JP6540804B2 - 位置検知システムおよびコンピュータプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、移動局から固定局に到来する無線信号の到来時刻に基づいて移動局の位置を検知する位置検知システムおよびコンピュータプログラムに関するものである。
従来、この種の位置検知システムとして、実時間で移動局の位置を検知するリアルタイム位置検知システム(RTLS:Real Time Location System)がある。このRTLSにおける一般的な技術として、到来時刻差(TDOA:Time Difference of Arrival)の情報を用いたTDOA技術がある。TDOA技術では、既知の位置にある複数の固定局と位置計算サーバーにより、移動局の位置が算出される。一般的に固定局は時刻同期されており、それぞれの固定局は移動局が送出した無線信号を受信する。無線信号にはパルスもしくはそれに準じる波形の信号が用いられる。移動局の位置は、各固定局が受信した時刻の差から算出される。このようなTDOA技術を用いたRTLSとしては、例えば、特許文献1に開示される位置通知システムがある。
また、各測定のたびに受信される無線信号のキャリア位相の変化から、各測定回間の物体の移動量、つまり、物体位置の相対的な変化量を算出する、位相によるトラッキング技術も、位置検知に用いられている。このような位置検知技術は、例えば、特許文献2に開示される揺動構造物の動きを判定するシステムに用いられている。このシステムでは、位置を把握および固定した少なくとも3つの基準トランスミッタが設けられ、揺動構造物にレシーバが取り付けられる。これらの基準トランスミッタは送信信号を規定のキャリア周波数で送信し、レシーバはこの送信信号を受信する。評価装置は、レシーバで受信した各キャリアの位相を各基準トランスミッタの位相と比較し、位相差を判定する。そして、この位相差から揺動構造物の位置の変化を計算する。
特開2008−228163号公報 特表2012−506032号公報
RTLSにおける一般的なTDOA技術においては、パルス信号の受信時刻を測定する分解能を上げるため、パルス信号のパルス幅はなるべく短いのが望ましい。しかし、パルス幅を短くすると、信号の占有帯域幅が広くなり、電波法などの観点から実運用上の問題がある。IEEE Std 802.15.4-2011で標準化の検討が行われているUWB(Ultra Wide Band)をインフラ(物理層)に用いた高速センサネットワークによるTDOAにおいても、帯域幅は通常1GHz程度になり、距離分解能で30cm程度である。しかし、UWBは規制により、国によって送信出力や屋外使用等に制限があり、適用することが出来ない場合がある。一方、UWBを用いず、例えば、2.4GHz帯のISM(Industry Science Medical)バンドを用いる場合には、帯域幅が略80MHz程度になり、これは距離分解能で換算すると数メートル程度の誤差を生じる。
また、位相によるトラッキング技術においては、使用周波数にもよるが、一般的にキャリアの位相からパルス信号の時刻からよりも高い分解能を得ることが出来る。例えば、2.4GHz帯のISMバンドの場合、波長は略12cm程度であり、仮に20°程度の測定誤差を見込んでも、距離分解能で換算すると1cm以下の精度が得られる。一方で、位相は360°毎に同じ状態となる。例えば、上記ISMバンドの場合には、略12cmごとに同じ状態となる。このため、そのうちのどの位置にあるか、絶対的な位置を知ることは出来ない。
上記の特許文献2の位置検知においては、位相のみから得られるのは、物体の移動の変化量である。したがって、初期位置が既知であれば、物体の移動の変化量から物体の位置を算出出来るが、物体の急激な移動等によって、位相が360°の整数倍異なる位置に検知される可能性がある。特許文献2では、これを「測定位相値の2π曖昧性」として指摘している。これを避けるためには、測定回間の物体の移動量が、位相π以下、すなわち半波長以下に収まるように、測定間隔を密にする必要がある。これは、測定の時間間隔が非常に短くなれば、その短い時間の間には、物体は半波長以上移動しない、という理屈に基づく。なおかつそれでも位相が2πずれてしまった場合には、そのために、特殊な操作が必要である。
したがって、この位相による位置検知方式では、ターゲットとする移動局が速く移動する様な用途では、非常に短い測定時間間隔で測定を行うようにシステムを設計する必要がある。しかし、これにより測定頻度が多くなるため、消費電力が大きくなったり、複数ターゲットの追尾では信号衝突(コリジョン)の発生頻度が高くなる、等の問題が生じる。また、初期位置を何らかの手段で知る必要があり、また、移動局が半波長を越えて移動してしまった場合にも、その状態を何らかの手段で知り、それを補正する必要がある。
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
設置位置が既知の少なくとも3つの固定局と、各固定局に位置演算の更新周期毎に無線信号を送信する1または複数の移動局と、各固定局に移動局から到来する無線信号の到来時刻に基づいて移動局の位置をコンピュータによって演算する演算装置とを備える位置検知システムにおいて、
移動局は、各更新周期毎に所定の時間間隔をあけて複数回無線信号を送信し、
各固定局は、更新周期毎に到来する複数回のうちの少なくとも1回の無線信号の到来時刻と共に複数回のうちの2回以上の無線信号の搬送波位相を検出し、
演算装置は、
少なくとも1回の無線信号の到来時刻から固定局間における無線信号の到来時刻差を算出する時刻差算出手段と、2回以上の無線信号のうちのある回の無線信号の搬送波位相から求まる固定局間における無線信号の搬送波位相差と他の回の無線信号の搬送波位相から求まる固定局間における無線信号の搬送波位相差との差分を算出する位相差算出手段と、到来時刻差および搬送波位相差の差分から予測される次の更新周期における無線信号の到来時刻を、システムの状態値が含む誤差を状態測定値に基づいて修正してより確かなシステムの状態値を予測する誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う誤差低減手段とから構成され、誤差低減アルゴリズムを使い、前の更新周期における無線信号の到来時刻から次の更新周期における無線信号の到来時刻を無線信号の搬送波位相差を用いて予測する予測手段と、
予測手段によって予測される無線信号の到来時刻を用いて移動局の位置を演算する位置演算手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、1または複数の移動局から位置演算の各更新周期毎に所定の時間間隔をあけて複数回送信されて、設置位置が既知の少なくとも3つの各固定局で受信される、複数回のうちの少なくとも1回の無線信号の到来時刻、および、複数回のうちの2回以上の前記無線信号の搬送波位相を入力する入力ステップと、
システムの状態値が含む誤差を状態測定値に基づいて修正してより確かなシステムの状態値を予測する誤差低減アルゴリズムを使い、前の更新周期における無線信号の到来時刻から次の更新周期における無線信号の到来時刻を無線信号の搬送波位相差を用いて予測すると共に、少なくとも1回の無線信号の到来時刻から固定局間における無線信号の到来時刻差を算出し、2回以上の無線信号のうちのある回の無線信号の搬送波位相から求まる固定局間における無線信号の搬送波位相差と他の回の無線信号の搬送波位相から求まる固定局間における無線信号の搬送波位相差との差分を算出し、到来時刻差および搬送波位相差の差分から予測される次の更新周期における無線信号の到来時刻を誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う予測ステップと、
予測される無線信号の到来時刻を用いて移動局の位置を演算する演算ステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムを構成した。
本構成によれば、位置検知システムにおける演算装置は、予測手段により、次の更新周期における無線信号の到来時刻を前の更新周期における無線信号の到来時刻から無線信号の搬送波位相差を用いて予測する。そして、予測手段によって予測される無線信号の到来時刻を用いて、位置演算手段によって移動局の位置を演算する。また、コンピュータプログラムは、入力ステップで、各固定局で受信される無線信号の到来時刻および搬送波位相をコンピュータに入力させ、予測ステップで、次の更新周期における無線信号の到来時刻を前の更新周期における無線信号の到来時刻から無線信号の搬送波位相差を用いてコンピュータに予測させる。そして、演算ステップで、予測される無線信号の到来時刻を用いて移動局の位置をコンピュータに演算させる。
したがって、移動局の位置演算に用いられる無線信号の到来時刻は、時刻精度よりも数桁オーダーで精度の高い搬送波位相差を用いて予測される。このため、移動局の位置は、信号の占有帯域幅が広くて距離分解能の高いUWBを用いない場合でも、高い精度で演算される。また、誤差低減アルゴリズムを使って高い精度で予測される到来時刻の絶対値に基づいて移動局の絶対位置が算出されるので、移動局の初期位置を事前に知る必要はない。また、万が一位相が360°の整数倍ずれて誤差が生じた場合においても、誤差低減アルゴリズムにより逐次予測処理を更新し続けることで、位相ずれは修正される。このため、従来のように、移動局が半波長を越えて移動してしまった場合に、その状態を何らかの手段で知り、それを補正するといった処理は不要になる。
また、本構成によれば、各更新周期毎に所定の時間間隔をあけて移動局から複数回送信される無線信号のうちの少なくとも1回の無線信号の到来時刻から、固定局間における無線信号の到来時刻差が算出される。また、2回以上の無線信号のうちのある回の無線信号の搬送波位相から求まる固定局間における無線信号の搬送波位相差と、他の回の無線信号の搬送波位相から求まる当該搬送波位相差との差分が算出される。次の更新周期における無線信号の到来時刻は、算出された到来時刻差および搬送波位相差の差分から、誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとして予測される。
したがって、各更新周期毎に移動局から複数回送信される無線信号の時間間隔を、移動局の移動による位相の不確定性を避けるための時間間隔よりも短く調整することで、各更新周期の時間間隔を、移動局の移動による位相の不確定性を避けるための時間間隔よりも長くすることが出来る。このため、本構成によれば、移動局の初期位置を事前に知る必要なく、移動局の位置が高い精度で検知される上記作用効果に加え、移動局による無線信号の送信頻度を減らすことが出来、システムの低消費電力化を図ることが出来る作用効果が奏される。さらに、無線信号の送信頻度を減らすことが出来るため、複数の移動局から信号が送信される場合においても、コリジョンの発生頻度を低減できる作用効果が奏される。また、本構成においては、複数回送信される無線信号のうちの少なくとも2回以上の無線信号の到来時刻から、少なくとも2つ以上の到来時刻差を各固定局間について算出し、到来時刻差の平均値を用いるように構成することが可能であり、この構成によれば、到来時刻差の誤差を低減することが可能である。
また、本発明の位置検知システムおよびコンピュータプログラムは、各更新周期毎に複数回送信される無線信号の所定の時間間隔が、移動局の移動によって当該所定の時間間隔の間に変化する搬送波位相差の差分が180°以上にならない時間間隔であることを特徴とする。
本構成によれば、複数回送信される無線信号の所定の時間間隔の間に搬送波位相差の差分が移動局の移動によって180°以上になり、位相の不確定性によって移動局の位置が特定できなくなることを避けることが出来る。このため、無線信号の到来時刻は誤差低減アルゴリズムによって極めて高い精度で予測され、移動局の位置は極めて高い精度で検知されるようになる。
また、本発明の位置検知システムおよびコンピュータプログラムは、移動局から所定の時間間隔をあけて複数回送信される無線信号の送信回数が2回であることを特徴とする。
本構成によれば、無線信号の送信回数を複数回の最小値である2回に限定することで、システムの消費電力およびコリジョンの発生頻度を最も低減出来る。
また、本発明の位置検知システムおよびコンピュータプログラムは、誤差低減アルゴリズムが、タイムステップが進む度にシステムの状態測定値を入手し、入手した状態測定値を1タイムステップ前に予測したシステムの状態予測値と比較して次のタイムステップの状態予測値を修正することで、より確かなシステムの状態値を予測するカルマンフィルタのアルゴリズムであることを特徴とする。
本構成によれば、比較的簡単な既知のアルゴリズムを使って、無線信号の到来時刻を容易かつ精度よく予測することが出来る。
本発明によれば、信号の占有帯域幅が広くて距離分解能の高いUWBを用いない場合でも、高い精度で移動局の位置を演算することが出来る、また、システムの消費電力およびコリジョンの発生頻度を低減出来る、位置検知システムおよびコンピュータプログラムを提供することが可能になる。
本発明の実施形態による位置検知システムの基本的な構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態による位置検知システムで、移動局から各固定局へ送信される測位パルスの送信タイミングを示すタイミングチャート図である。 本発明の第2の実施形態による位置検知システムで、移動局から各固定局へ送信される測位パルスの送信タイミングを示すタイミングチャート図である。
次に、本発明の位置検知システムおよびコンピュータプログラムを実施するための形態について、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による位置検知システムの基本的な構成を示すブロック図である。
本実施形態による位置検知システムのハードウエア構成は、一般的なTDOAによるRTLSと略同様な構成をしており、少なくとも3つの固定局(アンカー)1,2,3と、移動局(ターゲット)11と、位置計算サーバ21とにより構成される。移動局11は、各固定局1,2,3に位置演算の更新周期毎に繰り返し測位パルスPを無線信号として送信する。位置計算サーバ21は、各固定局1,2,3に移動局11から到来する無線信号の到来時刻に基づいて、移動局11の位置をコンピュータによって演算する演算装置であり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(読み出し専用メモリ)、およびRAM(書き込み読みだし可能メモリ)等を備えて構成される。CPUは、ROMに記憶されたコンピュータプログラムに従い、RAMを一時記憶作業領域として種々の演算制御を行う。本実施形態による位置検知システムは、ROMに記憶されたコンピュータプログラムが一般的なTDOAによるRTLSと異なる。
各固定局1,2,3と位置計算サーバ21は有線22もしくは無線により接続され、各固定局1,2,3間は時刻および位相の同期がとられる。位置計算サーバ21は、固定局1,2,3のうちの1つが兼ねても構わない。各固定局1,2,3は、移動局11の位置を取得したいエリア(位置取得エリア)において移動局11からの無線信号を受信できるように適切に配置され、その設置位置が既知である。位置を取得したい移動局11は位置取得エリア内に1つもしくは複数存在し、位置計算サーバ21は、移動局11が位置取得エリア内を移動している状態を追尾しながら位置検知する。
図2は、第1の実施形態による位置検知システムで、移動局11から各固定局1,2,3へ送信される測位パルスPの送信タイミングを示すタイミングチャート図である。同図に示すように、測位パルスPは、時間間隔dtの位置演算の更新周期で、各時間k,k+1,k+2,k+3,…に離散的に送出される。第1の実施形態では、測位パルスPの送信周期は位置演算の更新周期dtと同じである。各固定局1,2,3では、いずれの送信タイミングについても、測位パルスPの到来時刻tと搬送波位相φを測定し、更新周期毎に到来する測位パルスPの到来時刻tと共に搬送波位相φを検出する。
位置計算サーバ21は、システムの状態値が含む誤差を状態測定値に基づいて修正してより確かなシステムの状態値を予測する誤差低減アルゴリズムを使い、前の時刻k−1の更新周期における測位パルスPの到来時刻tから次の時刻kの更新周期における測位パルスPの到来時刻tを測位パルスPの搬送波位相差Δφを用いて予測する予測手段と、予測手段によって予測される測位パルスPの到来時刻tを用いて移動局11の位置を演算する位置演算手段とを備える。
本実施形態では、予測手段は、時刻差算出手段と、位相差算出手段と、誤差低減手段とから構成される。予測手段を構成するこれら各手段、および上記の位置演算手段は、CPU、ROMおよびRAMのハードウエア資源によって構成され、ROMに記憶された後述のプログラムが実行されることで機能する。
n,mをそれぞれ1,2,3の異なる値としたとき、時刻差算出手段は、固定局n,mで時刻kにそれぞれ測定される測位パルスPの到来時刻t,tから、固定局n,m間における測位パルスPの到来時刻差tnmを次の(1)式により算出する。
nm=t−t …(1)
位相差算出手段は、固定局n,mで時刻kにそれぞれ測定される搬送波位相φ (k),φ (k)、および時刻k−1にそれぞれ測定される搬送波位相φ (k−1),φ (k−1)から、時刻kの更新周期の固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (k)(=φ (k)−φ (k))と、時刻k−1の1更新周期前の固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (k−1)(=φ (k−1)−φ (k−1))との差分Δφnmを次の(2)式により算出する。
Δφnm=φnm (k)−φnm (k−1)=(φ (k)−φ (k))−(φ (k−1)−φ (k−1)) …(2)
誤差低減手段は、到来時刻差tnmおよび搬送波位相差の差分Δφnmから予測される、時刻k+1の次の更新周期における測位パルスPの到来時刻差tnm’を、上記の誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う。
ROMには、移動局11から更新周期毎に繰り返し送信されて設置位置が既知の少なくとも3つの各固定局1,2,3で受信される測位パルスPの到来時刻tおよび搬送波位相φを入力する入力ステップと、上記の誤差低減アルゴリズムを使い、前の更新周期における測位パルスPの到来時刻tから次の更新周期における測位パルスPの到来時刻tk+1を測位パルスPの搬送波位相差Δφを用いて予測する予測ステップと、予測される測位パルスPの到来時刻tを用いて移動局11の位置を演算する演算ステップとをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。
本実施形態では、上記の予測ステップで、時刻kの更新周期の固定局n,m間における測位パルスPの到来時刻差tnmを上記の(1)式により算出し、時刻kの更新周期の固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (k)(=φ (k)−φ (k))と、時刻k−1の1更新周期前の固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (k−1)(=φ (k−1)−φ (k−1))との差分Δφnmを上記の(2)式により算出する。そして、到来時刻差tnmおよび搬送波位相差の差分Δφnmから予測される、時刻k+1の次の更新周期における測位パルスPの到来時刻差tnm’を、上記の誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う。
時刻k+1の次の更新周期における測位パルスPの到来時刻差tnm’は、測位パルスPの搬送波の角周波数をωとすると、次の(3)式で表される値の付近にあると予測される。
nm’=tnm+dt×(Δφnm/ω) …(3)
そして、時刻k+1の次の更新周期に実際に測定された到来時刻差tnmの値と(3)式で予測する値を比較し、上記の誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとする演算を行うことで、より精度の高い到来時刻差tnmを推測することが出来る。この逐次処理を、各更新タイミング毎に逐次更新処理することで、より精度の高い到来時刻差tnmを得ることが出来る。本実施形態では、この予測と測定に基づく上記の誤差低減アルゴリズムとして、既知のカルマンフィルタのアルゴリズムを使い、更新周期にしたがってタイムステップが進む度にシステムの状態測定値を入手し、入手した状態測定値を1タイムステップ前に予測したシステムの状態予測値と比較して次のタイムステップの状態予測値を修正することで、より確かなシステムの状態値を予測する。
カルマンフィルタのアルゴリズムを、本実施形態の固定局n,m間の搬送波位相差Δφnmに適用する場合における状態方程式の例を次の(4)式、観測方程式の例を(5)式に行列を用いて示す。
Figure 0006540804
ここで、搬送波位相差Δφnmにドット(・)が付された記号は搬送波位相差Δφnmの1階微分を表し、また、(4)式および(5)式の右辺第2項におけるσwt,σWφ,σvt,σvφはそれぞれガウス分布に従うものとして仮定した、雑音を表す。
カルマンフィルタでは、タイムステップを1つ進めるたびに予測(Predict)と更新(Posteriori)の2つの処理を行う。予測の処理では、上記の(4)式に従い、時刻k−1の前のタイムステップにおけるシステムの状態予測値から、時刻kの現在のタイムステップにおけるシステムの状態値を計算して推定する。更新の処理では、時刻kの現在のタイムステップにおけるシステムの状態測定値を入手し、推定したシステムの状態値を上記の(5)式に従って修正して、より正確なシステムの状態値を予測する。
搬送波位相φが360°(=2π)の整数倍ずれて位相の不確定性が生じるのを避けるため、本実施形態では、更新周期の時間間隔dtは、移動局11の想定する最大移動速度での移動によって時間間隔dtの間に変化する搬送波位相差の差分Δφnmが、誤差を考慮しても180°(=π)以上にならない時間間隔に設定される。
移動局11の位置演算は、上述のように算出した測位パルスPの到来時刻差tnm、および、搬送波位相差の差分Δφnmからカルマンフィルタによってより正確に予測される測位パルスPの到来時刻差tnm’に基づき、一般的なTDOA技術の計算手法に従って行われる。
このような本実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラによれば、移動局11の位置演算に用いられる測位パルスPの到来時刻tは、時刻精度よりも数桁オーダーで精度の高い搬送波位相差Δφを用いて予測される。このため、移動局11の位置は、信号の占有帯域幅が広くて距離分解能の高いUWBを用いない場合でも、高い精度で演算される。また、誤差低減アルゴリズムを使って高い精度で予測される到来時刻tの絶対値に基づいて移動局11の絶対位置が算出されるので、移動局11の初期位置を事前に知る必要はない。また、万が一位相が360°の整数倍ずれて誤差が生じた場合においても、誤差低減アルゴリズムにより逐次予測処理を更新し続けることで、位相ずれは修正される。このため、従来のように、移動局が半波長を越えて移動してしまった場合に、その状態を何らかの手段で知り、それを補正するといった処理は不要になる。
また、本実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラによれば、更新周期の時間間隔dtが搬送波位相差の差分Δφnmが180°以上にならない時間間隔に設定されるので、更新周期の時間間隔dtの間に差分Δφnmが移動局11の移動によって180°以上になり、位相の不確定性によって移動局11の位置が特定できなくなることを避けることが出来る。このため、測位パルスPの到来時刻差tnmは誤差低減アルゴリズムによって極めて高い精度で予測され、移動局11の位置は極めて高い精度で検知されるようになる。
また、本実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラムは、誤差低減アルゴリズムがカルマンフィルタのアルゴリズムであるため、比較的簡単な既知のアルゴリズムを使って、測位パルスPの到来時刻差tnmを容易かつ精度よく予測することが出来る。
次に、本発明の第2の実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラムについて、説明する。
第2の実施形態による位置検知システムの基本的な構成は、第1の実施形態による位置検知システムと同じ図1に示すブロック図で表される。しかし、移動局11は、図3のタイミングチャート図に示すように、時間間隔dtの位置演算の更新周期毎に繰り返し、所定の時間間隔dpをあけて、複数回測位パルスPを送信する。本実施形態では、時間間隔dtの各更新周期毎に2回測位パルスPを送信する。各固定局1,2,3は、複数回のうちの少なくとも1回の測位パルスPの到来時刻tと共に、複数回のうちの2回以上の測位パルスPの搬送波位相φを検出する。本実施形態では、2回の測位パルスPの到来時刻tと共に、2回の測位パルスPの搬送波位相φを各更新周期毎に測定する。
ここで、1回目の測位パルスPをf、2回目の測位パルスPをsとして、固定局1,2,3をn(n=1,2,3)とするとき、1回目の測位パルスfについての到来時刻tと搬送波位相φの測定結果を到来時刻t (f),搬送波位相φ (f)、2回目の測位パルスsについての測定結果を到来時刻t (s),搬送波位相φ (s)と表記することにする。
位置計算サーバ21は、第2の実施形態でも第1の実施形態と同様な誤差低減アルゴリズム、つまり、カルマンフィルタのアルゴリズムを使い、前の時刻k−1の更新周期における測位パルスPの到来時刻tから次の時刻kの更新周期における測位パルスPの到来時刻tを測位パルスPの搬送波位相差Δφを用いて予測する予測手段と、予測手段によって予測される測位パルスPの到来時刻tを用いて移動局11の位置を演算する位置演算手段とを備えて構成される。しかし、第2の実施形態で予測手段を構成する時刻差算出手段、位相差算出手段および誤差低減手段は、第1の実施形態と次のように相違する。
第2の実施形態における時刻差算出手段は、複数回のうちの少なくとも1回、本実施形態では2回の測位パルスPの到来時刻tから、固定局nと固定局m(m=1,2,3≠n)との間における測位パルスPの到来時刻差tnmを次の(6)式により算出する。
nm={(t (f)−t (f))+(t (s)−t (s))}/2 …(6)
到来時刻差tnmは、(6)式のように、1回目の到来時刻差(t (f)−t (f))と2回目の到来時刻差(t (s)−t (s))の平均値にすることが望ましいが、いずれか一方の到来時刻差(t (f)−t (f))または(t (s)−t (s))としても構わない。平均値を採用することが望ましい理由は、誤差を減じることが期待されるからである。到来時刻差tnmは、固定局1,2,3間の各組み合わせについて算出される。
第2の実施形態における位相差算出手段は、複数回のうちの2回以上の測位パルスP、本実施形態では2回の測位パルスPのうちの1回目の測位パルスPの搬送波位相φ (f),φ (f)から求まる、固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (f)と、他の回の2回目の測位パルスPの搬送波位相φ (s),φ (s)から求まる、固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (s)との差分Δφnmを次の(7)式により算出する。
Δφnm=φnm (s)−φnm (f)=(φ (s)−φ (s))−(φ (f)−φ (f)) …(7)
この差分Δφnmも、固定局1,2,3間の各組み合わせについて算出される。
第2の実施形態における誤差低減手段は、上記の到来時刻差tnmおよび搬送波位相差の差分Δφnmから予測される、時刻k+1の次の更新周期における測位パルスPの到来時刻差tnm’を、カルマンフィルタのアルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う。
位置計算サーバ21のROMには、第1の実施形態と同様に、移動局11から更新周期毎に繰り返し送信されて設置位置が既知の少なくとも3つの各固定局1,2,3で受信される測位パルスPの到来時刻tおよび搬送波位相φを入力する入力ステップと、カルマンフィルタのアルゴリズムを使い、前の更新周期における測位パルスPの到来時刻tから次の更新周期における測位パルスPの到来時刻tk+1を測位パルスPの搬送波位相差Δφを用いて予測する予測ステップと、予測される測位パルスPの到来時刻tを用いて移動局11の位置を演算する演算ステップとをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。
しかし、第2の実施形態では、上記の入力ステップで、各更新周期毎に所定の時間間隔dpをあけて移動局11から複数回送信される測位パルスPから各固定局1,2,3が検出する、複数回のうちの少なくとも1回の測位パルスPの到来時刻t、および、複数回のうちの2回以上の測位パルスPの搬送波位相φを入力する。本実施形態では、各更新周期毎に2回送信される測位パルスPから各固定局1,2,3が検出する、2回の測位パルスPの到来時刻t、および、2回の測位パルスPの搬送波位相φを入力する。
また、上記の予測ステップで、2回の測位パルスPの到来時刻tから固定局n,m間における測位パルスPの到来時刻差tnmを上記の(6)式により算出し、2回の測位パルスPのうちの1回目の測位パルスPの搬送波位相φから求まる固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (f)(=φ (f)−φ (f))と、他の回の2回目の測位パルスPの搬送波位相φから求まる固定局n,m間における測位パルスPの搬送波位相差φnm (s)(=φ (s)−φ (s))との差分Δφnmを上記の(7)式により算出する。そして、到来時刻差tnmおよび搬送波位相差の差分Δφnmから予測される、時刻k+1の次の更新周期における測位パルスPの到来時刻差tnm’をカルマンフィルタのアルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う。
時刻kの更新タイミングにおける到来時刻差tnmと搬送波位相差の差分Δφnmに基づくと、時刻k+1の次の更新タイミングにおける測位パルスPの到来時刻差tnm’は、搬送波の角周波数をωとすると、次の(8)式で表される値の付近にあると予測される。
nm’=tnm+(dt/dp)×(Δφnm/ω) …(8)
そして、時刻k+1の次の更新周期に実際に測定された到来時刻差tnmの値と(8)式で予測する値を比較し、カルマンフィルタのアルゴリズムによってより確かなものとする演算を行うことで、より精度の高い到来時刻差tnmを推測することが出来る。この逐次処理を、各更新タイミング毎に逐次更新処理することで、より精度の高い到来時刻差tnmを得ることが出来る。
カルマンフィルタのアルゴリズムを、本実施形態の固定局n,m間の搬送波位相差Δφnmに適用する場合における状態方程式の例を次の(9)式、観測方程式の例を(10)式に行列を用いて示す。
Figure 0006540804
ここで、(9)式および(10)式中における各記号は(4)式および(5)式におけるものと同様である。予測(Predict)の処理では、上記の(9)式に従い、時刻k−1の前のタイムステップにおけるシステムの状態予測値から、時刻kの現在のタイムステップにおけるシステムの状態値を計算して推定する。更新(Posteriori)の処理では、時刻kの現在のタイムステップにおけるシステムの状態測定値を入手し、推定したシステムの状態値を上記の(10)式に従って修正して、より正確なシステムの状態値を予測する。
本実施形態でも、搬送波位相φが360°(=2π)の整数倍ずれて位相の不確定性が生じるのを避けるため、各更新周期毎に2回送信される測位パルスPの時間間隔dpは、移動局11の想定する最大移動速度での移動によって時間間隔dpの間に変化する搬送波位相差の差分Δφnmが、誤差を考慮しても180°(=π)以上にならない時間間隔に設定される。一方で、予測(predict)における位相の誤差はdt/dpで拡大するため、より高い位置検出精度を確保するために、時間間隔dpは、差分Δφnmが180°以上にならない時間間隔の条件を満たした上で、なるべく大きな値であることが望ましい。
本実施形態でも、移動局11の位置演算は、上述のように算出した測位パルスPの到来時刻差tnm、および、搬送波位相差の差分Δφnmからカルマンフィルタによってより正確に予測される測位パルスPの到来時刻差tnm’に基づき、一般的なTDOA技術の計算手法に従って行われる。
このような第2の実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラムによっても、移動局11の位置演算に用いられる測位パルスPの到来時刻tは、時刻精度よりも数桁オーダーで精度の高い搬送波位相差Δφを用いて予測される。このため、第1の実施形態と同様、移動局11の位置は、信号の占有帯域幅が広くて距離分解能の高いUWBを用いない場合でも、高い精度で演算される。また、誤差低減アルゴリズムを使って高い精度で予測される到来時刻tの絶対値に基づいて移動局11の絶対位置が算出されるので、移動局11の初期位置を事前に知る必要はない。また、万が一位相が360°の整数倍ずれて誤差が生じた場合においても、誤差低減アルゴリズムにより逐次予測処理を更新し続けることで、位相ずれは修正され、移動局が半波長を越えて移動してしまった場合に、その状態を何らかの手段で知り、それを補正するといった処理は不要になる。
また、第2の実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラによれば、各更新周期毎に複数回送信される測位パルスPの時間間隔dpが、搬送波位相差の差分Δφnmが180°以上にならない時間間隔に設定されるので、時間間隔dpの間に差分Δφnmが移動局11の移動によって180°以上になり、位相の不確定性によって移動局11の位置が特定できなくなることを避けることが出来る。このため、第2の実施形態でも、測位パルスPの到来時刻差tnmは誤差低減アルゴリズムによって極めて高い精度で予測され、移動局11の位置は極めて高い精度で検知されるようになる。
また、第2の実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラムでも、誤差低減アルゴリズムがカルマンフィルタのアルゴリズムであるため、比較的簡単な既知のアルゴリズムを使って、測位パルスPの到来時刻差tnmを容易かつ精度よく予測することが出来る。
また、第1の実施形態では、移動局11の移動量が十分に小さい場合、すなわち移動局11の移動速度が遅い場合や、更新周期の時間間隔dtが十分に短い場合について、説明した。しかし、第2の実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラによれば、各更新周期毎に移動局11から複数回送信される測位パルスPの時間間隔dpを、移動局11の移動による位相の不確定性を避けるための時間間隔よりも短く調整することで、各更新周期の時間間隔dtを、移動局11の移動による位相の不確定性を避けるための時間間隔よりも長くすることが出来る。このため、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で奏される上記の作用効果に加え、移動局11による測位パルスPの送信頻度を減らすことが出来、システムの低消費電力化を図ることが出来る作用効果が奏される。すなわち、同容量のバッテリであればシステムの駆動時間を長くすることができる。もしくは同一駆動時間を実現するために必要なバッテリの重量を減らすことが出来る。さらに、測位パルスPの送信頻度を減らすことが出来るため、複数の移動局11から信号が送信されるRTLSを構築する場合においても、コリジョンの発生頻度を低減できる作用効果が奏される。
また、第2の実施形態による位置検知システムおよびコンピュータプログラムは、移動局11から所定の時間間隔dpをあけて複数回送信される測位パルスPの送信回数を、複数回の最小値である2回に限定しているので、システムの消費電力およびコリジョンの発生頻度を最も低減出来る。
なお、第2の実施形態では、測位パルスPの送信回数を上記のように複数回の最小値である2回としたが、3回以上の複数回であっても構わない。測位パルスPの送信回数が多くなるほど、誤差を減じることが出来る。
また、第1および第2の各実施形態では、固定局1,2,3の数を3つとして説明した。しかし、固定局の数は、上記の各実施形態のように2次元(2D)の位置検知であれば3つ以上、3次元(3D)の位置検知であれば4つ以上の任意の数で構わない。数が多ければ冗長性が高まり、固定局の組合せによって複数の位置が検知されるため、これらの位置を考慮することで、さらに位置精度が上がる可能性が高くなる。また、移動局11の数も1つに限らず、複数の移動局をIDなどで識別する手法を併せて用いることで、複数の移動局を追尾・検知するシステムであっても構わない。
また、第1および第2の各実施形態では、TDOAによるRTLSを例としたが、移動局も同期している場合には、TOA(Time of Arrival)のシステムでも、上述した各実施形態による時刻精度向上の手法は、同様に適用が可能である。この場合には、固定局間の時刻差・位相差ではなく、移動局と各固定局の間の送受信時刻差・搬送波位相差に、上記の手法が適用される。
また、第1および第2の各実施形態では、システムの状態値が含む誤差を状態測定値に基づいて修正してより確かなシステムの状態値を予測する誤差低減アルゴリズムを、前の更新周期の状態値から次の更新周期の状態値を予測し、かつ実際に得られた次の更新周期の状態値によってその誤差を修正するカルマンフィルタのアルゴリズムとして説明した。しかし、予測と実測に基づく誤差低減アルゴリズムはカルマンフィルタのアルゴリズムに限られるものではない。例えば、シミュレーションモデルと観測データを逐次的に同化する手法として認知されているパーティクルフィルタや、確率分布を既知として尤度関数と最尤推定量を求め、最尤推定値を計算する最尤推定法などのアルゴリズムを上記の誤差低減アルゴリズムとして使った場合においても、上記の各実施形態と同様な作用効果が奏される。またカルマンフィルタを用いる場合でも、システムの状態空間モデルを表現する状態方程式および観測方程式は、上記の各実施形態に示す各式に限るものでは無い。
また、第1および第2の各実施形態では、一般的なTDOAによるRTLSと同様に、全ての固定局1,2,3が有線22もしくは無線により時刻および位相が同期している場合について、説明した。しかし、位置が固定された基準局から、各固定局1,2,3における測定タイミングと略同一時刻に、各固定局1,2,3に対して基準信号を分配することで、各固定局1,2,3間の同期を有線22もしくは無線によってとる必要がなくなり、システムの構築は容易になる。
この場合、各固定局1,2,3は、同じ周波数の基準クロックで動作するが、それぞれ非同期で独立に動作する。また、移動局11は、移動局用の基準クロックに基づいて、第1の無線信号を測位パルスPとして所定の送信周期で送信する。基準局は、基準局用の基準クロックに基づいて、第2の無線信号を基準信号として送信する。この際、移動局11は、基準局が第2の無線信号を送信するためのトリガ無線信号を送信し、基準局は、このトリガ無線信号を受信したときに第2の無線信号を送信する。各固定局1,2,3は、第1の無線信号を受信して、第1の無線信号の搬送波位相と各固定局1,2,3それぞれの基準クロック位相との位相差を抽出し、また、第2の無線信号を受信して、第2の無線信号の搬送波位相と各固定局1,2,3それぞれの基準クロック位相との位相差を抽出する。
位置計算サーバ21は、移動局11と各固定局1,2,3との間の位相差情報と、基準局と各固定局1,2,3との間の位相差情報とを用いて、各固定局1,2,3における基準クロックの位相オフセットをキャンセルする。つまり、固定局nで得られた位相差情報から固定局mで得られた位相差情報を差し引くことで、移動局11と基準局と固定局n,mとの位相オフセットをキャンセルした、固定局n,m間の搬送波位相差Δφnmを算出する。ここで、位相オフセットとは、移動局11、基準局および各固定局1,2,3が非同期で独立に動作することによって生じる位相のズレを意味する。位相オフセットのこのキャンセルにより、各固定局1,2,3間の同期をとる必要がなくなる。
1,2,3…固定局
11…移動局
21…位置計算サーバ(演算装置)
22…有線
P…測位パルス(無線信号)
dt…更新周期の時間間隔
dp…各更新周期毎の送信時間間隔

Claims (8)

  1. 設置位置が既知の少なくとも3つの固定局と、各前記固定局に位置演算の更新周期毎に無線信号を送信する1または複数の移動局と、各前記固定局に前記移動局から到来する前記無線信号の到来時刻に基づいて前記移動局の位置をコンピュータによって演算する演算装置とを備える位置検知システムにおいて、
    前記移動局は、各更新周期毎に所定の時間間隔をあけて複数回前記無線信号を送信し、
    各前記固定局は、更新周期毎に到来する前記複数回のうちの少なくとも1回の前記無線信号の到来時刻と共に前記複数回のうちの2回以上の前記無線信号の搬送波位相を検出し、
    前記演算装置は、
    少なくとも1回の前記無線信号の到来時刻から前記固定局間における前記無線信号の到来時刻差を算出する時刻差算出手段と、2回以上の前記無線信号のうちのある回の無線信号の搬送波位相から求まる前記固定局間における前記無線信号の搬送波位相差と他の回の無線信号の搬送波位相から求まる前記固定局間における前記無線信号の搬送波位相差との差分を算出する位相差算出手段と、前記到来時刻差および搬送波位相差の前記差分から予測される次の更新周期における前記無線信号の到来時刻を、システムの状態値が含む誤差を状態測定値に基づいて修正してより確かなシステムの状態値を予測する誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う誤差低減手段とから構成され、前記誤差低減アルゴリズムを使い、前の更新周期における前記無線信号の到来時刻から次の更新周期における前記無線信号の到来時刻を前記無線信号の搬送波位相差を用いて予測する予測手段と、
    前記予測手段によって予測される前記無線信号の到来時刻を用いて前記移動局の位置を演算する位置演算手段とを備えることを特徴とする位置検知システム。
  2. 1または複数の移動局から位置演算の各更新周期毎に所定の時間間隔をあけて複数回送信されて、設置位置が既知の少なくとも3つの各固定局で受信される、前記複数回のうちの少なくとも1回の無線信号の到来時刻、および、前記複数回のうちの2回以上の前記無線信号の搬送波位相を入力する入力ステップと、
    システムの状態値が含む誤差を状態測定値に基づいて修正してより確かなシステムの状態値を予測する誤差低減アルゴリズムを使い、前の更新周期における前記無線信号の到来時刻から次の更新周期における前記無線信号の到来時刻を前記無線信号の搬送波位相差を用いて予測すると共に、少なくとも1回の前記無線信号の到来時刻から前記固定局間における前記無線信号の到来時刻差を算出し、2回以上の前記無線信号のうちのある回の無線信号の搬送波位相から求まる前記固定局間における前記無線信号の搬送波位相差と他の回の無線信号の搬送波位相から求まる前記固定局間における前記無線信号の搬送波位相差との差分を算出し、前記到来時刻差および搬送波位相差の前記差分から予測される次の更新周期における前記無線信号の到来時刻を前記誤差低減アルゴリズムによってより確かなものとする演算を行う予測ステップと、
    予測される前記無線信号の到来時刻を用いて前記移動局の位置を演算する演算ステップと
    をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
  3. 各前記更新周期毎に複数回送信される前記無線信号の所定の前記時間間隔は、前記移動局の移動によって所定の前記時間間隔の間に変化する搬送波位相差の前記差分が180°以上にならない時間間隔であることを特徴とする請求項1に記載の位置検知システム。
  4. 前記移動局から所定の時間間隔をあけて複数回送信される前記無線信号の送信回数は2回であることを特徴とする請求項1もしくは請求項3に記載の位置検知システム。
  5. 前記誤差低減アルゴリズムは、タイムステップが進む度にシステムの状態測定値を入手し、入手した状態測定値を1タイムステップ前に予測したシステムの状態予測値と比較して次のタイムステップの状態予測値を修正することで、より確かなシステムの状態値を予測するカルマンフィルタのアルゴリズムであることを特徴とする請求項1もしくは請求項3もしくは請求項4に記載の位置検知システム。
  6. 各前記更新周期毎に複数回送信される前記無線信号の所定の前記時間間隔は、前記移動局の移動によって所定の前記時間間隔の間に変化する搬送波位相差の前記差分が180°以上にならない時間間隔であることを特徴とする請求項2に記載のコンピュータプログラム。
  7. 前記移動局から所定の時間間隔をあけて複数回送信される前記無線信号の送信回数は2回であることを特徴とする請求項2もしくは請求項6に記載のコンピュータプログラム。
  8. 前記誤差低減アルゴリズムは、タイムステップが進む度にシステムの状態測定値を入手し、入手した状態測定値を1タイムステップ前に予測したシステムの状態予測値と比較して次のタイムステップの状態予測値を修正することで、より確かなシステムの状態値を予測するカルマンフィルタのアルゴリズムであることを特徴とする請求項2もしくは請求項6もしくは請求項7に記載のコンピュータプログラム。
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