JP6550339B2 - 新規の核酸分子 - Google Patents

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Description

本発明は、中でも、新規の核酸分子、それらを含むベクター、真核宿主細胞、及び前記ベクターで形質転換された宿主細胞株、並びにタンパク質生産、特に非天然アミノ酸を含有するタンパク質の生産におけるそれらの使用に関する。
古細菌(archaebacteria)(メチルアミンを異化するメタン生成古細菌)のサブセットにおいて自然に変化した、1つの直交性(orthogonal)RS/tRNAペアが、アミノ酸ピロリシンに対する特異性を有することが認められる。ピロリシンは、21番目のアミノアシル−tRNAシンテターゼを用いるが、これは、自然に変化して他の全てのアミノ酸及びtRNAに対して直交性になった。
ピロリシンは、天然のアミノ酸で、アンバーコドンにより真正に指定される唯一のアミノ酸である。Blight et al.,2004は、PylRS及びtRNApylが、大腸菌(E.coli)のアンバーコドンにピロリシンを組み込むことができることを証明した。彼らは、wtPyLRSが、天然に乱交雑性であり、リシンの類似体を組み込み得ることも明らかにした。
Yokoyama et al(欧州特許第1911840号明細書)は、PylRS/tRNA系が、真核細胞において直交性であることを立証し、細菌細胞のアンバーコドンによってコード化された標的タンパク質への複数のnnAAの組み込みを示した。これらの著者は、アミノ酸結合ポケットを形成し、かつ、他の規定アミノ酸に対してピロリシンを選択する上で機能する、pylRSの重要なアミノ酸も明らかにした。この部位での突然変異によって、tRNApylを認識し、AzZ−lysでアミノアシル化することができる突然変異体が作製された(Yanagisawa 2008)。
この直交性は、細菌及び真核細胞まで拡張する。
PylRSは、天然に進化してリシンを排除した、天然に乱交雑性のシンテターゼであるが、アジド、アルキン及びアルケンなどのリシン類似体を突然変異なしで組み込み得る(Yanagisawa et al,2008;Neumann et al.2008;Mukai et al.,2008;Nguyen et al.,2009)。この特異性の基準は、pylRS結合ポケットのアミノ酸残基と、シンテターゼの活性部位におけるアミノ酸を安定化し、かつ正しく配置するピロリシンのピロール環との疎水性相互作用に依存する(Kavran et al.,2007)。このRS/tRNAペアは、細菌、酵母及び哺乳動物細胞中に、一過性トランスフェクションによって導入されており、標的タンパク質へのいくつかの非天然アミノ酸の組み込みに有効であることがわかっている。
例えば、欧州特許第1911840号明細書は、大腸菌(E.coli)細胞における標的タンパク質へのN−ε−boc−リシンの組み込みを立証している。
真菌細胞におけるtRNAの発現は、RNAポリメラーゼIII(「PolIII」)により実施され、これは、2つの部分から成る構造を含む2型遺伝子内プロモータを必要とし、ここには、Aボックス及びBボックスとして知られる2つの短い保存配列が、可変配列によって隔てられている。哺乳動物のtRNA遺伝子とは対照的に、原核生物のtRNA遺伝子は、遺伝子外プロモータエレメントによって調節される。その結果、多くの原核生物のtRNAは、哺乳動物細胞においてプロモータとして機能するAボックス及びBボックスエレメントを含有していない。このことは、メタノサルシナ属(Methanosarcina)由来のtRNApylにもあてはまる。
tRNApylコード配列をPylRSと一緒に哺乳動物細胞に導入しても、リポータ構築物のアンバー抑制は起こらなかったが、これは、保存A−及びBボックスエレメントが欠失しているためであると推測される(Mukai,et al.,2008)。
Hancock et al(Hancock et al,2010.JACS)は、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)由来のtRNApyl内の機能性Aボックス及びBボックスを再構築しようとして、酵母における突然変異tRNA遺伝子の機能性アンバー抑制を立証することに失敗したが、これは、tRNA配列にA−及びBボックスエレメントを導入するあらゆる修飾が、tRNAアーキテクチャを改変し、その機能全体を妨害することを示唆している。Mm tRNApylの配列解析から、Bボックスは、共通Bボックスに対し有意な相同性を有するが、Aボックスは、有意なダイバージェンスを呈示することが明らかである。
哺乳動物細胞においてサプレッサーtRNAを発現させるための最適条件をみいだす試みは、遺伝病の遺伝子治療のためのナンセンスサプレッサーtRNAの作製に関連して、1982年(Hudziak et al,1982,Laski et al,1982)にさかのぼり、その際、ある停止コドンが、ある主要タンパク質の転写の早期終結を引き起こした。
細胞に導入されるDNAの量、tRNA遺伝子のコピー数、並びにその発現を駆動するプロモータエレメントが、例えば、細胞に毒性をもたらさずに効率的な活性を可能にするために、最適なtRNAレベルを達成するための重要な要素として特定された。
バイシストロニック構築物のプロセシングによるtRNAの発現が、真核細胞に存在することが判明している。酵母細胞において、tRNAarg−tRNAaspについてゲノムによりコード化された遺伝子ペアが記載されている(Schmidt et al.1980)。この遺伝子は、単一の前駆体RNAとして発現され、これは、転写後に修飾されて、in vivoで、及び卵母細胞抽出物中に、2つの成熟tRNAを生成する。この場合、これらのtRNA遺伝子は、CTTTGTTTCT(配列番号68)から成る短いスペーサ領域により隔てられている。この遺伝子配列(arrangement)は、通常酵母に発現しないtRNAを発現させるためにも用いられている(Francis et al 1990)。ここで、共通A−及びBボックスエレメントを含むが、酵母では転写されないヒトtRNAmet遺伝子を、tRNAargエレメントの下流に配置したとき、酵母細胞において発現させることに成功した。上記の著者は、2つのRNA遺伝子の距離が、転写効率に影響することを示している。遺伝子外tRNAの発現は、2つのtRNAが、酵母Arg−Asp tRNAペアの間に存在する短い10bpチミジンリッチスペーサによって隔てられた場合に達成された。tRNAmet遺伝子の発現はまた、このスペーサ長さが、介在配列から増加した(92bpまで)ときにも認められたが、その有効性は低かった(Francis et al.,1990)。別の例では、Straby(1988)は、通常転写的にサイレントなサプレッサーtRNAsup(tyr)を発現させるために、バイシストロニック酵母Arg−Asp tRNA遺伝子ペアを使用した。一構築物において、tRNAsupをtRNAasp遺伝子の代わりに用い、酵母Arg−Asp tRNAペアの間に存在する短い10bpチミジンリッチスペーサを保持したところ、効率的なtRNAsup発現を示した。
tRNAはさらに、U6プロモータ(Koukuntla et al.,2013 Mukai et al.2008)、T7RNAポリメラーゼプロモータ(Mukai et al.2008)、SNR52(Wang及びWang,2012)などの外部プロモータの下で、また、上流tRNA遺伝子により調節されるバイシストロニック構築物の1成分として(Hancock et al.,2010;Francis et al.,1990;Straby 1988;Schmidt et al.,1980;Mukai et al.2008);tRNAserなどの多量体として(Buvoli et al.,2000)も発現されている。
Mukai et al.(米国特許第8,168,407号明細書も参照)並びにHancock et al.により、様々な遺伝子外プロモータが、tRNApylの発現について調べられている。これらには、ヒトtRNA、例えば、バイシストロニック構築物としてのtRNAval又はtRNAargが含まれた。バイシストロニック系は、酵母細胞において機能性であった(Hancock et alを参照)が、Mukai et al.(2008)は、真核細胞において真核生物tRNA(tRNAval)遺伝子の下流にtRNApyl遺伝子を配置すると、最適に満たないtRNApylの発現が起こり、これは、発現レベルが、哺乳動物細胞における最適なアンバー抑制には低すぎたため、理想的ではなかったことを報告している。
さらに、Mukai et al.(2008)及びHancock et al.(2010)は、tRNApylの発現用のPolII依存性CMVプロモータ、さらにはファージT7ポリメラーゼプロモータ、また、核内低分子RNA U6の遺伝子のPolIII/3型プロモータを試験した。特に、上記著者は、tRNApylのコード配列の5’末端に連結したU6プロモータが、PylRS、nnAA及びアンバーコドン含有標的と一緒に真核細胞に導入したとき、アンバー抑制を引き起こす上でとりわけ効率的であったことを明らかにした。
snRNA遺伝子U6及びH1のプロモータは、哺乳動物細胞におけるRNA種の発現に広く用いられてきた。これらのプロモータは、遺伝子外プロモータとしてのその機能を考えれば、発現ツールとして特に有用である。さらに、上記プロモータは、それらのエレメントの下流に配置される遺伝子の極めて高度な発現を可能にする。
しかし、U6及びH1プロモータは、これらの構築物でトランスフェクトした細胞に有害な作用をもたらし、このプロモータの高い転写要求のために起こると考えられる細胞傷害性を引き起こすことがわかっている(Ehlert,et al.,2010)(Giering,et al.,2008)(Stegmeier,et al.,2005)。さらに、とりわけU6プロモータは、RNA産物の局在化に影響を与え、核内に多く見られる蓄積を引き起こすことも判明しているため、細胞質機構によるその使用に問題をもたらす(Paul et al.,2003)。
前述した遺伝子外プロモータの使用は、tRNApylの高レベルの発現をもたらしたが、発現したtRNAの大部分は、核分画内の誤った場所に局在化されるため、細胞質ゾル中のアミノアシル化には利用できないと思われる。効率的なアンバー抑制は認められたが、これは、核から逸脱したtRNAの比較的小さい部分によるものであった可能性がある。
よって、tRNAの優れた局在化と、転位機構へのその利用可能性を可能にするために、別のtRNAプロモータを作製することが望ましい。
また、前記tRNA構築物を安定して発現する細胞株における低レベルのタンパク質発現、及び細胞生存能の低下に寄与すると考えられる、U6及びH1プロモータエレメントなどの外部プロモータについて報告されている細胞傷害作用の発生を防ぐtRNAプロモータを作製することも望ましい。
RNAポリメラーゼIII(本明細書では「PolIII」と称することもある)転写機構は、真核細胞における小サイズの非タンパク質コードRNA(ncRNA)の生産に向けられる(Dieci et al.2013による論文)。
PolIII転写遺伝子は、このポリメラーゼにより選択的に認識される転写因子と結合し、これにより活性化される。これらの因子は、それぞれ対応した異なるプロモータアーキテクチャによって指定されるように、2、3の異なる組み合わせで作用する。これらは、主として3つのクラスに分類される:1型プロモータ(例えば、5S rRNAにより用いられるもの)は、遺伝子内エレメント(遺伝子のコード配列内に存在するプロモータ)を含み、Aボックス、Cボックス及び中間エレメント(IE)に細分される内部制御領域から構成される。これらのエレメントは、基礎転写因子TFIIIC及びTFIIIAにより結合されるため、転写に必要である。2型プロモータは、tRNA遺伝子により用いられ、Aボックス及びBボックスとして知られる保存エレメントから構成される遺伝子内プロモータを含む。これらは、転写因子TFIIICの結合部位であり、これが、次には、転写開始部位に関して位置−40まで延びる上流領域に開始因子TFIIIBを動員する。3型プロモータは、遺伝子外の、上流に位置するプロモータであり、遠位及び近位配列エレメントとTATAボックスから構成される。U6snRNA及びRNaseP(H1)RNAのプロモータは、このプロモータクラスのメンバーである。これらのプロモータは、転写因子SNAPc(PBP又はPTF)により独自に認識され、これが、次には、TFIIIBの特定の変異体を動員する。興味深いことに、PolIII/3型プロモータは、真核細胞における阻害性RNAの発現並びにA−及びBボックスエレメントを欠失したtRNAの発現のために改変されており、例えば、哺乳動物細胞のU6プロモータ(Mukai et al.2008)及び酵母で用いられるSNR52プロモータ(Wang及びWang,2012)がある。
いくつかのncRNA遺伝子の発現は、3型プロモータと同様に、遺伝子内プロモータ、例えば、tRNA遺伝子により用いられるAボックス及びBボックスと組み合わせて、転写領域の上流に位置するプロモータエレメントによって調節される。これらは、遺伝子外及び遺伝子内制御エレメントの両方が存在することから、ハイブリッドプロモータと考えることができ、「4型プロモータ」と呼ぶ。これらのプロモータによって調節される遺伝子としては、7SL(SRP)RNA遺伝子、ヴォールト(Vault)RNA遺伝子、及びエプスタイン・バール(Epstein Barr)ウイルスにコードされた低分子RNA(EBER)がある。
7SLRNAは、小胞体のルーメンへの分泌タンパク質の共翻訳挿入を媒介するシグナル認識粒子(SRP)のRNA成分である。そのプロモータエレメントは、中でも、Englert et al.,2004において特性決定されている。
VaultRNAは、高分子アセンブリ及び輸送に関与する大型の細胞質リボ核タンパク質粒子に含まれる低分子RNAである。そのプロモータエレメントは、中でも、Mossink et al.,2002において特性決定されている。
EBER遺伝子は、機能が不明の低分子RNAである。EBERは、哺乳動物細胞において効率的に発現されるエプスタイン・バール(Epstein Barr)ウイルスゲノムによりコード化され、その調節プロモータエレメントは、十分に特性決定されている(Howe及びShu,Cell 1989)。EBERは、2つの既知の変異体−EBER1及びEBER2を有し、EBER2の方が高レベルで発現される。
本発明者らは、真核細胞、特に哺乳動物細胞において、新規の改善されたプロモータ系の下、tRNApyl遺伝子の発現のための新規のDNA構築物を作製した。
tRNApyl遺伝子配列は、真核生物のAボックス及びBボックスに類似する2つの内部領域を有し、Bボックス様領域の方が、機能性Bボックスに酷似している。
Hancock et al(2010)及びMukai et al.(米国特許第8,168,407号明細書)において報告されているように、共通Aボックス及びBボックスを再構成する以前の試みは成功しなかったが、本発明者らは、驚くことに、機能性の遺伝子内プロモータを可能にすると共に、WTpylRSと組み合わせて効率的なアンバー抑制を媒介し得るtRNApylが得られるように、tRNApyl配列を改変することができることをみいだした。
このような新規のtRNApyl遺伝子を用いて、細胞へのnnAAの組み込みのために高度に活性で、しかも安定した細胞株を作出することができる。
また、本発明者らは、機能性遺伝子内プロモータエレメントを含有する新規の修飾されたtRNApyl遺伝子が、これらを、4型プロモータ下で発現した遺伝子の5’調節エレメントの下流に配置し、これによって、遺伝子外及び遺伝子内エレメントの両方を含有する機能性4型プロモータを再構成することにより、さらに改善し得ることもみいだした。
さらに、本発明者らは、驚くことに、tRNAglu遺伝子及び/又はtRNAasp遺伝子が、WT tRNApyl遺伝子の上流に配置されて、バイシストロニックメッセージを有効に形成するために、転写終結配列を欠失するように改変されると、WTtRNApyl遺伝子が、tRNAglu遺伝子及び/又はtRNAasp遺伝子の転写制御下で発現され得ることもみいだした。
本発明の新規tRNApyl遺伝子のタンデム反復配列を担持するDNA構築物は、アンバー抑制の増大をもたらすことが判明している。
本発明のDNA構築物(配列番号69〜71)を示す。 図1−1の続きである。 野生型メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)(配列番号3)の推定A及びBボックス領域を示す。 WT及び突然変異メタノサルシナ・マゼイ(M.mazei)及びメタノサルシナ・バーケリ(M.barkeri)tRNApyl遺伝子(それぞれ、配列番号72、3、73、及び74)間の配列アラインメントを示す。 アンバー抑制依存性GFP発現により立証されるように、tRNA突然変異体は、H1プロモータによって発現されると、機能を保持する。 遺伝子内polIIIプロモータを含む突然変異tRNApylの使用から呈示され、アンバー抑制依存性GFP発現の増大により立証される、機能性tRNA発現を示す。 tRNA突然変異体は、哺乳動物細胞において機能性であり、しかも直交性を保持する。 同じ構造物中の遺伝子の数の増加による遺伝子用量の増加によって、アンバー抑制依存性GFP発現の増大が起こる。 アンバー抑制依存性GFP発現により決定されるように、4型5’プロモータエレメントは、機能性Bボックスを含有するtRNAの発現を可能にする。 4型5’プロモータエレメント及びtRNA B突然変異体単独は、野生型tRNAより高いレベルのtRNA機能を可能にする。 同じ構造物中の遺伝子の数の増加による遺伝子用量の増加によって、アンバー抑制依存性GFP発現の増大が起こる。 上流tRNAglu及びtRNAasp遺伝子により駆動されるtRNApyl発現を示す。
配列表の簡単な説明:
配列番号1:tRNApylメタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)、WT
配列番号2:tRNApylメタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)、WT
配列番号3:tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、WT
配列番号4:tRNApylメタノコッコイデス・ブルトニイ(Methanococcoides burtonii)、WT
配列番号5:tRNApylデスルホバクテリウム・ハフニエンス(Desulfobacterium hafniense)、WT
配列番号6:WT及び突然変異体Aボックス及び/又はBボックス及びtRNApyl構築物に用いられる転写終結配列
配列番号7:tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A10G突然変異、tRNA−A1
配列番号8:tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A10G、A52C突然変異、tRNA−AB
配列番号9:tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A52C突然変異、tRNA−B
配列番号10:tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A10G、T14A、A52C突然変異、tRNA−A2B
配列番号11:tRNApylメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A10G、T14A突然変異、tRNA−A2
配列番号12:7SLプロモータ5’領域配列
配列番号13:7SL構築物で用いられるスペーサ
配列番号14:7SL tRNA−WT構築物
配列番号15:7SL tRNA−B構築物
配列番号16:7SL tRNA−A1構築物
配列番号17:7SL tRNA−AB構築物
配列番号18:7SL tRNA−A2B構築物
配列番号19:7SL、Vault、EBER構築物で用いられる転写終結配列
配列番号20:Vaultプロモータ5’領域配列
配列番号21:Vault構築物に用いられるスペーサ
配列番号22:Vault tRNA−WT構築物
配列番号23:Vault tRNA−B構築物
配列番号24:Vault tRNA−AB構築物
配列番号25:Vault tRNA−A2B構築物
配列番号26:EBER2プロモータ5’領域配列
配列番号27:EBER構築物に用いられるスペーサ
配列番号28:EBER2 tRNA−WT構築物
配列番号29:EBER2 tRNA−B構築物
配列番号30:EBER2 tRNA−A1構築物
配列番号31:EBER2 tRNA−AB構築物
配列番号32:EBER2 tRNA−A2B構築物
配列番号33:H1プロモータ配列
配列番号34:H1 tRNA−WT構築物
配列番号35:H1 tRNA−B構築物
配列番号36:H1 tRNA−A1構築物
配列番号37:H1 tRNA−A2構築物
配列番号38:H1 tRNA−A2B構築物
配列番号39:H1−tRNA構築物で用いられる転写終結配列
配列番号40:ハツカネズミ(M.Musculus)tRNAgluコード配列
配列番号41:上流及び下流領域を有するハツカネズミ(M.Musculus)tRNAgluコード配列
配列番号42:tRNAglu−tRNAply DNA構築物
配列番号43:3×tRNAglu−tRNApyl:バイシストロニック構築物の3反復配列を含むDNA構築物
配列番号44:tRNAglu−pyl構築物のリーダ配列
配列番号45:tRNAglu−pyl構築物に用いられる転写終結配列
配列番号46:tRNAglu−pyl構築物に用いられる転写終結配列
配列番号47:tRNAglu−pyl構築物に用いられるインタージーン(intergene)配列
配列番号48:ハツカネズミ(M.Musculus)tRNAaspコード配列
配列番号49:上流及び下流領域を有するハツカネズミ(M.Musculus)tRNAaspコード配列
配列番号50:tRNAasp−pyl DNA構築物
配列番号51:2×tRNAasp−pyl:バイシストロニック構築物の2反復配列を含むDNA構築物
配列番号52:tRNAasp−pyl構築物で用いられるリーダ配列
配列番号53:tRNAasp−pyl構築物で用いられる転写終結配列
配列番号54:tRNAasp−pyl構築物で用いられるインタージーン配列
配列番号55:ヒトtRNAgluコード配列
配列番号56:ヒトtRNAaspコード配列
配列番号57:7SLプロモータ変異体:7SL−1
配列番号58:7SLプロモータ変異体:7SL−2
配列番号59:7SLプロモータ変異体:SL28
配列番号60:7SLプロモータ変異体:7L63
配列番号61:7SLプロモータ変異体:7L23
配列番号62:7SLプロモータ変異体:7L7
配列番号63:EBERプロモータ変異体:EBER1
配列番号64:Vaultプロモータ変異体:Hvg3
配列番号65:Vaultプロモータ変異体:Hvg2
配列番号66:メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)pylRSアミノ酸配列
配列番号67:メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)pylRSヌクレオチド配列
配列番号68:短いスペーサ領域
配列番号69:図1に示すDNA構築物
配列番号70:図1に示すDNA構築物
配列番号71:図1に示すDNA構築物
配列番号72:図3に示すDNA配列
配列番号73:図3に示すDNA配列
配列番号74:図3に示すDNA配列
配列番号75:Vaultプロモータの近位配列エレメント
配列番号76:EBERプロモータのSP1結合部位
配列番号77:EBERプロモータのATF結合部位
本発明によれば、tRNApylコード配列と、真核生物発現系において、ナンセンス抑制(特にアンバー抑制)を支持する上で十分に、機能性tRNApylを発現させるように作用することができるRNAポリメラーゼIIIプロモータ配列とを含むDNA構築物が提供される。
好適には、本発明のtRNApylコード配列は、最後の3つのヌクレオチド、CCAを欠失しており、これらは、真核細胞において転写後に付加される。
好適には、本発明のDNA構築物は、tRNApylコード配列の下流にある転写終結配列を含む。好適には、転写終結配列は、転写の終結のためのシグナルとして機能するtRNAコード配列の3’側の4つ以上のチミジンヌクレオチドの区間(run)から構成される。
本発明の好ましい転写終結配列は、配列番号6、19、39、45、46及び53、特に配列番号6として特定される。
一実施形態では、本発明のDNA構築物は、tRNApyl遺伝子の2〜60の反復配列を含む。好ましくは、DNA構築物は、2〜30の反復配列、より好ましくは8つの反復配列を含む。
好適には、本発明のDNA構築物は、tRNApylコード配列と、機能性遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータとを含むtRNApyl遺伝子を含む。前記遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータは、2つの成分−Aボックス及びBボックスを含む。
好適には、本発明は、tRNApyl遺伝子が、遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータのAボックス及び/又はBボックス内の1つ又は2つのヌクレオチド位置に突然変異を含む、DNA構築物を提供する。
例えば、本発明は、tRNApyl遺伝子が、Bボックス内の1つ又は2つ(例えば、1つ)のヌクレオチド位置に突然変異を含む、DNA構築物を提供する。
本発明の一実施形態では、DNA構築物は、例えば、図1Dに示すように、遺伝子内PolIIIプロモータを含むtRNApyl遺伝子を含み、これは、真核生物発現系においてナンセンス抑制を支持する上で十分に、機能性tRNAPylを発現させるように作用することができる。
本発明の好ましい実施形態では、tRNApyl遺伝子が、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)(特に配列番号9若しくは10)由来の配列番号7、8、9、10及び11から選択される配列を有する、又は含むか、あるいは、配列番号7、8、9、10及び11(特に配列番号9若しくは10)に太字で示される突然変異が同等位置に実施されている別の細菌種に由来する相似tRNApyl遺伝子の配列を含む、DNA構築物が提供される。
同等位置の決定は、従来のアラインメントプログラムにより、例えば、BLASTNを用いて実施してよい。
本発明の特に好ましいDNA構築物は、配列番号9又は10のtRNApyl遺伝子と、tRNApylコード配列の下流の転写終結配列とを含み、該転写終結配列は、配列番号6である。
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明は、遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータを含むtRNApyl遺伝子の複数のコピーを含む、DNA構築物を提供する。好ましくは、DNA構築物は、遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータを含むtRNApyl遺伝子の2〜30コピー、より好ましくは8コピーを含む。
一実施形態では、本発明は、tRNApylコード配列が、RNAポリメラーゼIIIプロモータに作動可能に連結され、ここで前記プロモータは、tRNApylコード配列の5’側に配置されている、DNA構築物を提供する。
好適には、5’プロモータとtRNApylコード配列は、転写開始部位を含むスペーサ配列によって隔てられている。
好ましくは、スペーサ配列は、転写開始部位と、プロモータ配列の終了点からtRNAコード配列の開始点までの4〜6ヌクレオチドを含む。本発明で用いられる好ましいスペーサ配列は、配列番号13、21及び27として記載される。
好適には、DNA構築物は、遺伝子内プロモータエレメントと、tRNApylコード配列の5’側に配置されているRNAポリメラーゼIIIプロモータエレメントである5’プロモータエレメントとを、前記遺伝子内プロモータエレメントと前記5’プロモータエレメントとの組み合わせが、例えば、図1Cに示すハイブリッドプロモータを構成するように含む。
好適には、前記5’プロモータエレメントは、4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの5’エレメントである。従って、これは、典型的に、pol III/3型プロモータのクラスに典型的な上流プロモータエレメントを含み、例えば、これは、TATAボックス(例えば、U6又はH1プロモータに用いられているもの)を含む。好適には、前記遺伝子内プロモータエレメントは、polIII/2型プロモータに特有のエレメント、例えば、A−及びBボックス(例えば、真核細胞tRNAプロモータに用いられているもの)を含む。
「エレメント」が、単一のヌクレオチド配列に限定されず、2つ以上のヌクレオチド配列を含むと解釈され得ることは理解されよう。従って、例えば、A及びBボックスは、合わせて「遺伝子内プロモータエレメント」を表すことができる。A及びBボックスは、遺伝子内プロモータエレメントの個別の成分として考えることもできる。
好ましくは、4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの5’プロモータエレメントは、EBER RNA遺伝子プロモータの5’プロモータエレメント、7SL RNA遺伝子プロモータ、及びVault RNA遺伝子プロモータから選択され、特に、7SL RNA遺伝子プロモータである。
EBER RNA遺伝子プロモータは、例えば、EBER変異体EBER1又はEBER2、特にEBER2であってよい。
7SL RNA遺伝子プロモータは、例えば、7SL−1、7SL−2、SL28、7L63、7L23若しくは7L7であってよい。
Vault RNA遺伝子プロモータは、例えば、変異体Hvg2又はHvg3であってよい。
好ましくは、前記5’プロモータエレメントは、配列番号12、20、26、57、58、59、60、61、62、63、64及び65から選択される。
好適には、前記5’プロモータエレメントとRNApylコード配列は、転写開始部位を含むスペーサ配列によって隔てられている。好適には、スペーサ配列は、転写開始部位と、プロモータ配列の終了点からtRNAコード配列の開始点までの4〜6ヌクレオチドを含む。本発明で用いられる好ましいスペーサ配列は、配列番号13、21及び27として記載される。
好ましくは、4型RNAポリメラーゼIIIプロモータは、真核生物遺伝子、より好ましくは哺乳動物遺伝子、さらに好ましくは、ヒト遺伝子に由来する。
特に好ましい5’プロモータエレメントは、配列番号12、20及び26から選択される。
本発明の好ましい実施形態では、tRNApylコード配列を含有するtRNApyl遺伝子を含む真核生物発現系において、ナンセンス抑制を支持する上で十分に、機能性tRNAPylを発現させるように作用することができるDNA構築物が提供され、前記tRNApylコード配列は、tRNApyl遺伝子の5’側に位置するRNAポリメラーゼIIIプロモータである5’プロモータエレメントに作動可能に連結された遺伝子内プロモータエレメントの推定Aボックス及び/又はBボックスに1つ又は2つのヌクレオチド位置に突然変異を含有し、ここで、前記遺伝子内プロモータエレメントと、前記5’プロモータエレメントとの組み合わせは、ハイブリッドプロモータを構成する。
本発明に関して特に好ましいDNA構築物は、tRNApyl遺伝子コード配列と、遺伝子内プロモータエレメントとを含むtRNApyl遺伝子を含み、ここで、前記遺伝子は、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)由来の配列番号7、8、9、10及び11から選択される配列を有する、又は含むか、あるいは、配列番号7、8、9、10及び11において太字で示される突然変異が同等位置に実施されている別の細菌宿主に由来する相似tRNApyl遺伝子の配列を含み、これは、真核生物発現系において、ナンセンス抑制を支持する上で十分に、機能性tRNAPylを発現させるように作用することができ、ここで、前記tRNApylコード配列は、tRNApylコード配列の5’側に位置するRNAポリメラーゼIIIプロモータエレメントである5’プロモータエレメントに作動可能に連結され、これらはスペーサ配列で隔てられており、前記5’プロモータエレメントと遺伝子内プロモータの組み合わせは、ハイブリッドプロモータを構成する。
従って、本発明の好ましいDNA構築物は、配列番号15、16、17、18、22、23、24、25、28、29、30、31及び32、特に、配列番号15、16、17、18、23、25及び29、特に配列番号15、18及び23から選択される。
本発明の一態様は、前述したDNA構築物のいずれかの複数のコピー(例えば、2〜60コピー、例えば、2〜30コピー、例えば、8コピー)を含む多量体DNA構築物を提供する。
本発明の特に好ましいDNA構築物は、配列番号15、16、17、18、22、23、24、25、28、29、30、31及び32から選択されるtRNApyl遺伝子の8コピーを含む。
本発明のDNA構築物において複数回反復される最も好ましいtRNApyl遺伝子は、配列番号15、18及び23から選択される。
別の実施形態では、本発明は、tRNApyl遺伝子がRNAポリメラーゼIII2型プロモータを含む真核生物tRNA遺伝子に作動可能に連結され、図1Aに示すように、バイシストロニックメッセージとして発現されるDNA構築物を提供する。
好適には、真核生物tRNA遺伝子は、3’終結配列を欠失しているため、真核生物RNAポリメラーゼIII2型プロモータの制御下で、tRNApyl遺伝子の発現を起こすことが可能である。
従って、tRNApylに作動可能に連結される真核生物tRNA遺伝子は、tRNApylの高レベルの発現をもたらす、tRNAglu又はtRNAaspである。
より好ましくは、tRNApyl遺伝子に作動可能に連結された真核生物tRNA遺伝子は、哺乳動物tRNAglu又はtRNAasp、より好ましくはマウス又はヒト由来である。
従って、本発明は、tRNApyl遺伝子の5’側に真核生物tRNAglu遺伝子又はtRNAasp遺伝子を含むDNA構築物を提供し、ここで、前記tRNAglu遺伝子又はtRNAasp遺伝子は、転写終結配列を欠失しているため、転写の際にバイシストロニックメッセージをもたらす。
tRNApyl遺伝子は、野生型遺伝子であってよい。あるいは、tRNApyl遺伝子は、例えば、前述のように、Aボックス及び/又はBボックスに1つ又は2つのヌクレオチド位置に突然変異を含有してもよい。
好適には、第1tRNAは、転写の終結のシグナルを構成するチミジンヌクレオチドが欠失した配列から成るスペーサ配列によって、第2tRNAから隔てられている。
好ましいスペーサ配列は、配列番号47及び54に記載されている。
好ましくは、tRNApyl遺伝子に作動可能に連結された真核生物tRNA遺伝子は、配列番号41、49、55若しくは56の哺乳動物tRNAglu又はtRNAasp;より好ましくは、配列番号41若しくは49のマウスtRNAglu又はtRNAaspに作動可能に連結される。
一実施形態では、マウスtRNAglu又はtRNAasp遺伝子が、マウス細胞株でのtRNApyl遺伝子の発現に用いられる。一実施形態では、ヒトtRNAglu又はtRNAasp遺伝子が、マウス細胞株でのtRNApyl遺伝子の発現に用いられる。
本発明の特に好ましい実施形態では、tRNApyl遺伝子は、配列番号42若しくは配列番号50のバイシストロニックメッセージとして発現される。
別の実施形態では、最初のtRNAの前に5’リーダ配列が位置し、該リーダ配列は、TATAボックス、転写開始部位(TSS)、及び成熟tRNAを生成するように、前駆体tRNA(pre−tRNA)の転写後プロセシングを調節する配列を含有し得る。
リーダ配列は、転写された任意の哺乳動物tRNAのコード配列の上流の非翻訳領域から選択される。好ましくは、リーダ配列は、配列番号44及び52から選択される。あるいは、リーダ配列は、最初のtRNAの5’側のゲノム非翻訳領域に含まれる。
本発明の特に好ましい構築物は、配列番号42又は50のバイシストロニック転写単位の複数のコピー(例えば、2〜20コピー)を含む。従って、本発明の好ましいDNA構築物は、配列番号42又は50の転写単位の2、3、4、5、6、7若しくは8コピーを含む。本発明の最も好ましいDNA構築物は、配列番号42のtRNAglu−pylバイシストロニック転写単位の3コピーに相当する配列番号43、及び配列番号50のtRNAasp−pylバイシストロニック単位の2コピーに相当する配列番号51である。
本発明の態様として、前述したDNA構築物のいずれも、PylRSコード配列又は遺伝子を含んでもよい。
本発明の一態様によれば、前述したDNA構築物を含むベクターで形質転換した真核宿主細胞が提供される。
本発明の第2の態様によれば、PylRS及びtRNApylを発現するか、又は発現することができる真核細胞株が提供され、ここで、tRNApylは、本発明のDNA構築物と一緒に該細胞に導入され、これは、前記真核細胞株において機能する。
本発明の第3の態様によれば、無細胞発現系が提供され、ここで、宿主細胞から得られた合成反応溶解物は、ポリペプチドの合成に必要な少なくとも1つの成分を含む。
好適には、合成反応溶解物は、細菌又は真核細胞から得られる。好ましくは、合成反応溶解物は、真核細胞から、より好ましくは、ウサギ網状赤血球若しくは麦芽から得られる。
好ましくは、無細胞発現系は、WT PylRS及び本発明のtRNApylを発現することができ、ここで、tRNApylは、本発明のDNA構築物と一緒に、合成反応溶解物を得るために用いられる細胞に導入される。
本発明での使用に好適な無細胞発現系は、例えば、国際公開第201008110号パンフレット、同第2010081111号パンフレット、同第2010083148号パンフレットに記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明の真核宿主細胞は、ナンセンスコドンによりコードされる1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換してもよい。
一実施形態では、真核細胞株は、機能性PylRS及び機能性tRNApylを発現するか、又は発現することができ、ここで、機能性tRNApyl発現は、遺伝子内プロモータエレメントと、tRNApylコード配列の5’側に位置するRNAポリメラーゼIIIプロモータエレメントである5’プロモータエレメントとの制御下で起こるが、この発現は、前記遺伝子内プロモータエレメントと前記5’プロモータエレメントとの組み合わせが、ナンセンス抑制を支持する上で十分にハイブリッドプロモータを構成するように起こる。
好適には、ナンセンス抑制は、アンバー抑制である。
好適には、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。
本発明の第4の態様では、本発明は、ナンセンスコドンによりコード化される1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質を調製する方法を提供し、これは、真核細胞株において前記標的タンパク質を発現させるステップを含み、前記真核細胞株は、ナンセンスコドンによりコード化される1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質をコード化する遺伝子で形質転換されると共に、PylRS及びtRNApylをコード化する遺伝子でも、前記PylRS及びtRNApylが、ナンセンス抑制を支持する上で、前記真核細胞株において十分に発現され、かつ機能するように、形質転換される。
好適には、宿主細胞は、本明細書に記載する本発明の他の態様のDNA構築物で形質転換される。
従って、本発明の実施形態で使用するナンセンスコドンは、アンバーコドン、オパールコドン、又はオーカーコドンであってよい。特に好ましいナンセンスコドンは、アンバーコドンである。
本発明は、化学的に修飾した標的タンパク質を調製する方法を提供し、これは、本発明の前記態様に従い標的タンパク質を調製するステップと、得られた標的タンパク質を化学的に修飾するステップを含む。このタンパク質は、非天然アミノ酸上の側鎖を介して化学的に修飾してもよい。
従って、本発明の実施形態で使用する非天然アミノ酸、又はその少なくとも1つは、アルキン又はアジド部分を含んでもよい。これらの部分は、例えば、トリアゾールリンカー部分の生成をもたらすヒュスゲン(Huisgen)反応による、化学修飾によく適合している。
本発明の第5の態様では、本発明の方法に従う製法を用いて調製された抗体コンジュゲートなどのタンパク質コンジュゲートが提供され、該コンジュゲートにおいて、抗体などのタンパク質が、タンパク質、薬剤及びPEG部分から選択される1つ又は複数の他の部分に、トリアゾール部分を含むリンカーを介して結合されている。
本発明の第6の態様では、本発明は、PylRS及びtRNApylを発現するように安定に形質転換された真核細胞株の生存能を高める方法を提供し、これは、真核細胞株をtRNApyl遺伝子で形質転換するステップを含み、該tRNApyl遺伝子は、1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質を発現させるために、本発明のDNA構築物と一緒に前記細胞に導入され、かつ前記真核細胞株において機能する。
第7の態様では、本発明は、1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質を発現すると共に、PylRS及びtRNApylを発現するように安定に形質転換された真核細胞株の生存能を高める方法を提供し、これは、ナンセンス抑制を支持する上で十分に、PylRS及びtRNApylが発現され、かつ機能するように、PylRS及びtRNApylをコード化する遺伝子で、前記真核細胞株を形質転換するステップを含む。
定義及び略語:
本明細書で用いる場合、「遺伝子」とは、遺伝の単位に相当するゲノム配列の位置確認可能な領域を意味し、これは、調節領域、転写領域、及び又はその他の機能性配列領域を伴う。従って、遺伝子は、プロモータエレメントなどの調節領域と一緒に、コード配列(例えば、tRNAのようなRNAのコード配列)を含み得る。
本明細書で用いる場合、「遺伝子内プロモータ」とは、遺伝子配列内に含まれるプロモータを意味する。
本明細書で用いる場合、「転写領域」とは、コード配列、すなわち、成熟RNA産物の一部である配列と、除去されているため、成熟RNA中に現れない一次転写物の部分、例えば、tRNA前駆体の5’リーダ部分の両方を包含する。
本明細書で用いる場合、「プロモータエレメント」とは、プロモータ、特に、いくつかのエレメント(例えば、遺伝子内プロモータエレメント及び5’プロモータエレメント)を有し得るハイブリッドプロモータのエレメントを意味する。本明細書で用いる場合、「4型RNAポリメラーゼIIIプロモータ」とは、1つ又は複数の上流プロモータエレメント(例:3型クラスのRNAポリメラーゼIIIプロモータに特有のもの、例えば、U6又はH1プロモータで用いられるTATAボックス)、及び1つ又は複数の遺伝子内プロモータエレメント(例:2型クラスのRNAポリメラーゼIIIプロモータに特有のもの、例えば、tRNAプロモータで用いられるA及びBボックス)を有するRNAポリメラーゼIIIプロモータを意味する。
本明細書で用いる場合、「TATAボックス」は、典型的に、特定の遺伝子のプロモータ領域に存在し、転写開始部位の上流に位置する、配列TATAAAを含むDNA配列又はその変異体である。
本明細書で用いる場合、「ナンセンスコドン」とは、アンバー、オーカー又はオパールコドンを意味する。
本明細書で用いる場合、「ナンセンス抑制」とは、ナンセンスコドンによる鎖終結の抑制を意味する。
本明細書で用いる場合、「nnAA」又は「非天然アミノ酸」とは、タンパク質への組み込みに好適なアミノ酸を意味し、遺伝子コードによって天然にコードされる20のアミノ酸、ピロリシン及びセレノシステインの1つではない。
本明細書で用いる場合、「WT」とは、野生型、すなわち、自然界で天然に得られる形態を意味する。
本明細書で用いる場合、「RS」は、「tRNAシンターゼ」の略語である。
本明細書で用いる場合、「TSS」は、「転写開始部位」の略語である。
本明細書で用いる場合、「CPE」は、「サイクリックAMP応答エレメント」の略語である。
本明細書で用いる場合、「PSE」は、「近位配列エレメント」の略語である。
本明細書で用いる場合、「CHO」は、「チャイニーズハムスター卵巣」の略語である。
本明細書で用いる場合、「コード配列」は、遺伝子産物(tRNA、RSなど)をコードする遺伝子のヌクレオチド配列であり、調節配列などの非コード配列は含まない。
本明細書で用いる場合、一次転写物の一部であるが、成熟RNAのものではない転写配列が存在する場合もあり、従って、これは「非コード」とみなされる。
本明細書で用いる場合、「DNA構築物」とは、発現系に導入しようとする核酸の人工的に構築されたセグメントを意味する。DNA構築物は、典型的に、発現カセットを含み、核酸を発現系に導入するのに用いるベクター系に属するヌクレオチドも含有し得る。
本明細書で用いる場合、「発現カセット」とは、発現系に導入しようとする核酸の人工的に構築されたセグメントを意味し、これは、最適な発現に必要な任意の調節領域と一緒に、cDNA又はRNAコード配列などの1つ又は複数の遺伝子コード配列を含む。発現カセットは、ベクター系に属するヌクレオチドは含まない。
本明細書で用いる場合、「バイシストロニック」転写物は、最終産物をコードする能力を有する転写物である。
本発明の細胞株に発現させようとするtRNApyl
本発明のPylRSと組み合わせて発現させようとするtRNApylは、サプレッサーtRNAとして機能するために、アンチコドンと、アンバーナンセンスコドンUAGに対し相補的な3次構造を有する。
サプレッサーtRNAとして機能するために、UGA、オパール;UAA、オーカーコドンなどの他のナンセンスコドンと相補的な人工的tRNAを構築することもできる。
従って、nnAAをコードするアンバーコドンの使用を参照し、アンバー抑制の概念について論じることにより、本発明を実質的に説明し、例示するが、アンバーコドンに代わり、オパール又はオーカーコドンなどの別のナンセンスコドンを用いてもよく、その場合も同様に作用すると予想されることは、理解されよう。
しかし、アンバーコドンの使用が好ましい。
好ましくは、本発明のtRNApylは、次の菌株:メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)(配列番号3)、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)(配列番号1)、デスルフィトバクテリウム・ハフニエンス(Desulfitobacterium hafniense)(配列番号5)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)(配列番号2)、メタノサルシナ・ブルトニイ(Methanosarcina burtonii)(配列番号4)、又はメタノサルシナ・サーモフィラ(Methanosarcina thermophila)の1つに由来するtRNApylである。
より好ましくは、本発明のtRNApylは、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)(配列番号3)由来のtRNApylである。
好適には、本発明の態様で用いるtRNApylは、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)(配列番号1)由来のtRNApylではない。
真核細胞株における発現を最適化することを目的としたtRNApyl配列の操作は、国際公開第2007099854号パンフレット、同12038706号パンフレット、及びHancock et al(2010)に記載されており、これらの文献は、参照により本明細書に組み込む。
国際公開第2007099854号パンフレットには、中でも、古細菌(Archaebacteria)由来のtRNAコード配列、好ましくはtRNApyl、前記tRNA遺伝子の3’側に位置する転写終結配列、RNAポリメラーゼII若しくはIIIによる転写を誘導するプロモータ配列、例えば、前記tRNAコード配列の5’側に位置するU1snRNAプロモータ又はU6snRNAプロモータを含むDNA構築物が提供される。
国際公開第12038706号パンフレットには、中でも、RNAポリメラーゼIIIプロモータに作動可能に連結された、特に、酵母tRNAarg遺伝子のRNAポリメラーゼIIIプロモータに連結された、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)由来のtRNApylを含むDNA構築物が提供される。
国際公開第12038706号パンフレットには、さらに、図3に要約されている複数の内部位置で突然変異したメタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)由来のtRNApylを含む、酵母細胞での発現用のDNA構築物も提供される。興味深いことに、メタノサルシナ・バーケリ(M.Barkeri)tRNApylは、メタノサルシナ・マゼイ(M.mazei)由来のtRNApylとは、配列番号3の3位のヌクレオチドGに対応する1ヌクレオチドが異なる。
遺伝子内polIIIプロモータを含むtRNApyl
本発明のDNA構築物に含まれるtRNApyl遺伝子は、遺伝子内polIIIプロモータを含んでもよい。
Hancock et al(2010)は、図3に要約されている複数の内部位置で突然変異したメタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)由来のtRNApylを含む、酵母細胞でのtRNApylの発現用のDNA構築物を記載している。酵母の場合、Bボックスへの突然変異の導入により、共通Bボックス配列が生成されて、非常に低いが、検出可能なレベルの突然変異tRNApyl発現をもたらした。しかし、突然変異tRNApylの発現は、酵母細胞におけるアンバー抑制を支持しなかった。上記著者らは、tRNAが不適切にフォールディング若しくはプロセシングされたか、又は上記突然変異がシンテターゼ認識を無効にしたかのいずれかであると結論付けた。
同様に、上記著者らは、発現が検出不能であった近似共通Aボックスを再構築し、AボックスとBボックス突然変異を組み合わせたところ、検出可能な発現レベルが得られたが、アンバー抑制は得られなかった。
具体的には、Hancock et alにより、メタノサルシナ・バーケリ(M.Barkeri)遺伝子において生成された突然変異は、メタノサルシナ・マゼイ(M.mazei)の10、14、25、及び52位に対応する。興味深いことに、野生型メタノサルシナ・バーケリ(M.Barkeri)tRNApylは、メタノサルシナ・マゼイ(M.mazei)tRNApylとは、配列番号1の3位のヌクレオチドGに対応する1ヌクレオチドが異なる。
驚くことに、本発明者らは、メタノサルシナ・マゼイ(M.mazei)tRNApyl遺伝子の推定Aボックス及びBボックス領域への特定の突然変異の導入により、哺乳動物細胞におけるtRNApylの良好な発現が達成され、これは効率的アンバー抑制を伴うことをみだした。
本発明者らは、共通Bボックス及び近似共通Aボックスを再構築したが、これらは、実施例1及び図4〜7で述べるように、組み合わせ及び個別のどちらでも、アンバー抑制を可能にするように機能する。
好適には、Bボックス突然変異は、配列番号3のWT配列に関してA52Cである。
好適には、Aボックス突然変異は、一緒に、及び個別に分析されて、哺乳動物細胞においてアンバー抑制をもたらすことが判明した2つの突然変異を含み、これらは、配列番号3のWT配列に関して10位及び14位に対応する。
配列番号7、8、9、10又は11(メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)のtRNApyl遺伝子由来の突然変異配列に対応する)の例示的tRNApyl突然変異遺伝子と、突然変異(配列番号7、8、9、10又は11において太字で示す)が同等の位置に実施された他の細菌種(例えば、既述したもの)に由来する相似tRNApyl遺伝子。突然変異は、例えば、推定Aボックス及び/又は推定Bボックスにおける1つ又は2つのヌクレオチド位置であってよい。例えば、推定Bボックスにおいて、例えば配列番号7、8、9、10又は11に示す位置に、単一の突然変異を実施する。例えば、単一又は2つの突然変異を推定Aボックスに実施し、Bボックスには、例えば配列番号7〜11に示す位置に単一の突然変異を実施する。推定A及びBボックスを図2に示すが、当業者であれば、他の細菌種(例えば、既述したもの)に由来する相似tRNApyl遺伝子についての推定A及びBボックスを導き出すことができる。
好適には、本発明のDNA構築物は、突然変異したtRNApyl遺伝子とこれに続く転写終結配列を含む。転写終結配列の一例を配列番号6に記載する。
tRNAの適正なフォールディングは、その配列のどんな修飾に対しても高度に感受性である。驚くことに、メタノサルシナ・バーケリ(M.barkeri)及びメタノサルシナ・マゼイ(M.mazei)由来の同等位置における突然変異によって、国際公開第2012/038706号パンフレット、及び本発明の実施例に示すように、著しく異なる結果が得られた。特に、メタノサルシナ・バーケリ(M.barkeri)tRNApyl遺伝子は、同等位置にAを有するメタノサルシナ・マゼイ(M.mazei)tRNAに対し、3位に異なるヌクレオチド(G)を有する。
3位のGは、RSアミノアシル化の効果を低減すること、また、3位のGは、酵母におけるtRNApylの直交性に影響することが想定されている。(Hancock 2010;Gundllapalli et al 2008)。
手短には、アミノアシルtRNAシンテターゼによる特定のtRNAの認識及びtRNAアミノアシル化が、tRNA配列によって指定される同一性エレメント(identity element)を通して起こる。アクセプターステムは、tRNAの3’及び5’末端により形成される7つのヌクレオチドペアから構成され、酵素によるtRNAの認識に重要であり、翻訳において極めて重要である。メタノサルシナ・バーケリ・フラロ(M.Barkeri Fusaro)のtRNApylは、アクセプターステム領域に、他のtRNApyl遺伝子には存在しない特異なG3:70U塩基対を含有している。この突然変異は、酵母セリルtRNAシンテターゼによるtRNApylのミスアシル化を可能にすることにより、酵母におけるtRNAの直交性に影響を与えることがわかった。
更なるコメントとして、polIII依存性遺伝子の発現の調節は、酵母及び哺乳動物細胞の間で変動し得る。いずれの場合にも、tRNAは、遺伝子内A及びBボックスエレメントに制御されるが、遺伝子外配列は、発現レベル、転写開始部位(TSS)及び前駆体tRNAのプロセシングに影響を与え得る。酵母では、TSSは、多くの場合、Aボックスの最初の塩基を示すTから18〜20bp上流(又は成熟tRNAコード配列の開始から10〜12bp上流)に存在する。さらに、酵母において、TSSは、往々にして、コアプロモータエレメントtCAAca(大文字は、高度の保存を示す)によって取り囲まれている。
驚くことに、本発明者らは、本発明の突然変異tRNA遺伝子の一連の反復配列を構築することにより形成されたDNA構築物が、図7及び実施例2に例示するように、発現及びアンバー抑制の増大をもたらすこともみいだした。
好適には、本発明のDNA構築物は、tRNApyl遺伝子の2〜60の反復配列を含む。好ましくは、DNA構築物は、2〜30の反復配列、より好ましくは、8つの反復配列を含む。
5’プロモータエレメント下で発現した遺伝子内polIIIプロモータを含むtRNApyl
構造遺伝子内のA−及びBボックス配列の突然変異により機能性tRNApylの転写を増強することによって機能性アンバーサプレッサーを生産することが成功しなかったため、当分野の研究者らは、既述したように、遺伝子外配列だけを用いて、tRNApyl遺伝子の転写を増大させるDNA構築物を作製するに到った。
そこで、本発明者らは、上流プロモータエレメントと遺伝子内プロモータエレメントを組み合わせた新規の改善されたプロモータエレメントを作製した。
特定の真核生物RNA遺伝子は、polIII/3型クラスのプロモータに特有の上流プロモータエレメント(例えば、U6若しくはH1プロモータで用いられているTATAボックス)(又は場合によっては、3型プロモータ配列と無関係の配列も含む)、及びpolIII/2型クラスのプロモータに特有の遺伝子内プロモータエレメント(例えば、tRNAプロモータに用いられるA−及びBボックス)を含むハイブリッドポリメラーゼIIIプロモータの下で発現させる。
好適には、本発明で使用する上流プロモータエレメントは、7SL(SRP)RNA遺伝子、VaultRNA遺伝子、エプスタイン・バール(Epstein Barr)ウイルスにコードされた低分子RNA(EBER)(配列番号12、20、26、57、58、59、60、61、62、63、64又は65に示す)のプロモータから選択される。
好適には、本発明の上流プロモータエレメントは、哺乳動物遺伝子、好ましくはヒト若しくはマウス遺伝子、最も好ましくは配列番号12、20若しくは26などのヒト遺伝子から単離される。
好適には、プロモータ配列は、図1E(配列番号69〜71)に示すようなpolIII RNAポリメラーゼによる転写を調節する転写因子を動員する機能性エレメントを含有する。
従って、7SLプロモータは、転写開始部位から43〜51bp上流に位置する、活性化転写因子(ATF)又は環状AMP応答エレメント(CRE)結合部位(tgacgtcac)を含有する。プロモータは、TSSから20〜31bp上流にETAB配列(ttctagtgct)と呼ばれるTATA様配列も含有する。
Vaultプロモータは、TSS(tgacgtaggtctttctcaccagtca)から23〜53bp上流に位置する近位配列エレメント(PSE)(配列番号75)を有し、これは、環状AMP応答エレメント(CRE)の変異体でもある。さらに、Vaultプロモータは、TSSから16〜22bp上流にTATAボックス(tataat)を含有する。
EBERプロモータは、3つの調節領域、すなわち、TSSから76〜55bp上流のSP1結合部位(gcacgcttaaccccgcctaca)(配列番号76)、TSSから55〜36bp上流のATF結合配列(accgtgacgtagctgttta)(配列番号77)、及びTSSから28〜21bp上流のTATA様ボックス(tatagag)を含有する。
本発明に関連して、tRNApyl遺伝子内の、7SL、EBER、Vault RNAの上流プロモータエレメントと再構成遺伝子内プロモータ(A−及び/又はBボックス)との組み合わせは、図8及び実施例3に示すように、再構成遺伝子内プロモータのみを含有するtRNApyl、及びWTtRNApylと比較して、該tRNAのアンバー抑制機能を改善することが証明されている。
好適には、配列番号12の7SLプロモータを、配列番号15の構築物と同様に、配列番号9のBボックス突然変異と組み合わせる。
あるいは、配列番号12の7SLプロモータを、配列番号18の構築物と同様に、配列番号10のA−及びBボックス突然変異と組み合わせる。
本発明の好ましいDNA構築物は、スペーサによって転写開始部位から隔てられた上流プロモータエレメントを含む。好適には、スペーサ配列は、転写開始部位と、プロモータ配列の終了点からtRNAコード配列の開始点までの4〜6ヌクレオチドを含む。
本発明のDNA構築物は、tRNApylコード配列の3’側に位置する下流転写終結部位を含み、ここで、前記転写終結部位は、小さなポリ−チミジン(4〜6)配列によって、ポリメラーゼIII転写の終結を伝達する。本発明の好ましい転写終結配列は、配列番号19に記載されている。
バイシストロニックメッセージとして真核生物tRNAの下で発現したtRNApyl
Mukai et al,2008及び欧州特許第1992698号明細書は、どのようにして、真核生物tRNA(tRNAval)遺伝子に対し下流のtRNApyl遺伝子が、最適に満たないtRNApylの発現(これは、発現のレベルが、哺乳動物細胞において最適なアンバー抑制には低すぎたため、理想的ではなかった)をもたらしたかを記載している。
本発明者らは、驚くことに、tRNApylコード配列が、tRNAglu又はtRNAaspなどの真核生物tRNA遺伝子に作動可能に連結したDNA構築物(図1A)が、図11及び実施例4に詳しく説明するように、tRNApyl遺伝子産物の最適発現並びにアンバー抑制をもたらすことをみいだした。
好適には、本発明のtRNApyl遺伝子は、真核宿主細胞においてバイシストロニックメッセージとして発現される。
好適には、真核生物tRNA遺伝子は、3’転写終結配列を欠失しているため、tRNApyl遺伝子の発現が、真核生物RNAポリメラーゼIII2型プロモータの下で起こることを可能にする。
従って、最初のtRNAは、転写の終結のためのシグナルを構成するチミジンヌクレオチドを欠失した配列から構成されるスペーサ配列によって、2番目のtRNAから隔てられている。
例示的スペーサ配列を配列番号47及び54に示す。
好ましくは、tRNApylコード配列に作動可能に連結した真核生物tRNA遺伝子は、配列番号41、49、55若しくは56の哺乳動物tRNAglu又はtRNAasp遺伝子;より好ましくは、配列番号41又は49のマウスtRNAglu又はtRNAaspである。
本発明者らは、驚くことに、最初のtRNA遺伝子の前に、TATAボックス、転写開始部位(TSS)、及び成熟tRNAを生成するように前駆体tRNAの翻訳後プロセシングを調節する配列(集合的にリーダ配列と呼ばれる)を含む5’リーダ配列が位置するとき、tRNApylの発現及びアンバー抑制が、特に効率的であることをみいだした。
従って、リーダ配列は、任意の哺乳動物tRNA遺伝子の5’領域であり、これは転写されて、成熟tRNAの構成部分にはならないtRNA前駆体の一部を生成する。
本発明に用いる特に好ましいリーダ配列は、配列番号41及び49に開示され、配列番号44(tRNAasp)及び配列番号52(tRNAglu)として記載されている。
本発明の特に好ましいDNA構築物は、配列番号42及び配列番号50として記載されている。
配列番号42は、マウスtRNAglu遺伝子と、これに続く、チミジン欠失スペーサ領域(ccccaaacctc)とから構成され、該スペーサ領域は、tRNApyl遺伝子に連結されている。従って、配列番号42の構築物は、単一の実体として転写され、これが、翻訳後プロセシングされて、成熟tRNApylを生成する。
配列番号50は、マウスtRNAasp遺伝子と、これに続くチミジン欠失スペーサ領域(tagccccacctc)とから構成され、該スペーサ領域は、tRNApyl遺伝子に連結されている。従って、配列番号50の構築物は、単一の実体として転写され、これは、翻訳後プロセシングされて、成熟tRNApylを生成する。
本発明の特に好ましいDNA構築物は、配列番号42及び50のバイシストロニック転写単位の複数のコピーを含む。
従って、特に好ましいDNA構築物は、配列番号42又は50の2、3、4、5、6、7、8コピーを含む。最も好ましいDNA構築物は、配列番号42のtRNAglu−pylバイシストロニック転写単位の3コピーに相当する配列番号43、及び配列番号50のtRNAasp−pylバイシストロニック単位の2コピーに相当する配列番号51である。
本発明のtRNApyl遺伝子は、真核細胞株に導入することができる。好適には、細胞株は、哺乳動物細胞株である。
より好ましくは、細胞株は、CHO細胞株であるが、HEK293、PERC6、COS−1、HeLa VERO、又はマウスハイブリドーマ細胞株であってもよい。
CHO及びHEK293細胞株が特に好適である。
PylRS
好適には、本発明のtRNApyl遺伝子を、pylRS遺伝子と一緒に真核細胞株に導入する。
本明細書で用いる場合、pylRSは、好適なtRNA分子をピロシン又はその誘導体でアミノアシル化するアミノアシルtRNAシンテターゼに関する。
本発明のpylRSは、メタン生成古細菌(methanogenic archaea)種に由来する真核細胞において直交性のピロリシル−tRNAシンテターゼである。すなわち、これは、メタン生成古細菌(methanogenic archaea)種において野生型であるか、又はその突然変異体である。
好ましくは、本発明のpylRSは、以下:メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)、デスルフィトバクテリウム・ハフニエンス(Desulfitobacterium hafniense)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)、メタノサルシナ・ブルトニイ(Methanosarcina burtonii)、メタノサルシナ・サーモフィラ(Methanosarcina thermophila)、メタノサルスム・ジリナエ(Methanosalsum zhilinae)、メタノハロビウム・エバスチガツム(Methanohalobium evastigatum)、メタノハロフィルス・マヒイ(Methanohalophilus mahii)、デスルホトマクルム・ギブソニアエ(Desulfotomaculum gibsoniae)、デスルホスポロシヌス・メリデイ(Desulfosporosinus meridei)及びデルスルホトマクルム・アセトキシダンス(Desulfotomaculum acetoxidans)の1つに由来するピロリシル−tRNAシンテターゼである。
最も好ましくは、本発明のpylRSは、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)由来のピロリシル−tRNAシンテターゼ(pylRS)である。
本発明のpylRSは、野生型シンテターゼであってもよい。
あるいは、本発明のpylRSは、例えば、その触媒活性を増大するため、及び/又はその基質アミノ酸に対する選択性を修飾するために、1つ又は複数の位置で突然変異させてもよい(例えば、Yanagisawa 2008を参照)。
好ましくは、本発明のpylRSは、Tyr384又はその同等物に対応する位置で突然変異させてもよい。最も好ましくは、Tyr384を、フェニルアラニンに突然変異させる。
一実施形態では、本発明のpylRSは、その特異性を修飾し、ピロリシン類似体の組み込みを可能にする(又は改善する)ために、1つ又は複数の位置で突然変異させてもよい。
別の突然変異PylRS酵素は、国際公開第09038195号パンフレット及び同第2010114615号パンフレットに記載されており、各文献は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
ナンセンスコドンによりコード化された非天然アミノ酸の組み込み
本発明の細胞株を用いて調製されたタンパク質に、1つ又は複数のnnAAを組み込んでもよい。好適には、1つのnnAAをタンパク質鎖に組み込む。抗体であるタンパク質の場合、1つのnnAAを軽鎖若しくは重鎖、又はその両方に組み込んでもよい。
他の実施形態では、2つ以上、例えば、最大4つ、例えば、2つ(若しくは恐らく3つ)のnnAAをタンパク質鎖に組み込んでよい。好適には、組み込まれるnnAAはすべて同じである。
nnAAは、好適には、アンバーコドンによってコード化する。
標的タンパク質への組み込みのためのアンバーコドンによりコード化され得る非天然アミノ酸
標的タンパク質への組み込みのための非天然アミノ酸
ペプチドとの複数の部分の結合を可能にするために非天然アミノ酸を用いることは、国際公開第2007/130453号パンフレット(参照により本明細書に組み込む)に開示されている。
本明細書で用いる場合、「非天然アミノ酸」は、セレノシステイン、ピロシン、並びに次の20のαアミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン以外の任意のアミノ酸、修飾アミノ酸、又はアミノ酸類似体を指す。αアミノ酸の一般構造を式I:
Figure 0006550339
により示す。
非天然アミノ酸は、典型的に、R基が、20の天然アミノ酸に用いられるもの以外の任意の置換基である。例えば、20の天然アミノ酸の構造については、任意の生化学文献、例えば、Biochemistry by L.Stryer,3rd ed.1988,Freeman and Company,New Yorkを参照されたい。本明細書に開示する非天然アミノ酸が、前記20のαアミノ酸以外の天然に存在する化合物であってもよいことは、留意されたい。本明細書に開示する非天然アミノ酸は、典型的に、天然アミノ酸とは側鎖のみが異なるため、非天然アミノ酸は、天然に存在するタンパク質においてそれらが形成されるのと同じ様式で、他のアミノ酸、例えば、天然又は非天然アミノ酸と結合する。しかし、非天然アミノ酸は、天然アミノ酸とそれらを区別する側鎖基を有する。例えば、式IのRは、任意選択で、アルキル−、アリール−、ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化アルキル、アセチル、ケトン、アジリジン、ニトリル、ニトロ、ハロゲン化物、アシル−、ケト−、アジド−、ヒドロキシ−、ヒドラジン−、シアノ−、ハロ−、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、エポキシド、スルホン、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボラン、フェニルボロン酸、チオール、セレノ−、スルホニル−、ホウ酸塩、ボロン酸塩、ホスホ、ホスホノ、ホフフィン、複素環−、ピリジル、ナフチル、ベンゾフェノン、シクロアルキン、例えば、シクロオクチンのような制限環(constrained ring)などのシクロアルキン、ノルボルネンなどのシクロアルケン、トランスシクロアルケン、シクロプロペン、テトラジン、ピロン、チオエステル、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミノ、カルボン酸、α−ケトカルボン酸、α若しくはβ不飽和酸及びアミド、グリオキシルアミド、又はオルガノシラン基など、あるいはこれらの任意の組み合わせを含む。
新規の側鎖を含む非天然アミノ酸に加えて、非天然アミノ酸は、任意選択で、例えば、式II及びIII:
Figure 0006550339
(式中、Zは典型的に、OH、NH.sub.2、SH、NH.sub.2O−−、NH−−R’、R’NH−−、R’S−−、又はS−−R’−−を含み;W及びYは、同じでも異なっていてもよく、典型的に、S、N、若しくはOを含み、R及びR’は、任意選択で同じでも異なっていてもよく、典型的に、式Iを有する非天然アミノ酸について上に記載したR基の成分の同じリスト、並びに水素又は(CH.sub.2)sub.x又は天然アミノ酸側鎖から選択される)
の構造により示されるような、修飾骨格構造を含んでもよい。
アミノ酸類似体の他の例として(限定はしないが)、リシン又はピロリシンアミノ酸の非天然アミノ酸類似体が挙げられ、これは、以下の官能基の1つを含む;アルキル、アリール、アシル、アジド、ニトリル、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、シクロアルケン、アルキニル、シクロアルキン、シクロオクチンのような制限環(constrained ring)などのシクロアルキン、ノルボルネンなどのシクロアルケン、トランスシクロアルケン、シクロプロペン、ハロゲン化アリール、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化アルキル、アジリジン、ニトロ、ヒドロキシル、エーテル、エポキシド、ビニルエーテル、シリルエノールエーテル、チオール、チオエーテル、スルホンアミド、スルホニル、スルホン、セレノ、エステル、チオ酸、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボラン、ホスホノ、ホスフィン、複素環、ピリジル、ナフチル、ベンゾフェノン、テトラジン、ピロン、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、チオエステル、エステル、チオ酸、オルガノシラン基、アミノ、光励起性架橋剤;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;別の分子と共有結合的に、又は非共有結合的に相互作用するアミノ酸;金属結合アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射性アミノ酸;光ケージ化アミノ酸;光異性化アミノ酸;ビオチン又はビオチン類似体含有アミノ酸;グリコシル化又は炭水化物修飾アミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコールを含むアミノ酸;ポリエステルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学的に切断可能な、若しくは光切断可能なアミノ酸;伸長された側鎖を有するアミノ酸;有毒基を含有するアミノ酸。
本発明の一実施形態では、下記の一般構造の非天然アミノ酸(nnAA)をタンパク質生産のために使用する。
Figure 0006550339
好ましくは、X基は、メチレン基、アルケン、アレン、酸素、イオウ、リン、窒素、エステル、アミド、炭素酸塩、カルバメート、エーテル、アミン、チオエーテル、アルキン、及び複素環であってよい。
好ましくは、Y基は、メチレン、アルケン、アレン、酸素、イオウ、リン、窒素、エステル、アミド、炭素酸塩、カルバメート、エーテル、アミン、チオエーテル、アルキン、及び複素環であってよい。
好ましくは、Z基は、窒素、酸素、イオウ、リン、α−メチレンアミノ、α−ヒドロキシルアミノ、α−メチレンアジドであってよい。
FG基は、アルキルアジド、アルキル−アルキン、アルキル−アルケン、アルキルシクロヘキセン、アルキルシクロアルキン、ハロゲン化アルキルアリール、ハロゲン化アリール、アミドシクロアルキン、アミドシクロアルケン、トランスシクロアルケン、シクロプロペン、テトラジン、ピロン、ノルボルネン、アリールアジド、アジド、ヒドロキシルアミン、ヒドラジド、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化アリール、テトラジン、ピロン、イミン、ボロン酸エステル又は酸、シアノ、アルデヒド又はケトンなどのカルボニル基であってよい。
好ましい実施形態では、前記一般構造の非天然アミノ酸(nnAA)は、n=1〜12である、様々な長さのメチレン基を有してもよい。好ましくは、前記一般構造の非天然アミノ酸は、結合構造の一部としてシクロアルカン及び芳香環を含んでもよい。
好適には、本発明のnnAAは、以下の構造表に挙げるリシンから得られる。市販されていないものは、任意選択で、米国特許出願公開第2004/138106A1号明細書(参照により本明細書に組み込む)に記載のように、又は当業者に周知の標準的方法を用いて合成する。有機合成技術のためには、例えば、以下:Organic Chemistry by Fessendon and Fessendon,(1982,Second Edition,Willard Grant Press,Boston Mass.);Advanced Organic Chemistry by March(Third Edition,1985,Wiley and Sons,New York);及びAdvanced Organic Chemistry by Carey and Sundberg(Third Edition,Parts A and B,1990,Plenum Press,New York)並びに国際公開第02/085923号パンフレット(これらは全て、参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
本発明のnnAAは、公開された方法により合成してもよい。例えば、(S)−2−アミノ−6((プロプ−2−イニルオキシ)カルボニルアミド)ヘキサン酸及びS)−2−アミノ−6((2アジドエトキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸の合成は、国際公開第2010139948号パンフレット及びNguyen et al.2009(参照により本明細書に組み込む)に公開されている。
好適には、本発明のnnAAは、国際公開第2010139948号パンフレット(参照により本明細書に組み込む)に一部が記載されているように、以下の表に示すリシンから得られる。
Figure 0006550339
好適には、本発明のnnAAは、以下の表に挙げる(2S)−2−アミノ−6−ヒドロキシヘキサン酸から得られる。
Figure 0006550339
好適には、本発明のnnAAは誘導されて、以下の表に挙げる様々な官能基を含む。そのいくつかは、国際公開第20110442255A1号パンフレット(参照により本明細書に組み込む)に記載されている。
Figure 0006550339
好適には、本発明のnnAAは誘導されて、金属遊離環状付加化学に好適な様々な官能基を含み、これらは、国際公開第2012104422A1号パンフレット(参照により本明細書に組み込む)に記載されており、また以下の表に挙げる。
Figure 0006550339
組み込まれた非天然アミノ酸とタンパク質の部位特異的結合
本発明の方法を用いて組み込まれた非アミノ酸を有するタンパク質は、官能基化タンパク質コンジュゲートの調製に用いることもできる。組み込まれた非天然アミノ酸を有するタンパク質に結合させることができる分子としては、(i)他のタンパク質、例えば、抗体、特にモノクローナル抗体及び(ii)当該系の半減期延長をもたらし得るPEG基又は他の基がある。さらに、これらの強力な化合物の標的化送達のためにこれらの修飾タンパク質を薬剤又はヌクレオチドに結合することができる。
特定の実施形態について、以下の抗体薬剤コンジュゲートの説明でさらに詳細に記述する。
非天然アミノ酸は、好都合には、他のアミノ酸との副反応のリスクなしで、標的化方式で結合を可能にするユニークな化学基を含有してもよい。例えば、非天然アミノ酸は、アジド又はアルキン基を含有し、ヒュスゲン1,3−双極子環状付加反応を用いて、対応するアルキン又はアジド基を含有する、結合させようとする分子との反応を可能にする。
本発明の別の態様は、化学的に修飾された標的タンパク質を調製する方法であって、これは、本発明の一態様の方法に従い、標的タンパク質を調製するステップと、得られた標的タンパク質を化学的に修飾するステップを含む。
本発明の好ましい結合化学は、天然の20のアミノ酸に対して直交性の反応を含む。こうした反応は、天然の20のアミノ酸と相互作用しないか、又はこれらとの副反応を引き起こさず、反応に伴う官能基に特異的である。好適には、nnAAを用いて、必要な官能基を標的タンパク質に組み込む。
さらに、タンパク質に対して破壊的でない、条件例えば、タンパク質に対して許容可能で、かつその溶解度を維持するpH範囲を有し、タンパク質に有害な作用をもたらさない温度での水性条件下で、前記反応を進行させる。
タンパク質とリンカーとの結合部分の安定性を高めることも有利となりうる。従来の方法は、マレイミドとの反応によりシステインのチオール基と結合させて、チオールエーテルを形成する。チオールエーテルを逆反応に付して、抗体からリンカー薬剤誘導体を放出させることもできる。本発明の一実施形態では、アジドとアルキンとの間で使用される結合化学によって、芳香族トリアゾールが形成されるが、これは、有意に安定しており、可逆性を被りにくい。
さらに、反応の産物、タンパク質とペイロード同士の連結は、安定である、すなわち、従来の連結(アミド、チオールエーテル)に関連する安定性と等しいか、それより高くなければならない。結合に対する障害ではないが、結合反応がネイティブ条件下で実施することができれば、それ以上のリフォールディングプロセシングステップが排除されることから、多くの場合、有利である。
本発明のコンジュゲートの生成のための好ましい化学結合としては、以下のものが挙げられる:3+2アルキン−アジド環状付加;3+2双極子環状付加;ヘック(Heck)反応など、パラジウムを用いたカップリング;薗頭(Sonogashira)反応;鈴木(Suzuki)反応;スティル(Stille)カップリング;檜山/デンマーク(Hiyama/Denmark)反応;オレフィンメタセシス;ディールス・アルダー(Diels−alder)反応;ヒドラジン、ヒドラジド、アルコキシアミン又はヒドロキシルアミンとのカルボニル縮合;歪促進アジドアルキン環状付加などの歪促進環状付加;金属促進アジドアルキン環状付加;電子促進環状付加;断片放出(fragment extrusion)環状付加;アルケン環状付加とこれに続くb−脱離反応。
1つの好ましい実施形態によれば、組み込まれたアミノ酸は、アジド又はアルキン基を含有し、化学修飾の方法は、前記アジド又はアルキン基を、アルキン又はアジド基を含む試薬と反応させるステップを含む。考慮される反応は、トリアゾール連結の生成をもたらすヒュスゲン1,3−双極子環状付加である。アルキン又はアジド基を含む試薬は、タンパク質(例えば、抗体)、又は毒素若しくは細胞障害性薬剤、又は任意選択でリンカーを介してアルキン又はアジド基を担持し、半減期の延長に好適な物質(例えば、PEG基)であってよい。
前記反応に用いるアルキン基は、例えば、末端アルキン、シクロオクチン、例えば、ビシクロ[6.1.0]ノン−4−イン、ジベンゾシクロオクチン、及びジフルオロシクロオクチン部分である。
変種の反応では、組み込まれたアミノ酸は、アジド又はアルケン基を含有し、化学修飾の方法は、前記アジド又はアルケン基を、アルケン又はアジド基を含む試薬と反応させるステップを含む。アルケン又はアジド基を含む試薬は、タンパク質(例えば、抗体)若しくは毒素、又は半減期の延長に好適な物質(例えば、PEG基)であってよく、これは、任意選択でリンカーを介して、アルキン若しくはアルケン基を担持する。
2つ以上のnnAAが、標的タンパク質(例えば、抗体)に組み込まれる場合、化学修飾は、同じでも異なっていてもよい。例えば、2つのnnAAが組み込まれる場合、一方を薬剤部分に結合するように修飾し、他方をPEG部分に結合するように修飾してもよい。
一実施形態では、抗体薬剤コンジュゲートを調製するために、本発明の結合化学を用いる。
標的タンパク質
標的タンパク質は、抗体を含む。
本発明の抗体は、完全長抗体及び抗体フラグメントを含み、以下のものが挙げられる:Fab、Fab2、及びTROP−2に向けられた一本鎖抗体断片(scFv)、SSTR3、B7S1/B7x、PSMA、STEAP2、PSCA、PDGF、RaSL、C35D3、EpCam、TMCC1、VEGF/R、コネクシン(Connexin)−30、CA125(Muc16)、セマホリン(Semaphorin)−5B、ENPP3、EPHB2、SLC45A3(PCANAP)、ABCC4(MOAT−1)、TSPAN1、PSGRD−GPCR、GD2、EGFR(Her1)、TMEFF2、CD74、CD174(leY)、Muc−1、CD340(Her2)、Muc16、GPNMB、Cripto、EphA2、5T4、メソテリン(Mesothelin)、TAG−72、CA9(IX)、a−v−インテグリン(Integrin)、FAP、Tim−1、NCAM/CD56、α葉酸受容体、CD44v6、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、CD20、CA55.1、SLC44A4、RON、CD40、HM1.24、CS−1、β2ミクログロブリン、CD56、CD105、CD138、ルイス(Lewis)Y、GRNMP、トモレグリン(Tomoregulin)、CD33、FAP、CAIX、FasL受容体、MMPマトリックスメタロプロテアーゼ。
本発明の好ましい実施形態では、腫瘍標的に向けられる本発明の抗体を、以下から選択されるタンパク質部分に結合する:免疫刺激及びアポトーシス促進性タンパク質、特に、免疫刺激因子、例えば、IL−1α、IL−1β、他のIL−1ファミリーメンバー、限定はしないが、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12、IL−13、IL−15、IL−17ファミリー、IL−18、IL−21、IL−22、IL−23、IL−28を含むインターロイキンのいずれか、又はB7.1及びB7.2、TACIなどの共刺激リガンド。I型IFNファミリーのいずれか(IFNα及びβ及びλ)又はII型IFNγなどのインターフェロン。GM−CSFなどの造血増殖因子。CXCL−1、CXCL−2、CXCL−5、CXCL−6、CXCL−8、CXCL−9、CXCL−10、及びCXCL−11、CXCL−13、CCL−2、CCL−3、CCL−4、CCL−5、CCL−21、IP−10、エオタキシン(Eotaxin)、ランテス(RANTES)、PF4、GRO関連ペプチド、IL−8。アポトーシス促進性リガンド、例えば、FasL、TNF、PD−L1などのTNFスーパーファミリーに属するもの。抗微生物ペプチド、例えば、α及びβディフェンシン並びにカテリシジンLL37/hCAP18、ヒスタチン、カテプシンG、アズロシジン、キマーゼ、好酸球由来ニューロトキシン、高移動群1核タンパク質、HMGB1、ラクトフェリン。ROS及びRNS生成酵素、例えば、NADPHオキシダーゼ(NOX)のメンバー、一酸化窒素シンターゼNOS、INOS)、エラスターゼ及びカテプシンなどのプロテアーゼを含む好酸球顆粒タンパク質、アズロシジン(CAP37又はHBPとしても知られる)、ミエロペルオキシダーゼ、ペルホリン、グランザイム。
一実施形態では、標的タンパク質は、抗Her−2抗体である。
一実施形態では、標的タンパク質は、抗IL6抗体である。
一実施形態では、標的タンパク質は、抗PSMA抗体である。
好ましい実施形態では、抗PSMA抗体は、scfvである。
好ましい実施形態では、FGF21は、位置R131に非天然アミノ酸lys−アジド又は位置R131にプロパルギルリシンを含有するように修飾され、トリアゾールリンカーを介してPEG部分に結合している。
PEG部分
標的タンパク質は、PEG部分と結合させてもよい。PEG部分を抗体薬剤コンジュゲートに組み込んでもよい。PEG部分は、典型的に、5kDa〜40kDaの分子量を有し得る。より好ましくは、PEG部分は、約20kDaの分子量を有し得る。PEG部分は直鎖でも、分岐していてもよい。
抗体薬剤コンジュゲート(ADC)
本発明の細胞株は、均質性である抗体薬剤コンジュゲート(所与の薬剤、典型的には、細胞傷害性薬剤、あるいは、タンパク質若しくはPEG基に、合成リンカーにより共有結合された組換え抗体)の製造に特に有用であり、該コンジュゲート中の抗体当たりの薬剤(又は他の結合された分子)の数及びこれら薬剤の位置は制御されており、これによって、組み込まれた非天然アミノ酸含有のモノクローナル抗体が得られ、直交性化学により、薬剤部分(又は他の結合された分子)を担持するリンカーに部位特異的に結合される。
好適には、本発明は、ADCを取得する方法を提供し、これは、以下:
1.完全長抗体をコードするDNA配列を担持する1つ又は複数のプラスミドを安定した細胞株に導入することにより、停止コドンを上記配列内の特定の位置に導入するステップ、
2.所望の位置に導入された非天然アミノ酸(nnAA)を含む修飾抗体を精製するステップ、
3.抗体に導入されたnnAAに相補的な官能基を含むように修飾された細胞毒−リンカー誘導体を、直交性化学により、相補的反応基を含有する修飾抗体と反応させるステップ、
4.得られたADCを生成するステップ
を含む。
従って、本発明は、抗体成分が、所望の位置にユニークな反応性官能基を担持する非天然アミノ酸を組み込むように修飾され、前記官能基が薬剤部分(又はタンパク質若しくはPEG基)との結合を可能にするADCも提供する。
一実施形態では、本発明は、タンパク質、薬剤及びPEG部分から選択される1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ若しくは4つ、好ましくは1つ若しくは2つ、特に1つ)の部分と、トリアゾール部分を含むリンカーによって結合された抗Her−2抗体を含む抗体コンジュゲートを提供する。
特に、トリアゾール部分は、抗Her−2抗体の配列に組み込まれた非天然アミノ酸の側鎖のアジド又はアルキン部分と、タンパク質、薬剤若しくはPEG部分に結合したアルキン又はアジド部分との反応により形成することができる。
一実施形態において、トリアゾール部分は、抗Her−2抗体の配列に組み込まれた非天然アミノ酸の側鎖のアジド又はアルキン部分と、タンパク質、薬剤若しくはPEG部分に結合したアルキン又はアジド部分との、銅(I)触媒作用の条件下での反応により形成される。
別の実施形態において、抗体コンジュゲートは、トリアゾール部分を含むリンカーによって、薬剤及びPEG部分から選択される1つ又は複数の部分と結合した抗体を含み、ここで、前記トリアゾール部分は、抗体の配列に組み込まれた非天然アミノ酸の側鎖のアジド部分と、薬剤若しくはPEG部分に結合したアルキン部分との反応により形成され、前記アルキン部分は、シクロオクチン部分である。
別の実施形態において、抗体コンジュゲートは、トリアゾール部分を含むリンカーによって、薬剤及びPEG部分から選択される1つ又は複数の部分に結合された抗体を含み、ここで、前記トリアゾール部分は、抗体の配列に組み込まれた非天然アミノ酸の側鎖のアルキン部分と、薬剤若しくはPEG部分に結合したアジド部分との反応により形成され、前記アルキン部分は、末端アルキン、置換アルキン若しくはシクロオクチン部分である。
シクロオクチン部分は、例えば、ビシクロ[6.1.0]ノン−4−イン、ジベンゾシクロオクチン、及びジフルオロシクロオクチン部分であってよい。
前記抗体の配列に組み込まれた非天然アミノ酸は、好適には、PylRSの非天然アミノ酸基質、特に、(S)−2−アミノ−6((2−アジドエトキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸などの非天然リシン類似体である。
抗体
本発明において、ADCは、完全長抗体、並びに限定はしないが、Fab、Fab2、及び単鎖抗体断片などの抗体断片を含む。
細胞毒との結合に好適な抗体として、以下:抗Her−2、抗IL−6、TROP−2、SSTR3、B7S1/B7x、PSMA、STEAP2、PSCA、PDGF、RaSL、C35D3、EpCam、TMCC1、VEGF/R、コネクシン(Connexin)−30、CA125(Muc16)、セマホリン(Semaphorin)−5B、ENPP3、EPHB2、SLC45A3(PCANAP)、ABCC4(MOAT−1)、TSPAN1、PSGRD−GPCR、GD2、EGFR(Her1)、TMEFF2、CD74、CD174(leY)、Muc−1、CD340(Her2)、Muc16、GPNMB、Cripto、EphA2、5T4、メソテリン(Mesothelin)、TAG−72、CA9(IX)、a−v−インテグリン(Integrin)、FAP、Tim−1、NCAM/CD56、α葉酸受容体、CD44v6、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、CD20、CA55.1、SLC44A4、RON、CD40、HM1.24、CS−1、β2ミクログロブリン、CD56、CD105、CD138、ルイス(Lewis)Y、GRNMP、トモレグリン(Tomoregulin)、CD33、FAP、CAIX、FasL受容体、MMPマトリックスメタロプロテアーゼに対してターゲティングされるものが挙げられる。
目的とする1つの具体的抗体は、抗Her−2である。
目的とする別の具体的抗体は、抗PSMA抗体、特にscfvである。
前記scfvは、例えば、オーリスタチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、又はアマニチン誘導体であってもよい。
実施例1:
遺伝子内プロモータエレメントの作製
部位特異的突然変異誘発を用いて、tRNApyl遺伝子に下記の突然変異を誘発した:52位のA(WTメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)tRNApyl配列、配列番号3に関して))をCに突然変異させ;10位のAをGに、また14位のTをAに突然変異させた。
特に、単一の突然変異A52Cを含む構築物(tRNA−Bと称する構築物、配列番号9)、前述した突然変異の全て、すなわちA52C、A10G及びT14Aを含む構築物(tRNA−A2B、配列番号10)又はAボックスにのみ突然変異を含む構築物(A10G及びT14A、tRNA−A2、配列番号11若しくはA10G、tRNA−A1、配列番号7)を作製した。
遺伝子内プロモータを含むtRNApylの機能性発現の立証
tRNA変異体の機能を評価するために、in vitroアッセイを確認したが、ここでは、tRNA構築物、及びそのリーディングフレームに介在するアンバーコドン含有のGFPをコード化するリポータ構築物(GFPY40)で一時的に細胞をトランスフェクトする。pylRSを安定して発現するHEK293細胞を、様々なtRNA構築物(1μg)及びGFPY40リポータ(1μg)で一時的にトランスフェクトした。アンバー抑制を支持するエレメントの非存在下で、短縮GFPタンパク質を作製するが、細胞は蛍光ではない。しかし、機能性tRNAの導入と、アンバー抑制を支持するnnAAの存在によって、蛍光細胞をもたらす完全長GFPの作製が可能になる。GFP発現のレベルは、アンバー抑制の効率を表しており、フローサイトメトリーにより定量される。野生型tRNApylをコードするtRNA遺伝子(WTtRNA)、又はBボックス(BtRNA−配列番号9)、A及びBボックスの両方(A2BtRNA−配列番号10)、若しくはAボックス(A1tRNA−配列番号7;又はA2tRNA−配列番号11)に突然変異を含むtRNA遺伝子を全てH1プロモータの制御下で、部位特異的突然変異誘発により作製して、アッセイした。H1プロモータは、変異体の発現を確実にしたため、tRNA遺伝子に導入された突然変異の機能的作用を調べることができた。さらに、GFPY40単独でトランスフェクトしたサンプルを作製して、バックグラウンドGFPレベルを確認した。トランスフェクトした細胞をアミノ酸lysアジド(2mM)の存在下で増殖させ、18時間インキュベートした。次に、フローサイトメトリーによりGFP蛍光をアッセイし、平均蛍光強度を各サンプルについて決定した。データをFCS Expressで分析した後、陰性対照を上回る蛍光を示す細胞にデータセットを限定するマーカを用いて、各サンプルの平均蛍光強度を決定した。図4に示すように、データから、Aボックス部位(H1−A1tRNA及びH1A2tRNA)での突然変異の組み込みは、野生型H1WTtRNAに対し、アンバー抑制を支持する能力に関してtRNAの活性に影響を与えないことが明らかである。BtRNA及びA2BtRNAをコードする構築物は、WTtRNAより低レベルであるにもかかわらず、アンバー抑制を支持する。従って、構築物は機能性であり、H1プロモータのような上流プロモータエレメントの非存在下でもtRNAの発現を可能にするのに必要な遺伝子配列を含み得る。
tRNA突然変異が、tRNAの発現を支持することができるかどうかの評価を始めるために、H1プロモータの非存在下で野生型tRNAをコード化するtRNA構築物をアッセイした。野生型tRNApyl(WTtRNA)をコードする構築物、又はBボックス(B tRNA−配列番号9)若しくはA及びBボックスの両方(A2B;A2B tRNA−配列番号10)に突然変異を含む構築物を、前述した本発明者らのin vitroアンバー抑制アッセイを用いて評価した。H1プロモータの制御下のWTtRNA(H1−tRNA)を陽性対照として使用し、さらに、tRNAの非存在下でのバックグラウンドアンバー抑制を示すために、1つのサンプルをGFPY40リポータのみでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を2mMのlys−アジドnnAAに暴露し、細胞を3日間インキュベートした。GFP発現をフローサイトメトリーにより検定し、平均蛍光強度を決定した。これらのデータをプロッティングし、図5に示した。H1−tRNA構築物は、効率的なアンバー抑制(MFI=1,004,228.00)を可能にすることがすでに判明している。しかし、GFP蛍光は、tRNAを欠失するサンプルでは全く観測されず(GFPY40;MFI=65,929)、wttRNAを含むサンプルでは低レベル(MFI=114,478.1)が観察された。tRNA突然変異体tRNA(MFI=410,131.1)及びA2B tRNA(MFI=242,747.9)は、wttRNA構築物より、それぞれ4倍及び2.5倍高いGFPの発現を可能にした。このデータは、B及びA2B突然変異が、機能性遺伝子内プロモータを再構成すること、及び発現されたtRNAは、標的タンパク質へのnnAAの送達を媒介することができるため、機能性であることを示している。
pyltRNA配列に導入されたB突然変異は、アンバー抑制を支持したtRNAの発現を可能にしたことを確認し、本発明者らは、次に、この突然変異が、tRNAの直交性に影響を与え、天然のアミノ酸の組み込みをもたらしたかどうかを調べた。そのために、この3H7細胞を、GFPY40リポータと一緒に、WT−tRNA、B−tRNA、H1−tRNA及びH1−B−tRNAをコード化する発現構築物で一時的にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、表示のように(図6)、2mMのlysアジドの存在下又はnnAAの非存在下で増殖させてから、3日後、フローサイトメトリーによりGFP発現を評価した。さらに、GFPY40のみでトランスフェクトしたサンプルを検定して、tRNAの非存在下でのバックグラウンドアンバー抑制を決定した。図3は、lysアジドH1−tRNA(MFI=347,958)、H1−B tRNA(MFI=313,386)及びB−tRNA(MFI=232,505)の存在下では、全て、頑健なアンバー抑制及びバックグラウンドレベル(MFI=23,487)を超える完全長GFPの発現を支持することを示している。nnAAの非存在下では、3つの構築物を含む細胞においてバックグラウンドレベルのGFP発現が観測された(それぞれ、MFI=33,452;36,217;42,104)。これらのデータから、B tRNAが直交性であり、高レベルの発現を支持することが事前に判明した構築物(H1−tRNAB)を含め、nnAAの非存在下では、バックグラウンドを超えるアンバー抑制レベルを支持しないことがわかる。WTtRNA(MFI33,781)と、遺伝子外プロモータエレメントを欠失したtRNAB(232,505)とのGFPの発現の比較から、B突然変異が、機能性遺伝子内プロモータを生成することが確認される。実際、B tRNA構築物は、WTtRNAに対して、GFPのアンバー抑制依存性発現のレベルの7倍増大を可能にした。
実施例2
コピー数及びアンバー抑制
tRNA−B構築物によるアンバー抑制の効果を高めるために、増加したコピー数が活性の増大をもたらすかどうかを評価した。
WT、B、又はA2B tRNAの2コピーをタンデムでクローニングして、WT、B、又はA2B tRNAの2コピーを含む単一のベクターを作製した。これらの構築物による増加遺伝子用量の効果を評価するために、WTpylRSを発現する細胞をtRNA構築物で一時的にトランスフェクトし、2日後に、GFPY40リポータ構築物及びGFP発現を評価した。図7に示すデータから、B(MFI=67,487)及びA2B tRNA(MFI=61,950)は、WTtRNA(MFI=18,002)によるものを超えるアンバー抑制レベルを支持することができることがわかり、B及びA2B tRNAが、機能性プロモータエレメントを含むことが確認される。さらに、本発明者らは、B(MFI=110,941)及びA2B tRNA(MFI=96,158)のタンデムコピーが、GFP発現により決定されるように、アンバー抑制の有効性の同時増加をもたらすことも観測した。遺伝子用量は、WTtRNAアンバーリードスルーを改善しなかった(MFI=20,617)。
実施例3
遺伝子外プロモータ及びハイブリッド(4型)プロモータの下でのtRNApylの発現
H1プロモータは、本明細書で、また他者により、tRNApylの発現を支持することが証明されている。しかし、哺乳動物細胞において、polIII/3型(例えば、H1及びU6)プロモータの使用により、有意な有害作用が観測されている。従って、これらの欠陥を解消するために、RNA発現を制御することが知られる遺伝子外プロモータエレメントのセットを、tRNApylを発現するその能力について評価した。遺伝子外プロモータエレメントは、ヒトVault、EBER及び7SLRNAの発現を調節することがわかっている(Englert et al.,2004;Kickhoefer et al.,2003;Howe & Shu 1989)。これらのプロモータの各々は、転写因子TFIIIcを動員するが、SNAPc(U6及びH1により用いられる)は動員しないことが判明している(Moqtaderi et la.,2010)(Felton−Edkins et al(2006)J Biol Chem 281:33871)。興味深いことに、これらのプロモータによる効率的な転写は、遺伝子内及び遺伝子外調節配列の両方を必要とする(Englert et al.,(2004);Kickhoefer et al.,(2003);Howe & Shu(1989))。共通A及びBボックスを含む機能性tRNApylの同定により、tRNApylの発現でのそれらの使用が可能になった。Vault、7SL、及びEBER2 RNAを調節することがわかっているプロモータエレメントを既に記載されている配列から構築した(Englert et al.,2004;Kickhoefer et al.,2003;Howe & Shu 1989)。本発明者らは、遺伝子外プロモータエレメントとして、ヒトVault及び7SLRNA遺伝子並びにエプスタイン・バール(Epstein Barr)ウイルスEBER遺伝子のプロモータを、これらをWTtRNA、BtRNA、A2BtRNA、並びにA10G及びA52Cを含有する別の変異体(ABtRNA;配列番号8)又はA10Gに単一の突然変異を含有する別の変異体(A1tRNA;配列番号7)をコードする遺伝子の5’側に配置することにより試験した。
各構築物の活性は、前述したように、WTpylRSを安定して発現する細胞に対するGFPY40リポータによる一過性トランスフェクションにより評価した。この実験のために、記載した構築物の各々をコードする1μgのPCR産物を用いた。いずれの場合も、細胞をlysアジドnnAAに3日間暴露した後、フローサイトメトリーによりGFPレベルをアッセイした。平均蛍光強度を各サンプルについて決定し、プロッティングした(図8)。GFPY40だけ(tRNAなし)でトランスフェクトしたサンプルを用いて、tRNAの非存在下でのバックグラウンドアンバー抑制を確認した(tRNAなし、MFI=137,589)。さらに、H1−WTtRNAでトランスフェクトしたサンプルを用いて、GFPの高い発現レベル及びtRNAの機能(H1WTtRNA、MFI=828,503)並びにtRNA欠失遺伝子外プロモータによって決定された低レベルのアンバー抑制(WTtRNA、MFI=117,626)を画定した。図7に示すように、遺伝子外プロモータ(EBER、Vault及び7SL)を使用すると、EBER、Vault及び7SLプロモータを含むWTtRNAに対して、GFPリポータの発現レベルが向上することがわかった。しかし、これらのプロモータの各々からの性能の向上には、遺伝子内tRNAエレメントが必要であった。実際、7SLWTtRNAでトランスフェクトした細胞は、最低限のアンバー抑制を示した(7SLWTtRNA、MFI=106,075)。しかし、相対的アンバー抑制有効性は、保存A及びBボックスエレメントを含むtRNAで向上した(7SLtRNAA1、MFI=114,393;7SLAB、MFI=210,380;7SLA2B、MFI=245,120)。興味深いことに、最も高いアンバー抑制レベルは、機能性Bボックスのみを含むtRNA構築物で観測された(7SLBtRNA、MFI=265,395)。この一般的傾向は、VaultRNAプロモータでも認められた。機能性Bボックスを含む構築物(Vault、MFI=170,838)は、共通A及びBボックス(Vault A2BtRNA、MFI=154,445)の両方を含むもの、並びに野生型tRNA(Vault WTtRNA、MFI=102,415)に対して性能の向上を示した。EBERプロモータは、tRNAが、保存A及びBボックスエレメントを含むとき、最もよく機能した(EBER A2BtRNA、MFI=136,196)。この構築物は、B突然変異を含むtRNA(EBER BtRNA、MFI=113,496)及び単一Bボックスと部分的に再構築されたAボックスを含むtRNA(EBER ABtRNA、MFI=119,719)、並びに非修飾tRNA(EBER WTtRNA、MFI=99,393)より性能が優れていた。本発明者らのデータは、Vault snRNA、7SL RNA及びEBER RNAの遺伝子内RNAプロモータは、tRNApylの発現及び機能を支持することができることを示している。アンバー抑制の効果は、機能性Bボックスの存在に依存的である。
次に、本発明者らは、様々な機能性tRNA発現構築物の間でtRNA依存性アンバー抑制のレベルを直接比較するために、アンバー抑制活性を試験した(図9)。このアッセイでは、WTpylRSを安定して発現する細胞を、1μgのGFPY40リポータ及び1μgのtRNA発現プラスミド(H1−tRNA、VaultBtRNA、7SLBtRNA、EBERBtRNA、BtRNA若しくはWTtRNA)の1つで一時的にトランスフェクトした。図9は、7SL−BtRNA(MFI=167,024)及びVault−BtRNA(MFI=168,298)の両方が、H1−tRNA(MFI=241,901)で認められたものと同等のアンバー抑制活性を支持することができ、これにより、H1−tRNA(図8)に対し、tRNA−B構築物(MFI=89,869)及びWTtRNA(MFI=25,459)と比較して活性の向上をもたらしたことを示している。
B tRNAを含む遺伝子外7SLプロモータにより支持されるアンバー抑制レベルを増大するために、H1tRNAに対する7SL−tRNA−Bのタンデム反復配列の作用を調べた。このために、7SL−tRNA−Bの2コピーを単一ベクターにクローニングしてから、GFPY40と一緒にWTpylRSを安定して発現する細胞の一過性トランスフェクションを用いて、アンバー抑制レベルを評価した。細胞をlysアジドと一緒に3日間インキュベートした後、GFPレベルをフローサイトメトリーにより定量した。図10は、7SL−B−tRNA並びにH1−tRNAの遺伝子コピーの増加が、アンバー抑制有効性及びGFP発現レベルの向上をもたらすことを示している。この実験では、GFPのみでトランスフェクトした細胞を陰性対照(MFI=0)として使用した。H1−tRNAのタンデムコピー(2×H1tRNA、MFI=629)でトランスフェクトした細胞は、H1tRNAの単一コピー(MFI=453)に対して、GFPY40リポータ構築物の発現の28%増大をもたらした。同じ効果が、遺伝子外プロモータを欠失しているが、機能性Bボックスを含むtRNAのタンデム反復配列でも認められた。ここで、tRNA Bのタンデム反復配列(2×tRNA B、MFI=366)は、単一遺伝子コピー(tRNA、MFI=329)に対して10%の向上を示した。7SLtRNABのタンデムコピー(2×7SLtRNAB、MFI=568)もまた、単一遺伝子で観測されたシグナル(7SLtRNAB、MFI=520)に対して8.5%の向上を示した。7SLプロモータの制御下で、機能性Bボックスを欠失した野生型tRNAをコード化する構築物は、7SLtRNABより有効ではないことが既に判明している。前者の構築物も、この効果を確認するために、該分析に包含した(7SLtRNAWT、MFI=312)。実際、このデータは、B突然変異が、7SL−tRNA構築物の性能を向上させるという以前の実験結果を裏付けるものである。これらのデータから、遺伝子数の増加によって、サプレッサーtRNAの有効性を向上させることができることがわかる。さらに、これらのデータはまた、7SLプロモータが、tRNApylの発現を促進する上でH1プロモータと同等であることも示している。
実施例4
バイシストロニックメッセージの一部としてのtRNApylの発現
本発明者らは、tRNApylを発現するその能力について、バイシストロニックtRNA発現構築物の有用性も試験した。その際、マウスtRNA GluとtRNA Aspを使用した。いずれの場合も、活性を増大するために、構築物の複数の反復配列を作製した(3×Glu−pyl及び2×Asp−pyl)。ここで、1μgのリポータ構築物GFPY40と1μgの表示tRNA発現ベクター(図11)で3H7細胞を一時的にトランスフェクトしてから、lysアジドと一緒に3日間インキュベートした。データをフローサイトメトリーにより収集し、各サンプルについて平均蛍光強度をプロッティングした。本発明者らは、バイシストロニック構築物が、H1−tRNA陽性対照に対して高レベルのアンバー抑制を可能にすることを認めた。マウスtRNAglu及びpyltRNAペアの3つのタンデム反復配列(3×Glu、MFI=419)、並びにマウスtRNAasp−pyltRNAペアの2つのタンデム反復配列(2×Asp、MFI=419)から構成されるtRNA発現カセットは、H1−tRNA(MFI=453)により生成されるシグナルの>90%を呈示したが、これは、機能性tRNAを効率的に生産するその能力を示している。さらに、7SLtRNAB(MFI=520)もまた、tRNAの効率的な発現を明らかにした。7SL WT tRNA(MFI=312)から成る構築物は、低い効率の測定基準として包含した。加えて、GFPY40リポータのみを含む細胞株を陰性対照(MFI=0)として用いた。このデータは、バイシストロニック構築物が、機能性A及びBボックスエレメントを欠失したtRNAの発現の効率的な方法であることを示し、さらに、哺乳動物細胞が、これらのRNA分子をプロセッシングして、成熟及び機能性tRNAを産生することができることも明らかにしている。
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配列表:
下線を引いた配列は、Aボックス及び/又はBボックス配列を示す。
太字は、突然変異したヌクレオチドを示す。

配列番号1
>tRNApyl メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)、WT;コード配列
Figure 0006550339
配列番号2
>tRNApyl メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)、WT;コード配列
Figure 0006550339
配列番号3
>tRNApyl メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)、WT;コード配列
Figure 0006550339
配列番号4
>tRNApyl メタノコッコイデス・ブルトニイ(Methanococcoides burtonii)、WT;コード配列
Figure 0006550339
配列番号5
>tRNApyl デスルホバクテリウム・ハフニエンス(Desulfobacterium hafniense)、WT;コード配列
Figure 0006550339
配列番号6
>WT及び突然変異体Aボックス及び/又はBボックスtRNApyl構築物に用いられる転写終結配列
Figure 0006550339
配列番号7
>tRNApyl メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A10G突然変異(「tRNA−A1」);コード配列
Figure 0006550339
配列番号8
tRNApyl メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A10G A52C突然変異(「tRNA−AB」);コード配列
Figure 0006550339
配列番号9
tRNApyl メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A52C突然変異(「tRNA−B」);コード配列
Figure 0006550339
配列番号10
tRNApyl メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A10G、T14A、A52C突然変異(「tRNA−A2B」);コード配列
Figure 0006550339
配列番号11
tRNApyl メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)A52C、T14A、突然変異(「tRNA−A2」);コード配列
Figure 0006550339
配列番号12
7SLプロモータ5’領域配列
Figure 0006550339
配列番号13
7SL構築物に用いられるスペーサ
Figure 0006550339
配列番号14
7SL tRNA−WT構築物
Figure 0006550339
配列番号15
7SL tRNA−B構築物
Figure 0006550339
配列番号16
7SL tRNA−A1構築物
Figure 0006550339
配列番号17
7SL tRNA−AB構築物
Figure 0006550339
配列番号18
7SL tRNA−A2B構築物
Figure 0006550339
配列番号19
7SL、Vault、EBER構築物で用いられる転写終結配列
Figure 0006550339
配列番号20
Vaultプロモータ5’領域配列
Figure 0006550339
配列番号21
Vault−tRNA構築物に用いられるスペーサ
Figure 0006550339
配列番号22
Vault tRNA−WT構築物
Figure 0006550339
配列番号23
Vault tRNA−B構築物
Figure 0006550339
配列番号24
Vault tRNA−AB構築物
Figure 0006550339
配列番号25
Vault tRNA−A2B構築物
Figure 0006550339
配列番号26
EBER2プロモータ5’領域配列
Figure 0006550339
配列番号27
EBER構築物で用いられるスペーサ
Figure 0006550339
配列番号28
EBER2 tRNA−WT構築物
Figure 0006550339
配列番号29
EBER2 tRNA−B構築物
Figure 0006550339
配列番号30
EBER2 tRNA−A1構築物
Figure 0006550339
配列番号31
EBER2 tRNA−AB構築物
Figure 0006550339
配列番号32
EBER2 tRNA−A2B構築物
Figure 0006550339
配列番号33
H1プロモータ配列
Figure 0006550339
配列番号34
H1 tRNA−WT構築物
Figure 0006550339
配列番号35
H1 tRNA−B構築物
Figure 0006550339
配列番号36
H1 tRNA−A1構築物
Figure 0006550339
配列番号37
H1 tRNA−A2構築物
Figure 0006550339
配列番号38
H1 tRNA−A2B構築物
Figure 0006550339
配列番号39
H1−tRNA構築物で用いられる転写終結配列
Figure 0006550339
配列番号40
ハツカネズミ(M.Musculus)tRNAgluコード配列
Figure 0006550339
配列番号41
5’及び3’非コード領域を有するハツカネズミ(Mus musculus)
Figure 0006550339
配列番号42
1×tRNAglu−pyl DNA構築物
Figure 0006550339
配列番号43
3×tRNAglu−pyl:バイシストロニック構築物tRNAglu−tRNAplyの3つの反復配列を含むDNA構築物
Figure 0006550339
配列番号44
tRNAglu−pyl構築物の5’リーダ配列
Figure 0006550339
配列番号45
tRNAglu−pyl構築物で用いられる転写終結配列
Figure 0006550339
配列番号46
tRNAglu−pyl構築物で用いられる転写終結配列
Figure 0006550339
配列番号47
tRNAglu−pyl構築物で用いられるインタージーン(Intergene)配列
Figure 0006550339
配列番号48
ハツカネズミ(M.Musculus)tRNAaspコード配列
Figure 0006550339
配列番号49
上流及び下流領域を有するハツカネズミ(M.Musculus)tRNAaspコード配列
Figure 0006550339
配列番号50
1×tRNAasp−pyl DNA構築物
Figure 0006550339
配列番号51
2×tRNAasp−pyl:バイシストロニック構築物tRNAasp−pylの2反復配列を含むDNA構築物
Figure 0006550339
配列番号52
2×Asp−pyl構築物で用いられるリーダ配列
Figure 0006550339
配列番号53
2×Asp−pyl構築物で用いられる転写終結配列
Figure 0006550339
配列番号54
tRNAasp−pyl構築物で用いられるインタージーン配列
Figure 0006550339
配列番号55
ヒトtRNAgluコード配列
Figure 0006550339
配列番号56
ヒトtRNAaspコード配列
Figure 0006550339
配列番号57
7SLプロモータ変異体:7SL−1
Figure 0006550339
配列番号58
7SLプロモータ変異体:7SL−2
Figure 0006550339
配列番号59
7SLプロモータ変異体:SL28
Figure 0006550339
配列番号60
7SLプロモータ変異体:7L63
Figure 0006550339
配列番号61
7SLプロモータ変異体:7L23
Figure 0006550339
配列番号62
7SLプロモータ変異体:7L7
Figure 0006550339
配列番号63
EBERプロモータ変異体:EBER1
Figure 0006550339
配列番号64
Vaultプロモータ変異体:Hvg3
Figure 0006550339
配列番号65
Vaultプロモータ変異体:Hvg2
Figure 0006550339
配列番号66
メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)pylRSaa配列
Figure 0006550339
配列番号67
メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)pylRSヌクレオチド配列
Figure 0006550339
本発明、並びに以下に記載する特許請求の範囲全体を通して、文脈から別の意味に解釈すべき場合を除き、「含む」という用語、並びに「含む」及び「含んでいる」などの変形は、記載された整数、ステップ、整数若しくはステップの群の包含を意味するが、いずれか他の整数、ステップ、整数若しくはステップ群の除外を意味するわけではないことは理解されよう。本発明の様々な態様を以下に示す。
1.tRNApylコード配列と、真核生物発現系において、ナンセンス抑制を支持する上で十分に、機能性tRNApylを発現させるように作用することができるRNAポリメラーゼIIIプロモータ配列とを含むDNA構築物。
2.前記ナンセンス抑制が、アンバー抑制である、上記1に記載のDNA構築物。
3.前記tRNApylコード配列の下流にある転写終結配列を含む、上記1又は上記2に記載のDNA構築物。
4.前記構築物が、前記tRNApylコード配列と、機能性遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータとを含むtRNApyl遺伝子を含む、上記1〜3のいずれかに記載のDNA構築物。
5.前記tRNApyl遺伝子が、前記遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータの推定Aボックス及び/又は推定Bボックス内の1つ又は2つのヌクレオチド位置に突然変異を含む、上記4に記載のDNA構築物。
6.前記tRNApyl遺伝子が、推定Bボックス内の1つ又は2つ(例えば、1つ)のヌクレオチド位置に突然変異を含む、上記5に記載のDNA構築物。
7.前記tRNApyl遺伝子が、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosacrina mazei)由来の配列番号7、8、9、10、若しくは11の配列を有する若しくは含むか、又は、配列番号7、8、9、10若しくは11に太字で示される突然変異が同等位置に実施されている別の細菌種に由来する相似tRNApyl遺伝子の配列を有する若しくは含む、上記4〜6のいずれかに記載のDNA構築物。
8.前記tRNApylコード配列が、RNAポリメラーゼIIIプロモータに作動可能に連結され、ここで、前記プロモータは、tRNApylコード配列の5’側に位置する、上記1〜6のいずれかに記載のDNA構築物。
9.前記5’プロモータとtRNApylコード配列が、転写開始部位を含むスペーサ配列によって隔てられている、上記7に記載のDNA構築物。
10.遺伝子内プロモータエレメントと、tRNApylコード配列の5’側に位置するRNAポリメラーゼIIIプロモータエレメントである5’プロモータエレメントとを、前記遺伝子内プロモータエレメントと前記5’プロモータエレメントとの組み合わせが、ハイブリッドプロモータを構成するように含む、上記1〜9のいずれかに記載のDNA構築物。
11.前記5’プロモータエレメントが、4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの5’エレメントである、上記10に記載のDNA構築物。
12.4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの前記5’プロモータエレメントが、EBER RNA遺伝子プロモータの5’プロモータエレメント、7SL RNA遺伝子プロモータ、及びVault RNA遺伝子プロモータから選択される、上記11に記載のDNA構築物。
13.前記5’プロモータエレメントが、配列番号12、20、26、57、58、59、60、61、62、63、64及び65から選択される、上記11に記載のDNA構築物。
14.4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの前記5’プロモータエレメントが、7SL RNA遺伝子プロモータである、上記11に記載のDNA構築物。
15.前記5’プロモータエレメントと前記RNApylコード配列が、転写開始部位を含むスペーサ配列によって隔てられている、上記10〜14のいずれかに記載のDNA構築物。
16.前記スペーサ配列が、配列番号13、21及び27から選択される、上記14に記載のDNA構築物。
17.上記1〜16のいずれかに記載のDNA構築物の複数のコピー(例えば、2〜60コピー)を含む多量体DNA構築物。
18.tRNApyl遺伝子の5’側に真核生物tRNAglu遺伝子又は真核生物tRNAasp遺伝子を含むDNA構築物であって、前記tRNAglu遺伝子又はtRNAaspが、転写終結配列を欠失しているために、転写の際に、バイシストロニックメッセージをもたらす、DNA構築物。
19.前記RNApyl遺伝子が、野生型遺伝子である、上記13に記載のDNA構築物。
20.前記RNApyl遺伝子が、推定Aボックス及び/又は推定Bボックス内の1つ又は2つのヌクレオチド位置に突然変異を含む、上記13に記載のDNA構築物。
21.PylRSコード配列又は遺伝子をさらに含む、上記1〜15のいずれかに記載のDNA構築物。
22.上記1〜16のいずれかに記載のDNA構築物を含むベクターで形質転換された真核宿主細胞。
23.ナンセンスコドンによりコードされる1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換されている、上記17に記載の真核宿主細胞。
24.機能性PylRS及び機能性tRNApylを発現するか、又は発現することができる真核宿主細胞であって、機能性tRNApyl発現は、遺伝子内プロモータエレメントと、tRNApylコード配列の5’側に位置するRNAポリメラーゼIIIプロモータエレメントである5’プロモータエレメントとの制御下で、前記遺伝子内プロモータエレメントと前記5’プロモータエレメントとの組み合わせが、ナンセンス抑制を支持する上で十分にハイブリッドプロモータを構成するように起こる真核宿主細胞。
25.前記ナンセンス抑制が、アンバー抑制である、上記19に記載の真核宿主細胞。
26.前記宿主細胞が、哺乳動物細胞である、上記17〜20のいずれかに記載の真核宿主細胞。
27.ナンセンスコドンによりコードされる1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質を調製する方法であって、真核細胞株において前記標的タンパク質を発現させるステップを含み、前記真核細胞株が、ナンセンスコドンによりコード化される1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質をコード化する遺伝子で形質転換されると共に、PylRS及びtRNApylをコード化する遺伝子でも、PylRS及びtRNApylが、ナンセンス抑制を支持する上で、十分に発現され、かつ機能するように、形質転換される方法。
28.前記細胞株が、上記1〜21のいずれかに記載のDNA構築物で形質転換される、上記27に記載の方法。
29.化学的に修飾した標的タンパク質を調製する方法であって、上記27又は28に記載の方法に従い標的タンパク質を調製するステップ、及び得られた標的タンパク質を化学的に修飾するステップを含む方法。
30.前記ナンセンスコドンが、アンバーコドンである、上記22〜29のいずれかに記載の細胞、細胞株又は方法。
31.前記非天然アミノ酸の少なくとも1つは、アルキン又はアジド部分を含む、上記22〜30のいずれかに記載の細胞、細胞株又は方法。
32.上記27〜31のいずれかに記載の方法に従う製法を用いて調製された抗体コンジュゲートなどのタンパク質コンジュゲートであって、抗体などの前記タンパク質が、タンパク質、薬剤及びPEG部分から選択される1つ又は複数の他の部分に、トリアゾール部分を含むリンカーを介して結合されている、タンパク質コンジュゲート。
33.1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質を発現すると共に、PylRS及びtRNApylを発現するように安定に形質転換された真核細胞株の生存能を高める方法であって、ナンセンス抑制を支持する上で十分に、PylRS及びtRNApylが発現され、かつ機能するように、PylRS及びtRNApylをコード化する遺伝子で前記真核細胞株を形質転換するステップを含む方法。
34.前記ナンセンス抑制が、アンバー抑制である、上記33に記載の方法。
35.前記RNApylが、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)由来のtRNApylではない、上記1〜34のいずれかに記載の細胞、細胞株、方法又はタンパク質コンジュゲート。
本明細書の説明及びクレームがその一部を形成する本出願は、あらゆる後願に対する優先権の根拠として用いることができる。こうした後願のクレームは、本明細書に記載するいずれかの特徴又は特徴の組み合わせに関連し得る。これらは、製品、組成物、方法、又は使用クレームの形態であってよく、例えば、限定するものではないが、以下のクレームを含み得る。

Claims (26)

  1. tRNApylコード配列と、真核生物発現系において、アンバー抑制を支持する上で十分に、機能性tRNApylを発現することができる機能性遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータ配列とを含むtRNApyl遺伝子を含むDNA構築物であって、前記tRNApyl遺伝子が、機能性遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータ配列をもたらす、前記機能性遺伝子内RNAポリメラーゼIIIプロモータの推定Aボックス及び/又は推定Bボックス内の1つ又は2つのヌクレオチド位置に突然変異を含む、DNA構築物。
  2. 前記tRNApylコード配列の下流にある転写終結配列を含む、請求項1に記載のDNA構築物。
  3. 前記tRNApyl遺伝子が、推定Bボックス内の1つ又は2つ(例えば、1つ)のヌクレオチド位置に突然変異を含む、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
  4. 前記tRNApyl遺伝子が、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosacrina mazei)由来の配列番号7、8、9、10、若しくは11の配列を有する若しくは含むか、又は、配列番号7、8、9、10若しくは11におけるA10G、T14A及びA52Cから選択される1つ又は複数の突然変異が同等位置に実施されている別の細菌種に由来する相似tRNApyl遺伝子の配列を有する若しくは含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のDNA構築物。
  5. 前記tRNApyl遺伝子が、配列番号7、8、9、10若しくは11におけるA10G、T14A及びA52Cから選択される1つ又は複数の突然変異が同等位置に実施されている、デスルフィトバクテリウム・ハフニエンス(Desulfitobacterium hafniense)(配列番号5)、メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans)(配列番号2)、メタノサルシナ・ブルトニイ(Methanosarcina burtonii)(配列番号4)、又はメタノサルシナ・サーモフィラ(Methanosarcina thermophila)に由来するtRNApyl遺伝子の配列を有する若しくは含む、請求項4に記載のDNA構築物。
  6. 前記tRNApylコード配列が、RNAポリメラーゼIIIプロモータに作動可能に連結され、ここで、前記プロモータは、tRNApylコード配列の5’側に位置する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のDNA構築物。
  7. 前記5’プロモータとtRNApylコード配列が、転写開始部位を含むスペーサ配列によって隔てられている、請求項6に記載のDNA構築物。
  8. 機能性遺伝子内プロモータエレメントと、tRNApylコード配列の5’側に位置するRNAポリメラーゼIIIプロモータエレメントである5’プロモータエレメントとを、前記遺伝子内プロモータエレメントと前記5’プロモータエレメントとの組み合わせが、ハイブリッドプロモータを構成するように含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のDNA構築物。
  9. 前記5’プロモータエレメントが、4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの5’エレメントである、請求項6〜8のいずれか一項に記載のDNA構築物。
  10. 4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの前記5’プロモータエレメントが、EBER RNA遺伝子プロモータの5’プロモータエレメント、7SL RNA遺伝子プロモータ、及びVault RNA遺伝子プロモータから選択される、請求項9に記載のDNA構築物。
  11. 前記5’プロモータエレメントが、配列番号12、20、26、57、58、59、60、61、62、63、64及び65から選択される、請求項9に記載のDNA構築物。
  12. 4型RNAポリメラーゼIIIプロモータの前記5’プロモータエレメントが、7SL RNA遺伝子プロモータである、請求項9に記載のDNA構築物。
  13. 前記5’プロモータエレメントと前記RNApylコード配列が、転写開始部位を含むスペーサ配列によって隔てられている、請求項8〜12のいずれか一項に記載のDNA構築物。
  14. 前記スペーサ配列が、配列番号13、21及び27から選択される、請求項13に記載のDNA構築物。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載のDNA構築物の複数のコピー(例えば、2〜60コピー)を含む多量体DNA構築物。
  16. tRNApyl遺伝子の5’側に真核生物tRNAglu遺伝子又は真核生物tRNAasp遺伝子を含む請求項1〜15のいずれか一項に記載のDNA構築物であって、前記tRNAglu遺伝子又はtRNAaspが、転写終結配列を欠失しているために、転写の際に、バイシストロニックメッセージをもたらす、DNA構築物。
  17. PylRSコード配列又は遺伝子をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のDNA構築物。
  18. 請求項1〜17のいずれか一項に記載のDNA構築物を含むベクターで形質転換された真核宿主細胞。
  19. アンバーコドンによりコードされる1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換されている、請求項18に記載の真核宿主細胞。
  20. 前記宿主細胞が、アンバーコドンによりコードされる1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換されている哺乳動物細胞である、請求項18又は19に記載の真核宿主細胞。
  21. アンバーコドンによりコードされる1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質を調製する方法であって、請求項18〜20のいずれか一項に記載の真核細胞株において前記標的タンパク質を発現させるステップを含み、前記真核細胞株が、標的タンパク質をコードする遺伝子で形質転換される、方法。
  22. 前記細胞株が、請求項1〜17のいずれか一項に記載のDNA構築物で形質転換される、請求項21に記載の方法。
  23. 化学的に修飾した標的タンパク質を調製する方法であって、請求項21又は22に記載の方法に従い標的タンパク質を調製するステップ、及び得られた標的タンパク質を化学的に修飾するステップを含む方法。
  24. 前記非天然アミノ酸の少なくとも1つは、アルキン又はアジド部分を含む、請求項19又は20に記載の細胞、又は細胞株。
  25. 前記非天然アミノ酸の少なくとも1つは、アルキン又はアジド部分を含む、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
  26. 1つ又は複数の非天然アミノ酸を含有する標的タンパク質を発現すると共に、PylRS及びtRNApylを発現するように安定に形質転換された真核細胞株の生存能を高める方法であって、請求項1〜17のいずれか一項に記載のDNA構築物で前記真核細胞株を形質転換するステップを含む方法。
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