以下、図面を参照しながら本実施形態の固体イオンキャパシタの実施の形態を説明する。本発明の固体イオンキャパシタは、単層固体イオンキャパシタおよび多層固体イオンキャパシタのいずれの形態でも実施可能である。ここで「単層(single layer)」および「多層(multi-layer)」とは、電解質層が単数および複数であること言う。いずれの構造を備えていても、電極層となる原料層と電解質層となるグリーンシートとを積層し、共焼結させることによって、固体イオンキャパシタを製造することが可能である。
(単層固体イオンキャパシタ)
図1は、本実施形態の固体イオンキャパシタ11の断面構造を模式的に示している。固体イオンキャパシタ11は、Agをそれぞれ含む第1および第2の電極層2、3と、第1および第2の電極層2、3の間に位置する電解質層1とを備える。
電解質層1は、Naを含むセラミックスからなるイオン伝導体1a、および、イオン伝導体1a中に分散した導電性粒子1bを含む。電解質層1は電気絶縁性を有している。本願明細書において、電気絶縁性とは、電気伝導度が1×10-3S/cm以下であることをいう。
電解質層1に用いられるNaを含むイオン伝導体1aは、A・M2(XO4)3で示される組成を有するセラミックスである。A・M2(XO4)3の組成式で示される酸化物はNASICON型結晶構造を有する。ここで、Aはアルカリ金属、Mは遷移金属であり、XはS、P、As、Mo、W等である。NASICON型結晶構造は、MO6の組成で示される頂点に酸素が位置する八面体と、XO4の組成で示される頂点に酸素が位置する四面体とが、頂点の酸素を共有して3次元的に配列されることによって構成される。イオン伝導体1aはNaイオン伝導性を有する電解質材料である。
好ましくは、イオン伝導体1aを構成するセラミックスは以下の組成式(1)で示される組成を有している。
Na1+x+y(AlyZr2-y)(SixP3-x)O12
0.1≦x≦0.67、0.1≦y≦0.4 (1)
組成式(1)において、AlおよびZrは、NASICON型結晶構造のMサイトに位置し、PおよびSiはXサイトに位置している。Zrは4価の元素であり、Alは3価の元素であるから、セラミックスはZrをAlで置換した量に相当する量のNaをさらに含む。また、Pは5価の元素であり、Siは4価の元素であるから、セラミックスはPをSiで置換した量に相当する量のNaをさらに含む。この結晶構造は、上述した八面体や四面体間に大きな空隙を有し、空隙にNa+イオンなどが挿入され得る。また、挿入されたNa+イオンは、電界を印加することによって移動可能である。組成比xおよび組成比yが上述範囲であることで、Agを含む金属材料と共焼結する温度で緻密化でき、かつ高いイオン伝導性を発現できることから、高いキャパシタンス性能を得られる。イオン伝導体1aは導電性(電子伝導性)を有しておらず、電気絶縁性を有する。
導電性粒子1bはイオン伝導体1a中に分散しており、イオン伝導体1aおよび導電性粒子1bによって複合セラミックスを形成している。導電性粒子1bは導電性を有し、焼成時にイオン伝導体と反応しない材料によって形成されている。具体的には、導電性粒子1bは、Ag、AuおよびPtからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。素原料のコストが小さいことや、低温焼成時に孔ができにくく緻密化しやすいという観点などからAgであることが好ましい。導電性粒子1bの粒子の大きさに特に制限はない。しかし、導電性粒子1bの平均粒径が大きくなると、導電性粒子1b同士が接触することによって、イオン伝導体1a中に分散した導電性粒子1bによる電気伝導パスが生じてしまい、電解質層1が電気伝導性を有する可能性がある。このため、導電性粒子1bの平均粒径は、0.001μm以上10μm以下であることが好ましく、さらに、凝集や異常粒成長を抑制するために0.05μm以上が好ましく、シートへの成形性を考慮して5μm以下が好ましい。
また、電解質層1は、5vol%を超え、30vol%未満の割合で導電性粒子1bを含んでいることが好ましい。ここで、電解質層1における導電性粒子1bの含有比率(vol%)は、以下の式(2)で定義される。
以下において説明するように、導電性粒子1bがイオン伝導体1a中に分散していることによって、電解質層1の比誘電率が増大し、固体イオンキャパシタの容量を高めることができる。導電性粒子1bの電解質層1における添加比率が5vol%以下である場合、比誘電率増大の効果が小さい。導電性粒子1bの添加比率が大きいほど、比誘電率は増大する。導電性粒子1bの電解質層1における添加比率が30vol%以上である場合、導電性粒子1bの平均粒径によらず、電解質層1が電気伝導性を有する可能性が高まる。好ましくは10vol%以上25vol%以下である。
導電性粒子1bは、電解質層1中に均一に分布していてもよく、不均一に分布していてもよい。しかし、導電性粒子1bの分布の偏りが大きすぎると、電解質層1内における非誘電率の分布も大きくなり、長期に固体イオンキャパシタを使用した場合における電界の集中などによる信頼性に影響を与え得る。このため、例えば、電解質層1中の導電性粒子1bの平均粒径の10倍の長さを一辺とする任意の立方体における導電性粒子1bの添加比率が、5vol%を超え、30vol%未満であることが好ましい。
第1および第2の電極層2、3は、Agを含む。本願発明者の詳細な検討によれば、Liを含むNASICON型結晶構造を有するセラミックスの材料とAgを含む金属材料とを共焼結させた場合、LiとAgとの置換が生じ、電極を構成するAgが消失してしまう。これに対し、Naを含み、Liを含まないNASICON型結晶構造を有するセラミックスの材料とAgを含む金属材料とを共焼結させてもAgは消失せず、共焼結が可能であることが分かった。また、セラミックスを構成する他の元素もAgと反応せず、電極層に大きな影響を与えることがないことが分かった。
したがって、上記組成式(1)を満たすように、Na、Al、Zr、P、Siを含むセラミックス用グリーンシートを、一対の焼結金属材料の層で挟み込むように積層し、共焼結させることによって、第1および第2の電極層2、3およびこれらの間に位置する電解質層1を含む共焼結体7を得ることができる。つまり、低温同時焼成セラミックスプロセス(LTCC)によって、固体イオンキャパシタを製造することができる。したがって、本実施形態によれば、電極層を後から形成する場合に比べて製造工程数を減らすことでき、製造時間の短縮および製造コストを低減できる。また、以下の実施例において説明するように、本実施形態の共焼結体7は優れたキャパシタ特性を備えている。さらに、電解液を含まない固体イオンキャパシタは、長期信頼性に優れる。
第1および第2の電極層2、3の金属材料は、導電性が高く、電解質層1と共焼結が可能な温度で十分に収縮し、共焼結後に電解質層1などへ拡散・消失せず電極層として構成する材料であることが好ましい。また、第1および第2の電極層2、3の金属材料は、焼結温度の制御や焼結後の第1および第2の電極層2、3の緻密性を制御するためにガラス等の添加剤を含んでいてもよい。例えば、第1および第2の電極層2、3は、Agの単体金属が好ましく、Agを含む金属材料は、不可避的不純物を含んでいても良い。また収縮量調整のためのガラスなどを含んでいてもよい。キャパシタとして利用するためには第1の電極層と第2の電極層は同じ金属材料を含むことが好ましい。
固体イオンキャパシタ11は、電解質層1と第1および第2の電極層2、3とを含む共焼結体7のまま種々の用途に用いてもよいし、共焼結体7を樹脂によって覆ってもよい。例えば、固体イオンキャパシタ11は、一対の引き出し電極5と、一対の引き出し電極5を第1および第2の電極層2、3にそれぞれ電気的に接続する半田4と、半田4および引き出し電極5が設けられた共焼結体7全体を覆う樹脂モールド6とをさらに備えていてもよい。好ましくは、抵抗体やコイルなど他の素子と同時焼成して回路を形成することで、回路の製造工程数を少なくすることができるため好ましい。
本実施形態の固体イオンキャパシタ11において、例えば、第1の電極層2を高電位に接続し、第2の電極層3を低電位に接続すると電解質層1内のNa+イオンは、第2の電極層3側へ移動する。Na+イオンは、イオン伝導体ではない第2の電極層3へは移動しないため、電解質層1内の第2の電極層3側にNa+イオンによる正の電荷が蓄積され、Na+イオンが移動したことによる負の電荷が第1の電極層2側に蓄積される。このため、固体イオンキャパシタ11は、キャパシタとして機能する。
次に図2を参照しながら、固体イオンキャパシタ11の製造方法を説明する。固体イオンキャパシタ11は、従来のLTCCの製造方法と同様の方法によって製造することができる。
まず、Naを含むセラミックスからなるイオン伝導体用の材料として、Na、Al、Zr、P、Siを含む原料を用意する。例えば、Na、Al、Zr、PおよびSiをそれぞれ含む酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩などを、上記組成式(1)に示す含有比率となるように見込んで秤量する。
Na、Al、Zr、PおよびSiを含む原料の例としては、Na2CO3、Al2O3、ZrO2、(NH4)H2(PO4)3、SiO2等を挙げることができる。焼結によってセラミックスを製造する一般的な手順に従い、ボールミルなどを用いて、原料をよく混合、粉砕する。
次に混合した原料を例えば、大気中で仮焼きする。仮焼きは1段階で行ってもよいし、温度を異ならせ、2段階以上で行ってもよい。2段階で仮焼きする場合には、例えば、300℃2時間および700℃2時間で仮焼きを行う。その後、得られた仮焼体をボールミルなどで粉砕する。
導電性粒子として、Ag、AuまたはPtのうち一種の金属粉末を用意し、式(2)によって求められる金属粉末の割合が、5vol%を超え、30vol%未満となるように、仮焼き体粉末および金属粉末を秤量し、ボールミル等で混合する。得られた混合紛体に、有機バインダーおよび必要に応じて溶媒や可塑剤を添加し、電解質層の原料スラリーを得る。ここで、仮焼き体粉末の重量に対する焼成後の電解質層単体の重量および密度はあらかじめ求められた値を用いる。
また、Agの粉末を含む金属ペーストを用意する。市販の金属ペーストを用いてもよいし、Agの粉末に有機バインダー、溶媒、可塑剤等を添加し金属ペーストを作製してもよい。
次に、図2(a)、(b)、(c)に示すように、例えば、PETフィルムなどの樹脂フィルム20を用意する。ドクターブレード法によって、樹脂フィルム20上に、それぞれ、前述した金属ペーストによる第1の金属ペースト層2’、第2の金属ペースト層3’および電解質層の原料スラリーによるグリーンシート1’をそれぞれ形成する。このとき、グリーンシート1’は導電性粒子となる金属粉末1b’、及びNaを含むセラミックスからなるイオン伝導用材料である仮焼き体粉末1a’を含む。
第1の金属ペースト層2’、第2の金属ペースト層3’およびグリーンシート1’を乾燥させた後、図2(d)に示すように、樹脂フィルムを剥離させ、グリーンシート1’の両面に第1の金属ペースト層2’および第2の金属ペースト層3’を配置し、これらを重ねて、例えば、85℃、200kg/cm2で加圧して圧着する。これにより、第1の金属ペースト層2’および第2の金属ペースト層3’とこれらに挟まれたグリーンシート1’とを含む積層体21が得られる。ここで「積層体」とは金属ペースト層2’、3’およびグリーンシート1’が積層されていることを言い、グリーンシートは1枚であってもよいし、複数であってもよい。
第1の金属ペースト層2’、第2の金属ペースト層3’およびグリーンシート1’の大きさや厚さは、焼結後の電解質層1、第1の電極層2および第2の電極層3の厚さや大きさに基づき、焼結による収縮を考慮して決定される。
その後、積層体21を焼結する。焼結温度は、850℃以上1100℃以下である。好ましくは870℃以上950℃以下である。焼結時間は、例えば、1分以上24時間以下である。さらに、十分に焼結を進めるために0.5時間以上が好ましく、リードタイム短縮の為に5時間以下が好ましい。また、焼結は、例えば、大気中で行うことができる。
焼結によって、第1の金属ペースト層2’、第2の金属ペースト層3’およびグリーンシート1’から有機バインダーや溶媒などの揮発成分が除去される。また、それぞれの層が焼結し、図2(e)に示すように、第1の金属ペースト層2’および第2の金属ペースト層3’に含まれるAgからなる第1および第2の電極層2、3と、上記組成式(1)で示される組成を有し、NASICON型結晶構造を有するセラミックスからなるイオン伝導体1aを含む電解質層1とを含む共焼結体7が得られる。電解質層1は、イオン伝導体1aとイオン伝導体1a中に分散した導電性粒子1bとを含む。
その後、半田4を用いて、第1および第2の電極層2、3に引き出し電極5をそれぞれ接続し、共焼結体7全体を樹脂モールド6で覆うことによって、固体イオンキャパシタ11が完成する。
(多層固体イオンキャパシタ)
多層固体イオンキャパシタの実施形態を説明する。図3は、本実施形態の固体イオンキャパシタ12の断面構造を模式的に示している。固体イオンキャパシタ12は、複数の電解質層1と、複数の第1の電極層2と複数の第2の電極層3とを備える。複数の第1の電極層2と複数の第2の電極層3とは、各電解質層1を介して交互に積層されている。このため、各電解質層1は、複数の第1の電極層2の1つおよび複数の第2の電極層3の1つによって挟まれている。複数の電解質層1と、複数の第1の電極層2と複数の第2の電極層3は共焼結体7を構成している。
共焼結体7は、互いに反対側に位置する側面7aおよび7bを有しており、側面7aにおいて、複数の第1の電極層2の端面が露出している。同様に、側面7bにおいて、複数の第2の電極層3の端面が露出している。
固体イオンキャパシタ12は、さらに第1の外部電極8および第2の外部電極9を備える、第1の外部電極8は、側面7aに設けられており、複数の第1の電極層2と電気的に接続されている。同様に、第2の外部電極9は、側面7bに設けられており、複数の第2の電極層3と電気的に接続されている。
固体イオンキャパシタ12において、複数の電解質層1、複数の第1の電極層2および複数の第2の電極層3は、固体イオンキャパシタ11の電解質層1、第1および第2の電極層2、3とそれぞれ同じ材料によって構成されている。このように、内部に形成される複数の第1の電極層2および複数の第2の電極層3が複数の電解質層1と共焼結可能であるため、多層固体イオンキャパシタを従来のLTCCと同様のプロセスを用いて製造することができる。複数の電解質層1はイオン伝導体1aとイオン伝導体1a中に分散した導電性粒子1bとを含む。
次に図4を参照しながら、固体イオンキャパシタ12の製造方法を説明する。
まず、固体イオンキャパシタ11と同様、イオン伝導体用の材料および導電性粒子含む電解質層の原料スラリーと金属ペーストとを用意する。
図4(a)に示すように、例えば、PETフィルムなどの樹脂フィルム20を用意する。ドクターブレード法によって、樹脂フィルム20上にまず、グリーンシート1’を形成する。グリーンシート1’の大きさや厚さは、焼結後の電解質層1の厚さや大きさに基づき、焼結による収縮を考慮して決定される。
図4(b)に示すように、スクリーン印刷やドクターブレード法等によって、別途、樹脂フィルム20上に、グリーンシート1’を形成し、さらに、グリーンシート1’上に、第2の金属ペースト層3’を所定の電極寸法になるような印刷パターンで形成する。
図4(c)に示すように、図4(a)でつくられたグリーンシート上に、図4(b)で作成した金属ペーストがパターニングされたグリーンシートを重ね合わせ、樹脂フィルム20を剥がして電極を上下シートに対して所定の位置に配置する。このときズレや剥がれを防ぐために、弱く加圧しても良い。
図4(d)に示すように、スクリーン印刷やドクターブレード法等によって、別途、樹脂フィルム20上に、グリーンシート1’を形成し、さらに、グリーンシート1’上に、第1の金属ペースト層2’を所定の電極寸法になるような印刷パターンで形成する。同様に、図4(d)で作成した金属ペーストがパターニングされたグリーンシートを図4(c)に示す積層したグリーンシートの上に重ね合わせ、樹脂フィルム20を剥がす。
さらにその上に、同様の重ね合わせを複数枚繰り返すことにより、最終的に図4(e)のように所定の数の第1の金属ペースト層2’、グリーンシート1’および第2の金属ペースト層3’を積層する。これにより、複数の第1の金属ペースト層2’および複数の第2の金属ペースト層3’がグリーンシート1’を介して積層された積層体21が得られる。これを例えば、85℃、200kg/cm2で加圧して圧着する。
その後、図4(f)に示すように、樹脂フィルム20を積層体21から剥離し、積層体21を焼結する。焼結温度は、850℃以上1200℃以下である。好ましくは870℃以上950℃以下である。焼結時間は、例えば、1分以上24時間以下である。さらに、十分に焼結を進めるために0.5時間以上が好ましく、リードタイム短縮の為に5時間以下が好ましい。また、焼結は、例えば、大気中で行うことができる。
焼結によって、複数の第1の金属ペースト層2’、複数の第2の金属ペースト層3’および複数のグリーンシート1’から有機バインダーや溶媒などの揮発成分が除去される。また、それぞれの層が焼結し、図4(f)に示すように、第1の金属ペースト層2’および第2の金属ペースト層3’に含まれるAgからなる複数の第1の電極層2および複数の第2の電極層3と、複数の電解質層1とを含む共焼結体7が得られる。前記電解質層1は何れもNaを含むセラミックスからなるイオン伝導体と前記イオン伝導体中に分散した導電性粒子とを含み、さらに上記組成式(1)で示される組成を有し、NASICON型結晶構造を有していることが好ましい。
その後、共焼結体7の側面7a、7bに第1および第2の外部電極8、9をそれぞれ形成することにより、固体イオンキャパシタ12が完成する。
(実施例1)
以下、本実施形態の固体イオンキャパシタで用いるセラミックスを作製し、種々の特性を調べた結果を説明する。まず、本実施例では、電解質層1として、イオン伝導体1aのみを含み、導電性粒子1bを含まないセラミックスおよび固体イオンキャパシタを作成し、電極層と電解質層との共焼結が可能であることを確認し、キャパシタとしての特性を測定した。
(1) セラミックスの焼結条件およびセラミックスの特性の確認
原料としてNa2CO3、Al2O3、ZrO2、SiO2、リン酸アンモニウム(NH4)H2(PO4)3の粉末を用意し、Na、Al、Zr、SiおよびPがNa1+x+y(AlyZr2-y)(SixP3-x)O12の組成比となるように秤量した。組成比x、yは、y=0、0.1、0.2、0.4、0.6、x=0、0.1、0.3、0.67、1、2、2.5とした。表1にxおよびyの組み合わせを示す。
ボールミル容器中にエタノール、ジルコニアボールおよび秤量した原料を投入し、100rpmで20時間、ボールミルによる混合を行った。混合した原料を取り出し、乾燥後、テフロン(登録商標)容器に入れた。混合した原料を、大気中、300℃で2時間加熱し、一次仮焼きを行った。一次仮焼きした原料をテフロン(登録商標)容器から取り出し、アルミナ容器に移し替え、大気中、700℃で2時間加熱し、二次仮焼きを行った。
次に、二次仮焼きした原料を乳鉢で解砕した後、ボールミルで混合と同様に粉砕を行った。粉砕した仮焼き後の原料を乾燥させ、バインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)を原料に対して1.2mass%の割合で添加し、乳鉢で混合し、500μmメッシュを通して造粒を行った。
得られた造粒粉を1g秤量し、直径14mmの円形の金型を用いて、1.5Ton/cm2でプレス成形し、ペレットを作製した。ペレットの温度を200℃/Hrの昇温速度で上昇させ、大気中、850〜1200℃の保持温度で2時間焼結を行った。
焼結によって得られた焼結体を取り出した後、外径寸法の収縮量から焼結性を求めた。さらに研磨加工によって焼結体の厚さが0.5mmになるまで研磨し、XRDで結晶構造を調べた。その後、両面に直径6mmの円形のAg電極を形成し、300℃で焼付け、Ag電極を焼結体に固着させた。これによりキャパシタを得た。
次に、キャパシタの電気的特性を求めた。インピーダンスメータで周波数掃引してZ−θ計測を行い、比誘電率を求めた。
表1に、各試料の組成比と、850℃〜1200℃で焼結した焼結体の収縮率を示す。収縮率は焼結前後の成型体の直径に対して焼結体の直径の収縮量を変化比で示しており、温度を変えることにより焼結の進み具合を見積もることができる。即ち、収縮率が0より大きければ焼結によって収縮し始めており、大きければ大きいほど収縮していることを示している。また、図5Aに組成比yが0.2であり、850℃〜1200℃で焼結した場合における組成比xと収縮率との関係を示す。また、図5Bに組成比xが0.3であり、850℃〜1200℃で焼結した場合における組成比yと収縮率との関係を示す。
表1および図5Aより、y=0.2で、xが1以上である場合、大きな収縮率を得られる温度が高くなることが分かった。
Agを共焼結する場合には、Agの融点である962℃近傍でそれより低い850℃から950℃程度において、緻密な焼結体が得られることが好ましい。よって、組成比xは、この温度範囲で大きな収縮率が得られる0以上0.67以下(0≦x≦0.67)であることが好ましいことが分かる。
同様に、表1および図5Bより、xが0.3である場合、yが0では1000℃以上で緻密化し、y>0では850℃から焼結体は焼結前のペレットよりも収縮しており、緻密化していることが分かった。
Agを共焼結する場合には、Agの融点である962℃より、少し低い温度の850℃から950℃程度において、緻密な焼結体が得られることが好ましい。よって、組成比yは、この温度範囲で大きな収縮率が得られる0.1以上0.6以下(0.1≦y≦0.6)であることが好ましいことが分かる。
図6Aおよび図6Bにx=0.3、y=0.2の組成を有し、900℃で焼結した試料の、表面を鏡面加工した面のSEM像および破断面のSEM像を示す。いずれも空孔などの生成がみられず、緻密化した焼結体が得られていることを示している。
組成と各焼結温度での結晶性を確認するため、CuKα線源によるX線回折パターンを計測した結果を図7Aおよび図7Bに示す。図7Aは、x=0.3、y=0.2の組成を有し、850℃〜1200℃で焼結した試料のX線回折パターンを示す。また、図7Bは、x=1、y=0.2の組成を有し、900℃〜1200℃で焼結した試料のX線回折パターンを示す。丸印は、Na1+x+y(AlyZr2-y)(SixP3-x)O12のNASICON型結晶構造に由来するピークである。図7Aから分かるように、組成比xが0.3である場合、850℃から1200℃の温度範囲において、NASICON型結晶構造に由来するピークがみられ、他の結晶構造に由来するピークはほとんど見られない。
一方、組成比xが1であり、焼結温度が900℃および1000℃である場合、NASICON型結晶構造に由来するピークのピークが弱く、NASICON型結晶構造を有するセラミックスの合成があまり進んでいないことが分かる。また、×で示される酸化ジルコニウムのピークがみられる。焼結温度が1200℃である場合、NASICON型結晶構造を有するセラミックスのピークは強く観測されるものの、酸化ジルコニウムのピークも観測されている。これは、焼結温度が高すぎるために、NASICON型結晶構造を有するセラミックスが合成されるものの、一部は分解し、酸化ジルコニウムが析出していると考えられる。
表2に、各試料の組成比と、850℃〜1000℃で焼結した焼結体の比誘電率の測定結果とを示す。また、図8Aに組成比yが0.2であり、850℃〜1000℃で焼結した場合における組成比xと、電解コンデンサで用いられる周波数1kHzにおける比誘電率との関係を示す。図8Bに組成比xが0.3であり、850℃〜1000℃で焼結した場合における組成比yと、電解コンデンサで用いられる周波数1kHzにおける比誘電率との関係を示す。
表2および図8Aより、組成比yが0.2である場合、組成比xは、0.1以上0.67以下の範囲および850℃以上1000℃以下の焼結温度範囲において、比誘電率が1000以上になることが分かった。
また、表2および図8Bより、組成比xが0.3である場合、組成比yが0.1以上0.4以下の範囲および850℃以上1000℃以下の焼結温度範囲において、比誘電率が1000以上になることが分かった。
以上のことから、Agと同時焼結可能な850℃以上1000℃以下の焼結温度において、焼結体が緻密化し、焼結体が1000以上の比誘電率を備えるためには、組成比、x、yは、0.1≦x≦0.67および0.1≦y≦0.4を満たすことが好ましいことが分かった。
(2) 金属との共焼結の確認
次に、金属との共焼結の可否を検討するため、組成式(1)で示されるセラミックスと電極の材料であるAgとの反応性を確認した。
Na1+x+y(AlyZr2-y)(SixP3-x)O12(x=0.3、y=0.2)の組成を有し、上述の手順によって仮焼きし粉砕した仮焼粉砕粉(以降NAZPと略す)とAg粉とを1:1の体積比で秤量し、乳鉢を用いて混合し、サファイア基板上に混合粉末を配置し、大気中900℃で2時間熱処理した。比較のために、Li1+x+y(AlyTi2-y)(SixP3-x)O12(x=0.3,y=0.2)の組成を有し、上述の手順によって仮焼きし粉砕した、仮焼粉砕粉(以降LATPと略す)とAg粉とを同様に混合し、熱処理した。
得られたセラミックスをXRDで分析した。LATPを用いた試料は、熱処理中に溶融し基板と別離できなかったため、基板とともにXRD測定した。XRDパターンをそれぞれ図9Aおよび図9Bに示す。
図9Aから分かるように、NAZPを用いた試料では、Na1+x+y(AlyZr2-y)(SixP3-x)O12のNASICON型結晶構造に由来するピーク(○で示される)と、Agに由来するピーク(×で示される)とがみられ、NASICON型結晶構造のセラミックが合成されていること、および、Agが単体で、合成したセラミックスと反応することなく存在していることが分かる。
これに対し、図9Bから分かるように、LATPを用いた試料では、NASICON型結晶構造のセラミックは合成されておらず、AgTi2P3O12に由来するピーク(○で示される)、LiTiPO5に由来するピーク(+で示される)およびサファイア基板に由来するピーク(Sで示される)がみられた。また、単体のAgに由来するピークはみられない。このことから、熱処理によって、Agが仮焼粉砕粉と反応し、NASICON型結晶構造を有しない、別の化合物が生成し、単体のAgは消失していると考えられる。また、同じNASICON型結晶構造のセラミックであるLi1+x+y(AlyTi2-y)(SixP3-x)O12とAgとは共焼結することが困難であることが分かった。
(3) キャパシタの特性の確認
単層固体イオンキャパシタを作製し、特性を確認した。
Na1+x+y(AlyZr2-y)(SixP3-x)O12(x=0.3、y=0.2)の組成を有し、上述の手順によって仮焼きし粉砕した仮焼粉砕粉、エタノール、PVB(ポリビニルブチラール)および可塑剤を混合してスラリーを作製した。仮焼粉砕粉と有機材(エタノール、PVBおよび可塑剤)の重量比は、5:4であった。
スラリーをPETフィルム上へ0.1mmの厚さで塗布し、乾燥させた。乾燥後、得られたグリーンシートを直径14mmの円形に打ち抜き、打ち抜いた3枚のシートを重ねた。また、Agのペースト層を直径6mmの円形に打ち抜き、重ねた3枚のグリーンシートの両面に配置し、85℃、200kg/cm2でプレスで圧接した。得られた積層体を昇温200℃/Hrの昇温速度で加熱し、900℃で2時間共焼結した。上述の実施例と同様に得られたキャパシタのインピーダンス測定を行った。図10に比誘電率の周波数特性を示す。また、上述した実施例のバルク状態のセラミックスの比誘電率の周波数特性を合わせて示す。
図10から分かるように、比誘電率は、バルク同等の傾向を示した。また、図10から、Agと共焼結しても、NASICON型結晶構造のセラミックが合成され、合成されたセラミックは、Agと共焼結していないバルクと同程度の比誘電率を有していることが分かった。
図11Aおよび図11Bに得られたキャパシタのセラミックス部分(電解質層1)の鏡面研磨した表面のSEM像および、セラミックスと電極(第1の電極層2、第2の電極層3)との界面部分の鏡面研磨した表面のSEM像を示す。図11Aより、セラミックス部分に小さな孔がみられるが、緻密な構造を有していることが分かる。また、図11Bより、電極とセラミックスとの界面において、SEM像で観察できるレベルでは、電極とセラミックスとが反応していないことが確認できた。
(4) まとめ
本実施例から、Na、Al、Zr、P、Siを含みNASICON型結晶構造を有するセラミックスが850℃以上1000℃以下の温度で焼結可能であり、得られたセラミックスは容量の大きなキャパシタとして使用し得る高い比誘電率を備えていることが確認できた。
また、Naを含むNASICON型結晶構造を有するセラミックスの材料とAgを含む金属材料と共焼結させても、Agは消失せず、共焼結が可能であること、共焼結によって、作製したキャパシタはセラミックス単体と同程度の高い比誘電率を有することが確認できた。よって本実施例から、Na、Al、Zr、P、Siを含みNASICON型結晶構造を有するセラミックスを電解質材料とする固体イオンキャパシタを安価に実現可能であることが確認できた。
(実施例2)
以下、イオン伝導体1aに導電性粒子1bを分散させた場合における電解質層の焼結を確認し、キャパシタとしての特性を測定した。
(1)イオン伝導体1aに導電性粒子1bを分散させた電解質層(複合セラミックス)の焼結およびキャパシタ特性の確認 原料としてNa2CO3、Al2O3、ZrO2、SiO2、リン酸アンモニウム(NH4)2(PO4)3の粉末を用意し、Na 1.5 (Al0.1Zr0.9)2(P0.9Si0.1O4)3の組成比となるようにこれらの粉末を秤量した。Na 1.5 (Al0.1Zr0.9)2(P0.9Si0.1O4)3の組成比は高いイオン伝導度が得られる一例である。ボールミル容器中にエタノールと、ジルコニアボールと秤量した原料粉末とを投入し、100rpmで20時間容器を回転させ、混合を行った。得られた混合粉を乾燥させ、脱ガス発泡による体積膨張を防ぐため、まず低温仮焼きし、脱ガスを行った。具体的には、PTFEの容器中、大気中、300℃で2時間一次仮焼きを行い、アルミナ容器に移し替えた後、大気中、700℃で2時間、2次仮焼きを行った。
次に乳鉢で解砕後、ボールミルで混合と同様に仮焼体を粉砕した。粉砕した仮焼体を乾燥させた後、目開き500μmのメッシュを通した。得られた紛体を、固体電解質用材料とした。
導電性粒子として、2μmの平均粒径を有するAg粉末(昭栄化学製)を用意し、固体電解質用材料と導電性粒子との合計に対して、2.5、5、10、15、20、25、30vol%となるように導電性粒子を秤量し、それぞれの比率で固体電解質用材料と混合し、エタノールを加え、ボールミルで20時間混合した。導電性粒子の含有比率が異なるそれぞれの試料を作製した。
その後、ボールミルから取り出して、混合物を乾燥させ、目開きが500μmであるメッシュに通し、整粒した。混合物にバインダーとして1.2mass%のPVAを添加し、乳鉢で混合し、目開き500μmのメッシュを通し、造粒を行った。得られた造粒粉を0.5g秤量し、直径14mmの円形の金型を用いて、1.5Ton/cm2の圧力でプレス成形し、ペレットを作製した。ペレットの温度を200℃/Hrの速度で上昇させ、大気中、900℃で2時間焼成した。
得られた焼結体の研磨加工で表面除去後、表面を光学顕微鏡で観察した。また、EPMAによって、試料表面における元素分布を調べた。その後、両面に直径6mmの円形のAg電極を形成し、300℃で焼付け、Ag電極を焼結体に固着させた。これによりキャパシタを得た。
次に、キャパシタの電気的特性を求めた。具体的には、インピーダンスメータで周波数掃引して、試料のZ−θ計測を行い、静電容量Cを求め、誘電体層の比誘電率を求めた。
図12に25vol%で導電性粒子を添加した試料の表面を光学顕微鏡で観察した像を示す。光学顕微鏡による観察では、固体電解質中に孤立した導電性粒子が分散しているのが分かる。気孔はほとんど生成していない緻密な焼結体が得られることが確認できた。
図13Aは、25vol%で導電性粒子を添加した試料の表面SEM像を示し、図13Bおよび図13Cは、EPMAによるNaおよびAgの分布を示す。SEM像における輝度から、図13Aにおいて、領域31aは電解質であり、領域31aは導電性粒子である。図13Bにおいて、領域31b(明るい領域)はNaの量が多い部分であり、領域32b(暗い領域)はNaの量が少ない部分である。また、図13Cにおいて、領域31c(暗い領域)はAgの量が少ない部分であり、領域32c(明るい領域)はAgの量が多い部分である。
図13Aと図13Bまたは図13BCとの比較から、Naは、固体電解質の部分(図13Aにおける領域31a)にのみ存在し、導電性粒子の部分(図13Aにおける領域32a)には存在していないことが分かった。また、Agは導電性粒子の部分(図13Aにおける領域32a)に存在し、固体電解質の部分図13Aにおける領域31aには存在していないことが分かった。このことから、導電性粒子と、固体電解質とは、焼成時にほとんど反応していないことが分かった。ただし、図13Aに示されるように、針状の析出物を含む領域33aがSEM像に見られた。これは、電解質組成中の残留している低温液相組成と微量のAgのとの反応による、Ag−Na−Oの針状析出物であると考えられる。この針状析出物は絶縁体と考えられるため、キャパシタの特性への影響は小さいと考えられる。
図14に、1kHzにおける導電性粒子の含有比率と比誘電率との関係を示す。含有比率が増大すると、比誘電比率も増加している。導電性粒子の含有比率が5%よりも大きくなると、比誘電率は、導電性粒子を含まない場合(含有比率が0)に比べて30%以上大きくなり、実質的な導電性粒子含有による比誘電率の増大効果がみられる。図14から、1kHzの周波数では、導電性粒子の含有比率が25%になると、導電性粒子を含まない場合に比べて、1桁以上大きな比誘電率が得られることが分かる。
導電性粒子の含有比率が30vol%の試料は、Z−θ計測が正しく行えなかった。テスターで確認したところ、電極間に導通が見られ、電解質層が導電性を有していることが分かった。これは、電解質中での導電性粒子の含有量が増大することによって、導電性粒子同士が接触し、網状に導電パスが形成されることによって、導電性が生じているからと考えられる。
導電性粒子の含有比率と電解質層の導電性との関係を調べるため、作製した試料の電気伝導度を測定した。具体的には、比誘電率計測に用いた試料の電極間に1Vの電位をかけて電流の経時変化を測定した。計測の初期においては内部を電極に向かってNaイオンが動き電極界面にたまるために見かけ上、電流が流れる。しかし、長時間放置することで、一定値に安定し電子の伝導性だけを示すようになるため、この時の電圧、電流値、電極面積および電極間距離から、電気伝導度を求めた。結果を以下の表3に示す。表3より、25vol%以下では、電気伝導度は小さく、電気絶縁性を有すると判断される値である。一方、30vol%の試料の電気伝導度10-1のオーダーであり、導電性を有すると判断される値である。一般に、電気伝導度によって、電気絶縁性と導電性とを定義する場合、閾値は1×10-3S/cmで規定され、電気伝導度が1×10-3S/cmよりも小さければ電気絶縁性を有する絶縁体であり、1×10-3S/cm以上であれば導電性を有する導電体と定義される。
導電性粒子を固体電解質に分散させることによって、比誘電率が増大する理由は、現時点では明らかではない。導電性粒子の含有比率の増大に伴い比誘電率も増大していることから、導電性粒子と固体電解質との界面が比誘電率の増大に影響していると考えられる。例えば、(i)電極層と電解質層との界面で電極層に導電性粒子が接触することによって、電極層の表面積が増大する、(ii)固体電解質と導電性粒子との間にわずかに反応が見られることから、イオン伝導性が良い方に固体電解質の組成が変わった等の理由が考えられる。
(2) グリーンシートの積層による固体イオンキャパシタの作製
グリーンシートを積層することによって固体イオンキャパシタを製造できることを確認した。上述した組成を有し、上述の手順によって仮焼きし粉砕した仮焼粉砕粉およびAg粉末を、仮焼粉砕粉およびAg粉末の合計に対してAg粉末が25vol%の割合となるように混合し、更に、エタノール、PVB(ポリビニルブチラール)および可塑剤を混合してスラリーを作製した。混合粉と有機材(エタノール、PVBおよび可塑剤)との重量比は、5:4であった。
スラリーをPETフィルム上へ0.05mmの厚さで塗布し、乾燥させた。乾燥後、得られたグリーンシートを直径14mmの円形に打ち抜き、打ち抜いた3枚のシートを重ねた。また、Agのペースト層を直径6mmの円形に打ち抜き、重ねた3枚のグリーシートの両面に配置し、85℃、200kg/cm2の圧力でプレスし圧接した。得られた積層体を200℃/Hrの昇温速度で加熱し、大気中、900℃で2時間共焼結した。同様にして、Ag粉末を含まない試料を作製した。上述と同様、得られたキャパシタのインピーダンス測定を行った。
図15に比誘電率の周波数特性を示す。導電性粒子を含まない試料の測定結果を合わせて示している。図15から、導電性粒子を固体電解質に分散させることによって、数Hzから数MHz程度の周波数で容量が増大することが分かる。このように、導電性粒子の添加により、数MHz程度まで、容量の増大が見込めることが分かる。図16Aおよび図16Bは、作製した試料および比較のため、Agを添加せず、同じ組成、かつ同じ作成方法の条件の試料の断面光学顕微鏡像を示す。いずれも、電極層と電解質層との界面が明瞭に示されており、Ag粉末と電解質とが反応せずに、共焼結体を構成していることが分かる。また、実施例の試料では電解質層中に導電性粒子が分散しており、かつ電解質と導電性粒子も反応していないことが分かる。このときの電気伝導度は、5×10-7S/cmであり、Agは短絡していないプレス成型による焼成体と同等の値であると判断された。以上のことから、電解質材料中に導電性粒子を分散させたグリーンシートと電極ペーストとを積み重ね、共焼結させることによって、本実施形態の固体イオンキャパシタを作製できることが分かった。
(3) まとめ
本実施例から、Na、Al、Zr、P、Siを含みNASICON型結晶構造を有するセラミックスに導電性粒子を分散させた複合セラミックスが、導電性粒子を含まない物に比べ、高い比誘電率を備えていることが確認できた。