JP6535949B2 - 第二級アルコールの保管方法および充填体 - Google Patents

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Description

本発明は、第二級アルコールの保管方法、及び該第二級アルコールを容器に充填した充填体に関する。
一般に第二級アルコールは、オレフィンを水和反応させて製造する水和法、液相酸化法、オキソ法又は発酵法等により製造されている。第二級アルコールからケトンへの酸化反応は、第二級アルコールの種類によって程度が異なるものの、常温・常圧の空気雰囲気下でも進行することから、長期保管時における品質劣化(酸化劣化)をもたらす重大な反応である。さらに、アルコールの空気酸化が進行すると過酸化物が生成し、更には副次的生成物としてカルボン酸を与えることも知られており、非常に深刻な問題となる。
上記第二級アルコールの酸化劣化を防ぐためには脱酸素を行えばよいが、これを完全に行うことは難しく、例えば、貯蔵容器内を不活性ガスで置換・充填して脱酸素を行ったとしても、脱酸素後のアルコールを密閉した状態で貯蔵するためには耐圧性を備えた特殊な貯蔵容器が必要であり、一方、密閉しないままで酸素の混入を防ぐためには容器内に不活性ガスを供給し続けなければならず、容易ではない。さらに、大容量容器等での貯蔵や輸送を鑑みると、こうした高度な脱酸素状態でなくとも、簡易に酸化劣化を防ぐことができる方法が望まれていた。
多くの有機化合物は空気中で酸素により穏やかな条件下で酸化されるが、これは一般にラジカル反応として進行するものであり、上記第二級アルコールの酸化劣化も同様である。第二級アルコールから生じたラジカルは、一般に酸素と反応し易く、その結果生成した過酸化水素は新たなラジカルを生成し、また多くの有機化合物と酸素とが反応することを促進する。即ち、第二級アルコールの酸化は、酸化反応によって生じる過酸化水素がラジカルを増加させ、加速度的に進行する。
他方、酸化を積極的に利用して各種の有用な物質を製造することが知られている。たとえば、特許文献1には、安定なニトロキシルフリーラジカル誘導体、硝酸塩源、臭化物源、及びカルボン酸を含有する触媒組成物の存在で第一級アルコール又は第二級アルコールを酸素含有ガスと反応させて、アルデヒドやケトンを得る、アルコールの酸化方法が記載されている。
特開2006−176527号公報
本発明の課題は、第二級アルコールの酸化劣化を抑制し、長期保管することが可能な、第二級アルコールの保管方法を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、第二級アルコールの液中に、第二級アルコールの酸化反応によって生じるペルオキシラジカルに対する電子供与体である、Mg,Al,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb,及びTiから選ばれる単体金属、又はこれら金属の一種類以上を含有する合金から選ばれる少なくとも一種からなり、且つその表面の少なくとも一部に酸化膜の非形成面を有する金属固体を存在させることにより、酸化劣化の進行を高度に抑制でき、ケトンの生成を著しく低減できることを見出し、発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、第二級アルコールを保管するに際して、液中に、Mg,Al,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb,及びTiから選ばれる単体金属、又はこれら金属の一種類以上を含有する合金から選ばれる少なくとも一種からなり、且つその表面の少なくとも一部に酸化膜の非形成面を有する金属固体を存在させることを特徴とする第二級アルコールの保管方法である。
前記単体金属は、Mg又はFeであることが特に好ましい。また、前記合金は、黄銅,ステンレス鋼,又はNi−Cr合金であることが特に好ましい。
さらに、本発明では、容器に第二級アルコールが充填されてなる充填体であって、液中に、Mg,Al,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb,及びTiから選ばれる単体金属、又はこれら金属の一種類以上を含有する合金から選ばれる少なくとも一種からなり、且つその表面の少なくとも一部に酸化膜の非形成面を有する金属固体が存在することを特徴とする第二級アルコール充填体も提供される。
本発明の第二級アルコールの保存方法によれば、酸化劣化の進行を高度に抑制でき、また、第二級アルコールの純度を低下させることなく、長期保管が可能となる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の第二級アルコールの保管方法は、液中に、第二級アルコールの酸化反応によって生じるラジカルに対する電子供与体を存在させることを最大の特徴とし、これにより該第二級アルコールの酸化劣化を効果的に抑制することができる。その理由は、必ずしも明らかではないが、本発明者等は次のような機構を考えている。
すなわち、前述したとおり、アルコールの酸化は、ラジカル反応機構による。例えば、第二級アルコールの酸化劣化は、熱や光によって、あるいは過酸化物の分解により生じたラジカルとアルコールが式1の如く反応しラジカルを生成し、生成したラジカルは、式3,式4,式5の如く反応しやすいため、液中に徐々に過酸化水素が増加し、アルコールの酸化反応は、徐々に加速されながら進行する。
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本発明において、第二級アルコールは保管条件下液体のものであれば特に限定されず、具体的には、イソプロピルアルコール、シクロプロパノール、2−ブタノール、2−メチルシクロプロパノール、シクロブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−エチルシクロプロパノール、2,3−ジメチルシクロプロパノール、α−メチルシクロプロパンメタノール、2−メチルシクロブタノール、3−メチルシクロブタノール、シクロペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−プロピルシクロプロパノール、2−イソプロピルシクロプロパノール、2−エチル−2−メチルシクロプロパノール、2−エチル−3−メチルシクロプロパノール、α,1−ジメチルシクロプロパンメタノール、α,2−ジメチルシクロプロパンメタノール、α−エチルシクロプロパンメタノール、α−メチルシクロプロパンエタノール、2−エチルシクロブタノール、3−エチルシクロブタノール、2,2−ジメチルシクロブタノール、2,3−ジメチルシクロブタノール、2,4−ジメチルシクロブタノール、α−メチルシクロブタノール、シクロヘキサノール、2−ヘプタノール、シクロヘプタノール、2−オクタノール、シクロオクタノール、2−ノナノール、シクロノナノール、2−デカノール、α−メチルベンゼンメタノール、α−エチルベンゼンメタノール、α−メチルベンゼンエタノール、α−(1−メチルエチル)ベンゼンメタノール等の炭素数3〜10のものが好ましい。なかでも、イソプロピルアルコールは、様々な溶剤、合成原料等として広い用途に使用されるところ、本発明の酸化劣化を防止する効果も、より顕著に発揮されて、その品質を維持するうえで特に好ましい。
本発明において電子供与体は、上記第二級アルコールの酸化反応によって生じるラジカルに電子を供与する働きをするものであれば、有機化合物、無機物から特に制限されずに使用できる。このうち有機化合物としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(以下、「TEMPO」と略する)若しくはそのデヒドロ体、又はこれらの4−置換誘導体が好適である。 TEMPO類は、ニトロキシラジカルの一種であって、一般に、第一級アルコールに特異的に作用し、第一級アルコールを酸化してアルデヒドを製造することが知られている。しかし、第二級アルコールに対しては、単独では酸化作用を示さず、逆に、第二級アルコールの酸化反応の過程で生じるラジカルに対する電子供与体として作用し、酸化反応を抑制する効果を発揮する。
上記作用は、TEMPOのデヒドロ体や、TEMPO若しくはそのデヒドロ体の4−置換誘導体でも同様に発揮される。上記TEMPOのデヒドロ体とは、TEMPOが脱水素された構造を有し、具体的には3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシが挙げられる。TEMPO若しくはそのデヒドロ体の4位の置換基としては、置換可能な有機基であれば制限無く適用できるが、好適には、アルキル基、アルコキシ基、オキソ基、ヒドロキシ基、アシル基、アセトアミド基、アセトアミノ基、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられる。これらの4位の置換基としての基は、炭素数が1〜20のものが好ましい。
TEMPOの4−置換誘導体として、具体的には、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−MeO−TEMPO)、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−オキソ−TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO)、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(BnO−TEMPO)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(AA−TEMPO)、及び4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が挙げられる。
TEMPOのデヒドロ体の4−置換誘導体として、具体的には、3,6−ジヒドロ−2,2,4,6,6−ペンタメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ、4−エチニル−3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ、4−アミノ−3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ、4−(ヒドロキシメチル)−3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ、4−ブチル−3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ、3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−4−フェニル−1(2H)−ピリジニルオキシ、3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−4(1−ピロリジニル)−1(2H)−ピリジニルオキシ等が挙げられる。
さらに、こうしたTEMPO若しくはそのデヒドロ体の4−置換誘導体としては、前記TEMPOが4位で連結し1分子内に複数のピペリジン−1−オキシル構造を有する化合物や、前記TEMPOのデヒドロ体が4位で連結し1分子内に複数の1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−1−オキシル構造を有する化合物も好適に使用できる。具体的には、TEMPOが4位で連結したものとして、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシル−4−イル)セバカート等、TEMPOのデヒドロ体が4位で連結したものとして、4,4’−(1,4−ブタンジイル)ビス[3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ]、4,4’−(2,5−チオフェンジイル)ビス[3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ]、4,4’−(1,4−ピペラジンジイル)ビス[3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニルオキシ]等が挙げられる。また、上記1分子内に複数のピペリジン−1−オキシル構造を有する化合物、若しくは1分子内に複数の1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−1−オキシル構造を有する化合物は、オリゴマー構造や、ポリマー構造であってもよい。
こうしたTEMPO若しくはそのデヒドロ体、又はこれら4−置換誘導体(以下、これらを「TEMPO類」と略する)の中でも、入手が容易で安価であることからTEMPOであることが好ましい。上記TEMPO類は、単独で又は複数種類を混合物として使用することができる。
次に、第二級アルコールに存在させる電子供与体の無機物としては、該第二級アルコールの保管環境で、電子を放出し、自身は陽イオンとなる金属類が挙げられる。この場合、前述のTEMPOと同様に、酸化の初期において生成したラジカルに対し、電子を供与してラジカルを失活し、自身は陽イオンとなる。
本発明において電子供与体として液中に存在させる金属は、係るラジカルに対する電子供与作用を発揮させるために、比較的イオン化エネルギーが小さい、即ち、イオン化しやすい金属である必要がある。一般には、Mg,Al,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb,及びTiから選ばれる単体金属、又はこれら金属の一種類以上を含有する合金から選ばれる少なくとも一種が該当する(以下、これらを「金属類」と称する)。このうち、単体金属としては、Mg又はFeが酸化劣化の抑制効果が高く好ましい。他方、合金としては、黄銅,ステンレス鋼,又はNi−Cr合金が、酸化劣化の抑制効果が高く好ましい。本発明において、これら金属類のうち、2種類以上を併用しても良い。
本発明において、上記金属類の形状は特に限定されず、塊状、粒状、針金状、板状、粉状またはそれらを組み合わせた形状であることができる。比表面積が大きければ大きいほどラジカルとの接触面積が大きくなるため好ましいが、固液分離が容易であること、金属類の回収が容易であることなど、管理の容易さから粒状、もしくは針金状であることが好ましい。
ここで、これら金属類は、前記電子供与体として作用し得る単体金属又はこれら金属の一種類以上を含有する合金である他に、さらにその表面において、一部分として酸化膜の非形成面を有する必要がある。すなわち、斯様にイオン化傾向が高い金属類であっても、その表面が酸化されて酸化皮膜に覆われている(所謂、不動態と呼ばれる状態かそれに近い状態にある金属)と、イオン化は進まず、前記ラジカルに対する電子供与体としては実質作用しない。従って、表面の少なくとも一部分として、酸化膜の非形成面を有している必要がある。
通常、大気中に一定期間曝された前記金属は、表面が酸化されているため、適用前に表面の一部に酸化皮膜の除去処理を施し新鮮な面を露出させることが好ましい。係る酸化皮膜の除去処理としては、研磨や切削の他、化学的なエッチング処理等が挙げられる。特に、金属類の形状が針金状である場合には、適当な長さに切断すれば、その両端面に新鮮面(つまり、酸化膜の非形成面)が露出するため、そのまま本発明に適用でき最良である。
本発明において、第二級アルコールの液中に存在させる、前記電子供与体の存在量は、保管中において、該第二級アルコールが酸化して生成するペルオキシラジカルを効率良く不活化できる量であり、電子供与体や第二級アルコールの種類や、その保管環境(温度、時間、酸素濃度など)を勘案して、適宜に選定すれば良い。
電子供与体がTEMPO類の場合、TEMPO類1分子に含まれるピペリジン−1−オキシル構造の数をnとすると、その存在量は、一般的には、第二級アルコール100モルに対して、0.01/n〜100/nモルであることが好ましく、0.1/n〜50モル/nであることが更に好ましく、0.5/n〜10/nモルであることが特に好ましい。該TEMPO類は、ラジカルと反応して消費されるため、保管環境(温度、時間、酸素濃度など)を勘案し、消費された分を定期的に追加し、液中の存在量を上記範囲に維持することが好ましい。
他方、電子供与体が金属類の場合、その存在量は、一般的には、第二級アルコール1リットルに対して、1g以上であることが好ましく、2〜200gであることが更に好ましく、5〜100gであることが特に好ましい。
これら金属類に存在させる酸化膜の非形成面の割合は、第二級アルコール1リットルに対して少なくとも0.1cmあれば十分であり、特には1〜20cmであるのがより好ましい。前記金属類を針金状の形状で使用する場合、口径が6×10−3〜3×10−2cmであり、長さが1〜2cmのものを使用するのが一般的であるため、両端を使用前に切断し前記好適量で配合させれば、係る酸化膜の非形成面の好適な存在割合は通常、満足される。
該金属類は過剰に添加しても、電子を供与しイオンとなった金属の他は、容器内に固体として沈降して存在するため特に問題ない。該金属類は、前記好適範囲を満足すれば、長期に渡り使用してもよく、定期的に取り出して新しい金属類と交換しても良い。
本発明において第二級アルコールの保管は、一般に屋内屋外での保管が想定され、保管時の温度は特に制限されないが、一般的には−10℃以上であり、夏場の屋外であれば60℃以上になることもある。本発明の酸化劣化の抑制効果を十分に発揮させる観点からは、30℃以上であることが好ましく、40℃以上沸点未満であることが更に好ましい。
第二級アルコールを充填する容器は、該第二級アルコールを一時的、若しくは、長期において保存できるものであれば特に限定されず、具体的には、タンク、ガロン瓶、試薬瓶、ビーカー、輸送用のタンクローリー等が挙げられる。上記容器の材質は充填する第二級アルコールによって腐食されないものであれば特に制限されず、具体的には、金属、ガラス、プラスティック等が挙げられる。なお、容器の材質が金属であっても、通常、その内面は、それまでの大気との接触で酸化されているため、それが前記第二級アルコールの酸化反応によって生じるラジカルに対する電子供与体として作用する種であったとしても、その酸化劣化効果は通常、発揮されていない。
第二級アルコールを充填した容器において、上部に空間が空いており、ここが空気雰囲気であっても、本発明により第二級アルコールの酸化劣化は良好に抑制される。係る酸化劣化を、より高度に抑制するためには、こうした上部空間が空かないよう満杯に充填されているのが好ましく、また、こうした上部空間は、窒素ガス等の不活性ガスで置換されているのが好ましい。斯様な態様の場合でも、容器内への空気の混入を完全に防止するのは難しく、また、防止できたとしても、混入の危険性は残り、本発明の効果は発揮される。
保管中において、液は、撹拌、または循環させる等の手段により、液と電子供与体との接触を積極的に行うことは好ましい態様である。特に、屋外に設置された大容量の保管タンクにおいては、液の循環装置、若しくは、撹拌装置を備えていることが好ましく、たとえば、金属類を使用する場合、循環ライン内に金属類を存在させて液と金属とを積極的に接触させることができる。
本発明を用いて第二級アルコールの酸化を抑制した場合、液中に、未反応のTEMPO類及び自由電子を失ったTEMPO類由来の化合物、又は金属類及び金属イオンが残存し、結果として第二級アルコールの純度が低下することとなるが、要求される純度に応じて、必要であれば、公知の精製手段を用いて精製することができる。具体的には、電子供与体としてTEMPO類を使用した場合には、吸着担体による吸着除去を揚げることができる。具体的には、使用したTEMPO類を吸着可能なイオン交換樹脂やシリカゲル、メソポーラス材料等に接触担持させて濾別すればよい。
電子供与体として金属類を使用した場合には、未反応の金属類、即ち固体としての金属類は比重が大きいため、第二級アルコールの液中において沈降し分離が容易である。即ち、分離は、上澄みを採取することにより容易に分離されるが、メッシュやフィルターを用いて行うこともできる。ラジカルに電子供与した後の金属類、即ち液中に溶出した金属イオンは、イオン交換樹脂に担持させて濾別することにより容易に除去することができる。
たとえば、容器からの抜出し時に該抜き出し液を、イオン交換樹脂等と接触させることにより、また、その他の精製手段と組み合わせることにより、純度の高い第二級アルコールを得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
また、以下実施例において、酸化劣化を評価するため、以下の通り加速試験を行い、加速試験後の液中の第二級アルコールとケトン体の組成比により、評価を行った。
(1)第二級アルコールの酸化劣化に関する加速試験方法及び評価方法
i)加速試験方法
耐圧硝子工業製オートクレーブ(材質:ステンレス,SUS−316)10mlにアルコール(1ml)およびTEMPO類又は金属類を加え、酸素窒素混合ガス(酸素:窒素 21:79v/v)を充填した後に系を閉じ(標準条件10MPa)、135℃・24時間加熱撹拌を行った。
ii)評価方法
加速試験後得られた試料の一部を抜き取り、H−NMR、および13C−NMR測定を行った。得られたスペクトルの積分比から第二級アルコールとケトン体の組成比を算出した。
参考例1>
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)を1mol%添加した。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.79/0.21であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、削り状のマグネシウム(和光純薬工業株式会社製、turnings for Grignard)を0.1g添加した。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.72/0.28であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状銅(株式会社ダイドーハント製、0.9mmφ)を0.1g添加した。針金状銅は、直前に、1.9cmの長さに切断して用いた。この場合、両端の酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して12.7cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.47/0.53であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状鉄(株式会社ダイドーハント製、0.9mmφ亜鉛メッキ)を0.1g添加した。針金状鉄は、直前に、2.1cmの長さに切断して用いた。この場合、両端の酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して12.7cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.44/0.56であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状黄銅(株式会社ダイドーハント製、0.9mmφ)を0.1g添加した。針金状黄銅は、直前に、1.8cmの長さに切断して用いた。この場合、両端の酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して12.7cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.54/0.46であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状ステンレススチール(株式会社八幡ねじ製、SUS−304,0.9mmφ)を0.1g添加した。針金状ステンレススチールは、直前に、2.1cmの長さに切断して用いた。この場合、両端の酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して12.7cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.51/0.49であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状ニッケルクローム(株式会社八幡ねじ製、0.5mmφ)を0.1g添加した。針金状ニッケルクロームは、直前に、6.5cmの長さに切断して用いた。この場合、両端の酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して3.9cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.62/0.38であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状アルミニウム(株式会社ダイドーハント製、2.0mmφ)を0.1g添加した。針金状アルミニウムは、直前に表面を紙やすりで研磨し、2.1cmの長さに切断して用いた。この場合、酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して62.8cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、82.08/17.92であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状銅(株式会社ダイドーハント製、0.9mmφ)を0.1g添加した。針金状銅は、直前に表面を紙やすりで研磨し、1.9cmの長さに切断して用いた。この場合、酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して550cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.94/0.06であった。
<実施例
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、針金状黄銅(株式会社ダイドーハント製、0.9mmφ)を0.1g添加した。針金状黄銅は、直前に表面を紙やすりで研磨し、1.8cmの長さに切断して用いた。この場合、酸化膜の非形成面の面積割合は、イソプロピルアルコール1リットルに対して522cmであった。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、99.95/0.05であった。
<比較例1>
イソプロピルアルコール(IPA)1mlを電子供与体の添加なしに加速試験を行った。加速試験後の後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、78.65/21.35であった。
<比較例2>
イソプロピルアルコール(IPA)1mlに、2.1cmの長さに切断したのち、7日以上大気中に保管した針金状アルミニウム(株式会社ダイドーハント製、2.0mmφ)を、表面の研磨処理を行わないまま、0.1g添加した。加速試験後のイソプロピルアルコール/アセトンの組成比は、78.70/21.30であった。これは、アルミニウムが不動態を作りやすい金属であるため、使用の際には金属表面が酸化膜で覆われており、電子供与体として作用しなかったためと推察される。
Figure 0006535949

Claims (4)

  1. 第二級アルコールを保管するに際して、液中に、Mg,Al,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb,及びTiから選ばれる単体金属、又はこれら金属の一種類以上を含有する合金から選ばれる少なくとも一種からなり、且つその表面の少なくとも一部に酸化膜の非形成面を有する金属固体を存在させることを特徴とする第二級アルコールの保管方法。
  2. 単体金属が、Mg又はFeである請求項記載の第二級アルコールの保管方法。
  3. 合金が、黄銅,ステンレス鋼,又はNi−Cr合金である請求項記載の第二級アルコールの保管方法。
  4. 容器に第二級アルコールが充填されてなる充填体であって、液中に、Mg,Al,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb,及びTiから選ばれる単体金属、又はこれら金属の一種類以上を含有する合金から選ばれる少なくとも一種からなり、且つその表面の少なくとも一部に酸化膜の非形成面を有する金属固体が存在することを特徴とする第二級アルコール充填体。
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