JP6541366B2 - テラヘルツ波計測装置 - Google Patents

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本発明は、例えばテラヘルツ波を用いて計測対象物の特性を計測するテラヘルツ波計測装置の技術分野に関する。
計測対象物の特性を計測するための装置として、テラヘルツ波計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。テラヘルツ波計測装置は、以下の手順で、計測対象物の特性を計測する。まず、超短パルスレーザ光(例えば、フェムト秒パルスレーザ光)を分岐することで得られる一のレーザ光であるポンプ光(言い換えれば、励起光)が、バイアス電圧が印加されているテラヘルツ波発生素子に照射される。その結果、テラヘルツ波発生素子は、テラヘルツ波を発生する。テラヘルツ波発生素子が発生したテラヘルツ波は、計測対象物に照射される。計測対象物に照射されたテラヘルツ波は、計測対象物によって反射される又は計測対象物を透過する。計測対象物によって反射された又は計測対象物を透過したテラヘルツ波は、超短パルスレーザ光を分岐することで得られる他のレーザ光であって且つポンプ光に対する光学的な遅延(つまり、光路長差)が付与されたプローブ光(言い換えれば、励起光)が照射されているテラヘルツ波検出素子に照射される。その結果、テラヘルツ波検出素子は、計測対象物によって反射された又は計測対象物を透過したテラヘルツ波を検出する。テラヘルツ波計測装置は、当該検出したテラヘルツ波(つまり、時間領域のテラヘルツ波であり、電流信号)を解析することで、計測対象物の特性を計測する。
一方で、近年、波長から0.8μmであるレーザ光に代えて、波長が1.55μmであるレーザ光をポンプ光及びプローブ光として用いる技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
特許第4046158号
井上憲人、「通信技術を利用したテラヘルツシステム」、Laser Focus World Japan、日本、2009年、2009年6月号、p.53−55
しかしながら、波長から0.8μmであるレーザ光に代えて、波長が1.55μmであるレーザ光がポンプ光及びプローブ光として用いられる場合には、以下に示す技術的問題が生ずる可能性がある。具体的には、波長が1.55μmであるレーザ光を用いて発生させたテラヘルツ波のパルス幅は、波長が0.8μmであるレーザ光を用いて発生させたテラヘルツ波のパルス幅よりも広くなる。このため、計測対象物の特性の計測精度が悪化してしまう可能性がある。例えば、テラヘルツ波を解析することで計測対象物の断面形状を計測するテラヘルツ波計測装置では、分解能が低下してしまう可能性がある。
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、計測対象物の特性の計測精度の悪化を抑制することが可能なテラヘルツ波計測装置を提供することを課題とする。
テラヘルツ波計測装置は、テラヘルツ波を発生する発生手段と、前記発生手段が発生させた前記テラヘルツ波を計測対象物に向けて反射する反射面を備える第1光学手段と、前記反射面から所定距離だけ離れた位置において前記反射面の少なくとも一部に対向し、前記反射面を透過した前記テラヘルツ波である透過光が前記第1光学手段に向かって伝搬することを防止する第2光学手段とを備える。
図1は、本実施例のテラヘルツ波計測装置の構成を示すブロック図である。 図2は、本実施例の光遅延器の構成を示す上面図である。 図3は、テラヘルツ波発生素子及びテラヘルツ波検出素子の夫々の構成を示す斜視図である。 図4は、直角プリズム及びテラヘルツ波吸収体内を伝搬するテラヘルツ波の光路を示す断面図である。 図5(a)は、長波長成分が減衰又は除去されていないテラヘルツ波の周波数スペクトルを示すグラフであり、図5(b)は、長波長成分が減衰又は除去されていないテラヘルツ波の波形(特に、パルス幅を認識可能な波形)示すグラフである。 図6(a)は、長波長成分が減衰又は除去されているテラヘルツ波の周波数スペクトルを示すグラフであり、図6(b)は、長波長成分が減衰又は除去されているテラヘルツ波の波形(特に、パルス幅を認識可能な波形)示すグラフである。
以下、テラヘルツ波計測装置の実施形態について説明を進める。
<1>
本実施形態のテラヘルツ波計測装置は、テラヘルツ波を発生する発生手段と、前記発生手段が発生させた前記テラヘルツ波を計測対象物に向けて反射する反射面を備える第1光学手段と、前記反射面から所定距離だけ離れた位置において前記反射面の少なくとも一部に対向し、前記反射面を透過した前記テラヘルツ波である透過光が前記第1光学手段に向かって伝搬することを防止する第2光学手段とを備える。
本実施形態のテラヘルツ波計測装置によれば、発生手段は、テラヘルツ波を発生させる。発生手段が発生したテラヘルツ波は、第1光学手段が備える反射面によって、計測対象物に向けて反射される。その結果、テラヘルツ波が計測対象物に照射される。このため、テラヘルツ計測装置は、計測対象物に照射されたテラヘルツ波を解析する(例えば、計測対象物に照射されたテラヘルツの検出結果を解析する)ことで、計測対象物の特性を計測することができる。
本実施形態のテラヘルツ波計測装置は、特に、第2光学手段を備えている。第2光学手段は、第1光学手段の反射面から所定距離だけ離れた位置において、反射面に対向している。このとき、第2光学手段は、反射面の裏側(具体的には、反射面のうちテラヘルツ波が実際に反射される側とは逆側)の位置において、反射面に対向している。
本実施形態では、テラヘルツ波の一部が、第1光学手段の反射面によって反射される一方で、テラヘルツ波の他の一部は、透過光として反射面を透過する。つまり、テラヘルツ波の他の一部は、反射面の表側(具体的には、反射面のうちテラヘルツ波が実際に反射される側)から裏側に向かって反射面を透過する。具体的には、後に数式を用いて具体的に説明するように、テラヘルツ波の他の一部は、第1光学手段の反射面と第2光学手段との間の距離に応じた強度の透過光として反射面を透過する。第2光学手段が反射面に対向しているがゆえに、透過光は、第2光学手段を介して、第1光学手段の外部に向かって伝搬していく。例えば、反射面によってテラヘルツ波が全反射されている場合には、反射面を透過する透過光としてのエバネッセント光が発生する。エバネッセント光は、反射面から所定距離だけ離れた位置に位置する第2光学手段を介して、第1光学手段の外部に向かって伝搬して行く。
ここで、後に数式を用いて具体的に説明するように、透過光の強度は、第1光学手段の反射面と第2光学手段との間の距離のみならず、反射面に入射するテラヘルツ波の波長に依存する。具体的には、後に詳述するように、透過光の強度は、反射面に入射するテラヘルツ波の波長が長くなるほど強くなる。ここで、発生手段が発生するテラヘルツ波は、様々な波長の光成分(言い換えれば、周波数成分ないしは電磁波成分)を含んでいる。具体的には、発生手段が発生するテラヘルツ波は、例えば、波長が相対的に長い又は所定閾値よりも長い光成分(以降、“長波長成分”と称する)、及び、波長が相対的に短い又は所定閾値よりも短い光成分(以降、“短波長成分”と称する)を含んでいる。このため、反射面を透過した長波長成分である透過光の強度は、反射面を透過した短波長成分である透過光の強度よりも大きくなる。つまり、長波長成分は、短波長成分よりも、反射面を透過しやすい。このため、第1光学手段は、実質的には、発生手段が発生したテラヘルツ波中に含まれる長波長成分を選択的に減衰又は除去可能な光学手段として機能可能である。
その結果、後に図面を参照しながら詳細に説明するように、長波長成分が減衰又は除去される場合には、長波長成分が減衰又は除去されない場合と比較して、テラヘルツ波のパルス幅が狭くなる。このため、本実施形態では、テラヘルツ波のパルス幅の拡大が抑制可能であるがゆえに、計測対象物の特性の計測精度の悪化が好適に抑制される。例えば、本実施形態のテラヘルツ波計測装置が、テラヘルツ波を解析することで計測対象物の断面形状を計測するテラヘルツ波計測装置である場合には、分解能の低下が好適に抑制される。
特に、本実施形態では、テラヘルツ波の発生及び検出に用いられるレーザ光の波長が長くなる(例えば、0.8μmから1.55μmに変更される)場合であっても、第1光学手段による長波長成分の減衰又は除去に起因して、計測対象物の特性の計測精度の悪化が好適に抑制される。
一方で、反射面を透過したテラヘルツ波の他の一部(特に、長波長成分)である透過光が第1光学手段に再度入射してしまうと、当該光成分は、計測対象物の特性の計測精度に影響を与えるノイズとなる可能性がある。このため、本実施形態では、第2光学手段は、透過光が第1光学手段に向かって伝搬することを防止する。このため、透過光がノイズとなることに起因した計測対象物の特性の計測精度の悪化が好適に抑制される。
<2>
本実施形態のテラヘルツ波計測装置の他の態様では、前記第2光学手段は、前記反射面に対向し且つ前記反射面に平行である光学面を備える。
この態様によれば、このような光学面を備える第2光学手段が第1光学手段の反射面に対向する(特に、反射面の裏側の位置において反射面に対向する)がゆえに、テラヘルツ波の他の一部が透過光として反射面を好適に透過する。
<3>
本実施形態のテラヘルツ波計測装置の他の態様では、前記第2光学手段は、前記透過光の少なくとも一部を吸収する若しくは透過する又は前記第1光学手段に向かう方向とは異なる方向に反射する。
この態様によれば、第2光学手段は、透過光が第1光学手段に向かって伝搬することを好適に防止することができる。
<4>
本実施形態のテラヘルツ波計測装置の他の態様では、前記透過光は、エバネッセント光である。
この態様によれば、テラヘルツ波の他の一部が、エバネッセント光である透過光として反射面を好適に透過する。更に、第2光学手段が第1光学手段の反射面に対向するがゆえに、エバネッセント光である透過光は、第2光学手段を介して、第1光学手段の外部に向かって伝搬して行く。
<5>
本実施形態のテラヘルツ波計測装置の他の態様では、前記発生手段が発生させた前記テラヘルツ波は、前記反射面において全反射するように前記反射面に入射する。
この態様によれば、反射面によって全反射されるテラヘルツ波の他の一部が、透過光(例えば、エバネッセント光)として反射面を好適に透過する。更に、第2光学手段が第1光学手段の反射面に対向するがゆえに、透過光は、第2光学手段を介して、第1光学手段の外部に向かって伝搬して行く。
<6>
本実施形態のテラヘルツ波計測装置の他の態様では、前記発生手段は、第1の偏光の前記テラヘルツ波を発生し、前記発生手段が発生させた前記第1の偏光の前記テラヘルツ波を、前記反射面に導く第3光学手段を更に備え、前記第1光学手段の前記反射面は、(i)前記第1の偏光の前記テラヘルツ波を前記計測対象物に向けて反射することで、前記第1の偏光の前記テラヘルツ波を第2の偏光の前記テラヘルツ波に変換し、(ii)前記計測対象物によって反射された前記第2の偏光の前記テラヘルツ波を前記第3光学手段に向けて反射することで、前記第2の偏光の前記テラヘルツ波を第3の偏光の前記テラヘルツ波に変換し、前記第1光学手段から伝搬してくる前記第3の偏光の前記テラヘルツ波を検出する検出手段を更に備え、前記第3光学手段は、前記第1光学手段から伝搬してくる前記第3の偏光の前記テラヘルツ波を、前記検出手段に導き、前記第3光学手段は、前記第1の偏光及び前記第3の偏光のうちのいずれか一方を反射し、前記第1の偏光及び前記第3の偏光のうちのいずれか他方を透過する。
この態様によれば、第3光学手段は、偏光成分の違いに応じて、発生手段から計測対象物に向かって伝搬するテラヘルツ波と、計測対象物から検出手段に向かって伝搬するテラヘルツ波とを光学的に分離することができる。つまり、この態様では、発生手段から計測対象物に向かって伝搬するテラヘルツ波と計測対象物から検出手段に向かって伝搬するテラヘルツ波とを光学的に分離するために、ハーフミラーを用いなくてもよくなる。このため、発生手段が発生したテラヘルツ波は、発生手段から検出手段に至るまでの伝搬経路で過度に減衰する(例えば、ハーフミラーを通過することで過度に減衰する)ことなく、検出手段に到達する。
<7>
上述の如く第3光学手段を備えるテラヘルツ波計測装置の他の態様では、前記第1の偏光は、第1の方向に沿って振動する電場成分を有する第1の直線偏光であり、前記第2の偏光は、円偏光であり、前記第3の変更は、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動する電場成分を有する第2の直線偏光である。
この態様によれば、第3光学手段は、偏光成分の違いに応じて、発生手段から計測対象物に向かって伝搬するテラヘルツ波と、計測対象物から検出手段に向かって伝搬するテラヘルツ波とを光学的に分離することができる。
本実施形態のテラヘルツ波計測装置の作用及び他の利得については、以下に示す実施例において、より詳細に説明する。
以上説明したように、本実施形態のテラヘルツ波計測装置は、発生手段と、第1光学手段と、第2光学手段とを備える。従って、計測対象物の特性の計測精度の悪化が抑制される。
以下、図面を参照しながら、テラヘルツ波計測装置の実施例についての説明を進める。
(1)テラヘルツ波計測装置100の構成
初めに、図1を参照しながら、本実施例のテラヘルツ波計測装置100の構成について説明する。図1は、本実施例のテラヘルツ波計測装置100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、テラヘルツ波計測装置100は、テラヘルツ波THzを計測対象物10に照射すると共に、計測対象物10を透過した又は計測対象物10が反射したテラヘルツ波THz(つまり、計測対象物10に照射されたテラヘルツ波THz)を検出する。尚、図1に示す例では、テラヘルツ波計測装置100は、計測対象物10が反射したテラヘルツ波THzを検出している。
テラヘルツ波THzは、1テラヘルツ(1THz=1012Hz)前後の周波数領域(つまり、テラヘルツ領域)に属する電磁波成分を含む電磁波である。テラヘルツ領域は、光の直進性と電磁波の透過性を兼ね備えた周波数領域である。テラヘルツ領域は、様々な物質が固有の吸収スペクトルを有する周波数領域である。従って、テラヘルツ波計測装置100は、計測対象物10に照射されたテラヘルツ波THzを解析することで、計測対象物10の特性を計測することができる。
ここで、テラヘルツ波THzの周期は、サブピコ秒のオーダーの周期であるがゆえに、当該テラヘルツ波THzの波形を直接的に検出することが技術的に困難である。そこで、テラヘルツ波計測装置100は、時間遅延走査に基づくポンプ・プローブ法を採用することで、テラヘルツ波THzの波形を間接的に検出する。以下、このようなポンプ・プローブ法を採用するテラヘルツ波計測装置100についてより具体的に説明を進める。
図1に示すように、テラヘルツ波計測装置100は、パルスレーザ装置101と、「発生手段」の一具体例であるテラヘルツ波発生素子110と、ビームスプリッタ161と、反射鏡162と、反射鏡163と、「第3光学手段」の一具体例であるワイヤグリッド偏光子164と、「第1光学手段」の一具体例である直角プリズム170と、光学遅延機構120と、「検出手段」の一具体例であるテラヘルツ波検出素子130と、バイアス電圧生成部141と、I−V(電流−電圧)変換部142と、制御部150とを備えている。
パルスレーザ装置101は、当該パルスレーザ装置101に入力される駆動電流に応じた光強度を有するサブピコ秒オーダー又はフェムト秒オーダーのパルスレーザ光LBを生成する。パルスレーザ装置101が生成したパルスレーザ光LBは、不図示の導光路(例えば、光ファイバ等)を介して、ビームスプリッタ161に入射する。
ビームスプリッタ161は、パルスレーザ光LBを、ポンプ光LB1とプローブ光LB2とに分岐する。ポンプ光LB1は、不図示の導光路を介して、テラヘルツ波発生素子110に入射する。一方で、プローブ光LB2は、不図示の導光路及び反射鏡162を介して、光学遅延機構120に入射する。
光学遅延機構120は、ポンプ光LB1の光路長とプローブ光LB2の光路長との間の差分(つまり、光路長差)を調整する。具体的には、光学遅延機構120は、プローブ光LB2の光路長を調整することで、光路長差を調整する。光路長差が調整されると、ポンプ光LB1がテラヘルツ波発生素子110に入射するタイミング(或いは、テラヘルツ波発生素子110がテラヘルツ波THzを発生させるタイミング)と、プローブ光LB2がテラヘルツ波検出素子130に入射するタイミング(或いは、テラヘルツ波検出素子130がテラヘルツ波THzを検出するタイミング)との時間差が調整される。テラヘルツ波計測装置100は、この時間差を調整することで、テラヘルツ波THzの波形を間接的に検出する。例えば、光学遅延機構120によってプローブ光LB2の光路が0.3ミリメートル(但し、空気中での光路長)だけ長くなると、プローブ光LB2がテラヘルツ波検出素子130に入射するタイミングが1ピコ秒だけ遅くなる。この場合、テラヘルツ波検出素子130がテラヘルツ波THzを検出するタイミングが、1ピコ秒だけ遅くなる。テラヘルツ波検出素子130に対して同一の波形を有するテラヘルツ波THzが数十MHz程度の間隔で繰り返し入射することを考慮すれば、テラヘルツ波検出素子130がテラヘルツ波THzを検出するタイミングを徐々にずらすことで、テラヘルツ波検出素子130は、テラヘルツ波THzの波形を間接的に検出することができる。つまり、後述するロックイン検出部151は、テラヘルツ波検出素子130の検出結果に基づいて、テラヘルツ波THzの波形を検出することができる。
ここで、図2を参照して、光学遅延機構120の構成について説明する。図2は、光学遅延機構120の構成を示す平面図である。尚、図2に示す光学遅延機構120はあくまで一例であり、図2に示す構成とは異なる構成を有する光遅延機構が用いられてもよい。
図2に示すように、光学遅延機構120は、複数の(図2では、4つの)再帰反射鏡121(121aから121d)と、回転基板122とを備えている。
各再帰反射鏡121は、当該各再帰反射鏡121に入射してくるプローブ光LB2を再帰反射する。つまり、各再帰反射鏡121は、当該各再帰反射鏡121に入射してくるプローブ光LB2を、当該プローブ光LB2の入射方向と平行な方向に向けて反射する。各再帰反射鏡121は、当該各再帰反射鏡121に入射してくるプローブ光LB2を、光学遅延機構120の外部(例えば、反射鏡163)に向けて反射する。
複数の再帰反射鏡121は、回転基板122の回転軸122aを中心とする円周C上に、等間隔に配置されている。回転基板122の回転軸122aは、不図示のモータの回転軸に連結されている。従って、回転基板122は、モータの動作により回転可能である。その結果、複数の再帰反射鏡121の夫々は、回転基板122の回転に伴って、円周C上を周回する。このような再帰反射鏡121の移動により、プローブ光LB2の光路長が調整される。
再び図1において、光学遅延機構120から出射したプローブ光LB2は、反射鏡163及び不図示の導光路を介して、テラヘルツ波検出素子130に入射する。
ここで、図3(a)及び図3(b)を参照しながら、ポンプ光LB1が照射されるテラヘルツ波発生素子110及びプローブ光LB2が照射されるテラヘルツ検出素子130について更に詳細に説明する。図3(a)は、テラヘルツ波発生素子110の構成を示す斜視図である。図3(b)は、テラヘルツ波検出素子130の構成を示す斜視図である。尚、図3(a)に示すテラヘルツ波発生素子110及び図3(b)に示すテラヘルツ波検出素子130の構成はあくまで一例である。このため、図3(a)又は図3(b)に示す構成とは異なる構成を有する光伝導アンテナ又は光伝導スイッチが、テラヘルツ波発生素子110及びテラヘルツ波検出素子130の少なくとも一方として用いられてもよい。
図3(a)に示すように、テラヘルツ波発生素子110は、基板111と、アンテナ(言い換えれば、伝送線路)112と、アンテナ(言い換えれば、伝送線路)113とを備えている。
基板111は、例えば、GaAs(Gallium Arsenide)基板等の半導体基板である。アンテナ112及びアンテナ113の夫々は、長手方向に延在する形状を有するモノポールアンテナである。アンテナ112及びアンテナ113は、短手方向に沿って並列するように基板111上に配置される。アンテナ112とアンテナ113との間には、数マイクロメートル程度のギャップ(つまり、間隙)114が確保される。従って、アンテナ112及びアンテナ113全体として、ダイポールアンテナを構成する。
ギャップ114には、アンテナ112及びアンテナ113を介して、バイアス電圧生成部141から出力されるバイアス電圧が印加されている。有効なバイアス電圧(例えば、0Vでないバイアス電圧)がギャップ114に印加されている状態でポンプ光LB1がギャップ114に照射されると、テラヘルツ波発生素子110には、ポンプ光LB1による光励起によってキャリアが発生する。その結果、テラヘルツ波発生素子110には、発生したキャリアに応じたサブピコ秒オーダーの又はフェムト秒オーダーのパルス状の電流信号が発生する。その結果、テラヘルツ波発生素子110には、当該パルス状の電流信号に起因したテラヘルツ波THzが発生する。
図3(b)に示すように、テラヘルツ波検出素子130もまた、テラヘルツ波発生素子110と同様の構成を有している。つまり、テラヘルツ波検出素子130は、基板131と、アンテナ(言い換えれば、伝送線路)132と、アンテナ(言い換えれば、伝送線路)133とを備えている。基板131、アンテナ132及びアンテナ133は、夫々、基板111、アンテナ112及びアンテナ113と同様の構成を有している。
プローブ光LB2がギャップ134に照射されると、テラヘルツ検出素子130には、プローブ光LB2による光励起によってキャリアが発生する。プローブ光LB2がギャップ134に照射されている状態でテラヘルツ検出素子130にテラヘルツ波THzが照射されると、ギャップ134には、テラヘルツ波THzの光強度に応じた信号強度を有する電流信号が発生する。当該電流信号は、アンテナ132及びアンテナ133を介して、I−V変換部142に出力される。
再び図1において、テラヘルツ波発生素子110から出射したテラヘルツ波THz(以降、説明の便宜上、“テラヘルツ波THz1”と称する)は、ワイヤグリッド偏光子164に入射する。ワイヤグリッド偏光子164は、一方向に延伸する複数のワイヤと、当該複数のワイヤを挟み込む一対の基板とを備える。ワイヤグリッド偏光子164は、複数のワイヤの延伸方向に直交する方向に沿って振動する電場成分を有する直線偏光を透過する。一方で、ワイヤグリッド偏光子164は、複数のワイヤの延伸方向に沿って振動する電場成分を有する直線偏光を反射する。
本実施例では、ワイヤグリッド偏光子164は、テラヘルツ波発生素子110から出射したテラヘルツ波THz1を透過する。このため、テラヘルツ波発生素子110は、ワイヤグリッド偏光子164が備える複数のワイヤの延伸方向に直交する方向に沿って振動する電場成分を有する直線偏光となるテラヘルツ波THz1を発生する。
ワイヤグリッド偏光子164を透過したテラヘルツ波THz1は、直角プリズム170に入射する。直角プリズム170は、第1面171と、「反射面」の一具体例である第2面172と、第3面173とを備える。第1面171は、ワイヤグリッド偏光子164を透過したテラヘルツ波THz1が入射する光学面である。第2面172は、第1面171を介して直角プリズム170の内部に伝搬してきたテラヘルツ波THz1を反射する光学面である。特に、第2面172は、第2面172よりも一方側(図1では、左下側)に位置する領域(例えば、第1面171が位置する領域)を介して第2面172に入射するテラヘルツ波THz1を反射する。第3面173は、第1面171に対して90°の角度で交わると共に、第2面172によって反射されたテラヘルツ波THz1が出射する光学面である。
従って、直角プリズム170に入射したテラヘルツ波THz1は、第2面172によって反射される。特に、本実施例では、テラヘルツ波THz1は、第2面172によって全反射される。加えて、第2面172による全反射に起因して、テラヘルツ波THz1の位相は、π/2だけシフトする。このため、テラヘルツ波THz1は、第2面172によってテラヘルツ波THz1が全反射され且つ全反射に起因してテラヘルツ波THz1の位相がπ/2だけシフトする入射角度(例えば、41.9度)で第2面172に入射する。その結果、第2面172による反射に起因して、直線偏光であったテラヘルツ波THz1は、円偏光であるテラヘルツ波THz1に変換される。第2面172によって反射されたテラヘルツ波THz1は、第3面173を介して、直角プリズム170の外部に向かって伝搬する。その結果、第2面172によって反射されたテラヘルツ波THz1は、計測対象物10に照射される。
計測対象物10に照射されたテラヘルツ波THz1は、計測対象物10によって反射される。以降、計測対象物10からテラヘルツ波検出素子130に向かって伝搬するテラヘルツ波THzと、テラヘルツ波発生素子110から計測対象物10に向かって伝搬するテラヘルツ波THz1とを区別するために、計測対象物10によって反射されたテラヘルツ波THzを、“テラヘルツ波THz2”と称する。計測対象物10によって反射されたテラヘルツ波THz2は、再び直角プリズム170(特に、第3面173)に入射する。第3面173に入射したテラヘルツ波THz2は、第2面172によって反射される。この場合も、テラヘルツ波THz2は、第2面172によって全反射される。加えて、第2面172による反射に起因して、テラヘルツ波THz2の位相は、π/2だけ更にシフトする。このため、テラヘルツ波THz2は、第2面172によってテラヘルツ波THz2が全反射され且つ全反射に起因してテラヘルツ波THz2の位相がπ/2だけシフトする入射角度(例えば、41.9度)で第2面172に入射する。その結果、第2面172による反射に起因して、円偏光であったテラヘルツ波THz2は、直線偏光であるテラヘルツ波THz2に変換される。特に、本実施例では、直線偏光であるテラヘルツ波THz1が直線偏光であるテラヘルツ波THz2に変換されるまでに第2面172での全反射が2回行われている。このため、直線偏光であるテラヘルツ波THz2の位相は、直線偏光であるテラヘルツ波THz1の位相に対してπだけずれている。つまり、直線偏光であるテラヘルツ波THz2が有する電場成分の振動方向は、直線偏光であるテラヘルツ波THz1が有する電場成分の振動方向と直交する。
第2面172によって反射されたテラヘルツ波THz2は、第1面171を介して、ワイヤグリッド偏光子164に入射する。ここで、上述したように、直線偏光であるテラヘルツ波THz2が有する電場成分の振動方向が直線偏光であるテラヘルツ波THz1が有する電場成分の振動方向と直交している。このため、直線偏光であるテラヘルツ波THz2は、ワイヤグリッド偏光子164が備える複数のワイヤの延伸方向に沿って振動する電場成分を有する直線偏光である。このため、ワイヤグリッド偏光子164は、直角プリズム170から伝搬してきたテラヘルツ波THz2を反射する。ワイヤグリッド偏光子164によって反射されたテラヘルツ波THz2は、テラヘルツ波検出素子130に入射する。
このように、本実施例では、ワイヤグリッド偏光子164は、偏光成分の違いに応じて、テラヘルツ波発生素子110から計測対象物10に向かって伝搬するテラヘルツ波THz1と、計測対象物10からテラヘルツ波検出素子130に向かって伝搬するテラヘルツ波THz2とを光学的に分離することができる。つまり、本実施例では、テラヘルツ波計測装置100は、テラヘルツ波発生素子110から計測対象物10に向かって伝搬するテラヘルツ波THz1と計測対象物10からテラヘルツ波検出素子130に向かって伝搬するテラヘルツ波THz2とを光学的に分離するための光学素子として、ハーフミラーを備えていなくてもよい。このため、テラヘルツ波発生素子110が発生したテラヘルツ波THz1は、テラヘルツ波発生素子110からテラヘルツ波検出素子130に至るまでの伝搬経路で過度に減衰する(例えば、ハーフミラーを通過することで過度に減衰する)ことなく、テラヘルツ波検出素子130に到達することができる。
テラヘルツ波THz2がテラヘルツ波検出素子130に入射すると、テラヘルツ波検出素子130は、テラヘルツ波THz2を検出する。つまり、テラヘルツ波検出素子130からは、テラヘルツ波THz2の強度に応じた信号強度を有する電流信号が出力される。
テラヘルツ波検出素子130から出力される電流信号は、I−V変換部142によって、電圧信号に変換される。
制御部150は、テラヘルツ波検出素子130の検出結果(つまり、I−V変換部142が出力する電圧信号)に基づいて、計測対象物10の特性を計測する。計測対象物10の特性を計測するために、制御部150は、ロックイン検出部151と、信号処理部152とを備えている。
ロックイン検出部151は、I−V変換部142から出力される電圧信号に対して、バイアス電圧生成部141が生成するバイアス電圧を参照信号とする同期検波を行う。その結果、ロックイン検出部151は、テラヘルツ波THz2のサンプル値を検出する。その後、ポンプ光LB1の光路長とプローブ光LB2の光路長との間の差分(つまり、光路長差)を適宜調整しながら同様の動作が繰り返されることで、ロックイン検出部151は、テラヘルツ波検出素子130が検出したテラヘルツ波THz2の波形(時間波形)を検出することができる。ロックイン検出部151は、テラヘルツ波検出素子130が検出したテラヘルツ波THz2の波形を示す波形信号を出力する。
信号処理部152は、ロックイン検出部151から出力される波形信号に基づいて、計測対象物10の特性を計測する。例えば、信号処理部152は、テラヘルツ時間領域分光法を用いてテラヘルツ波THz2の周波数スペクトルを取得すると共に、当該周波数スペクトルに基づいて計測対象物10の特性を計測する。
本実施例では更に、テラヘルツ波計測装置100は、「第2光学手段」の一具体例であるテラヘルツ波吸収体180を備える。以下、図4を参照しながら、テラヘルツ波吸収体180について説明する。図4は、直角プリズム170及びテラヘルツ波吸収体180内を伝搬するテラヘルツ波THz1の光路を示す断面図である。
図4に示すように、テラヘルツ波吸収体180は、直角プリズム180の第2面172よりも他方側(図1及び図4では、右上側)の位置において、第2面172に近接する又は隣接する。テラヘルツ波吸収体180は、第2面172よりも他方側の位置において第2面172に対向すると共に第2面172に平行な光学面181を備える。光学面181は、第2面172から所定距離d(但し、d>0)だけ離れている。つまり、光学面181は、第2面172よりも他方側に向かって所定距離dだけ第2面172から離れた位置に位置している。
ここで、上述したように、第2面172は、テラヘルツ波THz1を全反射している。この場合、第2面172には、第2面172から外部に漏れ出すエバネッセント光EVAが発生する。但し、このエバネッセント光EVAは、通常は、第2面172から直角プリズム170の外部に向かって伝搬することはない。しかしながら、エバネッセント光EVAが発生している状況下で第2面172から所定距離dだけ離れた光学面181を備えるテラヘルツ波吸収体180が第2面172に近接又は隣接すると、エバネッセント光EVAは、第2面172から直角プリズム170の外部に向かって伝搬して行く。典型的には、エバネッセント光EVAは、テラヘルツ波吸収体180の内部を伝搬して行く。従って、本実施例では、第2面172に入射したテラヘルツ波THz1の一部が、第2面172によって反射される一方で、第2面172に入射したテラヘルツ波THz1の他の一部が、エバネッセント光EVAとして第2面172を透過する。
エバネッセント光EVAの強度Iは、数式1によって示される。但し、「n」は、直角プリズム170の屈折率であり、「θ」は、テラヘルツ波THz1の第2面172に対する入射角度であり、「λ」は、第2面172によって反射される光(本実施例では、テラヘルツ波THz1)の波長である。但し、テラヘルツ波THz1には、様々な波長の電磁波成分が含まれている。以下、説明の便宜上、テラヘルツ波THz1には、少なくとも、波長λが長い(例えば、相対的に長い又は所定閾値よりも長い)電磁波成分(以降、“長波長成分”と称する)、及び、波長λが短い(例えば、相対的に短い又は所定閾値よりも短い)電磁波成分(以降、“短波長成分”と称する)が含まれているものとする。
数式1から分かるように、第2面172が反射する光の波長λが大きくなるほど、第2面172を透過するエバネッセント光EVAの強度Iが大きくなる。このため、テラヘルツ波THz1中の長波長成分が反射面を透過することで得られるエバネッセント光EVAの強度Iは、テラヘルツ波THz1中の短波長成分が反射面を透過することで得られるエバネッセント光EVAの強度Iよりも大きくなる。つまり、テラヘルツ波THz1中の長波長成分は、テラヘルツ波THz1中の短波長成分よりも第2面172を透過しやすい。言い換えれば、テラヘルツ波THz1中の長波長成分は、テラヘルツ波THz1中の短波長成分よりも第2面172によって反射されにくい。このため、第2面172は、計測対象物10に到達する長波長成分の強度が相対的に小さくなるようにテラヘルツ波THz1を反射する。従って、直角プリズム170(特に、第2面172)は、実質的には、テラヘルツ波THz1中に含まれる長波長成分を選択的に減衰又は除去していると言える。
尚、直角プリズム170は、(特に、第2面172)は、実質的には、テラヘルツ波THz1中に含まれる短波長成分をも選択的に減衰又は除去しているとも言える。しかしながら、上述したように、長波長成分が短波長成分よりも第2面172を透過しやすいがゆえに、短波長成分の減衰量又は除去量は、長波長成分の減衰量又は除去量よりも小さい。従って、直角プリズム170(特に、第2面172)は、主として、テラヘルツ波THz1中に含まれる長波長成分を選択的に減衰又は除去しているとみなすことができる。
加えて、数式1から分かるように、第2面172と光学面181との間の距離dが小さくなるほど、第2面172を透過するエバネッセント光EVAの強度Iが大きくなる。つまり、第2面172を透過する長波長成分の透過量(つまり、長波長成分が第2面172によって反射されることで発生するエバネッセント光EVAの強度I)は、距離dに応じて変動することになる。このため、長波長成分の透過量(つまり、長波長成分の減衰量又は除去量)が第1所定量以上になるような適切な距離dが選択されることが好ましい。更には、短波長成分の透過量(つまり、短波長成分の減衰量又は除去量)が第2所定量以下になるような適切な距離dが選択されることが好ましい。例えば、0.05mmから0.20mmの範囲に収まる距離が、距離dとして選択されることが好ましい。
その結果、テラヘルツ波THz1中の長波長成分が減衰又は除去される場合には、テラヘルツ波THz1中の長波長成分が減衰又は除去されない場合と比較して、テラヘルツ波THz1のパルス幅が狭くなる。以下、図5(a)から図5(b)及び図6(a)から図6(b)を参照しながら、テラヘルツ波THz1中の長波長成分の強度とテラヘルツ波THz1のパルス幅との関係について説明する。図5(a)は、長波長成分が減衰又は除去されていないテラヘルツ波THz1の周波数スペクトルを示すグラフである。図5(b)は、長波長成分が減衰又は除去されていないテラヘルツ波THz1の波形(特に、パルス幅を認識可能な波形)示すグラフである。図6(a)は、長波長成分が減衰又は除去されているテラヘルツ波THz1の周波数スペクトルを示すグラフである。図6(b)は、長波長成分が減衰又は除去されているテラヘルツ波THz1の波形(特に、パルス幅を認識可能な波形)示すグラフである。
図5(a)に示すように、主として0から3THzの周波数の電磁波成分を含むテラヘルツ波THz1を用いて説明を進める。図5(a)に示す周波数スペクトルを有するテラヘルツ波THz1の時間波形は、図5(b)に示す時間波形となる。図5(b)に示すテラヘルツ波THzのパルスの半値全幅は、0.33ps(ピコ秒)となる。
一方で、図6(a)は、図5(a)に示すテラヘルツ波THzのうち0.8THz以下の電磁波成分を指数関数的に減衰させることで得られるテラヘルツ波THz1の周波数スペクトルを示す。図5(a)に示す周波数スペクトルを有するテラヘルツ波THz1の時間波形は、図5(b)に示す時間波形となる。図6(b)に示すテラヘルツ波THzのパルスの半値全幅は、0.28ps(ピコ秒)となる。つまり、テラヘルツ波THz1中の長波長成分が減衰又は除去される場合には、テラヘルツ波THz1中の長波長成分が減衰又は除去されない場合と比較して、テラヘルツ波THz1のパルス幅が狭くなる。
このように、本実施例では、計測対象物10に照射されるテラヘルツ波THz1のパルス幅の拡大が抑制される。このため、計測対象物10の特性の計測精度の悪化が好適に抑制される。例えば、本実施例のテラヘルツ波計測装置100が、テラヘルツ波THz2を解析することで計測対象物10の断面形状を計測する場合には、分解能の低下が好適に抑制される。
特に、本実施例では、テラヘルツ波THz1の発生に用いられるポンプ光LB1及びテラヘルツ波THz2の検出に用いられるプローブ光LB2の波長が長くなる場合であっても、計測対象物10の特性の計測精度の悪化が好適に抑制される。具体的には、例えば、ポンプ光LB1及びプローブ光LB2の波長が1.55μmである場合には、ポンプ光LB1及びプローブ光LB2の波長が0.8μmである場合と比較して、テラヘルツ波発生素子110が発生するテラヘルツ波THz1のパルス幅が大きくなってしまうことは上述したとおりである。つまり、ポンプ光LB1及びプローブ光LB2の波長の長大化に起因して、テラヘルツ波発生素子110が発生するテラヘルツ波THz1のパルス幅が大きくなってしまう。本実施例では、ポンプ光LB1及びプローブ光LB2の波長の長大化に起因したテラヘルツ波THz1のパルス幅の拡大が、直角プリズム170(特に、第2面172)による長波長成分の減衰又は除去に起因したテラヘルツ波THz1のパルス幅の縮小によって相殺される。このため、テラヘルツ波THz1のパルス幅の拡大に起因した計測対象物10の特性の計測精度の悪化が好適に抑制される。
但し、本実施例では、長波長成分の減衰又は除去は、テラヘルツ波THz1の一部が第2面172を透過するという現象によって実現されている。この場合、第2面172を透過したテラヘルツ波THz1の一部(つまり、エバネッセント光EVA)が再度直角プリズム170に入射すると、当該エバネッセント光EVAは、計測対象物10の特性の計測精度に影響を与えるノイズとなる可能性がある。そこで、本実施例では、テラヘルツ波吸収体180は、エバネッセント光EVAに起因したノイズの発生を抑制する。具体的には、テラヘルツ波吸収体180は、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1の少なくとも一部(好ましくは、全部)を吸収する特性を有する。第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1をテラヘルツ波吸収体180が吸収するがゆえに、第2面172を透過したエバネッセント光EVAが再度直角プリズム170に入射することは殆ど又は全くない。或いは、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1をテラヘルツ波吸収体180が吸収する場合には、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1をテラヘルツ波吸収体180が吸収しない場合と比較して、第2面172を透過した後に再度直角プリズム170に入射するエバネッセント光EVAの強度が小さくなる。このため、エバネッセント光EVAに起因したノイズの発生が好適に抑制される。
尚、テラヘルツ波吸収体180は、エバネッセント光EVAに起因したノイズの発生を抑制することができる限りは、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1を吸収する特性とは異なる特性を有していてもよい。例えば、テラヘルツ波吸収体180は、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1を直角プリズム170に向かって伝搬することを防止する特性を有していてもよい。例えば、テラヘルツ波吸収体180は、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1を透過する特性を有していてもよい。例えば、テラヘルツ波吸収体180は、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1に対する反射率が所定率以下となる特性を有していてもよい。例えば、テラヘルツ波吸収体180は、第2面172を透過してきたテラヘルツ波THz1を反射しない特性を有していてもよい。
テラヘルツ波計測装置100は、直角プリズム170に加えて又は代えて、ワイヤグリッド偏光子164を透過したテラヘルツ波THz1を計測対象物10に向けて反射可能であって且つ計測対象物10によって反射されたテラヘルツ波THz2をワイヤグリッド偏光子164に向けて反射可能な反射面を備える光学素子を備えていてもよい。例えば、テラヘルツ波計測装置100は、直角プリズム170に加えて又は代えて、フレネルロムプリズムを備えていてもよい。
テラヘルツ波計測装置100は、直角プリズム170に加えて又は代えて、ワイヤグリッド偏光子164を透過したテラヘルツ波THz1を計測対象物10に向けて反射可能な反射面を備える光学素子と、計測対象物10によって反射されたテラヘルツ波THz2をワイヤグリッド偏光子164に向けて反射可能な反射面を備える光学素子とを別個に備えていてもよい。
テラヘルツ波計測装置100は、直角プリズム170の第2面172とテラヘルツ波吸収体180の光学面181との間の距離dを調整可能な調整機構を備えていてもよい。調整機構は、直角プリズム170及びテラヘルツ波吸収体180の少なくとも一方を移動させることで、距離dを調整してもよい。調整機構が距離dを調整することで、第2面172を透過するエバネッセント光EVAの強度I(つまり、実質的には、長波長成分の減衰量又は除去量)が好適に調整される。
ワイヤグリッド偏光子164は、テラヘルツ波発生素子110から出射したテラヘルツ波THz1を直角プリズム170に向けて反射する一方で、直角プリズム170から伝搬してくるテラヘルツ波THz2をテラヘルツ波検出素子130に向けて透過してもよい。テラヘルツ波計測装置100は、ワイヤグリッド偏光子164に加えて又は代えて、テラヘルツ波発生素子110から出射したテラヘルツ波THz1を反射直角プリズム170に向けて導くと共に、直角プリズム170から伝搬してくるテラヘルツ波THz2をテラヘルツ波検出素子130に向けて導く光学素子を備えていてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うテラヘルツ波計測装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10 計測対象物
100 テラヘルツ波計測装置
101 パルスレーザ装置
110 テラヘルツ波発生素子
120 光学遅延機構
121 再帰反射鏡
122 回転基板
130 テラヘルツ波検出素子
150 制御部
151 ロックイン検出部
152 信号処理部
LB1 ポンプ光
LB2 プローブ光
THz テラヘルツ波

Claims (8)

  1. テラヘルツ波を発生する発生手段と、
    前記発生手段が発生させた前記テラヘルツ波を計測対象物に向けて全反射させる反射面を備える第1光学手段と、
    前記反射面から所定距離だけ離れた位置において前記反射面の少なくとも一部に対向し、前記反射面を透過した前記テラヘルツ波である透過光が前記第1光学手段に向かって伝搬することを防止する第2光学手段と
    を備えることを特徴とするテラヘルツ波計測装置。
  2. 前記第2光学手段は、前記反射面に対向し且つ前記反射面に平行である光学面を備える
    ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波計測装置。
  3. 前記第2光学手段は、前記透過光の少なくとも一部を吸収する若しくは透過する又は前記第1光学手段に向かう方向とは異なる方向に反射する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテラヘルツ波計測装置。
  4. 前記透過光は、エバネッセント光である
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のテラヘルツ波計測装置。
  5. 前記発生手段は、第1の偏光の前記テラヘルツ波を発生し、
    前記発生手段が発生させた前記第1の偏光の前記テラヘルツ波を、前記反射面に導く第3光学手段を更に備え、
    前記第1光学手段の前記反射面は、(i)前記第1の偏光の前記テラヘルツ波を前記計測対象物に向けて反射することで、前記第1の偏光の前記テラヘルツ波を第2の偏光の前記テラヘルツ波に変換し、(ii)前記計測対象物によって反射された前記第2の偏光の前記テラヘルツ波を前記第3光学手段に向けて反射することで、前記第2の偏光の前記テラヘルツ波を第3の偏光の前記テラヘルツ波に変換し、
    前記第1光学手段から伝搬してくる前記第3の偏光の前記テラヘルツ波を検出する検出手段を更に備え、
    前記第3光学手段は、前記第1光学手段から伝搬してくる前記第3の偏光の前記テラヘルツ波を、前記検出手段に導き、
    前記第3光学手段は、前記第1の偏光及び前記第3の偏光のうちのいずれか一方を反射し、前記第1の偏光及び前記第3の偏光のうちのいずれか他方を透過する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のテラヘルツ波計測装置。
  6. 前記第1の偏光は、第1の方向に沿って振動する電場成分を有する第1の直線偏光であり、
    前記第2の偏光は、円偏光であり、
    前記第3の変更は、前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動する電場成分を有する第2の直線偏光である
    ことを特徴とする請求項5に記載のテラヘルツ波計測装置。
  7. テラヘルツ波を発生する発生手段と、
    前記発生手段が発生させた前記テラヘルツ波を計測対象物に向けて反射させる反射面を備える第1光学手段と、
    前記反射面から所定距離だけ離れた位置において前記反射面の裏側の少なくとも一部に対向し、テラヘルツ波が前記第1光学手段に向かって伝搬することを防止する第2光学手段と
    を備えることを特徴とするテラヘルツ波計測装置。
  8. テラヘルツ波を発生する発生手段と、
    前記発生手段が発生させた前記テラヘルツ波を計測対象物に向けて反射させる反射面を備える第1光学手段と、
    前記反射面から所定距離だけ離れた位置において前記反射面の裏側の少なくとも一部に対向し、テラヘルツ波の少なくとも一部を吸収する第2光学手段と
    を備えることを特徴とするテラヘルツ波計測装置。
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