従来、プリンタに使用される用紙には単票用紙と連続帳票用紙(以後単に連続用紙と記す)とがある。単票用紙は1枚の用紙であり、カットシートフィーダによって1枚ずつプリンタに送られる。連続用紙は連続印刷が可能な長い用紙であり、1枚1枚切り離せるように等間隔でミシン目が入っており、印刷前にはミシン目の部分で折り畳まれて積み重ねられて束になっている。印刷時には束になった連続用紙はプリンタの脇に置かれ、一番上の連続用紙をプリンタにセットすると、連続用紙は束から1枚ずつ展開されてプリンタに供給される。連続用紙の両側には、連続用紙をプリンタ内で移動させるための送り孔(スプロケット孔)が等間隔で連続して開けられている。
一方、連続用紙に印刷を行うプリンタ側には、連続用紙に開けられた送り孔の幾つかに噛み合うトラクタフィーダ(以後単にトラクタと記す)と呼ばれる紙送り装置(搬送装置)が設けられている。トラクタは、連続用紙に設けられた送り孔の間隔に等しい間隔で突設された突起(ピン)を備えるホイールまたはベルトを備えており、連続用紙はトラクタのピンが送り孔に挿通されることによってプリンタの印刷部に運ばれる。連続用紙は、このようにトラクタによって確実、且つ正確に把持され、安定して用紙を搬送することができるので、請求書等の信頼性が求められる分野では主流になっており、今後も高い需要が見込まれる。
図1は、連続用紙Pに印刷を行う比較技術のプリンタPTにおける連続用紙Pの搬送経路Rを、プリンタPTの本体5に設けられている前扉6とカバー7を開いて示す斜視図である。プリンタPTの本体5には、給紙部1、印刷装置2、ブラシ3、及び排紙部4がある。折り畳まれて積み重ねられた連続用紙の束PPは給紙部1の下の床に置かれ、展開されながら連続用紙の束PPから引き出された連続用紙Pは給紙部1に供給される。連続用紙Pは給紙部1にあるトラクタで印刷装置2に送られ、印刷が終了した連続用紙Pは搬送経路Rの最終段で再び折り畳まれて排紙部4に積み重ねられる。排紙部4は本体5に対して昇降可能であり、積み重ねられる連続用紙Pの量が増えると排紙部4は下降する。また、図2は、図1に示したプリンタPTの給紙部1の部分を拡大して示す部分斜視図である。給紙部1には、連続用紙Pを印刷装置2に送るトラクタ10がある。
ここで、図1、図2に図3及び図4を併用して、プリンタPTにおける連続用紙Pの搬送経路Rについて説明する。図3は、図1に示したプリンタPTにおける連続用紙Pの搬送経路Rに設けられた搬送装置であるトラクタ10と、印刷装置2の位置を示す説明図である。トラクタ10には、連続用紙Pの搬送時に連続用紙Pがトラクタ10から外れないようにする蓋部材15が設けられている。プリンタPTがインクジェットプリンタの場合、印刷装置2は複数個のインクヘッドである(以後印刷装置2はインクヘッド2と記すことがある)。
ラインプリンタでは、印刷装置は連続用紙Pの幅方向に沿って設けられた1つの大きなラインヘッドであったが、比較技術のインクジェットプリンタでは、複数のインクヘッド2で連続用紙Pの上の印刷領域を分担して印刷する。このため、インクジェットプリンタには、複数のインクヘッド2が2列に並んで設けられている。例えば、連続用紙Pの印刷領域を4つのインクヘッド2で印刷する場合は、インクヘッド2は2つずつ2列に並んで設けられている。図3に示した連続用紙Pの搬送経路Rには、印刷装置2として、2列に配置されたインクヘッド2が描かれている。また、連続用紙Pの搬送経路Rには、連続用紙Pの移動経路Rを定めるために複数のローラ8が設けられている。
図4は、図3に示した搬送経路Rに設けられているトラクタ10に、連続用紙Pをセットする状態を説明する斜視図である。連続用紙Pには幅方向(用紙が連続する方向に対して垂直な方向)に、所定間隔でミシン目PMが設けられており、使用前の連続用紙Pはミシン目PMで折り畳まれて積み重ねられ、積み重ねられた連続用紙の束PPとなっている。また、連続用紙Pの両サイドには、連続用紙Pをトラクタ10で搬送するための送り孔(スプロケット孔)PHが等間隔で開けられている。
一方、トラクタ10の躯体(図示省略)には、内蔵モータで駆動される駆動輪11と従動輪12が設けられており、駆動輪11と従動輪12の間にはベルト13が掛け渡されている。そして、ベルト13には、連続用紙Pの送り孔PHに挿入されるピン14が、連続用紙Pの送り孔PHと同じ間隔で取り付けられている。ピン14を突設する位置は、ベルト13の側面でも外周面でも良い。
連続用紙Pの送り孔PHは、連続用紙Pの両サイドに設けられているので、トラクタ10は連続用紙Pの送り孔PHの位置に合わせて2組設けられている。この場合、2組のトラクタ10において、駆動輪11の回転軸AX1及び従動輪12の回転軸AX2はそれぞれ同軸上にある。図4に示す矢印Kは駆動輪11のモータの回転方向を示しており、連続用紙Pは送り孔PHにピン14を挿入すればトラクタ10によって自動的に搬送される。なお、図4には図3に示したブラシ3の図示は省略してある。
図3に示すように、プリンタの脇に置かれた積み重ねられた連続用紙の束PPから、トラクタ10によって引き出された連続用紙Pは、まず、ブラシ3によって送り孔の周囲に付着する紙粉(連続用紙に送り孔を形成する時に出る屑)が除去される。トラクタ10を通過した連続用紙Pはインクヘッド2の下を通り、インクヘッド2によって印刷(印字)される。本例のプリンタPTはインクジェットプリンタであり、インクヘッド2は2列に配置されている。インクヘッド2で印刷された連続用紙Pは、複数のローラ8によって搬送経路Rを通って排紙部4に送られる。
なお、プリンタに使用できる連続用紙は複数種類あり、送り孔の間隔はどれも同じであるが、連続用紙の幅とミシン目の間隔が異なるものがある。そこで、2組のトラクタ10は、駆動輪11の回転軸AX1及び従動輪12の回転軸AX2に沿って移動可能であり、トラクタ10の位置を連続用紙の幅に合わせることができるようになっている。
以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本実施例では、連続用紙用プリンタとして、印刷装置にインクヘッドを備えるインクジェットプリンタの実施例を説明するが、印刷装置の種類はインクヘッドに限定されるものではない。また、図1〜図5で説明した比較技術のプリンタPTと同じ構成部材については同じ符号を付して説明する。
まず、図6により、本実施例の連続用紙用プリンタPTにおける連続用紙Pの搬送経路Rと連続用紙Pから発生する紙粉PDの動きについて説明する。図6は、図1に示したプリンタPTに本実施例のトラクタ10Aが装着されている状態を示す説明図であり、トラクタ10Aの構造が模式的に示してある。トラクタ10Aの具体的な構造例については後述する。トラクタ10Aは、躯体19に内蔵モータで駆動される駆動輪11と従動輪12があり、駆動輪11と従動輪12の間にはベルト13が掛け渡されている。
そして、ベルト13には、連続用紙Pの送り孔PHに挿入されるピン14が、連続用紙Pの送り孔PHと同じ間隔で取り付けられている。駆動輪11の回転によりベルト13が矢印Cで示す方向に回転し、連続用紙Pの送り孔PHに挿入されたピン14によって連続用紙Pが搬送される。トラクタ10Aで発生した紙粉PDの一部は、連続用紙Pの移動に伴い発生する風w1,w2によって用紙搬送方向の下流側に運ばれる。トラクタ10Aで発生した残りの紙粉PDは、連続用紙P自体によって用紙搬送方向の下流側に運ばれる。トラクタ10Aから送り出された連続用紙Pは、印刷装置であるインクヘッド2に至り、インクヘッド2によって印刷が行われる。印刷が行われた連続用紙Pはローラ8によって後段の搬送経路Rに移動する。なお、図6にはインクヘッド2は1列に並んだ状態が示されている。
開示のプリンタPTのトラクタ10Aには、連続用紙Pの搬送時に連続用紙Pがトラクタ10Aから外れないようにする蓋部材16が設けられている。蓋部材16は図5で説明した比較技術の蓋部材15と同様の構造を有する。蓋部材16の幅は、連続用紙Pに設けられている送り孔PHの上部を覆う幅であれば、特に限定されるものではない。開示のプリンタPTにおけるインクヘッド2の吐出面2Aと連続用紙Pとの間の距離D3は1.2〜1.5mm程度である。
本実施例の連続用紙用プリンタPTは、トラクタ10Aによる連続用紙Pの搬送方向におけるトラクタ10Aとインクヘッド2との間に配置された導風部材17を備える。以下の説明では、トラクタ10Aによる連続用紙Pの搬送方向を単に用紙搬送方向と称することがある。図6に示した風w1は連続用紙Pの移動に伴いトラクタ10Aから導風部材17へと流れる風であり、図6に示した風w2は連続用紙Pの移動に伴い導風部材17の下方を流れる風である。開示の導風部材17は、搬送経路R上に位置する連続用紙Pの上方に配置されており、不図示の送風装置が発生した風を、用紙搬送方向を横切る方向に導く通風路17Dを形成している。
図7Aは、図6に示した導風部材17及び連続用紙Pの概略斜視図である。開示の導風部材17は、用紙搬送方向に並べて配置された第1及び第2の側壁部171,172と、第1及び第2の側壁部171,172の上方の縁部175,176を接続する上壁部170と、を含んでいる。図7Aでは用紙搬送方向が矢印A70で表されている。第1及び第2の側壁部171,172は、本出願に係るプリンタにおける一対の壁部の一例である。第1及び第2の側壁部171,172の各々は、用紙搬送方向を横切る方向に延在している。そして、第1及び第2の側壁部171,172の下方の縁部173,174は、連続用紙Pの表面に沿って延在している。
開示の導風部材17において、第1及び第2の側壁部171,172並びに上壁部170で囲まれた空間は、不図示の送風装置が発生した風Wを案内する通風路17Dを形成している。図7Bは、図6に示した導風部材17及び連続用紙Pの概略斜視図である。図7Bに示すように、第1及び第2の側壁部171,172の延在方向の寸法L1(すなわち、通風路17Dの長さ)は、連続用紙Pの幅方向の寸法L2よりも大きくされる。図6を参照すると、第1及び第2の側壁部171,172の間の距離L3(すなわち、通風路17Dの幅)は、隣り合う送り孔PHの距離L4よりも十分に大きくされる。開示のプリンタPTでは、導風部材17の通風路17Dに入り込んだ紙粉が送風装置の風Wによって用紙搬送方向を横切る方向に運ばれる。
図6を参照すると、開示のプリンタPTでは、導風部材17の第1の側壁部171と連続用紙Pの表面との間に微小な隙間G1が設けられている。第1の側壁部171の縁部173と連続用紙Pとの間の距離D1は0.8〜1.0mm程度である。そのため、トラクタ10Aから導風部材17へと流れる風w1によって運ばれた紙粉PDの一部は、第1の側壁部171の縁部173を通り越すことができずに、第1の側壁部171の上流側の領域で拡散する。また、上記の風w1の流路は第1の側壁部171の縁部173で狭くなるので、用紙搬送方向の下流側で縁部173に隣接する領域A1では圧力低下による上昇気流が発生する。開示の導風部材17では、連続用紙Pの表面又は送り孔PHの内壁面に残留する紙粉PDが、領域A1内の上昇気流により巻き上げられて通風路17Dに入り込む。従って、開示の導風部材17によれば、第1の側壁部171の縁部173を通り越した紙粉PDを送風装置の風Wによって効果的に除去することができる(図7Aも参照)。
図6を参照すると、開示のプリンタPTでは、導風部材17の第2の側壁部172と連続用紙Pの表面との間にも微小な隙間G2が設けられている。第2の側壁部172の縁部174と連続用紙Pとの間の距離D2は0.8〜1.0mm程度である。そのため、導風部材17の下方を流れる風w2によって運ばれた紙粉PDの一部は、第2の側壁部172の縁部174を通り越すことができずに、通風路17D内で拡散する。通風路17D内で拡散した紙粉PDは、領域A1内の上昇気流で巻き上げられた紙粉PDと一緒に、送風装置の風Wによって除去される(図7Aも参照)。このように、開示の導風部材17によれば、連続用紙Pの移動に伴う風w1,w2によって運ばれる紙粉PD及び連続用紙P自体の移動によって運ばれる紙粉PDの大部分を送風装置の風Wで除去することができる。従って、開示のプリンタPTによれば、インクヘッド2の吐出面2Aと連続用紙Pとの間の隙間G3への紙粉PDの侵入、及びそれによる吐出面2Aへの紙粉PDの付着を抑制することができる。
図6を参照すると、第1の側壁部171の縁部173と連続用紙Pとの間の距離D1は、インクヘッド2の吐出面2Aと連続用紙Pとの間の距離D3よりも小さくされることが好ましい(D1<D3)。これにより、トラクタ10Aから導風部材17へと流れる風w1によって運ばれた紙粉PDが、縁部173を通り越して用紙搬送方向の下流側に移動するのを抑制することができる。仮に距離D1が距離D3よりも大きい場合には、隙間G1を通り抜けた紙粉PDが、更に隙間G2を通り抜けて隙間G3に侵入するおそれがある。通常、隙間G2の高さ(距離D2)は隙間G1の高さ(距離D1)よりも大きくされる。同様に、第2の側壁部172の縁部174と連続用紙Pとの間の距離D2は、インクヘッド2の吐出面2Aと連続用紙Pとの間の距離D3よりも小さくされることが好ましい(D2<D3)。これにより、導風部材17の下を流れる風w2によって運ばれた紙粉PDが、縁部174を通り越して用紙搬送方向の下流側に移動するのを抑制することができる。
更に、第2の側壁部172の縁部174と連続用紙Pとの間の距離D2は、第1の側壁部171の縁部173と連続用紙Pとの間の距離D1と同じか又は距離D1よりも大きくされることが好ましい(D2≦D1)。これにより、用紙搬送方向の下流側で縁部174に隣接する領域A2では上昇気流が発生し難くなるので、縁部174を通り越した紙粉PDが領域A2で巻き上げられるのを抑制することができる。この場合には、紙粉PDは縁部174を通り越した後も連続用紙Pの表面又は送り孔PHの内壁面に残留し続ける。従って、紙粉PDが縁部174を通り越して隙間G3に侵入したとしても、その紙粉PDが吐出面2Aに付着する可能性は低い。仮に、距離D2が距離D1よりも小さい場合には、導風部材17の下を流れる風w2の流路が縁部174で狭められるので、下流側の領域A2では上昇気流が発生しやすくなる。この結果、縁部174を通り越した紙粉PDがインクヘッド2の手前で巻き上げられるので、その紙粉PDが吐出面2Aに付着するおそれがある。
図8は、図6に示したトラクタ10Aを矢印A方向に見た矢視図である。図8では導風部材及び送風装置を省略している。図8に示したプリンタPTの給紙部1には、連続用紙Pの両側にある送り孔に対応する位置にトラクタ10Aが設けられている。トラクタ10Aにあるピン14が連続用紙Pにある送り孔PHに挿入される。また、プリンタPTには連続用紙Pに印刷を行うインクヘッド2が、連続用紙Pの印刷領域に複数設けられているが、図8には両側の2つのインクヘッド2のみを示してある。蓋部材16は、トラクタ10Aの躯体19にヒンジ軸HAによって取り付けられており、通常はピン14を覆っているが、連続用紙Pの付け替え時等にはヒンジ軸HAを中心にして回転できるようになっている。
ここで、本実施例のプリンタにおけるトラクタ及び導風部材の具体的な構造例を説明する。図9は、本実施例のプリンタPTの給紙部1に、開示のトラクタ10Aが設けられている状態を示す部分斜視図である。この図からプリンタPTには合計4つのインクヘッド2が設けられていることが分かる。導風部材17は、矢印A91で表される一対のトラクタ10A,10Aの配列方向に沿って延在している。トラクタ10A,10Aの配列方向は、トラクタ10A,10Aによって搬送される連続用紙(不図示)の幅方向と平行である。そのため、導風部材17の延在方向は、トラクタ10A,10Aによって搬送される連続用紙の幅方向と平行である。ただし、導風部材17の延在方向は、トラクタ10A,10Aの配列方向に対して幾分傾斜していてもよい。導風部材17の延在方向の一方の端部17E1には、導風部材17の内側を流れる風Wを発生させる送風装置18が取り付けられている。
図7Bを参照すると、導風部材17の延在方向の寸法L1は、連続用紙Pの幅方向の寸法L2よりも大きくされている(L1>L2)。そのため、導風部材17の通風路17Dは、連続用紙Pの上方で、連続用紙Pの幅方向の全長にわたって延在している。これにより、連続用紙Pの幅方向における手前側と奥側の両方の送り孔PH内に残留する紙粉を、送風装置18の風Wで同時に除去することができる。図9を参照すると、導風部材17の他方の端部17E2には、送風装置18の風Wによって運ばれた紙粉を収容するための収容室17Cが設けられている。収容室17Cには、その内部に溜まった紙粉をプリンタPTの外部に排出するための排出口17Oが設けられている。更に、開示のプリンタPTは、用紙搬送方向におけるトラクタ10Aと導風部材17との間に配置された除電ブラシ21を更に備えている。図9では用紙搬送方向が矢印A92で表されている。除電ブラシ21は本出願に係るプリンタにおける除電部材の一例である。
図10は、図9中の導風部材17及び送風装置18の近傍を示す部分拡大図である。開示のプリンタPTは送風装置18として一般的な角型ファンを採用している。送風装置18は、導風部材17の通風路17Dに入り込んだ紙粉を導風部材17の端部17E2まで運ぶのに十分な風量及び風圧の風Wを噴出することができる(図9を参照)。送風装置18トラクタ10Aによる連続用紙Pの搬送中に常に風Wを噴出する。図9及び図10に示した送風装置18は小型であるため消費電力が小さく、かつ静音性に優れている。特に、送風装置18が発生する騒音は、プリンタPTに含まれるモータ等の駆動装置が発生する騒音よりも遥かに小さいので、送風装置18が原因でプリンタPT全体の静音性が低下することはない。
図10を参照すると、開示の除電ブラシ21は、導電材料で作られた連続用紙PTとの接触部210を有しており、連続用紙Pの静電気を除去する役割を果たしている。除電ブラシ21の接触部210は、例えば、ステンレス鋼を繊維化することによって形成されている。除電ブラシ21は連続用紙の幅方向の全長にわたって延在することが好ましい。これにより連続用紙の静電気を漏れなく除去することができる。連続用紙の静電気を除電ブラシ21によって導風部材17の手前側で除去しておけば、連続用紙Pに残留する紙粉を連続用紙から剥がれやすくすることができる。この結果、導風部材17及び送風装置18による紙粉の除去効率を向上させることができる。
図11は、本実施例のプリンタPTにおける、連続用紙Pの搬送経路Rに設けられたトラクタ10Aと、インクヘッド2の具体的な位置の関係を示す説明図である。プリンタPTの脇に置かれた連続用紙の束PPから、トラクタ10Aによって引き出された連続用紙Pは、ブラシ3によって送り孔の周囲に付着する紙粉が除去される。トラクタ10Aを通過した連続用紙Pはインクヘッド2の下を通り、インクヘッド2によって印刷される。インクヘッド2は複数あり、2列に並んでいる。インクヘッド2で印刷された連続用紙Pは、複数のローラ8によって搬送経路Rを通って排紙部4に送られる。
連続用紙Pは、ブラシ3によって送り孔の周囲に付着する紙粉が除去されるが、除去される紙粉は送り孔の周囲の表面に付着する紙粉に過ぎず、送り孔の内壁部に残留する紙粉はブラシ3によっては完全に除去できない。送り孔の内壁部に残留する紙粉は、連続用紙Pの送り孔にトラクタ10Aのピンが下側から挿通された時に、ピンによって送り孔から押し出され、連続用紙Pの表面の送り孔の周辺に付着する。また、連続用紙Pの送り孔からピンが引き抜かれる時に、送り孔にまだ残留する紙粉はピンで連続用紙Pの下側に引き出される。
図3で説明した比較技術の搬送経路Rでは、トラクタ10で連続用紙Pの表面の送り孔の周辺に付着した紙粉が連続用紙Pによって運ばれ、インクヘッド2のインク吐出口に付着すると、インクヘッド2による印刷不良が発生することがあった。これに対して、本実施例のプリンタPTは、用紙搬送方向におけるトラクタ10Aとインクヘッド2との間に配置された導風部材17を備えている。開示の導風部材17は、用紙搬送方向に並べて配置された第1及び第2の側壁部171,172を含んでおり、第1及び第2の側壁部171,172の間に挟まれた空間は、連続用紙Pの上方で用紙搬送方向を横切る方向に延在する通風路17Dを形成している。そして、本実施例のプリンタPTでは、連続用紙Pに残留する紙粉が、第1の側壁部171の下方の隙間G1を通り抜けた後に、通風路17D内の上昇気流によって巻き上げられて通風路17Dに入り込む(詳細は図6を参照)。第1の側壁部171の高さ方向の寸法L5を例えば34.5mmとしたときには、第2の側壁部172の高さ方向の寸法L6を例えば31.5mmとすることができる。この場合には、第1の側壁部171と第2の側壁部172との間の距離L3を例えば19.0mmとすることができる。
更に、本実施例のプリンタPTは、導風部材17の延在方向の一方の端部に取り付けられ、用紙搬送方向を横切る方向に流れる風を発生させる不図示の送風装置を備えている。従って、本実施例のプリンタPTでは、通風路17Dに入り込んだ紙粉が送風装置の風によって用紙搬送方向を横切る方向に運ばれる。この結果、連続用紙Pの移動に伴う風及び連続用紙P自体によって運ばれる紙粉がインクヘッド2の上流側で除去されるので、インクヘッド2と連続用紙Pとの間の隙間G3への紙粉の侵入を防止することができる。図6を参照すると、連続用紙Pの移動に伴う風w1,w2によって運ばれた紙粉PDは、第1の側壁部171の上流側の領域で拡散するか、又は通風路17D内で拡散して送風装置の風により除去される(図7Aも参照)。また、連続用紙P自体によって運ばれた紙粉PDは、連続用紙Pが導風部材17の下を通過する間に、通風路17D内の上昇気流によって送り孔の内壁面から剥がされ、送風装置の風によって除去される。この結果、紙粉PDがインクヘッド2の下部まで運ばれる可能性は低くなるので、インクヘッド2の吐出面2Aに紙粉PDが付着する可能性は低くなる。
再び図9を参照すると、開示のプリンタPTは、用紙搬送方向におけるトラクタ10Aとインクヘッド2との間に配置された他の送風装置28を備えることができる。開示のプリンタPTにおいて、この送風装置28は、用紙搬送方向におけるトラクタ10Aと除電ブラシ21との間に配置されている。以下の説明では、この送風装置28を第2の送風装置28と称することがある。図12は、本実施例のプリンタPTで使用するトラクタ10Aを示す部分斜視図である。本実施例では、トラクタ10Aに設けられた蓋部材16が、カバー部16Cと、延伸部16Eと、を含んでいる。カバー部16Cは、トラクタ10Aの躯体19に設けられたヒンジ軸HAによって開閉可能であり、トラクタ10Aにあるベルトとピン(不図示)を覆っている。トラクタ10Aへの連続用紙(不図示)の付け替え時には、使用者によってカバー部16Cが開けられる。延伸部16Eは、カバー部16Cに隣接してトラクタ10Aとインクヘッド(不図示)との間の領域に設けられている。延伸部16Eには第2の送風装置28が2個取り付けられており、延伸部16Eの下方には第2の送風装置28の風によって運ばれた紙粉を受ける容器20が配置されている。
図13は、図12に示した第2の送風装置28の1つを底面側から見た斜視図である。第2の送風装置28は、開示のトラクタ10Aによって搬送される連続用紙(不図示)の送り孔に向けて風WWを噴出するノズル28Nを有している。ノズル28Nから噴出される風WWは、ノズル28Nを出た後も広がらない指向性を備える風であり、例えば渦流風である。ノズル28Nから噴出された風WWは連続用紙の送り孔を通り抜けて連続用紙の下方に流れる。そのため、送り孔の内壁面に残留する紙粉は、第2の送風装置28の風WWによって内壁面から剥がされて連続用紙の下方に運ばれる。このようにして連続用紙から除去された紙粉は、連続用紙の下方に位置する容器20に収容される(図12を参照)。以上のように、開示のプリンタPTでは、第2の送風装置28が用紙搬送方向における導風部材17の上流側で紙粉を除去するので、導風部材17の下部に到達する紙粉の量を低減することができる(図9を参照)。この結果、開示のプリンタPTによれば、導風部材17を通り越して用紙搬送方向の下流側に運ばれる紙粉の量を更に低減することができる。
以下の表1は、所定枚数のランニングテスト実施後にプリンタが出力した印刷物に含まれる不良箇所の個数を示している。具体的に言うと、以下の表1は、印刷物に含まれるドット抜けの個数を目視で確認した結果を、図1〜図5等に示した比較技術のプリンタ及び本実施例のプリンタのそれぞれについて示している。表1に示したドット抜けの個数は2回のランニングテストの平均値である。本実施例のプリンタのランニングテストでは、開示の導風部材17に取り付けられた送風装置18のみを作動させ、導風部材17の上流側に配置された第2の送風装置28は作動させなかった(図9を参照)。また、上記のランニングテストでは、導風部材17の第1の側壁部171と連続用紙Pとの間の距離D1を1.0mmとし、第2の側壁部172と連続用紙Pとの間の距離D2を1.0mmとした(図6を参照)。更に、上記のランニングテストでは、インクヘッド2の吐出面2Aと連続用紙Pとの間の距離D3を1.5mmとした(図6を参照)。表1から分かるように、比較技術のプリンタでは、2000枚印刷後に既にドット抜けが発生しており、それ以降も1個〜2.5個のドット抜けが発生している。他方、本実施例のプリンタでは、10000枚印刷後もドット抜けは一切確認されなかった。
以上、本出願を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本出願の容易な理解のために、本出願の具体的な形態を以下に付記する。
(付記1) 送り孔付の連続用紙に印刷を行うプリンタであって、
前記送り孔に挿通されるピンと、前記ピンの移動機構とを含み、前記ピンを移動させて前記連続用紙を搬送する搬送装置と、
前記連続用紙の搬送方向における前記搬送装置の後段に設けられ、前記連続用紙の表面に印刷を行う印刷装置と、
前記搬送方向における前記搬送装置と前記印刷装置との間に並べて配置され、前記連続用紙の表面に沿って前記搬送方向を横切る方向に延びる縁部をそれぞれが有する一対の壁部と、
前記一対の壁部の間で前記搬送方向を横切る方向に流れる風を発生させる送風装置と、を備えるプリンタ。
(付記2) 前記一対の壁部のそれぞれの前記縁部と前記連続用紙の表面との間の距離が、前記印刷装置と前記連続用紙の表面との間の距離よりも小さく形成されている、付記1に記載のプリンタ。
(付記3) 前記一対の壁部のうちの前記印刷装置側に位置する壁部の前記縁部と前記連続用紙の表面との間の距離が、前記搬送装置側に位置する壁部の前記縁部と前記連続用紙の表面との間の距離よりも大きく形成されている、付記1に記載のプリンタ。
(付記4) 前記一対の壁部のそれぞれは、前記搬送方向を横切る方向における前記連続用紙の全長にわたって延在している、付記1〜3のいずれかに記載のプリンタ。
(付記5) 前記搬送方向における前記搬送装置と前記一対の壁部との間に設けられ、前記連続用紙の表面に接触して前記連続用紙の静電気を除去する除電部材を更に備える、付記1〜4のいずれかに記載のプリンタ。
(付記6) 前記除電部材は、前記搬送方向を横切る方向における前記連続用紙の全長にわたって前記連続用紙の表面に接触する接触部を備える、付記5に記載のプリンタ。
(付記7) 前記送風装置は、前記一対の壁部の延在方向における一方の端部に取り付けられており、
前記前記一対の壁部の延在方向における他方の端部に設けられ、前記送風装置の風によって運ばれた前記連続用紙の紙粉を収容する収容室を更に備える、付記1〜6のいずれかに記載のプリンタ。
(付記8) 前記搬送方向における前記搬送装置と前記一対の壁部との間に配置され、前記送り孔に向けて風を噴出する他の送風装置とを更に備える、付記1〜7のいずれかに記載のプリンタ。
(付記9) 前記連続用紙を挟んで前記他の送風装置と反対側に設けられ、前記他の送風装置が噴出した風により前記送り孔を通って運ばれた前記連続用紙の紙粉を受ける容器をさらに備える、付記8に記載のプリンタ。
(付記10) 前記搬送装置は、前記ピンの先端に対向して配置され、前記連続用紙の前記ピンからの外れを防止するカバー部と、前記カバー部から前記搬送方向の下流側に延伸する延伸部と、を更に含み、
前記他の送風装置は、前記搬送装置の前記延伸部に取り付けられている、付記8または9に記載のプリンタ。
(付記11) 前記搬送装置は、その躯体に、駆動輪、従動輪及び前記駆動輪と前記従動輪との間に掛け渡されたベルトが設けられたトラクタであり、前記ピンは前記ベルトに突設されている、付記1〜10のいずれかに記載のプリンタ。
(付記12) 前記印刷装置がインクジェットヘッドである付記1〜11のいずれかに記載のプリンタ。