JP6551789B2 - 動物繊維成形物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は前記従来の問題を解決するため、応力-ひずみ特性等の機械的特性が高い動物繊維成形物及びその製造方法を提供する。
(1)塩素ガス又は塩素化合物を用いるクロイ法
(2)過マンガン酸カリウム−中性塩を用いるCSIRO法
(3)モノ過硫酸を用いるダイラン法
[化1]−S−S− → 2(−SO3H)
[化2]−S−S− → (−SCH2CH(NH2)COOH)2
[化3]−CONH− → −COOH + −NH2
(但し、前記式化1〜3において、−はポリペプチド基を示す。)
したがって、ウールのスケールを少なくとも一部除去すると、スルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基等の活性基が増え、繊維同士は化学結合しやすい状態となる。
JIS K7017:1999(ISO/FDIS 14125:1997)に準拠した測定方法により測定した。測定物は直径20mm、厚さ2mmの円盤状の圧縮成形物とした。
<可視光線透過率>
日立社製、分光光度計U−3900を使用して下記の条件で測定した。
・オプション 積分球
・測定波長 350〜750nm
・スキャンスピード 600nm/min
・サンプリング間隔 0.5nm
・スリット 2nm
・セル長 10.0nm
下記の実施例中、「透明性がある」としているのは、肉眼観察して実際に測定したサンプルとの対比で可視光線透過率50〜60%の範囲をいう。
この実施例では成形温度の依存性を調べた。メリノ種ウール(平均繊維直径20.5μm、平均繊維長90mm)を洗毛し乾燥し、カード機で開繊し、スライバーとし、コーマ機でトップとした。トップは紡績糸になる前の繊維束であり、繊維が一方向に配列されている。このトップを、塩素ガスを溶解した塩素化液中に通してクロイ加工した。塩素化液中の塩素濃度は、繊維質量に対し2.0質量%とした。塩素化液中へスラーバーを通す連続処理で行った。その後洗浄し、乾燥した。前記クロイ加工は、衣料用ウールの防縮加工として常用されている。前記クロイ加工したトップ0.80gを、事前乾燥なしで直径20mmの金型に繊維配列を乱さないように配列し、成形圧力:31MPa、温度:100〜190℃まで10℃間隔、保持時間なしで圧縮成形した。成形物の観察写真を図1に示す。図1から明らかなとおり、成形温度120〜180℃の範囲では均一相となり樹脂化していることが確認でき、130〜170℃の範囲では透明性があることが確認できた。各成形物の見掛け密度は1.27g/mm3であった。ウール繊維の密度は1.32g/mm3(文献値)であることから、各成形物の見掛け密度はウール繊維の密度の0.96倍であった。また、各成形物を破壊したところ、繊維状フィブリルが観察された。
試験力×変位=エネルギー
エネルギー(MJ)/面積(m2)=吸収エネルギー
この結果を次の表1と図2に示す。
この実験では成形物を真空乾燥したものとしないものの比較、及び繊維と粉砕物の比較をした。実施例1で作成したクロイ加工したウールのトップ及びその粉砕粉(繊維長70μm以下)を使用して、質量:0.80g、成形温度:150℃、成形圧力:31MPa、保持時間:1分又は5分とした以外は実施例1と同様に実験した。各成形物の見掛け密度は1.27g/mm3であった。各成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。各成形物を破壊したところ粉砕物以外は、繊維状フィブリルが観察された。なお、「乾燥」と記載してあるのは、成形後、3点曲げ試験法前に100℃で24時間真空乾燥したものである。それ以外は事前乾燥せずに測定した。この結果を次の表2と図3に示す。
この実施例ではウールのトップを使用してスケール除去方法を変え、紡績糸とし、織物生地にして実験した。織物生地はタテとヨコの2方向に繊維が配列している。ウール織物生地は単位面積当たりの質量250g/m2であった。スケール除去方法は次のとおりである。
(1)A法
次亜塩素酸ナトリウムと過マンガン酸カリウムを混合し、塩素を発生させ、その液中にウールのトップを通過させた。具体的条件は、繊維質量に対し次亜塩素酸ナトリウム3.2質量%、過マンガン酸カリウム3質量%の濃度を使用し、連続処理を実施した。この方法はウールの防縮加工で常用されている。
(2)A法+酵素処理
A法で処理したトップを紡績糸とし、これを織物とした後、プロテアーゼ系酵素を含む水溶液で処理し、スケール表面の低分子量のタンパク質を溶解除去した。酵素はプロテアーゼNLを使用し、繊維質量に対し1.0質量%の処理濃度とした。この方法もウール織物生地の防縮加工で常用されている。
(3)B法
モノ過硫酸塩とジクロロイソシアヌル酸塩の混合液中にウールのトップを通過させた。具体的条件は、繊維質量に対しモノ過硫酸6.6質量%、ジクロロイソシアヌル酸塩2.3質量%の濃度を使用し、連続処理を実施した。この方法もウールの防縮加工で常用されている。
(4)B法+酵素処理
B法で処理したトップを紡績糸とし、これを織物とした後、プロテアーゼ系酵素を含む水溶液で処理し、スケール表面の低分子量のタンパク質を溶解除去した。酵素にはプロテアーゼNLを使用し、繊維質量に対し1.0質量%の処理濃度とした。この方法もウール織物生地の防縮加工で常用されている。
この実施例では、実施例3のB法の織物生地を使用して、再度成形温度を検討した。下記の温度範囲で、質量:0.80g、成形圧力:31MPa、保持時間:なしとした以外は実施例3と同様に実験した。各成形物の見掛け密度は1.27g/mm3であった。各成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。各成形物を破壊したところ、繊維状フィブリルが観察された。この結果を次の表4と図5に示す。
この実施例では、実施例3のB法のトップと織物生地とトップの繊維の粉砕物(70μm以下)を使用して、質量:0.80g、成形温度:150℃、成形圧力:31MPa、保持時間:なし、成形後の乾燥なしとした以外は実施例3と同様に実験した。各成形物の見掛け密度は1.27g/mm3であった。各成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。各成形物を破壊したところ、粉砕物以外は繊維状フィブリルが観察された。この結果を次の表5と図6に示す。
この実施例では実施例3で用いた各織物生地を反毛(はんもう:再生毛のこと)して実験した。反毛はフードプロセッサー装置を用いて繊維長70μm以下の繊維にしたもので、繊維方向は揃っていない繊維群である。毛織物や毛糸の屑等を反毛装置で毛の状態に戻したものが使えるかを調べた。この反毛を質量:0.80g、成形温度:150℃、成形圧力:31MPa、保持時間:なしとした以外は実施例1と同様に実験した。各成形物の見掛け密度は1.27g/mm3であった。各成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。各成形物を破壊したところ、繊維状フィブリルが観察された。この結果を次の表6と図7に示す。
この実施例では実施例3のA法でスケールを除去した防縮ウール50質量%と、ポリエチレンテレフタレート(PET)50質量%の混紡紡績糸を使用した織物生地を、質量:0.80g、成形温度:180〜220℃、成形圧力:93MPa、保持時間:なしとした以外は実施例1と同様に実験した。各成形物の見掛け密度は1.30g/mm3であった。各成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。各成形物を破壊したところ、繊維状フィブリルが観察された。この結果を次の表7と図8に示す。
この実施例ではカシミヤ繊維を圧縮成形した。カシミヤ繊維をホットプレスを使用して、質量:0.80g、成形温度:200℃、成形圧力:93MPa、保持時間:なしとした以外は実施例1と同様に実験した。成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。この結果を次の表8と図9に示す。
この実施例では水鳥の羽根と鶏の羽根を用いて圧縮成形した。
(1)水鳥の羽根
水鳥の羽根をボールミルで300rpm、1分間、20回粉砕し、篩を3回かけて75μm未満の粉末を採取した。
(2)鶏の羽根
鶏の羽根を煮沸消毒し、ボールミルで300rpm、1分間、20回粉砕し、篩を3回かけて106μm未満の粉末を採取した。
以上のようにして得られた羽根の粉末をホットプレスを使用して、質量:0.80g、成形温度:190℃、成形圧力:31.2MPa、保持時間:なしとした以外は実施例1と同様に実験した。各成形物の見掛け密度は1.272g/mm3であった。各成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。この結果を次の表9と図10に示す。
この実施例では水鳥の羽毛を用いて圧縮成形した。
(1)ミキサー粉砕処理
水鳥の羽毛をジュースを作る際のミキサーで粉砕処理した。ボールミルに比較するとマイルドな粉砕である。
(2)羽軸除去品
ミキサー粉砕処理から羽軸を除去した。
(3)実施例9と同様のボールミル20回処理品
(4)実施例9と同様のボールミル10回処理品
以上のようにして得られたサンプルをホットプレスを使用して、質量:0.80g、成形温度:190℃、成形圧力:62.4MPa、保持時間:なしとした以外は実施例1と同様に実験した。各成形物の見掛け密度は1.308g/mm3であった。各成形物は均一相で透明性があり、樹脂化していた。この結果を次の表10と図11に示す。
Claims (7)
- 動物繊維の成形物であり、
前記成形物の比重は、前記動物繊維の比重の0.9〜1倍の範囲であり、
前記成形物は、動物繊維が少なくとも一方向に配列されて圧縮成形されており、
前記成形物は、添加物を含まない状態で透明性があり、かつ見掛け上均一相であり、破壊すると繊維状フィブリルとなることを特徴とする動物繊維成形物。 - 前記動物繊維は、獣毛繊維、シルク、スパイダーシルク、羽毛、及びこれらの再生繊維から選ばれる少なくとも一つの繊維である請求項1に記載の動物繊維成形物。
- 前記動物繊維は獣毛繊維であり、少なくとも一部のスケールが除去された状態である請求項1又は2に記載の動物繊維成形物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の動物繊維成形物の製造方法であって、
動物繊維の繊維群、繊維束、繊維シート、不織布、糸、紐、織物、編物及び多軸繊維シートから選ばれる少なくとも一つの繊維集合体とし、
前記繊維集合体を少なくとも一方向に配列して圧縮成形することを特徴とする動物繊維成形物の製造方法。 - 前記圧縮成形は、成形温度120〜180℃である請求項4に記載の動物繊維成形物の製造方法。
- 前記圧縮成形は、成形圧力1〜100MPaである請求項4又は5に記載の動物繊維成形物の製造方法。
- 前記動物繊維は獣毛繊維であり、少なくとも一部のスケールを除去した後、酵素処理する請求項4〜6のいずれかに記載の動物繊維成形物の製造方法。
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