JP6534481B1 - 撹拌装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】撹拌槽に投入された撹拌対象物を効率よく撹拌し、製造対象物を効率よく大容量で製造する撹拌装置を提供する。【解決手段】 同芯状の異なる軸芯周りに回転する複数の回転翼を有する撹拌装置1であって、撹拌対象物が投入される撹拌槽2を備える。一方の回転軸3Aには、その先端から前記撹拌槽2の底部に向けて傾斜姿勢で設けられ、前記撹拌対象物を掻き揚げるパドル翼4と、前記パドル翼4の外周側で回転方向に内向き傾斜姿勢で前記撹拌槽2の内壁に沿って起立する起立翼4Bとを備える。他方の回転軸3Bには、軸支され、前記起立翼4Bの内側で当該起立翼4Bと近接してすれ違うように回転する回転翼6を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、撹拌槽に投入した撹拌対象物を効率よく大容量で撹拌する撹拌装置に関する。
従来から複数の撹拌翼を組み合わせて構成した撹拌装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の撹拌装置は、同芯状の回転駆動軸に切込み平板大型翼、枠型翼および傾斜パドル翼を備えている。切込み平板大型翼および傾斜パドル翼は、一方の回転駆動軸に他方の回転駆動軸から独立して回転可能に設けられている。また、枠型翼は、他方の回転駆動軸に設けられている。枠型翼は、大型平板翼を外囲するように配置されている(特許文献1を参照)。
また、回転軸方向に対して直角である径方向に延びる天枠部と、天枠部に対して回転軸方向に離間する底枠部と、天枠部の両端に連結されており、回転軸を中心軸とする円筒に沿ってねじれた形状(90度)とされた一対の側枠部とからなる一対の遊星型の回転ブレードを備えた攪拌装置が開示されている(特許文献2を参照)。
特許第6170339号公報 特許第6118226号公報
近年、リチウムイオン二次電池が多くの用途に利用されており、使用量が増大する傾向にある。例えば、自動車などの輸送機器の分野において、ガソリンなどの化石燃料で駆動するエンジン車両からニッケル水素やリチウムイオンなどの電気エネルギによって駆動する電動バイク、電動車(ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池車)などへと移行している。特に、電気自動車は、バッテリの満充電時における航続距離を長くするとともに、高出力にするために多数のリチウムイオン二次電池を搭載している。
しかしながら、リチウムイオン二次電池の電極層の集電体に塗布される活物質ペーストを撹拌装置で製造するとき、従来の撹拌装置では次のような不都合が生じている。製造対象物である活物質ペーストは、撹拌槽に粉体の活物質を投入し、撹拌しながらバインダおよび溶剤を適時に投入して製造する。この製造の初期段階では、固形含有が非常に高く難分散性を有し、撹拌機の電動機にかなりの負荷がかかる。それ故に、撹拌槽の容量の半分以下に活物質の投入量を制限せざるを得ない。また、特許文献2に記載の遊星型の撹拌機における撹拌槽は真円度を保ちながら凹凸のないように機械加工を施す必要があるため、2000L(リットル)程度を超える大容量にスケールアップする際、機械加工が施せず、ひいては大容量の撹拌槽を備えた撹拌機を製造できないという問題が生じている。
本発明は、撹拌対象物を効率よく撹拌し、製造対象物を効率よく大容量で製造可能な撹拌装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、以下のような撹拌装置を提供する。
すなわち、本発明の実施形態に係る撹拌装置は、下記の構成を有する。
同芯状の異なる軸芯周りに回転する複数の回転翼を有する撹拌装置であって、
撹拌対象物が投入される撹拌槽を備え、
前記複数の回転翼は、一方の回転軸の先端から前記撹拌槽の底部に向けて傾斜姿勢で設けられ、前記撹拌対象物を掻き揚げるパドル翼と、
前記パドル翼の外周側で回転方向に内向き傾斜姿勢で前記撹拌槽の内壁に沿って起立するとともに、平面を有する起立翼と、
他方の回転軸に軸支され、前記起立翼の内側で回転する平面を有する回転翼と、を備え
少なくとも前記起立翼を回転させたとき、当該起立翼の平面のエッジと前記回転翼の平面のエッジが近接してすれ違うように構成されている
ことを特徴とする。
この構成によれば、撹拌槽に投入された撹拌対象物は、パドル翼によって撹拌槽の底部から上方に掻き揚げられるとともに、起立翼および回転翼によって軸周りに撹拌される。つまり、撹拌対象物は、撹拌槽の底部および軸周りで滞留することなく上下対流や旋回流を生じさせることにより、槽内で十分な流動が与えられ均一に撹拌される。また、撹拌中に起立翼と回転翼がすれ違うとき、両翼の間隙を通過する撹拌対象物がせん断をうけ、微粒化される。例えば、一方の起立翼を正転させ、他方の回転翼を逆転させた場合、正転方向の内向きに傾斜姿勢で設けられた起立翼は、傾斜面で撹拌対象物を正転方向に押し出しながら傾斜面に沿って内向きに流れる撹拌対象物の一部を後方に受け流す。また、起立翼と回転翼がすれ違うとき、回転翼が逆転方向に撹拌対象物を押し出すとともに、起立翼から後方に受け流す撹拌対象物を、逆転方向に引き込む。
すなわち、この構成の撹拌装置は、起立翼および回転翼がすれ違うときに両翼の面が撹拌槽の直径方向に面一になる従来の撹拌装置に比べて、起立翼の内縁と回転翼の外縁とによって形成される間隙に撹拌対象物が流動し易くなり、流動速度が増すので、せん断力が高まる。
また、せん断時の撹拌対象物の流動性の向上に伴って、起立翼および回転翼にかかる抵抗が低減されるので、回転軸の駆動源にかかる負荷の低減につながる。その結果、上記構成の撹拌装置は、従来装置と同じ容量の撹拌槽を利用した場合に従来装置よりも撹拌可能な有効容量を増加させることができる。さらに、駆動源への負荷軽減に伴い低出力のモータなどの駆動装置の利用が可能であり、ひいては従来の撹拌装置では実現不可能な大容量の大形撹拌槽を利用して、撹拌対象物を撹拌することも可能になる。
また、両翼の間隙を通過する撹拌対象物の流動性の向上に伴って、せん断時の摩擦熱の発生が抑制される。したがって、両翼の回転時の周速差を大きくする必要がないので、比較的に小さい周速差で目標とする微粒化された均一な生成物を短時間で製造することができる。
さらに、この構成によれば、起立翼と回転翼の協働によって撹拌対象物をせん断するので、従来装置のように、撹拌槽の機械精度が不要となる。すなわち、従来の撹拌装置は、撹拌翼の外縁と撹拌槽の内壁とによって形成される間隙を通過する撹拌対象物をせん断するので、当該間隙を常に一定距離に保つよう、撹拌槽を真円に加工し、かつ、内壁に凹凸がないように機械加工を施す必要がある。しかしながら、この構成によれば、起立翼と回転翼の協働によって撹拌対象物をせん断するので、従来の撹拌装置のような高精度な撹拌槽の利用が要求されない。
なお、上記構成において、前記回転翼は、長手方向の中心軸を中心に回転可能に構成されていることが好ましい。
この構成によれば、撹拌条件に応じて回転翼を回転させて所定の位置で固定することにより、当該回転翼と起立翼によって形成される間隙、両翼によって形成される開き角度および撹拌対象物を導入する側の開口面積を適宜に調整することができる。
また、上記構成において、前記起立翼は、前記回転軸方向から見た断面において、内側を先細りテーパ状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、起立翼の内側が先鋭になっているので、撹拌対象物を効率よくせん断することができる。
上記構成において、前記起立翼は、前記回転軸方向から見た断面において、外側を外向きに先細りテーパ状に形成されており、かつ、当該テーパ状の先端が前記撹拌槽の内壁と近接対向するように構成することが好ましい。
この構成によれば、撹拌中に撹拌槽と起立翼の間隙を通過する撹拌対象物が、せん断される。すなわち、撹拌装置は、起立翼と回転翼の協働による撹拌対象物のせん断と撹拌槽の内壁と起立翼の協働による撹拌対象物の補助的なせん断とによって、撹拌対象物をより効率よくせん断することができる。
なお、上記構成において、前記パドル翼と同軸に傾斜翼を備えることが好ましい。
この構成によれば、傾斜翼は、パドル翼と協働して撹拌対象物を撹拌槽内で上下方向に循環させるとともに、撹拌槽の中央を通過する撹拌対象物のせん断にも寄与する。したがって、当該構成は、撹拌対象物をより効率よくせん断しながら撹拌することができる。
また、上記構成において、前記起立翼の内側で回転する前記回転翼は、門型の回転翼であり、
前記傾斜翼は、前記門型の回転翼内で回転するように構成することが好ましい。
上記構成によれば、門型の回転翼は、回転時に大型の平板状の回転翼に比べて撹拌対象物を受ける面積を小さくすることができるので、回転翼にかかる負荷を低減することができる。また、門型の回転翼の内側に傾斜翼を設けることにより、回転軸周りに生じやすい滞留を抑制することができる。したがって、当該構成によれば、撹拌対象物が、より効率よく撹拌される。
また、上記構成において、前記撹拌槽は、円筒状の胴部と先細りテーパ状の底部とからなり、
前記パドル翼は、その底縁を前記底部の底面に近接するように構成することが好ましい。
この構成によれば、パドル翼が撹拌対象物を回転方向の前方に押し出しながら、その底縁と撹拌槽の底面との間隙に撹拌対象物を通過させる。すなわち、撹拌対象物が間隙を通過するとき、パドル翼の底縁によってせん断される。したがって、撹拌対象物がより効率よくせん断および撹拌される。
本発明の撹拌装置によれば、撹拌槽に投入された撹拌対象物を効率よく撹拌し、製造対象物を効率よく製造することができる。
本発明の撹拌装置の外観および内部構造を示す縦断面図である。 パドル翼の斜視図である。 図1のX-X矢視断面である。 起立翼と回転翼がすれ違う過程で、両翼間を通過する撹拌対象物の流れの変化を模式的に示す図である。 起立翼と回転翼がすれ違う過程で、両翼間を通過する撹拌対象物の流れの変化を模式的に示す図である。 起立翼と回転翼がすれ違う過程で、両翼間を通過する撹拌対象物の流れの変化を模式的に示す図である。 図1の部分拡大図である。 比較シミュレーションを行った従来装置の縦断面図である。
以下、本発明の撹拌装置の一実施形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態の撹拌装置では、リチウムイオン二次電池の製造に利用される活物質ペーストを製造する用途を例にとって説明するが、当該用途に限定されない。したがって、本実施形態の撹拌装置は、化学、医薬、電子、セラミックス、食品、飼料などの他の分野においても利用可能である。
図1は、本実施形態に係る撹拌装置の外観および内部構造を示す縦断面図である。
撹拌装置1は、撹拌槽2に同芯状の軸芯周りに独立して回転可能な2つの回転軸3A、3Bに異なる形状の回転翼4〜6を備えている。
撹拌槽2は、円筒状の胴体2Aと当該胴体2Aの下部から下方に先細りテーパ状に形成された底部2Bとから構成されている。底部2Bのテーパ状の先端には、撹拌槽2内の生成物などを排出するための排出口が形成されている。排出口には、開閉弁7を介して流路8が連通接続されている。また、撹拌槽2の上部には、撹拌槽2を密閉する蓋部2Cが設けられている。なお、本実施形態の撹拌槽2は、密閉型である。
撹拌槽2の上方には、ベアリングケース9が設けられている。また、撹拌槽2の外周には、冷却水などの冷媒または温水などの熱媒を循環させるジャケット10が付設されている。
ベアリングケース9は、外部設置のモータなどの駆動装置からの回転駆動力を、チェーンなどを介して同芯状の回転軸3を構成する内方回転軸3Aおよび外方回転軸3Bのそれぞれに伝達する。したがって、ベアリングケース9は、撹拌槽2の蓋部2Cを貫通し、回転軸3を撹拌槽2の底部2Bに向けて懸垂支持しながら蓋部2Cの外部に受動部を露出している。
内方回転軸3Aおよび外方回転軸3Bのそれぞれは、ベアリングBを介して独立駆動する。一方の内方回転軸3Aは、先端から基端向けてパドル翼4および傾斜翼5の順に備えている。他方の外方回転軸3Bは、門型の回転翼6を備えている。
パドル翼4は、環状に形成された左右一対の環状フレームからなる。環状フレーム4Aは、内方回転軸3Aの周りに互いに180度離れた位置に接続されている。パドル翼4は、図1を正面視したときに外形は略五角形であるが、環状フレーム4Aの内形状は、図2に示すように、六角形である。また、パドル翼4は、斜め上向きに傾斜するように内方回転軸3Aの先端側に接続されている。この状態でパドル翼4が内方回転軸3Aに対して傾斜している。なお、パドル翼4は、例えば金属プレートから打ち抜き加工によって形成されており、環状フレーム4Aの内縁が鋭利になっている。
環状フレーム4Aのうち撹拌槽2の底面に沿って延伸する下部フレームは、当該底面と一定距離を保った近接状態にある。また、撹拌槽2の胴体2Aの連接部で屈曲し、胴体2Aの垂直な内壁に沿って延伸する外側フレームは、胴体2Aの内壁と平行して近接状態を保っている。すなわち、下部フレームを底面に近接状態で沿わせて延伸するためには、下部フレームは、底面の曲率に合わせて傾斜方向の上向きに捻られている。この捻り加工された下部フレームは、円錐形状の底部2Bの曲率に応じて下向きに僅かに膨出し、同様に外周側で底部2Bから胴体2Aに沿って傾斜する外側フレームも胴体2Aの曲率に応じて僅かに膨出している。
したがって、パドル翼4が正転するとき、撹拌槽2の底部2Bの撹拌対象物を環状フレーム4Aの前面によって回転方向の上向きに掻き揚げるとともに、環状フレーム4Aの開口部を通過する撹拌対象物をせん断する。すなわち、環状フレーム4Aの内形状を多角形(本実施例では六角形)にしているので、環状フレーム4Aの角部に撹拌対象物の引っ掛かりが生じ、開口部の中央とパドル翼4の内壁周りで撹拌対象物の流速に速度が生じやすくなる。当該速度差によって撹拌対処物のせん断作用が生じる。
なお、本実施形態のパドル翼4のフレームの幅Wを同じに設定しているが、環状フレームの位置ごとに幅Wを変更してもよい。すなわち、パドル翼4は、環状フレームの幅を適宜に設定変更して開口面積を調整することにより、撹拌対象物の掻き揚げ能力とせん断能力を変更および調整することができる。例えば、開口面積を小さくした場合、掻き揚げ能力は上がるが、開口に通過させる撹拌対象物の量が少なくなり、ひいてはせん断能力を低く設定することができる。開口面積を広くすると、その逆で掻き揚げ能力は下げるが、開口に通過させる撹拌対象物の量が多くなり、ひいてはせん断能力を高く設定することができる。
また、パドル翼4は、環状フレーム4Aの構成に限定されずプレート状であってもよい。また、パドル翼4の外形は、五角形に限定されず多角形であってもよいし、或は、撹拌槽2の底部2Bが湾曲形状である場合には、底部2Bの曲率に応じて膨出し、当該底面に一定距離の近接状態を保つ曲線部を有する形状であってもよい。さらに、パドル翼4の内形は、外形と異なっているが同じであってもよい。
また、パドル翼4は、その外周側の端縁から回転方向に内向き傾斜姿勢で撹拌槽2の内壁に沿って起立する起立翼4Bが設けられている。起立翼4Bは、パドル翼4に一体的に接合された三角柱である。図2および図3に示すように、回転軸3の方向から見た断面において、三角柱のテーパ状の1つの先端(内縁)が、後述するように、回転翼6の外縁とすれ違い、他の先端(外縁)が撹拌槽2の内壁側に向き、残りの先端が回転方向の後方を向くように設置されている。
また、起立翼4Bは、図3〜図6に示すように、回転翼6とすれ違う過程で、起立翼4Bの内縁と回転翼6の外縁から外向きに延伸した仮想線Aとが交差するように設定されている。例えば、起立翼4Bが正転(R方向)し、かつ、回転翼6が逆転(L方向)しているとき、図4に示す起立翼4Bと回転翼6とがすれ違う前から図5に示すすれ違う時点までにおいて、両翼4B、6が相対的に接近してゆく。図5に示す両翼4B、6がすれ違う時点で、起立翼4Bの内縁と回転翼6の仮想線Aとが交差し始める。その後に、図6に示すように、両翼4B、6が互いに離反してゆく。なお、図4〜図6において、理解し易いように、両翼4B、6の間隙を流れる撹拌対象物の流れる方向しか矢印で示していないが、実際には起立翼4Bおよび回転翼6のそれぞれによって前方に押し出される撹拌対象物の流れも存在する。
両翼4B、6がすれ違うまでの間、起立翼4Bの正転側で起立翼4Bの前面と回転翼6の表面とが成す角度αが経時的に変化するように設定されている。なお、本実施形態において、図3に示す状態の角度αは、0度から180度の範囲で適宜に設定変更可能であり、好ましくは60〜140度である。
また、両翼4B、6がすれ違う間、起立翼4Bの内縁と回転翼6の外縁との間隙Gが徐々に狭くなる。すなわち、間隙Gは、両翼4B、6のすれ違い時点で最小幅Gminとなる。なお、最小幅Gminは、図7に示す撹拌槽2の内径D1、パドル翼4の外径D2、起立翼4Bの幅D3、回転翼6の外径D4、回転翼6の幅D5、撹拌層2と起立翼4Bの間隙D6、起立翼4Bと回転翼6の間隙D7、傾斜翼5の幅D8のスケールに応じて適宜に設定変更される。例えば、各スケールは、スケールとの相互関係で、D3/D1=1/12〜1/10、D3=D5、D6/D3=1/5〜1/4、D8/D1=1/2.5〜1/2、D7/D6=1/3〜1/2となるような比率に設定することが好ましい。
したがって、パドル翼4とともに起立翼4Bを正転させ、かつ、回転翼6を逆転させた場合、正転方向の内向きに傾斜姿勢で設けられた起立翼4Bは、傾斜面で撹拌対象物を正転方向(前方)に押し出しながら傾斜面に沿って内向きに流れる撹拌対象物の一部を後方に受け流す。回転翼6は、起立翼4Bに比べて前方に撹拌対象物を積極的に押し出す。
また、起立翼4Bと回転翼6がすれ違うとき、回転翼6が起立翼4Bの逆方向に撹拌対象物を押し出すとともに、起立翼4Bから後方に受け流す撹拌対象物を、逆転方向に引き込む。すなわち、起立翼4Bと回転翼6との間隙を通過する撹拌対象物は、図4に示すように両翼4B、6の間隙の広い状態から図3および図5に示すように最小幅Gminへの変化に応じて両翼4B、6による互いの押圧が増す。起立翼4Bの傾斜面に沿って後方に受け流される一部の撹拌対象物の流速が徐々に高まり、図5に示すように両翼4B、6がすれ違った後に互いに離反した所定時間経過後に回転翼6による撹拌対象物の引き込み作用によって流速が急激に高まる。換言すれば、撹拌対象物の加速度が増す。
次に、傾斜翼5は、パドル翼4とベアリングケース9の間の所定高さに設置されている。すなわち、傾斜翼5は、撹拌対象物の浸漬した状態で門型の回転翼6の2枚の翼の間で回転するように設置されている。本実施形態の傾斜翼5は、回転軸周りに等間をおいて4枚の平板状の翼を備えているが、スケールまたは攪拌対象物に応じて枚数を適宜に設定変更することができる。すなわち、傾斜翼5は、複数枚の翼を有していればよい。各翼は、パドル翼4の傾斜方向と逆向きに設定されている。したがって、内方回転軸3Aを正転させたとき、パドル翼4が撹拌対象物を上方に掻き揚げる一方で、傾斜翼5が撹拌対象物を下方に押し下げる。また、内方回転軸3Aを逆転させたとき、パドル翼4によって撹拌槽2の底部2Bに押し下げられた撹拌対象物が、撹拌槽2の底面を沿って移動した後に胴体2Aの内壁に沿って上昇する一方で、傾斜翼5によって撹拌対象物は上方に押し上げられる。傾斜翼5は、回転方向に依存することなく回転軸周りの撹拌対象物をせん断する機能を有する。なお、傾斜翼5は、本実施形態の翼形状に限定されず、例えば、円板状の外周に複数のせん断歯を備えたディスパ翼であってもよい。
門型の回転翼6は、図1に示すように、外方回転軸3Bの軸芯Pに対して線対称の2枚の平板翼の組み合わせによって構成されている。すなわち、各平板翼は、外方回転軸3Bから水平方向に延伸した後に垂直下方に屈曲している。また、撹拌槽2を平面視したとき、図3に示すように、回転翼6の両翼面が、撹拌槽2の直径の同一直線上に沿うように整列している。また、回転翼6は、図1および図3に示すように、長手方向の中心軸PYを中心に回転および固定可能にブラケットに装着されている。したがって、図3に示す角度α(開き角度)を0度から180度の範囲で撹拌条件に応じて適宜に設定変更し、起立翼4Bと回転翼6によって形成される間隙Gおよび撹拌対象物の受け入れ開口面積を調整することができる。
次に、撹拌槽の全容量が2000Lを超える上記実施形態の撹拌装置と従来の撹拌装置を利用して活物質ペーストを製造する場合の装置特性の比較シミュレーションを行った。
特許文献2に記載のような従来装置は、図8に示すように、回転駆動軸21を備えたベアリングケース20に独立回転駆動する2つの回転翼22、23を備えている。各回転翼22、23は、断面が三角形のフレームを矩形状に屈曲形成した翼を更に回転駆動軸24、25の軸芯P1、P2周りに90度に捻り加工されている。したがって、両回転翼22、23は、ベアリングケース20の回転駆動軸21の軸芯P周りに回転(公転)しながら、各軸芯P1、P2によって互いに正逆転する。すなわち、両翼22、23のそれぞれが自転しながら回転駆動軸21を中心に公転する過程で、両翼22、23の側縁がすれ違う時に撹拌対象物をせん断するように構成されている。また、従来装置は、ベアリングケース20に独立駆動する2つのせん断用のディスパ翼26を備えている。ディスパ翼26は、回転翼22、23と同様にそれぞれが自転しながら回転駆動軸21を中心に公転しながら撹拌対象物をせん断するように構成されている。なお、他方のディスパ翼26は、図8において図示されていないが、回転翼22、23を挟んだ紙面奥側に配置されている。
各撹拌装置の特性の詳細は、以下の表に示されている。
上述のように、従来装置および実施例装置の撹拌槽の全容量を略同じに設定した。従来装置の撹拌槽の全容量が2016Lであり、実施例装置の撹拌槽の全容量が2054Lである。撹拌槽の容量は、実施例装置の方が従来装置に比べて僅かに大きいが略同じに設定されている。しかしながら、実施例装置の本体サイズは、従来装置よりも小さくなっている。具体的には、従来装置の全高6873mm、全幅3424mmに対して実施例装置は全高3890mm、全幅2424mmとなっており、全高で約57%、全幅で約30%まで小型化されている。本実施例装置の小型化に寄与しているのは、モータおよび減速機である。すなわち、本実施例装置の内方回転軸および外方回転軸のいずれもモータの出力が、従来装置のモータの出力の半分である。出力の小さいモータを利用することにより、ベアリングケースの小型化が可能になる。
また、従来装置では、低速側の回転軸の周速を2.3m/s、高速側の回転軸の周速を23.9m/sであり、両軸を相対的に逆方向に回転させたときの周速差が、40倍以上になる。両軸を同じ方向に回転させても周速差は10倍以上になる。これに対して、実施例装置は、内方回転軸の周速を2.2m/s、外方回転軸の周速を5.1m/sであり、両軸を相対的に逆方向に回転させたときの周差が、約10倍である。周速差だけを見れば、実施例装置のせん断力が小さくなるように思えるが、従来装置よりもせん断力が高い。すなわち、本実施例装置は、起立翼4Bと回転翼6との相互作用によって、両翼4B、6のすれ違う過程で流速が徐々に増し、両翼4B、6がすれ違った後に互いに離反するときに回転翼6による撹拌対象物の引き込み作用によって流速が急激に増し、せん断力は従来装置以上になる。また、実施例装置は、周速差が小さいので、従来装置よりも摩擦熱の発生を抑制される。
さらに、実施例装置の撹拌槽に投入可能な撹拌対象物の容量は1400Lであり、従来装置で投入可能な撹拌対象物の量は1000Lである。したがって、実施例装置は、撹拌可能な有効容量を従来装置に比べて40%増加させることができる。すなわち、撹拌槽の容量のみに着目すれば、生産効率を40%高くすることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
(1)上述の実施形態において、回転翼6が門型であったが、平板状、格子状、起立翼4Bと同様に三角柱または平板を折り曲げたL字状であってもよい。この場合、パドル翼4と同じ内方回転軸3Aに設けた傾斜翼5は、回転翼6と接触しない位置に設ける。例えば、傾斜翼5は、パドル翼4と回転翼6の間に設ける。或は、傾斜翼5は、パドル翼4の上方であって、撹拌対象物に浸漬する状態に配置する。
また、上述の実施形態において、パドル翼4は環状フレームによって構成していたが、環状フレームと同様に撹拌槽2の底面に応じて捻り加工をしたプレート状の翼であってもよい。
(2)上述の実施形態では、パドル翼4と同じ内方回転軸3Aに傾斜翼5を備えているが、傾斜翼5を備えない構成であってもよい。
(3)上述の実施形態では、起立翼4Bの形状が三角柱であるが当該形状に限定されず、回転方向の面が内向き傾斜姿勢になる構成であればよい。例えば、回転軸側から平面視したときアルファベットのL字状に屈折したプレートであってもよい。この場合、L字状の短辺側の面を撹拌槽2の内壁に対向させ、長辺の先端側の内縁と回転翼6の外縁とがすれ違うように構成すればよい。この構成によれば、上記実施形態と同様に両翼4B、6の間隙を通過する撹拌対象物を効率よくせん断することができる。
(4)上述の各実施形態では、撹拌中にパドル翼4と回転翼6が逆方向に回転しているが、パドル翼4に設けられた起立翼4Bおよび回転翼6の両周速度に差が生じ、起立翼4Bと回転翼6にすれ違いが生じればよい。例えば、起立翼4Bおよび回転翼6を同じ方向に回転させながら、いずれかの翼の回転速度を相対的に遅くまたは速くすればよい。或は、起立翼4Bまたは回転翼6のいずれかの回転を停止し、他方の翼のみを回転させてもよい。
1 撹拌装置
2 撹拌槽
2A 胴体
2B 底部
2C 蓋部
3 回転軸
3A 内方回転軸
3B 外方回転軸
4 パドル翼
4A 環状フレーム
4B 起立翼
5 傾斜翼
6 門型の回転翼
7 開閉弁
8 流路
9 ベアリングケース
10 ジャケット

Claims (5)

  1. 同芯状の異なる軸芯周りに回転する複数の回転翼を有する撹拌装置であって、
    撹拌対象物が投入される撹拌槽を備え、
    前記複数の回転翼は、一方の回転軸の先端から前記撹拌槽の底部に向けて傾斜姿勢で設けられ、前記撹拌対象物を掻き揚げるパドル翼と、
    前記パドル翼の外周側で回転方向に内向き傾斜姿勢で前記撹拌槽の内壁に沿って起立するとともに、平面を有する起立翼と、
    他方の回転軸に軸支され、前記起立翼の内側で回転する平面を有する回転翼と、を備え
    少なくとも前記起立翼を回転させたとき、当該起立翼の平面のエッジと前記回転翼の平面のエッジが近接してすれ違うように構成されている
    ことを特徴とする撹拌装置。
  2. 前記回転翼は、長手方向の中心軸を中心に回転可能に構成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
  3. 前記パドル翼と同軸に傾斜翼を備えた
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の撹拌装置。
  4. 前記起立翼の内側で回転する前記回転翼は、門型の回転翼であり、
    前記傾斜翼は、前記門型の回転翼内で回転するように構成した
    ことを特徴とする請求項3に記載の撹拌装置。
  5. 前記撹拌槽は、円筒状の胴部と先細りテーパ状の底部とからなり、
    前記パドル翼は、その底縁を前記底部の底面に近接するように構成した
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の撹拌装置。
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