ところで、上記特許文献1記載の放射線検出器の製造過程においては、樹脂枠上に形成された耐湿保護膜が、樹脂枠に沿ってカッターにより切断される。しかし、樹脂枠を小型化すると共に樹脂枠とシンチレータ層の外縁との距離を短くした状態において、カッターで耐湿保護膜を切断する作業には、相当の熟練度を要するため、生産性及び製造コストの観点から改善の余地がある。
そこで、本発明は、装置の小型化及びシンチレータ層の有効面積の大型化を両立すると共に生産性の向上が図られた放射線検出器の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る放射線検出器の製造方法は、1次元又は2次元に配列された複数の光電変換素子を含む受光部、及び光電変換素子と電気的に接続され且つ受光部の外側に配置された複数のボンディングパッドを有する光電変換素子アレイを準備し、放射線を光に変換するシンチレータ層を、受光部を覆うように光電変換素子アレイ上に積層する工程と、シンチレータ層の積層方向から見た場合に、シンチレータ層及びボンディングパッドから離間してシンチレータ層とボンディングパッドとの間を通り且つシンチレータ層を包囲するように、光電変換素子アレイ上に樹脂枠を形成する工程と、少なくとも光電変換素子アレイのシンチレータ層が積層される側の表面全体を覆うように保護膜を形成する工程と、樹脂枠の略中央部分に沿ってレーザ光を一筆書きの要領で走査しながら照射することで、保護膜を切断すると共に樹脂枠の一部を切断除去し、保護膜の外側の部分を除去すると共に樹脂枠の略中央部分に溝部を形成する工程と、保護膜の外縁を覆うように、樹脂枠に沿って被覆樹脂層を形成する工程と、を有する。
上記放射線検出器の製造方法では、保護膜の外側の部分を除去すると共に樹脂枠の略中央部分に溝部を形成する工程において、積層方向から見た場合に、保護膜の外縁及び溝部が角部において外側に凸の弧状となるように、レーザ光を走査してもよい。
一側面に係る放射線検出器は、1次元又は2次元に配列された複数の光電変換素子を含む受光部、及び光電変換素子と電気的に接続され且つ受光部の外側に配置された複数のボンディングパッドを有する光電変換素子アレイと、受光部を覆うように光電変換素子アレイ上に積層され、放射線を光に変換するシンチレータ層と、シンチレータ層の積層方向から見た場合に、シンチレータ層及びボンディングパッドから離間してシンチレータ層とボンディングパッドとの間を通り且つシンチレータ層を包囲するように、光電変換素子アレイ上に形成された樹脂枠と、シンチレータ層を覆い、樹脂枠上に位置する外縁を有する保護膜と、を備え、樹脂枠の内縁とシンチレータ層の外縁との間の第1距離は、樹脂枠の外縁と光電変換素子アレイの外縁との間の第2距離よりも短くなっており、保護膜の外縁、及び樹脂枠において保護膜の外縁に対応する対応領域は、レーザ光によって加工された状態となっている。
一側面に係る放射線検出器では、樹脂枠上の保護膜は、レーザ光により加工される。レーザ光による加工には、カッターによる切断と比較して熟練の技術が必要とされないので、生産性を向上することができる。また、レーザ光によれば、精度良く保護膜を切断することが可能であるため、樹脂枠を小型化することができる。また、樹脂枠は、シンチレータ層及びボンディングパッドから離間して形成されているので、製造時におけるレーザ光によるシンチレータ層及びボンディングパッドへの悪影響を抑えることができる。一方で、樹脂枠をシンチレータ層に近づけて配置することで、シンチレータ層の有効面積の大型化も図られている。したがって、本発明に係る放射線検出器によれば、装置の小型化及びシンチレータ層の有効面積の大型化を両立すると共に、生産性の向上を図ることができる。
上記放射線検出器では、保護膜の外縁及び対応領域は、上記積層方向から見た場合に、微細な波形状となっていてもよい。これにより、樹脂枠上の保護膜を被覆樹脂で覆う場合等において、保護膜の外縁及び対応領域と被覆樹脂との接触面積が増えるため、保護膜の外縁及び対応領域と被覆樹脂との接着をより強固にすることができる。
上記放射線検出器では、対応領域の高さは、樹脂枠の高さの1/3以下となっていてもよい。これにより、樹脂枠の下方に位置する光電変換素子アレイに対するレーザ光による悪影響をより効果的に抑制できる。
上記放射線検出器では、第1距離に対する第2距離の比率は、5以上となっていてもよい。このような比率とすることで、より効果的に、製造時におけるレーザ光によるボンディングパッドへの悪影響を抑制すると共に、シンチレータ層の有効面積を確保し、装置の小型化を図ることができる。
上記放射線検出器では、樹脂枠は、中央部が両縁部よりも高くなるように形成されており、樹脂枠の高さは、シンチレータ層の高さよりも低くなっていてもよい。これにより、樹脂枠を小型化すると共に、製造時におけるレーザ光によるシンチレータ層への悪影響をより効果的に抑制できる。
上記放射線検出器では、樹脂枠の内縁と樹脂枠の外縁との間の幅は、900μm以下であり、樹脂枠の高さは、450μm以下であってもよい。これにより、樹脂枠を小型化することでシンチレータ層の有効面積を確保しつつ、装置をより小型化することができる。
上記放射線検出器では、レーザ光によって加工された保護膜の外縁及び対応領域は、積層方向から見た場合に、外側に凸の弧状の角部を有する略矩形環状に形成されていてもよい。上記放射線検出器によれば、保護膜の角部(四隅のコーナー部分)を外側に凸の弧状(いわゆるR形状)とすることで、保護膜が角部において樹脂枠から剥離してしまうことを抑制できる。
上記放射線検出器は、保護膜の外縁を覆うように、樹脂枠に沿って配置された被覆樹脂層を更に備えてもよい。このような被覆樹脂層を備えることにより、保護膜の外縁を樹脂枠と被覆樹脂層とで挟み込んで固定することができる。これにより、保護膜の外縁において、保護膜が樹脂枠から剥離してしまうことを抑制できる。
上記放射線検出器では、シンチレータ層の周縁部は、シンチレータ層の外側に向かうにつれて高さが徐々に低くなるテーパ形状となっていてもよい。このように、シンチレータ層の周縁部の高さが外側ほど低くなるようにすることで、製造時においてレーザ光による悪影響がシンチレータ層に及ぶ領域を限定することができる。
上記放射線検出器では、保護膜は、光を反射させる金属膜を含んでいてもよい。これにより、シンチレータ層で発生した光が外に漏れるのを防ぐことができ、放射線検出器の検出感度を向上させることができる。
他の側面に係る放射線検出器の製造方法は、1次元又は2次元に配列された複数の光電変換素子を含む受光部、及び光電変換素子と電気的に接続され且つ受光部の外側に配置された複数のボンディングパッドを有する光電変換素子アレイを準備し、放射線を光に変換するシンチレータ層を、受光部を覆うように光電変換素子アレイ上に積層する工程と、シンチレータ層の積層方向から見た場合に、シンチレータ層及びボンディングパッドから離間してシンチレータ層とボンディングパッドとの間を通り且つシンチレータ層を包囲するように、光電変換素子アレイ上に樹脂枠を形成する工程と、少なくとも光電変換素子アレイのシンチレータ層が積層される側の表面全体を覆うように保護膜を形成する工程と、樹脂枠に沿ってレーザ光を照射することで、保護膜を切断し、保護膜の外側の部分を除去する工程と、を有し、樹脂枠を形成する工程では、樹脂枠の内縁とシンチレータ層の外縁との間の第1距離が、樹脂枠の外縁と光電変換素子アレイの外縁との間の第2距離よりも短くなるように、樹脂枠を形成する。
他の側面に係る放射線検出器の製造方法によれば、レーザ光によって樹脂枠上の保護膜を切断するので、カッターによる切断と比較して熟練の技術が必要とされず、生産性を向上することができる。また、レーザ光によって、精度良く保護膜を切断することが可能であるため、樹脂枠を小型化することができる。また、樹脂枠を、シンチレータ層及びボンディングパッドから離間して形成することで、保護膜切断時におけるレーザ光によるシンチレータ層及びボンディングパッドへの悪影響を抑えることができる。一方で、樹脂枠をシンチレータ層に近づけて形成することで、シンチレータ層の有効面積の大型化も図られる。
本発明によれば、装置の小型化及びシンチレータ層の有効面積の大型化を両立すると共に生産性の向上が図られた放射線検出器の製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図面における寸法、形状は実際のものとは必ずしも同一ではない。
まず、図1及び図2を参照して本実施形態に係る放射線検出器1の構成について説明する。図1及び図2に示されるように、放射線検出器1は、光電変換素子アレイ7、シンチレータ層8、樹脂枠9、保護膜13、及び被覆樹脂層14を備えている。光電変換素子アレイ7は、基板2、受光部3、信号線4、ボンディングパッド5、及びパッシベーション膜6を有している。保護膜13は、第1の有機膜10、無機膜(金属膜)11、及び第2の有機膜12を有している。
受光部3は、絶縁性の基板2(例えばガラス製基板)の中央部の矩形状領域に2次元に配列された複数の光電変換素子3aを含んで構成されている。光電変換素子3aは、アモルファスシリコン製のフォトダイオード(PD)や薄膜トランジスタ(TFT)等により構成されている。受光部3における各行又は各列の光電変換素子3aの各々は、信号読み出し用の信号線4により、外部回路(不図示)へ信号を取り出すためのボンディングパッド5と電気的に接続されている。
ボンディングパッド5は、基板2の外縁のうち隣接する2辺(図1における上辺、右辺)に沿って所定間隔毎に複数配置されており、信号線4を介して対応する複数の光電変換素子3aに電気的に接続されている。光電変換素子3a及び信号線4上には、絶縁性のパッシベーション膜6が形成されている。このパッシベーション膜6には、例えば窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。ボンディングパッド5は、外部回路との接続のために露出されている。
X線(放射線)を光に変換する柱状構造のシンチレータ8aが、受光部3を覆うように光電変換素子アレイ7上に積層されている。光電変換素子アレイ7における受光部3を含む略矩形状の領域(図1の破線で囲まれた領域)にシンチレータ8aが複数積層されることで、シンチレータ層8が形成されている。シンチレータ8aには、各種の材料を用いることができるが、例えば発光効率が良いTlドープのCsIを用いることができる。
シンチレータ層8の周縁部8bは、シンチレータ層8の外側に向かうにつれて高さが徐々に低くなるテーパ形状となっている。つまり、周縁部8bにおいて、シンチレータ層8の外側に形成されたシンチレータ8aほど、高さが低くなっている。ここで、周縁部8bは、下方に受光部3が形成されていない領域(有効画面外領域)、或いはX線画像生成における影響の小さい領域である。したがって、このようなテーパ形状の周縁部8bを設けることで、製造時においてレーザ光による悪影響が及ぶシンチレータ層8上の領域を限定することができる。ここで、周縁部8bの勾配角度、すなわち周縁部8bに形成されたシンチレータ8aの高さ位置をシンチレータ層8の内側から外側に向かって結んだ直線が基板2の上面に対してなす角度θは、20度〜80度の範囲に含まれる。
樹脂枠9は、シンチレータ層8の積層方向Aから見た場合に、シンチレータ層8とボンディングパッド5との間を通り且つシンチレータ層8を包囲するように、光電変換素子アレイ7上に形成されている。樹脂枠9の角部の形状は、外側に凸の弧状(いわゆるR形状)となっている。樹脂枠9は、例えばシリコン樹脂である。
樹脂枠9は、中央部が両縁部よりも高くなるように形成されており、樹脂枠9の高さd1は、シンチレータ層8の高さdよりも低くなっている。これにより、樹脂枠9を小型化すると共に、製造時におけるレーザ光によるシンチレータ層8への悪影響を抑制できる。ここで、樹脂枠9の高さd1は、光電変換素子アレイ7の上面位置と樹脂枠9の頂点位置との間の距離であり、シンチレータ層8の高さdは、シンチレータ層8に含まれるシンチレータ8aの最大の高さである。
樹脂枠9は、放射線検出器1を小型化する観点から、極力小さくすることが好ましい。より具体的には、樹脂枠9の高さd1は、450μm以下であり、樹脂枠9の幅d2は、900μm以下であることが好ましい。ここで、樹脂枠9の幅d2は、樹脂枠9の内縁E1(シンチレータ層8側の縁部)と樹脂枠9の外縁E2(ボンディングパッド5側の縁部)との間の幅である。
また、樹脂枠9の内縁E1とシンチレータ層8の外縁E3との間の距離(第1距離)D1は、樹脂枠9の外縁E2と光電変換素子アレイ7の外縁E4との間の距離(第2距離)D2よりも短くなっている。製造時におけるレーザ光によるボンディングパッド5への悪影響を抑制すると共に、シンチレータ層8の有効面積を確保するという観点から、第1距離D1に対する第2距離D2の比率は、5以上となっていることが好ましい。より具体的には、第1距離D1は、1mm以下であり、第2距離D2は、5mm以上であることが好ましい。これは、以下の理由による。
シンチレータ層8の外縁E3と樹脂枠9の内縁E1との間に隙間がなければシンチレータ層8の有効面積を最大化できる。しかし、製造時におけるレーザ光によるシンチレータ層8への悪影響や、樹脂枠9を形成する工程でのわずかな失敗(例えば樹脂枠9をシンチレータ層8上に形成してしまうこと)のおそれを考慮すると、第1距離D1を1mm以下の範囲で確保することが好ましい。また、第2距離D2を5mm以上とすることで、製造時におけるレーザ光によるボンディングパッド5への悪影響を考慮して、樹脂枠9とボンディングパッド5との間に十分な距離を確保できる。
シンチレータ層8は、保護膜13で覆われている。保護膜13は、第1の有機膜10、無機膜11、及び第2の有機膜12が、この順にシンチレータ層8側から積層されることによって形成されている。第1の有機膜10、無機膜11、及び第2の有機膜12は、いずれもX線(放射線)を透過し、水蒸気を遮断する性質を有している。具体的には、第1の有機膜10及び第2の有機膜12には、ポリパラキシリレン樹脂、ポリパラクロロキシリレン等を用いることができる。また、無機膜11は、光に対しては、透明、不透明、反射性のいずれであってもよく、無機膜11には、例えばSi、Ti、Cr等の酸化膜、金、銀、アルミ(Al)等の金属膜を用いることができる。無機膜11として、光を反射させる金属膜を用いることで、シンチレータ8aで発生した蛍光が外に漏れるのを防ぐことができ、放射線検出器1の検出感度を向上させることができる。本実施形態では、無機膜11として成形が容易なAlを用いた例について説明する。Al自体は空気中で腐蝕しやすいが、無機膜11は、第1の有機膜10及び第2の有機膜12で挟まれているため、腐蝕から守られている。
保護膜13は、例えばCVD法によって形成される。このため、保護膜13を形成した直後の状態では、保護膜13は、光電変換素子アレイ7の表面全体を覆うように形成されている。そのため、ボンディングパッド5を露出させるために、保護膜13は、光電変換素子アレイ7のボンディングパッド5よりも内側の位置で切断され、外側の保護膜13は、除去される。後述するように、保護膜13は、樹脂枠9の中央部付近でレーザ光により切断(加工)され、保護膜13の外縁13aは、樹脂枠9によって固定される。これにより、保護膜13が外縁13aから剥がれるのを防止することができる。ここで、保護膜13の切断には、例えば炭酸ガスレーザ(CO2レーザ)や超短パルス(ナノ秒やピコ秒)の半導体レーザ等を用いることができる。炭酸ガスレーザを用いることで、一度の走査(短時間)で保護膜13の切断が可能となり、生産性が向上する。なお、光電変換素子アレイ7、ボンディングパッド5、及びシンチレータ層8等への悪影響とは、例えば炭酸ガスレーザや超短パルスレーザを用いる場合には、熱的なダメージである。
保護膜13の外縁13aは、樹脂枠9上に位置しており、樹脂枠9に沿って配置された被覆樹脂層14によって樹脂枠9と共にコーティングされている。被覆樹脂層14には、保護膜13及び樹脂枠9への接着性が良好な樹脂、例えばアクリル系接着剤等を用いることができる。なお、被覆樹脂層14には、樹脂枠9と同じシリコン樹脂を用いてもよい。或いは、樹脂枠9に被覆樹脂層14と同じアクリル系接着剤を用いてもよい。
次に、図3を参照して、樹脂枠9及び保護膜13の角部(コーナー部分)について説明する。図3においては、樹脂枠9及び保護膜13の角部の状態を理解し易いように、被覆樹脂層14の図示を一部省略している。
詳しくは後述するが、放射線検出器1の製造工程においてレーザ光が樹脂枠9上の保護膜13に照射されることで、保護膜13のレーザ光が照射された部分が、切断除去されている。ここで、保護膜13は、非常に薄いため、炭酸ガスレーザのレーザ光により、樹脂枠9の一部も併せて切断除去されている。これにより、樹脂枠9の中央付近には、溝部(対応領域)9aが形成されている。保護膜13の外縁13a、及び、樹脂枠9において保護膜13の外縁13aに対応する溝部9aは、レーザ光によって加工された状態となっている。ここで、溝部9aの深さ(高さ)d3は、樹脂枠9の高さd1の1/3以下とされている。これにより、樹脂枠9の下方に位置する光電変換素子アレイ7に対するレーザ光による悪影響が抑制されている。
図3に示されるように、レーザ光によって加工された保護膜13の外縁13a及び溝部9aは、シンチレータ層8の積層方向Aから見た場合に、外側に凸の弧状の角部(図3に示す領域B参照)を有する略矩形環状に形成されている。また、保護膜13の外縁13a及び溝部9aは、積層方向Aから見た場合に、微細な波形状となっている。つまり、保護膜13の外縁13a及び溝部9aの表面は、例えばカッター等の刃物による平坦な切断面とは異なり、微小な凹凸形状を有するものとなっている。これにより、保護膜13の外縁13a及び溝部9aと被覆樹脂層14との接触面積が増えるため、保護膜13の外縁13a及び溝部9aと被覆樹脂層14との接着をより強固にすることができる。
次に、図4〜図8を参照して、本実施形態に係る放射線検出器1の製造方法について説明する。まず、図4(a)に示されるように、光電変換素子アレイ7を準備する。続いて、図4(b)に示されるように、受光部3を覆う光電変換素子アレイ7上の領域において、TlをドープしたCsIの柱状結晶を例えば蒸着法により600μm程度の厚さに成長させることで、シンチレータ層8を形成(積層)する。
また、図5(a)に示されるように、樹脂枠9を、光電変換素子アレイ7上に形成する。具体的には、シンチレータ層8の積層方向Aから見た場合に、シンチレータ層8とボンディングパッド5との間を通り且つシンチレータ層8を包囲するように、樹脂枠9を形成する。より具体的には、第1距離D1が1mm以下となり、第2距離D2が5mm以上となるような位置に、樹脂枠9を形成する。樹脂枠9の形成には、例えば自動X−Yコーティング装置を用いることができる。以下、説明の便宜上、光電変換素子アレイ7上にシンチレータ層8及び樹脂枠9が形成されたものを指して、単に「基板」という。
シンチレータ層8を形成するCsIは、吸湿性が高く、露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して溶解してしまう。そこで、例えばCVD法によって、基板全体の表面を、厚さ5〜25μmのポリパラキシリレンで被覆する。これにより、図5(b)に示されるように、第1の有機膜10が形成される。
続いて、図6(a)に示されるように、放射線が入射する入射面(放射線検出器1のシンチレータ層8が形成される側の面)側の第1の有機膜10の表面に、0.2μm厚さのAl膜を蒸着法により積層することによって、無機膜(金属膜)11を形成する。続いて、無機膜11が形成された基板全体の表面を、再度CVD法によって、厚さ5〜25μmのポリパラキシリレンで被覆する。これにより、図6(b)に示されるように、第2の有機膜12が形成される。第2の有機膜12には、無機膜11の腐蝕による劣化を防ぐ役割がある。以上の処理により、保護膜13が形成される。保護膜13の樹脂枠9の略中央部分よりも外側の部分(ボンディングパッド5を覆う部分)は、後段の処理によって除去される。このため、光電変換素子アレイ7の側面及び光電変換素子アレイ7のシンチレータ層8が積層される側とは反対側の表面には、第1の有機膜10及び第2の有機膜12を形成しなくともよい。
続いて、図7に示されるように、樹脂枠9に沿って、レーザ光Lを照射し、保護膜13を切断する。具体的には、表面に保護膜13が形成された基板全体を載せたステージ(不図示)に対して、レーザ光Lを照射するレーザ光ヘッド(不図示)を移動させることで、レーザ光Lを樹脂枠9に沿って一筆書きの要領で走査する。より具体的には、樹脂枠9の略中央部分(最も厚みのある部分)に沿って、レーザ光Lを走査する。これにより、樹脂枠9の下方の光電変換素子アレイ7に対するレーザ光による悪影響を抑制できる。
ここで、樹脂枠9の角部付近では、レーザ光Lの走査方向を切り替えるために走査速度を減速する必要がある。走査速度が減速された樹脂枠9上の位置においては、レーザ光の照射量が多くなるため溝部9aの深さが大きくなる。これにより、樹脂枠9の下方の光電変換素子アレイ7に対するレーザ光による悪影響が大きくなるという問題がある。しかし、本実施形態では、図3に示したように、保護膜13の外縁13a及び溝部9aが、角部において外側に凸の弧状(いわゆるR形状)となるように、レーザ光Lを走査させるので、角部におけるレーザ光Lの走査速度の減速度合を減らす、或いは、レーザ光Lの走査速度を減速せずに角部を加工することができる。これにより、樹脂枠9の角部付近において、樹脂枠9の下方の光電変換素子アレイ7に対するレーザ光による悪影響を抑制できる。
なお、樹脂枠9に沿って一筆書きの要領でレーザ光Lを走査する場合には、レーザ照射の開始位置と終了位置とで2重にレーザ照射がされる。このため、樹脂枠9の溝部9aの深さが大きくなり、樹脂枠9の下方の光電変換素子アレイ7に深刻な悪影響を与えてしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、1回のレーザ光Lの照射により生じる溝部9aの深さd3が樹脂枠9の高さd1の1/3以下となるように、レーザ光Lの照射位置や照射強度等が制御される。これにより、同じ位置に2重にレーザ照射がされても、溝部9aの深さがそれほど大きくならず、樹脂枠9の下方の光電変換素子アレイ7に深刻な悪影響を与えてしまうことを防止できる。
続いて、図8(a)に示されるように、保護膜13におけるレーザ光Lによる切断部から外側の部分(入射面と反対側の部分を含む)を除去することによって、ボンディングパッド5を露出させる。続いて、図8(b)に示されるように、樹脂枠9に沿って、保護膜13の外縁13a及び樹脂枠9を覆うように、紫外線硬化型のアクリル樹脂等の被覆樹脂をコーティングする。その後、紫外線照射によって、被覆樹脂を硬化させることで、被覆樹脂層14を形成する。
また、被覆樹脂層14を設けなくとも、保護膜13は、樹脂枠9を介して光電変換素子アレイ7に密着する。しかし、被覆樹脂層14を形成することによって、第1の有機膜10を含む保護膜13が樹脂枠9と被覆樹脂層14とに挟み込まれて固定され、光電変換素子アレイ7上への保護膜13の密着性がより一層向上する。したがって、保護膜13によりシンチレータ8aが密封されるので、シンチレータ8aへの水分の浸入を確実に防ぐことができ、シンチレータ8aの吸湿劣化による素子の解像度低下を防ぐことができる。
次に、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る放射線検出器1の動作について説明する。入射面側から入射したX線(放射線)は、保護膜13を透過してシンチレータ8aに達する。このX線は、シンチレータ8aによって吸収され、シンチレータ8aによってX線の光量に比例した光が放射される。放射された光のうち、X線の入射方向に逆行した光は、無機膜11で反射される。このため、シンチレータ8aで発生した光のほとんど全てが、パッシベーション膜6を介して光電変換素子3aに入射する。各々の光電変換素子3aは、光電変換により、入射した光の光量に対応する電気信号を生成し、一定時間蓄積する。この光の光量は、入射するX線の光量に対応している。つまり、各々の光電変換素子3aに蓄積される電気信号は、入射するX線の光量に対応することとなる。したがって、この電気信号によって、X線画像に対応する画像信号が得られる。光電変換素子3aに蓄積された画像信号は、信号線4を介してボンディングパッド5から順次読み出されて外部に転送される。転送された画像信号は、所定の処理回路で処理されることによって、X線画像が表示される。
以上述べた放射線検出器1では、樹脂枠9上の保護膜13は、レーザ光により切断(加工)される。レーザ光による加工には、カッターによる切断と比較して熟練の技術が必要とされないので、生産性を向上することができる。また、レーザ光によれば、手作業による場合よりも精度良く保護膜13を切断することが可能であるため、樹脂枠9を小型化することができる。また、樹脂枠9は、シンチレータ層8及びボンディングパッド5から離間して形成されているので、製造時におけるレーザ光によるシンチレータ層8及びボンディングパッド5への悪影響を抑えることができる。一方で、樹脂枠9をシンチレータ層8に極力近づけて配置することで、シンチレータ層8の有効面積の大型化も図られている。したがって、放射線検出器1によれば、装置(放射線検出器1を含む放射線検出装置)の小型化及びシンチレータ層8の有効面積の大型化を両立すると共に、生産性の向上を図ることができる。
また、本実施形態に係る放射線検出器1の製造方法によれば、レーザ光によって樹脂枠9上の保護膜13を切断するので、カッターによる切断と比較して熟練の技術が必要とされず、生産性を向上することができる。また、レーザ光によって、精度良く保護膜13を切断することが可能であるため、樹脂枠9を小型化することができる。また、樹脂枠9を、シンチレータ層8及びボンディングパッド5から離間して形成することで、保護膜13切断時におけるレーザ光によるシンチレータ層8及びボンディングパッド5への悪影響を抑えることができる。一方で、樹脂枠9をシンチレータ層8に近づけて形成することで、シンチレータ層8の有効面積の大型化も図られる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形が可能である。例えば、以上の説明では、保護膜13としてポリパラキシリレン製の有機膜10、12の間に無機膜11を挟み込んだ構造のものについて説明したが、第1の有機膜10と第2の有機膜12の材料は異なるものでも良い。また、無機膜11として腐蝕に強い材料を使用しているような場合は、第2の有機膜12自体を設けなくてもよい。また、受光部3として複数の光電変換素子3aが2次元に配列されたものについて説明したが、受光部3は、複数の光電変換素子3aが1次元に配列されたものであってもよい。そして、ボンディングパッド5は、矩形状の放射線検出器1の2辺でなく3辺に形成される場合もある。なお、上記実施形態においては、レーザ光ヘッドを移動させてレーザ加工する方法について説明したが、放射線検出器1を載置するステージを移動させて樹脂枠9及び保護膜13をレーザ加工してもよい。