JP6534834B2 - 熱膨張性微小球、その製造方法及び用途 - Google Patents
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一般に、熱膨張性微小球の外殻(シェル)を形成する重合体には、ガスバリア性が良好で、かつ加熱により軟化する熱可塑性樹脂が用いられる。熱膨張性微小球を加熱すると、発泡剤が気化し、その膨張する力が外殻に作用すると共に、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少するため、ある温度を境にして急激な膨張が起きる。この温度を「膨張開始温度」といい、加熱温度が膨張開始温度以上になると、前述した膨張現象により中空粒子(独立気泡体)が形成される。
前記ニトリル系単量体の重量割合が、前記単量体成分に対して30〜99重量%であると好ましい。また、前記ニトリル系単量体が、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを含むと好ましい。
前記熱膨張性微小球が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含むと好ましい。また、前記成分(A)の重量割合が、前記熱膨張性微小球に対して、0.0001〜0.1重量%であると好ましい。
前記油性混合物が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含むと好ましい。
本発明の組成物は、前記熱膨張性微小球、前記製造方法により得られる熱膨張性微小球及び前記中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。
本発明の成形物は、前記組成物を成形してなる。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れる熱膨張性微小球を、効率よく製造することができる。
本発明の中空粒子は、上記熱膨張性微小球及び/又は上記製造方法により得られる熱膨張性微小球を膨張してなるため、長時間加熱されたときの収縮度合いが小さく、熱耐久性に優れる。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記製造方法により得られる熱膨張性微小球及び上記中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物を含むため熱耐久性に優れ、成形することによって軽量な成形物を得ることができる。
本発明の成形物は、上記組成物を成形してなるため、軽量である。
本発明の熱膨張性微小球は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)11と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤(コア)12とから構成される熱膨張性微小球である。この熱膨張性微小球はコア−シェル構造をとっており、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。熱可塑性樹脂は、重合性成分を重合して得られる。
単量体成分は、重合性二重結合を1個有するラジカル重合性単量体を意味し、付加重合可能な成分である。また、架橋剤は重合性二重結合を複数有するラジカル重合性単量体を意味し、橋架け構造を熱可塑性樹脂に導入する成分である。
ニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。これらのニトリル系単量体は、1種又は2種以上を併用してもよい。
ニトリル系単量体がアクリロニトリル(AN)及びメタクリロニトリル(MAN)を含有する場合、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの重量比率(AN/MAN)については特に限定はないが、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜80/20、さらに好ましくは45/55〜75/25である。AN及びMAN重量比率が10/90未満であると、ガスバリア性が低下することがある。一方、AN及びMAN重量比率が90/10を超えると、十分な膨張倍率が得られないことがある。
なお、本発明における耐熱性とは、加熱時間が比較的短時間である場合に、熱膨張性微小球が高い温度で使用可能であり、かつ優れた膨張性を示すことを意味する。
ニトリル系単量体及び単量体(I)以外の単量体としては、特に限定はないが、たとえば、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基含有単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の無水カルボン酸系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。これらの単量体は、1種又は2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、重合性成分が、塩化ビニリデン、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び(メタ)アクリルアミド系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。重合性成分が塩化ビニリデンを含むとガスバリア性が向上する。重合性成分がカルボキシル基含有単量体を含むと耐熱性及び耐溶剤性が向上する。重合性成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含むと膨張挙動をコントロールし易くなる。重合性成分が(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上する。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物や、メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
成分(A)の重量割合は、熱膨張性微小球に対して、好ましくは0.0001〜0.1重量%、より好ましくは0.0001〜0.05重量%、さらに好ましくは0.0002〜0.01重量%、特に好ましくは0.0002〜0.005重量%である。該重量割合が0.0001重量%未満であると、熱耐久性を向上させる効果が十分得られないことがあり、0.1重量%を超えると熱膨張性微小球の膨張性能が低下することがある。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)については、特に限定はないが、好ましくは80〜350℃、より好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは120〜280℃、特に好ましくは140〜250℃である。熱膨張性微小球の最大膨張温度が80℃未満であると十分な耐熱性が得られないことがある。
熱膨張性微小球を加熱膨張して得られる中空粒子の耐圧性が要求される場合には、中空粒子の外殻の厚みを保持するために、熱膨張性微小球の最大膨張倍率は、好ましくは3倍以上、好ましい上限値は100倍である。最大膨張倍率が3倍未満であると、十分な軽量化効果が得られないことがある。最大膨張倍率が100倍を超えると、耐圧性が不十分となる場合がある。
熱膨張性微小球を樹脂組成物に混合し、該樹脂組成物を加熱により膨張させ、軽量化物を得る場合には、最大膨張倍率は20倍以上が好ましく、上限値は、好ましくは200倍である。最大膨張倍率が20倍未満であると、十分な軽量化効果が得られないことがある。最大膨張倍率が200倍を超えると、成形物等で面荒れの原因になることがある。
本発明の熱膨張性微小球は、以下に詳しく説明する懸濁重合による製造方法によって製造することができるが、この製造方法に限定されず、たとえば、界面重合法、逆相乳化法、乳化重合法等で製造することも可能であると考えられる。
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、上記で詳しく説明した特定の単量体成分を含む重合性成分及び発泡剤を含有する油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させる工程(以下では、重合工程ということがある。)を含む方法である。
重合工程では、重合開始剤を含有する油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;クメンハイドロパーキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルを挙げることができる。
これらの重合開始剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。重合開始剤は、油性混合物を水性分散媒に分散させる前にあらかじめ油性混合物に添加して用いてもよく、油性混合物を水性分散媒中に分散させた後の水系懸濁液に添加して用いてもよい。
本発明の製造方法では、油性混合物を水性分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、重合性成分を重合させる。
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、コロイダルシリカ、コロイダル炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、蓚酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、アルミナゾル等の難水溶性無機化合物の分散安定剤を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよく、得られる熱膨張性微小球の粒子径と重合時の分散安定性等を考慮してその種類が適宜選択される。なかでも、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカが好ましい。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよく、得られる熱膨張性微小球の粒子径と重合時の分散安定性等を考慮して、適宜選択される。
分散安定補助剤の配合量は、特に限定されないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜5重量部、より好ましくは0.0003〜2重量部である。
本発明の製造方法では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
中空粒子は、熱可塑性樹脂からなる外殻およびそれに囲まれた中空部から構成される。中空粒子は、(ほぼ)球状で、内部に大きな空洞に相当する中空部を有している。中空粒子の形状を身近な物品で例示するならば、軟式テニスボールを挙げることができる。
中空粒子は、図2に示すように、その外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成されていてもよい。以下では、微粒子充填剤が付着した中空粒子を「微粒子付着中空粒子」ということがある。ここでいう付着とは、単に中空粒子(1)の外殻(2)の外表面に微粒子充填剤(4および5)が、吸着された状態(4)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、中空粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(5)であってもよいという意味である。微粒子充填剤の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。
微粒子充填剤の平均粒子径については、適宜選択され、特に限定はないが、好ましくは0.001〜30μm、より好ましくは0.005〜25μm、さらに好ましくは0.01〜20μmである。
微粒子充填剤としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子本体の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
微粒子充填剤を構成する無機物は、また、合成炭酸カルシウム、フェライト、ゼオライト、銀イオン担持ゼオライト、ジルコニア、ミョウバン、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミナ繊維、セメント、ゾノトライト、酸化珪素(シリカ、シリケート、ガラス、ガラス繊維を含む)、窒化珪素、炭化珪素、硫化珪素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、活性炭、竹炭、木炭、フラーレン等であってもよい。
微粒子充填剤を構成する無機物や有機物は、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理されていてもよく、未処理のものでもよい。
乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−213930号公報に記載されている内部噴射方法を挙げることができる。この内部噴射方法は、熱膨張性微小球を含む気体流体を、出口に分散ノズルを備え且つ熱風流の内側に設置された気体導入管に流し、前記分散ノズルから噴射させる工程(噴射工程)と、前記気体流体を前記分散ノズルの下流部に設置された衝突板に衝突させ、熱膨張性微小球を前記熱風流中に分散させる工程(分散工程)と、分散した熱膨張性微小球を前記熱風流中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる工程(膨張工程)とを含む乾式加熱膨張法である。内部噴射方法では、原料となる熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の種類にかかわらず均一物性の中空粒子を得ることができるので好ましい。また、別の乾式加熱膨張法としては、日本国特開2006−96963号公報に記載の方法等がある。
湿式加熱膨張法としては、日本国特開昭62−201231号公報に記載の方法等がある。
本発明の組成物は、本発明の熱膨張性微小球、本発明の製造方法で得られる熱膨張性微小球及び本発明の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。基材成分としては特に限定はなく、無機成分及び/又は有機成分であればよい。以下では、本発明の熱膨張性微小球、本発明の製造方法で得られる熱膨張性微小球及び本発明の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物を単に粒状物ということがある。
無機成分としては、特に限定はないが、例えば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント等のセメント類;高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、電気炉還元スラグ等のスラグ;生石灰、消石灰等の石灰類;チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ジルコン、ジルコン酸バリウム、コージェライト、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、ムライト、酸化亜鉛、酸化錫、炭化珪素、窒化珪素、フェライト等のセラミック類等を挙げることができ、これらの無機成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
粒状物の重量割合は、基材成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜70重量部、より好ましくは0.5〜65重量部、さらに好ましくは1〜60重量部である。
混合方法は、特に限定はないが、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等により混合することが好ましい。
本発明の組成物は、基材成分や粒状物以外に、必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート等のバインダーや;エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等の分散剤等を含有していても良い。
本発明の組成物の用途としては、例えば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
基材成分として無機物を含む成形物は、さらに焼成することによって、セラミックフィルタ等が得られる。
以下の実施例及び比較例で挙げた熱膨張性微小球、中空粒子、組成物及び成形物等について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。以下では、熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
微小球の粒子径及び粒度分布の測定には、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(Microtrac ASVR 日機装社製)を使用した。体積基準の累積50%粒子径(D50)の値を平均粒子径とした。なお、体積基準の累積粒子径とは、全粒子を体積順に小さい側から積算して累積した分布の所定の比率に対する粒子の直径を意味する。
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
微小球及び中空粒子の真比重は、以下の測定方法で測定した。
真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB2)を秤量した。
d={(WS2−WS1)×(WB2−WB1)/100}/{(WB2−WB1)−(WS3−WS2)}
上記で、粒子として微小球及び中空粒子を用いて、真比重を計算した。
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作製し、その中に乾燥した微小球1.0gを均一になるように入れ、この箱を所定温度に設定されたギア式オーブン中に所定時間入れて微小球を加熱膨張させた。具体的には、ギア式オーブンの温度は50〜300℃の範囲で5℃間隔として設定し、加熱時間は1〜10分の範囲で1分間隔として設定した。それぞれの温度及び時間で加熱膨張させた微小球(中空粒子)の真比重を上記測定方法にしたがって測定し、それらの中で最も小さい真比重の値を示した温度を最大膨張温度(Tmax)とし、その真比重の値を最大膨張時真比重dmaxとした。
熱耐久性TDの評価は、上記で求めた最大膨張温度において実施した。具体的には、上記と同様の方法により、微小球を最大膨張温度で60分加熱膨張させて得られる中空粒子の真比重dsを測定し、熱耐久性TD(%)を下式により算出した。
熱耐久性TD(%)=(dmax/ds)×100
イオン交換水600gに、シリカ有効成分量が20重量%であるコロイダルシリカ80g、ポリビニルピロリドン1.0gおよびカルボキシメチル化されたポリエチレンイミン類(CMPEI;置換アルキル基:−CH2COONa、置換率:80%、重量平均分子量:5万)を0.10g加えた後、得られた混合物のpHを2.8〜3.2に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル160g、メタクリロニトリル120g、メチルメタクリレート20g、メタクロレイン0.0045g、エチレングリコールジメタクリレート1.0g、発泡剤としてのイソブタン35g、イソペンタン25g、成分(A)としてのトルエン0.0030g、プロパンニトリル0.0030g及び開始剤としての2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.0gを混合して油性混合物を調製した。水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(プライミクス社製、TKホモミキサー)により、回転数11000rpmで2分間分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.50MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度55℃で20時間重合反応した。重合後、重合生成物を濾過、乾燥して、微小球を得た。得られた微小球の物性を評価し、結果を表1に示した。
実施例A2〜A9及び比較例A1〜A9では、油性混合物を表1〜4に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして微小球をそれぞれ得た。さらに、その物性を評価し、結果を表1〜4に示した。
PVP:ポリビニルピロリドン
CMPEI:カルボキシメチル化ポリエチレンイミン・Na塩(置換アルキル基:−CH2COONa、置換率:80%、重量平均分子量:5万)
EDTA:エチレンジアミン4酢酸・4Na塩
AN:アクリロニトリル
MAN:メタクリロニトリル
MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
IBX:イソボルニルメタクリレート
VCl2:塩化ビニリデン
MAA:メタクリル酸
MAM:メタクリルアミド
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート
V−65:2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
OPP:ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(純度70重量%)
(未膨張PVC塗膜の作製)
実施例A1で得られた熱膨張性微小球1重量部に対してポリ塩化ビニル(PVC)(新第一塩化ビニル社製)25重量部とDINP(新日本理化社製)50重量部と炭酸カルシウム(備北粉化工業社製)24重量部を加えてコンパウンドを調製した。調製したコンパウンドをテフロン(登録商標)のシート上に1.5mm厚みで塗工して、ギア式オーブンにて100℃で10分間加熱してゲル化させて、未膨張PVC塗膜を得た。
上記未膨張PVC塗膜を、実施例A1の微小球の最大膨張温度に設定したギア式オーブン中で60分加熱して、膨張PVC塗膜を得た。
未膨張PVC塗膜の比重(dA)と膨張PVC塗膜の比重(dB)をそれぞれ測定して、発泡前後の比重低下率(=(dA−dB)×100/dA)を計算し、軽量性を評価した。その結果を表5に示した。比重低下率が大きいほど、軽量化、クッション性、弾力性、衝撃強度等の物性に優れていることになる。なお、PVC塗膜の比重は、島津製作所社製、精密比重計AX200を用いた液浸法にて測定した。
実施例B2、比較例B1及び比較例B2では、使用する微小球を表5に示すものにそれぞれ変更し、未膨張PVC塗膜を加熱する温度をそれぞれ使用する微小球の最大膨張温度に変更する以外は、実施例B1と同様にして膨張PVC塗膜をそれぞれ得た。得られた膨張PVC塗膜について、実施例B1と同様にして比重低下率を求め、その結果を表5に示した。
12 発泡剤
1 中空粒子(微粒子付着中空粒子)
2 外殻
3 中空部
4 微粒子充填剤(吸着された状態)
5 微粒子充填剤(めり込み、固定された状態)
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、
前記熱可塑性樹脂が重合性成分を重合して得られる共重合体から構成され、
前記重合性成分が、単量体成分としてニトリル系単量体と、単量体(I)とを必須に含み、
前記単量体(I)が、アクロレイン及びメタクロレインから選ばれる少なくとも1種の単量体であり、
前記単量体(I)の重量割合が、前記ニトリル系単量体100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である、
熱膨張性微小球。 - 前記ニトリル系単量体の重量割合が、前記単量体成分に対して30〜99重量%である、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
- 前記ニトリル系単量体が、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを含む、請求項1又は2に記載の熱膨張性微小球。
- 前記熱膨張性微小球が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
- 前記成分(A)の重量割合が、前記熱膨張性微小球に対して、0.0001〜0.1重量%である、請求項4に記載の熱膨張性微小球。
- 熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、
前記発泡剤及び重合性成分を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させる工程を含み、
前記重合性成分が、単量体成分としてニトリル系単量体と、単量体(I)とを必須に含み、
前記単量体(I)が、アクロレイン及びメタクロレインから選ばれる少なくとも1種の単量体であり、
前記単量体(I)の重量割合が、前記ニトリル系単量体100重量部に対して0.0001〜0.1重量部である、
熱膨張性微小球の製造方法。 - 前記油性混合物が、トルエン、アセトニトリル、プロパンニトリル及びイソブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種である成分(A)を含む、請求項6に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張性微小球及び/又は請求項6〜7のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる、中空粒子。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張性微小球、請求項6〜7のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球及び請求項8に記載の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む、組成物。
- 請求項9に記載の組成物を成形してなる、成形物。
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