JP6543019B2 - 鋼材の腐食疲労寿命の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、腐食環境下で使用される鋼材について、鋼材が有する腐食疲労特性の評価方法に関するものである。
一般的に、鋼材の腐食疲労寿命は、その繰り返し荷重を印加中の腐食媒体と接する所定部位に亀裂が発生したときで評価される。そして、寿命を評価するときの数値的指標として、例えば亀裂発生サイクル数を測定することで評価される。「亀裂発生サイクル数」とは、厳密には、腐食環境下にある鋼材に繰り返し荷重が印加されたときに、鋼材に亀裂が発生したときの前記繰り返し荷重の回数(サイクル数)をいう。そして、この評価に用いられる手法としては、内部に形成した空間に腐食媒体を導入した試験片の表面に繰り返し荷重を掛ける腐食疲労損傷の評価方法が提案されている(特許文献1)。そして、柱状で荷重様式が軸力の場合の疲れ試験片に取り付けて腐食雰囲気下の疲れ試験を行うための腐食液槽が提案されている(特許文献2)。また、歪みゲージによる応力計測値に基づいて試験片に引張り荷重を加える手段を具備した応力腐食割れ試験装置が提案されている(特許文献3)。腐食疲労試験が腐食媒体の環境下にある試験片に繰り返し荷重を印加して実施されるところ、亀裂発生サイクル数の測定は、測定値の信頼性を高めるために、通常、当該試験を複数回実施して、得られた複数の測定値を例えば平均して求められている。
特開2010−107372号公報 特開昭48−075086号公報 実開昭63−088739号公報
特許文献1〜3のうちで、内部空間に腐食媒体が導入された鋼材でなる試験片を用いる特許文献1の手法は、既存の簡便な疲労試験装置を利用して、試験片の表面より繰り返し荷重を掛けることができる有効な手法である。しかし、特許文献1の手法で鋼材の腐食疲労寿命を評価するにおいて、例えば亀裂発生サイクル数を求める場合、所定の繰り返しサイクル数の荷重を印加した時点で試験片の表面や断面を観察して、試験片の観察状況から亀裂発生サイクル数を「直接的な相関」で決定することとなる。したがって、その場での測定者の間で損傷形態の評価基準(つまり、個人的な感覚)に差があると、試験条件が同一であっても、特定した亀裂発生サイクル数に大きな誤差が生じる可能性がある。そして、複数回の試験を実施したときには、得られた複数の亀裂発生サイクル数の間でも差が生じ得て、それらを単に平均して求めた亀裂発生サイクル数は信憑性が低く、寿命評価のずれになり得るものであった。
本発明の目的は、腐食疲労試験における鋼材の腐食疲労寿命を、高い信憑性をもって求めることができる方法を提供することである。
本発明者は、鋼材の腐食疲労寿命の評価方法として、その場の判断で異なり得る試験片の腐食部位の観察状況から直接的に腐食疲労寿命を決める従来の評価基準ではなくて、試験時期や測定者を問わず差異の生じ難い新しい評価基準を用いることを検討した。その結果、試験中の試験片に生じている歪みの値を所定の条件で処理して得た「歪み指数」の値は、数値的に求めることができる絶対的な評価基準であり、かつ、試験片に亀裂が生じ始めたときに各試験片の間でほぼ決まった値を示すことを突きとめた。そして、腐食疲労寿命を評価したい評価試験片に対して腐食疲労試験(本試験)を実施する前に、例えば予備試験片による腐食疲労試験(予備試験)を実施することで、評価試験片に亀裂が生じ始めたときの各試験片に生じている歪み指数(つまり、寿命歪み指数)を事前に知ることができる。そして、本試験では、評価試験片の腐食疲労寿命(亀裂発生サイクル数)を、前記寿命歪み指数の値との比較によって推定できるので、腐食疲労寿命を精度よく評価できるという知見に達した。
すなわち、本発明は、
鋼材の腐食疲労寿命を評価する方法であって、
前記鋼材の所定部位に腐食媒体が接する状態で、当該鋼材の歪みを測定しながら繰り返し荷重を印加し、初期の荷重を印加したときの歪みの振幅とN回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重を印加したときの歪みの振幅とからN回目歪み指数を計測し、前記N回目歪み指数と予め認定した寿命歪み指数とを比較して前記鋼材の腐食疲労寿命と推定することを特徴とする鋼材の腐食疲労寿命の評価方法である。
前記本発明において、前記鋼材の内部空間に前記腐食媒体が導入されており、前記鋼材は外部に歪み測定手段を有することが好ましい。さらに、前記歪みを測定する手段が歪みゲージであることが好ましい。
前記本発明において、
鋼材の所定部位に腐食媒体が接する状態で、当該鋼材の歪みを測定しながら繰り返し荷重を印加し、初期の荷重を印加したときの歪みの振幅とN回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重を印加したときの歪みの振幅とからN回目歪み指数を計測し、前記N回目の荷重を印加した後、前記鋼材の前記腐食媒体が接する部位における亀裂の有無を確認し、前記亀裂が確認されたときのN回目歪み指数を仮寿命歪み指数とし、
複数の鋼材を用いて前記仮寿命歪み指数を計測し、
前記複数の仮寿命歪み指数を基にして前記予め認定した寿命歪み指数を決定することが好ましい。
このとき、前記亀裂が確認できなかった場合、亀裂発生が確認できるまで荷重の回数を増やして前記亀裂の確認を繰り返すことが好ましい。または、前記亀裂の有無の確認は、破壊検査により確認することが好ましい。
本発明によれば、一連の腐食疲労試験の工程において、誤差の少ない寿命評価、例えば亀裂発生サイクル数の推定を行うことができる。そして、例えば予備試験等を行なったことで、その後は本試験で試験片の損傷形態を観察しなくても、寿命の評価ができ、亀裂発生サイクル数を推定できる。これによって、例えばダイカスト用やプラスチック成形用の各種金型や機械部品等の腐食環境下で使用される鋼材の腐食疲労特性を、試験の実施者が変わってもほぼ正確に求めることができ、評価方法の基準化に有用な方法となり得る。
内部空間に腐食媒体が導入された試験片に繰り返し荷重を印加した後に、該試験片を破壊して得た破断面であり、内部空間に発生した腐食疲労の状況の一例を示す図面代用写真である。 図1で腐食疲労が発生した領域を走査型電子顕微鏡で観察した金属ミクロ写真である。 本発明の実施例で用いた試験片の外観を示す模式図である。 試験片に印加した繰り返し荷重の回数と計測した歪み指数との関係の一例を示すグラフ図である。 繰り返し荷重を印加したときの試験片に生じる歪みの変化の一例を説明するグラフ図である。 内部空間に腐食媒体が導入された試験片に繰り返し荷重を印加した後に、該試験片を破壊して得た破断面であり、内部空間に発生した腐食疲労の状況の一例を示す図面代用写真である。
本発明の特徴は、腐食疲労試験中の鋼材が腐食疲労寿命に達したときの評価基準に、試験中の試験片に生じている歪みの値から計測される「歪み指数」を導入したところにある。この歪み指数は、試験片に初期の荷重を印加したときの歪みの振幅Δεと、その印加以降N回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重回数に至るまでの時々で荷重を印加したときの歪みの振幅Δεとから計測される指数である。前記歪み指数は、例えば、前記Δεと前記Δεとの値の間で減算や除算等を行って算出される値であり、歪みの振幅の差(Δε−Δε)がその一例である。そして、N回目の荷重を印加したときの「N回目歪み指数」の値は、試験片に亀裂が生じ始めたときに各試験片の間でほぼ決まった値を示す。したがって、例えば予備試験を実施して、上記亀裂が生じ始めたときのN回目歪み指数を予め知っておくことで、従来のように、求めた亀裂発生サイクル数の精度を高めるために本試験の回数を増やさなくても、あるいはさらに、本試験後の試験片の疲労損傷面を確認しなくても、誤差の少ない寿命の評価、例えば亀裂発生サイクル数の推定ができる。
腐食疲労試験において、試験中の鋼材に繰り返し荷重を印加したとき、鋼材の所定部位に生じる歪みは、その繰り返しサイクル数(つまり、荷重の回数)に対して、所定の振幅を有している(図5)。この歪みの振幅は、鋼材の種類(材質、硬さ等)や印加する荷重値等の因子の違いによって異なるが、前記因子のそれぞれが固定された一つの腐食疲労試験において、サイクル数が小さいうちは、前記繰り返しサイクル数が増加しても略一定で推移する。そして、この略一定の歪みの振幅が、前記初期の荷重を印加したときの歪みの振幅Δεに相当する。しかし、繰り返しサイクル数がさらに増加すると、前記所定部位に亀裂が生じる。そして、前記亀裂が生じると、前記略一定の振幅であった歪みΔεはΔεの値へと大きくなり、これ以降、亀裂の進展に連れて大きくなっていく。このような亀裂の進展と歪みの増加との関係において、本発明者は、その関係が包含している一定の法則を見いだした。
前記「初期の荷重」とは、試験開始から間もない、歪みが増加傾向を示す前の印加回数での荷重であり、簡便には試験の最初に印加する荷重である。ただし、試験開始直後は荷重と歪み量との関係が安定せず、繰り返しサイクル数がある程度増加してから略一定に推移する場合がある。したがって、荷重と歪みの関係が落ち着いて、上述のように略一定となった時を「初期」とし、該「初期」の荷重を印加したときの歪みの振幅をΔεで取り扱うことが好ましい。略一定になる「初期」のサイクル数は、例えば2000〜2500回の間である。
つまり、上記歪みの値は、鋼材の種類や印加する荷重値等の因子の違いによって様々であるところ、この歪みの値を上記(Δε−Δε)等の定義に従って処理した歪み指数の値は、上記因子の違いによらず略同一であることを突きとめた。そして、この歪み指数の値は、前記初期の荷重を印加したときより略一定の値をもって推移し、繰り返しサイクル数が増加しても略一定であるところ、前記所定部位に亀裂が生じ始めたときに増加傾向を示し、かつ、亀裂の進展に連れて増加していくことを、本発明者は突きとめた(図4;縦軸の値は前記(Δε−Δε)による歪み指数である)。そして、この増加傾向を示したときの歪み指数の値もまた、上記因子の違いによらず略同一である。以上より、この増加傾向を示したときの歪み指数の値が、例えば後述する予備試験等の手法によって、前記亀裂が生じ始めたときの歪み指数(つまり、寿命歪み指数)であると認定できれば、腐食疲労寿命を評価したい鋼材に対して本試験を実施する前に前記寿命歪み指数を予め認定しておくことで、本試験中の鋼材で計測中のN回目歪み指数の値と前記予め認定した寿命歪み指数とを比較して、本試験における鋼材の腐食疲労寿命を容易に推定することができる。
そして、前記比較による腐食疲労寿命の推定手法としては、以下がある。例えば、本試験における前記N回目歪み指数が前記寿命歪み指数を超えたときが、鋼材の腐食疲労寿命であると推定することができる。あるいは、寿命に対する一定の安全率や、差支えのない範囲での指数の丸め(四捨五入等)を採用するとなれば、前記N回目歪み指数が前記寿命歪み指数より若干低いかまたは高い指数を超えたときが、鋼材の腐食疲労寿命であると推定してもよい。そして、そのときの「N回」であった荷重の回数が亀裂発生サイクル数であると推定してもよいし、前記安全率や丸めを採用した場合には、前記「N回」の荷重よりも若干低いかまたは高い回数が亀裂発生サイクル数であると推定してもよい。
鋼材の腐食疲労寿命を評価するにおいて、本発明が用いる鋼材の形態は、腐食環境を鋼材の外部に形成したもの、または、鋼材の内部に形成したもののどちらでもよい。但し、鋼材の内部に腐食環境を形成したものが好ましい。一具体的には、特許文献1に同様、内部空間に腐食媒体を導入した鋼材である。これによって、既存の簡便な疲労試験機を利用して、鋼材の表面に直接作用する繰り返し荷重を印加することができる。ここで、前記繰り返し荷重を印加する「鋼材の表面」とは、例えば、前記鋼材の外部の表面であって、前記鋼材の肉厚を介して前記腐食媒体が接する内部空間に対向する外部の表面である。
そして、内部空間に腐食媒体を導入した鋼材とすることで、腐食疲労試験中の鋼材に生じている歪みを安価かつ容易に測定することができる。鋼材が腐食媒体中にあると、歪みの測定は専ら鋼材に対して非接触で行うこととなり、例えばレーザー等の光学的手法を用いることは装置が高価かつ煩雑である。その点、腐食媒体を内部空間に導入した鋼材の場合、その外部に歪み測定手段を有することで、例えば、歪みの測定を鋼材の外部の表面に接触して行うことができ、安価かつ容易な手法を利用することができる。好ましくは、歪み測定手段が歪みゲージである。
歪みゲージは、電気抵抗歪み計による歪み測定に用いられる。電気抵抗ひずみ計は、金属等でなる抵抗材の電気抵抗がそれに作用する歪みによって変化する現象を利用したひずみ計である。そして、この抵抗材でなる歪みゲージを被測定物である鋼材の外部の表面に貼付することで、試験中の歪みゲージには鋼材と同じ歪みが生じて、この歪みを電気抵抗の変化として検出するものである。この手法は、手軽でかつ安価である。そして、軽量で応答性もよく、動的な歪みの測定にも適している。なお、歪みゲージを貼付する際には、そのゲージ長の方向を繰り返し荷重の印加方向に合わせることが、歪みの変化量をより正確に検出するのに好ましい。方向を合わせることについては、繰り返し荷重の印加方向に対して歪みゲージの貼付方向が±3°の範囲内にあることが、より好ましい。
以下、本発明の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法の詳細について、好ましい一具体例を用いて説明する。
<第1のステップ> 内部空間に腐食媒体が導入され、外部に歪み測定手段を有する鋼材でなる試験片を準備する。
この要件については、上述の通りである。前記鋼材を、内部空間に腐食媒体を導入した試験片とすることによって、既存の簡便な疲労試験機を利用して、試験片の表面に直接作用する繰り返し荷重を印加することができる。また、歪みの測定を試験片の外部から行うことができ、安価かつ容易な手法を利用することができる。好ましくは、歪み測定手段が歪みゲージである。
<第2のステップ> 前記試験片の歪みを前記歪み測定手段で測定しながら繰り返し荷重を印加し、初期の荷重を印加したときの歪みの振幅とN回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重を印加したときの歪みの振幅とからN回目歪み指数を計測する。
本発明は、腐食疲労試験中の試験片が寿命に至ったときを、そのときに対応して試験片に生じていた歪みを評価基準にして評価するものである。したがって、本発明の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法に係る第2のステップでは、本試験の全般に亘って、その最初から、歪みの安定する初期を経て、N回目の荷重を印加するまでの試験片に生じていた歪みを計測することが好ましい。そして、これら計測で得た複数の歪みの値から、例えば、前記(Δε−Δε)の差で定義されるようなN回目歪み指数を求めることができる。
<第3のステップ> 前記N回目歪み指数と予め認定した寿命歪み指数とを比較して前記鋼材の腐食疲労寿命を推定する。
本発明の場合、例えば、後述の予備試験を実施しておくこと等によって、腐食媒体が導入された試験片の内部空間に亀裂が生じ始めたときに応じた適当な寿命歪み指数を予め認定済みである。したがって、本試験中の鋼材で計測中の歪み指数の値が、N回目の荷重に達したときに、そのN回目歪み指数の値と前記予め認定済みの上記寿命歪み指数の値とを比較して、既述の要領等により、鋼材の腐食疲労寿命を容易に推定できる。そして、そのときの「N回」であった荷重の回数から、既述の要領等により、亀裂発生サイクル数を推定できる。
次に、上記予め認定した寿命歪み指数の決定手法(つまり、前記予備試験)について説明する。
前記寿命歪み指数を決定するための予備試験も、その要領の概念は、前記本試験のものと同じである。つまり、前記予備試験も、鋼材の所定部位に腐食媒体が接する状態で、当該鋼材の歪みを測定しながら繰り返し荷重を印加し、初期の荷重を印加したときの歪みの振幅とN回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重を印加したときの歪みの振幅とからN回目歪み指数を計測するものである。そして、前記N回目の荷重を印加した後、前記鋼材の前記腐食媒体が接する部位における亀裂の有無を確認し、前記亀裂が確認されたときのN回目歪み指数を基にして前記寿命歪み指数として決定するものである。なお、前記「亀裂が確認されたとき」の指標は、例えば、実際の亀裂の程度(長さ、面積等)を基に決めておけばよい。
しかし、前記予備試験で計測した歪み指数が、亀裂が生じるN回目のものであったとしても、そのときの亀裂が発生初期のものであるかを判定することは大事である。したがって、亀裂の進展度に応じて変化する(増加する)複数の歪み指数の値を収集しておくことで、それら複数のN回目に計測した歪み指数から寿命歪み指数と認定することが、腐食疲労寿命に至った正確な時期の判定に有効である。そして、この複数のN回目に計測した歪み指数を採取するためには、鋼材に亀裂が生じた毎に(あるいは、未だ亀裂が生じていない時点においても)、そのときの鋼材の亀裂の有無を確認する作業が必要であり、すなわち、予備試験に供する鋼材は複数を準備することが好ましい。すなわち、本発明に係る前記予備試験では、前記N回目の荷重を印加した後、前記鋼材の前記腐食媒体が接する部位における亀裂の有無を確認し、前記亀裂が確認されたときのN回目歪み指数を「仮の」寿命歪み指数とする。そして、複数の鋼材を用いて前記仮の寿命歪み指数を計測し、前記複数の仮の寿命歪み指数を基にして前記予め認定した寿命歪み指数を決定する。この手法によって認定された寿命歪み指数は、鋼材の腐食疲労寿命評価に用いることで、信憑性の高い腐食疲労寿命を推定できる評価基準として有効である。
なお、予め認定した寿命歪み指数を決定する際の前記「基にして」については、例えば、前記複数の仮の寿命歪み指数のうちで、最も少ないN回目に計測した仮の寿命歪み指数を前記予め認定した寿命歪み指数とすることができる。あるいは、寿命に対する一定の安全率等によっては、差支えのない範囲で前記複数の仮の寿命歪み指数を平均したり、指数を丸めたりして(四捨五入したりして)、指数を操作し、結果的には、前記最も少ないN回目に計測した仮の寿命歪み指数の値より若干低いかまたは高い指数を前記予め認定した寿命歪み指数とすることもできる。
また、前記鋼材の亀裂の有無の確認作業において、前記亀裂が確認できなかった場合は、亀裂発生が確認できるまで荷重の回数を増やして、再度、前記亀裂の確認を繰り返すことができる。この場合、亀裂の有無の確認には、鋼材の破壊を伴わない手法、例えば、マイクロスコープ等によって前記腐食媒体が接する部位を観察する手法を用いることができる。しかし、亀裂は、前記部位の表面から専ら深さ方向に進展する。よって、亀裂の有無が確認できた上では、その確認できた亀裂が初期のもの(すなわち、腐食疲労寿命に到達したときのもの)であるのか、または、前記初期から大きく進展したもの(すなわち、腐食疲労寿命に到達した以降のもの)であるのかの正確な判断のためには、前記鋼材を破壊することが好ましい。すなわち、複数の鋼材を準備した上で、前記鋼材の亀裂の有無の確認は、破壊検査により確認する手法が好ましい。そして、さらには、前記亀裂を含んだ断面が露出するように鋼材を破壊して、その破断面を観察することが好ましい。破壊の手法としては、微小の亀裂を潰してしまうことのないように、例えば、鋼材を荷重印加方向に垂直な面で二分した後(図1)、油圧サーボ試験機等で荷重を加え強制的に破壊することが好ましい。
そして、前記予備試験では、鋼材に亀裂が生じるN回目歪み指数に至るまでの途中の歪み指数も計測して、さらには、前記N回目以降の歪み指数も計測して、印加した繰り返し荷重の回数と計測した前記歪み指数との関係図を作成することが好ましい。
本発明者は、腐食疲労試験中の鋼材で計測される歪み指数が、そのときの繰り返し荷重の回数との間で連続的な相関を示すことを知見した。そして、鋼材に亀裂が発生していない段階(試験の初期段階)では、計測される歪み指数は連続して略一定の数値を示すところ、荷重の回数が増していって、鋼材に亀裂が発生すると、このときの歪み指数が増加の傾向を示すことを突きとめた(図4)。そして、厳密には、この増加傾向を示したときの歪み指数が、寿命歪み指数に相当する。この現象は、鋼材の前記内部空間に亀裂が発生することで、その歪み測定手段を有した鋼材の外部の表面との間で鋼材の厚さ(肉厚)が薄くなるため、同量の荷重値下でも変形量(歪み)が大きくなることによるものと考えられる。
そこで、試験中の全般に亘った「繰り返し荷重の回数−歪み指数」の関係図をも作成しておくことで、前記関係図における歪み指数の増加点(変曲点)のあたりに対応する荷重の回数が、この後の本試験で推定する亀裂発生サイクル数の一指標になることを、視覚的に確認できる。したがって、上記関係図を複数の測定者間で標準化しておくことで、例えば、本試験において上記関係図も参証すれば、推定した亀裂発生サイクル数の正確性および妥当性がより向上する。具体的に述べれば、前記関係図を作成し、前記関係図で前記歪み指数が増加するときの歪み指数を基にして前記予め認定した寿命歪み指数を決定する鋼材の腐食疲労寿命の評価方法である。そして、前記関係図を作成し、前記関係図で前記歪み指数が増加するときの荷重印加回数を基にして前記鋼材の腐食疲労寿命を推定する鋼材の腐食疲労寿命の評価方法である。
なお、前段において、本発明者は、前記歪み指数の値が、鋼材の種類や印加する荷重値等の因子の違いによらず略同一であることを述べた。そして、鋼材に亀裂が生じたときの寿命歪み指数について、そのときの鋼材の亀裂の状態が、例えば、後述する図1の試験片Bの点状の亀裂が確認される状態であるならば、そのときに計測される歪み指数(すなわち、前記寿命歪み指数)は、前記(Δε−Δε)による値にて概ね5〜15μの域にある(約10μである)ことを、本発明者は確認している。「μ」は「10−6」のことである。但し、鋼材に亀裂が生じたときの該亀裂の状態(指標)は、その都度、適当なものに変更することができる。例えば、鋼材に亀裂が生じたときの該亀裂の指標として、前記試験片Bの亀裂より小さい(初期の)亀裂を適用するのであれば、そのときに計測される歪み指数(寿命歪み指数)は、前記(Δε−Δε)で5μ未満ともなり得る。また、腐食媒体が接する鋼材の所定部位(内部空間)の表面肌を、例えば研磨等によって、滑らかに加工した場合、試験中の前記所定部位に働く応力は亀裂に集中する傾向となる。よって、この場合、前記試験片Bの亀裂と同程度の状態の亀裂であっても、前記同程度の状態の亀裂を生じさせるのに必要な歪みは少なくて済むこととなり、前記(Δε−Δε)による寿命歪み指数は5μ未満となり得る。これら亀裂の指標や前記表面肌の加工の程度については、鋼材に求められる耐腐食疲労特性のレベルや用途、歪みの測定手段の精度等に応じて、決定すればよい。
以下、本発明の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法に掛かり、前記寿命歪み指数の決定手法について、好ましい一具体例を説明する。
<ステップI> 内部空間に腐食媒体が導入され、外部に歪み測定手段を有する鋼材でなる試験片を準備する。
鋼材の腐食疲労寿命を評価するにおいて、本発明が用いる試験片の形態は、特許文献1に同様、試験片の内部に腐食環境を形成したものであることが好ましい。そして、この詳細については、上記で説明済みであり、例えば、本発明の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法に係る第1のステップと同様である。
<ステップII> 前記試験片の歪みを前記歪み測定手段で測定しながら繰り返し荷重を印加し、初期の荷重を印加したときの歪みの振幅とN回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重を印加したときの歪みの振幅とからN回目歪み指数を計測する。
本発明の場合、前記本試験(第1〜第3のステップ)を実施する前には、前記寿命歪み指数を予め認定しておくことが重要である。そして、この寿命歪み指数の認定は、前記予備試験を行っておくことで、試験片に計測される歪み指数が如何程のレベルのときに試験片に亀裂が発生したのかを確認することで、可能である。そして、その確認のために、予備試験の全般に亘って、N回目の荷重を印加するまでの試験片に生じていた歪みを計測することが好ましい。歪み指数の値は、例えば、前記(Δε−Δε)の差で定義されるようなN回目歪み指数を用いることができる。
そして、ステップIIでは、鋼材に亀裂が生じるN回目歪み指数に至るまでの途中の歪み指数も計測して、さらには、前記N回目以降の歪み指数も計測して、印加した繰り返し荷重の回数と計測した前記歪み指数との関係図を作成することが好ましい。
この詳細については、上記で説明済みであり、例えば、本発明の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法に係る第2のステップと同様である。つまり、試験片に亀裂が発生した時のN回目歪み指数(寿命歪み指数)を事前に知っておくことに加えて、そのN回目歪み指数に至るまでの途中およびそれ以降の歪み指数も計測して、試験中の全般に亘った「繰り返し荷重の回数−歪み指数」の関係図をも事前に知っておけば、腐食疲労の本試験で推定した亀裂発生サイクル数の正確性および妥当性がより向上する。
<ステップIII> 前記N回目の繰り返し荷重を印加した後、前記試験片の前記腐食媒体が導入された内部空間における亀裂発生の有無を確認する。
寿命歪み指数を認定するための予備試験を行う場合において、試験片に亀裂が発生したときの歪み(寿命歪み)を認知するには、所定回数の繰り返し荷重を印加した後の試験片の、前記腐食媒体が導入された内部空間に亀裂が発生していることを確認する必要がある。そして、荷重がN回目に達したときに確認された亀裂が発生初期のものであるなら(図1の試験片Bを参照)、その時点で計測された歪み指数は寿命歪み指数としての妥当性が高い。鋼材に発生する腐食疲労は、腐食を伴って破壊が進行する現象である。そして、腐食環境下にある鋼材の表面で発生した腐食が進展し、初期においては専ら点状の亀裂として認められる。よって、鋼材の観察指標においては、図1の試験片Bの時点を鋼材の腐食疲労寿命と認定することができる。
亀裂の有無の確認には、例えば、マイクロスコープ等によって内部空間の表面を観察する手法を用いることができる。あるいは、前記亀裂を含んだ断面が露出するように試験片を破壊して、その破断面を観察することで行うことが好ましい(図1)。亀裂発生の確認作業に上記破壊による検査を用いる場合は、その確認毎に試験片を破壊することとなるので、複数の試験片を準備することが好ましい。
また、ステップIIおよびIIIについては、複数の試験片の間で印加する繰り返し荷重の回数に異なる回数を予め設定しておき、それら荷重を印加後の複数の試験片について残りの作業をまとめて同時に実施してもよい。つまり、最初から複数の試験片を準備して、これらに印加する繰り返し荷重の異なる回数を決めておく。そして、各回数の繰り返し荷重を印加する腐食疲労試験を行った後には、個々の試験片について一試験毎に亀裂発生の確認を行うことなく、まとめて後述するステップIV以降を実施すれば、腐食疲労寿命の迅速な評価が行える。また、上記複数の試験片に対して、先に、かつ、同時期に腐食疲労試験を済ませてから、好ましくは亀裂発生の確認作業も同時期に行うことで、各試験および作業間での温度や湿度、実施者による取扱い方等の実施環境を統一でき、評価結果の誤差を小さくすることができる。
<ステップIV> 亀裂発生が確認できた試験片におけるN回目歪み指数を基にして予め認定した寿命歪み指数を決定する。
前記ステップIIおよびIIIにおいて、試験片で計測されたN回目歪み指数から寿命歪み指数を決定するためには、そのときの試験片の前記腐食媒体が導入された内部空間に亀裂が確認されて、かつ、好ましくはその亀裂が「発生初期のものである」と判定する必要がある。このとき、所定回数の繰り返し荷重を印加後の試験片の内部空間に亀裂が確認されなかった場合には、亀裂発生が確認できるまで(例えば、図1の試験片Bに示した程度の亀裂が確認できるまで)荷重の回数を増やした腐食疲労試験を実施すればよい。あるいはさらに、亀裂発生が確認できた試験片が複数得られた場合は、例えば、その中で印加した繰り返し荷重の回数が最も少なかったものについて、その上記N回目歪み指数を寿命歪み指数と決定することができる。あるいは、前段で述べたように、前記複数のN回目歪み指数の値を操作して、結果的には、前記印加した繰り返し荷重の最も少なかったもののN回目歪み指数の値より若干低いかまたは高い指数を前記寿命歪み指数とすることもできる。
前記第1〜第3のステップ(本試験)を実施する前には、前記ステップI〜IVによる寿命歪み指数の決定手法(予備試験)を実施したことで、試験片の有する寿命歪み指数を把握済みである。そして、繰り返し荷重の回数を増やしていったときの歪み指数は、そのときの繰り返し荷重の回数との間で連続的な相関があり(図4)、かつ、寿命歪み指数も各試験片の間でほぼ決まっている。したがって、本試験では、繰り返し荷重を印加中の試験片で計測される歪み指数と上記寿命歪み指数とを比較して、試験片の腐食疲労寿命を容易に推定できる。そして、このときの繰り返し荷重の「N回」のサイクル数を基にして、亀裂発生サイクル数を容易に推定できる。
本発明によれば、腐食疲労寿命を評価したい鋼材に対して、求めた腐食疲労寿命(亀裂発生サイクル数)の精度を高めるために腐食疲労の本試験の回数を増やさなくても、あるいはさらに、本試験後の試験片の亀裂発生の有無を実際に確認しなくても、前記寿命を容易に推定できる。そして、歪み指数という絶対的な数値を評価基準とするので、複数の測定者間で見解の一致した寿命の評価結果を共有できる。そして、前記歪み指数の値が鋼材の種類や印加する荷重値等の因子の違いによらず略同一であることを踏まえれば、予備試験と本試験との間で試験条件(試験片の材質、硬さ、印加する荷重値等)が異なっても、同値の「予め認定した寿命歪み指数」を共用できるので、様々な種類の鋼材について腐食疲労寿命の評価の迅速化が期待できる。
本実施例では、実際のプラスチック成形用金型を想定して、これの内冷孔に発生し得る腐食疲労損傷を再現することで、この金型に用いられている鋼材の腐食疲労寿命を評価した。
●寿命歪み指数の決定
<ステップI>
本発明に係る試験片として、図3に示す試験片1を準備した。試験片1は、サイズが断面15mm角×長さ60mmである素材片2の断面の中心部に、腐食媒体を導入するための内部空間として、直径約10mmの貫通孔3を長さ方向に形成したものである。貫通孔3は、ドリル加工によって形成した。貫通孔3の両端部には、腐食媒体を連続的に通すためのジョイント4が取り付けてある。そして、試験片1に繰り返し荷重を印加したときの歪みの測定手段として、その外面に歪みゲージ5を、荷重の印加方向とゲージ長さが一致するようにして(±3°の範囲内となるようにして)、貼付した。素材片2の材質は、JIS鋼種であるSUS420J2の改良鋼である。そして、これを1020℃で焼入れ後、焼戻して50HRCの硬さに調整したものである。
<ステップII>
試験片1の貫通孔3に、腐食媒体として3.5%NaCl水溶液を通水した。そして、図3の形態に従って、図示しない油圧サーボ試験機を用いて、試験片1の相対する二つの外部表面であり、かつ、試験片1の肉厚を介して腐食媒体が接する内部空間に対向する二つの外部表面に、同時かつ同量の繰り返し荷重を印加する腐食疲労の予備試験を行った。予備試験の条件は、2Hzのサイクルスピードで、内部空間の表面に作用する最大主応力が約900MPaの引張応力になるように設定した。そして、この予備試験の条件のもとで、試験片1でなる4つの試験片A〜Dを準備して、試験片A〜Dのそれぞれに以下の4つの繰り返し荷重の回数による予備試験A〜Dを行ない、4つの予備試験済みの試験片A〜Dを得た。
試験A: 3000サイクル
試験B:12000サイクル
試験C:15600サイクル
試験D:21600サイクル
予備試験中は、歪みゲージ5と図示しない電気抵抗ひずみ計によって、歪みゲージの貼付部に発生している繰り返し荷重方向の歪みを連続的に測定した。そして、歪みの振幅がΔεで安定した以降において、最後の荷重を印加したとき(試験終了時)の歪みの振幅Δεとの間で求められる(Δε−Δε)の歪み指数は、以下の通りであった(「μ」は「10−6」の意である)。
試験A: 0μ
試験B: 10μ
試験C: 25μ
試験D:159μ
また、上記の結果を含み、連続的に測定した歪み指数のデータを用いて、印加した繰り返し荷重の回数(サイクル数)と計測した歪み指数との関係図を作成した。図4は、試験片C(15600サイクル)およびD(21600サイクル)の予備試験について、それらの上記関係図である。両方の関係図の間において、その曲線がほぼ一致しており、かつ、歪み指数とサイクル数との間で連続的な相関を示していることがわかる。そして、歪み指数の値は、試験の初期段階で略一定の数値を示し、あるサイクル数を経過した時点から増加の傾向を示している。
<ステップIIIおよびIV>
ステップIIで試験を行った後の4つの試験片A〜Dを、油圧サーボ試験機を使って、亀裂を含み得る断面が露出するように破壊して、その破断面を観察した。それぞれの破断面を図1に示す。試験片B〜Dの破断面には、内部空間の表面から深部(肉厚部の外部表面)に向かって亀裂の進んだ、茶色に変色した腐食疲労の領域(図1では、肉厚部に比して濃灰色の領域で示されている)が確認された。これらの変色した領域が腐食疲労によるものであることは、該領域を走査型電子顕微鏡で観察することで、それが腐食を伴った粒界破壊の形態を呈していることで確認できる(図2は、試験片Bの該領域を観察したものである)。そして、これらの腐食疲労の領域は、試験片Bでは点状の初期の亀裂であったものが、荷重の回数の増加に伴って、試験片C、Dでは亀裂がさらに進展して、細長くかつ面積の大きいものであった。そして、本実施例では、亀裂発生が確認できた試験片B〜Dにおける試験終了時の歪み指数(つまり、仮寿命歪み指数)のうちで、荷重の回数が最も少なかった試験片Bにおける試験終了時の10μの歪み指数を採用して、これを試験片の寿命歪み指数と予め認定した。
さらに、上記で予め認定した寿命歪み指数の結果を、図4で作成したサイクル数と歪み指数との関係図の結果と照らし合わせた。その結果、予め認定した10μの寿命歪み指数の値は、図4において、歪み指数が増加の傾向に移行する辺りにほぼ一致していた。従って、図4の関係図を標準化することで、推定した寿命歪み指数の結果を視覚的に確認することができ、この結果を鋼材の腐食疲労寿命評価に用いたときに、腐食疲労寿命の正確性および妥当性の向上が期待できる。
●腐食疲労寿命の評価
上記寿命歪み指数の決定の際に準備した試験片と同様の、腐食疲労寿命を知りたい別の試験片を準備して、これに予備試験と同じ条件による腐食疲労試験(本試験)を行った。そして、印加した繰り返し荷重の回数を増やしていったときの歪み指数が、上記の10μの寿命歪み指数の値を超えたときに本試験を終了した。この時の荷重の回数は11600であった。従って、本実施例では、この11600の荷重の回数を試験片の亀裂発生サイクル数と推定した。この推定の正確性を評価するために、本試験後の試験片を上記と同じ要領で破壊して、その破断面を観察した。その結果、上記寿命歪み指数の決定の際の試験片Bと同じ程度の点状の初期の亀裂が確認され、上記推定が適正であったことが確認された。
●寿命歪み指数の決定
実施例1で準備した試験片において、その種類(材質・硬さ)を変更した試験片を複数準備した。材質はダイカスト金型等に用いられているJIS鋼種のSKD61であり、硬さは43HRCである。なお、貫通孔は、ドリル加工後の表面肌を研磨して形成した。次に、これらの試験片に、内部空間の表面に作用する最大主応力が約600MPaの引張応力になるように設定した以外には、実施例1と同じ条件の腐食疲労の予備試験を行った。予備試験の結果、予め設定した繰り返し荷重の回数のうちで、96000サイクル以上の繰り返し荷重を印加した後の複数の試験片において、その破断面に亀裂が確認された。そして、前記96000サイクルの繰り返し荷重を印加した試験片の亀裂の程度は、前記試験片Bのものと同程度の点状であり(破断面を図6に示す)、そのときの前記(Δε−Δε)による歪み指数は3μであった。以上より、本実施例では、亀裂発生が確認できた試験片における歪み指数(つまり、仮寿命歪み指数)のうちで、荷重の回数が最も少なかった試験片の前記3μの歪み指数を採用して、これを試験片の寿命歪み指数と予め認定した。実施例2の寿命歪み指数(3μ)が実施例1の寿命歪み指数(10μ)と異なる理由は、腐食媒体を導入するための内部空間を、実施例1ではドリル加工したままの貫通孔とし、実施例2ではドリル加工後の表面肌を研磨して形成したことに起因している。このため、予め認定した寿命歪み指数を有効に用いるためには、腐食媒体と接する面状態を同等としておくことが望ましい。
●腐食疲労寿命の評価
腐食疲労寿命を評価したい試験片として、前記予備試験で用いた試験片と形状および貫通孔は同じ状態とし、材質および硬さの異なる多種の試験片を準備した。そして、これら多種の試験片に、前記予備試験のときと異なる前記最大主応力(引張応力)の繰り返し荷重を印加して、腐食疲労試験を行った。腐食疲労試験中には、前記(Δε−Δε)による歪み指数を計測しながら繰り返し荷重を印加し、該歪み指数が3μに到達したときに試験を終了した。そして、前記試験が終了した試験片の破断面を確認した。試験片の種類、前記最大主応力の設定値および該歪み指数が3μに到達したときの繰り返し荷重の回数(サイクル数)を表1に示す。
それぞれの試験片の種類および繰り返し荷重の印加条件において、該歪み指数が3μに到達したときの繰り返し荷重の回数(厳密な腐食疲労寿命)は様々である。そして、印加した荷重が大きい条件で試験を行ったもの程、前記腐食疲労寿命時の繰り返し荷重の回数が小さくなっており、一般的な腐食疲労試験結果の正常な傾向が確認された。そして、各試験片の間において、前記腐食疲労寿命時の繰り返し荷重の回数が異なっていても、そのときの試験片の破断面に確認された亀裂の程度は、前記予備試験時の試験片の亀裂の程度(図6)と同等であった。以上より、予備試験と本試験との間で試験片の種類や印加する荷重値が異なっても、同値の「予め認定した寿命歪み指数」を共用して、様々な種類の鋼材の腐食疲労寿命を評価できることがわかった。
本発明は、プラスチック成形用金型に用いられている鋼材の他に、例えばダイカスト金型や構造物のボルト、機械部品等に用いられている鋼材の腐食疲労寿命の評価にも適用できる。
1 試験片
2 素材片
3 貫通孔
4 ジョイント
5 歪みゲージ

Claims (6)

  1. 鋼材の腐食媒体と接する所定部位に亀裂が発生したときの腐食疲労寿命を評価する方法であって、
    前記鋼材の所定部位に腐食媒体が接する状態で、当該鋼材の歪みを測定しながら引張応力がかかった状態を維持したまま繰り返し荷重を印加し、初期の荷重を印加したときの歪みの振幅ΔεとN回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重を印加したときの歪みの振幅Δεとの差からN回目歪み指数(Δε−Δε)を計測し、前記N回目歪み指数と予備試験により亀裂が確認されたときのN回目歪み指数を基にして決定した予め認定した寿命歪み指数とを比較して前記N回目歪み指数が前記予め認定した寿命歪み指数(安全率等の採用を含む)を超えたときが前記鋼材の腐食疲労寿命であると推定するか、または、そのときのN回目の荷重の印加回数が亀裂発生サイクル数であると推定することを特徴とする鋼材の腐食疲労寿命の評価方法。
  2. 前記鋼材の内部空間に前記腐食媒体が導入されており、前記鋼材は外部に歪み測定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法。
  3. 前記歪みを測定する手段が歪みゲージであることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法。
  4. 鋼材の所定部位に腐食媒体が接する状態で、当該鋼材の歪みを測定しながら引張応力がかかった状態を維持したまま繰り返し荷重を印加し、初期の荷重を印加したときの歪みの振幅ΔεとN回目(Nは前記初期の荷重の印加回数より大きい自然数)の荷重を印加したときの歪みの振幅Δεとの差からN回目歪み指数(Δε−Δε)を計測し、前記N回目の荷重を印加した後、前記鋼材の前記腐食媒体が接する部位における亀裂の有無を確認し、前記亀裂が確認されたときのN回目歪み指数を仮寿命歪み指数とし、
    複数の鋼材を用いて前記仮寿命歪み指数を計測し、
    前記複数の仮寿命歪み指数を基にして前記予め認定した寿命歪み指数を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法。
  5. 前記亀裂が確認できなかった場合、亀裂発生が確認できるまで荷重の回数を増やして前記亀裂の確認を繰り返すことを特徴とする請求項4に記載の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法。
  6. 前記亀裂の有無の確認は、破壊検査により確認することを特徴とする請求項4に記載の鋼材の腐食疲労寿命の評価方法。
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