL/ボトル〜100μL/ボトルである。また、ボトル2に吹き付けられる過酸化水素水のガスの過酸化水素濃度は、2mg/L〜20mg/Lが好ましく、より好ましくは5mg/L〜10mg/Lである。
また、殺菌剤は水を含んでなるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、グリコールエーテル類等の1種又は2種以上を含んでも構わない。
さらに、殺菌剤は過酢酸、酢酸等の有機酸、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物、オゾン等の殺菌効果を有する化合物、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、リン酸化合物等の添加剤を含んでも構わない。
ボトル殺菌部30で殺菌されたボトル2は図1に示すように、ホイール29を経て、エアリンス部34に搬送される。ボトル2は、図1に示すエアリンスホイール35において、図3(F−1)に示すようにエアリンスノズル38により正立状態のボトル2に無菌エアが吹き付けられる。無菌エアは常温でも構わないが、加熱されることが好ましい。無菌エアは、ボトル2の内部に残存する殺菌剤を排出し、残存する殺菌剤を分解してさらに殺菌効果を高め、ボトル2の内部に異物が存在する場合は排除する効果もある。また、図3(F−2)に示すようにボトル2を倒立状態にして無菌エアをボトル2内に吹き付けても構わない。この場合、異物の排除には正立状態よりも効果的である。さらに、図(E−2)の殺菌剤吹き付けノズル31と同様に、エアリンスノズル38を囲繞して案内部材を設けることで、ボトル2の内部に導入され、口部1aから溢れ出る無菌エアが案内部材に衝突し、口部1aの外周部もリンスすることとなり、口部1aの外周部の温度が上昇し、口部1aの外周部の殺菌効果が高まる。
エアリンスノズル38は上下動可能として、無菌エアをボトル2内に吹き込んでも構わない。また、無菌エアではなく、無菌水をボトル2の内部に導入して、ボトル2の内部をリンスしても構わない。さらに無菌エアと無菌水を併用してボトル2をリンスしても構わない。
エアリンス部34でエアリンスされたボトル2は図1に示すように、ホイール37を経て、充填部39に搬送される。充填部39では、図1に示す充填ホイール40にて、図3(G)に示す充填工程のように、充填ノズル42によりボトル2に内容物が充填される。内容物はあらかじめ殺菌されており、ボトル2と同期的に走行する充填ノズル42により、ボトル2内に一定量の飲料等の内容物が充填される。
内容物が充填されたボトル2は、図1に示すホイール43を経て密封部44に搬送される。密封部44に設けられた密封ホイール45では、図3(H)に示す密封工程のように、キャップ殺菌部52により殺菌された密封部材であるキャップ3が、殺菌キャップ搬送路54によりキャップ供給ホイール54a及びキャップ受け取りホイール54bを経て、密封ホイール45に供給され、図示しないキャッパーにより、ボトル2の口部1aに巻き締められ、ボトル2は密封される。
密封されたボトル2は、密封ホイール45のグリッパ22から排出部47の排出ホイール48のグリッパ22に受け渡される。排出ホイール48に受け渡されたボトル2は排出コンベヤ50に載置される。排出コンベヤ50に載置されたボトル2は出口部チャンバー50b内から無菌充填機の外部に排出される。
ボトル殺菌部チャンバー33、エアリンス部チャンバー36、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50b内は無菌充填機の稼働前に殺菌される。そのため、図5に示すように各チャンバーには殺菌剤吹き付けノズル58及び液体吹き付けノズル59が備えられる。
殺菌剤吹き付けノズル58は、一流体スプレーまたは殺菌剤を圧縮エアと混合して噴霧する二流体スプレーが使用され、殺菌剤を殺菌が必要な各チャンバー内の全域に付着するように吹き付けられる。吹き付けられた殺菌剤により、各チャンバー内が殺菌される。殺菌剤吹き付けノズル58は各チャンバー内の全域に殺菌剤が付着するように配置される。殺菌剤はボトル2を殺菌するために使用される殺菌剤と同様のものが使用でき、過酢酸や過酸化水素を含む殺菌剤を使用することが好ましい。殺菌剤の吹き付けは、異なる殺菌剤を複数回吹き付けても構わない。
殺菌剤として過酢酸を含む場合、過酢酸濃度を500ppm以上、好ましくは1000ppm以上とする。この場合の殺菌条件は、殺菌剤を50℃〜95℃、好ましくは60℃〜95℃に加温し、チャンバー内の装置及び壁の表面に過酢酸が0.01g/cm2、好ましくは0.1g/cm2以上付着するようにチャンバー内に殺菌剤が噴霧される。噴霧時間は30秒〜30分が好ましい。30分以上行っても構わないが、生産性が低下する。
殺菌剤吹き付けノズル58から殺菌剤を吹き付けた後に、液体吹き付けノズル59により、各チャンバー内の全域に無菌水が吹き付けられる。当該無菌水により、各チャンバー内に残存する殺菌剤が洗浄される。液体吹き付けノズル59は、液体が各チャンバー内の全域に吹き付けられるように配置される。無菌水とは、121.1℃以上で4分以上加熱されたり、除菌フィルターを通すことで無菌化された水である。各チャンバー内に液体吹き付けノズル59から吹き付けられる無菌水は60℃〜100℃に加熱されることが好ましい。液体吹き付けノズル59としては、例えばスピンボールを用いたスプレーノズルが使用される。液体吹き付けノズル59を設けないで、殺菌剤吹き付けノズル58から無菌水を吹き付けても構わない。
各チャンバー内には、殺菌剤を吹き付けた後に無菌水を吹き付けるが、殺菌剤を吹き付ける前に、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50b内に内容物が飛散している場合は、液体吹き付けノズル59から洗浄用液体が吹き付けられ、各チャンバー内が洗浄される。洗浄用液体は水又は酸性化合物若しくは塩基性化合物を含む水である。水は、加熱や濾過により無菌化した水又は純水、イオン交換水、蒸留水又は水道水であっても構わない。酸性化合物とは、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸又は酢酸、蟻酸、オクタン酸、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸である。また塩基性化合物とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物、又はエタノールアミン、ジエチルアミン等の有機塩基性化合物である。この他に、有機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エチレンジアミン四酢酸等の金属イオン封鎖剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等の非イオン界面活性剤、クメンスルホン酸ナトリウム等の可溶化剤、ポリアクリル酸等の酸系高分子又はこれらの金属塩、腐食抑制剤、防腐剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤などを含んでも構わない。また、これらの洗浄用液体を50℃以上に加温すると殺菌作用も有するため、これらをチャンバー内を殺菌するための殺菌剤として利用しても構わない。
各チャンバーには図5に示すように、無菌エア供給装置60が備えられる。無菌エア供給装置60は各チャンバーの上部に接続される。無菌エア供給装置60はブロワ61、加熱装置62及び除菌フィルタ63を備える。ブロワ61によるエアが加熱装置62により加熱され、除菌フィルタ63により除菌された後に、無菌エアとなって各チャンバー内に供給される。図5に示すように除菌フィルタ63をチャンバーの天面に対して垂直に設けているが、これは洗浄用液体及び殺菌剤が除菌フィルタ63の表面に付着するのを防止するためである。除菌フィルタ63はチャンバー面に平行に設けても構わない。
また、各チャンバーには排気装置64が備えられ、無菌エア供給装置60と連動して各チャンバー内の圧力を適正な値に保持する。
無菌エア供給装置60から供給される無菌エアにより、各チャンバー内に残存する液体吹き付けノズル59から吹き付けられた無菌水を気化させて除去する。この時、無菌エアが加熱されることで無菌水の気化による除去が迅速に行われる。また、無菌エア供給装置60は、無菌充填機稼働時に各チャンバー内の無菌性を維持するため、各チャンバー内に無菌エアを供給する。この場合、無菌エアは加熱されなくても構わない。
無菌充填機稼働前の殺菌において、殺菌剤吹き付けノズル58により、殺菌剤が吹き付けられることにより、除菌フィルタ63の表面も殺菌することができる。除菌フィルタ63の表面の殺菌は過酸化水素水のガス若しくはミスト又はこれらの混合物により殺菌しても構わない。
殺菌剤の吹き付け、無菌水の吹き付け及び無菌エアの供給の順序、回数は任意であり、各チャンバー内が殺菌される条件であればどのようなものでも構わない。
無菌充填機稼働中にいずれかの部位においてトラブルが発生する。トラブルとは例えば、ボトル2やキャップ3が、各ホイールやグリッパ22に噛み込み、搬送できなくなる場合がある。また、搬送不良により各チャンバー内に多数のボトル2が落下し、ボトル2を除去しなければ搬送できない場合もある。また、前回の製造時に使用したボトル2やキャップ3を回収せずに、チャンバー内を殺菌した後にこれを発見し、再度殺菌が必要となる場合もある。さらに各チャンバーに設置してあるグローブが破損し、交換する必要が生じる場合もある。
このようなトラブルが発生した場合、無菌充填機の運転を停止するが、非トラブル発生チャンバーについては、無菌エア供給装置の運転を継続して、非トラブル発生チャンバーの内部圧力を陽圧にした状態とする。その場合、非トラブル発生チャンバー内の圧力を、無菌充填機の運転中の圧力よりも高めることが好ましい。これにより、トラブル発生チャンバーの扉を開放し、当該チャンバーを非無菌雰囲気としたときに、非トラブル発生チャンバーの開口部から非トラブル発生チャンバー内への菌等の流入を一層抑えることができる。とりわけ、トラブル発生チャンバーに隣接する、非トラブル発生チャンバー内の圧力は、無菌充填機の運転中の圧力よりも高めることが好ましい。従って、各チャンバーの無菌エア供給装置60は、各チャンバー内の圧力を30Pa以上、好ましくは50Pa以上にする能力を備えていると好適である。その後、トラブルが発生した部位を遮蔽するチャンバーの扉を開放し、トラブル発生チャンバー内を非無菌雰囲気として、トラブルを除去する。
トラブル発生チャンバーの扉を開放する前に、非トラブル発生チャンバーの開口部は、開口部に存在する機材に接触しない程度に閉塞することが好ましい。開口部に存在する機材とはグリッパ22とこれを保持する保持部材であったり、キャップ殺菌部52であればキャップ3をキャップ殺菌部52に導入するキャップ搬送部材であったり、製品を排出する出口部50aであれば排出コンベヤ50である。開口部を閉塞するために、グリッパ22に接触しない閉塞部材として、キャップ搬送部材に接触しないキャップ入口シャッター53及び排出コンベヤ50に接触しない排出コンベヤシャッター51が設けられる。開口部を閉塞することで、トラブル発生チャンバーの扉を開放し、当該チャンバーを非無菌雰囲気としたときに、開口部からの菌等の流入を一層抑えることができる
トラブル発生チャンバー内のトラブルを除去した後、開放した扉を閉じる。その後、トラブル発生チャンバーについて、無菌充填機稼働前と同様の洗浄や殺菌の操作を行う。先ず、必要に応じた洗浄をおこない、チャンバー内に殺菌剤吹き付けノズル58から殺菌剤を吹き付けた後に、液体吹き付けノズル59により、無菌水が吹き付けられる。さらに、無菌エア供給装置60により加熱無菌エアをチャンバー内に供給して、チャンバー内を乾燥させる。この間、非トラブル発生チャンバー内の圧力は無菌エアの供給により、陽圧に保持される。
トラブル発生チャンバーから当該チャンバーに隣接する、非トラブル発生チャンバーに、開口部を通じて菌等が流入している可能性が想定される場合、無菌充填機稼働前と同様の操作をトラブル発生チャンバーに隣接する非トラブル発生チャンバーについても行うことが好ましい。すなわち、トラブル発生チャンバーに隣接する、非トラブル発生チャンバー内も殺菌することが好ましい。
従来はトラブル発生チャンバーが充填部チャンバー41でなくとも、トラブル発生チャンバーの扉を開放すると、全チャンバーが非無菌雰囲気となるため、充填部39の充填バルブ内の洗浄(CIP)及び殺菌(SIP)を行う必要があった。本発明によれば、トラブル発生チャンバーが充填部チャンバー41でない場合、トラブル発生チャンバーの扉を開放した後、無菌充填機の運転を再開するまでに、充填部チャンバー41内は無菌雰囲気を維持しているため、充填部39の充填ノズル42を含む充填バルブについて、充填バルブ内の洗浄(CIP)及び殺菌(SIP)を行う必要はない。
また、トラブル発生チャンバーが充填部チャンバー41であっても、充填ノズル42をCIPカップ等により閉塞した後に扉を開放することで、充填バルブ内に残留する製品液に菌等が混入することを防止できる。このように、充填ノズル42を閉塞することで、充填バルブ内の洗浄(CIP)及び殺菌(SIP)を行わなくても構わない。さらに、充填ノズル42を閉塞して充填部チャンバー41内を洗浄及び殺菌することで、充填バルブ内に残留している製品液に、洗浄用液体や殺菌剤が混入することを防止できる。トラブルが充填部チャンバー41内で発生した場合、トラブルが発生した後、無菌充填機の運転を再開するまで、充填ノズル42を閉塞し、製品液貯留タンクを無菌エアで加圧することにより、製品液供給配管内を陽圧状態で維持すると好適である。この措置により充填ノズル42からの菌等の流入を一層抑えることができる。
トラブル発生チャンバーについて無菌充填機の稼働前と同様の操作が終了した後、各チャンバー内の圧力を上げていた場合は、無菌充填機の稼働に適した圧力に各チャンバー内の圧力に設定して、無菌充填機の運転を再開する。
(実施の形態2)
図6に本発明の実施の形態2を示す。実施の形態1はボトル2を殺菌する無菌充填機であるが、実施の形態2はプリフォーム1を殺菌する無菌充填機である。以下に、プリフォーム1を殺菌するプリフォーム殺菌部65を備える無菌充填機について説明する。
(実施の形態2の概要)
図6に示すように、実施の形態2に係る無菌充填機は、プリフォーム1を供給するプリフォーム供給装置4、プリフォーム1を殺菌するプリフォーム殺菌部65、プリフォーム1をボトル2に成形する温度に加熱する加熱部6、加熱したプリフォーム1をボトル2に成形する成形部16、成形されたボトル2を検査する検査部70、検査により正常と判断されたボトル2に殺菌された内容物を充填する充填部39、密封部材であるキャップ3を殺菌するキャップ殺菌部52、内容部が充填されたボトル2を殺菌されたキャップ3により密封する密封部44、密封されたボトル2を排出コンベヤ50に載置する排出部47及び排出コンベヤ50によりボトル2を非無菌ゾーンに排出する出口部50aを備える。検査部70は備えなくても構わない。
プリフォーム殺菌部65はプリフォーム殺菌部チャンバー66、加熱部6は加熱部チャンバー12、成形部16は成形部チャンバー17、検査部70は検査部チャンバー71、充填部39は充填部チャンバー41、密封部44は密封部チャンバー46、排出部47は排出部チャンバー49及び出口部50aは出口部チャンバー50bにより各々遮蔽されている。実施の形態1と異なり、成形部16と検査部70が同一チャンバー内になく、各々成形部チャンバー17、検査部チャンバー71により遮蔽されている。ここで、キャップ殺菌部52と密封部44は単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。また、密封部44と排出部47も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
加熱部チャンバー12、成形部チャンバー17、検査部チャンバー71、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50bには、無菌充填機の稼働中に除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され、各チャンバー内部の圧力を陽圧にすることで、無菌充填機の無菌性が維持される。陽圧にする圧力は、充填部チャンバー41内が最も高く、上流又は下流に行くにほど低く設定される。例えば、充填部チャンバー41内の圧力を20Pa〜40Paとすると、他のチャンバー内の圧力は充填部チャンバー41内の圧力よりも低い。
プリフォーム殺菌部チャンバー66はプリフォーム殺菌部チャンバー66内のエア中の殺菌剤を分解するフィルタ68とブロワ69からなる排気手段が連結される。無菌充填機の稼働中にプリフォーム殺菌部チャンバー66内のエアが排気されることにより、隣接する加熱部6への殺菌剤の流入を防止することができる。従って、無菌充填機稼働中はプリフォーム殺菌部チャンバー66内の圧力はほぼ大気圧と同等である。
無菌充填機の稼働中に、各チャンバー内の無菌性が維持されるならば、各チャンバー内の圧力は低くても構わない。しかし、いずれかのチャンバー内の部位においてトラブルが発生した場合、トラブル発生チャンバー内は非無菌雰囲気としなければならないが、非トラブル発生チャンバー内の無菌性を維持するために、非トラブル発生チャンバー内の圧力を陽圧に保持しなければならない。非トラブル発生チャンバー内の圧力は、好ましくは30Pa以上、より好ましくは50Pa以上である。無菌充填機稼働中の各チャンバー内の圧力よりも高くすることで、無菌充填機の停止中に、トラブル発生チャンバー内を非無菌雰囲気としても、非トラブル発生チャンバー内を無菌雰囲気に維持することができる。従って、無菌充填機の稼働中に無菌雰囲気を維持しなければならない、加熱部チャンバー12、成形部チャンバー17、検査部チャンバー71、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50bは、それぞれのチャンバー内の圧力を好ましくは30Pa以上、より好ましくは50Pa以上に保持できる無菌エア供給装置を備えている。
(実施の形態2の詳細)
プリフォーム1が、図6に示すプリフォーム供給装置4により、所望の速度でプリフォーム供給コンベヤ5により連続的にプリフォーム殺菌部65に搬送される。プリフォーム1は実施の形態1と同様である。
プリフォーム1は、プリフォーム供給コンベヤ5からホイール7に一定間隔で設けられたグリッパ22に把持され、図7(I)に示すようにホイール7に設けられたプリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67により、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が吹き付けられる。
図7(I)に示すように、この殺菌剤のガスは、プリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67内で二手に分かれて流れ、その一方のノズル67aからプリフォーム1の内部に向かって吹き付けられ、他方のノズル67bからプリフォーム1の外面に向かって吹き付けられる。殺菌剤のガスは、プリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67から出た後、ガス状態のままで、若しくはミスト又はこれらの混合物となって、プリフォーム1の内部に流入し、あるいはプリフォーム1の外面に接触する。
プリフォーム1の内部に向かって吹き付けられる殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、プリフォーム1内に流入した後、プリフォーム1の口部1aから溢れ出るが、溢れ出た殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物の流れは、案内部材77に衝突し、案内部材77の内面に導かれて、プリフォーム1の外面へと向かって流れを変え、プリフォーム1の外面に接触する。案内部材77に環状溝77aが設けられると、溢れ出た殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物はプリフォーム1の外面に沿って流れる。
このように殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物がプリフォーム1の内外面に接触し、付着することにより、プリフォーム1の表面に付着した菌等が殺菌される。
図7(I)に示すプリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67は一個のみならず、複数個をプリフォーム1の走行路に沿って配置し、これらのプリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67から殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物をプリフォーム1に向かって吹き付けるようにしても構わない。また、プリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67、ノズル67a又はノズル67bの径やノズル67bに設けられた殺菌剤ガス吹き出し口の径及び個数を変化させることにより、プリフォーム1の内面と外面への殺菌剤の付着量を各々調整することが可能である。
なお、プリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67、ノズル67a,ノズル67bには、これらの途中から、常温又は加熱された無菌エアを供給して、無菌エアにより希釈された殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物がプリフォーム1に吹き付けられても構わない。
なお、図7(I)に示したプリフォーム1への殺菌剤のガスの吹き付けの直前に、プリフォーム1に熱風を吹き付ける等して、プリフォーム1を予備加熱してもよい。この予備加熱によりプリフォーム1の殺菌効果をさらに高めることができる。
殺菌剤は実施の形態1と同様のものが使用される。また、殺菌剤のガス化は実施の形態1と同様の殺菌剤ガス生成器55による。殺菌剤のガスの吹き付け量は任意であるが、殺菌剤が過酸化水素水の場合、プリフォーム1への過酸化水素の付着量は、35質量%の過酸化水素を含む過酸化水素水の量として0.001μL/cm2〜0.5μL/cm2が好ましい。付着量が0.001μL/cm2よりも少ない場合は、十分な殺菌効果を得るこ
とができない。また、この付着量が0.5μL/cm2を超えると、プリフォーム1をボ
トル2にブロー成形した場合に、ボトル2に白化、斑点、皺、変形の成形不良が発生したり、ボトル2の過酸化水素の残留が多くなる。
殺菌剤のガスが吹き付けられたれたプリフォーム1は、図7(J)に示すように、グリッパ22により把持され、搬送されつつエア吹き付けノズル78により無菌エアが吹き付けられても構わない。殺菌剤の種類や量により、無菌エアの吹き付けは行われなくても構わない。
無菌エアの吹き付けにより、プリフォーム1の表面に付着した殺菌剤が活性化され、プリフォーム1の内外面の菌等が殺菌される。また、無菌エアの吹き付けによって、プリフォーム1に付着した殺菌剤は、プリフォーム1の表面から速やかに除去される。プリフォーム1に付着した殺菌剤は、加熱される前に無菌エアの吹き付けによりプリフォーム1から除去される。また、無菌エアのプリフォーム1への吹き付けにより、プリフォーム1内の異物も除去される。
無菌エアは常温でも構わないが、加熱されて無菌ホットエアとすることで、殺菌効果が高まり、殺菌剤が過酸化水素を含有する場合は、過酸化水素のプリフォーム1への残留も減少する。無菌エアの加熱は、プリフォーム1に吹き付けられる無菌ホットエアの温度が40℃から140℃となるようにすることが好ましい。40℃未満では加熱による効果が少なく、プリフォーム1の温度が70℃を超えるとプリフォーム1の口部1aの変形などの不都合を生じるため、無菌ホットエアの温度は140℃を超えないことが好ましい。
図7(J)に示すように、無菌エアはエア吹き付けノズル78の主体をなす箱状のマニホルド78bに形成したスリット状の吹出口78aから吹き出すようになっている。また、エア吹き付けノズル78をプリフォーム1に追従させてプリフォーム1に無菌エアを吹き付けても構わない。さらに、エア吹き付けノズル78を棒状として、プリフォーム1に挿入して、プリフォーム1内の異物除去を兼ねて、プリフォーム1内への無菌エア吹き付けを行っても構わない。
図7(I)に示すプリフォーム1への殺菌剤ガス吹き付けは、図6に示すようにホイール7に設けたプリフォーム殺菌剤ガス吹き付けノズル67で行い、図7(J)に示すプリフォーム1への無菌エアの吹き付けは、図6に示すようにホイール8に設けたエア吹き付けノズル78で行う。しかし、いずれの工程もホイール7又はホイール8で行っても構わない。
加熱部6に供給されたプリフォーム1は、図6に示す加熱部搬送ホイール9に達する。この後、プリフォーム1の加熱工程は実施の形態1と同様である。加熱されたプリフォーム1は図6に示すように、ホイール15を経て成形部16に搬送される。ホイール15における搬送路には、図6に示すようにプリフォーム1の搬送路を囲むプリフォームトンネル79が設けられる。プリフォームトンネル79はプリフォーム1の口部1aをその上方から覆い、天井部分は、傾斜面を有する屋根状に形成される。また、天井部分には、無菌エアをプリフォーム1の口部1aに向かって吹き出すノズルが、パイプの列状又はスリット状に設けられる。これにより、無菌エアがプリフォーム1へと効率的に供給され、プリフォーム1は無菌性を維持しつつ成形部16の成形ホイール18に受け渡される。
成形ホイール18に受け渡されたプリフォーム1の成形工程は実施の形態1と同様である。
成形されたボトル2はホイール23を経て検査部70に搬送されるが、ホイール23における搬送路には、図6に示すようにボトル2の搬送路を囲むボトルトンネル80が設けられる。ボトルトンネル80は、ボトル2の口部1aをその上方から覆い、天井部分は、傾斜面を有する屋根状に形成される。また、天井部分には、無菌エアをボトル2の口部1aに向かって吹き出すノズルが、パイプの列状又はスリット状に設けられる。これにより、無菌エアがボトル2へと効率的に供給され、ボトル2は成形部チャンバー17内にあって無菌性を維持しつつ走行することができる。
ボトル2はホイール23を経て検査部70の検査ホイール72に受け渡される。検査により不良がないことが確認されたボトル2だけが、さらに充填部39に搬送される。成形不良などによる異常なボトル2を使用して不適正な製品を生産しないように、ボトル2を検査部70で検査することが好ましい。検査により異常が発見された場合、そのボトルは図6に示す不良ボトルの排出装置74により無菌充填機の外部に排出される。検査部の検査ホイール72及び73に沿って、ボトル2を検査する検査機材24が設けられる。
検査部チャンバー71内は稼働前に殺菌され、稼働時には無菌エアが供給され、無菌雰囲気が維持される。無菌充填機の稼働前の殺菌において、ボトル2を検査する検査機材24が殺菌剤と接触しないように、検査機材24は密閉された容器に収納される。検査機材24が殺菌剤に接触して、腐食等が生じないようにするためである。すなわち、検査部70は密閉された容器に収納された検査機材24を備える。検査項目や検査の工程は実施の形態1と同様であるが、ボトル2は既に殺菌されているため、温度測定は行わなくても構わない。
検査により異常と判断されたボトル2は排出ホイール75に設けられ排出装置74により、無菌充填機の外部に排出されるが、正常と判断されたボトル2はホイール76を経て充填部39に搬送される。充填部39、密封部44及び排出部47における工程は実施の形態1と同様である。
無菌充填機の稼働前に、加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17内は、殺菌される。例えば、殺菌方法の一つとして、20mg/L以下の濃度で過酸化水素を含有するエアで加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17内をガス殺菌する。この場合、加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17には実施の形態1と同様に、図5に示すような殺菌剤吹き付けノズル58が設けられる。また、プリフォーム1やボトル2が接触する部位をUVランプで照射(紫外線殺菌)しても構わない。また、液状の殺菌剤を滴下等の方法により、プリフォーム1の内部に導入し、殺菌剤がプリフォーム1の内部に残留した状態のまま、プリフォーム1内にブローノズル21から空気等を吹き込み、殺菌剤を成形部チャンバー17内に拡散させることにより、成形部チャンバー17内を殺菌しても構わない。
無菌充填機の稼働時に加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17内の無菌性を維持するために、加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17内に無菌エアを供給する。実施の形態1と同様に、加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17は無菌エア供給装置60を備える。また、無菌充填機のいずれかの部位にトラブルが生じた場合、トラブルを除去する間に加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17の無菌性を維持するために、無菌エア供給装置60は加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー17の圧力を好ましくは30Pa以上、より好ましくは50Pa以上に保持する能力を備える。また、排気装置64も備え、無菌エア供給装置60と排気装置64の運転条件のバランスにより無菌充填機稼働中の加熱部チャンバー12及び成形部チャンバー内の圧力を適正に保持しても構わない。
検査部チャンバー71は図5に示す実施の形態1と同様に、殺菌剤吹き付けノズル58、液体吹き付けノズル59及び無菌エア供給装置60を備える。当該無菌エア供給装置60も検査部チャンバー71内の圧力を好ましくは30Pa以上、より好ましくは50Pa以上に保持する能力を備える。充填機稼働前の検査部チャンバー71内の殺菌は、実施の形態1における各チャンバーと同様に行う。
充填部チャンバー41、密封部チャンバー44、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50b内の洗浄や殺菌は実施の形態1と同様である。
無菌充填機稼働中において加熱部チャンバー12、成形部チャンバー17、検査部チャンバー71、充填部チャンバー41、密封部チャンバー44、排出部チャンバー47及び出口部チャンバー50bにトラブルが発生することがある。トラブルとは例えば、プリフォーム1やボトル2が、各ホイールやグリッパ22に噛み込み、搬送できなくなる場合がある。また、搬送不良により各チャンバー内に多数のボトル2が落下し、ボトル2を除去しなければ搬送できない場合もある。また、前回の製造時に使用したプリフォーム1やボトル2を回収せずに、チャンバー内を殺菌した後にこれを発見し、再度殺菌が必要となる場合もある。さらに各チャンバーに設置してあるグローブが破損し、交換する必要が生じる場合もある。
このようなトラブルが発生した場合、無菌充填機の運転を停止するが、非トラブル発生チャンバーについては、無菌エア供給装置60の運転を継続して、非トラブル発生チャンバーの内部圧力を陽圧にした状態とする。その場合、非トラブル発生チャンバー内の圧力を無菌充填機の運転中の圧力よりも高めることが好ましい。これにより、トラブル発生チャンバーの扉を開放し、当該チャンバー内を非無菌雰囲気としたときに、開口部からの菌等の流入を一層抑えることができる。とりわけ、トラブル発生チャンバーに隣接する非トラブル発生チャンバー内の圧力は、無菌充填機の運転中の圧力よりも高めることが好ましい。従って、各チャンバーの無菌エア供給装置60は各チャンバー内の圧力を陽圧に、好ましくは30Pa以上、より好ましくは50Pa以上にする能力を備えている。その後、トラブル発生チャンバーの扉を開放し、トラブル発生チャンバー内を非無菌雰囲気として、トラブルを除去する。
トラブル発生後、トラブルを除去し、無菌充填機の運転を再開するまでの操作は、実施の形態1と同様である。開放した扉を閉じ、無菌充填機稼働前と同様の操作を行う。先ず、トラブル発生チャンバーが充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49及び出口部チャンバー50bのいずれかである場合、必要に応じた洗浄を行い、チャンバー内に殺菌剤吹き付けノズル58から殺菌剤を吹き付けた後に、液体吹き付けノズル59により、無菌水が吹き付けられる。さらに、無菌エア供給装置60により加熱無菌エアをチャンバー内に供給して、チャンバー内を乾燥させる。トラブル発生チャンバーが、加熱部チャンバー65、成形部チャンバー17及び検査部チャンバー71のいずれかである場合には、洗浄を行う必要はない。各チャンバーに合わせた殺菌を行う。
トラブルが発生したチャンバーについて無菌充填機の稼働前と同様の操作が終了した後、各チャンバー内の圧力を無菌充填機の稼働に適した数値に設定し、無菌充填機の運転を再開する。
本発明は以上説明したように構成されるが、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨内において種々変更可能である。