JP6539815B2 - 可動式防波施設 - Google Patents

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Description

本発明は、必要に応じて水底から水面上に突出する可動式防波堤を複数有する可動式防波施設に関する。
水底に昇降可能な防波装置を設置して、津波が発生した場合や荒天時などには、防波装置を水面上まで突出させて、波の影響を低減する可動式防波堤が提案されている。例えば、特許文献1には、水底面に設けたコンクリートを貫通して水底地盤内に鉛直に挿入固定され、かつ密集状態で基礎コンクリートの表面に上端面を開口させて配列された複数の外筒管と、外筒管に昇降可能に挿入され、かつ下端面が開口し、上端面が閉塞された浮上管と、各浮上管内に気体を供給するための送気管を有する給気装置とを備えた可動式防波堤が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、可動式防波堤として、基端側の回転軸を支点とした扉体の起立により水路または港湾を締切る起伏ゲート式防波堤が記載されている。
特開2004−116131号公報 特開2009−057799号公報
上述したような可動式防波堤において、特許文献2に記載のように、水路または港湾を締切ると、当該防波堤により遮られた波の反射波により水路または港湾の周辺海域の水位が上昇する可能性があり、そのような場合、周辺海域近くの陸地に大波が押し寄せる二次的な影響が生じるおそれがある。
本発明は上述した課題を解決するものであり、可動式防波堤を配置した周辺海域への影響を抑制することのできる可動式防波施設を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明の可動式防波施設は、水底に配置されて前記水底から立ち上がることで波の抵抗となる可動式防波堤を複数有する可動式防波施設において、各前記可動式防波堤の間に、各前記可動式防波堤に向けて進行する波の一部の通過を生じる隙間を設けることを特徴とする。
この可動式防波施設によれば、有事の際、各可動式防波堤に向けて進行する波は、一部が各可動式防波堤に衝突して減衰され、かつ一部が隙間を通過する。このため、波を減衰することができ、かつ各可動式防波堤の隙間に波を通過させることで、可動式防波堤を配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制することができる。しかも、有事の際以外の通常時は、各可動式防波堤は水底に配置されるため、船舶の通過を妨げる事態を防ぐことができる。従って、可動式防波堤の配置箇所に制限が極めて少ない。
また、本発明の可動式防波施設では、前記隙間は、1つの前記可動式防波堤に波が衝突する範囲分を少なくとも有することを特徴とする。
この可動式防波施設によれば、各可動式防波堤の隙間に通過させる波を衝突する波以上とすることで、波を減衰する効果を得ることができるとともに、可動式防波堤を配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制する効果を顕著に得ることができる。
また、本発明の可動式防波施設では、前記隙間を設けて配置した各前記可動式防波堤の陸側に、沖から陸に向けて前記隙間を小さくした複数の可動式防波堤をさらに設けることを特徴とする。
この可動式防波施設によれば、沖側に配置した各可動式防波堤の隙間を通過した波を、陸側に配置した各可動式防波堤により減衰させることができる。
また、本発明の可動式防波施設では、複数の前記可動式防波堤、または単体の前記可動式防波堤を1つの防波ユニットとし、当該防波ユニットを、陸と水との境界線に沿い、かつ隙間を空けて複数配置することを特徴とする。
この可動式防波施設によれば、陸と水との境界線に沿って配置された防波ユニットにより陸側に進行する波を減衰させるとともに、各防波ユニットの隙間に波を通過させることで防波ユニットを配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制することができる。しかも、有事の際以外の通常時は、防波ユニットの各可動式防波堤は水底に配置されるため、船舶の通過を妨げる事態を防ぐことができる。従って、防波ユニットの配置箇所に制限が極めて少ない。
また、本発明の可動式防波施設では、前記防波ユニットを河口付近に配置することを特徴とする。
河口から河川を上って波が進行し河川の水位が上昇する可能性がある。このため、この可動式防波施設によれば、河口付近に防波ユニットを配置することで、河川に波が進行することを抑制でき、かつ各防波ユニットの隙間に波を通過させることで防波ユニットを配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制することができる。しかも、有事の際以外の通常時は、防波ユニットの各可動式防波堤は水底に配置されるため、船舶の通過を妨げる事態や波による河口付近への影響(浸食など)を防ぐことができる。
また、本発明の可動式防波施設では、前記可動式防波堤は、上下に長尺に形成されて水底側に開口部を有して水底地盤内に挿入固定された外筒管と、前記外筒管の内部に挿入されて前記外筒管の長手方向に昇降移動可能に配置されるとともに、自身の内部に供給された気体により浮力を生じて上昇可能に設けられた浮上管と、前記浮上管の内部に気体を供給する気体供給装置とを備えることを特徴とする。
この可動式防波施設によれば、浮上管を上昇させる構成により波が衝突する位置に浮上管を円滑かつ迅速に配置することができる。しかも、上昇した浮上管は、その下端部が外筒管により強固に支持されるため、浮上管に付与される波力を減衰させる効果を顕著に得ることができる。
本発明によれば、可動式防波堤を配置した周辺海域への影響を抑制することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設の平面図である。 図2は、図1のA−A矢視一部断面図である。 図3は、図1のB−B断面図である。 図4は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設の全体構成図である。 図5は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。 図6は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。 図7は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。 図8は、図1のB−B拡大断面図である。 図9は、図8のC−C矢視図である。 図10は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の配列を示す概略平面図である。 図11は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の配列を示す概略平面図である。 図12は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の配列を示す概略平面図である。 図13は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の配列を示す概略平面図である。 図14は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の配列を示す概略平面図である。 図15は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設における配置を示す概略図である。
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
本実施形態に係る可動式防波施設は、海底、川底などの水底に設置されて、例えば、津波や高潮などが発生した場合には、水底から水面上に浮上して、津波や高潮の通過を阻害し、港湾設備などを保護する。
図1は、本実施形態に係る可動式防波施設の平面図である。図2は、図1のA−A矢視一部断面図である。この図2は、本実施形態に係る可動式防波施設の可動式防波堤が浮上した状態を示している。図3は、図1のB−B断面図である。この図3は、本実施形態に係る可動式防波施設の可動式防波堤が水底にある状態、すなわち浮上前の状態を示している。図4は、本実施形態に係る可動式防波施設の全体構成図である。図5〜図7は、本実施形態に係る可動式防波施設における可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
図1〜図3に示すように、可動式防波施設1は、複数の可動式防波堤10と、監視・制御システム施設100とを含んで構成される。図1および図2に示す可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に複数で一列に配置されて、港湾の内側(港内BI)と港湾の外側(港外BO)とを仕切っている。可動式防波堤10は、水底に配置されて水底から立ち上がることで波の抵抗となるもので、外筒管11の内側に浮上管12が配置されるとともに、浮上管12の内部に気体(本実施形態では空気)を供給することによって浮上管12を浮上(上昇)させる構造である。なお、可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に限らず、防波堤(固定式、杭式、浮体式を含む)での間にも設置可能である。また、可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に限らず、複数配置されていてもよい。
それぞれの可動式防波堤10は、各送気管3から空気が送られる。複数の送気管3は、水底に配置される送気管ダクト2にまとめられて、一方の岸壁K2上の監視・制御システム施設100内に備えられる後述の気体供給装置に接続される。そして、有事の際、例えば、津波や高潮などの発生時には、気体供給装置から送気管3を介して、それぞれの可動式防波堤10の浮上管12内へ気体が供給されて、浮上管12が水底から浮上し、浮上管12の一部が水面から突出する。
図2、図3に示すように、可動式防波堤10は、外筒管11(可動式防波堤10の固定部分)と、浮上管12(可動式防波堤10の可動部分)とを有する。外筒管11および浮上管12は、円筒形状の部材であり、鋼管で構成されている。外筒管11および浮上管12は、いずれも防食処理が施されている。なお、外筒管11および浮上管12は、円筒形状に限られるものではない。なお、外筒管11および浮上管12は、鋼管に限らず、例えば炭素繊維で構成されていてもよく、あるいは、外筒管11または浮上管12の一方が鋼管で、他方が炭素繊維で構成されるような異種材料による構造であってもよい。
外筒管11は、上端が開口して上下に長尺に形成され、水底地盤E内に打ち込まれている。外筒管11は、下層部が水底地盤E内に挿入固定され、上層部の周囲に捨石5が敷設されている。この捨石5の上面が水底面GLとなる。外筒管11は、水底側である上端に開口部11aを有する。また、外筒管11は、水底地盤Eに挿入された底部から上記送気管3が差し込まれて、内部に気体出口3aが配置される。
浮上管12は、外筒管11の内部に、外筒管11の開口部11aから、外筒管11の長手方向(管軸方向)に沿って差し込まれ、外筒管11の長手方向に対して昇降可能に配置されている。この浮上管12は、その内部に供給される気体によって浮力を発生して、外筒管11から浮上可能に構成される。具体的に、図3に示すように、浮上管12は、内部に複数の仕切部材(本実施形態では板状の部材)15,16が設けられている(以下、仕切部材15を第1仕切部材15といい、仕切部材16を第2仕切部材16という)。第1仕切部材15は、浮上管12の上方に配置され、第2仕切部材16は、第1仕切部材15の下方に配置される。また、浮上管12は、上端が蓋17によって閉塞されている。そして、浮上管12は、第1仕切部材15、第2仕切部材16、および蓋17によって、内部が複数の部屋に仕切られる。
第1仕切部材15と第2仕切部材16と浮上管12の側壁とで仕切られる空間13は、送気管3から浮上管12の内部に供給された気体を溜めて、浮上管12に浮力を発生させるための空間である。以下、空間13を気室13という。蓋17と第1仕切部材15と浮上管12の側壁とで仕切られる空間CRは、可動式防波堤10の状態を監視したり、送気管3から気体が供給されなかった場合に浮上管12を浮上させたり、浮上した浮上管12を下降させて外筒管11の内部に戻す動作をさせたりするための制御機器20が配置されている。以下、空間CRを機械室CRという。第2仕切部材16は、孔16aを備える。孔16aは、送気管3から浮上管12の内部に供給される気体を気室13へ導く。
浮上管12は、その側壁内面に浮力発生手段14が取り付けられる。浮力発生手段14は、例えば、気泡を有する樹脂、例えば、発泡スチロールなどである。また、浮力発生手段14は、単なる空間に空気や窒素などの気体を充填した構造としてもよい。可動式防波堤10は、有事の際には浮上管12の気室13に気体を供給し、この気体によって浮上管12に浮力を発生させ、浮上管12を外筒管11から浮上させる。浮力発生手段14を浮上管12に取り付けることにより、浮上管12を浮上させる際には、浮上管12を浮上させるために必要な浮力のうち、浮力発生手段14が発生する浮力で不足する分を気体によってまかなえばよい。これによって、浮上管12の内部に供給する気体の量を低減できるので、浮上管12を迅速に浮上させることができる。
浮上管12は、その下端に開口部12aが設けられている。そして、開口部12aの下方に、送気管3の気体出口3aが配置される。なお、送気管3の気体入口は、上述した気体供給装置に接続されている。
気体供給装置は、図4に示すように、気体ボトル104と、気体ボトル104と送気管3との間に設けられる開閉弁110と、電動機103で駆動される圧縮機102とを含んで構成される。これらは、監視・制御システム施設100に備えられる。送気管3の気体入口は、気体供給装置を構成する開閉弁110に接続されている。気体ボトル104は、圧縮機102によって高圧(20MPa程度)の気体が充填される。そして、浮上管12を浮上させる際には、開閉弁110が開かれて、気体ボトル104内の気体が送気管3を通って浮上管12の内部に供給される。気体ボトル104は、それぞれの可動式防波堤10に対して設けられており、本実施形態では、1台の可動式防波堤10に対して2台の気体ボトル104が用意される。なお、それぞれの気体ボトル104に対して個別に送気管3を設け、2本の送気管3を浮上管12の開口部12aの下方に配置してもよい。
1台の気体ボトル104によって、1台の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させることができるが、1台の可動式防波堤10に対して2台の気体ボトル104を用意することで、一方の気体供給系統に何らかの不具合が発生した場合には、もう一方をバックアップとして用いることにより、より確実に浮上管12を浮上させることができる。また、2台の気体ボトル104から1台の可動式防波堤10へ気体を供給することにより、気体ボトル104を単独で用いるよりも迅速に浮上管12を浮上させることができる。なお、1台の気体ボトル104によって、3台の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させるように構成する例として、中央の可動式防波堤10の浮上管12にのみ送気管3で送気し、その両側の可動式防波堤10では、中央の可動式防波堤10よりも浮力発生手段14の体積を大きくしてほぼ中性浮力とし、両側の可動式防波堤10の浮上管12を、中央の浮上管12によって吊り上げるように浮上させる構成にすることが好ましい。このように構成することで、送気管3の数を減少させることが可能になる。また、同様の構成により、1台の気体ボトル104によって、5台の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させるように構成することも可能である。このように、1台の気体ボトル104で複数の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させるように構成してもよい。
電動機103および圧縮機102は、監視・制御装置101によって制御される。監視・制御装置101は、例えば、気体ボトル104内に充填されている気体の圧力を気体圧力センサ111によって取得し、規定の圧力よりも低い場合には電動機103を駆動して圧縮機102を作動させ、規定の圧力になるまで圧縮機102から気体ボトル104内へ気体を充填する。また、監視・制御装置101は、送気管3に設けられた送気管3内の圧力を検出する送気管圧力検出センサ(送気管内圧力検出手段)105から送気管3内の圧力を取得して、送気管3に漏洩箇所があるか否かを監視する。
さらに、監視・制御装置101は、可動式防波堤10の機械室CR内の制御機器20と通信して、可動式防波堤10の状態を監視したり、浮上管12の動きを制御したりする。例えば、浮上した浮上管12を外筒管11内に戻す場合、監視・制御装置101は、制御機器20を介して、気室13と気室13の外部とを接続する送気管の途中に設けられた排気弁18を開く。これによって、気室13内の気体が気室13の外部に放出されるとともに、気室13内の気体が水に置換されて浮上管12の浮力が低下するので、浮上管12は沈降して外筒管11内に収まる。
有事の際、例えば、監視・制御装置101が津波や高潮などの警報を受信した場合、監視・制御装置101は、開閉弁110を開き、図5に示すように、送気管3を介して気体ボトル104内の気体を浮上管12の内部に供給する。送気管3から浮上管12内へ供給された気体は、図5に示すように、第2仕切部材16の孔16aを通って気室13へ入る。気室13の内部の気体によって発生する浮力と、浮力発生手段14によって発生する浮力との和が水中における浮上管12全体の重量を超えると、図6に示すように、浮上管12は、水面WLに向かって外筒管11から浮上を開始する。そして、図7に示すように、浮上管12の一部が水面WL上に突出する。このとき、気室13内の余分な気体は、気室13に設けられた孔D1から排出される。また、機械室CR内の水は、機械室CRに設けられた孔D2から排水される。このようにして、有事の際には、図2に示すように複数の浮上管12が一列に水面WLから突出して防波堤の機能を発揮し、津波や高潮などから港湾設備などを保護する。
図8は、図1のB−B拡大断面図である。この図8は、本実施形態に係る可動式防波施設の可動式防波堤が水底にある状態、すなわち浮上前の状態を示している。図9は、図8のC−C矢視図である。可動式防波堤10は、浮上管12に充電装置および蓄電池が内蔵されている。充電装置および蓄電池は、図には明示しないが、上述した制御機器20に設けられている。また、図8および図9に示すように、可動式防波堤10は、電力受信部21および電力送信部22を有している。
電力受信部21は、浮上管12に設けられており、蓄電池に電力を供給したり、水中通信における送受信をしたりするためのものである。また、電力送信部22は、浮上管12の下降時において電力受信部21に電力を送信したり、水中通信における送受信をしたりするためのものである。これら、電力受信部21および電力送信部22は、互いに対向することで、電磁誘導を利用して電力や通信信号を非接触(例えば0mmを超え30mm程度の隙間を隔て)で伝送する。
電力送信部22は、陸上の監視・制御システム施設100が備える電源(図示せず)と電気的に接続されている。電源は、交流をそのまま、あるいは直流電源をインバータによって交流に変換して、電力送信部22へ送る。電力送信部22は、給電側コイルと給電回路とからなり、電力受信部21は、受電側コイルと受電回路とからなる。すなわち、電力送信部22の給電側コイルへ交流が流れることにより発生する磁界の変化によって、電力受信部21の受電側コイルへ誘導起電力を発生させ、非接触で電源から送られる電力を制御機器20の充電装置へ伝送する。このように、電力送信部22で電気エネルギを磁気エネルギに変換して伝送し、電力受信部21でその磁気エネルギを電気エネルギに変換して、非接触で電力を伝送する。なお、充電装置は、電力受信部21から交流で伝送されてきた電力を直流に変換し、蓄電池へ充電するものである。
電力送信部22は、外筒管11において、水底面GLから所定深さH1で捨石5により埋設された範囲で、外筒管11の側壁が切り欠かれた箇所に設けられている。具体的に、電力送信部22は、外筒管11の側壁が切り欠かれた箇所で、リブなどで補強されたブラケット22aを介して外筒管11に固定されている。このため、電力送信部22は、水底面GLよりも下方に配置されることになる。
電力受信部21は、浮上管12の下降位置(下降により浮上管12の上端が水底面GLと一致する位置)において、浮上管12の上端よりも下方の範囲で浮上管12の側壁が切り欠かれた箇所にて電力送信部22に対向して設けられている。具体的に、電力受信部21は、浮上管12の側壁が切り欠かれた箇所で、リブなどで補強されたブラケット21aを介して浮上管12に固定されている。このため、電力受信部21は、水底面GLよりも下方に配置されることになる。また、電力受信部21は、浮上管12の上端に設けられた蓋17により上方が覆われている。
また、図9において符号23で示す部分は、浮上管12の外壁に長手(水深)方向に沿って設けられ、浮上管12が外筒管11に対して回転する事態を防止する回転防止部材である。かかる回転防止部材23により、電力受信部21と電力送信部22とは、互いに対向する位置が決められることになる。
以下、上述した可動式防波施設1に設けられる可動式防波堤10の要部詳細について図を参照して説明する。図10〜図14は、本実施形態に係る可動式防波施設の可動式防波堤の配列を示す概略平面図である。
本実施形態の可動式防波施設1は、複数の可動式防波堤10を1つの防波ユニットUとして構成される。防波ユニットUは、可動式防波堤10を複数配列したものである。そして、防波ユニットUは、各可動式防波堤10の間に、各可動式防波堤10に向けて進行する波の一部の通過が生じるように、隙間Sが設けられている。隙間Sは、1つの可動式防波堤10の浮上管12に波が衝突する範囲分を少なくとも有する、すなわち、1つの浮上管12の直径と同等以上の間隔を有することが好ましい。
図10に示す防波ユニットUは、沖から陸に向けて矢印Gの方向に波が進行する場合、複数の可動式防波堤10を、波の進行方向Gに対して直交するように1列に配列したものである。従って、各可動式防波堤10に向けて進行する波は、一部が各浮上管12に衝突して減衰され、かつ一部が矢印gに示すように隙間Sを通過して波の進行方向Gと同方向に進行することになる。
図11に示す防波ユニットUは、沖から陸に向けて矢印Gの方向に波が進行する場合、複数の可動式防波堤10を、波の進行方向Gに対して直交するように千鳥状に配列したものである。従って、各可動式防波堤10に向けて進行する波は、一部が各浮上管12に衝突して減衰され、かつ一部が矢印gに示すように隙間Sを通過して矢印Gに対して斜めに進行することになる。図11に示す配列の防波ユニットUでは、隙間Sを通過して矢印Gに対して斜めに進行する波同士が互いに衝突する箇所を有し、これにより互いに衝突した波が減衰されることになる。
また、図11に示す防波ユニットUは、可動式防波堤10の千鳥状の配列を、隙間Sと同等または隙間Sよりも大きい隙間をおき、かつ波の進行方向Gの前後で可動式防波堤10の千鳥状の配列が反転されて複数(図11では2つ)配置されている。従って、波の進行方向Gの上流側の防波ユニットUにおいて、隙間Sを通過して矢印Gに対して斜めに進行する波同士を互いに衝突させて減衰させ、さらに波の進行方向Gの下流側の防波ユニットUにおいて、上流側の防波ユニットUにより互いに衝突して減衰された波を隙間Sに通過させて分散させるとともに、分散した波同士を互いに衝突させてさらに減衰させる。
図12に示す防波ユニットUは、沖から陸に向けて矢印Gの方向に波が進行する場合、複数の可動式防波堤10を、波の進行方向Gに対して斜めに交差するように1列に配列したものである。従って、各可動式防波堤10に向けて進行する波は、一部が各浮上管12に衝突して減衰され、かつ一部が矢印gに示すように隙間Sを通過して波の進行方向Gに対して斜めに進行することになる。
図13に示す防波ユニットUは、沖から陸に向けて矢印Gの方向に波が進行する場合、複数の可動式防波堤10を、波の進行方向Gに対して斜めに交差するように、かつ波の進行方向Gの下流側に向けて拡がるように逆V形に配列したものである。従って、各可動式防波堤10に向けて進行する波は、一部が各浮上管12に衝突して減衰され、かつ一部が矢印gに示すように隙間Sを通過して矢印Gに対して斜めに進行することになる。しかも、図13に示す防波ユニットUでは、波の進行方向Gの下流側に向けて拡がるように可動式防波堤10が逆V形に配列されているため、矢印Gに対して斜めに進行する波同士が互いに衝突する箇所を有し、これにより互いに衝突した波が減衰されることになる。
図14に示す防波ユニットUは、沖から陸に向けて矢印Gの方向に波が進行する場合、複数の可動式防波堤10を、波の進行方向Gに対して直交するように1列に配列し、さらに、その波の進行方向Gの下流側に、隙間Sと同等または隙間Sよりも大きい隙間を空けて複数の可動式防波堤10を配列した他の防波ユニットUaを設けている。他の防波ユニットUaは、複数の可動式防波堤10を、波の進行方向Gに対して直交するように隙間Sを小さくして(図14では隣接する浮上管12が上昇できるための構造上の隙間のみとして実質隙間Sをなくしている)波の進行方向Gに直交するように1列に配列されている。図14において他の防波ユニットUaは、波の進行方向Gの最も上流側の防波ユニットUの全幅に対して短い全幅とされた複数(図14では2つ)が、波の進行方向Gに直交する幅方向で隙間Sよりも間隔を大きく空けて配置されている。さらに、他の防波ユニットUaは、中央の2つの他の防波ユニットUaに空けられた間の波の進行方向Gのさらに下流側で、中央の2つの他の防波ユニットUaに空けられた間隔よりも大きい幅とされて1つ配置されている。従って、各可動式防波堤10に向けて進行する波は、波の進行方向Gの最も上流側の防波ユニットUにおいて、一部が各浮上管12に衝突して減衰され、かつ一部が矢印gに示すように隙間Sを通過して波の進行方向Gと同方向に進行することになる。さらに、中央の2つの他の防波ユニットUaにおいて、隙間Sを通過した波が各浮上管12に衝突して減衰される。また、中央の2つの他の防波ユニットUaに空けた間を通過した波は、波の進行方向Gの最も下流側の他の防波ユニットUaの各浮上管12に衝突して減衰される。また、最も下流側の他の防波ユニットUaの各浮上管12に衝突した波は、中央の2つの他の防波ユニットUaとの間で、矢印gに示すように波の進行方向Gにほぼ直交するように両側に分散して進行することになる。
図15は、本実施形態に係る可動式防波施設の配置を示す概略図である。図15は、港湾120および河川130を有する領域を例示したものである。
図15に示す港湾120は、陸側に複数(図15では4つ)の埠頭121を有する。一方の端(図15の左端)の埠頭121の外側(図15中左側)は、港湾120内となるように、埠頭121の一部および固定の防波堤124aで囲まれつつ一部が開口して港湾120内に通じて小型船を陸に揚げるための船揚場122が設けられている。また、他方の端(図15の右端)の埠頭121の外側(図15中右側)は、港湾120外となるように、埠頭121の一部および固定の防波堤124bで囲まれつつ一部が港湾120外に通じてボートやヨットなどが停泊可能な停泊場123が設けられている。また、他方の端(図15の右端)の埠頭121は、その先端から港湾120を区画する固定の防波堤124cが延在して設けられている。また、防波堤124cの延在端との間に、埠頭121に停泊する大型船の通過を許容する航路125aを形成するともに、船揚場122をなす防波堤124aとの間に、小型船の通過を許容する航路125bを形成するように、港湾120を区画する固定の防波堤124dが設けられている。図15に示す河川130は、他方の端(図15の右端)の埠頭121の外側(図15中右側)であって、港湾120の陸地から湾曲された陸と水(海)との境界線で海に通じている。
そして、本実施形態の可動式防波施設1は、上述した防波ユニットU(Ua)が、埠頭121の間の先端側や、埠頭121の先端や、船揚場122の開口部分や、停泊場123をなす防波堤124bの先端部や、航路125a,125bを閉塞する部分や、河川130の河口や、境界線に沿って複数配置されている。
なお、水底に配置されて水底から立ち上がることで波の抵抗となる可動式防波堤は、上述したように浮上管12が上昇する可動式防波堤10に限らない。可動式防波堤は、例えば、図には明示しないが、基端側の回転軸を支点とした扉体の起立により水路または港湾を締切る起伏ゲート式の可動式防波堤であってもよい。この起伏ゲート式の可動式防波堤は、扉体の幅を大きくとれるため、単体で1つの防波ユニットをなすことが可能である。すなわち、上述した防波ユニットU(Ua)に換えて、起伏ゲート式の可動式防波堤単体を配置してもよい。
上述したように、本実施形態の可動式防波施設1は、水底に配置されて水底から立ち上がることで波の抵抗となる可動式防波堤10を複数有する可動式防波施設1において、図10〜図14に示すように、各可動式防波堤10の間に、各可動式防波堤10に向けて進行する波の一部の通過を生じる隙間Sを設ける。
この可動式防波施設1によれば、有事の際、各可動式防波堤10に向けて進行する波は、一部が各可動式防波堤10に衝突して減衰され、かつ一部が隙間Sを通過する。このため、波を減衰することができ、かつ各可動式防波堤10の隙間Sに波を通過させることで、可動式防波堤10を配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制することができる。しかも、有事の際以外の通常時は、各可動式防波堤10は水底に配置されるため、船舶の通過を妨げる事態を防ぐことができる。従って、可動式防波堤10の配置箇所に制限が極めて少ない。
また、本実施形態の可動式防波施設1では、図10〜図14に示すように、隙間Sは、1つの可動式防波堤10に波が衝突する範囲分を少なくとも有することが好ましい。
この可動式防波施設1によれば、各可動式防波堤10の隙間Sに通過させる波を衝突する波以上とすることで、波を減衰する効果を得ることができるとともに、可動式防波堤10を配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制する効果を顕著に得ることができる。
また、本実施形態の可動式防波施設1では、図14に示すように、隙間Sを設けて配置した各可動式防波堤10の陸側に、沖から陸に向けて隙間Sを小さくした複数の可動式防波堤10をさらに設けることが好ましい。
この可動式防波施設1によれば、沖側に配置した各可動式防波堤10の隙間Sを通過した波を、陸側に配置した各可動式防波堤10により減衰させることができる。
また、本実施形態の可動式防波施設1では、図15に示すように、複数の可動式防波堤10、または単体の可動式防波堤(起伏ゲート式の可動式防波堤)を1つの防波ユニットUとし、当該防波ユニットUを、陸と水との境界線に沿い、かつ隙間を空けて複数配置する。
この可動式防波施設1によれば、陸と水との境界線に沿って配置された防波ユニットUにより陸側に進行する波を減衰させるとともに、各防波ユニットUの隙間に波を通過させることで防波ユニットUを配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制することができる。しかも、有事の際以外の通常時は、防波ユニットUの各可動式防波堤10は水底に配置されるため、船舶の通過を妨げる事態を防ぐことができる。従って、防波ユニットUの配置箇所に制限が極めて少ない。
また、本実施形態の可動式防波施設1では、防波ユニットUを河口付近に配置することが好ましい。
河口から河川130を上って波が進行し河川130の水位が上昇する可能性がある。このため、この可動式防波施設1によれば、河口付近に防波ユニットUを配置することで、河川130に波が進行することを抑制でき、かつ各防波ユニットUの隙間に波を通過させることで防波ユニットUを配置した周辺海域に二次的に寄せられる波の影響を抑制することができる。しかも、有事の際以外の通常時は、防波ユニットUの各可動式防波堤10は水底に配置されるため、船舶の通過を妨げる事態や波による河口付近への影響(浸食など)を防ぐことができる。
また、本実施形態の可動式防波施設1では、可動式防波堤10は、上下に長尺に形成されて水底側に開口部を有して水底地盤E内に挿入固定された外筒管11と、外筒管11の内部に挿入されて外筒管11の長手方向に昇降移動可能に配置されるとともに、自身の内部に供給された気体により浮力を生じて上昇可能に設けられた浮上管12と、浮上管12の内部に気体を供給する気体供給装置とを備える。
この可動式防波施設1によれば、浮上管12を上昇させる構成により波が衝突する位置に浮上管12を円滑かつ迅速に配置することができる。しかも、上昇した浮上管12は、その下端部が外筒管11により強固に支持されるため、浮上管12に付与される波力を減衰させる効果を顕著に得ることができる。
なお、上述した実施形態において、可動式防波堤10は、水面から突出する構成に限らない。例えば、図には明示しないが、水深が深い場合は、波を減衰し得る高さであって、水面に突出しない高さまでの上昇であってもよい。この場合、可動式防波堤10の稼働の確認や、船舶の通過を妨げないように立ち上がる部分(浮上管12や扉体)の上端に、水面上に現れる指標を設けておくことが好ましい。
なお、上述した実施形態において、1つの防波ユニットUをなす複数の可動式防波堤10や、1つの防波ユニットUをなす単体の可動式防波堤について、図15に示すように複数の防波ユニットUを配置する場合、到達する波の状況(大きさや進行方向Gなど)に応じて全ての防波ユニットUの可動式防波堤10を立ち上げたり、一部の防波ユニットUの可動式防波堤10を立ち上げたりしてもよい。全ての防波ユニットUの可動式防波堤10を立ち上げれば、上述した防波効果を得ることができ、一部の防波ユニットUの可動式防波堤10を立ち上げるようにすれば、津波や高潮の発生に際して船舶が港外に脱出する場合に、船舶が通過する開口部(例えば、20m区間)の分だけ可動式防波堤10を立ち上げずに形成することができる。そして、船舶の通過後に全ての防波ユニットUの可動式防波堤10を立ち上げる。
1 可動式防波施設
10 可動式防波堤
11 外筒管
12 浮上管
S 隙間
U 防波ユニット
Ua 防波ユニット

Claims (2)

  1. 水底に配置されて前記水底から立ち上がることで波の抵抗となる可動式防波堤を複数有する可動式防波施設において、
    各前記可動式防波堤の間に、各前記可動式防波堤に向けて進行する波の一部の通過を生じる隙間を設けた1列を前記波の進行方向に対して直交するように配列し、さらに前記進行方向の下流側に上流側の配列の前記隙間と同等以上の隙間を空けて前記進行方向に直交するように複数の前記可動式防波堤を実質隙間をなくして配列した防波ユニットとし、
    前記進行方向の下流側に設けた前記配列は、上流側の前記配列の全幅に対して短い全幅とされて前記進行方向に直交する幅方向で上流側の配列の前記隙間よりも間隔を大きく空けて複数配置され、かつ、前記進行方向の下流側に設けた前記配列は、前記進行方向のさらに下流側において上流側の配列の前記隙間よりも間隔を大きく空けられた間隔よりも大きい幅とされて配置された防波ユニットとすることを特徴とする可動式防波施設。
  2. 前記可動式防波堤は、上下に長尺に形成されて水底側に開口部を有して水底地盤内に挿入固定された外筒管と、前記外筒管の内部に挿入されて前記外筒管の長手方向に昇降移動可能に配置されるとともに、自身の内部に供給された気体により浮力を生じて上昇可能に設けられた浮上管と、前記浮上管の内部に気体を供給する気体供給装置とを備えることを特徴とする請求項に記載の可動式防波施設。
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