JP6548139B2 - 制御弁式鉛蓄電池 - Google Patents
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Description
正極鋳造格子は、通常、上下の横枠骨及び左右の縦枠骨よりなる枠骨と、前記枠骨内の複数の横内骨及び複数の縦内骨と、上横枠骨に設けられた集電耳部と、下横枠骨に設けられた足骨とからなり、横内骨は太骨と細骨から構成されている。
このような正極板においては、長期間の使用により格子の腐食伸びが生じるが、耳の上部は電槽蓋に固定された端子に溶接されているため、腐食伸びにより耳部が変形して負極板と接触短絡し、短寿命になるケースがあった。そのため、これまでに正極板下部に腐食伸びが生じた場合に、変形して伸びを吸収できる足骨形状に改良されてきた。
特許文献2:特許第4092124号公報
特許文献3:特許第4461697号公報
しかしながら、近年、高温下で使用された制御弁式鉛蓄電池の正極鋳造格子において、耳下部の縦骨や、上横枠骨に局所的な粒界腐食や粒界割れが発生し、格子が破断するという新たな問題が生じるようになった。
(1)Pb−Ca−Sn合金、又はPb−Ca合金からなり、
上下の横枠骨及び左右の縦枠骨からなる枠骨と、前記枠骨内の複数の横内骨及び複数の縦内骨と、前記上横枠骨上で中心から偏位した耳と、前記下横枠骨下の足骨と、を有する正極鋳造格子を有する正極板を用いる制御弁式鉛蓄電池において、
前記正極鋳造格子の耳に近い側の前記縦枠骨の断面積(a)と前記横内骨中の最太骨の断面積(b)との比(a)/(b)が、1.3以上2.7以下であり、
前記足骨が、耳幅をXとして耳中心から1.5X未満の範囲を除く位置に備えられている、制御弁式鉛蓄電池。
(2)前記正極鋳造格子の耳に近い側の前記縦枠骨の断面積(a)と前記横内骨中の最太骨の断面積(b)との比(a)/(b)が、1.3以上2.5以下である前記(1)の制御弁式鉛蓄電池。
(3)前記上横枠骨が、耳から遠い側の前記縦枠骨と交わる肩部から前記耳が立ち上がる部位にかけて広がるテーパーを有している前記(1)又は(2)に記載の制御弁式鉛蓄電池。
(4)前記テーパーの角度が1.4°以上4°以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかの制御弁式鉛蓄電池。
図2は、本発明における肩部の位置を示す。
図3〜図11は、それぞれ、本発明の実施例及び比較例に係る格子形状A〜F、F´、G、Hを示す。
図12、図13は、格子形状Aと格子形状Bにおける(a)/(b)と粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図14、図15は、格子形状Cと格子形状Dにおける(a)/(b)と粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図16、図17は、格子形状Aと格子形状Cにおける(a)/(b)と粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図18、図19は、格子形状Bと格子形状Dにおける(a)/(b)と粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図20、図21は、(a)/(b)を変数として、格子形状D、格子形状Eにおけるテーパーの起点と粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図22、図23は、(a)/(b)を変数として、格子形状C、格子形状D、及び格子形状Fにおける足骨の位置及び数と、粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図24、図25は、(a)/(b)を変数として、格子形状C、格子形状D、格子形状F、及び格子形状F´における足骨の位置及び数と、粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図26、図27は、(a)/(b)を変数として、格子形状Dにおけるテーパー角と粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
図28、図29は、格子形状D、格子形状E、格子形状Hにおけるテーパー角と粒界破断した極板枚数及び寿命月数の関係を示す。
横内骨の太骨の数が多ければ、横方向の腐食伸びがより均一になり、粒界割れが少なくなることが考えられるが、格子重量の観点から数を多くするには限界がある。
なお、足骨は、格子を支える機能を有するものであって、電池底部、又は電池底部に設置された鞍部に接触しているものをいう。
テーパー角度が1°程度であると、機械的強度と電流分布の改善が不十分であるが、5°を超えると格子鋳造時にテーパー部に鋳巣ができやすく、強度や耐食性が低下する。好ましいテーパー角度の範囲は1.4°〜4.0°である。
また、上横枠骨の途中を起点としてテーパーを設けると、腐食に伴う格子伸びによりテーパーの起点付近に応力が掛かりやすく、粒界腐食や粒界割れが加速される。したがって、テーパーの起点は耳から遠い側の肩部であることが好ましい。
なお、肩部とは、図2に示すように、格子内側R部の開始点から横枠骨端までの範囲をいう。
(正極鋳造格子及び電池の作製)
Pb−Ca−Sn合金を鋳造して、図3に示す格子形状A及び、図4に示す格子形状Bの正極鋳造格子を作製し、この格子を用いた正極板8枚と、負極板9枚とを組み合わせ、2V、定格200Ahの制御弁式鉛蓄電池No.1〜16を作製した。
また、正極鋳造格子として、図5及び図6に示すように、横枠骨に肩部から開始するテーパーを設けた格子形状C、及び格子形状Dとした以外は格子形状A及びBと同様にして、電池No.17〜32を作製した。
各電池に用いた正極格子の耳下枠骨の断面積(a)と横内太骨の断面積(b)との比(a)/(b)、テーパー角度、耳幅をXとする耳中心からの足骨の距離は、表1に示すとおりである。
60℃、2.23Vのフロート条件で高温加速フロート寿命試験を行い、以下の方法により評価を行った。
(1)8か月目に電池を解体して8枚の正極板を取り出し、それぞれ上横枠骨(上部枠骨)、耳下縦骨、及び1セル中に粒界破断が発生した枚数を確認した。
(2)1か月ごとに25℃、0.2CAで1.75Vまでの容量確認試験を行い、容量保持率が80%に低下するまでの期間を寿命として判定した。
各電池において、それぞれ上横枠骨(上部枠骨)、耳下縦骨、及び1セル中に粒界破断が発生した極板枚数と、寿命月数の結果を表1に示し、1セル中の粒界破断発生枚数と寿命性能の結果を図12〜図19に示す。
これに対して、足骨位置が耳中心から離れている格子形状Bの電池と格子形状Dの電池とでは、図18、図19によると、テーパーを有する格子形状Dの方が、格子形状Bと比べて、(a)/(b)が1.3〜2.7の範囲で、粒界破断が発生した枚数が抑制され、寿命月数が伸びている。
したがって、足骨位置と(a)/(b)の特定は、テーパーを有する格子形状の場合に特に効果的である。
テーパーの形状の効果を確認するため、正極鋳造格子として、(a)/(b)が1.3、2.0、2.5であり、テーパーが横枠骨の肩部まで達していない図7に示す格子形状Eを用いた以外は、例1と同様にして、電池No.33〜35を作製した。
格子形状Dの電池と対比した結果を表2及び図20、図21に示す。
したがって、上横枠骨のテーパーは、肩部まで達していると、効果がより高いことが分かる。
足骨の位置及び数の影響を確認するため、(a)/(b)が1.3、2.0、2.5であり、2本の足骨の1本が耳直下にある格子形状C、2本の足骨の1本が耳中心から1X〜5X離れた格子形状D、1本の足骨で、足骨の位置が耳中心から2X、3Xである図8に示す格子構造F、及び足骨の位置が耳から遠い側の縦枠骨の下(下端部)にある図9に示す格子形状F´の正極鋳造格子を用いた以外は、例1と同様にして、電池No.36〜53を作製した。結果を表3及び図22〜図25に示す。
テーパー角度の影響を確認するため、足骨位置を耳中心から2Xとし、(a)/(b)がそれぞれ1.3、2.0、2.5である格子形状Dにおいて、テーパー角度を1°〜5°とした以外は、例1と同様にして、電池No.54〜68を作製した。
また、異なる格子形状におけるテーパー角度の影響を確認するため、足骨位置が耳中心から2X、(a)/(b)が2.0である点で共通し、テーパーの起点が肩部でない格子形状E、及び、テーパーの起点が肩部であるが、耳が縦枠骨上からずれた位置にある図11に示す格子形状Hにおいて、それぞれ、テーパー角度を1°〜5°とした以外は例1と同様にして、それぞれ電池No.69〜73、電池No.74〜79を作製した。結果を表4、及び図26〜図29に示す。
なお、格子形状Hに対する足骨位置の確認のため、図10に示すように足骨位置が耳直下である以外は、格子形状Hと同じ格子形状Gを用いた電池も作製したが、格子形状A、格子形状Cを用いた電池と同様、主に耳下縦骨の粒界破断が生じていた。
Claims (3)
- Pb−Ca−Sn合金、又はPb−Ca合金からなり、
上下の横枠骨及び左右の縦枠骨からなる枠骨と、前記枠骨内の複数の横内骨及び複数の縦内骨と、前記上横枠骨上で中心から偏位した耳と、前記下横枠骨下の足骨と、を有する正極鋳造格子を用いる制御弁式鉛蓄電池において、
前記正極鋳造格子の耳に近い側の前記縦枠骨の断面積(a)と前記横内骨中の最太骨の断面積(b)との比(a)/(b)が、1.3以上2.7未満であり、
前記上横枠骨が、耳から遠い側の前記縦枠骨と交わる肩部から前記耳が立ち上がる部位にかけて広がるテーパーを有しており、
前記足骨が、耳幅をXとして耳中心から1.5X未満の範囲を除く位置に備えられていることを特徴とする制御弁式鉛蓄電池。 - 前記正極鋳造格子の耳に近い側の前記縦枠骨の断面積(a)と前記横内骨中の最太骨の断面積(b)との比(a)/(b)が、1.3以上2.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の制御弁式鉛蓄電池。
- 前記テーパーの角度が1.4°以上4°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御弁式鉛蓄電池。
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