JP6541669B2 - タンパク質繊維の鑑別方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質繊維の起源となる動物或いは植物の種類の鑑別、特に起源の異なるタンパク質繊維が混合された混合繊維の鑑別、及び、その混用率の鑑別を行うタンパク質繊維の鑑別方法に関するものである。
市場には多くのタンパク質繊維、例えば、獣毛繊維や絹を用いた繊維製品が高級品として流通している。特に、獣毛繊維の中でも高級品とされるカシミヤを用いた繊維製品には、他の獣毛繊維を混合しての偽装が多く行われている。従って、一般の消費者が繊維製品を購入する際に偽装を見分けることができず、公正取引上の大きな問題となっている。例えば、カシミヤ(ヤギ属)と見分けが付きにくいヤク(ウシ属)の毛を混合し、或いは、ウール(ヒツジ属)のスケールを除去(「脱スケール」という。)して混合するなど手の込んだ偽装が行われている。
そこで、繊維製品の輸出入の際には、各国の繊維関係の検査機関で鑑別して取引の安全を図っている。これらの検査機関では、例えば日本においては、JISL 1030‐1(繊維製品の混用率試験方法‐第1部:繊維鑑別)、及び、JISL 1030‐2(繊維製品の混用率試験方法‐第2部:繊維混用率)に基づいて鑑別を行っている。
この鑑別方法においてタンパク質繊維を鑑別するには、検査員が光学顕微鏡を用いて目視により検査対象のタンパク質繊維を標準写真見本と対比させて行っている。また、この鑑別方法においてタンパク質繊維の混用率、例えば、獣毛繊維の混用率を求めるには、検査員が光学顕微鏡を用いて目視により検査対象の獣毛繊維に含まれる異種の獣毛繊維の本数や直径を求め、或いは、分別してそれぞれの重量を測定するなどの方法で行っている。
従って、これらの方法においては、各検査機関の検査員の経験とノウハウの違いによる鑑別結果のばらつきが生じるという問題があった。また、混用率を求める場合には、検査員による非常に煩雑で長時間に亘る作業が伴うという問題があった。更に、高級な獣毛繊維において手の込んだ偽装が行われている場合には、上記方法のみでは正確な鑑別が行えないという問題があった。
これに対して、上記の光学顕微鏡を用いた目視による鑑別方法を補完する方法が提案されている。例えば、下記特許文献1においては、DNAによる獣毛繊維の同定方法が提案されている。この方法によれば、獣毛繊維試料から抽出したDNAと動物種に特異的なプライマーを用いてポリメラーゼチェインリアクション(PCR)によってDNAを増幅し、この増幅成分の塩基配列を分析して獣毛繊維試料の起源となる動物種を鑑別するというものである。
また、下記特許文献2においては、獣毛繊維製品中の獣毛繊維の混用率鑑定法が提案されている。この方法によれば、獣毛繊維試料から抽出したDNAと動物種に特異的なプライマーと当該プライマーによって増幅される配列を特異的に検出するプローブを用いてリアルタイムPCRを行って、各動物種由来のDNA量の相対値の比率を求め、予め用意された一連の標準混合繊維のDNA量の相対値の比率との対応表に基づいて獣毛繊維の混用率を鑑別するというものである。
特開2000−210084号公報 特開2004−121229号公報
上記特許文献1の同定方法、及び、上記特許文献2の混用率鑑定法は、いずれも獣毛繊維から抽出したDNAの遺伝子配列により、獣毛繊維の起源となる動物種或いはその混用率を鑑別するものである。これらの方法は、動物種ごとに遺伝子配列が異なることを利用するものであり、生物学的に客観的な結果を与えることが期待される。
しかし、鑑別の試料となる獣毛繊維からDNAを抽出し、これを増幅する操作は非常に煩雑であり、多くの繊維関係の検査機関で通常業務として行うことは容易ではない。また、市場に流通する繊維製品は、通常、種々の前処理や染色加工がなされている。これらの前処理や染色加工は、獣毛繊維に対して物理的或いは化学的な方法で行われ、獣毛繊維自体に何らかのダメージを与えている。従って、前処理や染色加工がなされた獣毛繊維から損傷のないDNAを抽出することは困難であり、正確な鑑別を行うことができないという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に対処して、鑑別操作が比較的簡単で客観性を有し、検査員の経験やノウハウに頼ることなく鑑別でき、且つ、タンパク質繊維に前処理や染色加工がなされている場合でも、正確な鑑別結果を得ることのできるタンパク質繊維の鑑別方法を提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、タンパク質繊維を構成するタンパク質に着目し、タンパク質繊維から抽出したタンパク質群の組み合わせが、タンパク質繊維の起源となる動物或いは植物の種類により異なることを発見した。また、同一又は類似のタンパク質であっても、それらの含有比率が起源となる動物或いは植物の種類により異なることを発見し本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係るタンパク質繊維の鑑別方法は、請求項1の記載によると、
タンパク質繊維の起源となる動物或いは植物の種類が既知であって種類が異なる少なくとも2種類の単一繊維と当該単一繊維を一連の混用率で混合した一連の混合繊維とを準備し、これらの単一繊維と一連の混合繊維とを構成する各タンパク質群をそれぞれ抽出する抽出手段と、
抽出した前記各タンパク質群に対して、それぞれSDS−PAGE法を使用する電気泳動手段による分離をして、前記単一繊維と一連の混合繊維との各電気泳動パターンを得る電気泳動手段と、
前記各電気泳動パターンを検出して、それぞれについて各バンドの濃度と移動度との関係を求める泳動パターン検出手段と、
前記各電気泳動パターンから得られた各バンドの濃度と移動度との関係を多変量解析して解析データ群を得る解析手段とを使用して、
得られた解析データ群を起源となる動物或いは植物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積するデータベース作成工程、並びに、
タンパク質繊維の起源となる動物或いは植物の種類が未知の被検繊維に対して、前記抽出手段、前記電気泳動手段及び泳動パターン検出手段と同様にして各バンドの濃度と移動度との関係を求め、
得られた各バンドの濃度と移動度との関係について、前記解析手段に対応して解析データを求め、
得られた前記被検繊維の解析データを前記データベースのデータ群と照合して、前記解析データと前記データベースのデータ群との一致性を指標として、前記被検繊維が少なくとも2種類の動物或いは植物を起源とすること、前記被検繊維の起源となる少なくとも2種類の動物或いは植物の種類、及び、前記被検繊維の混用率を鑑別する鑑別工程を有し、
前記電気泳動手段において、分離を行う前のタンパク質群に対して、蛍光標識剤として蛍光染料を使用した標識をしてから分離を行い、
前記泳動パターン検出手段において、電気泳動ゲルの固定及び染色を行うことなく電気泳動パターンの各バンドの濃度と移動度との関係を求めることを特徴とする。
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載のタンパク質繊維の鑑別方法であって、
前記抽出手段において、タンパク質の分子内或いは分子間のジスルフィド結合を開裂するために使用する還元剤は、容量%濃度で6%より濃い濃度の2−メルカプトエタノール、又は、モル濃度で8〜12mM(ミリモル/リッター)のジチオスレイトールであることを特徴とする。
また、本発明は、請求項の記載によると、請求項1又は2に記載のタンパク質繊維の鑑別方法であって、
前記電気泳動手段おいて、前記単一繊維の電気泳動パターンのうち、少なくともカシミヤを起源とする単一繊維の電気泳動パターンに対して、分子量が25kDa以下の領域における分解能が、10個以上のバンドに分解可能な電気泳動ゲルを使用することを特徴とする。
また、本発明は、請求項の記載によると、請求項1〜のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法であって、
前記解析手段において、多変量解析に使用する電気泳動パターンは、分子量が40kDa以下の領域、好ましくは28kDa以下の領域であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項の記載によると、請求項1〜のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法であって、
前記解析手段において、多変量解析は、主成分分析、又は、主成分回帰、PLS回帰などの重回帰分析であることを特徴とする。
また、本発明は、請求項の記載によると、請求項1〜のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法であって、
前記被検繊維は、カシミヤ、ウール、ヤク、モヘア、アンゴラ、アルパカ、ビキューナ、キャメル、及び、リャマからなる群のうち少なくとも1つの獣毛繊維を含有することを特徴とする。
また、本発明は、請求項の記載によると、請求項1〜のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法であって、
前記被検繊維は、絹、プロミックス、及び、クモ糸繊維からなる群のうち少なくとも1つのタンパク質繊維を含有することを特徴とする。
上記構成によれば、本発明は、データベース作成工程と鑑別工程とを有している。データベース作成工程においては、抽出手段、電気泳動手段、泳動パターン検出手段及び解析手段を使用して得られた解析データ群を起源となる動物或いは植物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積する。
このデータベース作成工程においては、まず、起源となる動物或いは植物の種類が既知であって種類が異なる少なくとも2種類の単一繊維と当該単一繊維を一連の混用率で混合した一連の混合繊維とを準備する。次に、抽出手段により、これらの単一繊維と一連の混合繊維とを構成する各タンパク質群をそれぞれ抽出する。次に、電気泳動手段により各タンパク質群を分離して、単一繊維と一連の混合繊維との各電気泳動パターンを得る。次に、泳動パターン検出手段により、各電気泳動パターンにおける各バンドの濃度と移動度との関係を求める。次に、解析手段により多変量解析して解析データ群を得る。
次に、鑑別工程においては、起源となる動物或いは植物の種類が未知の被検繊維に対して、上記抽出手段及び電気泳動手段と同様にして電気泳動パターンを求める。次に、この電気泳動パターンから上記泳動パターン検出手段と同様にして各バンドの濃度と移動度との関係を求める。次に、上記解析手段に対応して解析データを求める。このようにして、得られた被検繊維の解析データを上記データベースのデータ群と照合して、被検繊維の繊維鑑別を行う。
このように、上記構成によれば、タンパク質繊維を構成するタンパク質群の組合せが、動物或いは植物の種類により異なることを根拠とする。このことにより、被検繊維が少なくとも2種類の動物或いは植物を起源とする混合繊維であっても、起源となる少なくとも2種類の動物或いは植物の種類とその混用率を客観的に鑑別することができる。
これらの手段及びその操作は比較的簡単であり、また、機器分析であることから、検査員の経験とノウハウの違いによる鑑別結果のばらつきが生じるということがない。更に、解析手段による解析データ群をデータベース化することにより、より正確な鑑別を客観的に可能とする。
また、タンパク質繊維が獣毛繊維であって脱スケールなどの偽装が行われている場合であっても、本発明においては、タンパク質を対象とすることから、従来のDNAの抽出のように偽装によるダメージから抽出に困難性が伴うということがない。
また、上記構成によれば、抽出手段において、タンパク質の分子内或いは分子間のジスルフィド結合を開裂するために使用する還元剤として、容量%濃度で6%より濃い濃度の2−メルカプトエタノール、又は、モル濃度で8〜12mM(ミリモル/リッター)のジチオスレイトールを使用するようにしてもよい。このことにより、タンパク質群の抽出効率が向上し、被検繊維の混用率の正確な鑑別を比較的簡単、且つ、客観的に行うことができる。
また、上記構成によれば、電気泳動手段において、電気泳動パターンの分離にはSDS−PAGE法を使用する。このことにより、タンパク質群の分離が容易となり、被検繊維の混用率の正確な鑑別を比較的簡単、且つ、客観的に行うことができる。
また、上記構成によれば、電気泳動手段において、単一繊維の電気泳動パターンのうち、少なくともカシミヤを起源とする単一繊維の電気泳動パターンに対して、分子量が25kDa以下の領域における分解能が、10個以上のバンドに分解可能な電気泳動ゲルを使用するようにしてもよい。このことにより、タンパク質群の分離が容易となり、被検繊維の混用率の正確な鑑別を比較的簡単、且つ、客観的に行うことができる。
また、上記構成によれば、泳動パターン検出手段において、電気泳動パターンの各バンドの濃度と移動度との関係を求める際に、各バンドにおけるタンパク質の検出に蛍光染色法を使用する。このことにより、被検繊維の電気泳動パターンの検出感度が向上してより正確な鑑別をすることができる。
また、上記構成によれば、電気泳動手段において、分離を行う前のタンパク質群に対して蛍光標識剤による標識をしてから分離を行う。このことにより、泳動パターン検出手段において、電気泳動ゲルの固定及び染色を行うことなく電気泳動パターンの各バンドの濃度と移動度との関係を求めることができる。よって、本発明の効果をより一層発揮することができる。
また、上記構成によれば、解析手段において、多変量解析に使用する電気泳動パターンは、分子量が40kDa以下の領域、好ましくは28kDa以下の領域を使用するようにしてもよい。このことにより、被検繊維の混用率の正確な鑑別を比較的簡単、且つ、客観的に行うことができる。
また、上記構成によれば、解析手段において、多変量解析は、主成分分析、又は、主成分回帰、PLS回帰などの重回帰分析としてもよい。このことにより、被検繊維の混用率の正確な鑑別を比較的簡単、且つ、客観的に行うことができる。
よって、本発明においては、鑑別操作が比較的簡単で客観性を有し、検査員の経験やノウハウに頼ることなく鑑別でき、且つ、タンパク質繊維に前処理や染色加工がなされている場合でも、正確な鑑別結果を得ることのできるタンパク質繊維の鑑別方法を提供することができる。
本実施形態において、カシミヤ、ヤク、ウール、シルク及びプロミックスの各タンパク質繊維の電気泳動パターンを示すゲル画像である。 図1の電気泳動パターンのゲル画像を解析して移動度と濃度との関係を示す解析チャートである。 本実施形態において、カシミヤとヤクからなる一連の比較繊維の電気泳動パターンを染料染色法及び蛍光染色法で染色したゲル画像である。 図3のゲル画像において、ヤクに特異的に検出されるバンドの染色濃度と各試料の混用率との関係を示すグラフである。 実施例1においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から求めた主成分スコアの散布図である。 実施例1においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。 実施例2においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から求めた主成分スコアの散布図である。 実施例2においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。 実施例3においてカシミヤ・ヤクの2種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。 実施例3においてカシミヤ・ウールの2種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。 実施例3においてヤク・ウールの2種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。 実施例4においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から求めた主成分スコアの散布図である。
本発明において、タンパク質繊維とは、羊毛や絹などの動物性タンパク質からなる動物繊維だけでなく、植物性タンパク質からなる繊維、及び、これらのタンパク質を含有する全ての繊維をいう。ここで、動物繊維には、羊毛以外の獣毛繊維(後述する)や、絹以外に昆虫やクモなどが作る繊維も含まれる。特に、クモ糸繊維は、工業的な生産が検討されており、例えば、クモ糸遺伝子をカイコのゲノムDNAに組み込み、絹と同様にしてカイコにクモ糸のタンパク質を含有した糸を吐かせる研究がある(信州大学、中垣雅雄教授)。また、微生物培養で製造したクモ糸のタンパク質を紡糸してクモ糸を製造する企業が出現している(スパイバー株式会社)。
一方、タンパク質を含有する繊維としては、例えば、牛乳タンパク質を用いる半合成繊維のプロミックスや、大豆粕から抽出したタンパク質をポリビニルアルコールなどと混合して紡糸した繊維などが挙げられる。このように、本発明が対象とするタンパク質繊維は、現在流通している繊維に留まらず、今後、工業生産手段が確立して流通する繊維をも対象とする。これらのタンパク質繊維の中で、特に重要と考えられるのが獣毛繊維であり、以下、獣毛繊維を中心にして本発明を説明する。
本発明において、獣毛繊維とは、動物より得られる天然ケラチン質を主成分とする毛繊維の全てを含むものである。従って、羊の羊毛(本発明においては「ウール」という。)を含み、羊以外の動物の毛、例えば、カシミヤ山羊の毛「カシミヤ」、アンゴラ山羊の毛「モヘア」、アンゴラ兎の毛「アンゴラ」、牛の一種ヤクの毛「ヤク」、ラクダの毛「キャメル」、小型こぶなしラクダのアルパカの毛「アルパカ」、同じく小型こぶなしラクダのビクーニャの毛「ビキューナ」、同じく小型こぶなしラクダのリャマの毛「リャマ」などが挙げられる。
また、本発明においては、上記以外の獣毛繊維として、毛皮やファーとして使用されるものも含まれる。例えば、キツネの毛「フォックス」、イタチの一種ミンクの毛「ミンク」、ネズミの一種チンチラの毛「チンチラ」、ウサギの毛「ラビット」などが挙げられる。これらの例から分かるように、本発明においては、動物の名前と獣毛の名前に同じ呼び名を使用することがある。
本発明において、獣毛繊維を用いた繊維製品とは、例えば、獣毛繊維を紡績した糸を用いた織物や編物或いはフェルトなどの不織布を挙げることができる。しかし、これらに限らず、毛皮やファーなども含み、更に、毛繊維のまま詰め物などに使用される場合も含むものとする。また、これらの繊維製品には、前処理や染色加工或いは各種仕上加工が施されたものも含む。特に、本発明においては、カシミヤなどの高級な獣毛繊維に他の安価な獣毛繊維を混合した繊維製品、及び、各種加工で偽装した獣毛繊維を混合した繊維製品を鑑別する場合も対象とするものである。
また、本発明において、動物の種類とは、生物学上の分類単位としての「種」のみを意味するものではなく、「属」或いは「科」まで遡った広い意味でも使用するものとする。従って、本発明に係る獣毛繊維の鑑別方法で鑑別する動物の種類とは、当該獣毛繊維の起源となる動物の「種」を鑑別することに限らず、起源となる動物の「属」を鑑別すること、或いは、起源となる動物の「科」を鑑別することを意味する場合もある。
以下、本発明に係るタンパク質繊維の鑑別方法について、実施形態により詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。
本発明に係るタンパク質繊維の鑑別方法は、以下のことを根拠とする。つまり、動物或いは植物の種類ごとに遺伝子の配列は異なり、タンパク質は遺伝子にコードされている。従って、動物或いは植物の種類ごとにタンパク質のアミノ酸配列は異なるため、タンパク質繊維から抽出されたタンパク質群の電気泳動パターンは動物或いは植物の種類固有のものとなる。更に、2種類以上のタンパク質繊維が混合された混合タンパク質繊維においても、混合されたタンパク質繊維の割合により抽出されたタンパク質群の電気泳動パターンから混用率を判断することができる。これらのことを根拠として、鑑別しようとするタンパク質繊維の電気泳動パターンをデータベースに蓄積した一連のタンパク質繊維(起源となる動物或いは植物の種類及び混用率が既知のタンパク質繊維)のデータ群と照合することにより、被検繊維に混合された起源となる動物或いは植物の種類とその混用率を鑑別することができる。
本発明においては、起源となる動物或いは植物の種類が既知であって種類が異なる少なくとも2種類の単一繊維及び当該単一繊維を一連の混用率で混合した一連の混合タンパク質繊維(以下、これらをまとめて「一連の比較繊維」という。)の電気泳動パターンを多変量解析し、得られた解析データ群を起源となる動物或いは植物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積する。この工程を「データベース作成工程」という。
次に、データベース作成工程と同様にして起源となる動物或いは植物の種類が未知の被検繊維の電気泳動パターンから得られた解析データを上記データベースの解析データ群と照合する。この照合において、被検繊維の解析データとデータベースに蓄積した一連の比較繊維のデータ群との一致性を指標として、被検繊維に含まれる動物起源の繊維或いは植物起源の繊維の種類及び混用率を鑑別する。この工程を「鑑別工程」という。以下、本実施形態の各工程及び各手段について説明する。
(1)データベース作成工程
本データベース作成工程においては、まず、起源となる動物或いは植物の種類が既知であって種類が異なる少なくとも2種類の単一繊維を準備する。これらの単一繊維は、出所及び履歴が明確なものであることが好ましく、且つ、染色加工や仕上加工などがなされていないものを使用することが望ましい。
次に、これらの単一繊維を一連の混用率で混合した一連の混合タンパク質繊維(以下「混合繊維」という。)を準備する。獣毛繊維を例にすると、例えば、カシミヤとヤクなど2種類の単一繊維からなる2種混合の混合繊維を鑑別するためのデータベースを作成する際には、カシミヤ100%の単一繊維とヤク100%の単一繊維とを準備し、これらを例えば、100:0、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60・・・・・0:100など任意の割合で混合して一連の比較繊維(2種混合)を作製し、これらの電気泳動パターンを多変量解析してデータベース群を作成する。
また、例えば、カシミヤとヤクとウールなど3種類の単一繊維からなる、それぞれ2種混合の混合繊維を鑑別するためのデータベースを作成する際には、上記と同様にして、カシミヤとヤクとを任意の割合で混合した一連の比較繊維(2種混合)、カシミヤとウールとを任意の割合で混合した一連の比較繊維(2種混合)、及び、ヤクとウールとを任意の割合で混合した一連の比較繊維(2種混合)を作製し、これら全ての電気泳動パターンを多変量解析してデータベース群を作成する。
一方、カシミヤとヤクとウールなど3種類の単一繊維からなる、3種混合の混合繊維を鑑別するためのデータベースを作成する際には、これら3種類の単一繊維を任意の割合で混合した一連の比較繊維(3種混合)を作製し、これらの電気泳動パターンを多変量解析してデータベース群を作成する。また、同様にして4種類以上の比較繊維からデータベース群を作成するようにしてもよい。
(1−1)抽出手段
次に、このようにして作製した一連の比較繊維から抽出手段により、一連の比較繊維に対応する各タンパク質群を抽出する。この抽出手段は、データベース作成工程における一連の比較繊維、及び、鑑別工程(後述する)における被検繊維に対して、同様の操作を行うものである。従って、ここではデータベース作成工程及び鑑別工程の両工程を考慮して説明する。
ここで、カシミヤ、ヤク、ウールなどの獣毛繊維の主要構成タンパク質は、ケラチン及びケラチン関連タンパク質であり、これらのタンパク質には、構造の良く似た多種類の分子種が存在する。これらのタンパク質群は、動物の種類によりその組み合わせが異なっている。本発明においては、一連の比較繊維のタンパク質群の構成と、被検繊維のタンパク質群の構成とを比較する。即ち複数のタンパク質の組合せ及び混合されたタンパク質の比率を解析することにより、被検繊維に混合される起源となる動物或いは植物の種類とその混用率を鑑別するものである。
本発明においては、データベース作成工程における一連の比較繊維、及び、鑑別工程における被検繊維からこれらを構成するタンパク質群を抽出する。このように、タンパク質繊維を構成する各タンパク質群に着目することにより、続く鑑別工程において被検繊維の表面に偽装加工(獣毛繊維の脱スケールなど)がなされていても、繊維そのものが残っている限りタンパク質を抽出することができる。この点において、DNAによる鑑別法で偽装加工がなされた獣毛繊維からDNAを抽出することが非常に困難であることと対照的である。
本発明者らは、獣毛繊維を例として、原毛そのもの、粉砕した原毛、漂白した獣毛、及び、脱スケールした獣毛について、それぞれ同様にしてタンパク質群を抽出して電気泳動パターンを検討した。その結果、これらの電気泳動パターンには大きな変化がないことを確認した。従って、本発明においては、一連の比較繊維及び被検繊維を粉砕してからタンパク質を抽出するようにしてもよく、或いは、粉砕することなく繊維の形状を維持したままタンパク質を抽出するようにしてもよい。但し、脱スケールした獣毛繊維については、脱スケールの程度が不明なため、獣毛繊維をある程度粉砕してから獣毛繊維の内部のタンパク質を抽出するようにすることが好ましい。
具体的なタンパク質の抽出操作は、以下のようにして行う。まず、一連の比較繊維には染色加工などがなされていないものを使用することが望ましい。一方、被検繊維に染色加工などがなされている場合には、電気泳動パターンが乱れることがある。これらの乱れを避けるために、染料、仕上剤及び補助剤などの除去操作(以下「洗浄操作」という。)をタンパク質抽出前に行うことが好ましい。このことにより、続く電気泳動手段において染料等の影響を受けることがなく、電気泳動パターンの精度が向上し正確な鑑別を行うことができる。
この洗浄操作は、特に限定するものではないが、例えば、タンパク質を抽出することのないように、デオキシコール酸とラウロイルサルコシ酸とを含有する洗浄液などを用いて、70℃〜100℃、好ましくは90℃〜95℃程度の温度で数回洗浄を行うなどの方法を採用してもよい。また、染色された被検繊維に対しては、染料種別に合わせた脱色処理を行うようにしてもよい。例えば、酸化処理、還元処理、酸処理、アルカリ処理或いはキレート処理などが挙げられる。これらの場合、タンパク質が破壊されない条件で行うことが好ましい。
一方、洗浄操作で敢えてタンパク質を抽出するようにしてもよい。例えば、タンパク質抽出操作(後述する)と同様の処方及び操作を1回又は数回繰り返して洗浄操作としてもよい。その理由は、以下のように考えられる。最初の洗浄操作(抽出操作)で抽出されるタンパク質には、染料や仕上剤などが多く混入している。これらの染料や仕上剤が混入したタンパク質を鑑別した場合には、高い鑑別精度を得ることができない。しかし、タンパク質繊維にはタンパク質が豊富に存在するので、初期の抽出操作で得られた抽出液を使用しなくても、その後に得られた抽出液を使用することで精度の高い鑑別を行うことができる。
次に、タンパク質の抽出操作を行う。タンパク質の抽出液としては、一般に各種界面活性剤を含有する水溶液などを使用することができる。使用する界面活性剤は、タンパク質にダメージを与えずに可溶化するものであれば特に限定するものではないが、獣毛繊維の場合には、例えば、ケラチンタンパク質の溶解性を高める界面活性剤として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用することが好ましい。
また、タンパク質の抽出に際しては、タンパク質内のジスルフィド結合(S−S結合)を還元して開裂し、システイン残基とすることで可溶化が容易となる。そのため、抽出液には還元剤を併用することが好ましい。これらの還元剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール(以下「2−ME」という。)、ジチオスレイトール(以下「DTT」という。)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(以下「TCEP」という。)などが挙げられる。
なお、本実施形態においては、これらの還元剤の中でも、2−ME、或いは、DTTを使用することが好ましい。ここで、2−MEを使用する際の抽出液中の還元剤濃度は、容量%濃度において6%より濃い濃度で使用することが好ましく、更に、10%より濃い濃度で使用することがより好ましい。
一方、DTTを使用する際の抽出液中の還元剤濃度は、モル濃度において8〜12mM(ミリモル/リッター)で使用することが好ましく、更に、略10mM(ミリモル/リッター)で使用することがより好ましい。これらの還元剤をこのような濃度で使用することにより、抽出手段におけるタンパク質の抽出効率が向上し、続く電気泳動手段で得られる電気泳動パターンが明瞭となって、より正確なデータベースの作成及びより正確な鑑別をすることができる。特に、本発明の目的である混合繊維の混用率を正確に鑑別するためには、このような抽出効率の高い還元剤を適正濃度で使用することが好ましい。
この抽出操作においては、界面活性剤と還元剤を併用した抽出液に一連の比較繊維及び被検繊維を浸漬し、70℃〜100℃、好ましくは90℃〜95℃程度の温度で抽出して抽出液を回収する操作を数回繰り返す。これらの抽出液を回収後、所定濃度に濃縮して続く電気泳動手段において使用する。
ここで、抽出したタンパク質のシステイン残基が再度ジスルフィド結合を形成することのないよう、システイン残基を封鎖しておくことが好ましい。システイン残基の封鎖には、一般的な方法を使用すればよく、例えば、ヨードアセトアミド(以下「IAA」という。)、ヨード酢酸、アクリルアミドなどを使用してアルキル化するなどの方法が挙げられる。なお、このようにして得られたタンパク質の総量は、定量しておくことが好ましい。
(1−2)電気泳動手段
次に、一連の比較繊維に対応する各タンパク質群を電気泳動手段により分離をして、一連の比較繊維に対応する各電気泳動パターンを求める。この電気泳動手段は、データベース作成工程における一連の比較繊維、及び、鑑別工程における被検繊維に対して、同様の操作を行うものである。従って、ここではデータベース作成工程及び鑑別工程の両工程を考慮して説明する。
電気泳動手段においては、抽出手段で得られたタンパク質群に対して、電気泳動法を用いて構成タンパク質を分離する。使用する電気泳動法は、特に限定するものではなく、どのような方法であってもよい。本発明においては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(以下「SDS」という。)を用いたポリアクリルアミドゲル電気泳動法(以下「SDS−PAGE法」という。)を用いることが好ましい。なお、タンパク質群の分離精度を更に向上させるために、2次元電気泳動法を採用するようにしてもよい。この2次元電気泳動法としては、例えば、タンパク質群を等電点電気泳動法で1次元分離し、別方向にSDS−PAGE法で2次元分離するなどの方法がある。
一般に、SDS−PAGE法に使用するポリアクリルアミドゲルは、アクリルアミドとその架橋剤であるN,N'−メチレンビスアクリルアミドとの共重合により3次元構造を有している。このアクリルアミドとN,N'−メチレンビスアクリルアミドとの総和をゲル濃度といい、一般に10%〜20%程度のゲルを使用することができる。本発明において使用するポリアクリルアミドゲルは、特にケラチンタンパク質等をより高分解能で分離するために、15%〜20%程度のゲルを使用することが好ましい。
なお、本実施形態に係るSDS−PAGE法において、従来よりも分解能の高いポリアクリルアミドゲルを使用することにより、より正確な鑑別をすることができる。本発明者らは、獣毛繊維の鑑別において、分子量が25kDa以下の領域における分解能が良好なゲルを使用することにより、高い鑑別結果を得ることができることを確認した。例えば、少なくともカシミヤを起源とする単一繊維の電気泳動パターンに対して、分子量が25kDa以下の領域における分解能が10個以上のバンドに分解可能な電気泳動ゲルを選定することが好ましい。
ポリアクリルアミドゲルの分解能を向上させる方法は、特に限定するものではないが、例えば、ゲル長(支持体距離に対応)を長くして分解能を向上させるようにしてもよい。一般にSDS−PAGE法に使用するポリアクリルアミドゲルは、ゲル長が8cm程度のものを使用する。例えば、このゲル長が8cmのゲルから12cmのゲルに変更することにより、ケラチンタンパク質等をより高分解能で分離することができる。
なお、獣毛繊維の場合には、動物種によって同じゲル長が12cmのゲルを使用しても、25kDa以下の領域のバンドの数は異なるものである。しかし、産業目的での鑑別を特に必要とするカシミヤにおいて、10個以上のバンドに分解される分解能の高いゲルを各獣毛繊維に適用すれば、カシミヤと他の獣毛との識別が容易なものとなる。特に、本発明の目的である混合繊維の混用率を正確に鑑別するためには、このような分解能の高いゲルを選定することが好ましい。
なお、SDS−PAGE法の操作は、特に限定するものではなく一般的な方法を使用すればよい。例えば、泳動用緩衝液や通電条件においても電気泳動パターンの分解能と鮮明性を考慮して条件設定することが好ましい。例えば、定電圧法で分離するようにしてもよく、或いは、定電流法で分離するようにしてもよい。これらの分離法は、対象とする混合繊維の種類と混用率、或いは、操作に要する時間等により適宜選定するようにすればよい。また、電気泳動パターンを得る際には、内部標準を併用することが好ましい。内部標準としては、例えば、牛の血清アルブミンなどを使用して、電気泳動パターンの移動度補正に使用する。
(1−3)泳動パターン検出手段
次に、得られた一連の比較繊維に対応する各電気泳動パターンから分離された各バンドの濃度を泳動パターン検出手段により検出する。この泳動パターン検出手段は、データベース作成工程における一連の比較繊維、及び、鑑別工程における被検繊維に対して、同様の操作を行うものである。従って、ここではデータベース作成工程及び鑑別工程の両工程を考慮して説明する。
泳動パターン検出手段においては、電気泳動後のゲルに対して染色液を用いて分離された各タンパク質を染色する。染色されたゲルには、分離された各タンパク質がバンドとして現れ、各バンドに対するタンパク質の濃度の差が染色濃度の差として表される。
このタンパク質の染色には、一般に染料染色法、銀染色法、或いは蛍光染色法などが使用される。ここで、銀染色法は感度が高いが操作が煩雑であるという欠点を有している。そこで、本実施形態においては、染料染色法、或いは蛍光染色法を使用することが好ましい。
染料染色法は、感度は高くないが操作が簡単であるという利点を有しており、例えば、クマシーブリリアントブルー−R(以下「CBB−R」という。)などの染料を使用することが好ましい。これに対して、蛍光染色法は、感度が高く操作も簡単であり、本発明の目的である混合繊維の混用率を正確に鑑別するためには、感度が高い蛍光染色法を使用することがより好ましい。
本実施形態において、蛍光染色法に使用する蛍光物質は特に限定するものではなく、タンパク質と結合することにより蛍光を発する物質、或いは、色素自体が蛍光を発光する蛍光色素などを使用することができる。例えば、本実施形態に使用する蛍光色素としては、Flamingo蛍光ゲルステイン(BIO−RAD社、以下「Flamingo」という。)、及び、SYPRO(登録商標)ルビー(BIO−RAD社)などが挙げられる。これらの蛍光色素は、高感度でダイナミックレンジが広く、且つ、長時間安定した発色を示すので取り扱いが容易である。また、バックグラウンドが低いため、染色後のゲル洗浄操作も不要、或いは短時間で済むという利点を有しており、染料染色法よりも操作が容易である。このことにより、蛍光染色法は、染料染色法に比べて鑑別精度が向上することに加え、鑑別に要する時間が大幅に短縮されて作業効率が向上するという利点を有している。
このようにして、染料染色法或いは蛍光染色法で染色したゲルは、分子量によって移動度(移動距離に対応)の異なる複数のバンドから構成される電気泳動パターンを表している。この電気泳動パターンを解析するために撮影したものを「ゲル画像」という。
一例として、起源が既知の5種類のタンパク質繊維の電気泳動パターンを図1に示す。図1は、X:カシミヤ100%、Y:ヤク100%、Z:ウール100%、V:絹100%、及び、W:プロミックスの各電気泳動パターン(ゲル画像)を示している。なお、図1においては、半合成繊維のプロミックスとして東洋紡株式会社のシノン(登録商標)を使用した。図1において、染色された濃度の濃い部分がタンパク質を含むバンドである。図1において、上方のバンドほど移動度が小さく分子量が大きい。一方、下方のバンドほど移動度が大きく分子量が小さい。
なお、ここで上記の蛍光染色法、或いは染料染色法以外の方法について説明する。これまで説明していないが、蛍光染色法、或いは染料染色法などの染色法においては、電気泳動手段で得られたタンパク質分離後のゲルを数時間かけて固定しなければならない(後述の実施例参照)。この固定により、続く染色の際のタンパク質の脱落を防止することができる。更に、固定後のゲルを数時間かけて染色する(後述の実施例参照)。従って、染色法においては、ゲル画像を得るために所定の時間を必要とする。
そこで、染色法よりも短時間でゲル画像を得る方法として、蛍光標識剤による標識法を採用することもできる。標識法においては、電気泳動手段による分離を行う前のタンパク質群に対して蛍光標識剤による標識を行う。具体的には、抽出手段で抽出したタンパク質溶液を緩衝液で希釈して蛍光標識剤と混合する。この溶液を数分間加熱することにより、タンパク質のアミノ基が蛍光標識剤で識別される。この識別後のタンパク質溶液を電気泳動手段により分離する。なお、蛍光標識剤での識別は、タンパク質群の分離に影響を与えることが殆どない。
この標識法においては、タンパク質分離後のゲルを固定する必要がなく、また、染色する必要もない。従って、泳動パターン検出手段における操作と時間が短縮され、スピーディー且つ正確な鑑別が可能となる。なお、標識法に使用する蛍光標識剤は、特に限定するものではなく市販のものを使用すればよい。例えば、EzLabel FluoroNeo(TTD社)、IC3(株式会社同仁化学研究所)などを挙げることができる。
次に、染料染色法、蛍光染色法、或いは標識法で得られたゲル画像から各バンドの濃度と移動度との関係を求める方法について説明する。まず、一連の比較繊維又は被検繊維のゲル画像をスキャナー等の測定器で取り込み、各バンドの位置(分子量に対応)を移動度Rfとして数値化し、各バンドの濃度(タンパク質量に対応)を定量する。なお、染料染色法で染色したゲル画像は、使用した染料に適した波長で検出することが好ましい。また、蛍光染料で染色したゲル画像、或いは蛍光標識剤で標識したゲル画像は、使用した色素に固有の励起波長の光を照射し、発光する蛍光をその蛍光波長で検出することが好ましい。ここで、ゲル画像の取り込みに使用する機器は、使用する染料、蛍光色素、又は蛍光標識剤により適宜選定すればよい。
このとき、複数の試料間のバンドの移動度Rfは、補正しておくことが好ましい。移動度Rfの補正方法は、特に限定するものではないが、本実施形態においては、次のようにして行った。まず、各試料に対して、鑑別に使用するバンドの範囲内において、使用した内部標準の分子量、及び、その他の主だった複数の分子量を示すバンドについて移動度Rfを抽出し、標準試料の移動度Rfと比較して近似曲線(多項2次式)を作成する。この近似曲線で得られた係数を用いて、各試料における移動度Rfを補正する(具体的には後述の実施例を参照)。
図1に示す各電気泳動パターン(ゲル画像)をスキャナーで取り込み、各バンドの位置と濃度を定量し、移動度Rfと濃度(ピーク)との関係として示した解析チャートを図2に示す。図2において、横軸は移動度Rf(分子量に対応)であり、右側ほど移動度Rfが大きく分子量が小さい。縦軸は、各バンドの濃度(タンパク質量に対応)であり、ピークが高く面積が大きいほどタンパク質量が多い。
図2において、5種類のタンパク質繊維は異なる解析チャートを示している。特に、移動度Rfの値が0.4及び0.48において、絹及びプロミックスには、獣毛繊維(カシミヤ、ヤク、ウール)に見られないタンパク質が検出されている。これらのことから、本実施形態においては、獣毛繊維間の鑑別だけでなく、他のタンパク繊維との鑑別も可能であることが分かる。
ここで、本実施形態における染料染色法(A)と蛍光染色法(B)との感度の差について、具体的な実験データにより説明する。なお、本実験データは、獣毛繊維に関するものである。まず、カシミヤ100%の単一繊維とヤク100%の単一繊維とを準備した。これらの単一繊維から、カシミヤ:ヤクの重量比率で、100:0(1)、90:10(2)、80:20(3)、70:30(4)、60:40(5)、50:50(6)、40:60(7)、0:100(8)の8種類からなる一連の比較繊維(2種混合)を作製した。
次に、抽出手段(具体的な操作は後述の実施例を参照)により、一連の比較繊維から、それぞれタンパク質群を抽出した。次に、電気泳動手段(具体的な操作は後述の実施例を参照)により、各タンパク質群に対してSDS−PAGE法による分離操作を行い同一の電気泳動ゲルを2つ作製した。次に、泳動パターン検出手段(具体的な操作は後述の実施例を参照)により、2つの電気泳動ゲルの一方を染料染色法(A)で染色し、他方を蛍光染色法(B)で染色した。染料染色法(A)においては、染料としてCBB−Rを使用した。一方、蛍光染色法(B)においては、蛍光色素としてFlamingoを使用した。
このようにして得られた2つの染色された電気泳動ゲルを撮影して各ゲル画像を得た。図3は、カシミヤとヤクからなる一連の比較繊維の電気泳動パターンを染料染色法(A)及び蛍光染色法(B)で染色したゲル画像である。図3において、上方のバンドほど移動度が小さく分子量が大きい。一方、下方のバンドほど移動度が大きく分子量が小さい。また、図3において、黒丸(染料染色法)又は白丸(蛍光染色法)で示した分子量約10kDaの部分は、ヤクに特異的に検出されるバンドである。
次に、このようにして得られた2つのゲル画像に示された電気泳動パターン(A−1〜8及びB−1〜8)において、上述のヤクに特異的に検出されるバンド(黒丸又は白丸で示した部分)の濃度を検出した(具体的な操作は後述の実施例を参照)。図4は、ヤクに特異的に検出されるバンドの濃度と各試料の混用率との関係を示すグラフである。図4から分かるように、染料染色法(A)及び蛍光染色法(B)のいずれにおいても、カシミヤの混用率とバンドの濃度が良好に比例している。
また、カシミヤの混用率が0%(ヤク100%)と100%(カシミヤ100%)とのバンドの濃度の差を測定すると、染料染色法(A)においては0.56であり、蛍光染色法(B)においては1.73であった(図4参照)。このことから、蛍光染色法(B)のバンドの濃度のダイナミックレンジは、染料染色法(A)の約3倍であることが分かる。このように、蛍光染色法(B)による鑑別精度は非常に優れており、混合繊維の混用率を正確に鑑別することができる。
(1−4)解析手段
次に、泳動パターン検出手段で得られた一連の比較繊維に対する各バンドの濃度と移動度との関係を多変量解析して解析データ群を得る。ここでは、データベース作成工程における解析データ群の求め方を説明し、鑑別工程における解析データの求め方については後述する。
なお、本実施形態に係る多変量解析においては、ゲル画像から取り込んだ全てのバンドのデータを使用するようにしてもよく、或いは、所定の移動度Rfのバンドを抽出して使用するようにしてもよい。獣毛繊維の場合であって、蛍光染色法でタンパク質を検出する場合には、分子量が40kDa以下の領域を使用することが好ましく、また、28kDa以下の領域を使用することがより好ましい。蛍光染色法は検出感度が高く、一方、40kDaより大きいタンパク質は量が多いため、検出値が飽和して定量性が失われることがある。そこで、40kDa以下の領域、好ましくは28kDa以下の領域の少量のタンパク質を正確に検出することにより混用率の正確な解析をすることができる。
ここで、多変量解析に使用する解析法は、特に限定するものではなく、どのような方法を採用するようにしてもよい。一般に、多変量解析法としては、主成分分析、重回帰分析、独立成分分析、因子分析、判別分析、数量化理論、クラスター分析、多次元尺度構成法などの方法がある。本発明においては、これらの中で、主成分分析(PCA)、又は、主成分回帰(PCR)、PLS回帰などの重回帰分析を使用することが好ましい。また、各分析に使用するソフトは、特に限定するものではない。
なお、本実施形態においては、主成分分析(PCA)を使用した。具体的には、一連の比較繊維に対する各バンドの濃度と移動度との関係を変数として主成分分析を行い、各主成分スコアを求める。主成分分析に使用する解析ソフトについては、特に限定するものではない。本実施形態においては、SIMCAver.13.0(Umetrics社)を使用して解析した。また、鑑別すべきタンパク質繊維の種類、及び、混合繊維の混用率を予め層別したうえで、主成分分析で層別解析を行うようにしてもよい。実際の主成分分析の結果は、実施例において後述する。
一連の比較繊維に対する各バンドの濃度と移動度との関係を主成分分析したときの主成分スコアから、主成分散布図をプロットすることができる。例えば、第1主成分(PC1)を横軸とし第2主成分(PC2)を縦軸としてプロットした主成分散布図から、2種類のタンパク質繊維とこれらの混合繊維をその混用率で明確に層別することができる。本データベース作成工程においては、このようにして得られた解析データ群(主成分スコア等)を一連の比較繊維の起源となる動物或いは植物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積する。
(2)鑑別工程
本鑑別工程においては、まず、鑑別しようとする被検繊維からタンパク質群を抽出手段により抽出する。この抽出手段においては、上述のデータベース作成工程における一連の比較繊維に対する方法と同様の操作を行う。次に、被検繊維から抽出したタンパク質群を電気泳動手段により分離する。この電気泳動手段においては、上述のデータベース作成工程における一連の比較繊維に対する方法と同様の操作を行う。次に、得られた電気泳動ゲルから泳動パターン検出手段によりゲル画像及び各バンドの濃度と移動度との関係を得る。この泳動パターン検出手段においては、上述のデータベース作成工程における一連の比較繊維に対する方法と同様の操作を行う。
次に、このようにして得られた被検繊維の各バンドの濃度と移動度との関係から、上述の解析手段(主成分分析)に対応した方法で被検繊維の解析データを求める。具体的には、被検繊維の各バンドの濃度と移動度との関係を変数として、これに上述の主成分分析で求めた固有ベクトルを乗じて被検繊維に対する主成分スコアを求める。
このようにして得られた被検繊維の解析データ(主成分スコア)をデータベースのデータ群(主成分スコア)と照合して、これらの主成分スコアの一致性を指標として被検繊維を鑑別することができる。すなわち、被検繊維が少なくとも2種類の動物或いは植物を起源とすることを鑑別することができる。また、被検繊維の起源となる少なくとも2種類の動物の種類を鑑別することができる。更に、被検繊維の混用率を鑑別することができる。
以下、上記実施形態を各実施例により具体的に説明する。これらの実施例は、いずれも獣毛繊維に関するものである。実施例1及び実施例2は、カシミヤ、ヤク、及びウールの3種類の単一繊維と、これらの単一繊維の各2種類を一連の混用率で混合した2種混合の混合繊維とを一連の比較繊維として主成分分析を行ってデータベースを作成するものである。一方、実施例3は、上記実施例実施例1及び実施例2と異なり、主成分分析にカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群を使用するものではなく、個別に2種混合の混合繊維ごとに主成分分析を行ってデータベースを作成するものである。これらに対して、実施例4は、カシミヤ、ヤク、及びウールの3種類の単一繊維と、これらの単一繊維の2種類及び3種類を一連の混用率で混合した2種又は3種混合の混合繊維とを一連の比較繊維として主成分分析を行ってデータベースを作成するものである。
実施例1は、カシミヤ、ヤク、及びウールの各組合せによる2種混合の一連の比較繊維からデータベースを作成し、被検繊維を鑑別するものである。表1に本実施例1で使用する一連の比較繊維の混用率を示す。なお、本実施例1においては、泳動パターン検出手段として染料染色法を採用する。染料は、CBB−Rを使用した。
(1)データベース作成工程
(1−1)抽出手段
表1に示す一連の比較繊維に対して、洗浄操作及びタンパク質の抽出操作を行った。洗浄操作と抽出操作は、同様の処方及び操作により行った。抽出液(洗浄液)には、1.9%‐SDS、10mM‐DTT、及び、4.8mM‐トリス塩酸緩衝液(pH6.8)を含有する水溶液を使用した。まず、試料25mgに対して500μLの抽出液(洗浄液)を添加し、95℃で5分間、加熱した。その後、15000×gで10分間、25℃で遠心分離した。洗浄操作の場合には、上清は、洗浄廃液として廃棄した。洗浄操作は計2回繰り返した。一方、洗浄後の試料に対する抽出操作の上清は、タンパク質抽出液として回収した。抽出操作は計3回繰り返した。
次に、電気泳動前のタンパク質を濃縮するためにアセトン沈殿を行った。アセトン沈殿は、まず、試料量に対して3倍量の冷アセトンを添加し攪拌した。試料を−80℃で2時間静置した後、15000×gで10分間、4℃で遠心分離を行った。上清を除去した後、試料を遠心濃縮機CC−105(株式会社トミー精工)で乾燥させた。
次に、1.9%‐SDS、4.8mM‐トリス塩酸緩衝液(pH6.8)を含有する処理液100μLに、乾燥したタンパク質を懸濁した。その後、システイン側鎖をアルキル化するために、懸濁液に500mM‐IAA溶液20μLを添加し、30分間、室温、暗所でインキュベートした。抽出されたタンパク質の量は660nmProtein Assay Kit (サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いて定量した。なお、定量用標準試料(内部標準)としてウシの血清アルブミン(BSA、和光純薬工業株式会社)を使用した。
(1−2)電気泳動手段
次に、一連の比較繊維から抽出した各タンパク質群に対して、それぞれ、次のようにして電気泳動を行った。電気泳動には、10μgのタンパク質を使用した。電気泳動前に、試料は等量の電気泳動用試料調製液(8%‐SDS、24%‐2−ME、200mM‐トリス塩酸緩衝液(pH6.8)、20%‐グリセロール、0.01%‐ブロモフェノールブルー)、及び、1ngのウシの血清アルブミン(BSA、内部標準)と混和した後、95℃で5分間加熱した。電気泳動槽はBE−130(株式会社バイオクラフト)を使用し、20%SDS−ポリアクリルアミドゲルLPG−0X6(テフコ株式会社:12cm長ゲル)を用いてタンパク質を分離した。
分離用ゲル1枚あたり35〜40mAの定電流で電気泳動を行った。分子量マーカとして、5μLのBlueStarPrestained Protein Marker(日本ジェネティクス株式会社)を電気泳動に使用した。
(1−3)泳動パターン検出手段
次に、電気泳動後のゲルは7.5%‐酢酸溶液で15分間振とうした後、染色液(0.25%‐CBB−R、50%‐メタノール、10%‐酢酸)で20分間振とうした。脱色操作には、5%‐メタノール、7%‐酢酸溶液を用いた。
次に、染色後の電気泳動パターンからゲル画像を撮影した。撮影したゲル画像は、BasicQuantifier(Bio ImageSystems Inc)で読み込み、各バンドの濃度(Intensity)及びバンドの移動度Rfを数値化した。各試料間における移動度Rfの誤差を補正するために、BasicQuantifierで取り込んだ数値をExcel 2010(Microsoft)で読み込んだ。
その後、試料ごとに約70kDa(BSA:内部標準)、60kDa、50kDa、20kDa、15kDa、10kDaのバンドの移動度Rfを抽出し、標準試料(カシミヤ−A3、CCMI)の移動度Rfと比較し、近似曲線(2次式)を作成した。近似曲線で得られた係数を用いて、各試料における移動度Rfを補正した。バンドのIntensityは、各移動度RfにおけるIntensityを総バンドのIntensityで補正した。
(1−4)解析手段
次に、一連の比較繊維から得られた各バンドの濃度と移動度Rfとを変数として、SIMCAver.13.0(Umetrics社)を用いて主成分分析により主成分スコアを求めた。このようにして得られた解析データ群(主成分スコア等)を一連の比較繊維の起源となる動物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積した。
また、図5は、本実施例1においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から求めた主成分スコアの散布図である。図5の主成分スコアの散布図においては、第1主成分(PC1)を横軸、第2主成分(PC2)を縦軸にして示している。図5において、各単一繊維が3つの頂点として均一に分布していることが分かる。また、各頂点の間には、これらの頂点にある単一繊維からなる混合繊維が、その混用率に比例して1軸上に分布していることが分かる。
(2)鑑別工程
本鑑別工程においては、まず、データベース作成工程と同様にして、鑑別しようとする被検繊維T1からタンパク質群を抽出し、電気泳動手段及び泳動パターン検出手段によりゲル画像及び各バンドの濃度と移動度Rfとの関係を得た。次に、得られた被検繊維T1の各バンドの濃度と移動度Rfとの関係を変数として、これに上述の主成分分析で求めた固有ベクトルを乗じて被検繊維T1に対する主成分スコアを得た。
このようにして得られた被検繊維T1の主成分スコアをデータベースと照合した。また、被検繊維T1の主成分スコアを図5の主成分スコアの散布図に記載した(図5のT1)。図5において、本実施例1の被検繊維T1は、ヤク(Y)とウール(Z)との混合繊維であることが分かる。また、被検繊維T1の混用率は、ヤク:ウールがおよそ70:30であることが分かる。
また、SIMCA ver.13.0(Umetrics社)を用いた主成分分析から得られたデータ群から2種混合の混用率の予測を行った。具体的には、本実施例1で求められた予測混用率を実際の混用率と比較して、直線近似式を算出した。図6は、実施例1においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。図6においては、実際の混用率を横軸、予想混用率を縦軸にして示している。
図6に任意の混用率で混合した複数の試料について実際の混用率と予想混用率とのズレをグラフ上に示した。また、得られた各データベースにおける予測混用率の平均誤差を下記の式(1)で計算した。その結果、本実施例1における平均誤差(平均±標準偏差)は、8.08±6.09%であった。

予測混用率の平均誤差(%)=Σ(|実際の混用率−予測混用率|×0.5)/試料数・・・(1)
本実施例2は、上記実施例1と同様に表1に記載のカシミヤ、ヤク、及びウールの各組合せによる2種混合の一連の比較繊維からデータベースを作成し、被検繊維を鑑別するものである。なお、本実施例2においては、泳動パターン検出手段として蛍光染色法を採用する。蛍光色素は、Flamingoを使用した。
(1)データベース作成工程
本実施例2においては、(1−1)抽出手段及び(1−2)電気泳動手段は上記実施例1と同様にして行った。
(1−3)泳動パターン検出手段
本実施例2においては、電気泳動後のゲルを250mlの固定液(10%‐酢酸、40%‐メタノール)で1.5時間振とうした後、染色液(Flamingo溶液)で5時間振とうした。本実施例2においては、特に脱色操作を行っていない。
次に、染色後の電気泳動パターンからゲル画像を撮影した。ゲル画像の撮影には、WSE‐5200プリントグラフ2M(ATTO社)を使用し、励起波長520nm、検出波長595nmで撮影した。撮影したゲル画像は、上記実施例1と同様にしてBasicQuantifier(Bio ImageSystems Inc)で読み込み、各バンドの濃度(Intensity)及びバンドの移動度Rfを数値化した。各試料間における移動度Rfの誤差を補正するために、BasicQuantifierで取り込んだ数値をExcel 2010(Microsoft)で読み込んだ。
その後、試料ごとに約70kDa(BSA:内部標準)、23kDa、17kDa、10kDa以下の2つのバンドの移動度Rfを抽出し、標準試料(カシミヤ−A3、CCMI)の移動度Rfと比較し、近似曲線(2次式)を作成した。近似曲線で得られた係数を用いて、各試料における移動度Rfを補正した。バンドのIntensityは、各移動度RfにおけるIntensityを総バンドのIntensityで補正した。
(1−4)解析手段
次に、一連の比較繊維から得られた各バンドの濃度と移動度Rfとを変数として、SIMCAver.13.0(Umetrics社)を用いて主成分分析により主成分スコアを求めた。このようにして得られた解析データ群(主成分スコア等)を一連の比較繊維の起源となる動物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積した。
また、図7は、本実施例2においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から求めた主成分スコアの散布図である。図7の主成分スコアの散布図においては、第1主成分(PC1)を横軸、第2主成分(PC2)を縦軸にして示している。図7において、各単一繊維が3つの頂点として均一に分布していることが分かる。また、各頂点の間には、これらの頂点にある単一繊維からなる混合繊維が、その混用率に比例して1軸上に分布しており、上記実施例1の主成分スコアの散布図(図5)よりも更に均一に分布していることが分かる。
(2)鑑別工程
本鑑別工程においては、まず、データベース作成工程と同様にして、鑑別しようとする被検繊維T2からタンパク質群を抽出し、電気泳動手段及び泳動パターン検出手段によりゲル画像及び各バンドの濃度と移動度Rfとの関係を得た。次に、得られた被検繊維T2の各バンドの濃度と移動度Rfとの関係を変数として、これに上述の主成分分析で求めた固有ベクトルを乗じて被検繊維T2に対する主成分スコアを得た。
このようにして得られた被検繊維T2の主成分スコアをデータベースと照合した。また、被検繊維T2の主成分スコアを図7の主成分スコアの散布図に記載した(図7のT2)。図7において、本実施例2の被検繊維T2は、カシミヤ(X)とヤク(Y)との混合繊維であることが分かる。また、被検繊維T2の混用率は、カシミヤ:ヤクがおよそ80:20であることが分かる。
また、SIMCA ver.13.0(Umetrics社)を用いた主成分分析から得られたデータ群から2種混合の混用率の予測を行った。具体的には、本実施例2で求められた予測混用率を実際の混用率と比較して、直線近似式を算出した。図8は、実施例2においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。図8においては、実際の混用率を横軸、予想混用率を縦軸にして示している。
図8に任意の混用率で混合した複数の試料について実際の混用率と予想混用率とのズレをグラフ上に示した。また、得られた各データベースにおける予測混用率の平均誤差を上記実施例1と同様の式(1)で計算した。その結果、本実施例2における平均誤差(平均±標準偏差)は、5.72±4.18%であった。このように、蛍光染色法を採用した本実施例2においては、染料染色法を採用した上記実施例1に比べ、平均誤差が小さく予測精度が大きく向上していることが分かる。
本実施例3においては、上記実施例2と同様に表1に記載の一連の比較繊維からデータベースを作成し、被検繊維を鑑別するものである。また、泳動パターン検出手段として蛍光染色法(蛍光色素Flamingo使用)を採用した。
本実施例3においては、上記実施例2と異なり、主成分分析にカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の解析データ群を使用するものではなく、個別に2種混合の混合繊維ごとに主成分分析を行った。具体的には、カシミヤ・ヤクの2種類の獣毛繊維の解析データ群のみを使用して主成分分析を行った。また、カシミヤ・ウールの2種類の獣毛繊維の解析データ群のみを使用して主成分分析を行った。更に、ヤク・ウールの2種類の獣毛繊維の解析データ群のみを使用して主成分分析を行った。
本実施例3においては、SIMCA ver.13.0(Umetrics社)を用いた主成分分析から得られたデータ群から2種混合の混用率の予測を行った。本実施例3で求められた予測混用率を実際の混用率と比較して、直線近似式を算出した。図9は、カシミヤ・ヤクの2種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。図9においては、実際の混用率を横軸、予想混用率を縦軸にして示している。同様に、図10は、カシミヤ・ウールの2種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。また、図11は、ヤク・ウールの2種類の獣毛繊維の解析データ群から得られた混用率の直線近似式を示すグラフである。
図9、図10及び図11に、それぞれ任意の混用率で混合した複数の試料について実際の混用率と予想混用率とのズレをグラフ上に示した。また、得られた各データベースにおける予測混用率の平均誤差を上記実施例1と同様の式(1)で計算した。その結果、本実施例3における平均誤差(平均±標準偏差)は、図9において4.54±4.17%、図10おいて4.05±4.18%、図11おいて5.18±4.67%であった。このように、蛍光染色法を採用し、且つ、混合されている2種類の獣毛繊維の種類が分かっている場合には、より予測精度が向上していることが分かる。
実施例4は、上記実施例1〜実施例3と異なり、カシミヤ、ヤク、及びウールの各組合せによる2種類及び3種類を所定の混用率で混合した2〜3種混合の一連の比較繊維からデータベースを作成し、被検繊維を鑑別するものである。表2及び表3に本実施例4で使用する一連の比較繊維の混用率を示す。なお、本実施例4においては、泳動パターン検出手段として蛍光染色法を採用する。蛍光色素は、Flamingoを使用した。
(1)データベース作成工程
本実施例4においては、(1−1)抽出手段及び(1−2)電気泳動手段は上記実施例1と同様にして行った。
(1−3)泳動パターン検出手段
本実施例4においては、電気泳動後のゲルを250mlの固定液(10%‐酢酸、40%‐メタノール)で1.5時間振とうした後、染色液(Flamingo溶液)で16時間振とうした。本実施例4においては、特に脱色操作を行っていない。
次に、染色後の電気泳動パターンからゲル画像を撮影した。ゲル画像の撮影には、WSE‐5200プリントグラフ2M(ATTO社)を使用し、励起波長520nm、検出波長595nmで撮影した。撮影したゲル画像は、上記実施例1と同様にしてBasicQuantifier(Bio ImageSystems Inc)で読み込み、各バンドの濃度(Intensity)及びバンドの移動度Rfを数値化した。各試料間における移動度Rfの誤差を補正するために、BasicQuantifierで取り込んだ数値をExcel 2010(Microsoft)で読み込んだ。
その後、試料ごとに約70kDa(BSA:内部標準)、48kDa、25kDa、23kDa、20kDa、15kDa、及び10kDa以下の6つのバンドの計12本のバンドの移動度Rfを抽出し、標準試料(カシミヤ−A3、CCMI)の移動度Rfと比較し、近似曲線(2次式)を作成した。近似曲線で得られた係数を用いて、各試料における移動度Rfを補正した。バンドのIntensityは、各移動度RfにおけるIntensityを総バンドのIntensityで補正した。
(1−4)解析手段
次に、一連の比較繊維から得られた各バンドの濃度と移動度Rfとを変数として、SIMCAver.13.0(Umetrics社)を用いて主成分分析により主成分スコアを求めた。このようにして得られた解析データ群(主成分スコア等)を一連の比較繊維の起源となる動物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積した。
また、図12は、本実施例4においてカシミヤ・ヤク・ウールの3種類の獣毛繊維の2〜3種混合の一連の比較繊維の解析データ群から求めた主成分スコアの散布図である。図12の主成分スコアの散布図においては、第1主成分(PC1)を横軸、第2主成分(PC2)を縦軸にして示している。図12において、各単一繊維が3つの頂点として均一に分布していることが分かる。また、各頂点の間には、これらの頂点にある単一繊維からなる2種混合の混合繊維が、その混用率に比例して1軸上に分布している。更に、図12において、各単一繊維を3つの頂点とする三角形の内部に3種混合の混合繊維が、その混用率に比例して分布している。
(2)鑑別工程
本鑑別工程においては、SIMCA ver.13.0(Umetrics社)を用いた主成分分析から得られたデータ群から3種混合の混用率の予測を行った。まず、表2及び表3の一連の比較繊維から動物種ごとに求めた予測混用率を実際の混用率と比較して、動物種ごとの3本の直線近似式を算出した。
本実施例4においては、予め3種の混用率が既知の4点の被検繊維T3〜T6について、上記3本の直線近似式を用いて予測混用率を求め、各近似式の有効性を確認した。まず、データベース作成工程と同様にして、4点の被検繊維T3〜T6からタンパク質群を抽出し、電気泳動手段及び泳動パターン検出手段によりゲル画像及び各バンドの濃度と移動度Rfとの関係を得た。次に、得られた被検繊維T3〜T6のそれぞれについて各バンドの濃度と移動度Rfとの関係を変数として、これに上述の主成分分析で求めた固有ベクトルを乗じて被検繊維T3〜T6に対する主成分スコアを得た。このようにして得られた被検繊維T3〜T6の主成分スコアをデータベースと照合して各被検繊維T3〜T6の予測混用率を得た。
次に、SIMCA ver.13.0(Umetrics社)を用いた主成分分析から得られた被検繊維T3〜T6の予測混用率を上記3本の直線近似式を用いて補正し、近似補正後の混用率の合計が100%となるように換算した。表4に被検繊維T3〜T6の実際の混用率と、補正及び100%換算後の予測混用率を示す。また、被検繊維T3〜T6の予測混用率の誤差を上記実施例1と同様の式(1)で計算し、表4に示す。
表4から分かるように、本実施例4の方法においては、3種の混用率がほぼ正確に鑑別できる。なお、各被検繊維の鑑別精度を示す誤差は、3.5〜7.4%の値を示し、本実施例4における平均誤差(平均±標準偏差)は、5.0±1.7%であった。このように、本実施例4の方法においても、平均誤差が小さく予測精度が大きな鑑別方法を提供することができる。
以上説明したように、本発明においては、鑑別操作が比較的簡単で客観性を有し、検査員の経験やノウハウに頼ることなく鑑別でき、且つ、タンパク質繊維に前処理や染色加工がなされている場合でも、正確な鑑別結果を得ることのできるタンパク質繊維の鑑別方法を提供することができる。
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施例に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施例1においては、バンドのIntensityの補正を総バンドのIntensityに対する比で補正したが、これに限るものではなく、上記実施例2のように特定のバンドのIntensity(例えばBSA:内部標準)に対する比で補正するようにしてもよい。
(2)上記各実施例においては、タンパク質の抽出の際に獣毛繊維を粉砕することなく抽出を行っているが、これに限るものではなく、獣毛繊維を粉砕してからタンパク質を抽出するようにしてもよい。特に、脱スケールされた獣毛繊維に関しては、タンパク質を抽出する前に細かく粉砕することで、明瞭な電気泳動パターンを容易に得ることができる。
(3)上記各実施例においては、移動度Rfの補正に2次式による近似式を用いているが、これに限るものではなく、正確に補正できるのであれば3次式その他であってもよい。
(4)上記各実施例においては、タンパク質として獣毛繊維の鑑別を行うものであるが、これに限るものではなく、本発明は、獣毛繊維以外のタンパク質繊維を被検繊維として鑑別するようにしてもよい。
カシミヤなどの高級な獣毛繊維に安価な他の獣毛繊維を混合した偽装繊維製品が市場に出回っている。特に、繊維製品の取引がグローバル化した現在において、輸出入の際に迅速、且つ、正確な鑑別方法が望まれている。
本発明は、このような市場の要求に対して的確な鑑別手段を提供するものであり、また、従来法のように検査員の経験やノウハウに頼ることがない。特に、偽装が巧妙になる現在において、獣毛繊維の起源となる動物の種類を客観的に鑑別できること、また、偽装がなされていても正確な鑑別結果が得られるということは、これまでにない画期的な鑑別手段となる。
このことから、本発明は、市場の安定や国際間の公正取引に有効な鑑別手段を提供するものであり、単に従来法であるJISL 1030‐1(繊維製品の混用率試験方法‐第1部:繊維鑑別)、及び、JISL 1030‐2(繊維製品の混用率試験方法‐第2部:繊維混用率)を補完する鑑別手段に留まらず、国際標準として利用可能な鑑別手段を提供することができる。
更に、本発明は、獣毛繊維の鑑別に留まらず、従来から流通する絹などの昆虫繊維、牛乳タンパク質などから製造されるプロミックス、或いは、工業化が検討されているクモ糸繊維など、他のタンパク質繊維の鑑別においても有効な鑑別手段を提供することができる。
A…染料染色、
B…蛍光染色、
T1、T2、T3、T4、T5、T6…被検繊維、
X…カシミヤ100%、
Y…ヤク100%、
Z…ウール100%、
V…絹100%、
W…プロミックス、
1…カシミヤ:ヤク=100%:0%の電気泳動パターン(ゲル画像)、
2…カシミヤ:ヤク=90%:10%の電気泳動パターン(ゲル画像)、
3…カシミヤ:ヤク=80%:20%の電気泳動パターン(ゲル画像)、
4…カシミヤ:ヤク=70%:30%の電気泳動パターン(ゲル画像)、
5…カシミヤ:ヤク=60%:40%の電気泳動パターン(ゲル画像)、
6…カシミヤ:ヤク=50%:50%の電気泳動パターン(ゲル画像)、
7…カシミヤ:ヤク=40%:60%の電気泳動パターン(ゲル画像)、
8…カシミヤ:ヤク=0%:100%の電気泳動パターン(ゲル画像)。

Claims (7)

  1. タンパク質繊維の起源となる動物或いは植物の種類が既知であって種類が異なる少なくとも2種類の単一繊維と当該単一繊維を一連の混用率で混合した一連の混合繊維とを準備し、これらの単一繊維と一連の混合繊維とを構成する各タンパク質群をそれぞれ抽出する抽出手段と、
    抽出した前記各タンパク質群に対して、それぞれ電気泳動手段による分離をして、前記単一繊維と一連の混合繊維との各電気泳動パターンを得る電気泳動手段と、
    前記各電気泳動パターンを検出して、それぞれについて各バンドの濃度と移動度との関係を求める泳動パターン検出手段と、
    前記各電気泳動パターンから得られた各バンドの濃度と移動度との関係を多変量解析して解析データ群を得る解析手段とを使用して、
    得られた解析データ群を起源となる動物或いは植物の種類及び混用率と共にデータベースとして蓄積するデータベース作成工程、並びに、
    タンパク質繊維の起源となる動物或いは植物の種類が未知の被検繊維に対して、前記抽出手段、前記電気泳動手段及び泳動パターン検出手段と同様にして各バンドの濃度と移動度との関係を求め、
    得られた各バンドの濃度と移動度との関係について、前記解析手段に対応して解析データを求め、
    得られた前記被検繊維の解析データを前記データベースのデータ群と照合して、前記解析データと前記データベースのデータ群との一致性を指標として、前記被検繊維が少なくとも2種類の動物或いは植物を起源とすること、前記被検繊維の起源となる少なくとも2種類の動物或いは植物の種類、及び、前記被検繊維の混用率を鑑別する鑑別工程を有し、
    前記抽出手段において、タンパク質の分子内或いは分子間のジスルフィド結合を開裂するための還元剤として2−メルカプトエタノール、又は、ジチオスレイトールを使用し、
    前記電気泳動手段において、分離を行う前のタンパク質群に対して、蛍光標識剤として蛍光染料を使用した標識をしてから、SDS−PAGE法を使用して分離を行い、
    前記泳動パターン検出手段において、電気泳動ゲルの固定及び染色を行うことなく電気泳動パターンの各バンドの濃度と移動度との関係を求めることを特徴とするタンパク質繊維の鑑別方法。
  2. 前記抽出手段において、タンパク質の分子内或いは分子間のジスルフィド結合を開裂するために使用する還元剤は、容量%濃度で6%より濃い濃度の2−メルカプトエタノール、又は、モル濃度で8〜12mM(ミリモル/リッター)のジチオスレイトールであることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質繊維の鑑別方法。
  3. 前記電気泳動手段おいて、前記単一繊維の電気泳動パターンのうち、少なくともカシミヤを起源とする単一繊維の電気泳動パターンに対して、分子量が25kDa以下の領域における分解能が、10個以上のバンドに分解可能な電気泳動ゲルを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のタンパク質繊維の鑑別方法。
  4. 前記解析手段において、多変量解析に使用する電気泳動パターンは、分子量が40kDa以下の領域、好ましくは28kDa以下の領域であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法。
  5. 前記解析手段において、多変量解析は、主成分分析、又は、主成分回帰、PLS回帰などの重回帰分析であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法。
  6. 前記被検繊維は、カシミヤ、ウール、ヤク、モヘア、アンゴラ、アルパカ、ビキューナ、キャメル、及び、リャマからなる群のうち少なくとも1つの獣毛繊維を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法。
  7. 前記被検繊維は、絹、プロミックス、及び、クモ糸繊維からなる群のうち少なくとも1つのタンパク質繊維を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のタンパク質繊維の鑑別方法。
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