以下に、実施形態に係るエレベータ電源遠隔操作システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<実施形態1>
図1は、実施形態1のエレベータ電源遠隔操作システム100の全体構成の一例を説明する模式図である。エレベータ電源遠隔操作システム100は、エレベータ10の制御盤12と、作業者14が携帯可能な無線通信リモコン16(可搬型通信機)と、を備える。なお、制御盤12は、無線通信リモコン16と通信を行う第1無線通信装置18(第一の送受信部)を含む。
エレベータ10は、建物(ビル、マンション、展望台等の高層建造物)等に設置される昇降路20を乗りかご22が昇降し、当該乗りかご22が停止可能な各階の階床24に設けられた乗り場(不図示)の間を移動する。このエレベータ10は、乗りかご22と、カウンターウェイト26とをロープ28で連結した、いわゆる「つるべ式のエレベータ」として構成されている。なお、エレベータ10は、一例として昇降路20の上部に機械室を備えないタイプであり、制御盤12等は、例えば昇降路20の側壁等に固定されている。
無線通信リモコン16は、乗り場に設けられたホールメンテナンスボックス30(乗り場側保守点検用操作盤)の内部や、乗り場から手を伸ばして取外し可能な昇降路20の壁面等に配置された持ち運び可能な可搬型通信機である。作業者14は、乗りかご22のかご上エリアや乗りかご22の内部、昇降路20の最下部であるピット32、階床24等において無線通信リモコン16を操作して、制御盤12の第1無線通信装置18(第一の送受信部)と無線通信が可能である。無線通信リモコン16により、制御盤12内の制御回路と制御回路電源との接続状態と遮断状態との切り替えを遠隔操作することができる。
図2は、実施形態1のエレベータ電源遠隔操作システム100の無線通信リモコン16と制御盤12の機能ブロック構成の一例を説明する模式図である。
制御盤12は、制御回路電源34、制御回路36、電磁接触器38、制御部40、第1無線通信装置18、無線通信判定部42(判定部)、バッテリ電源44等を含む。
制御回路電源34は、エレベータ10が設置されている建屋側から提供される電力線(不図示)が接続され、制御盤12すなわち、制御回路36に必要な電力を供給する。制御回路36は、電磁接触器38を介して制御回路電源34から電力供給を受け、乗りかご22を昇降運転するためのモータを駆動したり、乗りかご22内の操作盤や照明、空調設備等を動作させたりするための電力制御や動作制御を実行する。
電磁接触器38は、制御回路電源34と制御回路36との間に介在し、制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続状態と遮断状態との切り替えを行うことで、制御回路36側への電力供給をON/CUTさせるスイッチとして動作する。電磁接触器38は、例えば、常閉型接触器を用いることができる。電磁接触器38は、例えば、固定鉄心、可動鉄心、固定接点、可動接点、コイル、スプリング等で構成されている。例えば固定接点には制御回路電源34側が電気的に接続され、可動接点には制御回路36側が電気的に接続されている。また、可動接点は可動鉄心に固定され、可動鉄心とともに移動可能である。常閉型接触器の場合、コイルが通電されていない場合、可動鉄心は、スプリングによって固定鉄心に付勢されている。この場合、可動鉄心とともに移動する可動接点は固定接点と接触し、制御回路電源34側と制御回路36側とが電気的に接続状態となる。一方、コイルが通電されると電磁力が発生して、可動鉄心がスプリングの付勢力に抗して固定鉄心から離間する。その結果、可動接点と固定接点とが機械的に離間し、制御回路電源34側と制御回路36側とが電気的に遮断状態となる。したがって、コイルへの通電が解除されると、電磁接触器38は接続状態に復帰する。
制御部40は、第1無線通信装置18が受信する切替信号に基づき、電磁接触器38の接続状態または遮断状態を制御する。つまり、電磁接触器38のコイルに通電するか否かを切り替える。
第1無線通信装置18は、無線通信リモコン16側から送信される切替信号、すなわち電磁接触器38に接続と遮断の切替動作を実行させるための信号を少なくとも受信可能であり、第一の送受信部と称する場合もある。第1無線通信装置18は無線通信判定部42を含むことができる。無線通信判定部42は、第1無線通信装置18と無線通信リモコン16側の第2無線通信装置46(第二の送受信部)との無線通信の正常性を判定する。無線通信の正常性は、例えば、「インクリメントリターン」に代表される周知の無線通信の正常性を確かめる手法により判定することができる。無線通信判定部42は、例えば、第2無線通信装置46に対して予め伝送アドレスを設定し、応答がない場合等の伝送異常を監視することができる。なお、第1無線通信装置18および制御部40は、電磁接触器38が接続状態のときには、制御回路電源34から電力供給を受けて動作し、電磁接触器38が遮断状態のときには、専用のバッテリ電源44から電力の供給を受けて動作する。
無線通信リモコン16は、図3に示すように、例えば、箱形のハウジング16aで構成され、内部に第2無線通信装置46、リモコン電源48等を収納するとともに、ハウジング16aの表面にリモコン電源スイッチ50、制御電源遮断スイッチ52(切替操作部)、表示灯群54としてリモコン電源表示灯54a、無線通信確認表示灯54b等を露出させている。
ハウジング16aは、例えば、樹脂や軽量金属等で形成され、作業者14が例えば片手で容易に把持可能であり、また作業服のポケット等に容易に収納可能な大きさとすることができる。なお、図示を省略しているが、ハウジング16aには、作業者14が携帯する際にベルト等に容易に装着できたり、ホールメンテナンスボックス30等に収納する際に保持できたりするようにフックやストラップ等が設けられていてもよい。
第2無線通信装置46は、制御盤12側の第1無線通信装置18と通信可能であり、リモコン電源48(例えば電池)からリモコン電源スイッチ50を介して電力供給を受けて動作する。そして、第2無線通信装置46は、制御電源遮断スイッチ52の操作状態に基づく切替信号を第1無線通信装置18に送信する。第2無線通信装置46は、第二の送受信部と称する場合もある。
リモコン電源スイッチ50は、リモコン電源48と第2無線通信装置46との間に介在し、リモコン電源スイッチ50の操作状態に基づき、第2無線通信装置46にリモコン電源48の電力を供給するか遮断するかを切り替える。なお、リモコン電源スイッチ50は、所定期間(例えば、標準的な保守点検時間+α)操作がない場合には、自動的にOFF状態となり、リモコン電源48の消費節約を行うようにしてもよい。リモコン電源スイッチ50は、図3に示すように、例えばつまみ型のロータリースイッチであり、不用意にリモコン電源がON/OFF操作されないようになっている。
制御電源遮断スイッチ52もまた、例えば、つまみ型のロータリースイッチであり、不用意に制御回路電源34が遮断されたり、接続されたりしないようになっている。なお、リモコン電源スイッチ50や制御電源遮断スイッチ52は、ロータリースイッチに限定されず、少なくとも二段階操作で切り替えが実行される構成であれば、他のタイプのスイッチでもよい。ロータリースイッチの場合、「つまむ」、「回す」の二段階操作である。別の実施例では、ロック機構付きのスイッチでもよく同様の効果を得ることができる。
表示灯群54のリモコン電源表示灯54aは、第2無線通信装置46にリモコン電源48の電力が供給されている場合、すなわち、リモコン電源スイッチ50がON状態のときに、例えば緑色で点灯する。無線通信確認表示灯54bは、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が実行されている場合で、無線通信判定部42により無線通信の正常性が肯定判定(正常な無線通信が行われていると判定)された場合に例えば、緑色で点灯する。また、無線通信判定部42により否定判定(正常な無線通信が行われていないと判定)された場合には、消灯または例えば赤色で点滅する。例えば、否定判定された場合に、無線通信確認表示灯54bを点滅させることにより、現在の通信状態が「不良」であることを作業者14に認識させやすくすることができる。なお、リモコン電源表示灯54a、無線通信確認表示灯54bは、例えばLED等で構成することができる。
実施形態1および後述する各実施形態において、制御部40は、無線通信判定部42によって無線通信の正常性が肯定された場合に第2無線通信装置46から送信された切替信号に基づき電磁接触器38に切替動作を実行させる。すなわち、切替信号が制御回路電源34を遮断することを示す「CUT」の場合、制御部40は、電磁接触器38のコイルに通電して電磁接触器38を遮断状態にする。また、切替信号が制御回路電源34を接続することを示す「ON」の場合、制御部40は、電磁接触器38のコイルの通電を解除して電磁接触器38を接続状態にする。一方、制御部40は、無線通信判定部42によって無線通信の正常性が否定された場合(例えば、外乱等により無線通信が異常と判定された場合)は、切替信号に拘わらず、電磁接触器38の状態を維持する。すなわち、電磁接触器38が接続状態であれば接続状態を維持し、電磁接触器38が遮断状態であれば遮断状態を維持する。図4は、無線通信の正常性を示す信号(上段)と制御電源遮断スイッチ52の入力(中断)と電磁接触器38の動作(下段)との関係を説明する模式図である。図4に示すように、無線通信が正常(肯定判定)の場合、制御電源遮断スイッチ52の動作と電磁接触器38の動作は対応する。一方、無線通信が正常でない(否定判定)場合(図4の領域A)、制御電源遮断スイッチ52に動作に拘わらず電磁接触器38の状態(図4の場合遮断状態)が維持される。そして、無線通信が正常(肯定判定)に復帰した場合、制御電源遮断スイッチ52の動作と電磁接触器38の動作は対応状態に復帰する。
このように、制御盤12(第1無線通信装置18)と無線通信リモコン16(第2無線通信装置46)との無線通信が正常に行われている場合に限り、無線通信リモコン16の制御電源遮断スイッチ52の操作が制御盤12側に反映される。その結果、無線通信リモコン16を用いて制御盤12を遠隔操作した場合でも動作保証がなされ、保守点検作業をよりスムーズに実行することができる。なお、無線通信リモコン16の場合、無線通信確認表示灯54bにより無線通信の正常性を目視確認することができるので、より信頼性を高めることができる。
上述のように構成される実施形態1のエレベータ電源遠隔操作システム100の動作例を図5A、図5Bのフローチャートを用いて説明する。なお、図5Aは動作の前半部分のフローチャートであり、図5Bは動作の後半部分のフローチャートである。また、図5A、図5Bは、エレベータ10が正常運転している状態、つまり、電磁接触器38が接続状態であり、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に接続されて、乗りかご22が通常運行している状態から保守点検を行うために電磁接触器38を遮断状態に切り替える例を示す。また、その後電磁接触器38を接続状態に切り替えて、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に接続されて通常運転可能状態に復帰させる例を示す。
まず、保守点検に先立ち、作業者14により乗り場のホールメンテナンスボックス30等に設置されている点検スイッチを点検運転モード「有効」に切り替え(S100のYes)、点検運転モードを開始する(S102)。点検運転モードは、保守点検時に乗りかご22を低速移動させたり、乗り場以外の位置で停止させたり、乗りかご22のかご扉や乗り場扉を適宜開閉させたりすることができるモードである。なお、点検スイッチが点検運転モード「有効」に切り替えられない場合(S100のNo)は、図5A、図5Bのフローは処理されない。
点検運転モードが開始されている状態で、無線通信リモコン16のリモコン電源スイッチ50がONされた場合(S104のYes)、無線通信リモコン16のリモコン電源表示灯54aが例えば緑色で点灯する(S106)。そして、第2無線通信装置46は、リモコン電源48からの電力の供給を受け、制御盤12の第1無線通信装置18に対する無線通信を開始する(S108)。なお、点検運転モードが開始されていない場合、制御盤12側は、無線通信リモコン16の操作を受け付けないようにすることで、誤操作を防止することができる。無線通信が開始されると、無線通信判定部42は、「インクリメントリターン」等の手法に基づき、無線通信の正常性を判定する(S110)。なお、第1無線通信装置18や無線通信判定部42は、電磁接触器38が接続状態の場合は制御回路電源34から電力供給を受け、電磁接触器38が遮断状態の場合はバッテリ電源44から電力供給を受けて、第2無線通信装置46との無線通信や正常性の判定を行う。第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常に行われている場合(S110のYes)、つまり、無線通信判定部42の判定が肯定の場合、第2無線通信装置46は無線通信リモコン16の無線通信確認表示灯54bを例えば、緑色で点灯させる(S112)。
第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常に行われている状態で、制御電源遮断スイッチ52が「CUT」に切り替えられた場合(S114のYes)、第2無線通信装置46は、遮断を示す切替信号を第1無線通信装置18に向けて送信する。そして、第1無線通信装置18が切替信号を受信すると制御部40は電磁接触器38を遮断状態にする制御、例えば電磁接触器38のコイルへ通電する制御を実行し電磁接触器38を遮断状態(OFF、CUT)に切り替える(S116)。その結果、制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続は遮断される(S118)。つまり、エレベータ10は保守点検作業が可能な電源遮断状態となり、作業者14は、制御盤12内の回路の点検や測定、各部のネジの増し締め等の作業を安全に実施することができる。
無線通信リモコン16の操作によって、制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続が遮断されている場合、無線通信判定部42は継続的に第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との無線通信の正常性の判定を行っている。第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常に行われている場合(S120のYes)、つまり、無線通信判定部42の判定が肯定の場合、第2無線通信装置46は無線通信リモコン16の無線通信確認表示灯54bが点灯する。すなわち、例えば、緑色での点灯を継続する(S122)。
第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常に行われている状態で、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に切り替えられた場合(S124のYes)、第2無線通信装置46は、接続を示す切替信号を第1無線通信装置18に向けて送信する。そして、第1無線通信装置18が切替信号を受信すると制御部40は電磁接触器38を接続状態にする制御、例えば電磁接触器38のコイルへ通電を解消する制御を実行して電磁接触器38を接続状態(ON)に切り替える(S126)。その結果、制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続が復帰する(S128)。
制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続が復帰された後、無線通信リモコン16のリモコン電源スイッチ50がOFFされた場合(S130のYes)、無線通信リモコン16のリモコン電源表示灯54aが消灯する(S132)。すなわち、第2無線通信装置46は、リモコン電源48からの電力の供給が遮断され、制御盤12の第1無線通信装置18に対する通信を終了する。そして、乗り場のホールメンテナンスボックス30等に設置されている点検スイッチが点検運転モード「無効」に切り替えられた場合に(S134のYes)、点検運転モードを終了し(S136)、一連の処理を終了する。
S104において、無線通信リモコン16のリモコン電源スイッチ50がONされていない場合(S104のNo)、S134の処理に移行し以降の処理を継続する。
また、S110において、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常でない場合(S110のNo)、つまり、無線通信判定部42の判定が否定の場合、第2無線通信装置46は無線通信リモコン16の無線通信確認表示灯54bを消灯するとともに消灯状態を維持する(S138)。なお、通信異常を明示するために、第2無線通信装置46は無線通信確認表示灯54bを例えば赤色で点滅させてもよい。第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常でない場合に、制御電源遮断スイッチ52が「CUT」に切り替えられた場合(S140のYes)、第2無線通信装置46は、制御電源遮断スイッチ52の操作を受け付けない(S142)。つまり、第2無線通信装置46による切替信号の送信の保留や制御部40による切替制御の保留を実施する。その結果、制御部40は仮に第1無線通信装置18が何らかの信号を受信した場合でも切替制御は実行せず、電磁接触器38の現状の状態を維持する。つまり、電磁接触器38が接続状態であれば接続状態を維持する。その結果、無線通信リモコン16により電磁接触器38の遠隔操作が行われている場合でも、作業者14の意図しない切り替えが発生したり、乗りかご22が急に停止したりする等の誤動作を回避することができる。そして、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に戻された場合(S144のYes)、S110に移行して、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、無線通信の正常性が回復した場合には(S110のYes)、S112以降の処理を実行する。また、正常性が回復しない場合は(S110のNo)、S138に移行して以降の処理を繰り返す。なお、S144において、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に戻されない場合(S144のNo)S142に戻り、制御電源遮断スイッチ52の操作受付拒否を継続する。つまり、第2無線通信装置46による切替信号の送信の保留や制御部40による切替制御の保留を継続する。
S140において、制御電源遮断スイッチ52が「CUT」に切り替えられない場合で(S140のNo)、リモコン電源スイッチ50がOFFされた場合(S146のYes)、S132に移行し、無線通信リモコン16のリモコン電源表示灯54aが消灯し、以降の処理を実行する。また、S146において、リモコン電源スイッチ50がOFFされない場合(S146のNo)、作業者14が遠隔操作の継続を要求していると見なし、S110に移行して第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を実行する。
S114において、制御電源遮断スイッチ52が「CUT」に切り替えられない場合(S114のNo)、S110に戻り、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を実行する。
また、S120において、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常でない場合(S120のNo)、つまり、無線通信判定部42の判定が否定の場合、第2無線通信装置46は無線通信リモコン16の無線通信確認表示灯54bを消灯するとともに消灯状態を維持する(S148)。第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信が正常でない場合に、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に切り替えられた場合(S150のYes)、第2無線通信装置46は、制御電源遮断スイッチ52の操作を受け付けない(S152)。つまり、第2無線通信装置46による切替信号の送信の保留や制御部40による切替制御の保留を実施する。その結果、制御部40は仮に第1無線通信装置18が何らかの信号を受信した場合でも切替制御は実行せず、電磁接触器38の現状の状態を維持する。つまり、電磁接触器38が遮断状態であれば遮断状態を維持する。その結果、無線通信リモコン16により電磁接触器38の遠隔操作が行われている場合でも、作業者14の意図しない切り替えが発生したり、乗りかご22が急に動き出したりするような誤動作を回避することができる。そして、制御電源遮断スイッチ52が「CUT」に戻された場合(S154のYes)、S120に移行して、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、無線通信の正常性が回復した場合には(S120のYes)、S122以降の処理を実行する。また、正常性が回復しない場合は(S120のNo)、S148に移行して以降の処理を繰り返す。なお、S154において、制御電源遮断スイッチ52が「CUT」に戻されない場合(S154のNo)、S152に戻り、制御電源遮断スイッチ52の操作受付拒否を継続する。つまり、第2無線通信装置46による切替信号の送信の保留や制御部40による切替制御の保留を継続する。
S150において、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に切り替えられない場合で(S150のNo)、リモコン電源スイッチ50がOFFされた場合(S156のYes)、S132に移行し、無線通信リモコン16のリモコン電源表示灯54aが消灯し、以降の処理を実行する。また、S156において、リモコン電源スイッチ50がOFFされない場合(S156のNo)、S120に移行して第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を実行する。
S124において、制御電源遮断スイッチ52が「ON」に切り替えられない場合(S124のNo)、S120に戻り、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を実行する。
S130において、無線通信リモコン16のリモコン電源スイッチ50がOFFされない場合(S130のNo)、作業者14が無線通信リモコン16の操作継続を要求していると見なし、S110に移行し、第2無線通信装置46と第1無線通信装置18との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を継続して行う。
また、S134において、乗り場のホールメンテナンスボックス30等に設置されている点検スイッチが点検運転モード「無効」に切り替えられない場合(S134のNo)、S104に移行し、それ以降の処理を継続して行う。
このように、実施形態1のエレベータ電源遠隔操作システム100によれば、無線通信リモコン16を用いて制御盤12を遠隔操作した場合でも動作保証がなされ、保守点検作業をよりスムーズに実行することができる。また、作業者14が携帯可能な可搬型の無線通信リモコン16を用いることにより、作業場所や作業位置に依存することなく、制御盤12内の制御回路電源34を制御回路36に対して遮断または接続することが可能になり、作業効率の向上に寄与できる。
なお、図2において、制御部40や無線通信判定部42を制御盤12側に設ける例を示したが、別の実施形態では、制御部40や無線通信判定部42を無線通信リモコン16側に設けてもよいし、制御盤12側と無線通信リモコン16側の両方に設けてもよい。制御部40を無線通信リモコン16側に設ける場合、無線通信判定部42が否定判定した場合、制御部40は、制御電源遮断スイッチ52の操作を受け付けず第2無線通信装置46から切替信号を送信させない。その結果、切替信号を受信できない第1無線通信装置18は、電磁接触器38を切替制御するための信号を出力せず、電磁接触器38の切替状態の現状維持が実現できる。無線通信リモコン16側で無線通信判定部42が無線通信の正常性の肯定判定を行った場合、第1無線通信装置18は受信した切替信号に基づき直接電磁接触器38の制御を行う。また、無線通信判定部42を無線通信リモコン16側に設ける場合、無線通信リモコン16側において無線通信の正常性の判定が行われ、無線通信判定部42が制御盤12側に設けた場合と同様な動作が実現できる。制御部40や無線通信判定部42を制御盤12側と無線通信リモコン16側の両方に設ける場合は、相互に確認処理が可能になり、より信頼性の高い制御が実現できる。なお、以下に示す各実施形態においても同様である。
<実施形態2>
図6には、実施形態2のエレベータ電源遠隔操作システム100の無線通信リモコン16と制御盤12の機能ブロック構成の一例を説明する模式図である。実施形態2は、制御盤12に制御電源監視部56が追加され、無線通信リモコン16に警報装置58が追加されている点以外は、図2に示す実施形態1のエレベータ電源遠隔操作システム100と基本的な構成は同じであり、同様な構成に関しては、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
制御盤12に含まれる制御電源監視部56は、電磁接触器38の下流側(制御回路36との接続側)と制御部40との間に介在する。そして、制御電源監視部56は、電磁接触器38の切替状態と制御電源遮断スイッチ52の切替状態を比較監視する。つまり、制御電源監視部56は、制御回路電源34と制御回路36とが接続状態であるか遮断状態であるかの信号と制御部40が第1無線通信装置18を介して取得した切替信号とを比較する。制御電源監視部56は比較の結果が不一致の場合、例えば、電磁接触器38や制御電源遮断スイッチ52の動作に不具合がある可能性があると見なして警報信号を出力し、制御部40および第1無線通信装置18を介して第2無線通信装置46に送信する。警報信号を受信した第2無線通信装置46は、警報信号を警報装置58に提供する。警報装置58は、例えば、音声出力部や警告灯を含み、作業者14に対して注意喚起を行う警報音の出力や警告灯の点灯を行い、作業者14に制御電源遮断スイッチ52や電磁接触器38等の点検を促すことができる。なお、警報音と警告灯はいずれか一方を備える構成でもよい。また、警報装置58は、比較結果が一致した場合に、表示灯群54に含まれる制御電源表示灯54cを電磁接触器38の切替状態にしたがい点灯制御する。例えば、制御回路電源34が制御回路36に対して接続状態の場合、制御電源表示灯54cを点灯させ、遮断状態の場合は、消灯させる。
制御電源監視部56による警報処理は、例えば実施形態1で説明した図5AのフローチャートのS112とS114との間およびS122とS124との間に、制御電源監視部56による比較処理を挿入する。そして、電磁接触器38の切替状態と制御電源遮断スイッチ52の切替状態との比較の結果が一致していた場合に、制御電源遮断スイッチ52の操作が有効となり、電磁接触器38の切替操作が有効になるようにする。一方、比較の結果が不一致の場合、制御電源監視部56の警報信号に基づき警報装置58を動作させて、警報音や警告灯による注意喚起を行う。
このように、実施形態2のエレベータ電源遠隔操作システム100によれば、無線通信判定部42による無線通信の正常性の判定に加え、電磁接触器38や制御電源遮断スイッチ52の不具合の有無の判定が可能になり、無線通信リモコン16を用いて制御盤12を遠隔操作した場合でも高精度の動作保証ができる。その結果、保守点検作業をよりスムーズに実行することができる。
<実施形態3>
図7は、実施形態3のエレベータ電源遠隔操作システム100の無線通信リモコン16の操作部の構成を説明する模式図である。実施形態3は、無線通信リモコン16に当該無線通信リモコン16の起動を許可するためにインターロック機構としてキースイッチ60が追加されている点以外は、図3に示す実施形態1の無線通信リモコン16と基本的な構成は同じであり、同様な構成に関しては、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
エレベータ10において、乗り場のホールメンテナンスボックス30や制御盤12等は、保守点検時に許可を受けた作業者14のみがアクセスできるように施錠されている。同様に乗りかご22内の操作盤においても保守点検時等に操作するスイッチ等は施錠されたボックス内に配置されている。したがって、保守点検の許可を受けた作業者14は、解錠するための専用キーを携帯している。そこで、無線通信リモコン16は、保守点検の許可を受けた作業者14のみが、制御回路電源34と制御回路36とに対する接続状態と遮断状態の遠隔切替操作ができるように、専用キーによって操作可能なキースイッチ60を備えている。作業者14は、無線通信リモコン16の使用に先立ち(例えば図5AのフローチャートのS102とS104の処理の間)、専用キーでキースイッチ60を「ON」に切り替える。その結果、リモコン電源スイッチ50の操作が有効になり、さらに制御電源遮断スイッチ52の操作が可能になる。また、無線通信リモコン16の使用を終了する際には(例えば図5BのフローチャートのS132とS134の処理の間)、キースイッチ60を「OFF」に切り替えてから専用キーを抜く。なお、キースイッチ60は、専用キーが「ON」の位置の場合、抜けないように構成することにより、専用キーの抜き忘れ等を防止することができる。
このように、実施形態3のエレベータ電源遠隔操作システム100によれば、実施形態1や実施形態2の効果に加え、無線通信リモコン16は保守点検の許可を受けた作業者14のみが使用可能な構成とすることができる。その結果、仮に無線通信リモコン16の置き忘れ等が発生した場合でも第三者(例えば、エレベータ10の利用者等)によって、制御回路電源34と制御回路36とに対する接続状態と遮断状態の切り替えが行われてしまうことを防止できる。
なお、専用キーは、ホールメンテナンスボックス30等の解錠用の鍵と共通でもよいし、無線通信リモコン16専用の鍵でもよい。また、インターロック機構は、キースイッチ60に限定されず、例えば、デジタル式またはアナログ式のパスコードの入力装置で構成してもよいし、生体認証等を用いて構成してもよく、同様の効果を得ることができる。
<実施形態4>
図8は、実施形態4のエレベータ電源遠隔操作システム100の無線通信リモコン16と制御盤12の機能ブロック構成の一例を説明する模式図である。実施形態4は、制御盤12の第1無線通信装置18と無線通信リモコン16の第2無線通信装置46とが無線通信を行う場合に、複数の周波数の中から使用環境に適した周波数を選択して利用できるようにしている点以外は、図2に示す実施形態1のエレベータ電源遠隔操作システム100と基本的な構成は同じであり、同様な構成に関しては、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第1無線通信装置18は、例えば、2.4GHz帯や5GHz帯等の複数の周波数領域で無線通信可能なように構成されている。一方、無線通信リモコン16は、通信周波数切替スイッチ62を備えている。通信周波数切替スイッチ62は、図9に示すように、例えばロータリースイッチで構成され、無線通信状態に応じて作業者14が切り替え可能である。第1無線通信装置18と第2無線通信装置46との無線通信状態は、外乱や無線通信リモコン16の利用場所等によって不安定になる場合がある。無線通信状態は、例えば、無線通信判定部42による無線通信の正常性の判定結果を示す無線通信確認表示灯54bの表示態様を参照させることにより作業者14に認識させることができる。そこで、作業者14は、無線通信確認表示灯54bが安定して点灯するように通信周波数切替スイッチ62を切り替えることにより現在の使用環境に最適な周波数を選択し第1無線通信装置18との無線通信を実現することができる。エレベータ電源遠隔操作システム100において、周波数は、2.4GHz帯や5GHz帯以外も利用可能で、図9では、通信周波数切替スイッチ62の切替チャンネル数が「3」である例を示している。
通信周波数切替スイッチ62による周波数の切り替えは、例えば実施形態1で説明した図5AのフローチャートのS110のNoや図5BのフローチャートのS120のNoの場合に実行され、周波数の変更は行われた後、再度、無線通信判定部42による無線通信の正常性の判定が実行される。なお、周波数の切り替えを実行してもなお、無線通信の正常性が否定される場合は、実施形態1で説明したように、S138以降の処理やS148以降の処理が実行され、制御電源遮断スイッチ52の操作の無効処理等が実行される。
このように、実施形態4のエレベータ電源遠隔操作システム100によれば、上述した実施形態1〜実施形態3において、無線通信の状態が不安定の場合でも利用可能な他の周波数を選択することにより、使用状況に応じた最適な無線通信が可能になる。その結果、無線通信状態の正常性が否定されたことより、作業が中断される可能性が軽減され、保守点検作業をよりスムーズに実行することができる。
なお、変形例においては、無線通信リモコン16の第2無線通信装置46は、無線通信判定部42の判定結果に基づき、無線通信の正常性が否定された場合には、自動的に現在使用している周波数から利用可能な他の周波数に切り替えるようにしてもよい。この場合、通信周波数切替スイッチ62を備える場合に比べ、よりスムーズに最適な周波数の選択が可能になり、保守点検作業をより効率的に実施することができる。
<実施形態5>
図10は、実施形態5のエレベータ電源遠隔操作システム100の全体構成の一例を説明する模式図である。上述した実施形態1〜実施形態4は、制御盤12と作業者14が保持する可搬型通信機(例えば無線通信リモコン16)とが専用の無線通信を利用して通信する例を示した。一方、実施形態5は、可搬型通信機として携帯電話端末64(例えば、アプリケーションのインストールが可能なスマートフォン等)を用いている。携帯電話端末64は、専用のアプリケーションの実行により少なくとも実施形態1等で説明した切替操作部(制御電源遮断スイッチ52)の機能と、第二の送受信部(第2無線通信装置46)の機能とを実現する。また、制御盤12は、電話回線68を介して携帯電話端末64から送信される、電磁接触器38に切替動作を実行させるための切替信号を少なくとも受信するように構成されている。なお、図10において、エレベータ10の構成は図1に示すエレベータ10の構成と同じであり、同様な構成には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図10に示すように、作業者14は、保守点検作業を行う場合、乗り場のホールメンテナンスボックス30等に設置されている点検スイッチを点検運転モード「有効」に切り替えた後、自身が保持する携帯電話端末64にインストールされた専用アプリケーションを立ち上げて操作を開始する。その結果、切替信号は、通信基地局66および電話回線68を経由してエレベータ10が設置されている建物等に設置された遠隔監視サーバ70に送信される。遠隔監視サーバ70と制御盤12内の制御部72とは例えば有線で接続されている。したがって、携帯電話端末64と制御盤12(制御部72)とは、電話回線68を介して相互通信が可能になる。その結果、携帯電話端末64により制御盤12内の制御回路36に対する制御回路電源34の接続と遮断の切り替えを遠隔操作することが可能になる。
図11は、実施形態5のエレベータ電源遠隔操作システム100の携帯電話端末64と制御盤12の機能ブロック構成の一例を説明する模式図である。
制御盤12は、制御回路電源34、制御回路36、電磁接触器38、制御部72、バッテリ電源44等を含む。
制御回路電源34、制御回路36、電磁接触器38、バッテリ電源44の構成は他の実施形態と同じであり、その詳細な説明は省略する。制御部72は、遠隔監視サーバ70から提供される、携帯電話端末64側から送信された切替信号に基づき電磁接触器38の接続状態または遮断状態を制御する。つまり、電磁接触器38のコイルに通電するか否かを切り替える。なお、制御部72は、電磁接触器38が接続状態のときには、制御回路電源34から電力供給を受けて動作し、電磁接触器38が遮断状態のときには、専用のバッテリ電源44から電力の供給を受けて動作する。
遠隔監視サーバ70は、他の実施形態における無線通信判定部42(第一の送受信部)と同等の機能を持つ。なお、遠隔監視サーバ70と電話回線68とは有線で接続されているため、実施形態5のエレベータ電源遠隔操作システム100の場合、通信の正常性の判定は、無線通信が行われる通信基地局66と携帯電話端末64との間の無線通信状態に依存する。したがって、通信の正常性は、携帯電話端末64側で判定することができるので、遠隔監視サーバ70では、他の実施形態における無線通信判定部42に相当する機能は省略してもよい。なお、遠隔監視サーバ70は、制御盤12内部に配置されてもよい。
携帯電話端末64は、携帯電話の基本構成として、通信部74、操作検知部76、表示部78等を含む。
通信部74は、電話機能やインターネットへの接続機能を実現するとともに、実施形態5において専用プリケーションにより生成される、電磁接触器38に切替動作を実行させるための切替信号を送信することができる。つまり、通信部74は第二の送受信部として機能することができる。
操作検知部76は、携帯電話端末64にインストールされたアプリケーションによって表示部78に表示されるスイッチ画像等に対応した位置が手指等で触れられたり押されたり動かされたりする操作内容を検出することで操作入力を実行する。
表示部78は、携帯電話端末64にインストールされたアプリケーションにしたがって各種画像を表示する。また、表示部78は、携帯電話端末64をエレベータ電源遠隔操作システム100の可搬型通信機として機能させるためにインストールされた専用のアプリケーションにしたがう画面を表示する。例えば、図12に示すように、無線通信確認表示灯78aや制御電源遮断スイッチ78b(切替操作部)を表示可能である。無線通信確認表示灯78aは、携帯電話端末64において、一般的に表示されている携帯電話端末64と通信基地局66との間の無線通信の正常性を示す信号に基づいて、点灯制御することができる。なお、アプリケーションにより実施形態1等の無線通信判定部42と同等の機能を実現して、遠隔監視サーバ70と制御部72との通信の正常性を含めた無線通信の正常性を判定して、無線通信確認表示灯78aで表示するようにしてもよい。
制御電源遮断スイッチ78bは、実施形態1等で説明した制御電源遮断スイッチ52に相当する仮想のスイッチであり、例えばスライドスイッチとすることができる。図12の左図は、電磁接触器38の接続状態(ON)、つまり、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に接続されている場合の制御電源遮断スイッチ78bの表示例(ON)である。また、図12の右図は、制御電源遮断スイッチ78bを上方にスライドするように表示部78上で指を移動させた場合の表示例である。この場合、電磁接触器38の遮断状態(CUT)、つまり、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に遮断されている場合の表示例である。制御電源遮断スイッチ78bの操作状態は操作検知部76によって検出され、操作内容に対応する切替信号が通信部74によって送信される。
表示部78上には、エレベータ電源遠隔操作システム100における各種表示が行われる場合に、その表示内容の説明メッセージや操作確認を行う確認メッセージ等を表示することができる。例えば、無線通信確認表示灯78aを点灯させる場合には、表示中の画像が「無線通信確認表示灯」であることを示す説明メッセージを表示するとともに、「無線通信状態は良好です。遠隔操作可能です。」等の説明メッセージを表示することができる。また、無線通信確認表示灯78aを消灯させる場合には、「無線通信状態が不安定です。遠隔操作はできません。」等を表示することができる。
また、制御電源遮断スイッチ78bに対しては、図12の左図に示すように、例えば、表示中のスイッチ画像が制御電源遮断スイッチ78bであることを示すように「制御電源遮断スイッチ」等の説明メッセージを表示してもよい。この場合、制御電源遮断スイッチ78bの操作状態が「ON」であることを明示することができる。また、制御電源遮断スイッチ78bを上方にスライドさせるように操作することにより、図12の右図に示すように、「CUT」が表示され、制御電源遮断スイッチ78bの操作状態が「CUT」であることを明示することができる。
また、図12の右図に示すように、制御盤12側の状態を示す説明メッセージを表示してもよい。この場合、制御電源遮断スイッチ78bの近傍に「制御回路電源」と表示されることにより、制御電源遮断スイッチ78bが操作された結果、制御回路電源34が「CUT」の状態、つまり、電磁接触器38が遮断状態であり、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に遮断されていることが明示できる。また、制御電源遮断スイッチ78bを下方にスライドさせるように操作することにより、図12の左図に示すように、「ON」が表示され、制御回路電源34が「ON」の状態、つまり、電磁接触器38が接続状態であり、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に接続されていることが明示できる。
また、携帯電話端末64にインストールされる専用のアプリケーションは、制御電源遮断スイッチ78b等の操作を行う場合の操作確認を行うモジュールを実現してもよい。例えば、図12の左図に示すように、「ON」状態の制御電源遮断スイッチ78bが表示されている状態で、制御電源遮断スイッチ78bを上方にスライドさせるような操作が行われた場合、表示部78上に例えば、「制御回路電源を遮断しますか?」等の操作意思確認メッセージを表示する。また、「操作意思確認スイッチ画像」を操作意志表示メッセージの近傍に表示する。そして、操作意思確認スイッチ画像の操作(例えば、タッチ操作)が行われた場合に限り、操作意思確認が成立したと見なし、制御電源遮断スイッチ78bを有効にして切替信号を出力するようにする。同様に、図12の右図に示すように、「CUT」状態の制御電源遮断スイッチ78bが表示されている状態で、制御電源遮断スイッチ78bを下方にスライドさせるような操作が行われた場合、表示部78上に例えば、「制御回路電源を接続しますか?」等の操作意思確認メッセージとともに、「操作意思確認スイッチ画像」を表示する。なお、操作意思確認メッセージや操作意思確認スイッチ画像が表示されている場合には、制御電源遮断スイッチ78bの画像を、例えばスライド操作前の状態で表示するとともに半透明で表示して、操作待ち状態であることを示すようにしてもよい。
このように、「操作意思確認スイッチ画像」を表示して、制御電源遮断スイッチ78bの画像の操作を一時的に保留することにより、図3等で実体の制御電源遮断スイッチ52を操作する場合の二段階操作と同様なインターロック機能が実現され、誤操作が防止され、安全性の向上に寄与することができる。
上述のように構成される実施形態5のエレベータ電源遠隔操作システム100の動作例を図13A、図13Bのフローチャートを用いて説明する。なお、図13Aは動作の前半部分のフローチャートであり、図13Bは動作の後半部分のフローチャートである。また、図13A、図13Bは、エレベータ10が正常運転している状態、つまり、電磁接触器38が接続状態であり、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に接続されて、乗りかご22が通常運行している状態から保守点検を行うために電磁接触器38を遮断状態に切り替える例を示す。また、その後電磁接触器38を接続状態に切り替えて、制御回路電源34と制御回路36とが電気的に接続されて通常運転可能状態に復帰させる例を示す。
まず、保守点検に先立ち、作業者14により乗り場のホールメンテナンスボックス30等に設置されている点検スイッチを点検運転モード「有効」に切り替え(S200のYes)、点検運転モードを開始する(S202)。なお、点検スイッチが点検運転モード「有効」に切り替えられない場合(S200のNo)は、図13A、図13Bのフローは処理されない。なお、点検運転モードが開始されていない場合、制御盤12側は、携帯電話端末64の操作を受け付けないようにすることで、誤操作を防止することができる。
点検運転モードが開始されている状態で、携帯電話端末64の専用アプリケーション(アプリ)を起動したか否かが確認され、起動している場合(S204のYes)、例えば、図12の左図に示されるような画面が表示されている場合、携帯電話端末64(通信部74)と制御盤12側との通信が開始される(S206)。そして、携帯電話端末64は、通信基地局66との間の無線通信の正常性を判定する(S208)。例えば、携帯電話端末64が通常検出している電波レベルに基づき、エレベータ電源遠隔操作システム100の可搬型通信機として機能する場合の無線通信の正常性を判定してもよい。携帯電話端末64の通信部74が通信基地局66との無線通信が正常に行われていると判定された場合(S208のYes)、携帯電話端末64の表示部78上に表示されている無線通信確認表示灯78aを例えば、緑色で点灯させる(S210)。
携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常に行われている状態で、制御電源遮断スイッチ78bの画像が「CUT」に切り替えられた場合(S212のYes)、表示部78に操作の確認メッセージを表示する(S214)。つまり、図12の左図に示すような制御電源遮断スイッチ78bの画像を上方にスライドさせるような操作が行われた場合、表示部78に操作意思確認メッセージおよび操作意思確認スイッチ画像を表示する。操作意思確認メッセージとしては、「制御回路電源を遮断しますか?」等が表示される。そして、作業者14が、操作意思確認スイッチ画像を、例えばタッチ操作して、メッセージに同意した場合(S216のYes)、制御電源遮断スイッチ78bの操作が有効になり、通信部74は、遮断を示す切替信号を遠隔監視サーバ70に向けて送信する。そして、遠隔監視サーバ70が切替信号を受信すると制御部72は電磁接触器38を遮断状態にする制御、例えば電磁接触器38のコイルへ通電する制御を実行し電磁接触器38を遮断状態(OFF、CUT)に切り替える(S218)。その結果、制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続は遮断される(S220)。つまり、エレベータ10は保守点検作業が可能な電源遮断状態となり、作業者14は、制御盤12内の回路の点検や測定、各部のネジの増し締め等の作業を安全に実施することができる。
携帯電話端末64の操作によって、制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続が遮断されている場合、携帯電話端末64は継続的に通信部74と通信基地局66との無線通信の正常性の判定を行っている。通信部74と通信基地局66との間で無線通信が正常に行われている場合(S222のYes)、携帯電話端末64の無線通信確認表示灯78aが点灯する。すなわち、例えば、緑色での点灯を継続する(S224)。
携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常に行われている状態で、制御電源遮断スイッチ78bの画像が「ON」に切り替えられた場合(S226のYes)、表示部78に操作の確認メッセージを表示する(S228)。つまり、図12の右図に示すような制御電源遮断スイッチ78bの画像を下方にスライドさせるような操作が行われた場合、表示部78に操作意思確認メッセージおよび操作意思確認スイッチ画像を表示する。操作意思確認メッセージとしては、「制御回路電源を接続しますか?」等が表示される。そして、作業者14が、操作意思確認スイッチ画像を、例えばタッチ操作して、メッセージに同意した場合(S230のYes)、通信部74は、接続を示す切替信号を遠隔監視サーバ70に向けて送信する。そして、遠隔監視サーバ70が切替信号を受信すると制御部72は電磁接触器38を接続状態にする制御、例えば電磁接触器38のコイルへ通電を解消する制御を実行し電磁接触器38を接続状態(ON)に切り替える(S232)。その結果、制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続が復帰する(S234)。
制御回路電源34と制御回路36との電気的な接続が復帰された後、携帯電話端末64の専用アプリケーションが終了された場合(S236のYes)、制御盤12に対する遠隔操作を終了する。そして、乗り場のホールメンテナンスボックス30等に設置されている点検スイッチが点検運転モード「無効」に切り替えられた場合(S238のYes)、点検運転モードを終了し(S240)、一連の処理を終了する。
S204において、携帯電話端末64の専用アプリケーションが起動されていない場合(S204のNo)、S238の処理に移行し以降の処理を継続する。
また、S208において、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常でない場合(S208のNo)、つまり、携帯電話端末64の電波状態が不安定な場合、携帯電話端末64は表示部78に表示している無線通信確認表示灯78aを消灯するとともに消灯状態を維持する(S242)。なお、通信異常を明示するために、無線通信確認表示灯78aを例えば赤色で点滅させてもよい。携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常でない場合に、制御電源遮断スイッチ78bが「CUT」に切り替えられる操作が行われた場合(S244のYes)、表示部78に通信状態を示すメッセージを表示する(S246)。つまり、図12の左図に示すような制御電源遮断スイッチ78bの画像を上方にスライドさせるような操作が行われた場合、表示部78に、「通信状態が不安定なため操作できません。」等が表示される。つまり、通信部74は、切替信号の送信を行わない。その結果、制御部72は仮に遠隔監視サーバ70が何らかの信号を受信した場合でも切替制御は実行せず、電磁接触器38の現状の状態を維持する。つまり、電磁接触器38が接続状態であれば接続状態を維持する。その結果、携帯電話端末64により電磁接触器38の遠隔操作が行われている場合でも、作業者14の意図しない切り替えが発生したり、乗りかご22が急に停止したりする等の誤動作を回避することができる。この間に、制御電源遮断スイッチ78bの画面を「ON」に戻すような操作が行われた場合(S248のYes)、S208に移行して、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、無線通信の正常性が回復した場合には(S208のYes)、S210以降の処理を実行する。また、正常性が回復しない場合は(S208のNo)、S242に移行して以降の処理を繰り返す。なお、S248において、制御電源遮断スイッチ78bが「ON」に戻されない場合は(S248のNo)、S246に戻り、通信状態を示すメッセージの表示を継続する。つまり、通信部74による切替信号の送信の保留や制御部72による切替制御の保留を継続する。
S244において、制御電源遮断スイッチ78bを「CUT」に切り替えるような操作が行われない場合で(S244のNo)、携帯電話端末64のアプリケーションが終了された場合(S250のYes)、S238に移行して以降の処理を実行する。また、S250において、携帯電話端末64のアプリケーションが終了されない場合(S250のNo)、作業者14が遠隔操作の継続を要求していると見なし、S208に移行して携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を行い、以降の処理を実行する。
S212において、制御電源遮断スイッチ78bの画像を「CUT」に切り替えるような操作が行われない場合(S212のNo)、S208に戻り、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を実行する。
S216において、作業者14が、操作意思確認スイッチ画像を例えばタッチ操作せず、メッセージに同意しない場合(S216のNo)、S212に戻り、以降の処理を実行する。
また、S222において、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常でない場合(S222のNo)、つまり、携帯電話端末64の電波状態が不安定な場合、携帯電話端末64は表示部78に表示している無線通信確認表示灯78aを消灯するとともに消灯状態を維持する(S252)。なお、通信異常を明示するために、無線通信確認表示灯78aを例えば赤色で点滅させてもよい。携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信が正常でない場合に、制御電源遮断スイッチ78bが「ON」に切り替えられるような操作が行われた場合(S254のYes)、表示部78に通信状態を示すメッセージを表示する(S256)。つまり、図12の右図に示すような制御電源遮断スイッチ78bの画像を下方にスライドさせるような操作が行われた場合、表示部78に、「通信状態が不安定なため操作できません。」等が表示される。つまり、通信部74は、切替信号の送信を行わない。その結果、制御部72は仮に遠隔監視サーバ70が何らかの信号を受信した場合でも切替制御は実行せず、電磁接触器38の現状の状態を維持する。つまり、電磁接触器38が遮断状態であれば遮断状態を維持する。その結果、携帯電話端末64により電磁接触器38の遠隔操作が行われている場合でも、作業者14の意図しない切り替えが発生したり、乗りかご22が急に動き出したりする等の誤動作を回避することができる。この間に、制御電源遮断スイッチ78bの画面を「CUT」に戻すような操作が行われた場合(S258のYes)、S222に移行して、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を繰り返し実行する。なお、S258において、制御電源遮断スイッチ78bが「CUT」に戻されない場合は(S258のNo)、S256に戻り、通信状態を示すメッセージの表示を継続する。つまり、通信部74による切替信号の送信の保留や制御部72による切替制御の保留を継続する。
S254において、制御電源遮断スイッチ78bを「ON」に切り替えるような操作が行われない場合で(S254のNo)、携帯電話端末64のアプリケーションが終了された場合(S260のYes)、S238に移行して以降の処理を実行する。また、S260において、携帯電話端末64のアプリケーションが終了されない場合(S260のNo)、作業者14が遠隔操作の継続を希望していると見なし、S222に移行して携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を実行する。
S226において、制御電源遮断スイッチ78bの画像を「ON」に切り替えるような操作が行われない場合(S226のNo)、S222に戻り、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を実行する。
S230において、作業者14が、操作意思確認スイッチ画像を例えばタッチ操作せず、メッセージに同意しない場合(S230のNo)、S226に戻り、以降の処理を実行する。
S236において、携帯電話端末64の専用アプリケーションが終了されない場合(S236のNo)、作業者14が遠隔操作の継続を要求していると見なし、S208に移行し、携帯電話端末64(通信部74)と通信基地局66との間で無線通信の正常性の判定処理を実行し直し、以降の処理を継続して行う。
また、S238において、乗り場のホールメンテナンスボックス30等に設置されている点検スイッチが点検運転モード「無効」に切り替えられない場合(S238のNo)、S204に移行し、それ以降の処理を継続して行う。
このように、実施形態5のエレベータ電源遠隔操作システム100によれば、作業者14が所持する携帯電話端末64を用いて制御盤12を遠隔操作した場合でも実施形態1の場合と同様に、動作保証がなされ、保守点検作業をよりスムーズに実行することができる。また、携帯電話端末64を用いることで、制御盤12側に無線通信装置を設けることなく、また、作業場所や作業位置に依存することなく、制御盤12内の制御回路電源34を制御回路36に対して遮断または接続することが可能になり、作業効率の向上に寄与できる。また、既存の電話回線や作業者14の所持する携帯電話端末64を流用することで、エレベータ電源遠隔操作システム100全体のコスト軽減に寄与できる。
図1、図10に示すエレベータ10は、昇降路20の上部に機械室を備えないタイプを示したが、昇降路20の上部に機械室を備えるタイプのエレベータ10にも各実施形態の構成は、適用可能であり、同様の効果を得ることができる。また、実施形態1から実施形態4の構成は、それぞれ単独でも複数を組み合わせても実現可能であり、それぞれの効果を得ることができる。また、各構成を実施形態5で説明した携帯電話端末64におけるアプリケーションで実現してもよく、同様な効果を得ることができる。なお、携帯電話端末64にインストールしたアプリケーションで上述した機能を実現する場合で、インターロック機能を適用する場合は、物理的な鍵ではなく、パスコードの入力や生体データの読み取り等で、インターロック機能を実現してもよく、同等の効果を得ることができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。