以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両運転支援システムについて説明する。まず、図1,図2を参照して、車両運転支援システムで用いられる運転ディマンド及び運転パフォーマンスについて説明する。図1は運転者,交通環境,運転支援の関係を示す説明図、図2は運転ディマンドと運転パフォーマンスとの関係を説明するグラフである。
図1に示すように、運転者は交通環境に適応するように車両を運転する必要がある。交通環境は、種々の要素が関係しており、例えば、交通量(交通量の多い交差点等),道路構造(道路幅,道路交差の複雑さ等),天候(濡れた路面等),交通参加者(子供飛び出し等),走行状態(他車両との車間距離等),車両構造(AT車/MT車の相違,車両の大きさ等),車両性能(ブレーキの効き易さ等)が関係している。したがって、交通環境の種々の要素に応じて、運転者は、交通環境に適応するだけの運転能力が要求される(慎重なハンドル操作,飛び出しに注意,他車の動きへの注意,死角への注意等)。
また、運転者は、複数の車載装置から種々の運転支援を受ける。運転支援には、大別して情報提示に関する運転支援(「情報関連運転支援」)と、自動運転制御システムによる運転支援(「自動運転支援」)とが含まれる。これらの運転支援は、交通環境により要求される運転能力を軽減する。本実施形態では、運転支援による軽減分を考慮して、実際に交通環境に起因して要求される運転能力を運転ディマンドD(要求運転能力)と定義する。
運転ディマンドD=交通環境要因Dt−運転支援要因Da
運転支援要因Da=情報関連要因Di+自動運転要因Dd
一方、運転者は、このような交通環境に適応して車両を運転するための運転技量(技)を有している。しかしながら、運転者の身体状態(体)や精神状態(心)に応じて、この運転技量は必ずしも最大限発揮されない。本実施形態では、運転技量,身体状態及び精神状態に基づいて、運転者が実際に現時点で発揮できる運転能力を運転パフォーマンスP(現在運転能力)と定義する。
運転パフォーマンスP=運転技量要因Ps−身体要因Pp−精神要因Pm
図2は、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPとの関係を示している。領域A1(例えば、点B1)では、運転ディマンドDの方が運転パフォーマンスPよりも大きい(P<D)。これらの差が大きいほど運転負荷が大きい。このため、運転者は運転を難しいと感じるため、不安感が生じ易くなる。また、領域A1では、運転者はストレスを受けるため、疲労感が生じ易い。このため、長時間の運転には不向きである。
また、領域A2(例えば、点B2)では、運転パフォーマンスPの方が運転ディマンドDよりも大きい(P>D)。これらの差が大きいほど運転負荷が小さい。このため、運転者は運転を易しいと感じるため、物足りなさや退屈感が生じ易くなる。また、退屈さを感じると、運転者はわき見等のセカンドタスクを行ったり、注意散漫になり運転への集中力が低下したり、運転に対する意欲が低下したりして、運転パフォーマンスが低下するおそれがある。
一方、直線L上及びその周辺領域A0では(例えば、点B0)、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPとが釣り合った状態となる(理想状態;P=D)。釣り合い状態では、運転操作に対する楽しさや安心感が生じ、車両に対する信頼感を醸成し易くなる。
したがって、本実施形態では、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDとの関係点(運転者と交通環境との関係)が、領域A1又は領域A2に位置すると推定される場合、これを領域A0内に移動させるようにD(要すればP)を調整するように構成されている。具体的には、点B1(P1<D1)の場合は、Dを低減する処理及びPを増加する処理が実行され、点B2(P2>D2)の場合は、Dを増加する処理が実行される。なお、Pを減少する処理も可能である。
運転ディマンドDの低減処理は、主に情報関連要因Diと自動運転要因Ddを増加する処理である。逆に、運転ディマンドDの増加処理は、主に情報関連要因Diと自動運転要因Ddを低減する処理である。運転パフォーマンスPの増加処理は、身体要因Ppと精神要因Pmによる減少分を低減する処理である(Pp及びPmを小さくする)。
次に、図3を参照して、車両運転支援システムの構成について説明する。図3は車両運転支援システムの構成図である。
図3に示すように、車両運転支援システムSは、車載コントローラ(ECU)1と、車両センサ3と、情報提示装置5と、車両駆動制御システム7を備えている。
車載コントローラ1は、制御部11,記憶部13,通信部(図示せず)等を備え、車両センサ3から取得したセンサデータに基づいて、情報提示装置5及び車両駆動制御システム7を制御するように構成されている。例えば、車載コントローラ1は、アクセル開度(センサデータ)に基づき、車両駆動制御システム7を介してエンジン出力を制御する。
車両センサ3は、種々の情報取得装置からなる。車両センサ3には、車内カメラ,生体センサ,マイク,車外カメラ,レーダ,ナビゲーション装置,車両挙動センサ,運転者操作検知センサ,車車間通信器,車両−インフラ間通信器等が含まれる。
車内カメラは、車両内の運転者や他の乗員を撮像し、車内画像データを出力する。
生体センサは、運転者の心拍,脈拍,発汗,脳波等を計測し、生体データを出力する。
マイクは、運転者や他の乗員の音声を取集し、音声データを出力する。
車外カメラは、車両の前方,側方,後方の画像を撮像し、車外画像データを出力する。
レーダは、車両の前方,側方,後方に向けて電波,音波又はレーザ光を照射し、車両の周囲の車外物体(先行車,他車両,歩行者,地上固定物,障害物等)からの反射波を受信し、物体の相対位置,相対速度等(例えば、先行車位置,先行車相対速度等)の車外物体データを出力する。
ナビゲーション装置は、車両位置情報を取得し、内部地図情報,外部から取得した交通渋滞情報,入力情報(目的地,経由地等)と組み合わせて、ナビゲーションデータ(複数のルート情報,運転者により選択されたルート情報等)を出力する。
車両挙動センサ及び運転者操作検知センサには、速度センサ,前後加速度センサ,横加速度センサ,ヨーレートセンサ,アクセル開度センサ,エンジン回転数センサ,ATギアポジションセンサ,ブレーキスイッチセンサ,ブレーキ油圧センサ,ステアリング角センサ,ステアリングトルクセンサ,ウインカースイッチ位置センサ,ワイパースイッチ位置センサ,ライトスイッチ位置センサ,車内外温度センサ等が含まれる。
車車間通信器,車両−インフラ間通信器は、それぞれ他車両からの通信データ,交通インフラからの交通データ(交通渋滞情報,制限速度情報等)を取得し、これらを出力する。
情報提示装置5は、複数の装置を含む。情報提示装置5は、ナビゲーション装置5A,インストルメントパネル内の情報表示モニター5B,ダッシュボード上のHUD(ヘッドアップディスプレイ)5C,スピーカ5D,視線誘導装置5E,メータ等に設けられたランプ等を含む。情報表示モニター5Bは、警告情報,運転操作コーチング情報,運転操作アドバイス情報等を表示する。HUD5Cは、ウインドシールドに速度やその他の情報を投影して表示する。スピーカ5Dは、車載コントローラ1やオーディオ装置の出力信号に応じて音声案内を出力する。視線誘導装置5Eは、運転者の視線方向を車両前方の遠方領域へ誘導するように機能する。
車両駆動制御システム7は、エンジン,ブレーキ,ステアリング駆動装置をそれぞれ制御するシステムである。各種の自動運転支援モードでは、車両駆動制御システム7を介して、エンジン,ブレーキ,ステアリングの自動操作が実行される。
自動運転支援モードは、代表的には、レーンキープアシストモード,自動速度制御モード,先行車追従モード等を含む。
レーンキープアシストモードでは、車両が車線を逸脱することを防止するように、ステアリング駆動装置が自動的に制御される。
自動速度制御モードでは、車両が設定速度での走行を維持するように、エンジン駆動装置が自動的に制御される。
先行車追従モードでは、所定の車間距離を維持した状態で先行車に追従するように、エンジン駆動装置が自動的に制御される。なお、このモードでは、車線中央を走行するように、ステアリング駆動装置も自動的に制御される。
次に、図3〜図9を参照して、車載コントローラの運転支援機能について説明する。図4は走行経路演算の説明図、図5は走行安全性指標の時間変動グラフ、図6及び図7は変更テーブルの説明図、図8はナビゲーション地図の表示方式の変更の説明図、図9は視線誘導処理の説明図である。
制御部11は、バランス判定部21と、支援実行部22とを備えている。記憶部13には、運転履歴データ24,変更テーブル25,運転制御プログラム,基準走行経路生成モデル等が記憶されている。運転履歴データ24は、センサデータ及びこれに基づいて算出されたデータの蓄積データである。
バランス判定部21は、センサデータに基づく所定の物理量から、現在の運転パフォーマンスP(現在運転能力)と運転ディマンドD(要求運転能力)との釣り合い状態(バランス状態)を判定する。バランス状態は、運転パフォーマンスPに対する運転ディマンドDの過不足状態を示している。本実施形態では、所定の物理量は運転者の運転操作に関連した物理量である。以下では、この物理量を、基準走行経路と実走行経路の差分とした例を説明する。
また、支援実行部22は、判定されたバランス状態に応じて、変更テーブル25に基づいて、運転ディマンドD及び運転パフォーマンスPを増減する処理を実行する。
先ず、バランス判定部21は、図4に示すように、センサデータにより特定される交通環境及び現在車両状態に基づいて、基準走行経路生成モデルを用いて、現時点から所定期間(例えば、2〜4秒)が経過するまでの間の基準走行経路Raを所定時間毎(例えば、0.1秒毎)に計算する。基準走行経路Raは、基準走行経路上の車両Vの基準位置(Pk)及び基準速度(Vk)により特定される(k=0,1,2,・・・,n)。なお、本実施形態では、走行経路が位置と速度により規定されるが、位置のみによって規定されてもよいし、位置,速度及び他の追加要素(前後加速度,横加速度,ヨーレート等)によって規定されてもよい。
図4では、車両Vは、直線区間30a,カーブ区間30b,直線区間30cからなる道路30を走行している。道路30は、左右の車線30L,30Rからなる。現時点において、車両Vは、直線区間30aの車線30L上を走行しているものとする。
交通環境として、道路30の形状(直線,カーブ,車線幅等),交通参加者(先行車等),交通制限(標識等)等が特定される。交通環境を特定するため、車外カメラによる画像データ,レーダによる先行車等の速度位置データ,ナビゲーション装置による地図データ等が用いられる。図4の例では、例えば、画像データや地図データ等により、車線両端部31L,31R、車線幅W、車線数、カーブ曲率半径L、交通標識(制限速度)等が特定される。
現在車両状態として、現在車速,加減速度,設定車速等が特定される。現在車両状態を特定するため、車両挙動センサ及び運転者操作検知センサによるセンサデータ(速度,前後加速度,横加速度,ヨーレート,アクセル開度,エンジン回転数,ATギアポジション,ブレーキスイッチ,ブレーキ油圧,ステアリング角,ステアリングトルク等)が用いられる。
図4の例では、基準走行経路Raは、基準走行経路生成モデルに沿って、制限速度(交通標識の画像データから読み取った制限速度又は設定速度)を上限速度として、直線区間30a,30cでは車両Vが車線30Lの中央付近の走行を維持するように設定され、カーブ区間30bでは車両Vが車線30Lの幅方向中央よりも内側を走行するように設定される。なお、基準走行経路Raは、常に車線の中央付近を車両が走行するように設定されてもよい。
また、バランス判定部21は、センサデータに基づいて、車両Vが実際に走行した実走行経路Rbを算出する。更に、走行安全性判定部としてのバランス判定部21は、基準走行経路Raと実走行経路Rbとを比較処理する。この比較処理において、基準走行経路Raに対する実走行経路Rbの差分が所定の評価方法により評価される。評価項目は、位置及び速度である。
位置評価では、位置の差分、即ち、基準走行経路Raの基準位置(Pk)に対する実走行経路Rbの側方へのずれ(逸脱距離)が評価される。また、速度評価では、速度の差分、即ち、基準走行経路Raの基準速度(Vk)に対する実走行経路Rbの実速度の差が評価される。これら位置評価及び速度評価における差分が加算され走行安全性指標が計算される(図5参照)。なお、評価項目として、前後加速度,横加速度,ヨーレート等を加えてもよい。バランス判定部21は、この走行安全性指標を継続的に算出し運転履歴データ24として記憶部13に格納する。
なお、位置評価では、位置の差分が大きいほど、走行安全性が低いと評価される。また、速度評価では、速度の差分が正側に大きいほど走行安全性が低いと評価される。よって、基準走行経路Raに対する実走行経路Rbの差分が大きいほど走行安全性が低いと評価される。
図5では、走行安全性指標の変動F1,F2が最高値H(高い安全性)と最低値L(低い安全性)との間で時間変動する状況が示されている。仮に、車両Vが基準走行経路Raと完全に一致するように走行した場合、線FHに示すように、算出される走行安全性指標は最高値H(例えば、「100」)となる(時間変動なし)。一方、車両Vが基準走行経路Raから大きく外れて走行した場合、算出される走行安全性指標は最低値L(例えば、「0」)に近い値となる。また、この場合、基準走行経路Raに対するずれの時間変動に応じて、線FLに示すように、走行安全性指標は時間変動する。
走行安全性指標は、基準走行経路Raを基準とした指標であり、走行安全性の度合いをある程度まで表現している。しかしながら、運転者は、嗜好又は癖に応じて、必ずしも基準走行経路Ra上を走行しない。例えば、ある運転者は、車線中央よりもむしろ左寄りにシフトした位置の走行を好む。このため、運転技能が高い運転者に対して、必ずしも高い走行安全性指標が算出されない場合がある。
しかしながら、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDが釣り合い状態(P=D)である場合、運転パフォーマンスPの大きさ(実質的に運転技量の大きさ)に関わらず、走行安全性指標の時間変動が小さくなる傾向があることを本発明者は見出した。この知見によれば、変動F1は、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDがほぼ釣り合った状態を示している。即ち、変動F1では、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDとの間の差分が小さい状態が継続的に続いている。一方、変動F2は、不釣り合い状態(特に、P<D)を示している。
したがって、走行安全性指標の時間変動を分析することにより、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDの釣り合い状態を判定することが可能である。このため、バランス判定部21は、走行安全性指標の現在値と基準値(例えば、所定のベースラインFB)からの差に基づいて、釣り合い状態を判定する。具体的には、バランス判定部21は、所定期間T(例えば、5〜10分)における走行安全性指標の変動傾向を考慮して、走行安全性指標の変動幅(例えば、所定のベースラインFBからの上方変動幅,下方変動幅)に基づいて、釣り合い状態を判定する。なお、所定期間Tは、所定距離(例えば、5〜10km)の走行時間としてもよい。
ベースラインFBは、運転開始から所定期間(例えば、10〜20分)又は所定距離(例えば、5〜10km)の走行における走行安全性指標の時間変動の平均値とすることができる。また、走行安全性指標の時間変動が安定したと評価される期間(例えば、変動幅が閾値変動幅以下)における平均値をベースラインFBに設定してもよい。また、運転履歴データ24に含まれる過去の所定期間分の走行安全性指標の時間変動に基づいて、ベースラインFBを設定してもよい。
図5では、所定期間Tにおいて、変動F1は変動幅G1、変動F2は変動幅G2を有する。例えば、変動幅が所定閾値変動幅Gth以下の場合は釣り合い状態と判定され(G1≦Gth)、変動幅が所定閾値変動幅Gthを超える場合は不釣り合い状態と判定される(G2>Gth)。
また、ベースラインFBは、種々の走行路(市街地,幹線道路,高速道路等)に対してそれぞれ設定されてもよい。したがって、バランス判定部21は、センサデータから車両Vが走行している走行路種別を判断し、例えば、市街地を所定時間又は所定距離だけ走行したときに、市街地用のベースラインFBを設定する。また、バランス判定部21は、市街地を走行したときの走行安全性指標を過去の走行履歴データ24から取得して、市街地用のベースラインFBを設定してもよい。
また、ベースラインを用いることなく釣り合い状態を判定するように構成してもよい。例えば、所定期間(例えば、期間T)内における走行安全性指標の時間変動の最大値と最小値との差が所定閾値を超える場合や、所定周期成分の振幅が所定閾値を超える場合に不釣り合い状態と判定することができる。
支援実行部22は、バランス判定部21の判定結果を取得し、この判定結果に基づき、変更テーブル25を用いて、運転ディマンドDを増減する処理(及び運転パフォーマンスPを増加する処理)を実行する。具体的には、情報提示装置5,車両駆動制御システム7等へ各処理に応じた指令信号を出力する。変更テーブル25は、運転ディマンド増減テーブル25A(図6)と、運転パフォーマンス増減テーブル25B(図7)を有する。
図6に示すように、運転ディマンド増減テーブル25Aは、運転ディマンドDの増加処理(「D増」)と低減処理(「D減」)に分かれている。各分類は、「情報関連」,「自動運転」,「その他」に関する中分類処理を更に含む。
「情報関連」処理は、「情報関連運転支援」である。「情報関連」処理による増加処理は、「俯瞰的情報提示」,「情報量増加」,「視線誘導」に関する小分類処理を含む。「情報関連」処理による低減処理は、「局所的情報提示」,「情報量低減」,「視線誘導」に関する小分類処理を含む。これらの各小分類処理には、複数の処理が含まれる。各処理は、運転ディマンドD(情報関連要因Di又は自動運転要因Dd)の増加度合い又は減少度合いが点数化されている(図示せず。目安を中分類に記載)。複数の処理の実行により、これらの合計点数に相当する運転ディマンドの増加又は減少が期待される。
「情報関連」処理では、運転者による交通状況の把握を促進又は抑制する処理を実行する。これにより、運転者による交通環境の状況把握の難易度が制御され、運転ディマンドDが増減される。即ち、運転中には運転者は必要な情報を瞬間的に処理しなければならない。したがって、当座の運転操作に必要な情報に絞って情報提示すると、状況把握が容易となるため運転ディマンドDは低下する(状況把握促進による低減処理)。一方、詳細な情報を情報提示すると、状況把握が難しくなるため運転ディマンドDは増加する(状況把握抑制による増加処理)。
「俯瞰的情報提示」処理は、ナビゲーション画面において俯瞰的な提示方式により地図を表示するようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。一方、「局所的情報提示」処理は、ナビゲーション地図を局所的に表示するようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。例えば、図8に示すように、現在の地図表示が中程度の表示スケールであったとすると(図8(B)参照)、運転ディマンドDを増加するには表示スケールを縮小して広域な範囲を表示させ(俯瞰的表示;図8(A)参照)、逆に運転ディマンドDを減少するには表示スケールを拡大して局所的な範囲を表示させる(局所的表示;図8(C)参照)。即ち、地図の縮尺度合いが俯瞰的表示(詳細)から局所的表示(簡略)になるに従って、運転支援量が増大すると評価される。運転ディマンド増減テーブル25Aでは、表示スケールの変更に応じた運転ディマンドDの増減量(点数)が規定されている。
また、「俯瞰的情報提示」処理の他の例は、以下のように情報を俯瞰的に表示させるようにナビゲーション装置5Aや他の情報提示装置を制御する処理を含む。ルート案内において案内交差点を曲がった先の走行レーンの案内;右左折のルート案内で交差点拡大図の不表示;レーンリストへの走行レーン案内表示;案内表示への一時停止案内表示/踏切案内表示/合流案内表示/減少レーン案内表示/事故多発点表示;道路渋滞情報の音声案内;複数カーブ情報の音声案内等。これらの処理により、運転者が処理すべき情報量が増加し、状況把握というディマンドが増加する。なお、増加された情報には、優先度が低い情報も含まれることになる(渋滞情報等)。
一方、「局所的情報提示」処理の他の例は、以下の情報を表示させるようにナビゲーション装置5Aや他の情報提示装置を制御する処理を含む。右左折のルート案内で交差点拡大図表示;難交差点拡大図表示;立体交差点拡大図表示;細路案内表示;高速道路入口イメージ図表示等。これらの処理により、交差点や道路形状の把握が容易になり、状況把握(形状把握)というディマンドが低下する。
また、「俯瞰的情報提示」処理の他の例は、ナビゲーション画面による設定時間後の予想到達地点までの区間に対する交通情報(例えば、各通過地点の渋滞状況,通過予想時間等)の提示方式を変更するようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。具体的には、現在の設定時間をより長い設定時間に変更する処理である。例えば、60分後までの交通情報の提示が、2時間後までの交通情報の提示に変更される。「局所的情報提示」処理の他の例は、上記とは逆により短い区間の交通情報の提示処理である。例えば、60分後までの交通情報の提示が、30分後までの交通情報の提示に変更される。
「情報量増加」処理は、以下の処理を実行させるように情報提示装置5を制御する処理を含む。例えば、所定の表示ランプの点灯,所定の表示装置の表示方式の切替え(簡易表示から詳細表示へ),連続するカーブの表示数の増加(2つ目のカーブまで表示),運転支援警報作動の閾値引下げ等の処理である。これらの処理により、運転者が処理すべき情報量や確認動作(判断,操作等)の回数が増加する。運転支援警報は、例えば、運転者の疲労や注意力の低下を画像データから判断して運転者に休憩を促す警報(疲労や注意力低下の判定閾値を下げる)、後方からの車両の接近を知らせる警報(接近判定閾値距離を長くする)である。
一方、「情報量低減」処理は、運転者への情報提示量を低減する処理であり、以下の処理を実行させるように情報提示装置5を制御する処理を含む。例えば、所定の表示ランプの不点灯(例えば、運転技能評価装置の作動ランプ),メータパネルでの情報表示をHUD5Cでの情報表示に変更,所定の表示装置の表示方式の切替え(詳細表示から簡易表示へ),運転支援警報作動の閾値引上げ等の処理である。なお、表示方式の切替えは、情報表示自体を停止すること、表示情報項目の低減等も含む。これらの処理により、優先度の低い情報の表示が停止され、運転者が処理すべき情報量が減少する。また、メータパネルからHUD5Cへの表示変更により、メータパネルへの視線移動(目線を下げる)というディマンドが低下する。
また、「視線誘導」処理は、運転者の視認方向の変更を促す視線誘導装置の作動/不作動を制御する処理である。視線誘導装置を作動させることにより、運転者による交通状況の把握が促進される。なお、「視線誘導」処理は、運転ディマンドDを低下させると共に、運転パフォーマンスPを増加させる効果を有する。
図9に示すように、視線誘導装置5Eは、車両Vのダッシュボードに設けられており、上方へスポット光9aを照射することにより、ウインドシールド9に視線誘導点(アイポイント)9bを生成する。運転者Eは、視線誘導点9bを通して車外を視認することにより、視線方向Cが車両前方の所定位置付近(車両前方150〜250m付近、又は200m付近)に誘導される。視線誘導点9bの生成位置は、運転者Eの眼球の位置に合わせて予め設定される。また、車載コントローラ1が車内カメラ3aによる運転者Eの画像データから眼球位置を推定して、適切な位置に視線誘導点9bを生成するように指令信号を出力してもよい。この場合、視線誘導装置5Eは、この指令信号に基づいてスポット光9aの照射角度を調整する。
一般に、運転技量が低い運転者は、車両近傍(車両前方50m以内)に視線方向を向けており、交通状況の把握力が低く、交通状況の変化に対応する余裕度が低い。一方、運転技量が高い運転者は、車両遠方(車両前方150〜250m付近)に視線方向を向けていることが知られている。この視線方向では、交通状況を把握し易く、運転者は交通状況の変化に余裕をもって対応することができる。
なお、車載コントローラ1は、車内カメラ3aによる運転者Eの画像データから視線方向を算出してもよい。この場合、運転者Eの視線方向が車両近傍に向けられていることが検知されると、車載コントローラ1は、視線誘導装置5Eにスポット光9aを照射させる。また、視線方向を段階的に遠方へ誘導するため、スポット光9aの照射方向が段階的に変更可能となるように視線誘導装置5Eが構成されていてもよい。
「自動運転」処理は、「自動運転支援」である。「自動運転」処理は、車載コントローラ1により、複数の自動運転支援モード(レーンキープアシストモード,自動速度制御モード,先行車追従モード)のうち、1つ又は複数を選択的に実行する処理を含む。これにより、運転ディマンドDが低下する。一方、作動中の自動運転支援モードを不作動にすることにより、運転ディマンドDを増加させることができる。一般に、「自動運転」処理は、「情報関連」処理及び「その他」処理に比べて、運転ディマンドDの増加及び減少に対する効果が大きく、変化度合い(点数)が大きい。
なお、自動運転支援モードに、坂道発進補助モード(坂道発進時における後退を防止)を含めてもよい。また、例えば、自動速度制御モードにおいて、自動的に設定速度を増加させることにより運転ディマンドDを増加させ、自動的に設定速度を低下させることにより運転ディマンドDを低下させることができる。また、例えば、車両が車線から遠い位置で車線逸脱防止制御が作動するように判定閾値を変更することにより運転ディマンドDを低下させ、逆に車線に近い位置で作動するように判定閾値を変更することにより運転ディマンドDを増加させることができる。
「その他」処理は、ルート検索処理において、難ルート(例えば、カーブが多い)が優先的に選択されるようにナビゲーション装置5Aを制御する処理を含む。これにより、運転ディマンドDが増加する。また、車線変更のタイミングを音声案内する処理や、適宜に休憩を促す案内を提示する処理を情報提示装置5に実行させることにより、運転ディマンドDを低下することができる。
また、図7に示すように、運転パフォーマンス増減テーブル25Bは、運転パフォーマンスPの増加処理(「P増」)と低減処理(「P減」)に分かれている。増加処理は、例えば、運転者がリラックスする音楽をスピーカから出力するようにオーディオ装置を制御する処理,リラックスする香を含む空気流を放出するように空調装置を制御する処理,休憩を促すメッセージを表示又は音声出力するように情報提示装置5を制御する処理,疲労し難いシート位置への変更するようにシート装置を制御する処理等である。低減処理は、特に設定されていない。運転パフォーマンスPの増加は、身体要因Ppと精神要因Pmによる減少分を小さくすることにより達成される。
次に、図10〜図13を参照して、車両運転支援システムの処理について説明する。図10〜図12は走行安全性指標の時間変動グラフ、図13は運転支援処理のフローチャートである。
先ず、図10〜図12を参照して、走行安全性指標の典型的な時間変動について説明する。
図10では、走行安全性指標は、時間t0までは安定状態であったが、時間t0から時間t1の間の所定期間Tの間における変動幅(変動幅G3,G4)がベースラインFBの上下方向で閾値変動幅Gthよりも大きくなっている。
したがって、図10では、バランス判定部21は、時間t0までは運転パフォーマンスPと運転ディマンドDとが釣り合い状態にあったと評価し、時間t0以降は不釣り合い状態になったと評価する。即ち、バランス判定部21は、時間t0以降に交通環境や身体状態等の変化により、運転ディマンドDが運転パフォーマンスPを上回っていると判定する(「P<D」判定)。この判定結果に基づいて、支援実行部22は、「D減」処理及び/又は「P増」処理を実行する。
また、図11では、走行安全性指標は、時間t0までは安定状態であったが、時間t0から時間t1まで間の所定期間Tの間に、所定の上昇変動パターンで時間変動している。即ち、走行安全性指標は、安定状態後の時間t0から時間t2の間に所定増加幅Gu以上の変動幅G5(G5≧Gu)だけ増加した後、時間t2から時間t1の間は安定状態に戻っている。変動Fは、時間t2以降、ベースラインFBよりも小さい値(L側)で安定状態になっている。
なお、例えば、所定分析期間(<T)の変動Fの周波数分析により、所定の周期範囲の振幅がある閾値振幅(例えば、閾値変動幅Gth)を超えない場合に、その分析期間について変動Fが安定状態であると判定することができる。
したがって、図11では、バランス判定部21は、時間t0までは運転パフォーマンスPと運転ディマンドDとが釣り合い状態にあったと評価し、時間t0から時間t2の間は不釣り合い状態になったが、時間t2以降は再び釣り合い状態に戻ったと評価する。しかしながら、時間t2以降は、運転者が意図的に運転パフォーマンスPを上げるため、運転ディマンドDが増加するような運転操作を行っていると考えられる。例えば、通常よりも意図的に速度を上げて走行している状態である。
この場合、バランス判定部21は、「上昇変動パターン」後の釣り合い状態であると判定する(運転ディマンドの「増加許容状態」判定)。この判定結果に基づいて、支援実行部22は、「D増」処理を実行する。これにより、運転者が望む運転パフォーマンスPに近づくように、運転ディマンドDが増大される。運転ディマンドDの増大により、例えば、運転者は速度を低下させる。
なお、「上昇変動パターン」であっても、変動幅G5が所定の上限増加幅Gu2を超える場合には、走行安全性指標の値が小さくなり過ぎる(L側)。この場合、バランス判定部21は、安全性低下状態であると判定する(運転ディマンドの「減少推奨」判定)。この判定結果に基づいて、支援実行部22は、「D減」処理を実行する。運転ディマンドDの低減により、例えば、意図的に上げた速度を運転者が維持したとしても、運転負荷はむしろ軽くなる。よって、走行安全性が低下することを防止することができる。
また、図12では、走行安全性指標は、時間t0までは安定状態であったが、時間t0から時間t1まで間の所定期間Tの間に、所定の低下変動パターンで時間変動している。即ち、走行安全性指標は、安定状態後の時間t0から時間t3の間に所定減少幅Gd以上の変動幅G6(G6≧Gd)だけ減少した後、時間t3から時間t1の間は安定状態に戻っている。変動Fは、時間t3以降、ベースラインFBよりも大きい値(H側)で安定状態になっている。
したがって、図12では、バランス判定部21は、時間t0までは運転パフォーマンスPと運転ディマンドDとが釣り合い状態にあったと評価し、時間t0から時間t3の間は不釣り合い状態になったが、時間t3以降は再び釣り合い状態に戻ったと評価する。しかしながら、時間t3以降は、運転者が運転パフォーマンスPが下がっても問題なく運転できるよう、意図的に運転ディマンドDが低下するような運転操作を行っていると考えられる。例えば、体調不良のため通常よりも慎重に(低速で)走行している状態である。
この場合、バランス判定部21は、「低下変動パターン」後の釣り合い状態であると判定する(「運転ディマンド低減許容状態」判定)。この判定結果に基づいて、支援実行部22は、「D減」処理を実行する。これにより、運転ディマンドDが減少されるので、例えば、運転者は、その後の交通環境の変化による運転ディマンドDの急増に対処可能となる。
車載コントローラ1(制御部11)は、図13に示す運転支援処理を繰返し実行する。まず、制御部11(バランス判定部21)は、車両センサ3からセンサデータを取得し(S11)、センサデータに基づいて、基準走行経路Ra(S12)と実走行経路Rb(S13)を算出する。そして、制御部11は、基準走行経路Raと実走行経路Rbとに基づいて、現在の走行安全性指標を算出し走行履歴データ24として記憶する(S14)。
更に、制御部11は、所定期間T前から現在までの期間について走行安全性指標の変動を評価する(S15〜S18)。ステップS15では、走行安全性指標が安定状態であるか否か(即ち、変動Fの変動幅が、ベースラインから所定閾値変動幅以下であるか否か)が判定される。ステップS16では、変動Fが「上昇変動パターン」で時間変動しているか否かが判定される。ステップS17では、変動Fが「低下変動パターン」で時間変動しているか否かが判定される。ステップS18では、変動Fが「上昇変動パターン」で時間変動している場合に(S16;Yes)、変動Fの増加幅が上限増加幅を超えているか否かが判定される。なお、走行安全性指標が継続的に上昇中又は低下中であり、ステップS15〜S18の状態のいずれにも該当しないと判断される場合は、処理を終了してもよい。
走行安全性指標の変動が、安定状態であり(S15;Yes)、「上昇変動パターン」の変動でなく(S16;No)、「低下変動パターン」の変動でない場合(S17;No)、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDが釣り合い状態にあるので、制御部11は、「D増」処理及び「D減」処理を実行することなく、処理を終了する。
走行安全性指標の変動が、安定状態であり(S15;Yes)、「上昇変動パターン」の変動であるが(S16;Yes)、増加幅が上限増加幅以下である場合(S18;Yes)、運転者が意図的に運転パフォーマンスPを上げている状態と考えられるので、制御部11は、「D増」処理から1又は複数の適宜な処理を選択及び実行して(S20)、処理を終了する。なお、この場合、「情報関連」処理(「俯瞰的情報提示」処理、及び「情報量増加」処理)が、「自動運転」処理よりも優先的に選択される。
また、制御部11は、「D増」処理の実行に伴い、車両Vの所定安全装備の作動閾値を低減する。例えば、衝突防止システムにおける自動ブレーキを作動し易くするように作動閾値が引き下げられる。これにより、先行車との車間距離がより遠い状態で自動ブレーキが作動するようになる。また、接近警報を発する車間距離がより長い距離に設定される。その他の安全装備として、レーンキープアシストモードにおいて、より車線中央側で自動操舵アシスト機能が作動して車両Vを車線中央側へ戻すように横方向閾値(位置)が狭められる。これにより、安全性を低下させることなく運転ディマンドDを増加させることができる。
走行安全性指標の変動が、安定状態であり(S15;Yes)、「上昇変動パターン」の変動であるが(S16;Yes)、増加幅が上限増加幅を超える場合(S18;No)、走行安全性が低下するおそれがあるので、制御部11は、「D減」処理及び/又は「P増」処理から適切な処理を選択及び実行して(S21)、処理を終了する。
走行安全性指標の変動が、安定状態であり(S15;Yes)、「上昇変動パターン」の変動でなく(S16;No)、「低下変動パターン」の変動である場合(S17;Yes)、運転パフォーマンスPが低下している状態と考えられるので、制御部11は、「D減」処理及び/又は「P増」処理から適切な処理を選択及び実行して(S19)、処理を終了する。
走行安全性指標の変動が、安定状態でない場合(S15;No)、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDが不釣り合い状態にあり、特に運転ディマンドDが運転パフォーマンスPを上回っている状態であるので、制御部11は、「D減」処理及び/又は「P増」処理から適切な処理を選択及び実行して(S22)、処理を終了する。
なお、本実施形態では、走行安全性指標の変動から、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDの釣り合い状態を判定して、運転ディマンドD及び運転パフォーマンスPを増減する処理を実行している。しかしながら、運転パフォーマンスPは短期間では時間的に一定であるので、走行安全性指標の変動を運転ディマンドDの変動とみなすことができる。したがって、本実施形態は、運転ディマンドDの変動を評価して運転支援を提供する構成とみなしてもよい。
以下に本実施形態の改変例について説明する。
上記実施形態では、運転者の運転操作に関連した物理量として、走行経路に関連した走行安全性指標を用いているが、これに限らず、他の物理量を用いてもよい。他の物理量は、例えば、運転者の上体位置,ステアリング操舵角,運転者の視認実行状態である。
運転者の上体位置は、車内カメラにより撮像された運転者の画像データから検出することができる。上体位置は、座席位置に対する運転者の上体の前後方向及び横方向の位置である。この上体位置の時間変動により、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDの釣り合い状態を判定することができる。即ち、運転中に前後加速度及び横加速度を受けたときに、運転者が運転操作状況を認識し自らコントロールしていれば、上体の揺れの大きさは小さくなる。釣り合い状態では、上体の揺れの振幅がほぼ一定となる。したがって、運転者の上体の揺れの大きさを釣り合いの指標にすることができる。上記実施形態における走行安全性指標と同様に、上体位置による指標も各運転者がそれぞれ有するベースラインに対する揺れの大きさにより判断される。
ステアリング操舵角は、ステアリング角センサにより検知されたステアリング角データを用いることができる。このステアリング角の時間変動により、運転パフォーマンスPと運転ディマンドDの釣り合い状態を判定することができる。即ち、意図した経路に沿って車両Vを走行させるように、運転者がステアリングホイールを安定的且つスムーズにコントロールしていれば、ステアリング角の変動に含まれる所定周期以下の変動成分の大きさが小さくなる。釣り合い状態では、所定周期以下の変動成分の大きさがほぼ一定となる。したがって、ステアリング角の時間変動を釣り合いの指標にすることができる。上記実施形態における走行安全性指標と同様に、ステアリング角による指標も各運転者がそれぞれ有するベースラインに対する変動の大きさにより判断される。
運転者の視認実行状態は、運転者による車外障害物(交通参加者等)に対する安全確認の実行状態である。即ち、車両Vの前方,側方,後方に存在する車外障害物に対する視認確率である。具体的には、制御部11は、車外カメラによる画像データやレーダによる車外物体データに基づき、車外障害物の存在(数,位置を含む)を特定する。また、制御部11は、車内カメラによる運転者の画像データに基づいて運転者の視線方向を継続的に特定する。これにより、制御部11は、特定された障害物を運転者が視認したか否かを判定することができる。この判定に基づいて、制御部11は、障害物に対する運転者の視認確率の時間変動(視認実行状態)を算出することができる。釣り合い状態では、所定の時間間隔毎に、多数の車外障害物数に対して実際に視認した車外障害物数を表す視認確率がほぼ一定となる。上記実施形態における走行安全性指標と同様に、車外障害物に対する視認実行状態による指標も各運転者がそれぞれ有するベースラインに対する変動の大きさにより判断される。
次に、本実施形態の車両運転支援システムSの作用について説明する。
本実施形態の車両運転支援システムSは、車両周囲の交通環境と車両Vにより運転者へ提供されている運転支援とに応じて交通環境において車両Vを運転するために運転者に要求される運転ディマンドD(要求運転能力)に基づいて、運転支援制御を実行する制御部11を備え、制御部11は、運転者の運転操作に関連する物理量の時間変動が所定閾値を超える場合、運転支援制御として、要求運転能力を低減するための低減処理を実行する。
これにより、本実施形態では、運転者が実際に実行する運転操作に関連する物理量に基づいて、運転ディマンドDが過大であるか否かを判定することができる。具体的には、この物理量の時間変動が所定閾値を超える場合、運転ディマンドDが過大であると判定することができるので、運転支援制御として、要求運転能力を低減するための低減処理を実行することが可能である。
また、本実施形態の車両運転支援システムSは、車両周囲の交通環境と車両Vにより運転者へ提供されている運転支援とに応じて交通環境において車両Vを運転するために運転者に要求される運転ディマンドD(要求運転能力)と、運転者の運転パフォーマンスP(現在運転能力)と、のバランス状態に基づいて、運転支援制御を実行する制御部11を備え、制御部11は、運転者の運転操作に関連する物理量の時間変動が所定閾値を超える場合、運転支援制御として、少なくとも運転ディマンドDを低減するための低減処理又は運転パフォーマンスPを増加するための増加処理を実行する。
これにより、本実施形態では、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPのバランス状態を、運転者が実際に実行する運転操作に関連する物理量に基づいて判定することができる。具体的には、この物理量の時間変動が所定閾値を超える場合、運転ディマンドDが過大であると判定することができるので、運転支援制御として、運転ディマンドDを低減するための低減処理又は運転パフォーマンスPを増加するための増加処理を実行することが可能である。
また、具体的には、物理量は、交通環境に基づいて算出された少なくとも位置により規定される基準走行経路Raと、交通環境において車両Vが実際に走行した実走行経路Rbと、の間の差分である。
また、本実施形態では、制御部11は、基準走行経路Raと実走行経路Rbとの間の差分が大きいほど、車両の走行安全性が低いと判定する走行安全性判定部を備え、走行安全性判定部(バランス判定部21)は、基準走行経路Raと実走行経路Rbとの間の差分の時間変動が所定閾値を超える場合、運転ディマンドDと運転パフォーマンスPが釣り合っていないと判定し、この判定に基づいて、制御部11(支援実行部22)は低減処理を実行する。
また、本実施形態では、物理量は、運転者の上体位置,ステアリングホイールの操舵角,又は車外障害物に対する運転者による視認実行状態とすることができる。
また、本実施形態では、低減処理は、車載情報提示装置5による運転者への、運転操作に関する情報提示量を低減する処理を含む。これにより本実施形態では、運転者が処理すべき情報量が減少するので、交通環境の状況把握が容易になる。よって、運転ディマンドDを低下させることができる。
また、本実施形態では、低減処理は、車載情報提示装置5による情報の提示方式をより局所的な提示方式に変更する処理を含む。このように本実施形態では、情報提示を局所的にすることにより、運転者に対して提供する情報量が減少するため、運転者が処理すべき情報量も減少する。これにより、運転負荷が低減され、運転ディマンドDを低下させることができる。
また、本実施形態では、運転支援には、車載情報提示装置5による所定時間後の予想到達地点までの区間の交通情報の提示が含まれ、低減処理は、所定時間を現在の設定時間よりも短い設定時間に変更する処理を含む。これにより本実施形態では、より短い行程に関する交通情報が表示されることにより、運転者が処理すべき情報量が減少する。これにより、運転負荷が低減され、運転ディマンドDを減少させることができる。
また、本実施形態では、低減処理は、1又は複数の自動運転制御システム(自動運転支援モード)を作動させる自動運転処理を含む。これにより本実施形態では、自動運転制御システムの作動により、運転者の運転操作量が低減されるので、運転ディマンドDを減少させることができる。
また低減処理は、音声により情報を伝達する音声案内処理を含んでもよい。
また、本実施形態の車両運転支援システムSにより実行される車両運転支援方法は、車両運転支援システムSが、車両周囲の交通環境と車両により運転者へ提供されている運転支援とに応じて交通環境において車両Vを運転するために運転者に要求される運転ディマンドD(要求運転能力)に基づいて、運転支援制御を実行する制御部11を備えており、制御部11が、運転者の運転操作に関連する物理量の時間変動を取得するステップ(S14)と、制御部11が、物理量の時間変動が所定閾値を超えるか否かを判定するステップ(S15)と、物理量の時間変動が所定閾値を超える場合、制御部11が、運転支援制御として、要求運転能力を低減するための低減処理を実行するステップ(S22)と、を備えている。
また、本実施形態の車両運転支援システムSにより実行される車両運転支援方法は、車両運転支援システムSが、車両周囲の交通環境と車両Vにより運転者へ提供されている運転支援とに応じて交通環境において車両Vを運転するために運転者に要求される運転ディマンドD(要求運転能力)と、運転者の運転パフォーマンスP(現在運転能力)と、のバランス状態に基づいて、運転支援制御を実行する制御部11を備えており、制御部11が、運転者の運転操作に関連する物理量の時間変動を取得するステップ(S14)と、制御部11が、物理量の時間変動が所定閾値を超えるか否かを判定するステップ(S15)と、物理量の時間変動が所定閾値を超える場合、制御部11が、運転支援制御として、少なくとも運転ディマンドDを低減するための低減処理又は運転パフォーマンスPを増加するための増加処理を実行するステップ(S22)と、を備えている。