JP6549909B2 - 光線制御素子および立体表示装置 - Google Patents
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Description
ここで、図28を参照して、IPの原理について説明する。
IPでは、図28(a)に示すように、撮影時において、多数の小さな要素レンズL,L,…が2次元配列されたレンズアレーLaを通して被写体Tを撮影する。ここで、被写体Tから射出される各光線は、要素レンズLにより要素画像eとして、撮像素子(不図示)の各撮像画素P1,P2,…,Pnに取得される。
このように、レンズを用いた光学系でインテグラル方式を実現しようとすると、その性能限界によって、さらなる高精細な立体像を表示することができないという問題がある。
これによって、光アレーアンテナから放射される光線は、要素画像の画素値の階調に対応した強度となる。
このように、光線制御素子は、放射する光線の偏向および光強度を、要素画像の画素に対応して制御されることで、要素レンズを用いることなく、要素画像を再現することができる。
ここで、光アレーアンテナを、透明下地構造上に、視域を分割した複数の方向に光の出射方向を向けて複数配置することで、個々の光アレーアンテナは、要素画像を再現する際に、所定の視域よりも小さい振れ角で光線を出射すればよい。
これによって、光アレーアンテナから放射される光線は、要素画像の画素値の階調に対応した強度となる。
このように、光線制御素子は、放射する光線の偏向および光強度を、要素画像の画素に対応して制御されることで、要素レンズを用いることなく、要素画像を再現することができる。
そして、立体表示装置は、要素画像に対応付けて、表示面に2次元に配列した複数の光線制御素子によって、それぞれの光線制御素子が、要素画像群のそれぞれの要素画像を再現することで、観察者に立体像を視認させることができる。
本発明の光線制御素子によれば、インテグラル方式で撮像された要素画像を、要素レンズを用いることなく、要素画像の画素値の強度に応じた光線の偏向を制御されることで、要素画像を再現することができる。
また、本発明の立体表示装置によれば、要素レンズを用いることなく、個々の光線制御素子で再現される要素画像によって、観察者に立体像を視認させることができる。
このように、本発明は、従来、レンズの回折限界や焦点距離のように原理的に取り除くことができない性能限界には依存しないため、高精細な立体像を表示することが可能になる。
〔立体表示装置の概要〕
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る光線制御素子1を用いた立体表示装置100の概要について説明する。
立体表示装置100は、インテグラル方式における立体像を表示するものである。図1に示すように、立体表示装置100は、表示面Dに光線制御素子1,1,…を、2次元に複数配列し、光線制御素子1,1,…が、それぞれ、インテグラル方式における個別の要素画像eを表示することで、立体像Tを、観察者Oに視認させる。
〔光線制御素子の概要〕
次に、図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る光線制御素子1の概要について説明する。図2(a)に示すように、光線制御素子1は、図1で説明した立体表示装置100において、表示面Dに2次元配列され、インテグラル方式における要素画像eを表示する光線を出力するものである。なお、図2(a)は、立体表示装置100を上面視した図面であり、光線制御素子1を1次元配列で表している。
光線制御素子1は、光の位相を制御されることで、光線の偏向を制御するものである。この光線制御素子1,1,…がそれぞれ要素画像eを表示する光線(光強度変調された要素画像の画素)を出力することで、観察者Oは、IPの原理により立体像Tを視認することができる。
図2(b)に示すように、光線制御素子1は、光を発光する光源10と、光の強度を変調する光強度変調手段20と、複数の2次元配列された光アンテナ31からなる光アレーアンテナ30とで構成される。この光線制御素子1の詳細な構成については、後で説明する。
すなわち、光線制御素子1は、図2(b)に示すように、時刻t=t1,t2,…,tnにおいて、順次、偏向の異なる光線X1,X2,…,Xnを生成することで、図28(b)で説明した従来のインテグラル方式の表示時における光線X1,X2,…,Xnと同等の光線を生成する。
そして、個々の光線制御素子1は、図1に示すように、2次元配列した状態で、個別に要素画像を表示することで、レンズを用いずに、立体像Tを観察者Oに視認させることができる。以下、光線制御素子、立体表示装置の順で説明を行う。
次に、図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る光線制御素子1の構成について説明する。
図3に示すように、光線制御素子1は、光源10と、光強度変調手段20と、光アレーアンテナ30と、を備える。
この光源10で発光された光は、光強度変調手段20に入射される。
この光強度変調手段20には、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶のポッケルス効果による屈折率変化を利用したLN光変調器を用いることができる。
この光強度変調手段20は、強度変調した光を、表示面Dに2次元に配置された複数の光アンテナ31へ分配する。
また、光源10は、必ずしも個別の光線制御素子1ごとに備える必要はなく、例えば、表示装置のバックライトのような面光源として、複数の光線制御素子1で共用しても構わない。
図4(a)は、素子アンテナAtをz軸上に間隔dでN個配列した、リニアアレーアンテナを示している。
ここで、n番目(n=0,1,…,N−1)の素子アンテナAtの位置ベクトルをrn=(0,0,zn)、励振振幅をan、励振位相をΨn、極座標の角度(仰角θ、方位角φ;図4では、仰角のみ表示)を用いた素子指向性をg(θ,φ)とする。また、測定点の方向ベクトルをR=(cosθ,sinθsinφ,sinθcosφ)とする。このとき、図4(a)に示したリニアアレーアンテナの放射視向性E(θ,φ)は、以下の式(1)で表される。
図3に戻って、光線制御素子1の構成について説明を続ける。
光導波路32は、光強度変調手段20で分配された光を表示面Dの開口部Hへ導くもので、例えば、以下の参考文献に示すような光ファイバー等である。
(参考文献)Qie,Yokoyama,et al.“A straightforward electro-optic polymer covered titanium dioxide strip line modulator with a low driving voltage”,Applied Physics Letters,105,073305-1-4 ,2014.08.
なお、ここでは、位相変調手段33として、電気光学材料33mを用いたが、空間光位相変調器(LCOS−SLM:Liquid Crystal on Silicon - Spatial Light Modulator)を用いても構わない。
このように、電気光学材料34mの両端に偏光子34t,34tを設けることで、振幅変調電圧Vaによる偏向方向の変化に伴い、出力段の偏光子34tを透過する光の振幅を制御することができる。
以上説明したように、光線制御素子1を構成することで、個々の光アンテナ31において時系列に位相と振幅を制御することで、光線制御素子1で1つ要素画像を再現することができる。
次に、本発明に係る光線制御素子1を、立体表示装置100(図1参照)に適用する場合の設計例について説明する。
まず、図5を参照(適宜図2参照)して、要素画像と光線制御素子1が生成する時系列の光線との関係について説明する。
図5(a)に示すように、要素画像eがu行v列の画素で構成されていたとする。すると、図5(b)に示すように、光線制御素子1は、垂直方向において、光線制御素子1固有の視域角(仰角θ)の範囲で、光線を時系列に生成する。この場合、時刻t=t1,t2,…,tZにおいて、順次、偏向の異なる光線X1,X2,…,XZを生成する。このとき、光線制御素子1は、光線X1を要素画像eの画素e1yの光線に、光線XZを要素画像eの画素euyの光線にそれぞれ対応させ、垂直方向の視域角(仰角θ)の範囲内において、光線制御素子1固有の角度ピッチで光線を生成する。
すなわち、光線制御素子1は、垂直方向の視域角(仰角θ)と水平方向の視域角(方位角φ)の範囲内において、時系列に、光線制御素子1固有の角度ピッチでラスタースキャンにより光線を生成する。
次に、光線制御素子1を立体表示装置100に適用する際の光線制御素子1の視域角および角度ピッチについて説明する。
ここで、視域角とは、観察者Oが立体表示装置100に表示される立体像を視認することができる垂直方向の角度(仰角)と、水平方向の角度(方位角)とを意味する。ここでは、垂直方向の視域角と垂直方向の視域角とを同じとし、方向を区別することなく、単に視域角と呼ぶ。
また、角度ピッチとは、光線制御素子1が時系列に切り替える際の光線の角度、すなわち、光線のビーム幅(電力半値幅)を指す。
これは、「高木康弘,“3Dディスプレイ技術の現状と将来”,P122−135,日経BP社,2009年」等にも報告されているように、両眼の輻輳と調節の不一致を解消するための条件である。
次に、光線制御素子1を立体表示装置100に適用する際の素子アンテナである光アンテナ31の数およびその間隔について説明する。
ここでは、光線制御素子1の光アレーアンテナ30の光アンテナ31を四角配列(図4(b)参照)とし、垂直方向および水平方向の素子間隔(光アンテナ31の間隔)d、アレー数(光アンテナ31の数)n個×m個、ビームの方位角φおよび仰角θを決めたとき、前記式(2)における光アンテナ31の指向性(dBi)を、MathWorks社の数値解析ソフトウェアであるMATLABで計算した。なお、その際の放射パターンの一例を図6に示す。
なお、本発明において、光アレーアンテナ30の励振分布は、特に限定するものではなく、一様励振分布でも、テイラー励振分布でも構わない。
このように、テイラー励振分布(図7(a))と、一様励振分布(図7(b))とでは、テイラー励振分布の方が、サイドローブが低減しており、より好ましい分布であるといえる。以下、テイラー励振分布の例で説明する。
図8に、偏向角(方位角、仰角)とビーム幅との関係をシュミレーションした結果を示す。図8(a)は、方位角および仰角をそれぞれ0°(deg.)としたときの指向性である。なお、(a−1)は、仰角0°を基準にした指向性を示し、(a−2)は、方位角0°を基準にした指向性を示している。
また、図8(b)は、方位角および仰角をそれぞれ15°(deg.)としたときの指向性である。なお、(b−1)は、仰角15°を基準にした指向性を示し、(b−2)は、方位角15°を基準にした指向性を示している。
このとき、(a−1)ではビーム幅(半値幅)=1.90°、(a−2)ではビーム幅(半値幅)=1.58°、(b−1)ではビーム幅(半値幅)=2.04°、(b−2)ではビーム幅(半値幅)=1.64°となった。
このように、光アレーアンテナ30の指向性において、偏向角が大きいほど、ビーム幅は広がる。
図9,図10に、光アンテナ31の数とビーム幅との関係をシュミレーションした結果を示す。図9において、(a)は素子数(光アンテナ31の数)=4×4個、(b)は素子数=8×8個、(c)は素子数=16×16個、図10において、(d)は素子数=32×32個、(e)は素子数=48×48個、(f)は素子数=64×64個としたときの指向性を示している。なお、(a)〜(f)のいずれも、素子間隔をλ、方位角および仰角をそれぞれ15°(deg.)とした。
図9,図10からも明らかなように、光アレーアンテナ30の指向性において、素子数が増えるほど、ビーム幅は狭くなる。
図11に示すように、方位角(すなわち、水平方向)のビーム幅の方が、仰角(すなわち垂直方向)のビーム幅より若干広いが、光アンテナ31の数が50×50個以上になると、その差はほとんどない。
図12,図13に、光アンテナ31の数を固定(ここでは、32×32個)したときの光アンテナ31の素子間隔とビーム幅との関係をシュミレーションした結果を示す。図12において、(a)は素子間隔(光アンテナ31の間隔)=λ、(b)は素子間隔=1.2λ、(c)は素子間隔=1.4λ、図13において、(d)は素子間隔=1.6λ、(e)は素子間隔=1.8λ、(f)は素子間隔=2.0λとしたときの指向性を示している。なお、(a)〜(f)のいずれも方位角および仰角をそれぞれ15°(deg.)とした。
図12,図13からも明らかなように、光アレーアンテナ30の指向性において、素子間隔を広くするほど、ビーム幅は狭くなる。
このように、素子間隔を広げるほど、ビーム幅は狭くなるが、同時に、グレーティングローブが、目標値とする視域角30°(±15°)に近付き、図13(f)に示すように、素子間隔が2.0λでは、“−15°”の範囲に入ってしまう。
なお、光アンテナ31の素子間隔を広げることは、光線制御素子1の製作の難易度が低くなる。そこで、光アンテナ31の素子間隔は、グレーティングローブが目標値とした視域角(30°)に影響を与えない範囲で最も広くすることが望ましいといえる。
以上説明したように、光線制御素子1を立体表示装置100に適用する際の光アンテナ31の数およびその間隔は、メインローブのビーム幅(半値幅)が約0.5°以下、かつ、視域角が30°(振れ角±15°)以上となるように設計されたものであればよい。
例えば、光アレーアンテナ30の励振分布をテイラー励振分布としたとき、光アンテナ31を四角配列で72×72個とし、素子間隔d=1.8λ(λ=波長)とする。
また、例えば、光アレーアンテナ30の励振分布を一様励振分布としたとき、光アンテナ31を四角配列で64×64個とし、素子間隔d=1.8λ(λ=波長)とする。
図15(a)は、テイラー励振分布において、素子数(光アンテナ31の数)=72×72個での指向性を示し、(a−1)は、仰角15°を基準にした指向性を示し、(a−2)は、方位角15°を基準にした指向性を示している。
また、図15(b)は、一様励振分布において、素子数(光アンテナ31の数)=64×64個での指向性を示し、(b−1)は、仰角15°を基準にした指向性を示し、(b−2)は、方位角15°を基準にした指向性を示している。なお、(a),(b)ともに、素子間隔は、1.8λである。
また、図15(b)に示すように、一様励振分布において、素子数を64×64個とし、素子間隔を1.8λとしたとき、ビーム幅(半値幅)は0.5°以下となり、視域角は30°以上となる。この場合も、素子数64×64個以上であっても構わない。
以上説明したように、光線制御素子1を用いることで、要素レンズを使用しない立体表示装置100を実現することができる。
次に、図3を参照(適宜図2参照)して、光線制御素子1を立体表示装置100に適用したときの動作について説明する。
光線制御素子1は、光源10によって、光強度変調手段20に対して光(コヒーレンス光)を供給する。
そして、光線制御素子1は、光強度変調手段20によって、光線制御素子1固有の角度ピッチの数に要素画像を区分した画素の画素値を画像信号として順次外部から時系列に入力する。そして、光強度変調手段20は、その画素値に対応する階調に、光強度を変調する。これによって、時系列のある時点における画素値の階調に応じた光強度を持った光が生成されることになる。
さらに、光線制御素子1は、光強度変調手段20によって、光強度の変調を行った光を、光導波路32を介して、光アレーアンテナ30の各光アンテナ31,31,…,31に分配する。
そして、光線制御素子1は、外部から入力される振幅制御信号(振幅変調電圧Va)により振幅を変調することで、光の強度を変更する。この振幅変調電圧Vaは、時系列に変化するものではなく、再生される立体像全体の光強度を変更する際に外部から入力される。
以上の動作によって、光線制御素子1は、IPにおける要素画像を表示することができる。これによって、立体表示装置100は、光線制御素子1を表示素子とすることで、要素レンズを用いることなく、立体像を表示することが可能になる。
次に、図16を参照(適宜図3参照)して、本発明の第1実施形態に係る光線制御素子1を備えた立体表示装置100の構成について説明する。
図16(a)に示すように、立体表示装置100は、光線制御素子1が平面上に2次元配列されて構成される。この光線制御素子1の数は、IPの撮像装置(不図示)で撮像された要素画像の数に相当する。
すなわち、個々の光線制御素子1がそれぞれの要素画像を表示することで、観察者に立体像を視認させることができる(図2参照)。
図16(b)に、立体表示装置100の構成例を示す。図16(b)に示すように、立体表示装置100は、2次元配列された複数の光線制御素子1と、画像時分割手段101と、位相変更手段102と、振幅変更手段(不図示)と、を備える。
光線制御素子1は、図3で説明したものと同一のものであるため、説明を省略する。
この画像時分割手段101は、画素値を個々の光線制御素子1の光強度変調手段20に出力する。これによって、視域角内における所定の角度ピッチの光線として表示するための画素値が特定されることになる。
また、画像時分割手段101は、画素値を時分割で切り替えるタイミングに同期して、位相変更手段102に位相変調電圧Vpを切り替えさせる。
この位相変更手段102は、画像時分割手段101が要素画像の画素値を時分割して光線制御素子1に出力するタイミングに同期して、光線制御素子1の個々の光アンテナ31の位相変調手段33に信号線Lpを介して位相変調電圧Vpを供給する。すなわち、位相変更手段102は、個々の光線制御素子1の光線が、画像時分割手段101で特定された視域角内における所定の角度ピッチの光線となるように、その偏向角(仰角、方位角)に対応した予め定めた位相に対応する位相変調電圧Vpを位相変調手段33に供給する。
これによって、光線制御素子1から、時分割で、光線の偏向角(仰角、方位角)が変更されて出射されることになる。
以上説明したように、立体表示装置100を構成することで、立体表示装置100は、要素レンズを用いないで、観察者にIPの立体像を視認させることができる。
図16では、立体表示装置100において、すべての光線制御素子1を、画像時分割手段101と、位相変更手段102と、振幅変更手段(不図示)とで制御する構成とした。しかし、立体表示装置100が、高解像度化するにつれて、それらをフレーム周期内で駆動することは困難となる。
このように、立体表示装置100を高解像度化する場合には、図16に示した光線制御素子1の予め定めた数を1ユニットとし、ユニット単位で駆動制御すればよい。
そして、立体表示装置100は、水平32×垂直18ユニットの576個の各ユニットUを、個別に並列に駆動制御すればよい。その場合、立体表示装置100は、図16で説明した画像時分割手段101と位相変更手段102とを、ユニットUごとに備え、さらに、画像信号をユニットUごとの画像信号として分配する画像分配手段(不図示)を備える構成とすればよい。なお、ユニットUごとの駆動は、さらに、ユニットUを上下で2等分してフレームごとに交互に駆動することとしてもよい。これによって、駆動操作時間を1フレーム時間(フレームレート)の2倍に引き延ばすことができる。
すなわち、切り替え速度は、1/60(1フレーム時間)×2/60(上下駆動した1ユニット中の要素画像における走査時間)×1/60×1/60(光アレーアンテナ30における偏向方向数で、視域角30°/ビーム幅0.5°=60偏光方向とした場合の水平60×垂直60方向)(sec)=0.154μsecとなる。
また、このとき、光強度変調手段20から出力される強度変調速度は、6.5MHz(1/0.154〔μsec〕)となり、光源10として既存のレーザー発生器を用いることができ、光強度変調手段20として既存の光変調器を用いることができる。
これによって、立体表示装置100は、表示画像が高解像度化されても、フレーム周期内で駆動することが可能になる。
図16では、説明を容易にするため、立体表示装置100において、単色(モノクロ)の立体像を表示する構成としている。
立体表示装置100をカラー化する場合、図18に示すように、RGBごとの光線制御素子1(1R,1G,1B)を組として同じ要素画像を表示する構成(要素画像カラー表示単位1CL)とすればよい。
なお、光線制御素子1R,1G,1Bは、それぞれサイズが異なる。より詳細には、光線制御素子1R,1G,1Bは、各色の波長に応じて、光アンテナ31(図3参照)の間隔が異なる。
図4(a)に示すように、素子アンテナAt(光アンテナ31に相当)をz軸上に配列した場合、偏向角θ(図4(a)では、仰角)、波長λ、隣接するアンテナとの間隔d、隣接するアンテナとの位相差δは、以下の式(4)の関係がある
そこで、図18に示す要素画像カラー表示単位1CLは、光線制御素子1R,1G,1Bのそれぞれの光アンテナ31(図3参照)の間隔dR,dG,dBの比を、使用するRGBそれぞれの光の波長(例えば、R:700nm,G:546nm,B:436nm)の比とすればよい。なお、要素画像カラー表示単位1CLのうち、光線制御素子1R,1G,1B以外の領域は、光の漏えいを防止するため、遮光膜等で構成すればよい。
すなわち、図19に示すように、カラーの立体像を表示する立体表示装置100CLは、光線制御素子1R,1G,1Bを含んだ要素画像カラー表示単位1CLを平面上に2次元配列して構成すればよい。なお、立体表示装置100CLを、例えば、85インチのHDTV相当の水平1920×垂直1080の画素数と同じ数の要素画像を表示させる場合、要素画像カラー表示単位1CLの水平および垂直サイズは、それぞれ約980μmとなる。
次に、図20を参照して、本発明の第2実施形態に係る光線制御素子1Bの構成について説明する。第1実施形態に係る光線制御素子1(図3参照)は、1つの光アレーアンテナ30によって、要素画像を表示する予め定めた視域(30°)全体をカバーする構成とした。
図20に示すように、光線制御素子1Bは、光源10と、光強度変調手段20と、複数の光アレーアンテナ30Bと、光アレーアンテナ30Bを球面上に配置する透明の下地構造40と、を備える。光源10および光強度変調手段20は、図3で説明した光線制御素子1の構成と同じものであるため、説明を省略する。
ただし、光アレーアンテナ30Bは、予め定めた視域を分割して表示するため、図20(a)の平面図に示すように、所定の角度ごとに複数備える。ここでは、45°ごと、すなわち、水平方向、垂直方向、(左右)斜め方向の4方向それぞれに複数(ここでは、7個、計25個〔中心は共通〕)の光アレーアンテナ30Bを放射状に備える。
ここで、視域を約30°とした場合、図20(c)に示すように、光アレーアンテナ30Bの表示面中心における表示面と直交する垂線(主軸L)が球の中心Cを通り、隣接する光アレーアンテナ30Bの主軸Lと中心Cとのなす角を、30°/(所定方向ごとの光アレーアンテナ30Bの数)とすればよい(ここでは、30°/7=約4.3°)。
この下地構造40は、透明部材であって、光強度変調手段20上に、例えば、ポリマー材料をナノインプリントするか、石英等を反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)で加工して形成することができる。なお、下地構造40で光アレーアンテナ30Bを配置しない領域については、光の漏えいを防止するため、遮光膜等で表面加工することとする。
次に、光線制御素子1Bを立体表示装置100に適用する際の光アレーアンテナ30Bを構成する光アンテナ31の数およびその間隔について説明する。
図20で説明したように、水平方向、垂直方向、斜め方向ごとの光アレーアンテナ30Bの数を7個とし、視域を30°とした場合、個々の光アレーアンテナ30Bの偏向角は、約4.3°(±2.2°)であればよい。
このとき、(a)ではビーム幅(半値幅)=3.20°、(b)ではビーム幅(半値幅)=1.60°、(c)ではビーム幅(半値幅)=1.06°、(d)ではビーム幅(半値幅)=0.80°、(e)ではビーム幅(半値幅)=0.64°(f)ではビーム幅(半値幅)=0.54°となった。
この光線制御素子1Bを、立体表示装置に適用する場合、図16で説明した立体表示装置100において、光線制御素子1を光線制御素子1Bに置き換えて構成すればよい。また、光線制御素子1Bを用いて、HDTV等相当の高解像度化した立体像を表示する場合、図17で説明したのと同様に、複数の光線制御素子1Bを1つのユニットとして駆動制御すればよい。また、ユニットUごとの駆動を、ユニットUを上下で2等分してフレームごとに交互に駆動することとしてもよい。
すなわち、切り替え速度は、1/60(1フレーム時間)×2/60(上下駆動した1ユニット中の要素画像における走査時間)×1/4(水平方向、垂直方向、〔左右〕斜め方向の4方向の各要素画像中の光アレーアンテナ30Bにおける走査時間)×1/8×1/8(光アレーアンテナ30Bにおける偏向方向数)(sec)=2.17μsecとなる。
また、このとき、光強度変調手段20から出力される強度変調速度は、461kHz(1/2.17〔μsec〕)となり、光源10として既存のレーザー発生器を用いることができ、光強度変調手段20として既存の光変調器を用いることができる。
光線制御素子1Bを用いた立体表示装置をカラー化する場合、図23に示すように、RGBごとの光線制御素子1B(1BR,1BG,1BB)を組として同じ要素画像を表示する構成(要素画像カラー表示単位1BCL)とすればよい。
なお、図23に示す要素画像カラー表示単位1BCLは、光線制御素子1BR,1BG,1BBのそれぞれの光アンテナ31(図3参照)の間隔の比は、使用するRGBそれぞれの光の波長(例えば、R:700nm,G:546nm,B:436nm)の比となるため、その比に応じて、光線制御素子1BR,1BG,1BBの大きさが異なる。なお、要素画像カラー表示単位1BCLのうち、光線制御素子1BR,1BG,1BB以外の領域は、光の漏えいを防止するため、遮光膜等で構成すればよい。
次に、図25を参照して、本発明の第3実施形態に係る光線制御素子1Cの構成について説明する。
光線制御素子1Cは、光線制御素子1B(図20参照)と同様に、視域を複数の光アレーアンテナ30Bで分割して表示するものである。
図25に示すように、光線制御素子1Cは、光源10と、光強度変調手段20と、複数の光アレーアンテナ30Bと、光アレーアンテナ30Bを円柱側面の円弧上に配置する透明の下地構造40と、を備える。
ただし、光線制御素子1Bは、所定角度ごとに放射状に光アレーアンテナ30Bを配置したが、光線制御素子1Cは、円柱形状の円弧に沿って1方向(水平方向)に光アレーアンテナ30Bを配置している点が異なっている。
この光線制御素子1Cでは、光アレーアンテナ30Bを、(a)のA−A断面図である(b)(b−1)や、(a)のB−B断面図である(b)(b−2)に示すように、円柱形状の円弧に沿って備える。
また、このとき、光線制御素子1Cは、第2実施形態の光線制御素子1Bと同様に、光線制御素子1よりも、素子数(光アンテナ31の数)を少なくし、素子間隔を広くすることができるため、デバイス製作を容易にすることができる。
この光線制御素子1Cを、立体表示装置に適用する場合、図16で説明した立体表示装置100において、光線制御素子1を光線制御素子1Cに置き換えて構成すればよい。また、光線制御素子1Cを用いて、HDTV等相当の高解像度化した立体像を表示する場合、図17で説明したのと同様に、複数の光線制御素子1Cを1つのユニットとして駆動制御すればよい。また、ユニットUごとの駆動を、ユニットUを上下で2等分してフレームごとに交互に駆動することとしてもよい。
すなわち、切り替え速度は、1/60(1フレーム時間)×2/60(上下駆動した1ユニット中の要素画像における走査時間)×1/1(水平方向の要素画像中の光アレーアンテナ30Bにおける走査時間)×1/8×1/8(光アレーアンテナ30Bにおける偏向方向数)(sec)=8.68μsecとなる。
また、このとき、光強度変調手段20から出力される強度変調速度は、115kHz(1/8.68〔μsec〕)となり、光線制御素子1Bと同様、光源10として既存のレーザー発生器を用いることができ、光強度変調手段20として既存の光変調器を用いることができる。
光線制御素子1Cを用いた立体表示装置をカラー化する場合、図26に示すように、RGBごとの光線制御素子1C(1CR,1CG,1CB)を組として同じ要素画像を表示する構成(要素画像カラー表示単位1CCL)とすればよい。
なお、光線制御素子1CR,1CG,1CBは、図18で説明したように、各色の波長に応じて、光アンテナ31(図3参照)の間隔(dR,dG,dB)が異なる。
そして、図27に示すように、カラーの立体像を表示する立体表示装置100CCLは、光線制御素子1CR,1CG,1CBを含んだ要素画像カラー表示単位1CCLを平面上に2次元配列して構成すればよい。
10 光源
20 光強度変調手段
30 光アレーアンテナ
31 光アンテナ
32 光導波路
33 位相変調手段
33m 電気光学材料
33v,33g 電極
34 振幅変調手段
34m 電気光学材料
34v,33g 電極
34t 偏光子
40 下地構造(透明下地構造)
100 立体表示装置
101 画像時分割手段
102 位相変更手段
Claims (8)
- インテグラル方式の立体表示装置において個々の要素画像を表示する光線制御素子であって、
外部からの位相制御信号によって光の位相を切り替えて変調する位相変調手段を備えた複数の光アンテナを2次元に配列した光アレーアンテナと、
前記複数の光アンテナから出射される光により形成される光線の偏向に対応した前記要素画像の画素の画素値を外部から入力し、当該画素値の階調に応じて、光源から発光される光を強度変調し、前記複数の光アンテナに供給する光強度変調手段と、を備え、
前記光源は、レーザーまたは発光ダイオードであることを特徴とする光線制御素子。 - 前記光アンテナは、光の出射端と前記位相変調手段との間に、外部からの振幅制御信号によって、前記光の振幅を切り替えて変調する振幅変調手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の光線制御素子。
- 前記光アレーアンテナは、前記複数の光アンテナの配置を四角配列とし、励振分布を一様励振分布としたとき、前記光アンテナの個数を水平64個以上、垂直64個以上とし、前記光アンテナの間隔を、λを自由空間波長として1.80λとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光線制御素子。
- 前記光アレーアンテナは、前記複数の光アンテナの配置を四角配列とし、励振分布をテイラー励振分布としたとき、前記光アンテナの個数を水平72個以上、垂直72個以上とし、前記光アンテナの間隔を、λを自由空間波長として1.80λとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光線制御素子。
- インテグラル方式の立体表示装置において個々の要素画像を表示する光線制御素子であって、
外部からの位相制御信号によって光の位相を切り替えて変調する位相変調手段を備えた複数の光アンテナを2次元に配列した光アレーアンテナと、
視域を分割した複数の方向に光の出射方向を向けて前記光アレーアンテナを複数配置する透明下地構造と、
前記複数の光アンテナから出射される光により形成される光線の偏向に対応した前記要素画像の画素の画素値を外部から入力し、当該画素値の階調に応じて、光源から発光される光を強度変調し、前記透明下地構造を介して、前記複数の光アンテナに供給する光強度変調手段と、を備え、
前記光源は、レーザーまたは発光ダイオードであることを特徴とする光線制御素子。 - 前記光アンテナは、水平方向の視域を所定角度ごとに分割した複数の方向に光の出射方向を向けて前記透明下地構造に配置することを特徴とする請求項5に記載の光線制御素子。
- 前記光アンテナは、水平方向、垂直方向および斜め方向の視域をそれぞれ所定角度ごとに分割した複数の方向に光の出射方向を向けて前記透明下地構造に配置することを特徴とする請求項5に記載の光線制御素子。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光線制御素子を用いてインテグラル方式により立体像を表示する立体表示装置であって、
前記インテグラル方式の要素画像に対応付けて、表示面に2次元に配列した複数の前記光線制御素子と、
要素画像群を入力し、それぞれの要素画像において、前記光線制御素子の視域角とビーム幅とで特定される各光線に対応する画素の画素値を時分割して、前記要素画像に対応する前記光線制御素子に出力する画像時分割手段と、
前記光線制御素子から放射される光線が、前記画像時分割手段で時分割された画素に対応する光線の偏向角となるように位相制御信号を前記要素画像に対応する前記光線制御素子に出力する位相変更手段と、
を備えることを特徴とする立体表示装置。
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