JP6536239B2 - Te−Ge系スパッタリングターゲット、及び、Te−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Description
ここで、特許文献1、2に記載されているように、スパッタ法によってTe−Ge系薄膜を成膜した場合には、成膜されたTe−Ge系薄膜において組成のばらつきが生じるといった問題があった。
また、特許文献2においては、Te粉末及びGe粉末を用いて焼結し、密度比を60〜95%に調整することで、Te−Ge系薄膜の組成ばらつきの抑制を図っている。
特に、従来のTe−Ge系スパッタリングターゲットを用いてディスクの表面にTe−Ge系薄膜を成膜した場合、ディスクの径方向で組成分布が生じ、ディスクの内周側と外周側とで特性が変化してしまうおそれがあった。
一方、Te粉末とGe粉末とを用いて製造し、Te単体相とGe単体相とを主とするTe−Ge系スパッタリングターゲットによって、ディスク上にTe−Ge系薄膜を成膜した場合には、図5に示すように、ディスクの内周側でTeの含有量が低く(Geの含有量が高く)、外周側でTeの含有量が高く(Geの含有量が低く)なる傾向にあるとの知見を得た。
また、Teを30原子%以上70原子%以下含有し、残部がGe及び不可避不純物からなる組成を有しているので、記録特性に優れたTe−Ge系薄膜を成膜することが可能となる。さらに、Geの含有量が70原子%以下に規制されることになるため、Te−Ge系スパッタリングターゲットの密度が確保され、スパッタ時の割れやパーティクルの発生を抑制することができる。
よって、組成のばらつきの少ない高品質なTe−Ge系薄膜を成膜可能なTe−Ge系スパッタリングターゲットを製造することができる。
また、前記添加元素の含有量を合計で15原子%以下の範囲内に制限しているので、焼結工程において割れが発生することを抑制できる。
本実施形態に係るTe−Ge系スパッタリングターゲットは、例えば光ディスク等の記録媒体の記録層として機能するTe−Ge系薄膜を成膜する際に用いられるものである。
本実施形態では、Te、Geに加えて、さらに、Si,Cu,Zn,Ga,Zr,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Biから選択される1又は2以上の添加元素を合計で15原子%以下の範囲内で含んでいてもよい。
なお、上述の添加元素を含有する場合には、添加元素相、あるいは、TeGe合金相11、Te単体相12、Ge単体相13に添加元素の一部が含まれた相が形成されることになる。
成膜されたTe−Ge系薄膜の記録特性を確保するためには、Teの含有量を70原子%以下の範囲内に設定する必要がある。また、Geの含有量が70原子%を超えるとTe−Ge系スパッタリングターゲットの焼結密度が低くなり、スパッタ時の割れやパーティクルの原因となる。
そこで、本実施形態では、Teの含有量を30原子%以上70原子%以下に規定し、残部をGe及び不可避不純物とした組成とすることで、Geの含有量が70原子%を超えないように設定している。
なお、成膜されたTe−Ge系薄膜の記録特性をさらに向上させるために、TeとGeの原子比Te/Geを0.7≦Te/Ge≦1.5の範囲内に設定することが好ましい。
上述のSi,Cu,Zn,Ga,Zr,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Biといった元素は、成膜されたTe−Ge系薄膜の耐久性及び保存性を向上させる作用効果を有するとともに、記録層として使用した場合に記録感度及び記録密度を向上させる作用効果を有する元素である。このため、要求特性に応じて適宜添加することが望ましい。ただし、前記添加元素の合計含有量が15原子%を超えると、焼結時に添加元素が化学反応し、焼結体に割れが生じやすくなるおそれがある。
そこで、本実施形態では、Si,Cu,Zn,Ga,Zr,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Biから選択される1又は2以上の添加元素の合計含有量を15原子%以下に規定している。
なお、成膜されたTe−Ge系薄膜の耐久性及び保存性、あるいは、記録感度及び記録密度を確実に向上させるためには、前記添加元素の合計含有量を3.0原子%以上とすることが好ましく、5.0原子%以上とすることがさらに好ましい。また、焼結時の割れの発生を確実に抑制するためには、前記添加元素の合計含有量を12.0原子%以下とすることが好ましく、10.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態のTe−Ge系スパッタリングターゲットのスパッタ面の組織観察において、TeとGeとを含むTeGe合金相11の面積率が10%未満である場合には、Te単体相12及びGe単体相13の面積率が多くなり、ディスクに成膜されたTe−Ge系薄膜において、ディスクの内周側でTeの含有量が低く(Geの含有量が高く)、外周側でTeの含有量が高く(Geの含有量が低く)なるような組成分布となる。一方、TeGe合金相の面積率が90%を超える場合には、ディスク上にTe−Ge系薄膜を成膜した場合には、ディスクの内周側でTeの含有量が高く(Geの含有量が低く)、外周側でTeの含有量が低く(Geの含有量が高く)なるような組成分布となる。
よって、本実施形態では、TeとGeとを含むTeGe合金相11の面積率を10%以上90%以下に規定することにより、成膜されたTe−Ge系薄膜においてGe及びTeの組成分布を相殺し、組成ばらつきを抑制している。
なお、成膜されたTe−Ge系薄膜における組成ばらつきを確実に抑制するためには、TeGe合金相11の面積率の下限を50%以上とすることが好ましく、60%以上とすることがさらに好ましい。また、TeGe合金相11の面積率の上限を80%以下とすることが好ましく、70%以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態に係るTe−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法は、図2に示すように、所定の配合比で配合された原料粉末を混合する原料粉末混合工程S01と、混合された原料粉末を加熱して焼結させる焼結工程S02と、得られた焼結体を加工する加工工程S03と、を備えている。
Te粉末は、純度が99.9質量%以上とされ、メディアン径(D50)が1μm以上80μm以下の範囲内とされている。
Ge粉末は、純度が99.9質量%以上とされ、メディアン径(D50)が20μm以上80μm以下の範囲内とされている。
TeGe合金粉末は、製造されるTe−Ge系スパッタリングターゲットに応じた組成とされ、メディアン径(D50)が90μm以下とされている。
ここで、Te粉末のメディアン径(D50)が1μm未満の場合には、Te粉末の比表面積が大きくなって酸化膜が形成されやすくなり、焼結密度を十分に向上させることができなくなるおそれがある。一方、Te粉末のメディアン径(D50)が80μmを超える場合には、スパッタ時の異常放電及びパーティクルが発生しやすくなるおそれがある。
よって、本実施形態では、Te粉末のメディアン径(D50)を1μm以上80μm以下の範囲内に設定している。
なお、焼結密度を確実に向上させるためには、Te粉末のメディアン径(D50)の下限を3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがさらに好ましい。また、スパッタ時の異常放電及びパーティクルの発生を確実に抑制するためには、Te粉末のメディアン径(D50)の上限を50μm以下とすることが好ましく、40μm以下とすることがさらに好ましい。
同様に、Ge粉末のメディアン径(D50)が20μm未満の場合には、Ge粉末の比表面積が大きくなって酸化膜が形成されやすくなり、焼結密度を十分に向上させることができなくなるおそれがある。一方、Ge粉末のメディアン径(D50)が80μmを超える場合には、スパッタ時の異常放電及びパーティクルが発生しやすくなるおそれがある。
よって、本実施形態では、Ge粉末のメディアン径(D50)を20μm以上80μm以下の範囲内に設定している。
なお、焼結密度を確実に向上させるためには、Ge粉末のメディアン径(D50)の下限を30μm以上とすることが好ましく、40μm以上とすることがさらに好ましい。また、スパッタ時の異常放電及びパーティクルの発生を確実に抑制するためには、Ge粉末のメディアン径(D50)の上限を70μm以下とすることが好ましく、60μm以下とすることがさらに好ましい。
上述のように、TeGe合金粉末は、製造されるTe−Ge系スパッタリングターゲットに応じた組成とされている。このTeGe合金粉末の製造方法について、図3のフロー図を参照して説明する。
まず、Te原料及びGe原料を準備し、これらを所定の組成比となるように秤量する(配合工程S11)。なお、Te原料の純度は、99.99質量%以上とすることが好ましい。また、Ge原料の純度は、99.99質量%以上とすることが好ましい。
次に、秤量されたTe原料及びGe原料を、真空若しくは不活性ガス雰囲気中において溶解温度800℃以上1000℃以下の条件で溶解して鋳造し、TeGe合金インゴットを製出する(溶解鋳造工程S12)。なお、鋳造後はTeGe合金インゴットを自然冷却した。
次に、得られたTeGe合金インゴットを粉砕する(粉砕工程S13)。本実施形態では、振動ミルを用いてTeGe合金インゴットを機械粉砕した。
そして、TeGe合金インゴットの粉砕片を篩分けし、TeGe合金粉末を得る(整粒工程S14)。本実施形態では、篩分けされたTeGe合金粉末のメディアン径(D50)が90μm以下となるように、篩分け条件を設定した。
本実施形態に係るTe−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法においては、上述した原料粉末を、所定の組成比となるように秤量するとともに、これらの原料粉末を混合する。本実施形態においては、秤量された原料粉末をボールミルによって乾式混合した。なお、混合時間を3時間以上12時間以下の範囲内に設定した。
次に、上述のようにして混合粉砕された原料粉末(混合粉末)をモールドに充填し、真空若しくは不活性ガス雰囲気中で焼結を行う。本実施形態では、焼結温度を250℃以上450℃以下、圧力を300kgf/cm2(29.4MPa)以上1000kgf/cm2(98MPa)以下の範囲内とされたホットプレス焼結を行った。なお、焼結後は自然冷却した。
焼結工程S02で得られた焼結体に対して切削加工又は研削加工を施すことにより、所定形状のTe−Ge系スパッタリングターゲットに加工する。
さらに、本実施形態では、添加元素の含有量の合計が15原子%以下に制限されているので、焼結時における割れの発生を抑制することができる。
例えば、本実施形態では、原料粉末混合工程S01において、ボールミルを用いて原料粉末を混合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の方法によって原料粉末を混合してもよい。
また、本実施形態では、焼結工程S02において、ホットプレス焼結によって焼結するものとして説明したが、これに限定されることはなく、熱間静水圧プレス等の他の焼結方法を用いてもよい。
実施例1として、Teの含有量が60原子%とされ、残部がGe及び不可避不純物とされたTe−Ge系スパッタリングターゲットを作製した。
また、TeGe合金粉末として、Teの含有量が60原子%、残部がGe及び不可避不純物とされた組成とされたものを準備した。
なお、Te粉末のメディアン径、Ge粉末のメディアン径、TeGe合金粉末のメディアン径を表1に示す。なお、Te粉末、Ge粉末、TeGe合金粉末のメディアン径は、レーザー回折散乱法で測定した粒度分布から算出した。
混合された原料粉末をグラファイト製モールドに充填し、圧力:600kgf/cm2(58.9MPa)、保持温度:350℃、保持時間:2時間の条件でホットプレス焼結することにより、Te−Ge焼結体を作製した。
そして、得られたTe−Ge焼結体を機械加工して直径:125mm、厚さ:5mmのTe−Ge系スパッタリングターゲットを作製した。
EPMAの元素マッピング(視野面積:672μm×1024μm)において、ピーク強度比を色の濃淡で表し、Te単体相、Ge単体相及びTeGe合金相の面積率を算出した。
製造されたTe−Ge系スパッタリングターゲットの外観を目視観察し、割れの有無を評価した。評価結果を表2に示す。
まず、得られた製造されたTe−Ge系スパッタリングターゲットの密度D1を、実寸した寸法から算出した体積と重量から求めた。
次に、当該組成のTe−Ge系スパッタリングターゲットの理論密度D0は、元素A,B,C,Dによる合金において、
元素Aの含有量をWa(mass%)、密度をDa(g/cm3)、
元素Bの含有量をWb(mass%)、密度をDb(g/cm3)、
元素Cの含有量をWc(mass%)、密度をDc(g/cm3)、
元素Dの含有量をWd(mass%)、密度をDd(g/cm3)、
とするとき、以下の式で算出した。
D0=100/(Wa/Da+Wb/Db+Wc/Dc+Wd/Dd)
そして、得られた理論密度D0と測定された密度D1から、相対密度を求めた。
次に、上述のTe−Ge系スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これをスパッタ装置(ワールドエンジニアリング製)に装着し、以下の条件にてスパッタリング成膜を実施した。
雰囲気:Ar
圧力:0.5Pa
Ar流量:50sccm
基板:無アルカリガラス
膜厚:300nm
上述のスパッタ条件で連続1時間の放電を実施した際のアーク数を装置付属のアークカウントにて計測した。
EPMAの定量分析にて最内周から最外周にかけて5mm間隔で値を測定し、その最大差を算出した。
また、要素粉末(Te粉末及びGe粉末)の配合比を100質量%とした試験No.11では、ターゲットの組織観察においてTeGe合金相の面積率が7.8%とされており、TeGe合金相が十分に存在していないことから、成膜されたTe−Ge系薄膜におけるTe組成の最大差が大きくなっていることが確認される。
また、Ge粉末のメディアン径(D50)が17μmとされた試験No.4、及び、Te粉末のメディアン径(D50)が0.6μmとされた試験No.7においては、ターゲットの相対密度が90%未満となっていた。
実施例2として、Teの含有量が70原子%とされ、残部がGe及び不可避不純物とされたTe−Ge系スパッタリングターゲットを作製した。
また、TeGe合金粉末として、Teの含有量が70原子%、残部がGe及び不可避不純物とされた組成とされたものを準備した。
なお、Te粉末のメディアン径、Ge粉末のメディアン径、TeGe合金粉末のメディアン径を表3に示す。
また、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3として、Teの含有量が45原子%とされ、残部がGe及び不可避不純物とされたTe−Ge系スパッタリングターゲットを作製した。
また、TeGe合金粉末として、Teの含有量が45原子%、残部がGe及び不可避不純物とされた組成とされたものを準備した。
なお、Te粉末のメディアン径、Ge粉末のメディアン径、TeGe合金粉末のメディアン径を表5に示す。
また、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例4として、Teの含有量が30原子%とされ、残部がGe及び不可避不純物とされたTe−Ge系スパッタリングターゲットを作製した。
また、TeGe合金粉末として、Teの含有量が30原子%、残部がGe及び不可避不純物とされた組成とされたものを準備した。
なお、Te粉末のメディアン径、Ge粉末のメディアン径、TeGe合金粉末のメディアン径を表7に示す。
また、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例5として、Te及びGeに加えて、Si,Cu,Zn,Ga,Zr,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Biから選択される1又は2以上の添加元素を添加したTe−Ge系スパッタリングターゲットを作製した。
具体的には、Teの含有量が60原子%とされ、前記添加元素の含有量が表9に記載の含有量とされ、残部がGe及び不可避不純物である組成のTe−Ge系スパッタリングターゲットを作製した。
また、TeGe合金粉末として、表9に示す組成に調整したものを準備した。なお、このTeGe合金粉末中に上述の添加元素を添加した。
なお、Te粉末のメディアン径、Ge粉末のメディアン径、TeGe合金粉末のメディアン径を表9に示す。
また、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表10に示す。
これに対して、添加元素の含有量が15原子%以下とされた試験No.51〜64においては、ターゲットに割れが確認されなかった。また、成膜されたTe−Ge系薄膜において、組成のばらつきが抑制されていた。
12 Te単体相
13 Ge単体相
Claims (6)
- Teを30原子%以上70原子%以下含有し、残部がGe及び不可避不純物からなる組成を有し、
スパッタ面の組織観察の結果、TeとGeとを含むTeGe合金相と、Te単体相と、Ge単体相と、を有し、前記TeGe合金相の面積率が10%以上90%以下の範囲内とされていることを特徴とするTe−Ge系スパッタリングターゲット。 - さらに、Si,Cu,Zn,Ga,Zr,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Biから選択される1又は2以上の添加元素を合計で15原子%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1に記載のTe−Ge系スパッタリングターゲット。
- Teを30原子%以上70原子%以下含有し、残部がGe及び不可避不純物からなる組成を有するTe−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法であって、
Te粉末と、Ge粉末と、TeとGeとを含むTeGe合金粉末と、を混合する原料粉末混合工程と、混合された原料粉末を焼結する焼結工程と、を有し、
前記原料粉末混合工程では、前記TeGe合金粉末の配合比を、5質量%以上80質量%以下の範囲内とすることを特徴とするTe−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法。 - 前記原料粉末混合工程では、さらに、Si,Cu,Zn,Ga,Zr,Pd,Ag,In,Sn,Sb,Biから選択される1又は2以上の添加元素の粉末、及び、前記添加元素を添加した前記TeGe合金粉末のいずれか一方又は両方を用いて、
前記添加元素の含有量を合計で15原子%以下の範囲内とすることを特徴とする請求項3に記載のTe−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法。 - 前記Te粉末のメディアン径(D50)が1μm以上80μm以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のTe−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記Ge粉末のメディアン径(D50)が20μm以上80μm以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のTe−Ge系スパッタリングターゲットの製造方法。
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