JP6537182B2 - 車両の風切音低減構造 - Google Patents

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本発明は、フロントピラーの近傍で発生する風切音を抑制するための車両の風切音低減構造に関するものである。
自動車等の車両は、車室の前面側の上部に設けられたフロントガラスと、フロントガラスの幅方向両側に設けられたフロントピラーと、を有している。フロントピラーは、下端側から上端側に向かってフロントガラスと共に後傾しており、後側にサイドウインドウが位置している。フロントガラスの下端にはボディの車幅方向に延びるカウルが設置されており、フロントガラスから流れ落ちた雨水の車外への排出や外気の車室への導入がこのカウルを介して行われる(例えば、特許文献1参照)。
カウルは、フロントガラスとフロントフードとの間に配置されており、近年では箱状のカウルボックスに代わり樋状のカウルパネルが主流となっている。通常、カウルパネルは、樹脂射出成形によって製造されており、フロントガラスの直下にU字断面形状やV字断面形状の樋が形成され、その両端部がフロントフェンダの幅方向内側に位置している。なお、樋は、平面視におけるフロントガラス下端の湾曲に沿うように、中央から左右に向かうにしたがって後方に向かうように湾曲している(例えば、特許文献2参照)。
特開平8−127365号公報 特開2000−280934号公報
自動車の走行時には、エンジン音やタイヤ音、各種風切音等が乗員にとって騒音となり、乗員の快適性を損なう要因となっている。特にフロントピラーの近傍における風切音(以下、単に風切音と記す)は、運転席や助手席の乗員の頭部に近い部位で発生するため、自動車の快適性が損なわれる原因となる。風切音は、フロントガラスの前面に沿って流通してフロントピラーから後方に流れる空気によって発生する。つまり、フロントガラスの前面に沿って流れる空気は、フロントピラーの後縁で剥離した直後に車体中心側に回り込む縦渦となり、フロントピラーの側方を流れる空気と衝突することで風切音を発生させる。
風切音の大きさは、フロントピラーから後方に流れる空気の量との間に正の相関を有する。前述したカウルパネルを備えた自動車では、フロントピラーの下部で空気の流量が大きくなるため、風切音が大きくなる。すなわち、フロントフードの前面に沿って流れる空気は、その一部がカウルパネルの樋空間に吹き込んだ後、後方に向けて湾曲した樋空間を幅方向に流れる。樋空間の幅方向両端に流れた空気は、フロントフェンダの幅方向内側面に衝突して上方に向きを変えてフロントフェンダを乗り越え、フロントガラスの前面に沿って幅方向に流通してフロントピラーの下部に流れ込む空気の流れと合流する。その結果、フロントピラーの下部の後縁で剥離する空気の流量が増大し、上述の縦渦が大きくなって風切音が大きくなる。
本発明の目的とするところは、フロントピラーの近傍の空気の流れに対するカウルパネルの樋空間を流通した空気の流れの合流を抑制し、風切音の低減を図ることのできる車両の風切音低減構造を提供することにある。
本発明は、前記目的を達成するために、メインボディの上方に設けられたフロントガラスと、前記メインボディから後方に向かって斜め上方に立ち上がるように設けられ前記フロントガラスの側縁を支持するフロントピラーと、前記フロントガラスの下方に設けられ樋空間を構成するカウルと、を備えた車両であって、前記カウルの側端には、前記樋空間に連続するとともに、前記メインボディの側面に開口を有する空気流排出路が設けられ、前記空気流排出路は、前記メインボディの側面側の端部が前記樋空間側の端部よりも下方に設けられている。
これにより、カウルの樋空間を幅方向に流れる空気が、空気流排出路に導かれてメインボディに対するフロントピラーの立ち上がり開始部から下方に距離をおいた位置から排出される。
本発明によれば、カウルの樋空間を幅方向に流れる空気を、空気流排出路に導いてメインボディに対するフロントピラーの立ち上がり開始部から下方に距離をおいた位置から排出することができるので、フロントピラーの近傍の空気の流れに対するカウルの樋空間を流通した空気の流れの合流を抑制することができ、風切音を低減することが可能となる。
本発明の一実施形態を示す自動車の全体斜視図である。 図1中A部の拡大平面図である。 図1中A部の拡大側面図である。 図2中のB−B拡大断面図である。 図2中のC−C拡大断面図である。 実施形態の作用を示す要部平面図である。 実施形態の作用を示す要部側面図である。
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すものである。
本発明の風切音低減構造を備えた車両としての自動車1は、セダン型乗用車であり、図1に示すように、フロントフェンダ2、フロントフード3、フロントドア4、リヤドア5、リヤフェンダ6等を外殻とするメインボディ10を有している。メインボディ10からはフロントピラー11、センタピラー12およびリヤピラー13が上方に延設され、各ピラー11〜13の上端にルーフ14が支持されている。
フロントピラー11やルーフ14には、車室の上部前面を画成するフロントガラス15の外縁が支持されている。フロントガラス15は全体が後傾した曲面形状を有しており、フロントピラー11はフロントガラス15の側端の傾斜に対応して後傾している。なお、フロントドア4およびリヤドア5にはそれぞれサイドガラス16,17が昇降自在に保持され、フロントドア4の上部にはドアミラー18が取り付けられている。
フロントガラス15の下縁前方には、車幅方向に沿って樹脂射出成形品のカウルパネル20が装着されている。カウルパネル20は、雨中走行時にフロントフード3やフロントガラス15から流れてきた雨水を排出すべく、図4に示すように、円弧断面形状の樋溝21を有している。樋溝21は、フロントガラス15の下端側の湾曲に沿うように中央から左右に向かうに連れて後方に向かうように湾曲しており、フロントフード3の後方への延長線Lとの間に略半円断面の樋空間22を画成している。
カウルパネル20には、図2に示すように、車室に外気を導入するための外気導入孔23が複数形成されるとともに、フロントフード3の下面に密着するラバーシール24が前端に装着されている。なお、カウルパネル20は、バルクヘッドに取り付けられた図示しないワイパ機構(ワイパモータやワイパーアーム)等を覆っている。
フロントフェンダ2には、図3に示すように、前後に長い長円形の開口としての空気流排出孔31が形成されている。空気流排出孔31は、前後方向でフロントピラー11の基部の直下、上下方向でメインボディ10に対するフロントピラー11の立ち上がり開始部より下方であり、後述する空気流排出ダクトの内端よりも下方且つ後方に位置している。
カウルパネル20の側端には、樋空間22とフロントフェンダ2の空気流排出孔31とを連通させるべく、樹脂射出成形品で筒状の空気流排出ダクト41が設置されている。空気流排出ダクト41は、全長にわたって略一定の流路断面積を有し、図2に示すように、内端(空気流の導入側)41aから外端(空気流の排出側)41bにかけて斜め後方に延びるとともに、図5に示すように、外端41b側が斜め下方に延びている。なお、空気流排出ダクト41は、外端41bの近傍で前後幅が車体後方に向けて拡大されるとともに、外端41bが空気流排出孔31に嵌め込まれている。
以上のように構成された自動車1において、前進走行を行うと、フロントフード3の上部を流通する空気の大部分は、フロントガラス15からルーフ14やフロントピラー11を経由して後方に流れ、一部の空気がカウルパネル20の樋空間22に流入する。
フロントガラス15の前面に沿って幅方向に流通してフロントピラー11の後縁まで流通した空気は、図6及び図7中に矢印で示すように、フロントピラー11の後縁で剥離した直後に車体中心側に回り込む縦渦となり、フロントピラー11の側方を流通する空気と衝突することで風切音を発生させる。
一方、樋空間22に流入した空気は、図6及び図7に示すように、両端側が後方に向くように湾曲した樋溝21に沿って樋空間22内を幅方向の端部に向かって流通し、空気流排出ダクト41に導入された後、空気流排出ダクト41内を通過してフロントピラー11の立ち上がり開始部から下方に距離をおいた空気流排出孔31から排出される。この際、空気流排出ダクト41が斜め後方に延びるとともに外端41b側が斜め下方に延びているため、空気流排出ダクト41を流通した空気は、図7に示すように、空気流排出孔31から斜め後下方に排出される。その結果、カウルパネル20に流入した空気は、フロントドア4の側方を流れる空気とともにフロントピラー11から離れた位置を流れることで、フロントピラー11側を流通する空気に合流し難くなり、縦渦が強められることに起因する風切音の増大が効果的に抑制される。尚、空気流排出ダクト41の前後幅が外端41bの近傍で車体後方に向けて拡大されているため、空気流排出孔31からの斜め後方への空気の排出が円滑に行われる。
このように、本実施形態の車両の風切音低減構造によれば、カウルパネル20の側端には、樋空間22に連続するとともに、メインボディ10の側面に空気流排出孔31を有する空気流排出ダクト41が設けられ、空気流排出ダクト41は、外端41bが内端41aよりも下方に設けられている。
これにより、カウルパネル20の樋空間22を幅方向に流れる空気を、空気流排出ダクト41に導いてフロントピラー11の立ち上がり開始部から下方に距離をおいた位置から排出することができるので、フロントピラー11の下部における空気の流れに対するカウルパネル20の樋空間22を流通した空気の流れの合流を抑制することができ、風切音を低減することが可能となる。
また、空気流排出ダクト41は、少なくとも外端41b側が斜め下方に延びている。
これにより、空気流排出ダクト41を流通した空気を、空気流排出孔31から下方に排出し、フロントピラー11から下方に離して流通させることができるので、フロントピラー11の下部における空気の流れに対するカウルパネル20の樋空間22を流通した空気の流れの合流をより確実に抑制することが可能となる。
また、空気流排出ダクト41は、少なくとも外端41b側が斜め後方に延びている。
これにより、空気流排出ダクト41を流通した空気を、空気流排出孔31から後方に排出し、フロントピラー11から後方に離して流通させることができるので、フロントピラー11の下部における空気の流れに対するカウルパネル20の樋空間22を流通した空気の流れの合流をより確実に抑制することが可能となる。
また、空気流排出路は、外端41bが後方に向けて拡大されている。
これにより、空気流排出ダクト41を流通した空気が、空気流排出孔31から後方へ円滑に排出されるので、カウルパネル20に流入した空気をより確実にフロントピラー11から後方に離して流通させることが可能となる。
尚、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、種々に変更実施可能である。例えば、前記実施形態は、本発明をセダン型乗用車に適用したものであるが、ワンボックス型自動車やミニバン型(いわゆる、1.5ボックス型)自動車、コンバーチブル型自動車等にも当然に適用可能である。また、空気流排出孔についても、前記実施形態で例示したフロントフェンダに限らず、ボディ構成や各部寸法の差違等に応じ、フロントピラーやフロントドア、フロントフードに設置するようにしてもよい。
また、前記実施形態では空気流排出ダクトが斜め後方に傾斜するものとしたが、樋空間から真横に延びるものとしてもよい。また、前記実施形態の空気流排出ダクトは略一定の流路断面積を有するものとしたが、空気流排出孔31側に向けて流路断面積が漸減させ、空気流排出孔31から排出する空気流の流速を高めるようにしてもよい。また、カウルパネルは、鋼板等のプレス成型品であってもよいし、逆3角断面の樋空間を画成するV字断面形状の樋溝を有するものであってもよい。
1…自動車、2…フロントフェンダ、3…フロントフード、10…メインボディ、11…フロントピラー、15…フロントガラス、20…カウルパネル、21…樋溝、22…樋空間、31…空気流排出孔、41…空気流排出ダクト、41a…内端、41b…外端。

Claims (5)

  1. メインボディの上方に設けられたフロントガラスと、前記メインボディから後方に向かって斜め上方に立ち上がるように設けられ前記フロントガラスの側縁を支持するフロントピラーと、前記フロントガラスの下方に設けられ樋空間を構成するカウルと、を備えた車両であって、
    前記カウルの側端には、前記樋空間に連続するとともに、前記メインボディの側面に開口を有する空気流排出路が設けられ、
    前記空気流排出路は、前記メインボディの側面側の端部が前記樋空間側の端部よりも下方に設けられている
    ことを特徴とする車両の風切音低減構造。
  2. 前記空気流排出路は、少なくとも前記メインボディの側面側が斜め下方に延びている
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の風切音低減構造。
  3. 前記空気流排出路は、少なくとも前記メインボディの側面側が斜め後方に延びている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の風切音低減構造。
  4. 前記空気流排出路は、前記メインボディの側面側の端部が後方に向けて拡大されている
    ことを特徴とする、請求項3に記載の車両の風切音低減構造。
  5. 前記空気流排出路の開口は、前記メインボディを構成する、フロントフェンダ、前記フロントピラー、ドア、フロントフードのいずれかに形成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両の風切音低減構造。
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