JP6537297B2 - 深みぞ玉軸受 - Google Patents

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Description

この発明は、外輪と内輪間にボールを組み込んだ深みぞ玉軸受に関する。
図5は自動車のトランスミッションを示す。このトランスミッションにおいては、インプットシャフト60とアウトプットシャフト61を同軸上に配置して、その対向部間にクラッチ62を設け、上記両軸60、61に平行にカウンタシャフト63を設け、上記インプットシャフト60の回転を互いに噛合するギヤ64、65を介してカウンタシャフト63に伝達している。
また、カウンタシャフト63に複数の変速用ギヤ66乃至68を設け、アウトプットシャフト61には、上記ギヤ66乃至68に対して複数の径の異なるシフトギヤ69、70を切換え可能に設け、そのシフトギヤ69、70のシフト操作によりギヤ66乃至68に対する噛み合いを切り換えることによりインプットシャフト60の回転を複数段に変速してアウトプットシャフト61から出力している。
上記トランスミッションにおいては、ヘリカルギヤが多く採用されているため、インプットシャフト60からアウトプットシャフト61への回転トルクの伝達時、インプットシャフト60、アウトプットシャフト61およびカウンタシャフト63のそれぞれにアキシャル荷重が負荷されることになる。
このため、インプットシャフト60、アウトプットシャフト61およびカウンタシャフト63を支持する軸受71には、ラジアル荷重とアキシャル荷重の両方の荷重を支持することができる軸受を用いる必要がある。
円すいころ軸受においては、負荷容量が大きく、アキシャル荷重およびラジアル荷重の両方を受けることができるため、トランスミッション用の軸受に好適である。しかし、円すいころ軸受においては、損失トルクが大きく、燃料の消費量が多くなるという問題が生じる。その低燃費化を図るため、トルク損失の少ない深みぞ玉軸受が使用されるケースが多くなってきている。
ここで、標準の深みぞ玉軸受においては、過大なアキシャル荷重が負荷された際に、そのアキシャル荷重を受ける負荷側の肩にボールが乗り上げて、肩のエッジが損傷する懸念がある。
そのような不都合を解消するため、特許文献1に記載された深みぞ玉軸受においては、外輪の軌道溝および内輪の軌道溝のそれぞれ両側に形成された肩のうち、アキシャル荷重を受ける側の肩を高くして、ボールの乗り上げを阻止し、軸受の耐久性の低下を抑制して、大きなアキシャル荷重を受けることができるようにしている。
特開2000−145795号公報
ところで、上記特許文献1に記載された深みぞ玉軸受においては、外輪および内輪の軌道溝の両側に設けられた左右の肩高さが相違するため、内輪の回転時、肩径の相違から軸受内部の潤滑油の回転速度に差が生じ、回転速度の遅い遠心力の小さい小径肩側の潤滑油が回転速度の速い遠心力の大きい大径肩側の潤滑油に引き込まれる潤滑油の引き込み現象が生じる。この引き込み現象は、円すいころ軸受においてポンピング作用と呼ばれる潤滑油の引き込み現象と同じであり、その引き込み現象によって軸受内部の潤滑油が一方向に強制的に送り出されて過剰に流出し、潤滑不足になる可能性がある。
この発明の課題は、潤滑油の過剰流出を防止し、潤滑油の不足によって焼き付きが生じるのを防止することができるようにした深みぞ玉軸受を提供することである。
上記の課題を解決するため、この発明においては、内径面に軌道溝が形成された外側軌道輪と、外径面に軌道溝が形成された内側軌道輪と、前記外側軌道輪の軌道溝と前記内側軌道輪の軌道溝間に組込まれたボールおよびそのボールを保持する保持器とからなり、前記外側軌道輪における軌道溝の一側の肩および前記内側軌道輪における軌道溝の他側の肩の高さが、前記外側軌道輪の他側の肩および前記内側軌道輪の一側の肩の高さより高くされた深みぞ玉軸受において、前記外側軌道輪と前記内側軌道輪のうち、少なくとも回転側とされる軌道輪の高さが高い肩の周面を前記軌道溝側の内端部の肩の高さが軸受側面側の外端部の肩高さより高くなるように傾斜するテーパ面とした構成を採用したのである。
上記の構成からなる深みぞ玉軸受において、内側軌道輪が回転輪の場合において、その内側軌道輪が回転すると、軌道溝の一側に設けられた肩と他側に設けられた肩の外径の径差に基づく周速の相違により連れ回る潤滑油の遠心力も相違して、肩高さの低い小径肩側の遠心力の小さい潤滑油が肩高さの高い大径肩側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、そのポンピング作用により高さの低い小径肩側から軸受内に潤滑油が引き込まれて軸受内部を一方向に流動し、高さの高い大径肩側から外部に流出する。
このとき、高さの高い大径肩側においては、その周面がテーパ面とされているため、そのテーパ面の小径端と大径端の径の相違に基づく周速の相違によって連れ回る潤滑油の遠心力も相違し、小径端側の遠心力の小さい潤滑油が大径端側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、そのポンピング作用により軸受内に潤滑油が引き込まれる。この潤滑油の流れは高さの低い小径肩側から軸受内に送り込まれて高さの高い大径肩側に流出する潤滑油の流れと逆向きであるため、軸受内から高さの高い大径肩側への潤滑油の流出が抑制されることになり、潤滑油の過剰流出が防止される。
なお、外側軌道輪が回転輪の場合、その外側軌道輪が回転すると、軌道溝の一側に設けられた肩と他側に設けられた肩の内径の径差に基づく周速の相違により連れ回る潤滑油の遠心力も相違して、肩高さの高い小径肩側の遠心力の小さい潤滑油が肩高さの低い大径肩側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、そのポンピング作用により高さの高い小径肩側から軸受内に潤滑油が引き込まれて軸受内部を一方向に流動し、高さの低い大径肩側から外部に流出する。
このとき、高さの高い小径肩側においては、その周面がテーパ面とされているため、そのテーパ面の小径端と大径端の径差に基づく周速の相違により連れ回る潤滑油の遠心力も相違し、小径端側の遠心力の小さい潤滑油が大径端側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、そのポンピング作用により軸受内の潤滑油が外部に送り出される。この潤滑油の流れは高さの高い小径肩側から軸受内に送り込まれて高さの低い大径肩側に流出する潤滑油の流れと逆向きであるため、小径肩側から軸受内に引き込まれる潤滑油の流入速度が低下し、高さの高い肩側から外部への潤滑油の過剰流出が防止される。
ここで、合成樹脂からなる円筒形の第1分割保持器と、その第1分割保持器の内径側に挿入される合成樹脂からなる円筒形の第2分割保持器からなり、前記第1分割保持器の軸方向一側面と第2分割保持器の軸方向他側面に、第1分割保持器の軸方向一側部内に第2分割保持器の軸方向他側部を挿入する組み合わせ状態でボール保持用の円形のポケットを形成する切欠部が周方向に間隔をおいて設けられ、前記第1分割保持器と第2分割保持器がポケットを形成する組み合わせ状態で、その両分割保持器を軸方向に非分離とする連結手段が設けられた組み合わせ保持器を採用すると、外側軌道輪の軌道溝と内側軌道輪の軌道溝間にボールを組み込んだのち、外側軌道輪の肩高さの低い側から内部に第1分割保持器を挿入し、かつ、内側軌道輪の肩高さの低い側から内部に第2分割保持器を挿入する簡単な操作によって深みぞ玉軸受を組み立てることができる。
上記のような組み合わせ保持器の採用においては、その外周が第1分割保持器の外径面と第2分割保持器の外径面の2つの外径面で形成され、これら2つの外径面は外径が異なるため、その径差に基づく遠心力の相違から軸受内部にポンピング作用が生じ、軸受内部に潤滑油がより多く送り込まれて、潤滑油の過剰流出が懸念されるが、上記のように、回転側軌道輪の高さが高い肩の周面にテーパ面を設けることによって上記懸念を払拭することができる。
深みぞ玉軸受においては、潤滑油によって潤滑されるため、第1分割保持器および第2分割保持器は耐油性に優れた合成樹脂で成形するのがよい。そのような樹脂として、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を挙げることができる。
この発明においては、上記のように、外側軌道輪と内側軌道輪のうち、少なくとも回転側軌道輪の高さの高い肩の周面をテーパ面としたことにより、そのテーパ面の小径端と大径端の径差に基づく周速の相違により遠心力も相違してポンピング作用が生じ、そのポンピング作用による潤滑油の流れが軸受内部から外部への潤滑油の流出を妨げるように作用するため、過剰流出を抑制することができ、潤滑油不足による焼き付きを防止することができる。
この発明に係る深みぞ玉軸受の縦断面図 図1に示す保持器の一部分を拡大して示す断面図 第1分割保持器と第2分割保持器の一部分を示す平面図 この発明に係る深みぞ玉軸受の他の実施の形態を示す縦断面図 自動車のトランスミッションの一例を示す概略図
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、内輪回転用として使用される深みぞ玉軸受Aを示す。この深みぞ玉軸受Aは、外側軌道輪としての外輪10と、内側軌道輪としての内輪20と、上記外輪10と内輪20間に組み込まれたボール30およびそのボール30を保持する保持器40からなり、上記ボール30は外輪の内径面に形成された軌道溝11と内輪20の外径面に形成された軌道溝21間に組み込まれている。
ここで、外輪10の軌道溝11の両側に形成された一対の肩12a、12bのうち、軌道溝11の一側方に位置する肩12aの高さを標準型深みぞ玉軸受の外輪の肩の高さより高くし、他側方に位置する肩12bを標準型深みぞ玉軸受の外輪の肩の高さと同じ高さとしている。
また、内輪20の軌道溝21の両側に形成された一対の肩22a、22bのうち、軌道溝21の他側方に位置する肩22bの高さを標準型深みぞ玉軸受の内輪の肩の高さより高くし、一側方に位置する肩22aの高さを標準型深みぞ玉軸受の内輪の肩の高さと同じ高さとしているが、外輪10および内輪20は、標準型深みぞ玉軸受の外輪および内輪と同一の構成からなるものを用いるようにしてもよく、また、外輪10の他側方に位置する肩12bおよび内輪20の一側方に位置する肩22aの肩高さを標準型深みぞ玉軸受の肩の高さより低くしてもよい。なお、標準型深みぞ玉軸受とは、外輪の一対の肩の高さおよび内輪の一対の肩の高さが同じ高さとされている軸受のことをいう。
内輪20の高さの高い肩22bの外径面はテーパ面23とされて、軌道溝21側の内側端の外径が軸受側面側の外側端の外径より大径とされている。そのテーパ面23の外側端の直径φbは高さの低い肩22aの直径φaと同径とされている。
図1乃至図3に示すように、保持器40は、第1分割保持器41と、その第1分割保持器41の内径側に挿入された第2分割保持器42とからなる。
第1分割保持器41は、環状体43の軸方向一側面に対向一対のポケット爪44を周方向に等間隔に形成し、各対向一対のポケット爪44間に上記環状体43を刳り抜く平面形状が2分の1円を超える大きさの切欠部45を設けた合成樹脂の成形品からなっている。
ここで、環状体43の内径は、図1に示すように、ボール30のピッチ円径(PCD)に略等しく、外径は外輪10の高さが高い肩12aの内径と高さの低い肩12bの内径の範囲内とされて、外輪10の高さの低い肩12b側から軸受内に挿入可能とされている。また、切欠部45の内面は、ボール30の外周に沿う球面状とされている。
一方、第2分割保持器42は、環状体48の軸方向他側面に対向一対のポケット爪49を周方向に等間隔に形成し、各対向一対のポケット爪49間に上記環状体48を刳り抜く平面形状が2分の1円を超える大きさの切欠部50を設けた合成樹脂の成形品からなっている。
上記環状体48の外径は、図1に示すように、ボール30のピッチ円径(PCD)に略等しく、内径は内輪20の高さの高い肩22bの外径と高さの低い肩22aの外径の範囲内とされている。この第2分割保持器42は、高さの低い肩22a側から軸受内に挿入可能とされ、かつ、第1分割保持器41の内側に嵌合可能とされている。また、切欠部50の内面は、ボール30の外周に沿う球面状とされている。
第1分割保持器41と第2分割保持器42の相互間には、第1分割保持器41の軸方向一側部内に第2分割保持器42の軸方向他側部を挿入して、対向一対の切欠部45,50により円形のポケットを形成する状態において、その第1分割保持器41と第2分割保持器42を軸方向に非分離とする連結手段Xが設けられている。
連結手段Xは、第1分割保持器41の隣接する切欠部45間に形成された柱部43aの先端部に内向きの係合爪46を設け、かつ、環状体43の内径面に上記係合爪46と同一軸線上に溝状の係合凹部47を形成し、第2分割保持器42の隣接する切欠部50間に形成された柱部48aの先端部に外向きの係合爪51を設け、かつ、環状体48の外径面に上記係合爪51と同一軸線上に係合凹部52を形成し、第1分割保持器41の係合爪46と第2分割保持器42の係合凹部52の係合、および、第2分割保持器42の係合爪51と第1分割保持器41の係合凹部47の係合によって、第1分割保持器41と第2分割保持器42とを軸方向に非分離とする構成とされている。
ここで、第1分割保持器41および第2分割保持器42は、深みぞ玉軸受を潤滑する潤滑油に晒されるため、耐油性に優れた合成樹脂を用いるようにする。そのような合成樹脂として、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を挙げることができる。これらの樹脂は、潤滑油の種類に応じて適切なものを選択して使用すればよい。
実施の形態で示す深みぞ玉軸受は上記の構造からなり、その深みぞ玉軸受の組立てに際しては、外輪10の内側に内輪20を挿入し、その内輪20の軌道溝21と外輪10の軌道溝11間に所要数のボール30を組込む。
このとき、内輪20を外輪10に対して径方向にオフセットして、内輪20の外径面の一部を外輪10の内径面の一部に当接し、その当接部位から周方向に180度ずれた位置に三日月形の空間を形成し、その空間の一側方から内部にボール30を組込むようにする。
そのボール30の組込みに際して、図1に示すように、外輪10のスラスト負荷側の肩12aの肩高さHや内輪20の高さが高い肩22bの肩高さHが必要以上に高い場合には、ボール30の組込みを阻害することになるが、実施の形態では、ボール30の球径dに対する肩高さH、Hの比率H/d、H/dが、0.50未満の高さとして、外輪10と内輪20間にボール30を確実に組込むことができるようにしてある。また、ボール30の肩乗り上げを防止するため、ボール30の球径dに対する肩高さH、Hの比率H/d、H/dを0.25以上としている。
ボール30の組込み後、内輪20の中心を外輪10の中心に一致させてボール30を周方向に等間隔に配置し、外輪10の高さの低い肩12bの一側方から外輪10と内輪20間に第1分割保持器41を、その第1分割保持器41に形成された切欠部45内にボール30が嵌り込むようにして挿入する。
また、内輪20の高さが低い肩22aの一側方から外輪10と内輪20間に第2分割保持器42を、その第2分割保持器42に形成された切欠部50内にボール30が嵌り込むように挿入して、第1分割保持器41の軸方向一側部内に第2分割保持器42の軸方向他側部を嵌合する。
上記のように、第1分割保持器41内に第2分割保持器42を嵌合することにより、図2に示すように、各分割保持器41、42に形成された係合爪46、51が相手方の分割保持器に設けられた係合凹部47、52に係合することになり、深みぞ玉軸受の組立てが完了する。
このように、外輪10の軌道溝11と内輪20の軌道溝21間にボール30を組込んだ後、外輪10と内輪20間の両側方から内部に第1分割保持器41と第2分割保持器42とを挿入して、第1分割保持器41内に第2分割保持器42を嵌合する簡単な作業によって深みぞ玉軸受Aを組立てることができる。
ここで、上記深みぞ玉軸受Aを用いて、例えば、トランスミッションのインプットシャフト等のトルク伝達シャフトを支持し、その支持状態において、トルク伝達シャフトが回転すると、内輪20が外輪10に対して相対回転する。
また、外輪10に対する内輪20の相対回転により、ボール30は自転しつつ公転し、その公転により、保持器40も回転する。
上記内輪20の回転時、その内輪20の軌道溝21の両側に形成された一対の肩22a、22bは外径が相違するため、周速にも差が生じ、その周速の相違により連れ回る潤滑油の遠心力も相違して、肩高さの低い小径肩22a側の遠心力の小さい潤滑油が肩高さの高い大径肩22b側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、そのポンピング作用により高さの低い小径肩22a側から軸受内に潤滑油が引き込まれて軸受内部を一方向に流動し、高さの高い大径肩22b側から外部に流出する。
また、第1分割保持器41と第2分割保持器42は外径が異なるため、周速に差が生じ、その周速の相違により連れ回る潤滑油の遠心力も相違して、第2分割保持器42側の潤滑油が第1分割保持器41側に引き込まれるポンピング作用が生じる。そのポンピング作用と内輪20の肩高さの相違に基づく上記ポンピング作用の二つのポンピング作用によって、図2の矢印イで示すように、内輪20の高さの低い肩22a側から軸受内に潤滑油が引き込まれて高さの高い肩22b側から外部に流出する。
このとき、内輪20の高さの高い肩22b側においては、その外周面がテーパ面23とされているため、そのテーパ面23の小径端と大径端の径の相違に基づく周速の相違によって連れ回る潤滑油の遠心力も相違し、小径端側の遠心力の小さい潤滑油が大径端側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、図2の矢印ロで示すように、高さの高い肩22b側から軸受内に潤滑油が引き込まれる。この潤滑油の流れは高さの低い肩22a側から軸受内に引き込まれて高さの高い肩22b側に流出する潤滑油の流れと逆向きであるため、高さの高い肩22b側から外部への潤滑油の流出が抑制されることになり、潤滑油の過剰流出が防止され、軸受内部の潤滑油不足による焼き付きが防止されることになる。
図1および図2においては、内輪回転用の深みぞ玉軸受であるため、内輪20の高さの高い肩22bの外周面にテーパ面23を設けるようにしたが、外輪回転用の深みぞ玉軸においては、図4に示すように、内輪20の高さの高い肩の外周面を円筒面とし、外輪10の高さの高い肩12aの内周面を軌道溝11側の内端が軸受側面側の外側端より小径となるテーパ面13を設けるようにする。この場合、テーパ面13の小径端の円径を高さの低い肩12bの内径と略同径としておくのが好ましい。
上記のように、外輪10の高さの高い肩12aの内周面にテーパ面13を設けることにより、外輪10が回転すると、外輪10に設けられた一対の肩12a、12bの径差により周速に差が生じ、その周速の相違により連れ回る潤滑油の遠心力も相違して、肩高さの高い小径肩12a側の遠心力の小さい潤滑油が肩高さの低い大径肩12b側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、そのポンピング作用により、図4の矢印イで示すように、高さの高い小径肩12a側から軸受内に潤滑油が引き込まれて軸受内部を一方向に流動し、高さの高い大径肩12b側から外部に流出する。
また、外輪10の高さの高い小径肩12a側においては、その内周面がテーパ面13とされているため、そのテーパ面13の小径端と大径端の径の相違に基づく周速の相違により連れ回る潤滑油の遠心力も相違して、小径端側の遠心力の小さい潤滑油が大径端側の遠心力の大きい潤滑油に引き込まれるポンピング作用が生じ、図4の矢印ハで示すように、軸受内の潤滑油が高さの高い肩12a側から外部に送り出される。この潤滑油の流れは外部から軸受内に引き込まれる矢印イで示される潤滑油の流れと逆向きであるため、外部から軸受内に引き込まれる潤滑油の流入速度が減速され、高さの低い大径側の肩12bから外部への潤滑油の流出が抑制され、軸受内部の潤滑油不足による焼き付きが防止される。
なお、図1および図2では内輪回転用の深みぞ玉軸受であるため、内輪20の高さの高い肩22bの外周面にのみテーパ面23を設けるようにしたが、外輪10の高さの高い肩12aの内周面に図4に示す場合と同様にテーパ面を設けるようにしてもよい。
また、図4では外輪回転用の深みぞ玉軸受であるため、外輪10の高さの高い肩12aの内周面にのみテーパ面13を設けるようにしたが、内輪20の高さの高い肩22bの外周面に図2に示す場合と同様にテーパ面を設けるようにしてもよい。
10 外輪
11 軌道溝
12a 肩
12b 肩
13 テーパ面
20 内輪
21 軌道溝
22a 肩
22b 肩
23 テーパ面
30 ボール
40 保持器
41 第1分割保持器
42 第2分割保持器
45 切欠部
50 切欠部
X 連結手段

Claims (2)

  1. 内径面に軌道溝(11)が形成された外側軌道輪(10)と、外径面に軌道溝(21)が形成された内側軌道輪(20)と、前記外側軌道輪(10)の軌道溝(11)と前記内側軌道輪(20)の軌道溝(21)間に組込まれたボール(30)およびそのボール(30)を保持する保持器(40)とからなり、前記外側軌道輪(10)における軌道溝(11)の一側の肩(12a)および前記内側軌道輪(20)における軌道溝(21)の他側の肩(22b)の高さが、前記外側軌道輪(10)の他側の肩(12b)および前記内側軌道輪(20)の一側の肩(22a)の高さより高くされた深みぞ玉軸受において、
    前記外側軌道輪(10)と前記内側軌道輪(20)のうち、少なくとも回転側とされる軌道輪の高さが高い肩の周面を前記軌道溝側の内端部の肩の高さが軸受側面側の外端部の肩高さより高くなるように傾斜するテーパ面(13、23)とし
    前記保持器(40)が、合成樹脂からなる円筒形の第1分割保持器(41)と、その第1分割保持器(41)の内側に挿入される合成樹脂からなる円筒形の第2分割保持器(42)からなり、前記第1分割保持器(41)の軸方向一側面と第2分割保持器(42)の軸方向他側面に、第1分割保持器(41)の軸方向一側部内に第2分割保持器(42)の軸方向他側部を嵌合する組み合わせ状態でボール保持用の円形のポケットを形成する切欠部(45、50)が周方向に間隔をおいて設けられ、前記第1分割保持器(41)と第2分割保持器(42)がポケットを形成する組み合わせ状態で、その両分割保持器(41、42)を軸方向に非分離とする連結手段(X)が設けられたことを特徴とする深みぞ玉軸受。
  2. 前記合成樹脂が、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド9T、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂の一種からなる請求項に記載の深みぞ玉軸受。
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